JP2000022212A - GaN単結晶基板及びその製造方法 - Google Patents

GaN単結晶基板及びその製造方法

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JP2000022212A JP18344698A JP18344698A JP2000022212A JP 2000022212 A JP2000022212 A JP 2000022212A JP 18344698 A JP18344698 A JP 18344698A JP 18344698 A JP18344698 A JP 18344698A JP 2000022212 A JP2000022212 A JP 2000022212A
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拓司 岡久
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 面積が広く反りが少なく自立できるGaN単
結晶基板を提供すること。 【構成】 GaAs(111)基板の上に千鳥型窓やス
トライプ窓を有するマスクを形成し、HVPE法または
MOC法により低温でGaNバッファ層を形成し、HV
PE法により高温でGaNエピタキシャル層を厚く形成
し、GaAs基板を除去する。GaNの自立膜を種結晶
としてHVPE法でGaNを厚付けしGaNインゴット
を作る。これをスライサーによって切断し研磨して透明
無色の反りの少ないGaNウエハを作る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、III-V族窒化物化
合物半導体(GaN系)を用いた発光ダイオード(LE
D)やレ−ザダイオード(LD)など青色発光素子用の
GaN単結晶基板、およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】図1はGaN成長のための基板となりう
る材料のGaNに対する格子定数と熱膨張率の比を示
す。サファイヤ(Al)、SiC、Si、GaA
s、ZnOなどが比較衡量される。窒化物系半導体発光
デバイス或いはGaN系発光デバイスは従来サファイヤ
基板の上にGaN薄膜などをエピタキシャル成長して作
られていた。サファイヤ(Al)基板は化学的に
安定であるし耐熱性もある。GaNと格子定数は16%
程度異なるもののバッファ層を形成することによりGa
Nがその上にエピタキシャル成長する。このような利点
があるからサファイヤ基板を使う。GaNなどの薄膜を
付けたあともサファイヤ基板は付いたままLED、LD
として用いられる。つまりサファイヤとGaNの複合的
な素子である。これは実用的な素子であって、サファイ
ヤ基板上のGaN系LEDは市販されている。またGa
N系LDも近く市販されるだろうと言われている。
【0003】サファイヤとGaNの格子定数は食い違
う。それにも拘らずサファイヤ基板上には実用的なGa
N素子が成長する。それは格子定数の緩和が滑らかに起
こるからである。図2はサファイヤ上のGaNの膜厚
と、格子定数変化の関係を示すグラフである。膜厚の変
化に従って格子定数がゆっくりと変化してゆく。いまな
お基板としてサファイヤがもっとも優れている。現在量
産されているものは全てGaN/Al構造を持
つ。このような構造は例えば次の文献に説明されてい
る。 特開平5−183189号 特開平6−260680号
【0004】ところがサファイヤ基板にもなお問題があ
る。サファイヤ基板上のGaNエピタキシャル層の欠陥
密度は極めて高い。これは格子のミスマッチからくるの
であろうか。なんと10cm−2もの欠陥密度があ
る。いわば欠陥だらけと言って良い。しかしそれにもの
拘らずGaNLEDは長寿命である。不思議な材料であ
る。だから高密度欠陥というのは結晶学的には問題であ
ろうが実際にはあまり問題でないとも言える。
【0005】しかしサファイヤにはもうひとつ機械的な
難点がある。サファイヤ(Al )は化学的に安定
で硬度が高い。化学的に安定ということは良いようであ
るがそうでもない。GaNを残し、基板だけをエッチン
グ除去できない。最も困るのは劈開性がないということ
である。それに硬い。GaN/サファイヤ基板をLED
チップに分割するときのダイシング加工が難しい。自然
劈開がないから刃物状のものを押し当てて破壊切断す
る。破損することもあり歩留まりは低い。
【0006】ダイシングを容易に行うためにSiCのよ
うな劈開性のある材料を基板にすることが考えられた。
SiC基板GaN素子は例えば Appl.Phys.Lett. vol.71, No.17 (1997) に提案されている。しかしSiCにも問題がある。化学
的に安定であり、作製のための処理温度が1500℃以
上にもなる。SiC基板自体の製造が難しい。まだ開発
段階を少し出た程度のレベルである。ために高価な基板
となり、GaN発光素子がコスト高になる。実際にはS
iCはGaN発光素子の基板としてあまり利用されてい
ない。SiC/GaN素子は量産規模では製造されてい
ない。
【0007】いずれにしても従来のGaN素子は、異種
基板の上にGaNを成長させたもので基板を除去しない
から、サファイヤが付いたままである。複合デバイスで
ある。
【0008】基板上にGaNをエピタキシャル成長させ
るには基板を1000℃以上の高温に加熱しなければな
らない。このような高温でないと気相反応が起こらな
い。GaNなどのエピタキシャル層を成長させた後温度
を下げると薄膜と基板との熱膨張係数の違いによる影響
が現れる。熱膨張係数は温度の関数であって一定でな
い。だから簡単に比較はできないがあらましの比較をす
ると次のようである。GaNの熱膨張係数を1とする
と、GaAsは約1.08倍、SiCは0.87倍、サ
ファイヤは1.36倍の熱膨張係数を持つ。
【0009】薄膜、基板間の熱膨張係数の違いによる第
1の問題は、GaN薄膜に熱応力が発生しGaN薄膜に
欠陥やマイクロクラックなどが入ってしまう事である。
熱膨張係数相違による第2の問題は、冷却時に反りが発
生するということである。ウエハ−の全体が反りによる
変形を受ける。第3の問題は大きい複合GaN基板がで
きないということである。サファイヤ基板にGaNの薄
膜を載せた複合物はGaN基板と言えない事はない。し
かし薄膜・基板間に熱膨張係数の差による熱応力や反り
が大きいために大型複合基板とすることができない。高
々数mm角のGaN/サファイヤによるGaN複合体が
報告されていただけである。とても工業的に利用可能な
大きさでない。
【0010】GaAs結晶を基板としてGaNを成長さ
せる試みが以前行われたことがある。しかしGaAs基
板には欠点があった。成長時の高温雰囲気でGaAs表
面からAsが蒸発する。GaAsがアンモニアと反応す
る。このような理由のためにGaAs基板上に良質のG
aN結晶を製造できなかった。ためにGaAs基板上の
GaN成長(GaN/GaAs)は殆ど有望視されてい
なかった。
【0011】現在も生き残っているのはGaN/サファ
イヤの素子だけである。であるからサファイヤ基板法を
より純化する、というのがひとつの開発のあり方になろ
う。いくら転位密度が高くても良い、LEDは長寿命だ
といっても、転位密度が低ければもっと長寿命かもしれ
ない。それに青色LDはいまだ満足できる寿命でない。
それはやはり高密度に存在する欠陥のせいかもしれな
い。サファイヤ基板でより低欠陥のGaNを成長させる
という試みがさらになされる。 電子情報通信学会論文誌C−II,vol.J81−
C−II,p58〜64これはサファイヤ基板にストラ
イプ状(縞状)のマスクをつけその上にGaNを厚膜成
長させたものである。縦縞(ストライプ)によって横方
向には分離された面からGaNが成長しやがてストライ
プを越えて合体する。そのようなストライプ成長によっ
て欠陥密度が大幅に減退したと報告している。欠陥密度
が減ったのであれば一つの成果である。しかしサファイ
ヤ基板上ストライプ成長法は他の問題に対して沈黙して
いる。あくまでサファイヤ上の成長で、サファイヤ基板
が付いたままである。頑固な無劈開の問題を解決してい
ない。無劈開だからダイシング工程が難しく歩留まりが
悪い。サファイヤがついたままであるから熱膨張係数の
差のため、GaN単結晶に転位、マイクロクラックが多
数導入される。また反りが無視できない。反りのためウ
エハ−プロセスに不適である、という問題もある。
【0012】熱膨張係数の差、格子定数の差は異種材料
を使う限り常につきまとう。最も理想的な基板はGaN
基板である。しかし広いGaN基板が存在しない。ウエ
ハ−として半導体製造工程に適するのは1インチ径以
上、好ましくは2インチ径以上のものが必要である。け
れどもそんな大きいGaN基板は入手不可能であった。
【0013】大型結晶を成長させるにはチョコラルスキ
ー法、ブリッジマン法などがあるがいずれも原料融液か
ら固体を凝固させる。融液から出発できるから大きい単
結晶を製造することができる。しかしGaNは加熱した
だけでは融液にならない。昇華して気体になってしま
う。Gaに少量のGaNを添加して、数万気圧の超高圧
を掛け加熱してGa−GaN融液とすることはできる。
しかし超高圧にできる空間は極極狭い。狭い空間で大き
い結晶を作ることはできない。大型の超高圧装置を製造
するというのでは余りにコスト高になって現実的でな
い。大型結晶を製造する方法が適用できないから、これ
まで大型のGaN結晶ができず、GaN基板も存在しな
かった。
【0014】GaN薄膜は薄膜成長法により作られる。
これらはいずれも気相から固相への反応である。サファ
イヤ基板の上に、GaN薄膜を成長させるため以下の4
つの方法が知られている。 1.HVPE法(ハイドライド気相成長法:Hydride Va
por Phase Epitaxy) 2.MOC法(有機金属塩化物気相成長法:metallorga
nic chloride method) 3.MOCVD法(有機金属CVD法:metallorganic
chemical vapor deposition) 4.昇華法
【0015】MOC法は、トリメチルガリウムTMGな
どGaの有機金属と、HClガスをホットウオール型の
炉内で反応させ一旦GaClを合成し、これと基板付近
に流したアンモニアNHと反応させ、加熱した基板の
上にGaN薄膜を成長させるものである。実際には水素
をキャリヤガスとして、有機金属ガス、HClガスの輸
送を行う。Ga原料として有機金属を用いるから炭素が
GaNの中に不純物として混入する。無色透明のGaN
結晶を得ることができるが、条件によっては炭素混入の
ため黄色を呈する場合もある。炭素のためにキャリヤ濃
度(自由電子)が増加し、電子移動度が低下する。炭素
のために電気特性も悪くなる。有機金属塩化物気相製法
は優れた方法であるが、なおこのような欠点がある。
【0016】MOCVD法はGaN薄膜成長法として最
も頻用される。コールドウオール型の反応炉において、
TMGなどGaの有機金属とアンモニアNHを水素ガ
スとともに、加熱された基板上に吹き付ける。基板上で
TMGとNHが反応しGaN薄膜ができる。この方法
は大量のガスを用いるので、原料ガス収率が低い。Ga
N薄膜成長法としてもっとも広く使われている手法であ
るが、MOC法と同じように炭素混入の問題がある。炭
素のため黄色に着色する。炭素がn型不純物となり電子
を出す。そうなると移動度が低い。電気特性が悪い。そ
のような難点がある。HVPE法はGa原料として金属
Gaを使う。ホットウオール型反応炉にGa溜を設けG
a金属を入れておく。Gaは融点が低いので30℃以上
でGa融液になる。そこへ水素ガス、HClガスを吹き
付けると、塩化ガリウムGaClができる。GaClが
キャリヤガスHによって基板の付近へ運ばれ、アンモ
ニアと反応してGaNが基板表面に堆積する。この方法
は金属Gaを使い炭素を原料中に含まない。炭素が薄膜
に混入しないから着色しない。電子移動度も低下しな
い、などの利点がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】GaN発光素子を作製
する基板はGaN単結晶が最も適する。大型GaN基板
がこれまで存在しなかった。これまで存在しなかった実
用に適する面積を有する大型GaN基板を提供すること
が本発明の第1の目的である。反りの少ないGaN基板
を提供する事が本発明の第2の目的である。
【0018】
【課題を解決するための手段】GaAs(111)単結
晶基板の上に[11−2]方向に等間隔で並び[−11
0]方向にも等間隔で分布する窓を有するマスクをつ
け、マスクの窓の部分に低温でGaNバッファ層を成長
させ、ついで高温にしてGaN層をバッファ層の上とマ
スクの上にHVPE法によってエピタキシャル成長さ
せ、GaAs基板を除去してGaN単結晶基板を製造す
る。これは1枚の基板を作る方法である。あるいはこの
単結晶基板を種結晶として、さらにその上にGaNエピ
タキシャル層を厚く形成して、少なくとも10mmの厚
みを有するGaNインゴットとし、これを切断或いは劈
開して複数のGaN基板とする。これが本発明のGaN
基板の製造方法である。GaAs基板は王水でエッチン
グすることによって除去できる。さらにGaNの表面は
研磨して平滑にする。このように薄膜の製造方法である
エピタキシャル成長法を利用して大型結晶を作ってしま
う。
【0019】本発明のGaN結晶の最大の特徴はその大
きさにある。本発明ではGaN基板の直径は1インチ以
上、好ましくは2インチ径以上とする。LEDなどの発
光素子を工業的に低コストで製造するためにはGaN基
板が広い方が良い。それで20mm直径以上好ましくは
1インチ(25mm)径以上、さらに好ましくは2イン
チ径以上とするのである。出発材料であるGaAs基板
が広ければ大面積のGaN結晶を製造できる。
【0020】これらの方法で作製したGaN基板は反
る。GaN基板単結晶の中に内部応力があるので反りが
発生する。反りは、デバイスを作るウエハ−プロセスに
おいて重大な障害になる。基板の反りを低減する必要が
ある。これら方法によるGaN作製の最大の課題は「反
りの低減」ということである。反り低減のため、本発明
者は成長プロセスを改良し、新たに基板を研磨すること
を提案する。 (1)成長プロセス改善…マスク形状を工夫したラテラ
ル成長 (2)研磨…多少の厚みがあれば反りがあっても研磨す
ることにより平坦化できる。 (3)表面研磨…反りを研磨によって取るので表面が所
定の結晶方位からずれることもある。結晶方位ズレを正
すためにも表面研磨する必要がある。表面粗さがなお大
きい場合も表面研磨する。こうして本発明者らは元々わ
ずかな反りの存在する状態で研磨処理した場合の表面の
結晶方位のずれを規定し、GaN単結晶基板としてある
べき結晶方位のずれを明確化した。
【0021】HVPE法を採用するのは、炭素が原料に
含まれないようにするためである。炭素がGaNに含ま
れないから黄色に殆ど着色しない。炭素によって電子が
キャリヤとして加わり電子移動度を下げるということも
ない。炭素が入らないから条件によって、GaNは無色
透明のウエハ−になる。実際本発明のGaNウエハ−を
文字の上におくと、下地の文字が透けて見える。まるで
ガラスのようである。しかし、GaAs基板側から蒸発
したAsなどの混入により薄い黄色、薄茶色、暗灰色を
帯びる場合もある。
【0022】
【発明の実施の形態】本発明のGaN製造はGaAs基
板から出発する。サファイヤではない。サファイヤ基板
は後から除去できない。ところがGaAs基板は王水で
時間を掛けて除去することができる。先に説明したよう
にGaAs基板に、GaNを成長させるのは困難で一旦
放棄された手法であった。しかし本発明者等はGaAs
基板上のGaN結晶の成長方法を確立した。それは特願
平10−07833号に述べている。
【0023】 GaNは六方晶系である。(0001)
面は六回対称性がある。GaAsは立方晶系であるから
(100)や(110)面は3回対称性を持たない。そ
こでGaAs(111)A面或いはB面を基板として用
いる。これは三回対称性のある軸に直交する面である。
A面というのはGa原子が露出している面である。B面
はAs原子の露呈している面である。
【0024】 図3はラテラル成長に使うマスクの一部
を示す。マスクは直接にはGaNが付かないようなSi
やSiOなどが良い。マスク厚みは100nm
〜数100nmである。等間隔に窓を有するマスクであ
る。窓は小さい正方形である。数μm直径の小さな窓で
ある。これは別段丸でも三角でも楕円、六角形などでも
良い。配列が重要である。窓は[11−2]方向に列を
なして並ぶ。間隔をLとする。それと直交する[−11
0]方向に隣接する列は半ピッチずれている。隣接列と
の距離をdとする。好ましくはd=31/2L/2とす
る。つまり正三角形の頂点に窓が配置されるのが最も良
い。例えば窓を1辺2μmの正方形とし、窓ピッチLを
6μm、列間隔dを5μmと言うようにすることもでき
る。そのような正三角形分布の窓が良いのは、図5のよ
うに隣接窓から成長したGaNが同時に境界を接するよ
うになるからである。しかしながら、dやLが多少上記
の式から外れても良い。このような孤立窓が平行に点列
になって並ぶものをドット型、ドットタイプと呼ぶ。ま
た平行連続窓を有するストライプ状の窓を有するマスク
でもGaNを成長させることはできる。
【0025】窓付きのマスク越しにGaNを成長させる
ラテラル成長法はつぎのような意味を持つ。マスクとG
aNが直接には結合しないから下地のGaAsと薄膜G
aNが結合するのは窓の部分だけである。通常のGaN
成長の場合には、バッファ層上で、数多くの核生成がな
され、互いに犇めき合って成長して行く。その際多くの
欠陥が導入される。しかし本発明のようにマスクがある
場合は、マスクからはみ出して横方向に成長する分を妨
害するものはない。妨害がないから殆ど欠陥なく成長す
ると考えられる。接触面積が狭いから高温で成長後、温
度を下げても熱応力が緩和される。全面積で密合してい
る場合に比較して窓だけでつながっているラテラル成長
層は熱応力がよほど小さくなる。それだけだとどのよう
な配列分布の窓でも良い事になる。そうではなくて、図
5のように正六角錐形状の結晶が同時に接触し、以後均
等な厚みに成長する可能性があるような窓分布が望まし
いのである。なお図4、5の正六角形は、六角錐結晶の
底部の形状を示したものである。
【0026】マスクをつけるにはGaAs基板の全体に
マスク材料を被覆し、フォトリソグラフィによって等間
隔に窓を開けるようにする。同じ状態を図6(1)に断
面によって示している。
【0027】この後比較的低温450℃〜500℃程度
で、HVPE法によって数10nm〜100nm程度の
薄いGaNバッファ層を形成する。マスクより薄いか
ら、バッファ層は窓内に孤立して存在する。図6(2)
はその状態を示している。
【0028】800℃〜1050℃程度の高温にして、
HVPE法でGaNエピタキシャル層を形成する。この
時バッファ層は結晶化する。図4のように孤立した窓で
核発生したGaN結晶は通常六角錐を形成する。核発生
後、六角錐が高さ方向と底部側方に次第に成長する。底
面は六角形状に広がり窓を埋める。やがてGaNはマス
クをこえて広がる。それも六角錐の形状を保持したまま
である。図5のように隣接窓からの結晶と接触し上に向
けて成長する。このエピタキシャル成長層の厚みによっ
て基板結晶の大きさが決まる。1枚のウエハ−は70μ
m〜1mmの厚みをもつのでその程度の厚みであれば良
い。これが図6(3)の状態である。上記のような成長
過程をとるので、成長表面は荒れていて擦りガラス状で
ある。透明とするためには研磨しなければならない。
【0029】さらに王水によってGaAs部分をエッチ
ング除去する。マスクの部分は研磨によって除く。図6
(4)の状態になる。これは1枚のGaN結晶である。
透明であり自立している。1枚のウエハ−だけを作るの
であればこれで終わりである。
【0030】さらに複数のウエハ−を製造したいのであ
れば、この基板を種結晶として、さらにエピタキシャル
成長させる。図7はこれを示す。図7(1)はGaN基
板の上にHVPE法によってさらに厚くGaNをエピタ
キシャル成長したものを示す。円柱径のGaNインゴッ
トになる。厚みは10mm以上とする。側面に支持部材
を固定し、内周刃スライサーなどによって1枚1枚ウエ
ハ−に切り出して行く。図7(2)はこれを示す。アズ
カットウエハ−を研磨して図7(3)のように透明平滑
なGaNウエハ−ができる。この場合、AsはGaN結
晶に混入しない。
【0031】本発明においてエピタキシャル成長に用い
るHVPE法を図8によって説明する。縦長の反応炉1
を円筒形のヒ−タ2が取り囲んでいる。反応炉1の上頂
部には原料ガス導入口3、4がある。原料ガス導入口3
からはHCl+Hの原料ガスが導入される。Hはキ
ャリヤガスである。その直下にはGa溜5がある。ここ
には金属Gaを収容しておく。融点が低いからヒ−タ2
によって加熱されGa融液6になる。HClがGa融液
に吹き付けられるから、Ga+HCl→GaClという
反応が起こり塩化ガリウムGaClができる。このGa
ClとキャリヤガスHの混合ガスが反応炉中の空間を
下方に運ばれる。原料ガス導入口4はより下方に開口す
る。アンモニアNH+水素Hの混合ガスがここから
反応炉内に導入される。GaClとNHにより、Ga
Cl+NH3→GaNの反応が起こる。
【0032】サセプタ7はシャフト8によって回転昇降
自在に設けられる。サセプタ7の上にはGaAs基板9
またはGaN基板が取り付けられる。基板は加熱されて
いるから気相反応した生成物GaNが基板の上に付着す
る。排ガスは排ガス出口10から排出される。HVPE
法はGa金属を原料として使う。そしてGaClを中間
生成物として作る。これが特徴である。
【0033】エピタキシャル成長は原料を気体にしなけ
ればならないがGaを含む気体というものはない。Ga
自体は30℃以上で液体である。気体にするため有機金
属を使うのがMOC法、MOCVD法である。これらの
方法では気体にはなるが炭素を含むからGaN結晶に炭
素が不純物として混入してしまう。これらと違ってHV
PE法は液体Gaを加熱してHClと反応させGaCl
にする。GaClが優勢な水素ガスによって気体として
運ばれるのである。有機金属を使わないから炭素が不純
物として結晶中に入らないという長所がHVPE法には
ある。
【0034】本発明によって作られたGaN単結晶基板
は、ノンドープであるがn型である。キャリヤ濃度は1
×1016cm−3程度である。n型の伝導性を与える
ものは原料ガスに微量含まれる酸素であることを本発明
者は見いだした。HVPE法炉中の酸素分圧を制御する
ことによってキャリヤ濃度を1×1016cm−3〜1
×1020cm−3の範囲で制御できる。酸素分圧を制
御することによって、電子移動度は80cm/Vs〜
800cm/Vsの範囲に調整できる。比抵抗は1×
10−4Ωcm〜1×10Ωcmの範囲で制御可能であ
る。またキャリヤ濃度は成長条件によっても変えられ
る。
【0035】こうして作られたGaN基板には優れた特
徴がある。広い。自立膜である。透明である。無色であ
る、などの性質である。ただし成長条件により黄色、薄
茶色、暗灰色を帯びることがある。光デバイス用基板と
しては光の吸収が少ないことが要件である。だから無色
透明であることは、GaN基板として重要なことであ
る。しかしながらそれだけでは不十分である。まだまだ
問題がある。それはなにか?歪と内部応力の問題であ
る。内部応力が大きいと反りが甚だしくなりフォトリソ
グラフィなどウエハ−プロセスに支障を来す。
【0036】加熱したGaAs基板の上にGaNを成長
させて常温に下ろして装置から複合体を取り出す。熱膨
張係数が違うから、降温することによって歪が異なる。
図9のようにGaN/GaAs複合体が撓む。GaNに
は応力が発生している。GaAsにも反対向きの応力が
発生している。応力には2種類のものがある。熱応力と
真性応力である。熱応力は熱膨張係数の異なる二つの異
質材料が貼り合わされているときに温度変化があること
によって発生するものである。
【0037】もしも熱応力だけだとすると、GaAs基
板を除去すると熱応力も消失する。それゆえ図10のよ
うにGaNは平坦になる筈である。真性応力があるとそ
うはいかない。GaAs基板を取り外しても尚GaNに
残留する応力がある。そのために図11のようにGaN
自体が歪む。この反りはGaAsとは無関係に表面と裏
面の応力の相違、厚み方向の応力の傾斜のために現れ
る。
【0038】過去において、GaAs基板上にGaNを
巧みに成長させることができなかったのは真性応力が大
きかった事も原因している。熱応力も含めた内部応力が
大きすぎてGaNが多大の欠陥をもち剥落したりした。
真性の内部応力を減らすための工夫が実は先述のマスク
を用いるラテラル成長法である。孤立した窓を多数マス
クに作っておき、ここからGaNバッファ層を成長させ
さらにエピタキシャル層を重ねて成長させる。内部応力
の原因は転位などの欠陥にあると考えられる。ラテラル
成長法において、マスクによって転位から切り離されて
いるのでマスク上に成長した部分が低欠陥化する。これ
によってGaNの内部応力を減らすことができる。
【0039】それはいいのであるが、やはりなにがしか
の内部応力が残留する。ためにGaN基板が反る。反り
が大きいとウエハ−プロセスにかからない。反りを評価
し許容される反りの上限を決めなければならない。
【0040】図12に反りの測定法あるいは表現法の定
義をしめす。一定直径のウエハ−にして平坦なテーブル
の上において、中心の隆起Hを測定する。例えば2イン
チ直径のウエハ−に換算して、中心の浮き上がりHを求
める。Hが一つの測定法であり表現法である。
【0041】反りはウエハ−の曲がりの曲率ξ或いは曲
率半径Rによっても定義でき表現できる。R=D2/8
Hあるいは、ξ=8H/D2によって換算できる。Dは
ウエハ−の直径である。2インチウエハ−の場合はD=
50mmである。
【0042】反りまたは撓みというものは外部に現れる
現象であるから直接に測定することができる。内部応力
は内在的なポテンシャルであるから簡単に測定できな
い。
【0043】円板が曲率δで撓むときの内部応力は
【0044】
【数1】
【0045】によって与えられる。σは内部応力、Eは
剛性率、νはポアソン比、bは基板の厚さ、dは薄膜厚
さ、Iは基板直径、δは撓み(Hに当たる)である。I
=50mmとした場合は、上の定義でδ=Hに当たる。
これは薄膜の内部応力を撓みから計算するStoney
の式という。薄膜だけにしてしまうので(GaN単層で
あるから)d=bとして、
【0046】
【数2】
【0047】この式によって、撓みδからσを計算し
た。この応力値σは反っている基板を平坦にした場合に
かかる内部応力値としても解釈できる。反りと、曲率半
径と内部応力の関係はつぎのようである。基板厚さが一
定の時、内部応力が大きくなればなるほど、反りは大き
く、曲率半径は小さくなる。内部応力が一定の場合、基
板厚さが厚くなればなるほど、反りは低減し、曲率半径
は大きくなる。本発明者らによるGaN基板について
は、基板上へのデバイスプロセスの容易さ、基板強度を
勘案し、反り、曲率半径、内部応力の許容範囲を検討し
た。ウエハの厚さによって適当な値が変わるのである
が、一般的にいうと、 1.曲率半径R 600mm以上(曲率が1.67×1
-3mm-1以下) 2.反りH(50mm直径で) 0.55mm以下 3.内部応力σ 7MPa以下 つまり、本発明者がウエハに課した条件は、R≧600
mm、H≦0.55mm、σ≦7MPaである。さらに
内部応力σは3MPa以下であるとより好ましい。曲率
半径は750mm以上であるとさらに良い。
【0048】本発明において、1枚のGaN基板を製造
する方法の他に、GaN基板を種結晶としてその上にG
aNを厚くエピタキシャル成長させ単結晶インゴットを
製造する方法も採用している。その場合は厚みを10ミ
リ以上にして、数十枚のウエハを切り出すようにする。
インゴットが厚いから反りは小さい。反りが少ないから
精度良くスライスできる。厚さが大きいので低転位化が
進んでいる。スライスして切り出したウエハも低転位で
ある。そのため反りも少ない。以上に述べた反りのある
基板において、さらに研磨工程を付加することによっ
て、基板自体の反りを大きく低減することができる。し
かし研磨をすると図15に示すように基板自体の結晶方
位の揺らぎを持ったまま研磨によって平坦化されてしま
う。図15(a)研磨前の状態をしめす。これは上方に
凸の反りを持つGaN基板である。反りがあるから基板
法線は平行でなく扇型の分布をする。結晶面の法線も同
じように扇型分布をする。結晶面法線と基板表面の法線
は一致している。これを研磨すると図15(b)のよう
になる。上面だけ平坦になる。平坦になっても結晶面法
線の方向の扇型分布は不変である。ところが基板面は平
坦化するから法線は平行になる。中央部では基板法線と
結晶面法線が一致する。しかし周辺部では結晶面法線が
基板法線とずれてくる。
【0049】基板表面の法線と結晶面の法線のなす角度
をθとする。これは図15のような単純な凸型の歪みの
場合は中心からの距離をxとし基板直径をLとしてx=
±L/2でθが最小値、最大値をとる。この値を±Θと
する。つまりx=−L/2で−Θ、x=+L/2で+Θ
とする。円盤が曲率半径Rで反っている場合、直径をD
として端部の反りの角度を±Θとすると、2RΘ=Dで
ある。基板の直径はもちろんさまざまであるが、ここで
は2インチとして曲率半径Rと端部反り角Θの関係を決
めて置く。Θを角度で表すと、先ほどの式はπRΘ=9
0Dと表現できる。D=2インチ=50mmであり、Θ
を角度で表すと、Θ=1432/Rとなる。この関係を
図16に示す。
【0050】2インチの大きさで正規化して曲率と端部
角度の関係を出しただけで、ウエハ−がつねに2インチ
径である、ということではない。Mインチ径であれば、
Θ=1432M/Rとなるだけである。このような換算
は容易である。以下2インチに正規化したものとして述
べる。2インチウエハ−において、曲率半径を600m
m以上とするには、端部での結晶面法線のズレは±2゜
の範囲に入っている必要がある。すなわち、結晶面と基
板平坦化面とのズレ角の合計は4゜以下でないといけな
い。端部のズレ角Θは、研磨時の位置合わせ精度±1゜
に、前記の曲率半径600mm以上という条件からの±
2゜を加え、±3゜以下でなければならない。すなわち
主な結晶面法線と、基板表面法線のズレは3゜以内であ
る、これが基板の反りに対する条件である。また原理的
には、以上に述べたように、研磨後の表面は、鏡面であ
り平坦であるはずである。しかし必ずしもそうでなく研
磨後に新たな反りが発生する場合もある。これについて
はGaN基板内の内部応力が起因していると思われる。
研磨後の反りH(図12)は、いろいろの検討の結果、
微細なパターン形成のためのデバイスプロセスに耐える
反り量である0.2mm以下(2インチ換算)に抑える
ことが可能であることが判明した。曲率半径と反りHの
関係は先述のようにR=D/8Hであるから、H=
0.2mmという限界は、R=1563mm程度に当た
る。さらにデバイスプロセスへの適合性を考えると、反
り量は0.1mm以下が好ましい。この場合、同様に、
H=0.1mmという値はR=3125mm程度に当た
る。
【0051】
【実施例】[実施例1(HVPE法ラテラル成長による
GaN単結晶1枚の作製)]GaAs(111)A基板
を反応容器内に設置した。基板サイズは30mm径の円
形基板とした。プラズマCVD装置でGaAs基板上
に、Si層(マスク層)を厚さ0.1μmになる
ように形成した。これに規則的な分布をする窓をフォト
リソグラフィによって開けた。窓は3種類のものを採用
した。図3に示す千鳥ドット窓と、<11−2>ストラ
イプ窓、<1−10>ストライプ窓の3種である。 1.千鳥ドット窓…図3〜5に示すように、GaAs<
11−2>に平行な直線上に並び隣接する窓群が半ピッ
チずれている。d=3.5μm、L=4μm。 2.<11−2>ストライプ窓…<11−2>方向に平
行な長窓(ストライプ)のマスク。ストライプの幅が2
μm、間隔2μm、ピッチ4μm。 3.<1−10>ストライプ窓…<1−10>方向に平
行な長窓(ストライプ)のマスク。ストライプの幅が2
μmで間隔が6μm。ピッチは8μmである。
【0052】このような窓を開けたSiをマスク
として使って、GaNバッファ層とエピタキシャル層を
成長させる。 (1)GaNバッファ層の形成 周期的な窓を有するマスクによって覆われたGaAs基
板をHVPE装置の中に設置した。HVPE装置内でG
aAs基板を約500℃に加熱した。石英のGa溜を8
50℃以上に加熱しGa融液とする。原料ガス導入口か
ら水素ガスHと塩化水素ガスHClの混合ガスをGa
溜に導き、塩化ガリウムGaClを合成した。別の原料
ガス導入口から水素HとアンモニアNHの混合ガス
を導入し、500℃に加熱された基板近傍でGaCl+
NH→GaNの反応を起こさせGaAs基板に、Ga
Nを堆積させる。これによってGaAs基板上に約70
nmのGaNバッファ層を形成する。SiはGa
N成長抑制作用がありSi マスクの上にはGaN
は堆積しない。バッファ層(70nm)はマスク(10
0nm)より薄い。だから窓のGaAsの部分だけにG
aNバッファ層ができる。
【0053】(2)GaNエピタキシャル層の形成 HClの導入を停止した。基板温度を500℃から約1
000℃まで上げた。再びHClをGa溜に向けて導入
する。以前の工程と同じように、GaとHClの反応に
よって塩化ガリウムGaClを合成する。水素ガスがキ
ャリヤとして流れているからGaClは下方へともに流
れる。アンモニアNHとGaClが加熱された基板の
近傍で反応しGaNができる。これが窓の中のバッファ
層の上にエピタキシャル成長する。マスク厚み(100
nm)を越えるとマスクの上にGaN結晶が正六角形状
に広がって行く。ただしマスク全面がGaNで覆われる
までは、GaN結晶は六角錐である。図4、図5は六角
錐の底面部の状況を模式的に示したものである。窓は正
三角形の頂点位置にあるからそこから正六角形状に広が
ったGaNは隣接窓から広がってきた結晶と丁度きびす
を接することになる。成長速度は等しいので正六角錐の
結晶は隈無く接触する。GaN結晶層がマスクの上面を
隈無く覆い尽くすと、今度は上方へGaNが堆積してゆ
く。成長速度は50μm/Hである。約100μmの厚
みのエピタキシャル層を成長させた。このように無数の
小さい窓から独立に核発生させ結晶成長させる(ラテラ
ル成長)のでGaNの中の内部応力を大幅に低減するこ
とができる。表面は擦りガラス状であった。
【0054】(3)GaAs基板の除去 次に試料をエッチング装置の中に設置した。王水によっ
て約10時間エッチングした。GaAs基板が完全に除
去された。GaNだけの結晶になった。両面を研磨して
GaN単結晶基板とした。これは自立膜であった。マス
クの窓寸法と窓ピッチL、隣接列との距離dを変えその
他はほぼ同じ条件で3つの試料についてGaN成長させ
た。試料1は千鳥ドット窓(窓2μm角、L=4μm、
d=3.5μm)マスクを使って成長させたものであ
る。試料2は<11−2>ストライプマスクを使って成
長させたものである。試料3は<1−10>ストライプ
マスクを使ったものである。
【0055】
【表1】
【0056】(4)光学特性 ノンドープなのであるがn型の電子伝導型である。結晶
性の維持を考えるとキャリヤ濃度は低い方が良く、電子
移動度は高い方が良い。しかし比抵抗は高い方が良いの
である。これら電気的特性は成長条件により変化する。
ストライプマスクは内部応力低減という点で不完全であ
る。これらサンプルは透明な薄茶色である。波長400
nm〜600nmでの吸収係数は、反射による補正なし
で40cm−1〜80cm−1であった。 (5)X線回折 このGaN基板において、X線回折装置により、基板表
面とGaN(0001)面との角度の関係を調査した。
その結果、基板表面の法線と、GaN(0001)面の
法線とのなす角度は基板内で2.5゜であることが分か
った。また、GaN(0001)面の法線のバラツキが
基板内で3.2゜であることが分かった。また研磨後の
基板の反り量を二つのサンプルについて測定すると、1
インチ長(D=25mm)で約H=25μmのものとH
=48μmのものがあった。R=D/8Hであるか
ら、R=3125mmとR=1628mmのものであ
る。先に述べたように、2インチウエハ−でのフォトリ
ソグラフィの限界が0.2mmでありR=1563mm
であるが、この実施例はこの限界以下である。フォトリ
ソグラフィによるパターン描画が可能な反りである。
【0057】[実施例2(HVPEラテラル成長GaN
種結晶、HVPE法GaN厚付け)]2インチ径のGa
As(111)A面を基板とした。その上にSiO
絶縁膜を形成した。フォトリソグラフィによって図3の
ような窓を設けた。 (1)GaNバッファ層の形成
【0058】マスクを有するGaAs基板をHVPE装
置に設置した。図8の装置を使うが、Ga溜5は800
℃に加熱した。原料ガスとしては、H+HClをGa
溜に導き、H+NHは基板に直接に導いた。約50
0℃(基板温度)の低温において、GaNバッファ層を
形成した。バッファ層厚みは80nmである。 (2)エピタキシャル層の形成 ついで基板温度を1000℃に上げた。同じ原料ガスを
使って、GaNエピタキシャル層80μmを形成した。 (3)GaAsの除去 GaN/GaAs基板をHVPE装置から取りだした。
鏡面状にGaN連続膜が生成されていることを確認し
た。これを王水中でGaAs基板をエッチング除去し
た。
【0059】(4)GaNの厚付け これを十分に洗浄した。図6(4)のような状態にな
る。GaNだけになったものをふたたびHVPE装置に
セットした。基板温度を1020℃として、HVPE法
によってGaNを厚付けしGaNのインゴットを得た。
図7(1)に示す状態である。このインゴットは中央部
が少し窪んだ形状であった。最低高さは約20mm、外
径55mmのインゴットであった。
【0060】(5)スライサーによるウエハ−の切り出
し 内周刃スライサーによってインゴットを軸方向に直角な
方向に切りだした。図7(2)に示すようである。外径
約50mm、厚み350μmのGaN単結晶基板20枚
を得た。GaNを分析したところ、As、炭素ともにバ
ックグランドのレベルであった。ひ素(As)、炭素
が、GaNのなかに殆ど含有されていない事が分かる。
【0061】(6)研磨 さらにラッピング研磨、仕上げ研磨をした。図7(3)
のような透明ウエハ−である。機械加工をしているため
基板には反りは無かった。 (7)X線回折 このGaN基板を実施例1と同じように、X線回折装置
によって、基板表面とGaN(0001)面との角度の
関係を調査した。基板表面の法線とGaN(0001)
面の法線のなす角度が、基板内で最大0.6゜であるこ
とが分かった。GaN(0001)面の法線の方向のバ
ラツキが基板内で、0.5゜であることが分かった。ま
た研磨後の基板の反り量は、2インチ長(D=50m
m)でH=約15μmであった。R=D/8Hである
から、R=20000mm程度である。十分にフォトリ
ソグラフィが適用できる平坦さである。
【0062】(8)電気的特性の測定 インゴットの上端(成長終期の分)から取ったウエハ−
の電気的特性を測定した。n型でキャリヤ濃度は5×1
18cm−3であった。電子移動度は200cm
Vsであった。比抵抗は0.017Ωcmであった。
【0063】インゴットの下端(成長初期の分)から取
ったウエハ−の電気的特性はつぎのようであった。n型
でキャリヤ濃度は1018cm−3、電子移動度は15
0cm/Vsであった。比抵抗は0.01Ωcmであ
った。これは両極端の部位の電気的特性である。中間部
は中間的な値になるであろう。
【0064】(9)光吸収の測定 これらのウエハは透明であり暗灰色か無色であった。波
長400nm〜600nmにおける吸収係数は20cm
−1〜40cm−1であった。 (10)LEDの作製 GaN基板ができたので、その上にInGaNを発光層
とするLEDを作製した。従来のサファイヤ基板のもの
と比較して、発光輝度が約5倍に向上した。発光輝度が
向上した理由は、転位の減少による。従来のサファイヤ
基板LEDでは活性層内に多くの貫通転位が存在してい
たが、GaN基板の本発明のLEDは貫通転位が大きく
減少しているからである。
【0065】[実施例3(MOCラテラル成長GaN種
結晶、HVPEGaN厚付け)]GaAs(111)B
面を基板として用いた。SiOを基板に付けフォトリ
ソグラフィによって[1−10]方向に延びるストライ
プ窓を形成した。
【0066】(1)GaNバッファ層の形成 有機金属塩化物気相成長法(MOC法)によって約49
0℃の低温で基板上に90nmの厚みのGaNバッファ
層を形成した。
【0067】(2)GaNエピタキシャル層の形成 同じ装置において、基板温度を約970℃に上げて、G
aNエピタキシャル層を25μmの厚さに形成した。 (3)GaAs基板の除去 MOC装置からGaN/GaAs試料を取りだした。鏡
面のGaN単結晶が成長していた。ストライプマスクの
方向は、GaNの[11−20]方向であった。つまり
GaAsの[1−10]方向にGaNの[11−20]
方向が成長するということである。王水によってGaA
s基板を溶解除去した。
【0068】(4)GaNの厚付け成長 25μm厚みのGaNを種結晶として、HVPE装置に
セットした。1000℃に加熱しHVPE法によってG
aNを厚くエピタキシャル成長させた。円柱状で最低高
さが約3センチのGaNインゴットを育成した。
【0069】(5)内周刃スライサーによるウエハ−切
り出し 内周刃スライサーによってインゴットを軸直角方向に4
00μmの厚みに切り出した。25枚のアズカットウエ
ハ−を切り出すことができた。
【0070】(6)研磨 切り出したウエハ−をラッピング研磨、仕上げ研磨し
た。製品としてのGaN単結晶ウエハ−を得た。 (7)電気特性の測定 ウエハ−の電気的特性を測定した。n型であって、電子
移動度は250cm/Vsであった。比抵抗は0.0
5Ωcmであった。このGaN基板を実施例1と同じよ
うに、X線回折装置によって基板表面と(0001)面
との角の関係を調べた。基板表面法線と、(0001)
面法線とのなす角度の最大が基板内で±1.1゜であっ
た。R=1300mmである。GaN(0001)面の
法線方向のバラツキが基板内で1.4゜であった。また
研磨後の基板の反り量Hは、2インチ長でH=約45μ
mであった。R=6900mmの程度である。
【0071】この実施例ではGaN自体を種結晶とし
て、GaN単結晶を厚く成長させている。厚い単結晶G
aNを成長させこれをスライサーで切断しているから一
挙に25枚もの基板が作製できる。製造コストは、1枚
1枚GaAsから成長させる場合に比較して64%に低
下した。基板の製造を低コスト化できる。品質管理も含
めた1枚当たりの製造時間も大きく短縮できた。GaN
を分析したところ砒素(As)、炭素(C)ともにバッ
クグラウンドのレベルであった。
【0072】マスクの窓は正三角形の頂点にある位置に
窓を穿つマスクが最も良い。しかしストライプ(縞状)
の窓をもつものであっても良い。それなりの内部応力低
減の効果がある。マスク上のラテラル成長によって、結
晶内の低欠陥化が進み内部応力が低減されると共にGa
AsとGaNの接触面積が減り内部応力を緩和できる。
ために温度変化が大きいにもかかわらず反りの発生を抑
制することができる。
【0073】[実施例4(Ga分圧と表面モフォロジー
・内部応力の関係)][1−100]ストライプマス
ク、[11−2]ストライプマスク、ドットマスクを使
いHVPE法によってGaNウエハを作製した。原料ガ
スはH+NHとH+HClである。原料ガスの総
流量を増やすと表面モフォロジーが改善される。しかし
内部応力は増える傾向が認められた。
【0074】
【表2】
【0075】これらのうち、イ、ロ、ニ、ホ、ト、チ、
の6つはAグループであり、ハ、ヘ、リ、ヌ、ルの5つ
はBグループである。 (A)Ga分圧は1kPa(10-2atm)である。9
70℃でバッファ層・マスクの上にGaNを1時間成長
させ、1030℃でさらに3時間GaNを成長させた。
合計4時間のエピタキシャル成長である。図13に白丸
によってその結果をしめす。6個の試料(イ、ロ、ニ、
ホ、ト、チ)がある。これらは表面は平坦でありモフォ
ロジーは良好である。ところが内部応力は大きい。クラ
ックが発生した試料もある。図13において横軸は膜厚
(μm)である。膜厚は30μm〜120μmに分布し
ている。縦軸は内部応力(MPa)である。白丸の試料
は内部応力が10MPa〜30MPaである。ほとんど
が10MPaより大きい内部応力を呈する。しかし内部
応力は7MPa以下(7×10−3GPa)が好まし
い。 (B)Ga分圧は2kPaである。970℃でバッファ
層・マスクの上にGaNを6時間エピタキシャル成長さ
せた。試料の数は10個である。図13に同じように示
す。膜厚は120μm〜300μmの間に分布する。G
aN試料の表面は粗い。Rmaxは約20μmである。
GaN基板寸法は20mm×20mmである。表面状態
は悪いが内部応力は小さい。内部応力は図13に黒丸に
よって示すように1MPa〜6MPaである。目標は7
MPa以下であるからこれを充たすことができる。しか
し同じ条件であるのに膜厚に広いばらつき(110μm
〜300μm)がある。反りの曲率半径RはR=780
mm〜1500mmである。 (X線回折)X線回折装置によって、基板表面と、(0
001)面の法線の関係を調べた。基板内でズレの最大
角は、±2.0゜であった。またGaN(0001)面
の法線のばらつきが基板内で2.4゜であった。また研
磨後の基板の反り量は2インチ長に換算して、60μm
であった。これはR=5200mmになる。
【0076】[実施例5(曲率半径の関係)]前例と同
じ(A)の試料6枚と、(B)5枚の試料について膜厚
と曲率半径の関係について調べた。触針法によって反り
を評価した。図14にその結果を示す。横軸は膜厚(μ
m)である。縦軸は曲率半径である。曲率半径は600
mm以上が好ましい。 (A)970℃1時間+1030℃3時間成長の試料A
は膜厚が薄く表面は平坦であるが反りが大きい。曲率半
径は200mm以下である。曲率半径の望ましい範囲は
600mm以上である。6個の試料の全てが目標に達し
ない。 (B)970℃6時間成長の試料Bは膜厚が厚く、表面
は粗面化しているが、内部応力が小さく、反りも小さ
い。5個のB試料のすべては600mmという望ましい
範囲をこえている。マスクなし成長では、曲率半径が極
めて小さくて反りが大きい。1970年代のGaAs基
板の試みが失敗したのはそのような理由にもよる。
【0077】[実施例6(研磨)]試料Aは研磨に失敗
した。試料Bのうち、膜厚150μm、内部応力4MP
a、曲率半径1030mm、Rmax20μmの試料に
ついて研磨した。研磨により膜厚は80μmに減った。
曲率半径は研磨後650mmに減っている。研磨によっ
て表面粗さはRmax7.2nm、Ra2nmに減少し
た。研磨は表面を平滑にしているが、反りを増大させる
場合もある。 (X線回折)X線回折装置によって、基板表面法線と
(0001)面法線の関係を調べた。基板表面法線と、
(0001)面法線のなす角度の最大値は±1.7゜で
あった。GaN(0001)面の法線方向のばらつきは
基板内で3.7゜であった。また研磨後の基板の反り量
は2インチ長で90μmであった。曲率半径はR=34
00mmである。これもフォトリソグラフィの限界以内
である。
【0078】
【発明の効果】本発明は大型のGaN単結晶ウエハを提
供する。窓付きマスクを通したラテラル成長法によるか
らGaN結晶中の転位等の欠陥が少ない。欠陥が少ない
し内部応力が小さいので反りを低減することができる。
さらに研磨によって基板表面を平坦化するため、反りは
極めて少ない。フォトリソグラフィなどのウエハ−プロ
セスで処理する事ができる。また結晶面の揺らぎも実用
性のある範囲内にある。デバイス形成に問題はない。低
欠陥で反りの小さいこのウエハ−を使用してLED、L
Dを作製することができる。そうすればLEDの特性を
向上させることができ、LDの寿命を延ばす事ができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】GaN結晶を成長させるための基板材料とGa
Nとの熱膨張係数、格子定数の差を、x、y座標に示す
グラフ。
【図2】サファイヤ基板上にGaNエピタキシャル成長
させた場合に、GaN膜厚が変化することによって格子
定数が滑らかに変化することを示すグラフ。
【図3】千鳥型点状窓マスクをGaAs(111)A面
に固定したものの平面図。
【図4】マスク窓から露呈した部分にGaNバッファ層
をエピタキシャル成長させた状態の平面図。
【図5】GaNをマスク、バッファ層の上にさらにエピ
タキシャル成長させ隣接窓からの結晶が相会した時に状
態を示す平面図。
【図6】GaAs基板の上にマスクを載せてGaNバッ
ファ層、GaNエピタキシャル層を成長させ、GaAs
基板をエッチング除去する工程を示す工程図。(1)は
GaAs(111)基板上にマスクを形成した工程の
図。(2)はマスクによって覆われていない部分にバッ
ファ層を成長させた工程の図。(3)はバッファ層、マ
スクの上にGaNエピタキシャル層を成長させた工程の
図。(4)はGaAs基板を除去しGaNの自立膜とな
った状態を示す図。
【図7】GaN基板の上にさらにGaNを厚く成長させ
てGaNインゴットを作りこれを切断してウエハにする
工程を示す図。(1)はGaN基板に厚付けしたGaN
インゴットの図。(2)はインゴットを内周刃スライサ
ーでアズカットウエハに切断している状況を示す図。
(3)は切り出されたウエハの図。
【図8】HVPE装置の概略断面図。
【図9】GaAs基板の上にGaNを成長させた複合基
板が熱応力のために反っている状態を示す断面図。
【図10】もしも内部応力が0であれば、GaAsを除
去した後のGaNは平坦になることを示す断面図。
【図11】もしもGaN自体のなかに内部応力が存在す
るならばGaAsを除去しても尚歪みが残ることを示す
断面図。
【図12】GaNウエハの反りの定義を示す図。50m
m直径のウエハの中央部の盛り上がりHによって反りを
表現する。
【図13】Ga分圧を(A)1kPaの一群と(B)2
kPaの一群について、膜厚と内部応力の測定値の分布
を示す図。黒丸が表面粗くてB群である。白丸が表面平
滑でA群である。
【図14】同じA群試料(5枚)とB群試料(6枚)に
ついて、膜厚と曲率半径の分布を示す図。黒丸がB群、
白丸がA群である。
【図15】反りのあるGaNウエハ−において基板面法
線と結晶面法線の定義を示す図。(a)は反りのある状
態での基板面法線と結晶面法線が一致しているものを示
す。(b)は凸面を平坦に研磨するので、基板面法線は
平行になるが、結晶面法線はもとの扇型であることを表
している。(c)は基板面内において結晶面法線のゆら
ぎの定義を示した図である。
【図16】反りのある2インチ径ウエハ−の端部の反り
の角度Θと反りの曲率半径の関係を示すグラフ。横軸が
曲率半径(mm)、縦軸が端部の反りの角
【符号の説明】
1 反応炉 2 ヒ−タ 3 原料ガス導入口 4 原料ガス導入口 5 Ga溜 6 Ga融液 7 サセプタ 8 シャフト 9 GaAs基板またはGaN基板 10 ガス排出口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 松本 直樹 兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号住友電 気工業株式会社伊丹製作所内 Fターム(参考) 4G051 BF02 HA09 4G077 AA03 BE15 DB05 ED05 EF03 FG05 FG18 5F041 CA23 CA35 CA40 CA67 CA77 5F052 AA18 CA01 CA04 DA04 DB01 FA12 GB09 GC04 JA07

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 20mm以上の直径と0.07mm以上
    の厚さを有し、自立しており、表面、裏面ともに研磨さ
    れている事を特徴とするGaN単結晶基板。
  2. 【請求項2】 基板表面の法線と、基板表面と平行度が
    最も高い低面指数の結晶面の法線とのなす角度が基板内
    で3゜以下であることを特徴とする請求項1に記載のG
    aN単結晶基板。
  3. 【請求項3】 基板表面と平行度が最も高い低面指数の
    結晶面の法線のばらつきが基板内で4゜以下であること
    を特徴とする請求項1に記載のGaN単結晶基板。
  4. 【請求項4】 研磨後の基板の反りが2インチ径に換算
    して200μm以下であることを特徴とする請求項1に
    記載のGaN単結晶基板。
  5. 【請求項5】 基板表面は、GaN(0001)面であ
    る事を特徴とする請求項1に記載のGaN単結晶基板。
  6. 【請求項6】 (111)GaAs基板の上に[11−
    2]方向に一定間隔をおいて並び[−110]方向には半
    ピッチずれた点状の窓を有するマスク又は[11−2]方
    向に伸びるストライプ状の窓を有するマスク若しくは
    [−110]方向に伸びるストライプ状の窓を有するマス
    クを形成し、GaNバッファ層を設け、HVPE法によ
    りGaNをエピタキシャル成長させGaAs基板を除去
    し、GaN自立膜とし、少なくとも1面を研磨すること
    を特徴とするGaN単結晶基板の製造方法。
  7. 【請求項7】 (111)GaAs基板の上に[11−
    2]方向に一定間隔をおいて並び[−110]方向には半
    ピッチずれた点状の窓を有するマスク又は[11−2]方
    向に伸びるストライプ状の窓を有するマスク若しくは
    [−110]方向に伸びるストライプ状の窓を有するマス
    クを形成し、GaNバッファ層を設け、HVPE法によ
    ってGaNをエピタキシャル成長させ、GaAs基板を
    除去してGaN基板を得て、そのGaN基板の上にHV
    PE法によってGaN単結晶をエピタキシャル成長せし
    め、エピタキシャル成長したGaNインゴットから、切
    断又は劈開により分断して複数の自立したウエハ−と
    し、ウエハ−の少なくとも1面を研磨することを特徴と
    するGaN単結晶基板の製造方法。
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