JP3581616B2 - 積層フィルム - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光酸化触媒として使用されるチタン酸化物含有層を設けた積層フィルムに関し、さらに詳しくはチタン酸化物含有層とポリエステルフィルムの接着性に優れた積層フィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
チタン酸化物は、それ自体が光半導体であり、そのバンドギャップ以上のエネルギーを持つ光、例えば紫外線を照射されると伝導帯に電子が集積し、価電子帯には正孔(ホール)が生じる。この集積電子および正孔によって生じる電子移動に基づく酸化還元作用により大気中の有機物を分解し、殺菌効果を示すという光触媒活性が知られており、この殺菌効果を工業的に利用する試みが種々行われている。
【0003】
しかし、光活性触媒の高いチタン酸化物層を例えばポリエステルフィルムなどの基材の表面に形成させることは困難である。
【0004】
従来行われている方法は、1つには純チタン板状体の表面を空気酸化または陽極酸化してチタン酸化物膜を形成するものであるが、この方法は酸化方法が難しい割に良好な機能が得られにくい欠点がある。
【0005】
別の方法として基材表面にチタン酸化物をCVD法で蒸着させたりプラズマ照射を行う方法(特開平6−210170号公報)も知られているが、いずれもコストの高い方法であり、また基材の種類によって適用することができない欠点がある。
【0006】
さらに、チタン酸化物粉末をバインダーと呼ばれる接着剤を介して基材に付着させる方法も試みられているが、チタン酸化物の光触媒作用によりバインダー自体が酸化分解され、数ヶ月の後には基材から脱落してしまい工業用途の使用に耐えられない問題がある。
【0007】
近年、チタンのアルコキシドからゾルゲル法によってガラス管表面にチタン酸化物薄膜を形成させる方法が発表されている。この方法は、アルコキシドのアルコール溶液にある種の有機ポリマーを添加した溶液を基材に塗布し、加熱処理によって有機ポリマーを熱分解除去し、かつチタン酸化物の結晶化を行うというものであるが、出発原料が高価なものであることや高温での加熱処理が必須となっていることが問題点として残る。
【0008】
これらの問題に対し、チタン酸化物粉末を加水分解性ケイ素化合物の加水分解物からなる組成物をバインダーとして用いた方法(特開平8−164334号公報)が有効な方法として知られている。しかし、この方法で用いるバインダーは無機質(ガラス質)であり、前述の有機バインダーのようにバインダー自体の酸化分解の問題はないものの、プラスチック基材、特にポリエステルフィルムとの接着性が悪いという問題がある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、かかる問題を解消し、チタン酸化物からなる光触媒機能層と基材となるポリエステルフィルムとの接着性に優れ、かつ光触媒作用(例えば、表面の防汚効果、抗菌効果、起親水化効果)を奏する積層フィルムを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明のかかる目的は、本発明によれば、ポリエステルフイルムの少なくとも片面に(A)水性バインダー30〜80重量%、(B)水溶性高分子10〜40重量%、(C)平均粒径が20〜80nmの微粒子3〜25重量%及び、(D)下記式(1)で示される化合物5〜20重量%からなる成分を主成分とする塗膜を設け、該塗膜の上に平均粒径0.001〜0.5μmのチタン酸化物および下記式(2)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解物から構成される組成物を主成分とする光触媒機能層を設けた積層ポリエステルフィルムにより達成される。
【0011】
【化4】
Figure 0003581616
【0012】
【化5】
Figure 0003581616
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0014】
[ポリエステルフイルム]
本発明におけるポリエステルフイルムを構成するポリエステルは熱可塑性ポリエステルであり、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸成分と、例えばエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,6−ヘキサンジオール等のグリコール成分とから構成されるポリエステルが好ましく、特にポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタリンジカルボキシレートが好ましい。また、上記成分等の共重合ポリエステルであっても良い。
【0015】
ポリエステルにはフイルムを製造する際の巻取性、搬送性等を良くするため、必要に応じて滑剤としての有機又は無機の微粒子を含有させることが好ましい。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、尿素樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が例示される。また、微粒子以外にも着色剤、帯電防止剤、酸化防止剤、潤滑剤、触媒、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン−ポリマー、オレフィン系アイオノマーのような他の樹脂等もポリエステルフイルムの透明性を損なわない範囲で任意に含有させることができる。
【0016】
また、遮光性が要求される用途には顔料を配合したポリエステルフィルムを用いることが好ましく、TiO、BaSOやSiOの如き顔料を2〜20%配合した白色ポリエステルフィルムが特に好ましい。
【0017】
本発明におけるポリエステルフイルムは、150℃で30分間保持したときの熱収縮率が1%以下の二軸延伸フイルムであることが、ポリエステルフィルムを使用した際に寸法安定性が良好であり、加工後の取扱い性の点で好ましい。このような熱収縮率を有する二軸延伸フイルムは、例えば、二軸延伸後に熱固定やポリエステルのTg以上の温度での熱処理によりフィルムの密度を例えば1.390g/cm以上とすることにより得ることができる。
【0018】
[塗膜成分]
本発明の塗膜を構成する成分は、(A)水性バインダー、(B)水溶性高分子、(C))平均粒径が20〜80nmの微粒子(以下『(C)微粒子』と略記する)及び(D)前記式(1)で示される化合物(以下『(D)化合物』と略記する)を主成分とするものである。
【0019】
[(A)水性バインダー]
本発明において塗膜を形成する成分として用いる(A)水性バインダーとしては、(A−1)共重合ポリエステル、(A−2)共重合アクリル、(A−3)アクリル変性ポリエステル及び、(A−4)ポリウレタンを挙げることができる。
【0020】
(A−1)共重合ポリエステルは、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、4,4′−ジフェニルジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、5−スルホイソフタル酸、トリメリット酸、ジメチロールプロピオン酸等のカルボン酸成分及び5−Naスルホイソフタル酸、5−Kスルホイソフタル酸、5−Kスルホテレフタル酸等のスルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ネオペンチレングコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノール−Aのアルキレンオキシド付加物等のヒドロキシ化合物成分とから構成される共重合ポリエステルであって、水溶液、水分散液又は乳化液として使用される。
【0021】
(A−1)共重合ポリエステルでは、親水性を付与するための、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分が、分子内の全カルボン酸成分に対し、1〜16モル%共重合されていることが好ましい。スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分の共重合割合の下限は1.5モル%が特に好ましく、上限んは14モル%であることが特に好ましい。スルホン酸塩基を有するジカルボン酸成分が1モル%未満ではコポリエステルの親水性が不足し、一方16モル%を超えると塗膜の耐湿性が低下するので好ましくない。
【0022】
また、(A−1)共重合ポリエステルは二次転移点(Tg)が20〜90℃であることが好ましく、その下限は25℃、上限は80℃であることが特に好ましい。Tgが20℃未満ではフイルムがブロッキングしやすく、一方90℃を超えるとフイルムの削れ性や接着性が低下するので好ましくない。
【0023】
(A−2)共重合アクリルは、アクリル系モノマーを重合して得られる共重合体であり、アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ナトリウム、アクリル酸アンモニウム、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ナトリウム、メタクリル酸アンモニウム、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリルメタクリレート、ビニルスルホン酸ナトリウム、メタリルスルホン酸ナトリウム、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド等を例示することができる。これらのアクリル系モノマーは、例えばスチレン、酢酸ビニル、アクリロニトリル、メタクリルニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、ジビニルベンゼン等の他の不飽和単量体と併用することもできる。また、前記共重合アクリルとして、変性共重合アクリル、例えば前記共重合アクリルをポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、エポキシ、フェノール樹脂等で変性したブロック重合体、あるいはグラフト重合体としても用いることができる。
【0024】
(A−3)アクリル変性ポリエステルは、アクリル系樹脂成分で変性されたポリエステルであり、例えばポリエステルからなる水溶性または水分散性樹脂中においてアクリル系樹脂を共重合させることによって合成できる。
【0025】
かかるポリエステルを構成する成分として、以下の多塩基酸またはそのエステル形成性誘導体とポリオールまたはそのエステル形成性誘導体を例示できる。すなわち、多塩基酸成分としてはテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸等が挙げられる。これらの酸成分を2種以上を用いて共重合ポリエステル樹脂を合成する。また、若干量のマレイン酸、イタコン酸等の如き不飽和多塩基酸成分や、p−ヒドロキシ安息香酸等の如きヒドロキシカルボン酸を用いることができる。
【0026】
また、ポリオール成分としては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール等が挙げられる。これらは2種以上を用いることができる。
【0027】
更に、アクリル系樹脂成分としては以下に例示するビニル系モノマーが挙げられる。すなわち、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、N−アルキルメタクリルアミド、N,N−ジアルキルアクリルアミド、N,N−ジアルキルメタクリレート(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。)、N−アルコキシアクリルアミド、N−アルコキシメタクリルアミド、N,N−ジアルコキシアクリルアミド、N,N−ジアルコキシメタクリルアミド(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等が挙げられる。)、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド等のアミド基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸、スチレンスルホン酸及びその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、第三級アミン塩等が挙げられる。)等のガルボキシ基またはその塩を含有するモノマー、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物のモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アルキルイタコン酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーが挙げられる。これらのモノマーは1種あるいは2種以上を用いて共重合することができる。
【0028】
本発明においては、これら例示されたモノマーに限定されるものではない。
【0029】
これらの中、アクリル系樹脂成分で変性されたポリエステルは、アクリル系樹脂成分としてメチルメタクリレート/イソブチルメタクリレート/アクリル酸/メタクリル酸/グリシジルメタクリレートから構成される樹脂、ポリエステルとしてテレフタル酸/イソフタル酸/5−Naスルホイソフタル酸/エチレングリコール/ネオペンチルグリコールから構成される共重合ポリエステルからなる樹脂が好ましく挙げられる。
【0030】
(A−4)ポリウレタンは、通常手法によって水分散体用として作られたものから選択することができ、具体的には、以下のようなポリオール成分、ポリイソシアネート成分、鎖長延長成分、架橋成分等を原料とする通常の重合反応によって合成することができる。ポリオール成分としては、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール、ポリエーテルジオール等から適宜選択することができる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート系、ポリエチレンイソフタレート系、ポリエチレンシクロヘキサンジカルボキシレート系、ポリエチレンアジペート系、ポリヘキシレンアジペート、ポリカプロラクトンのようなポリエステル類、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシテトラメチレングリコールのようなポリエーテル類、アクリル系ポリオール、ひまし油などが挙げられる。ポリイソシアネート成分は、具体的には、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートのような脂肪族系ジイソシアネート等、トリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネートのような芳香族系ジイソシアネート等が挙げられる。鎖長延長剤または架橋剤としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヒドラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン、水などが挙げられる。これらに含まれる水分散性官能基ユニットは、構成される各ユニットでどのように導入させても良いが、例えば鎖長延長剤としてジメチロールプロピオン酸等を用い、カルボン酸を導入し、これを中和して塩とする方法等が用いられる。本発明で用いることができるポリウレタンは、上記に記載した範囲の構成単位からなる共重合ポリウレタンであることが好ましい。
【0031】
[(B)水溶性高分子]
本発明において塗膜を形成する成分として用いる(B)水溶性高分子は水に可溶な高分子化合物であり、100℃の熱水に5重量%以上可溶な高分子化合物が好ましく、ポリビニルアルコール(以下『(B)ポリビニルアルコール』ということがある)、ポリビニルピロリドン(以下『(B)ポリビニルピロリドン』ということがある)を特に好ましい例として挙げることができる。
【0032】
(B)ポリビニルアルコールは、ケン化度が75〜95mol%であることが好ましい。このケン化度が75mol%未満では塗膜の耐湿性が低下し、一方95mol%を超えると、平均粒径0.001〜0.5μmのチタン酸化物および前記式(2)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解物から構成される組成物を主成分とする光触媒機能層(以下『光触媒機能層』と略記する)に対する接着性が低下するので好ましくない。更に、ポリビニルアルコールはカチオン変性したものが、光触媒機能層に対する接着性が良好のため好ましい。また、ポリビニルピロリドンは、K価が26〜100であることが好ましい。K価が26未満では塗膜の強度弱いので好ましくない。また、K価が100を超えると光触媒機能層に対する接着性が低下するため好ましくない。また平均分子量が40000以下ではフィルムの塗膜の耐削れ性が低下するので好ましくない。
【0033】
[(C)微粒子]
本発明において塗膜を形成する成分として用いる(C)微粒子は有機又は無機の微粒子であり、粒径が20〜80nmのものである。かかる微粒子としては、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム、カオリン、酸化珪素、酸化亜鉛、架橋アクリル樹脂粒子、架橋ポリスチレン樹脂粒子、メラミン樹脂粒子、架橋シリコーン樹脂粒子等が例示される。該微粒子の粒径が20nm未満ではフイルムがブロッキングしやすく、一方80nmを超えると削れ性が低下するので好ましくない。
【0034】
[(D)化合物]
さらに、本発明においては、塗膜を形成する成分として(D)化合物を用いることにより、塗膜と光触媒機能層との接着性を強固なものとすることができる。
【0035】
[塗膜]
本発明において、塗膜構成成分の(A)水性バインダー、(B)水溶性高分子、(C)微粒子及び(D)化合物の配合割合は、(A)水性バインダーが30〜80重量%、(B)水溶性高分子が10〜40重量%、(C)微粒子が3〜35重量%、(D)化合物が5〜20重量%である。(A)水性バインダー成分の割合が30重量%未満ではポリエステルフイルムとの接着性が不足し、一方80重量%を超えると光触媒機能層に対する接着性が低下するので好ましくない。(B)水溶性高分子成分の割合が10重量%未満では光触媒機能層に対する接着性が不足し、一方40重量%を超えると積層フィルムの耐ブロッキング性が低下するので好ましくない。また、(C)微粒子成分の割合が3重量%未満ではフイルムの滑性(搬送性)が不足し、一方25重量%をこえると塗膜の削れ性が低下するので好ましくない。(D)化合物成分の割合が5重量%未満では光触媒機能層に対する接着性が不足し、一方20重量%を超えると積層フィルムの耐ブロッキング性が低下し、また塗膜とポリエステルフィルムとの接着性が低下するため好ましくない。
【0036】
尚、本発明の積層フイルムは、塗膜表面の中心線平均粗さ(Ra)が10nm〜250nmの範囲にあることが、塗膜とポリエステルフイルムとの接着性、塗膜と光触媒機能層に対する接着性、塗膜の耐削れ性、積層フィルムの耐ブロッキング性や搬送性が良好となるため好ましい。このようなRaを有する塗膜は、例えば塗膜成分として前記(C)微粒子を前記の割合で用いることにより得ることができる。
【0037】
本発明においては塗膜を形成する成分として、上記の成分以外にメラミン樹脂等の他の架橋剤樹脂、帯電防止剤、着色剤、界面活性剤、紫外線吸収剤等を使用することができる。
【0038】
[塗膜の積層]
本発明においては、ポリエステルフイルムの少なくとも片面に前記成分からなる塗膜を積層するが、例えば延伸可能なポリエステルフイルムに塗膜を形成する成分を含む水性液を塗布した後、乾燥、延伸し、必要に応じて熱処理することにより積層することができる。この水性液の固形分濃度は、通常30重量%以下であり、10重量%以下がさらに好ましい。
【0039】
上記の延伸可能なポリエステルフイルムとは、未延伸ポリエステルフイルム、一軸延伸ポリエステルフイルムまたは二軸延伸ポリエステルフイルムである。このうちフイルムの押出し方向(縦方向)に一軸延伸した縦延伸ポリエステルフイルムが特に好ましい。
【0040】
ポリエステルフイルムへ水性液を塗布する場合は、通常の塗工工程、即ち二軸延伸熱固定したポリエステルフイルムに該フイルムの製造工程と切り離した工程で行うと、芥、塵埃等を巻き込み易く好ましくない。かかる観点よりクリーンな雰囲気での塗布、即ちフイルム製造工程での塗布が好ましい。そして、この塗布によれば、塗膜のポリエステルフイルムへの密着性がさらに向上する。
【0041】
塗布方法としては、公知の任意の塗布法が適用できる。例えばロールコート法、グラビアコート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアーナイフコート法、含浸法及びカーテンコート法などを単独または組み合わせて用いることができる。塗布量は走行しているフイルム1m当り0.5〜20g、更に1〜10gが好ましい。水性液は水分散液又は乳化液として用いるのが好ましい。
【0042】
水性液を塗布した延伸可能なポリエステルフイルムは、乾燥、延伸処理工程に導かれるが、かかる処理は、従来から知られている条件で行うことができる。このうち特に好ましい条件としては、例えば乾燥条件は90〜130℃×2〜10秒であり、延伸温度は90〜130℃、延伸倍率は縦方向3〜5倍、横方向3〜5倍、必要ならば再縦方向1〜3倍であり、熱固定する場合は180〜240℃×2〜20秒である。
【0043】
かかる処理後のポリエステルフイルムの厚さは50〜150μmであること、また塗膜の厚さは0.02〜1μmであることが好ましい。
【0044】
本発明における塗膜層は、ポリエステルフィルムに対して優れた接着性を奏し、かつ光触媒機能層に対して優れた接着性を有する。
【0045】
[光触媒機能層]
本発明において光触媒機能層に用いられるチタン酸化物は、特定エネルギーを持つ光の照射で有機物の酸化還元に対して触媒作用を示すものであり、純粋なチタン酸化物の他、含水酸化チタン、水和酸化チタン、メタチタン酸、オルトチタン酸、水酸化チタンと呼ばれているものを含む。二酸化チタンまたはこれより低次酸化状態にあるものが特に好ましく用いられる。二酸化チタンの結晶型はアナターゼ型、ルチル型、フルッカイト型のいずれでもよくまたこれらの混合体でも良い。
【0046】
これらのチタン酸化物は微粉末状であり、その粒径は光触媒活性の強さから見て0.001〜0.5μmである必要がある。この微粉末は乾燥状態の粉末として用いても良いが、後述の加水分解性ケイ素化合物から誘導されるシリカバインダーと均一分散させるために予め分散体としておく事が望ましい。本発明の組成物中においてチタン酸化物が良好に分散されているか否かは塗膜を形成したときの光触媒機能に大きく影響してくる。
【0047】
チタン酸化物は種々の公知の方法で製造される。例えば1.硫酸チタニル、塩化チタン、有機チタン化合物などのチタン化合物を必要に応じて核形成種の存在下に加水分解する方法、2.硫酸チタニル、塩化チタン、有機チタン化合物などのチタン化合物に、必要に応じて核成形種の存在下にアルカリを添加し、中和する方法、3.塩化チタン、有機チタン化合物などを気相酸化する方法、4.上記1,2の方法で得られたチタン酸化物を焼成する方法などが挙げられる。特に、前記1,2の方法で得られたチタン酸化物は光触媒機能が高いため好ましい。光触媒機能を更に向上させるためにチタン酸化物表面に白金、金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの金属、酸化ルテニウム、酸化ニッケル等の金属酸化物を被覆しても良い。
【0048】
これらのチタン酸化物は水などの溶媒に高度に分散させて使用される。超微粒子となっているチタン酸化物を二次凝集させずに水などの溶媒と均一分散させておくためには、酸性またはアルカリ性として保存しておくことが好ましい。酸性下に置くときはpH0.5〜4、特に1〜3.5とするのが好ましい。分散媒体としては水の他、水とアルコールの混合物を用いても良い。
【0049】
[加水分解性ケイ素化合物]
本発明で用いられる前記式(2)で表わされる加水分解性ケイ素化合物としては、アルキルシリケート、ハロゲン化ケイ素及びこれらの部分加水分解物である。アルキルシリケートとしてはメチル、エチル、イソプロピルシリケートなどが用いられる。これらのシリケートはいずれも単量体もしくは部分加水分解によって生成するオリゴマーの形で用いられ、オリゴマーとしては一般式Sin−1(OR)2n+2(ただしnは2〜6,Rは炭素数1〜4のアルキル基)で表わされるアルキルシリケート縮合物が特に好ましい。これらのオリゴマーは混合物でも用いられる。
【0050】
部分加水分解するときの触媒としては酸、アルカリのいずれもが使用できる。チタン酸化物分散体が酸性のときは酸で加水分解したアルキルシリケートが好ましい。加水分解液の分散溶媒は水または炭素数が1〜4のアルコールが用いられる。酢酸エチルなどのエステル類は、組成物液を不安定にするので好ましくない。本発明において用いられるケイ素化合物及びその部分加水分解物は、チタン酸化物を結合させる目的で用いられるものであるので以下においてシリカバインダーと呼ぶ。
【0051】
チタン酸化物とシリカバインダーとの混合は、適宜に出来るが、一例を示すと酸性下にある所定量の二酸化チタン水性分散液を10〜50℃の液温に保持し、これに秤量したアルキルシリケートもしくは部分加水分解物を一定時間かけて滴下添加する。滴下終了後、1〜5時間撹拌下に反応させて組成物液を調製する。アルキルシリケートもしくは部分加水分解物添加の際にこれの加水分解触媒を同時に加えても良いし、二酸化チタン分散液中に存在する酸分を利用して加水分解を進めても良い。分散媒体としてアルコール系の媒体を用いる場合は、二酸化チタンの水/アルコール混合媒体分散液と、アルコール媒体中でアルキルシリケートもしくは部分加水分解物を50〜1500%加水分解した液とを撹拌下に混合して本組成物を得ることもできる。
【0052】
本発明において加水分解率とは、アルキルシリケート1モルに対し水2モルの割合で使用した場合を加水分解率100%として水の使用量によって算出したものである。一般式Sin−1(OR)2n+2の形の部分加水分解物を用いた場合は、この縮合体1モルに対し水n+1モルの割合で使用した場合を加水分解率100%として算出した。
【0053】
本発明の組成物中のチタンとシリカとの割合は、各々二酸化チタンと二酸化ケイ素に換算した重量比(TiO/SiO)で96/4〜30/70とすることが好ましい。シリカの割合が70%を超えるとチタン酸化物の光触媒機能が小さくなってしまい、実用性が乏しくなる。これはチタン酸化物粒子表面を覆うシリカの割合が大きくなり、チタン酸化物と酸化分解されるべき物質との接触を妨害することになるからと思われる。一方、シリカの混合割合が4%以下であると基材及びチタン酸化物同士の接着強度が充分でなく指触や振動で容易に脱落してしまい、塗膜として工業的に使用しにくいものになる。シリカのさらに好ましい割合は10〜50%である。
【0054】
本発明の組成物中の固形分濃度は重量で30%以下である。ここで固形分とは全組成物中におけるチタン酸化物とシリカの合計量を言い、チタン酸化物は二酸化チタンに、シリカは組成物中のアルキルシリケートもしくはそのオリゴマー中のケイ素(Si)分をSiO2に換算した値を用いる。その他の成分は水分及び/または有機溶媒が主体であり、組成物を基材面上へ塗布後、乾燥により実質的に除去されるべきものである。好ましい固形分濃度は5〜20%であり、5%以下になると基材との接着性は強固になるが塗膜の厚さ、つまり二酸化チタン量が不十分で光触媒機能を充分発揮できる塗膜を形成できない。二層塗り、三層塗りで塗膜厚さを厚くする事は可能であるが、通常は固形分濃度をわざわざ低くして手間の掛かる二層塗りをするメリットは出てこない。しかし、光触媒機能を犠牲にしても強固な薄い塗膜を必要とする場合など特殊な用途には用いることができる。
【0055】
一方、固形分濃度が30%を超えると組成物中の固形物の分散性が悪くなり、組成物の保存安定性が著しく低下し、僅かな日数でゲル化が生じ易くなる。また、このような高濃度になると成膜性も悪く、形成された被膜の基材との接着性が大きく低下し、指で擦ると剥離してしまうようになるので好ましくない。
【0056】
本発明の組成物には少量のチタンアルコキシド、四塩化チタンを加えても良い。又チタン、或いはシランカップリング剤などを加えても良い。更に、組成物の安定性確保及び濡れ特性を改善するために各種界面活性剤を加えても良い。また、アルコキシ基を2個以上含むアルキシランもしくはハイドロシランを少量添加しても良いがこれらチタン、シランの化合物は固形分算出の際のシリカ換算に加えるものとする。
【0057】
[光触媒機能層の積層]
本発明における光触媒機能層は、ポリエステルフィルムの塗膜(架橋プライマー層)を設けた面に更に積層されるが、その方法は光触媒機能層の成分を含む塗液を塗布する方法が好ましい。
【0058】
すなわち、光触媒機能層の成分を含む塗液は、基材フィルムの塗膜(架橋プライマー層)を設けた面に塗布され、乾燥、場合によって低温焼成されて塗膜化される方法が好ましい。塗布方法は塗布すべき基材の形状によってスピンコーティング、スプレーコーティング、バーコート、ディップ法などが適宜に使用される。光触媒機能層の厚さは0.1〜3μm、特に0.3〜2μmが適当である。チタン酸化物の光触媒活性は、表面に露光し酸化分解されるべき化合物と接触可能なチタン酸化物の量に関係するので本来は光触媒機能層の厚さは関係ないが、現実には光触媒機能層の厚さに不均一な部分が生じるので、また粒子の分散は必ずしも理想とするような均一な状態とはならないので、余り薄くすると光触媒機能層表面上のチタン酸化物の量が少なく光触媒活性が充分でないので前記程度の厚さにすることが好ましい。このような厚さであると光触媒機能層を透明にすることも可能であり、基材の持つ透明性や色などを損なうことなく、その表面に光活性を持つ被膜を形成することが出来る。
【0059】
上記の方法で設けられた光触媒機能層は100〜180℃の乾燥によって、爪でこすっても容易に剥離しない強固な被膜を形成することができる。
【0060】
これに対し、ポリエステルフィルム上に光触媒機能層を直接塗設した場合、得られた塗膜はセロテープなどを貼り付け、剥離すると容易にポリエステルフィルムから剥離してしまい、その後の加工、さらには製品として使用されることを考えると光触媒機能層の脱落による光触媒活性機能が損なわれる可能性が高い。
【0061】
[中間層]
さらに、本発明において、塗膜と光機能触媒層との間に前述の式(2)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解物からなる層(以下『中間層』という)を設けると、光触媒作用による塗膜の酸化分解を防止することができ、積層フィルムの長期耐久性を向上させることができるので好ましい。
【0062】
かかる加水分解性ケイ素化合物は、前述の光触媒機能層を構成する加水分解性ケイ素化合物と同一または同種のものであり、また層を設ける方法も同様の方法で実施することができる。
【0063】
かかる中間層を設けることにより、塗膜と光触媒機能層との接着性をさらに向上させる効果が得られる。
【0064】
本発明の積層フィルムは、その光触媒活性と各層間の接着性、および耐久性が優れることにより極めて広い種々の用途に利用することができる。例えば、表面に付着した有機物や微生物を分解除去する目的でガラスや金属表面を保護するフィルムとして使用できる。また、壁材などに貼合せると、壁面を自動浄化できるため病院などの壁面の殺菌効果が期待できる。さらには、鏡や窓ガラスに貼り合せるだけで水滴による曇り防止にも適用できる。
【0065】
これらの用途のために、ガラス、金属、プラスチックなどの種々の対象物との貼合せや接着には、公知の粘着剤や接着剤を使用することができ、光触媒活性機能を持つ保護フィルムとして、すでに設置されている構造物に対する適用に特に有用である。
【0066】
【実施例】
以下、実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明する。なお、例中の「部」は重量部」を意味する。また、積層フィルムの特性は以下の方法で測定、評価した。
【0067】
(1)接着性
フィルムの光触媒機能層塗膜面に、セロテープを貼り付け、ゴムロールで圧着した後、フィルム面を垂直にかつすばやくセロテープを剥離した。この操作を5回繰り返し、下記の基準で評価した。
◎ :5回とも塗膜の脱落がない。
○ :1回塗膜の脱落がある。
△ :2回塗膜の脱落がある。
×〜△:3回塗膜の脱落がある。
× :4回塗膜の脱落がある。
×× :5回とも塗膜の脱落がある。
なお、1mW/cmの紫外線を1ヶ月間照射した後のフィルムについても上記と同じ評価をした結果、5回とも塗膜の脱落がなかったものに対しては、◎を付した。
【0068】
(2)アルデヒド分解性
サンプルを0.8リットルのガラス容器に入れ、悪臭成分であるアセトアルデヒドが100ppmの濃度となる量をガラス容器に導入し密封した。次に30分間紫外線を照射せずに30分間維持した後、サンプル表面での紫外線強度が1mW/cmとなる量ブラックライト光を照射した。60分間照射後、ガラス容器中のアセトアルデヒドの濃度を測定し、下記の基準で評価した。
◎:25ppm未満
○:25ppm以上50ppm未満
△:50ppm以上75ppm未満
×:75ppm以上
【0069】
(3)防曇性
500mlビーカーに100mlの水を入れ、30℃で保持した状態で、サンプルフィルムを、光触媒機能層が内側になるようにしてビーカーのふたをして、室内の温度を8℃以下に保ち、7日間観察し下記の基準で評価した。
○:フィルム表面に曇りがなかった。
×:フィルム表面に曇りが発生した。
【0070】
(4)摩擦係数
ASTM・D1894―63に準じ、東洋テスター社製のスリッパ―測定器を使用し、フイルムの表面と裏面を合わせ、荷重1kgを加えて静摩擦係数を測定した。摩擦係数が0.6を超えるとフイルム搬送性に支障をきたす。
【0071】
(5)ブロッキング性
50mm幅に切断したフイルムを2枚重ね、4.8Mpaの荷重下40℃×50%RH×17時間処理した後、引張り試験機にて荷重を加えた箇所の剥離強度(g/50mm)を測定した。剥離強度の値により下記の通り評価した。
Figure 0003581616
【0072】
(6)二次転移点
デュポン製 Thermal Analyst 2000型 示差熱量計にて、20℃/分の昇温速度にて測定した。
【0073】
(7)固有粘度
オルソクロロフェノール溶媒による溶液の粘度を35℃にて測定し求めた。
【0074】
(8)耐湿性
前記ブロッキング性の評価において、処理条件を60℃×70%RH×17時間としたほかは同様の方法で剥離強度(g/50mm)を測定した。測定結果より下記の通り評価した。
Figure 0003581616
【0075】
(9)熱収縮率
ポリエステルフイルムを150℃×30分熱処理した後の収縮率を標点間距離30cmで測定した。
【0076】
(10)中心線平均粗さ(Ra)
JIS B0601に準じて、(株)小坂研究所製の高精度表面粗さ計SE−FATを使用して、針の半径2μm、荷重30mgで拡大倍率5万倍、カットオフ0.08mmの条件下に、チャートを描かせ表面粗さ曲線からその中心線方向に測定長さLの部分を抜きとり、この抜きとり部分の中心線をX軸、縦倍率の方向をY軸として、粗さ曲線をY=f(x)で表した時、次式で与えられた値をnm単位で表わした。
【0077】
【数1】
Figure 0003581616
【0078】
この測定は基準長を1.25mmとして、4個測定し、平均値で表わした。
【0079】
[実施例1]
テレフタル酸成分及びエチレングリコール成分からなるポリエステル(固有粘度が0.62)を20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押し出しして未延伸フイルムとし、次に該未延伸フイルムを機械軸方向に3.6倍延伸した後、水性バインダーとして、共重合ポリエステル(酸成分がテレフタル酸[60モル%]、イソフタル酸[36モル%]および5―Naスルホイソフタル酸[4モル%]、グリコール成分がエチレングリコール[70モル%]およびネオペンチルグリコール[30モル%]よりなる共重合ポリエステル:Tg=40℃、以下、『E』と略記する)51重量%、ケン化度86〜89モル%のポリビニルアルコール20重量%、平均粒径40nmの架橋アクリル樹脂粒子10重量%、下記式(3)で示される化合物(以下、『O』と略記する)10重量%並びにポリオキシエチレンラウリルエーテル9重量%からなる組成の、固形分濃度4重量%の水性液をロールコーターにて塗布した。次いで、水性液を塗布した縦延伸フイルムを乾燥しつつ横方向に4倍延伸し、更に230℃で熱固定して厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフイルムを得た。このフイルムで塗膜(プライマー層)の厚さは0.03μm、中心線平均表面粗さは15nm、熱収縮率は縦方向で0.9%、横方向で0.2%であった。
【0080】
【化6】
Figure 0003581616
【0081】
得られたフィルムのプライマー層の上に、加水分解性ケイ素化合物の加水分解物としてエチルシリケートを部分加水分解した塗布液(コルコート103X,コルコート株式会社製)を塗布液にして5g/mの塗布量でコーティングし、150℃で1分間乾燥して中間層を設けた。さらに中間層上に、平均粒径0.07〜0.1μmのアナターゼ型二酸化チタンとエチルシリケートの組成物として、TiO/SiOに換算して50重量%/50重量%となる割合の組成物を溶媒に溶解し、固形分濃度10%の溶液とした塗布液(ST−K03、コルコート株式会社製)を塗布液にして5g/mの塗布量でコーティングし、150℃2分間乾燥し、光触媒機能層を積層したフィルムを得た。この積層フィルムの特性を表1に示す。
【0082】
[比較例1]
塗膜(プライマー層)と中間層を塗設しない以外は、実施例1と同様にして得た積層フィルムの特性を表1に示す。
【0083】
[実施例2〜16及び比較例2〜5]
塗膜用組成物の種類と比率を表1に示すように変える以外は、実施例1と同様にして積層フイルムを得た。このフイルムの特性を表1に示す。
【0084】
【表1】
Figure 0003581616
【0085】
[実施例17、18及び比較例6、7]
(C)微粒子の粒径を表2に示すように変えた外は実施例1と同様にして積層フイルムを得た。得られたフイルムの特性を表2に示す。
【0086】
【表2】
Figure 0003581616
【0087】
[実施例19、20及び比較例8、9]
(A)水性バインダー、(B)水溶性高分子、(C)微粒子および(D)化合物の比率を表3に示すように変えた外は実施例1と同様にして積層フイルムを得た。得られたフイルムの特性を表3に示す。
【0088】
【表3】
Figure 0003581616
【0089】
尚、表1および表3において水性バインダーの種類E、F、G及びH(注1)は、下記の化合物であることを示す。
E:テレフタル酸[60モル%]・イソフタル酸[36モル%]・5―Naスルホイソフタル酸[4モル%]/エチレングリコール[70モル%]・ネオペンチルグリコール[30モル%]の共重合ポリエステル(Tg=40℃)
F:メチルアクリレート[65モル%]、エチルアクリレート[28モル%]、2−ヒドロキシエチルメタクリレート[2モル%]、N−メチロールメタクリルアミド[5モル%]から作成された共重合アクリル(数平均分子量:248000)
G:アクリル系樹脂で変性されたポリエステルはアクリル系樹脂部分が40重量%でメチルメタクリレート[60モル%]、イソブチルメタクリレート[30モル%]、アクリル酸[5モル%]、メタクリル酸[2モル%]、グリシジルメタクリレート[3モル%]で構成され、ポリエステル部分が60重量%で酸成分としてテレフタル酸[60モル%]、イソフタル酸[30モル%]、5−ナトリウムスルホイソフタル酸[10モル%]、グリコール成分としてエチレングリコール[80モル%]、ネオペンチルグリコール[20モル%]で構成された樹脂
H:テレフタル酸[40モル%]・イソフタル酸[60モル%]/エチレングリコール[16モル%]・ジエチレングリコール[64モル%]・ネオペンチルグリコール[12モル%]からなるポリエステルポリオールに、鎖延長剤としてプロピオン酸ジメタノール[8モル%]、イソシアネートとしてイソホロンジイソシアネートを含有するポリウレタン
【0090】
また、表1において水溶性高分子の種類P、Q、R、T、U、WおよびX(注2)は、下記の化合物であることを示す。
P:ケン化度86〜89mol%のポリビニルアルコール
Q:ケン化度76〜82mol%のポリビニルアルコール
R:ケン化度91〜94mol%のポリビニルアルコール
T:K価26〜23、平均分子量40000のポリビニルピロリドン
U:K価90〜100、平均分子量1200000のポリビニルピロリドン
W:ケン化度74〜80mol%のカチオン変性ポリビニルアルコール
X:ケン化度86〜91mol%のカチオン変性ポリビニルアルコール
【0091】
表1において微粒子の種類MおよびN(注3)は、下記の化合物であることを示す。
M:平均粒径 40nmの架橋アクリル粒子
N:平均粒径 80nmのコロイダルシリカ粒子
表1において(D)化合物の種類(注4)で、Oは下記式(3)の化合物、Pは下記式(4)の化合物であることを示す。
【0092】
【化7】
Figure 0003581616
【0093】
【化8】
Figure 0003581616
【0094】
[実施例21]
ナフタレンジカルボン酸成分及びエチレングリコール成分からなるポリエステル(固有粘度が0.62)からなる組成物を20℃に維持した回転冷却ドラム上に溶融押し出しして未延伸フイルムとし、次に該未延伸フイルムを機械軸方向に3.6倍延伸した後、水性バインダーとして、共重合ポリエステル(酸成分がテレフタル酸[60モル%]、イソフタル酸[36モル%]および5―Naスルホイソフタル酸[4モル%]、グリコール成分がエチレングリコール[70モル%]およびネオペンチルグリコール[30モル%]よりなる共重合ポリエステル:Tg=40℃)51重量%、ケン化度86〜89モル%のポリビニルアルコール20重量%、平均粒径40nmの架橋アクリル樹脂粒子10重量%、前記式(3)で示される化合物(O)10重量%並びにポリオキシエチレンラウリルエーテル9重量%からなる組成の、固形分濃度4重量%の水性液をロールコーターにて塗布した。次いで、水性液を塗布した縦延伸フイルムを乾燥しつつ横方向に4倍延伸し、更に230℃で熱固定して厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフイルムを得た。このフイルムで塗膜(プライマー層)の厚さは0.03μm、熱収縮率は縦方向で0.9%、横方向で0.2%であった。
【0095】
得られたフィルムのプライマー層の上に、加水分解性ケイ素化合物の加水分解物としてエチルシリケートを部分加水分解した塗布液(コルコート103X,コルコート株式会社製)を塗布液にして5g/mの塗布量でコーティングし、150℃で1分間乾燥して中間層を設けた。さらに中間層上に、平均粒径0.07〜0.1μmのアナターゼ型二酸化チタンとエチルシリケートの組成物として、TiO/SiOに換算して50重量%/50重量%となる割合の組成物を溶媒に溶解し、固形分濃度10%の溶液とした塗布液(ST−K03、コルコート株式会社製)を塗布液にして5g/mの塗布量でコーティングし、150℃2分間乾燥し、光触媒機能層を積層したフィルムを得た。このフィルムはチタン酸化物からなる光触媒機能層との接着性は良好であった。
【0096】
[実施例22]
中間層を塗設しない以外は、実施例17と同様に積層フイルムを得た。この積層フィルムの特性は接着性が○となった以外は実施例17と同じ特性であった。
【0097】
[実施例23]
中間層を塗設しない以外は、実施例18と同様に積層フイルムを得た。この積層フィルムの特性は接着性が○となった以外は実施例18と同じ特性であった。
【0098】
【発明の効果】
本発明によれば、チタン酸化物からなる光触媒機能層と基材となるポリエステルフィルムとの接着性に優れ、かつ光触媒作用(例えば、表面の防汚効果、抗菌効果、起親水化効果)を奏する積層フィルムを提供することができる。

Claims (9)

  1. ポリエステルフィルムの少なくとも片面に(A)水性バインダー30〜80重量%、(B)水溶性高分子10〜40重量%、(C)平均粒径が20〜80nmの微粒子3〜25重量%及び、(D)下記式(1)で示される化合物5〜20重量%からなる成分を主成分とすると塗膜を設け、該塗膜の上に平均粒径0.001〜0.5μmのチタン酸化物および下記式(2)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解物から構成される組成物を主成分とする光触媒機能層を設けた積層フィルム。
    Figure 0003581616
    Figure 0003581616
  2. 塗膜と光触媒機能層との間に下記式(2)で表わされる加水分解性ケイ素化合物の加水分解物からなる層を設けた請求項1記載の積層フィルム。
    Figure 0003581616
  3. 塗膜の水性バインダーが共重合ポリエステル、共重合アクリル、アクリル変性ポリエステル、ポリウレタンである請求項1または2記載の積層フィルム。
  4. 塗膜の水溶性高分子がポリビニルアルコールおよび/またはポリビニルピロリドンである請求項1乃至3のいずれかに記載の積層フィルム。
  5. 塗膜の水溶性高分子がケン化度75〜95mol%のポリビニルアルコールである請求項1乃至3のいずれかに記載の積層フィルム。
  6. 塗膜の水溶性高分子がケン化度74〜91mol%でカチオン変性されたポリビニルアルコールである請求項1乃至3のいずれかに記載の積層フィルム。
  7. 塗膜の水溶性高分子のK価が26〜100で、かつ平均分子量が40000以上のポリビニルピロリドンである請求項1乃至3のいずれかに記載の積層フィルム。
  8. ポリエステルフイルムが、150℃で30分間保持したときの熱収縮率が1%以下の二軸延伸フイルムである請求項1乃至7のいずれかに記載の積層フイルム。
  9. ポリエステルフィルムがポリエチレンテレフタレートフィルムまたはポリエチレン−2,6−ナフタレートフィルムである請求項1乃至8のいずれかに記載の積層フイルム。
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