JP3732574B2 - ポリエステルフィルム積層体 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステルフィルム積層体に関し、更に詳しくは窓ガラス、ショーケース、メガネ、計器類、ディスプレイ、ランプなどの表面保護材に適したポリエステルフィルム積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフイルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、種々の用途に広く用いられている。
【0003】
特に、近年、窓ガラス、ショーケース、メガネ、計器類、ディスプレイ、ランプなどの表面保護材としての用途が注目されており、かかる用途では表面硬度、耐摩耗性などに優れていると共に、十分な透明性、反射防止能を有していることが要求される。
【0004】
このような要求を満たすために、ポリエステルフィルムにハードコート(HC)層、アンチレフレクション(AR)層を積層することが試みられているが、ポリエステルフィルムとの接着性が不十分であることから満足な結果が得られていない。
【0005】
このようなポリエステルフィルムの接着性を改善する方法としては、例えば、インモールド用転写フィルムのベースフィルムに二次転移点が40〜85℃の水性ポリエステルの被膜を形成してメジューム層との接着性を向上させる方法が知られている(特開平7―156358号公報)。
【0006】
しかしながら、この方法では、インモールド用転写フィルムにおけるベースフィルムとメジューム層との接着性は向上するものの、その他の用途における接着性は十分満足できるレベルまで改善されないことが多い。
【0007】
一方、平坦、易滑性ポリエステルフィルムを得る目的で、ポリウレタン又はアクリル系樹脂と脂肪酸アミド又はビスアミドを含む組成物からなる塗膜をポリエステルフィルムの表面に形成することも知られている(特開昭63―194948号公報)。
【0008】
しかし、脂肪酸アミド又はビスアミドを用いることによって、接着性が向上することについては示唆されていない。
【0009】
更に、ポリエチレンテレフタレート層にポリエステル樹脂層を形成し、その上に特定組成の放射線硬化性層を形成することにより、表面硬度や耐摩耗性などの良好な積層体を得ることも知られている(特公平7―80281号公報)が、特殊な硬化性層を用いるため汎用性がなく、しかも接着性の点でも十分満足できるものではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、接着性に優れ、表面硬度、耐摩耗性等が良好であり、しかも十分な透明性、反射防止能を備えたポリエステルフィルム積層体を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルフィルムの表面に、水性ポリエステルと脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドを主成分とする組成物からなる塗膜を形成して、ハードコート層、アンチレフレクション層を積層すればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、二次転移点が40〜85℃の水性ポリエステルと脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドとを主成分とする組成物からなる塗膜が形成され、更に該塗膜の少なくとも1面の上にハードコート層及びアンチレフレクション層がこの順に形成されており、かつヘーズ値が1%以下であることを特徴とするポリエステルフィルム積層体である。以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0013】
[ポリエステルフィルム]
本発明においてポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4―シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート等が例示でき、これらの共重合体またはこれと小割合の他樹脂とのブレンド物なども含まれる。
【0014】
これらのポリエステルには、必要により、適当なフィラーを含有させることができる。このフィラーとしては、従来からポリエステルフィルムの滑り性付与剤として知られているものが挙げられるが、その例を示すと炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、カーボンブラック、炭化珪素、酸化錫、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。さらにポリエステル中には、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒等も適宜添加することができる。
【0015】
ポリエステルフィルムは、かかるポリエステルを常法により溶融押出して、フィルム状とし、必要に応じて延伸、熱処理することにより得ることができる。特に二軸延伸したフィルムが好ましい。
【0016】
[水性ポリエステル]
本発明のポリエステルフィルム積層体においては、上記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、水性ポリエステルと脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドを主成分とする組成物からなる塗膜が形成されている。
【0017】
この塗膜を形成する一成分である水性ポリエステルは、二次転移点(Tg)が40〜85℃、好ましくは45〜80℃のものである。水性ポリエステルの二次転移点(Tg)が40℃未満の場合、得られたフィルムは耐熱性が低くなり、また耐ブロッキング性が劣るので不利であり、一方85℃を超えると接着性が劣るので望ましくない。
【0018】
上記水性ポリエステルは、水に可溶性又は分散性のポリエステルである。かかる水性ポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4′―ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、5―Naスルホイソフタル酸、トリメリット酸、ジメチロールプロピオン酸等のポリカルボン酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4―ブタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等のポリヒドロキシ化合物成分とから製造されるポリエステルを挙げることができる。
【0019】
上記水性ポリエステルは、さらに親和性を付与することが必要な場合、ポリエステル中にSO3 Na基やCOONa基を導入してもよく、またポリエーテル成分を導入することもできる。
【0020】
[脂肪酸のアミド、脂肪酸のビスアミド]
また、上記脂肪酸のアミド、脂肪酸のビスアミドはそれぞれR1 CONH2 、R1 CONHR3 NHOCR2 で表されるものであり、R1 CO―及びR2 CO―は脂肪酸残基、―NHR3 NH―はジアミン残基である。この脂肪酸としては炭素数6〜22の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、またこのジアミンとしては炭素数1〜15のジアミン、特にアルキレンジアミンが好ましい。また、ビスアミドとしては、炭素数が13〜15で分子量が200〜800のN,N´−アルキレンビスアミドが好ましい。
【0021】
更に具体的には、N,N′―メチレンビスステアリン酸アミド、N,N′―エチレンビスパルミチン酸アミド、N,N′―メチレンビスラウリン酸アミド、リノール酸アミド、カプリル酸アミド、ステアリン酸アミド等を例示することができる。これらのうち、特に下記式で示されるビスアミドが好ましく用いられる。
【0022】
【化2】
RCONH(CH2 )nNHOCR
(但し、RCO―は脂肪酸残基を示し、nは1又は2である。)
これらの脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドは、塗膜を形成する組成物中に、3〜10重量%含まれていることが好ましい。脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドの含有量が少なすぎると十分な接着力が得られず、滑り性、耐ブロッキング性が低下する傾向があり、逆に多すぎると、フィルムと塗膜との密着性が低下したり、塗膜の脆化を招いたりすると共に、ヘーズが高くなったりする。
【0023】
[塗膜]
本発明において、ポリエステルフィルム表面に形成される塗膜を構成する組成物は、さらに、平均粒径が0.15μm以下、特に0.01〜0.1μmの粗面化物質を含有していることが好ましい。
【0024】
この粗面化物質の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、架橋シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンワックス等の有機微粒子などを例示することができる。これらのうち、水不溶性の固体物質は、水分散液中で沈降するのを避けるため、比重が3を超えない超微粒子を選ぶことが好ましい。
【0025】
これら粗面化物質は、塗膜表面を粗面化すると共に、微粉末自体による塗膜の補強作用があり、さらには塗膜への耐ブロッキング性付与作用、ポリエステルフィルムへの滑り性付与作用を奏する。
【0026】
この粗面物質は、塗膜を形成する組成物中に、5〜30重量%含まれていることが好ましい。特に、平均粒径が0.1μm以上の比較的大きな粒子を用いるときには5〜10重量%範囲から、また平均粒径が0.01〜0.1μmの粒子を用いるときには8〜30重量%の範囲内から選定するのが好ましい。これら粗面化物質の塗膜中の含有量が多くなり過ぎると、得られる積層体のヘーズ値が1%を超え、透明性が悪化するので注意を要する。
【0027】
本発明における上記組成物は、塗膜を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液の形態で使用される。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記水性ポリエステル以外の他の樹脂、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。
【0028】
塗布液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で行なうことができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で行なうのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布液を塗布するのが好ましい。
【0029】
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0030】
なかでも、未延伸フィルム又は一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに上記組成物の塗布液を塗布し、そのまま縦延伸及び/又は横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0031】
塗布液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは塗膜組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。この界面活性剤は、ポリエステルフィルムへの水性塗液の濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン―脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。
【0032】
塗布液の塗布量は、塗膜の厚さが0.02〜0.3μm、好ましくは0.07〜0.25μmの範囲となるような量であるのが好ましい。塗膜の厚さが薄過ぎると、接着力が不足し、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘーズ値が高くなったりする可能性がある。
【0033】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などを単独又は組合せて用いることができる。なお、塗膜は、必要に応じ、フィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0034】
[ハードコート層]
本発明においては、上記塗膜を塗設したポリエステルフィルム(以下『易接着性ポリエステルフィルム』ということがある)の塗膜の少なくとも一面上にハードコート層を積層する。
【0035】
このハードコート層としては、放射線硬化系、シラン系など通常用いられるハードコート層が用いることができる。特に放射線硬化系のハードコート層が好ましく、なかでもUV硬化系のハードコート層が好ましく用いられる。
【0036】
ハードコート層の形成に用いられるUV硬化系組成物としては、ウレタン―アクリレート系、エポキシ―アクリレート系、ポリエステル―アクリレート系などのUV硬化性組成物が挙げられる。
【0037】
易接着性ポリエステルフィルムの塗膜上にハードコート層を積層するには、該塗膜上に組成物を塗布し、加熱、放射線(例えば紫外線)照射等により該組成物を硬化させればよい。ハードコート層の厚さは、特に限定されないが通常、1〜15μm程度が適当である。
【0038】
[アンチレフクション層]
このように形成したハードコート層の上に、更にアンチレフクション層を形成する。
【0039】
アンチレフクション層は、屈折率の異なる複数の層を交互に積層したもので、その構成は一般によく知られている。例えば、低屈折率層(SiO2 、30nm)―高屈折率層(TiO2 、30nm)―低屈折率層(SiO2 、30nm)―高屈折率層(TiO2 、100nm)―低屈折率層(SiO2 、100nm)の層構成を有するもの、高屈折率層(ITO、20nm)―低屈折率層(AlSiO、20nm)―高屈折率層(ITO、88nm)―低屈折率層(AlSiO、88nm)の層構成を有するもの、高屈折率導電層(ITO、20nm)―低屈折率層(SiO2 、20nm)―高屈折率導電層(ITO、93nm)―低屈折率層(SiO2 、93nm)の層構成を有するものなどが知られている。
【0040】
本発明においては、任意のアンチレフレクション層を適用することができ、通常、スパッタリングによってハードコート層上に積層される。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例、比較例において、ヘーズ値、接着力、耐摩擦性、反射率は下記の方法により評価した。
【0042】
(1)ヘーズ値
日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH―20)を使用してヘーズ値を測定した。ヘーズ値は次の基準で評価した。
◎: ヘーズ値≦0.5% …… ヘーズ値極めて良好
○:0.5%<ヘーズ値≦1.0% …… ヘーズ値良好
×:1.0%<ヘーズ値 …… ヘーズ値不良
【0043】
(2)接着力
易接着性ポリエステルフィルムの塗膜形成面に厚さ5μmのハードコート層を形成して碁盤目のクロスカット(1mm2 のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180度の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
5:剥離面積が10%未満 ……接着力極めて良好
4:剥離面積が10%以上20%未満 ……接着力良好
3:剥離面積が20%以上30%未満 ……接着力やや良好
2:剥離面積が30%以上40%未満 ……接着力不良
1:剥離面積が40%を超えるもの ……接着力極めて不良
【0044】
(3)耐摩耗性
スチールウール#0000で表面を摩擦し、傷がつくかどうかを調べ、傷がつかないものを耐摩耗性良好、傷がつくものを耐摩耗性不良とした。
【0045】
(4)反射率
積層体面に対し、垂直の入射光束に対する反射光束の比を400nm〜570nmの波長の範囲で測定し、平均したものを反射率とする。
【0046】
[実施例1]
溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.65)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.6倍に延伸した後、その片面に下記塗膜用組成物の濃度8%の水性液をロールコーターで均一に塗布した。
【0047】
[塗膜用組成物]
【0048】
その後、引き続いて95℃で乾燥しながら横方向に120℃で3.8倍に延伸し、220℃で熱固定して、厚さ40μmの易接着性フィルムを得た。なお、塗膜の厚さは0.15μmであった。
【0049】
次いで、塗膜上に、下記組成からなるUV硬化系組成物をロールコータを用いて、硬化後の膜厚が5μmとなるように均一に塗布した。
【0050】
[UV硬化組成物]
ペンタエリスリトールアクリレート 45重量%
N―メチロールアクリルアミド 40重量%
N―ビニルピロリドン 10重量%
1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5重量%
【0051】
その後、80W/cmの強度を有する高圧水銀灯で30秒間紫外線を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。このときの接着力は4であった。
【0052】
このハードコート層の上に、低屈折率層(SiO2 、30nm)、高屈折率層(TiO2 、30nm)、低屈折率層(SiO2 、30nm)、高屈折率層(TiO2 、100nm)、低屈折率層(SiO2 、100nm)を、この順にスパッタリングによって形成した。
【0053】
得られた積層体は、ヘーズ値が◎、屈折率が0.7%で反射が少なく、スチールウールで強く摩擦しても傷がつかず、耐摩耗性も良好であった。
【0054】
[比較例1]
実施例1において、N,N′―エチレンビスカプリル酸アミドを含まない塗膜用組成物を用い、その他は実施例1と同一条件で積層体を作成した。積層体の評価結果を表2に示す。この積層体は、ヘーズ値、耐摩耗性、反射率は実施例1と同等であったが、実施例1と同様にして評価した接着力は2であり、接着力が劣るものであった。
【0055】
[実施例2〜9、比較例2〜4]
実施例1において、塗膜用組成物の組成を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。積層体の評価結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
尚、表1において塗膜用組成物の記号(P、Q、R、S、T、A、B、C、D、G、H、YおよびZ)は、それぞれ下記の重合体または化合物であることを示す。
【0058】
[水性ポリエステル]
P:酸成分がテレフタル酸(90モル%)、イソフタル酸(6モル%)および5―スルホイソフタル酸カリウム(4モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(95モル%)およびネオペンチルグリコール(5モル%)の共重合ポリエステル(Tg=68℃)
【0059】
Q:酸成分が2,6―ナフタレンジカルボン酸(50モル%)、テレフタル酸(46モル%)および5―スルホイソフタル酸ナトリウム(4モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(70モル%)およびビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物(30モル%)の共重合ポリエステル(Tg=80℃)
【0060】
R:酸成分がテレフタル酸(85モル%)およびイソフタル酸(15モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(57モル%)、1,4―ブタンジオール(40モル%)、ジエチレングリコール(2モル%)およびポリエチレングリコール(分子量600)(1モル%)の共重合ポリエステル(Tg=47℃)
【0061】
S:酸成分がテレフタル酸(70モル%)、イソフタル酸(28モル%)および5―スルホイソフタル酸ナトリウム(2モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(70モル%)およびビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物(30モル%)の共重合ポリエステル(Tg=30℃)
【0062】
T:酸成分が2,6―ナフタレンジカルボン酸(81モル%)、イソフタル酸(15モル%)および5―スルホイソフタル酸ナトリウム(4モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(70モル%)およびビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(30モル%)の共重合ポリエステル(Tg=90℃)
【0063】
[脂肪酸のアミド、脂肪酸のビスアミド]
A:N,N′―メチレンビススアテリン酸アミド
B:N,N′―エチレンビスパルミチン酸アミド
C:カプリル酸アミド
D:ステアリン酸アミド
【0064】
[粗面化物質]
G:アクリル系樹脂微粒子(平均粒径0.03μm)
H:シリカ(平均粒径0.12μm)
【0065】
[界面活性剤]
Y:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル
Z:ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体
得られた結果は、表2に示す通りであった。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例1、比較例1の結果および表2に示した結果から明らかなように、本発明の積層体(実施例1〜9)は透明性、接着力、耐摩耗性、反射防止能のいずれも良好であったが、二次転移点が85℃を越える水性ポリエステルを用いた場合(比較例2)は接着力が劣り、二次転移点が40℃未満の水性ポリエステルを用いた場合(比較例3)は接着力が不十分であると共に、ハードコート層形成前のフィルムの耐ブロッキング性が不十分であった。また、脂肪酸のアミド、脂肪酸のビスアミドを含まない場合(比較例4)は接着力が劣っていた。
【0068】
[実施例10〜13]
実施例4において、塗膜用組成物のN,N′―メチレンビスステアリン酸アミドの配合量を表3に示すように変更した以外は実施例4と同様にして積層体を得た。結果は表3に示す通りであり、脂肪酸のビスアミドの配合量が3〜10重量%の場合(実施例11、12)に特に良好な接着力が得られた。
【0069】
【表3】
【0070】
[実施例14〜17、比較例5、6]
実施例4において、粗面化物質及びその添加量を表4に示すように変更して、ヘーズ値の異なるフィルムを得た。結果は表4に示す通りであり、ヘーズ値が1%を超える場合(比較例5、6)は、透明性が劣り、透明性が要求される表面保護材には不適当であった。これに対して、ヘーズ値が1%以下の本発明の積層体(実施例14〜17)は、良好な透明性と易滑性を示した。
【0071】
【表4】
【0072】
[実施例18]
実施例5で得た易接着性ポリエステルフィルムの塗膜上に、下記組成からなるUV硬化系組成物をロールコータを用いて、硬化後の膜厚が5μmとなるように均一に塗布した。
【0073】
[UV硬化系組成物]
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20wt%
N―メチロールアクリルアミド 40wt%
トリメチロールプロパントリアクリレート 25wt%
N―ビニルピロリドン 10wt%
P―フェノキシジクロロアセトフェノン 5wt%
【0074】
その後、80W/cmの強度を有する高圧水銀灯で、30秒間、紫外線を照射して、硬化させ、ハードコート層を形成した。このときの積層力は4であった。このハードコート層の上に、高屈折率層(ITO、20nm)、低屈折率層(AlSiO、20nm)、高屈折率層(ITO、80nm)、低屈折率層(AlSiO、88nm)をこの順にスパッタリングによって形成した。得られた積層体は、ヘーズ値が◎、反射率が0.7%で反射が少なく耐摩耗性も良好であった。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、接着力に優れ、表面硬度、耐摩耗性等が良好であり、しかも十分な透明性、反射防止能を備えたポリエステルフィルム積層体を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステルフィルム積層体に関し、更に詳しくは窓ガラス、ショーケース、メガネ、計器類、ディスプレイ、ランプなどの表面保護材に適したポリエステルフィルム積層体に関する。
【0002】
【従来の技術】
ポリエステルフイルム、特にポリエチレンテレフタレートやポリエチレンナフタレートの二軸延伸フィルムは、優れた機械的性質、耐熱性、耐薬品性を有するため、種々の用途に広く用いられている。
【0003】
特に、近年、窓ガラス、ショーケース、メガネ、計器類、ディスプレイ、ランプなどの表面保護材としての用途が注目されており、かかる用途では表面硬度、耐摩耗性などに優れていると共に、十分な透明性、反射防止能を有していることが要求される。
【0004】
このような要求を満たすために、ポリエステルフィルムにハードコート(HC)層、アンチレフレクション(AR)層を積層することが試みられているが、ポリエステルフィルムとの接着性が不十分であることから満足な結果が得られていない。
【0005】
このようなポリエステルフィルムの接着性を改善する方法としては、例えば、インモールド用転写フィルムのベースフィルムに二次転移点が40〜85℃の水性ポリエステルの被膜を形成してメジューム層との接着性を向上させる方法が知られている(特開平7―156358号公報)。
【0006】
しかしながら、この方法では、インモールド用転写フィルムにおけるベースフィルムとメジューム層との接着性は向上するものの、その他の用途における接着性は十分満足できるレベルまで改善されないことが多い。
【0007】
一方、平坦、易滑性ポリエステルフィルムを得る目的で、ポリウレタン又はアクリル系樹脂と脂肪酸アミド又はビスアミドを含む組成物からなる塗膜をポリエステルフィルムの表面に形成することも知られている(特開昭63―194948号公報)。
【0008】
しかし、脂肪酸アミド又はビスアミドを用いることによって、接着性が向上することについては示唆されていない。
【0009】
更に、ポリエチレンテレフタレート層にポリエステル樹脂層を形成し、その上に特定組成の放射線硬化性層を形成することにより、表面硬度や耐摩耗性などの良好な積層体を得ることも知られている(特公平7―80281号公報)が、特殊な硬化性層を用いるため汎用性がなく、しかも接着性の点でも十分満足できるものではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、かかる従来技術の問題点を解消し、接着性に優れ、表面硬度、耐摩耗性等が良好であり、しかも十分な透明性、反射防止能を備えたポリエステルフィルム積層体を提供するものである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、ポリエステルフィルムの表面に、水性ポリエステルと脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドを主成分とする組成物からなる塗膜を形成して、ハードコート層、アンチレフレクション層を積層すればよいことを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、二次転移点が40〜85℃の水性ポリエステルと脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドとを主成分とする組成物からなる塗膜が形成され、更に該塗膜の少なくとも1面の上にハードコート層及びアンチレフレクション層がこの順に形成されており、かつヘーズ値が1%以下であることを特徴とするポリエステルフィルム積層体である。以下、本発明について更に詳細に説明する。
【0013】
[ポリエステルフィルム]
本発明においてポリエステルフィルムを構成するポリエステルとは、芳香族二塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体とから合成される線状飽和ポリエステルである。かかるポリエステルの具体例として、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ(1,4―シクロヘキシレンジメチレンテレフタレート)、ポリエチレン―2,6―ナフタレンジカルボキシレート等が例示でき、これらの共重合体またはこれと小割合の他樹脂とのブレンド物なども含まれる。
【0014】
これらのポリエステルには、必要により、適当なフィラーを含有させることができる。このフィラーとしては、従来からポリエステルフィルムの滑り性付与剤として知られているものが挙げられるが、その例を示すと炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、カーボンブラック、炭化珪素、酸化錫、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が挙げられる。さらにポリエステル中には、着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒等も適宜添加することができる。
【0015】
ポリエステルフィルムは、かかるポリエステルを常法により溶融押出して、フィルム状とし、必要に応じて延伸、熱処理することにより得ることができる。特に二軸延伸したフィルムが好ましい。
【0016】
[水性ポリエステル]
本発明のポリエステルフィルム積層体においては、上記ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、水性ポリエステルと脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドを主成分とする組成物からなる塗膜が形成されている。
【0017】
この塗膜を形成する一成分である水性ポリエステルは、二次転移点(Tg)が40〜85℃、好ましくは45〜80℃のものである。水性ポリエステルの二次転移点(Tg)が40℃未満の場合、得られたフィルムは耐熱性が低くなり、また耐ブロッキング性が劣るので不利であり、一方85℃を超えると接着性が劣るので望ましくない。
【0018】
上記水性ポリエステルは、水に可溶性又は分散性のポリエステルである。かかる水性ポリエステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6―ナフタレンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4′―ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、5―Naスルホイソフタル酸、トリメリット酸、ジメチロールプロピオン酸等のポリカルボン酸成分とエチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4―ブタンジオール、1,6―ヘキサンジオール、1,4―シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAのアルキレンオキシド付加物等のポリヒドロキシ化合物成分とから製造されるポリエステルを挙げることができる。
【0019】
上記水性ポリエステルは、さらに親和性を付与することが必要な場合、ポリエステル中にSO3 Na基やCOONa基を導入してもよく、またポリエーテル成分を導入することもできる。
【0020】
[脂肪酸のアミド、脂肪酸のビスアミド]
また、上記脂肪酸のアミド、脂肪酸のビスアミドはそれぞれR1 CONH2 、R1 CONHR3 NHOCR2 で表されるものであり、R1 CO―及びR2 CO―は脂肪酸残基、―NHR3 NH―はジアミン残基である。この脂肪酸としては炭素数6〜22の飽和又は不飽和脂肪酸が好ましく、またこのジアミンとしては炭素数1〜15のジアミン、特にアルキレンジアミンが好ましい。また、ビスアミドとしては、炭素数が13〜15で分子量が200〜800のN,N´−アルキレンビスアミドが好ましい。
【0021】
更に具体的には、N,N′―メチレンビスステアリン酸アミド、N,N′―エチレンビスパルミチン酸アミド、N,N′―メチレンビスラウリン酸アミド、リノール酸アミド、カプリル酸アミド、ステアリン酸アミド等を例示することができる。これらのうち、特に下記式で示されるビスアミドが好ましく用いられる。
【0022】
【化2】
RCONH(CH2 )nNHOCR
(但し、RCO―は脂肪酸残基を示し、nは1又は2である。)
これらの脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドは、塗膜を形成する組成物中に、3〜10重量%含まれていることが好ましい。脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドの含有量が少なすぎると十分な接着力が得られず、滑り性、耐ブロッキング性が低下する傾向があり、逆に多すぎると、フィルムと塗膜との密着性が低下したり、塗膜の脆化を招いたりすると共に、ヘーズが高くなったりする。
【0023】
[塗膜]
本発明において、ポリエステルフィルム表面に形成される塗膜を構成する組成物は、さらに、平均粒径が0.15μm以下、特に0.01〜0.1μmの粗面化物質を含有していることが好ましい。
【0024】
この粗面化物質の具体例としては、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ケイ素、ケイ酸ソーダ、水酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化ジルコニウム、硫酸バリウム、酸化チタン、酸化錫、三酸化アンチモン、カーボンブラック、二硫化モリブデン等の無機微粒子、アクリル系架橋重合体、スチレン系架橋重合体、架橋シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、フェノール樹脂、ナイロン樹脂、ポリエチレンワックス等の有機微粒子などを例示することができる。これらのうち、水不溶性の固体物質は、水分散液中で沈降するのを避けるため、比重が3を超えない超微粒子を選ぶことが好ましい。
【0025】
これら粗面化物質は、塗膜表面を粗面化すると共に、微粉末自体による塗膜の補強作用があり、さらには塗膜への耐ブロッキング性付与作用、ポリエステルフィルムへの滑り性付与作用を奏する。
【0026】
この粗面物質は、塗膜を形成する組成物中に、5〜30重量%含まれていることが好ましい。特に、平均粒径が0.1μm以上の比較的大きな粒子を用いるときには5〜10重量%範囲から、また平均粒径が0.01〜0.1μmの粒子を用いるときには8〜30重量%の範囲内から選定するのが好ましい。これら粗面化物質の塗膜中の含有量が多くなり過ぎると、得られる積層体のヘーズ値が1%を超え、透明性が悪化するので注意を要する。
【0027】
本発明における上記組成物は、塗膜を形成させるために、水溶液、水分散液或いは乳化液の形態で使用される。塗膜を形成するために、必要に応じて、前記水性ポリエステル以外の他の樹脂、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤などを添加することができる。
【0028】
塗布液のポリエステルフィルムへの塗布は、任意の段階で行なうことができるが、ポリエステルフィルムの製造過程で行なうのが好ましく、さらには配向結晶化が完了する前のポリエステルフィルムに塗布液を塗布するのが好ましい。
【0029】
ここで、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムとは、未延伸フィルム、未延伸フィルムを縦方向または横方向の何れか一方に配向せしめた一軸配向フィルム、さらには縦方向および横方向の二方向に低倍率延伸配向せしめたもの(最終的に縦方向また横方向に再延伸せしめて配向結晶化を完了せしめる前の二軸延伸フィルム)等を含むものである。
【0030】
なかでも、未延伸フィルム又は一方向に配向せしめた一軸延伸フィルムに上記組成物の塗布液を塗布し、そのまま縦延伸及び/又は横延伸と熱固定とを施すのが好ましい。
【0031】
塗布液をフィルムに塗布する際には、塗布性を向上させるための予備処理としてフィルム表面にコロナ表面処理、火炎処理、プラズマ処理等の物理処理を施すか、あるいは塗膜組成物と共にこれと化学的に不活性な界面活性剤を併用することが好ましい。この界面活性剤は、ポリエステルフィルムへの水性塗液の濡れを促進するものであり、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン―脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、脂肪酸金属石鹸、アルキル硫酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩等のアニオン型、ノニオン型界面活性剤を挙げることができる。
【0032】
塗布液の塗布量は、塗膜の厚さが0.02〜0.3μm、好ましくは0.07〜0.25μmの範囲となるような量であるのが好ましい。塗膜の厚さが薄過ぎると、接着力が不足し、逆に厚過ぎると、ブロッキングを起こしたり、ヘーズ値が高くなったりする可能性がある。
【0033】
塗布方法としては、公知の任意の塗工法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法、カーテンコート法などを単独又は組合せて用いることができる。なお、塗膜は、必要に応じ、フィルムの片面のみに形成してもよいし、両面に形成してもよい。
【0034】
[ハードコート層]
本発明においては、上記塗膜を塗設したポリエステルフィルム(以下『易接着性ポリエステルフィルム』ということがある)の塗膜の少なくとも一面上にハードコート層を積層する。
【0035】
このハードコート層としては、放射線硬化系、シラン系など通常用いられるハードコート層が用いることができる。特に放射線硬化系のハードコート層が好ましく、なかでもUV硬化系のハードコート層が好ましく用いられる。
【0036】
ハードコート層の形成に用いられるUV硬化系組成物としては、ウレタン―アクリレート系、エポキシ―アクリレート系、ポリエステル―アクリレート系などのUV硬化性組成物が挙げられる。
【0037】
易接着性ポリエステルフィルムの塗膜上にハードコート層を積層するには、該塗膜上に組成物を塗布し、加熱、放射線(例えば紫外線)照射等により該組成物を硬化させればよい。ハードコート層の厚さは、特に限定されないが通常、1〜15μm程度が適当である。
【0038】
[アンチレフクション層]
このように形成したハードコート層の上に、更にアンチレフクション層を形成する。
【0039】
アンチレフクション層は、屈折率の異なる複数の層を交互に積層したもので、その構成は一般によく知られている。例えば、低屈折率層(SiO2 、30nm)―高屈折率層(TiO2 、30nm)―低屈折率層(SiO2 、30nm)―高屈折率層(TiO2 、100nm)―低屈折率層(SiO2 、100nm)の層構成を有するもの、高屈折率層(ITO、20nm)―低屈折率層(AlSiO、20nm)―高屈折率層(ITO、88nm)―低屈折率層(AlSiO、88nm)の層構成を有するもの、高屈折率導電層(ITO、20nm)―低屈折率層(SiO2 、20nm)―高屈折率導電層(ITO、93nm)―低屈折率層(SiO2 、93nm)の層構成を有するものなどが知られている。
【0040】
本発明においては、任意のアンチレフレクション層を適用することができ、通常、スパッタリングによってハードコート層上に積層される。
【0041】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。なお、以下の実施例、比較例において、ヘーズ値、接着力、耐摩擦性、反射率は下記の方法により評価した。
【0042】
(1)ヘーズ値
日本電色工業社製のヘーズ測定器(NDH―20)を使用してヘーズ値を測定した。ヘーズ値は次の基準で評価した。
◎: ヘーズ値≦0.5% …… ヘーズ値極めて良好
○:0.5%<ヘーズ値≦1.0% …… ヘーズ値良好
×:1.0%<ヘーズ値 …… ヘーズ値不良
【0043】
(2)接着力
易接着性ポリエステルフィルムの塗膜形成面に厚さ5μmのハードコート層を形成して碁盤目のクロスカット(1mm2 のマス目を100個)を施し、その上に24mm幅のセロハンテープ(ニチバン社製)を貼り付け、180度の剥離角度で急激に剥がした後、剥離面を観察し、下記の基準で評価した。
5:剥離面積が10%未満 ……接着力極めて良好
4:剥離面積が10%以上20%未満 ……接着力良好
3:剥離面積が20%以上30%未満 ……接着力やや良好
2:剥離面積が30%以上40%未満 ……接着力不良
1:剥離面積が40%を超えるもの ……接着力極めて不良
【0044】
(3)耐摩耗性
スチールウール#0000で表面を摩擦し、傷がつくかどうかを調べ、傷がつかないものを耐摩耗性良好、傷がつくものを耐摩耗性不良とした。
【0045】
(4)反射率
積層体面に対し、垂直の入射光束に対する反射光束の比を400nm〜570nmの波長の範囲で測定し、平均したものを反射率とする。
【0046】
[実施例1]
溶融ポリエチレンテレフタレート([η]=0.65)をダイより押出し、常法により冷却ドラムで冷却して未延伸フィルムとし、次いで縦方向に3.6倍に延伸した後、その片面に下記塗膜用組成物の濃度8%の水性液をロールコーターで均一に塗布した。
【0047】
[塗膜用組成物]
【0048】
その後、引き続いて95℃で乾燥しながら横方向に120℃で3.8倍に延伸し、220℃で熱固定して、厚さ40μmの易接着性フィルムを得た。なお、塗膜の厚さは0.15μmであった。
【0049】
次いで、塗膜上に、下記組成からなるUV硬化系組成物をロールコータを用いて、硬化後の膜厚が5μmとなるように均一に塗布した。
【0050】
[UV硬化組成物]
ペンタエリスリトールアクリレート 45重量%
N―メチロールアクリルアミド 40重量%
N―ビニルピロリドン 10重量%
1―ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 5重量%
【0051】
その後、80W/cmの強度を有する高圧水銀灯で30秒間紫外線を照射して硬化させ、ハードコート層を形成した。このときの接着力は4であった。
【0052】
このハードコート層の上に、低屈折率層(SiO2 、30nm)、高屈折率層(TiO2 、30nm)、低屈折率層(SiO2 、30nm)、高屈折率層(TiO2 、100nm)、低屈折率層(SiO2 、100nm)を、この順にスパッタリングによって形成した。
【0053】
得られた積層体は、ヘーズ値が◎、屈折率が0.7%で反射が少なく、スチールウールで強く摩擦しても傷がつかず、耐摩耗性も良好であった。
【0054】
[比較例1]
実施例1において、N,N′―エチレンビスカプリル酸アミドを含まない塗膜用組成物を用い、その他は実施例1と同一条件で積層体を作成した。積層体の評価結果を表2に示す。この積層体は、ヘーズ値、耐摩耗性、反射率は実施例1と同等であったが、実施例1と同様にして評価した接着力は2であり、接着力が劣るものであった。
【0055】
[実施例2〜9、比較例2〜4]
実施例1において、塗膜用組成物の組成を表1に示すように変更した以外は実施例1と同様にして積層体を得た。積層体の評価結果を表2に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
尚、表1において塗膜用組成物の記号(P、Q、R、S、T、A、B、C、D、G、H、YおよびZ)は、それぞれ下記の重合体または化合物であることを示す。
【0058】
[水性ポリエステル]
P:酸成分がテレフタル酸(90モル%)、イソフタル酸(6モル%)および5―スルホイソフタル酸カリウム(4モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(95モル%)およびネオペンチルグリコール(5モル%)の共重合ポリエステル(Tg=68℃)
【0059】
Q:酸成分が2,6―ナフタレンジカルボン酸(50モル%)、テレフタル酸(46モル%)および5―スルホイソフタル酸ナトリウム(4モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(70モル%)およびビスフェノールAのエチレンオキシド2モル付加物(30モル%)の共重合ポリエステル(Tg=80℃)
【0060】
R:酸成分がテレフタル酸(85モル%)およびイソフタル酸(15モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(57モル%)、1,4―ブタンジオール(40モル%)、ジエチレングリコール(2モル%)およびポリエチレングリコール(分子量600)(1モル%)の共重合ポリエステル(Tg=47℃)
【0061】
S:酸成分がテレフタル酸(70モル%)、イソフタル酸(28モル%)および5―スルホイソフタル酸ナトリウム(2モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(70モル%)およびビスフェノールAのエチレンオキサイド4モル付加物(30モル%)の共重合ポリエステル(Tg=30℃)
【0062】
T:酸成分が2,6―ナフタレンジカルボン酸(81モル%)、イソフタル酸(15モル%)および5―スルホイソフタル酸ナトリウム(4モル%)、グリコール成分がエチレングリコール(70モル%)およびビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物(30モル%)の共重合ポリエステル(Tg=90℃)
【0063】
[脂肪酸のアミド、脂肪酸のビスアミド]
A:N,N′―メチレンビススアテリン酸アミド
B:N,N′―エチレンビスパルミチン酸アミド
C:カプリル酸アミド
D:ステアリン酸アミド
【0064】
[粗面化物質]
G:アクリル系樹脂微粒子(平均粒径0.03μm)
H:シリカ(平均粒径0.12μm)
【0065】
[界面活性剤]
Y:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル
Z:ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレン共重合体
得られた結果は、表2に示す通りであった。
【0066】
【表2】
【0067】
実施例1、比較例1の結果および表2に示した結果から明らかなように、本発明の積層体(実施例1〜9)は透明性、接着力、耐摩耗性、反射防止能のいずれも良好であったが、二次転移点が85℃を越える水性ポリエステルを用いた場合(比較例2)は接着力が劣り、二次転移点が40℃未満の水性ポリエステルを用いた場合(比較例3)は接着力が不十分であると共に、ハードコート層形成前のフィルムの耐ブロッキング性が不十分であった。また、脂肪酸のアミド、脂肪酸のビスアミドを含まない場合(比較例4)は接着力が劣っていた。
【0068】
[実施例10〜13]
実施例4において、塗膜用組成物のN,N′―メチレンビスステアリン酸アミドの配合量を表3に示すように変更した以外は実施例4と同様にして積層体を得た。結果は表3に示す通りであり、脂肪酸のビスアミドの配合量が3〜10重量%の場合(実施例11、12)に特に良好な接着力が得られた。
【0069】
【表3】
【0070】
[実施例14〜17、比較例5、6]
実施例4において、粗面化物質及びその添加量を表4に示すように変更して、ヘーズ値の異なるフィルムを得た。結果は表4に示す通りであり、ヘーズ値が1%を超える場合(比較例5、6)は、透明性が劣り、透明性が要求される表面保護材には不適当であった。これに対して、ヘーズ値が1%以下の本発明の積層体(実施例14〜17)は、良好な透明性と易滑性を示した。
【0071】
【表4】
【0072】
[実施例18]
実施例5で得た易接着性ポリエステルフィルムの塗膜上に、下記組成からなるUV硬化系組成物をロールコータを用いて、硬化後の膜厚が5μmとなるように均一に塗布した。
【0073】
[UV硬化系組成物]
ペンタエリスリトールトリアクリレート 20wt%
N―メチロールアクリルアミド 40wt%
トリメチロールプロパントリアクリレート 25wt%
N―ビニルピロリドン 10wt%
P―フェノキシジクロロアセトフェノン 5wt%
【0074】
その後、80W/cmの強度を有する高圧水銀灯で、30秒間、紫外線を照射して、硬化させ、ハードコート層を形成した。このときの積層力は4であった。このハードコート層の上に、高屈折率層(ITO、20nm)、低屈折率層(AlSiO、20nm)、高屈折率層(ITO、80nm)、低屈折率層(AlSiO、88nm)をこの順にスパッタリングによって形成した。得られた積層体は、ヘーズ値が◎、反射率が0.7%で反射が少なく耐摩耗性も良好であった。
【0075】
【発明の効果】
本発明によれば、接着力に優れ、表面硬度、耐摩耗性等が良好であり、しかも十分な透明性、反射防止能を備えたポリエステルフィルム積層体を提供することができる。
Claims (5)
- ポリエステルフィルムの少なくとも片面に、二次転移点が40〜85℃の水性ポリエステルと脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドとを主成分とする組成物からなる塗膜が形成され、更に該塗膜の少なくとも1面の上にハードコート層及びアンチレフレクション層がこの順に形成されており、かつヘーズ値が1%以下であることを特徴とするポリエステルフィルム積層体。
- 組成物が脂肪酸のアミド及び/又は脂肪酸のビスアミドを3〜10重量%含有する請求項1記載のポリエステルフィルム積層体。
- 組成物が水性ポリエステルと脂肪酸のビスアミドを主成分とするものである請求項1又は2記載のポリエステルフィルム積層体。
- ハードコート層が、放射線硬化ハードコート層である請求項1〜4のいずれか1項に記載のポリエステルフィルム積層体。
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