JP2006306722A - GaN単結晶基板の製造方法及びGaN単結晶基板 - Google Patents

GaN単結晶基板の製造方法及びGaN単結晶基板 Download PDF

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Abstract


【課題】 (0001)ジャストでなくて(0001)からずれた結晶方位を有するオフ角のGaN単結晶自立基板をより低コストで作製すること。
【解決手段】 オフ角の(111)GaAsウエハを下地基板として、その上にGaNを気相成長させると下地基板と同じオフ角で同じ方向に傾斜しているGaN結晶が成長する。また、オフ角度を有する(111)GaAs基板を下地基板として用い、その上に複数の窓を有するマスクを形成し、その上からGaN単結晶層を成長した後、下地基板を除去して、オフ角度を有するGaN自立基板を作製してもよい。0.1゜〜25゜のオフ角をもつGaN結晶を製造することができる。
【選択図】図4

Description

本発明は、3−5族化合物半導体からなる発光ダイオードや半導体レーザなどの発光デバイスなどの基板として用いられる窒化ガリウム(GaN)単結晶基板の製造方法に関する。
窒化物半導体を用いた発光デバイスは、青色LEDを初め、既に実用化がなされている。従来から、窒化物半導体を用いた発光デバイスは、殆ど例外なく基板としてサファイヤが用いられてきた。サファイヤ基板の上に窒化ガリウム結晶薄膜が良好に成長する。サファイヤ基板は堅牢で機械的強度も充分である。サファイヤ基板上に成長した窒化ガリウム薄膜は欠陥が多いが、それにも拘らず発光する。欠陥が増殖して劣化するということもない。サファイヤは窒化物半導体薄膜成長のための優れた基板材料である。
しかしサファイヤ基板にはなお問題がある。サファイヤには劈開性がない。サファイヤは絶縁体である。窒化ガリウムと格子不整合でミスマッチが大きい。サファイヤ基板を用いた窒化物系半導体発光素子にはそのような問題がある。
発光ダイオードの場合は、ダイシング工程では劈開性がないために歩留まりが上がらずコスト高を招いていた。半導体レーザの場合は劈開によって良好な共振器反射面を作製することができずレーザ特性など品質面で問題があった。
サファイヤは絶縁体であるから、通常のLEDのようにデバイスチップの上下面に電極を設けることができない。サファイヤ基板の上にn電極用のn型GaN層を付けておき、その上にGaN層、InGaN層などをエピ成長させた後、端部をn型GaN層までエッチングしn型GaN層を露呈させ、その上にn電極を形成していた。それは工程数、工程時間を増大させコスト高を招いていた。
さらに同一面(表面側)に二つの電極を並んで設ける必要があるから、広いチップ面積が必要になる。それもコストを押し上げる。
サファイヤと窒化ガリウムは格子定数がかなり違うので基板とエピ層の間の格子定数のミスマッチによって、エピ層中に多くの転位など欠陥が導入されるという問題もあった。
現に、現在市販されているサファイヤ基板を用いた発光デバイスの窒化ガリウムエピ層の中には1×10cm−2程度の高密度転位が存在する。サファイヤより格子のミスマッチの少ないSiC基板を用い、その上に窒化ガリウムを成長させた場合もその程度の転位密度があり、あまり改善にならない。
そのような高密度転位の存在は、LEDとしては、実用上大きな障害になっていない。転位から欠陥が増大、増殖をするというようなことはない。しかし半導体レーザは電流密度が高いので、これらの欠陥が半導体レーザの長寿命化を阻む原因であると考えられている。つまり半導体レーザの場合は、よりミスマッチの小さい基板が望まれる。LED用の基板としてもLEDが高出力化するに従い、より低転位のエピ層が要求されるであろうと考えられる。
特願平9−298300 特願平10−9008 特願平10−102546 特開平2−239188 特開昭64−32686 特開昭64−22072 特開昭64−15914 特開平1−270599 特許第3129112 特開平7−201745 特開平11−74562 再公表特許WO99/23693
Takayuki Yuasa,YoshihiroUeta,Yuhzoh Tsuda,Atushi Ogawa,Mototaka Taneya and Katsutoshi Takao,"Effect of Slight Misorientation of Sapphire Substrate on Metalorganic Chemical Vapor Deposition Growth of GaN", Jpn.J.Appl.Phys.vol.38(1999),pp.L703−L705,Part2,No.7A,1 July 1999 M.H.Xie,L.X.Zheng,S.H.Cheung,Y.F.Ng,Huasheng Wu,S.Y.Tong,and N.Ohtani,"Reduction of threading defects in GaN grown on vicinal SiC(0001) by molecular−beamepitaxy", Applied Physics Letters Vol.77, No.8, p1105−1107, 21 August 2000
窒化物系半導体薄膜を成長させるべき最も理想的な基板は、窒化ガリウム(GaN)結晶基板であると考えられる。もしも高品質の窒化ガリウム結晶基板が得られれば、基板と薄膜の格子定数のミスマッチの問題は解決できる。窒化ガリウム結晶は明確な劈開性をもっており、レーザ共振器の反射鏡として自然劈開面を使うことができる。さらにサファイヤのように絶縁体でなくて窒化ガリウムは半導体であるから基板底面に電極を付けることができチップ面積を減縮することができる。そのように窒化ガリウム結晶基板が、窒化物系半導体薄膜成長の下地基板として最適であると思われる。
しかしそれにもかかわらず、なお現在でも下地基板としてはサファイヤ基板がほぼ独占的に利用されている。それは一つには高品質で実用的な大きさをもった窒化ガリウム自立結晶基板がなかなか製造できないからである。
超高圧超高温でGaNを溶融でき融液から結晶成長できるが、それは小粒の結晶粒しか製造できず大口径のものを作ることは現在もできていない。
GaNを溶融状態にすることが難しいので気体原料を気相で反応させる気相成長法によって窒化ガリウム結晶を作るということがなされている。異種結晶基板の上に、気相合成によって窒化ガリウム薄膜を成長させるという本来薄膜成長に使われた方法を基板の成長法に転用するものである。
GaN薄膜の気相成長法としては、HVPE法、昇華法、MOC法、MOCVD法などが知られている。
(1)HVPE法(Hydride Vapor Phase Epitaxy)はホットウォール型の反応炉の上方にGa金属を入れた容器を設け下方にはサセプタを設けてサセプタの上に下地基板を置き、反応炉の全体を加熱し、上方から水素によって希釈されたHClガスをGa容器に吹き込んで2Ga+2HCl→2GaCl+Hの反応によってGaClの気体を合成し、それがサセプタの近くまで下降したあたりに水素で希釈したNHガスを吹き込み2GaCl+2NH→2GaN+3Hの反応を起こさせて加熱された下地基板の上にGaN結晶を積層するものである。
(2)昇華法は、下地基板を反応炉の上に下向きに固定し、GaN多結晶を反応炉の下において、下方がより高温に上方がより低温になるような温度勾配を反応炉に形成して多結晶が気化し上昇して下地基板の上に少しずつ堆積して単結晶薄膜ができる。
(3)MOCVD(Metal−organic Chemical Vapor Deposition)法は、コールドウォール型の反応炉の下方にサセプタを設け、その上に下地基板を置いて、サセプタを加熱しておき、上方から、水素ガスをキャリヤガスとして、トリメチルガリウム(TMG)、トリエチルガリウム(TEG)とNHガスを吹き込んで(CHGa+NH→GaN+3CHという気相反応を起こさせて、下地基板の上にGaN結晶を堆積する。現在、サファイヤ基板の上に窒化物系半導体薄膜を成長させる方法として最も普通に使われている方法である。有機金属を原料とするので、この名前がある。しかし、これは炭素を含む材料をNHと直接反応させるからGaNに炭素が混入し炭素のために黄色く色付いたり深いドナー準位ができたりして、あまり良くない方法だと本出願人は思う。
(4)MOC(Metallorganic Chloride)法は、Gaの原料として有機金属を使うのであるが、直接NHと反応させず一旦HClと反応させGaClを中間生成物として合成し、その後NHと反応させてGaNとするのである。MOC法は本出願人の独特の手法であって他に類例を見ない。MOCVD法より優れた点は中間生成物としてGaClを作るから最終生成物のGaNに炭素が混入しにくいという利点がある。
下地基板として用いられるのはサファイヤ(Al)が殆どである。サファイヤはGaNとの格子定数の違いもかなり大きいし薄膜の転位密度は多いが、それでもLEDとすることができるしそれは長寿命である。しかし、GaAs、SiCなどを下地基板に使ったという報告もある。GaAsを下地基板にしてGaNを成長させるというのは1960年代にしきりに試みられたが、うまく成長せず失敗に終わっている。今は低温成長させた薄いバッファ層(20nm〜80nm)を下地基板の上に積んでからエピタキシャル成長させるようにしている。
以上の手法はGaN薄膜成長の方法である。そのままでは厚膜を作ることはできない。薄膜の場合は薄いので基板と薄膜の間のミスフィットがあっても剥離したりしないが厚くGaNを堆積してゆくと内部応力が大きくなり剥離したり波打ったりして厚くできない。たとえうまく厚膜になったとしても転位密度が高くて低品質であって使い物にはならない。そこで内部応力を減退させ転位密度を減らす手法としてELO法(Epitaxial Lateral Overgrowth)が用いられる。
SiN、SiO膜を下地基板の上に形成し一面に一辺が2μm〜4μm程度の正三角形タイルを敷き詰めたと仮定して正三角形の頂点に当たる部分に直径が1μm〜2μmの窓を開けたマスクを作り、その上からGaNを気相成長させる。初めは窓の下地基板からGaN結晶が成長し、それがマスクの上に這い上がり横向き成長する。隣接窓から成長してきたGaN結晶と衝突して、それ以後は一様な上向き平坦面成長となる(C面成長)。マスク上で転位が横に伸び、それが左右から衝突するのでマスク上で転位が減る。窓の上の高い転位密度はそのままであるがマスク(被覆部)の上はより低転位となる。ELOの文献は多数あるが特許文献1、2は、GaAs下地基板の上のELOについて述べている。
ELOでGaN結晶を厚く成長させてGaAs基板を除去して自立GaN結晶基板を得ることができる。ELOでより厚いGaN結晶を作りGaAs基板を除去して厚いGaNインゴットを得、それを薄いウエハにスライスして複数のGaN自立結晶基板を得ることができる。特許文献3はそのような手法を示している。
以上に述べたものはGaN結晶の成長についての従来技術である。ここで話はガラリと変わってオフアングルの結晶について述べる。Siの場合でもGaAsの場合でもオフ角の基板が要求される場合があった。GaAsでいうと(100)面ジャストの基板が普通であるが、ジャストの基板へ薄膜を成長させると薄膜の表面が波打って必ずしも平滑平面にならないことがある。それで基板を(100)ジャストから少し傾けたものにして、その上に薄膜を成長させデバイスを作るということがある。そのように低面指数から少し面を傾けることをオフアングル(オフ角)といい、そのような基板をオフアングル基板という。傾斜角のことをオフ角度という。
常にそうだということではなく目的によってオフアングルの基板が適するということがある。あまり傾けると劈開面がずれてくるので僅かな角度傾けたものが作られる。オフアングルはSi、GaAs、InPなど既存の半導体基板ではよく行われたことである。オフアングルの最適範囲にしても諸説あって定説というものはない。特許文献4〜9に挙げたものはGaAs、InPなどのオフアングル基板に関するものである。それら以外にもSi、GaAs、InPに関する多数のオフアングルの文献が存在する。
GaAsや、InPの場合は、HB法やLEC法で長くて大型の(100)結晶インゴットが得られるので、それを軸と斜交する方向に内周刃スライサー、外周刃スライサー、ワイヤソーなどで斜め切りしてオフアングルのウエハを得るようにしている。インゴットが長いので斜め方向に切っても無駄が出るというようなことはない。
GaNの基板はいまだ大型で高品質のものが市販されたという実績に乏しいのでオフアングルGaN基板というものの要望はない。オフアングルGaN基板が存在しないし、その上にGaNを成長させたという文献は存在しない。だからオフアングルGaNの方が、ジャストGaN基板よりもその上に薄膜を成長させたときの表面モフォロジーが良いかどうかということもはっきりしない。ただオフアングルのサファイヤ基板の上にGaN薄膜を成長させたという文献はある。
特許文献10はp型のGaN薄膜を成長させることは難しいが、(0001)面からオフ角をもつサファイヤ基板(α−Al)の上にGaNをMOCVD法で成長させるとp型のGaN結晶薄膜を作ることができると述べている。最終的にサファイヤの上にGaN薄膜が載っているだけである。p型薄膜が目的であり厚い結晶は目的でないしGaN薄膜はオフ角なのかどうかについては述べていない。
特許文献11はステップ状オフアングルのサファイヤ基板(α−Al)の上にGaN薄膜をMOCVD法で成長させることによって活性層が量子ドット、量子ワイヤのようになりキャリヤ、光が有効に閉じ込められるので出力は増強され寿命が長くなると述べている。GaNは薄いもので基板を作ることを目指していない。GaNがオフアングルなのかどうか述べていない。
非特許文献1は、0.03゜〜0.25゜のオフ角をもつ(0001)サファイヤ基板(α−Al)の上にGaNを薄く(4μm)成長させたものは、表面モフォロジーが改善され(凹凸が減る)EL(エレクトロルミネセンス)も向上すると述べている。GaNの厚膜を作るものではなくGaN薄膜はサファイヤ基板に付いたままである。GaN薄膜の方位については述べていない。
非特許文献2は、3.5゜オフアングルの(0001)4H−SiC基板の上にMOCVD法でGaN薄膜を成長させると、(0001)ジャストのSiC基板上に成長させたものよりも、表面モフォロジーが良くなり、PL(フォトルミネセンス)が増えると述べている。しかしGaNは薄く基板結晶にならない。SiC基板に付いたままである。GaNの結晶方位は述べていない。
オフアングルのGaN基板が要求されているということではないが、GaAsやInP基板の場合と同じようにオフアングルの基板が求められるようになることが予想される。オフアングルのGaN基板の上に成長させたGaN薄膜の方が、ジャストのGaN基板の上に成長させたGaN薄膜より高品質であるかもしれない。それはいまだ分からないのであるが、オフアングルのGaN基板がなんらかの契機で要望されることもあろう。
その場合に、GaAsやInPのように液相からの単結晶成長(HB法とかLEC法)が可能で長くて大きい直径の単結晶インゴットができるのであれば、それを傾斜角を付けて切れば良いのである。簡単にオフアングルのウエハができる。しかしGaN結晶の場合は液相から長い単結晶インゴットを成長させることができない。異種材料の単結晶の下地基板の上にGaNを成長させて、いくらかの厚みを持ったGaN結晶を得て下地基板を除去してGaNインゴットとし、それを斜めに切ってオフアングルのGaNウエハとするということになろう。
しかし、それは無駄に失われる部分が多くなるから望ましくない。たとえば5゜のオフ角をもつ2インチ径(51mm)で500μm厚みのGaNウエハを作りたいとする。51sin5゜=4.4であるから、切り代を入れて4.9mmの高さをもつGaNインゴットを作り5゜の傾斜角で切って1枚のオフアングルウエハを得るというようになる。4.9mm高さのインゴットからジャストの500μm厚み基板であれば9枚取れるのであるから、8枚分が無駄になってしまう。そのような欠点はオフ角が大きいほど顕著になる。現在、気相成長法で作れるGaNは薄いものなのでそのような欠点は重大である。
もっと厚い30mm高さもあるGaN単結晶インゴットができれば1゜〜3゜程度のオフアングルウエハを取るとしても損失は少ないが、現在のところ、それほど厚いGaN結晶を作ることはできない。厚み1mm程度のものがやっと作れるという程度でよほど時間を掛けて、やっと10mm厚みのものができるという程度である。
現在のところGaN単結晶は、面積は広いが薄い結晶しか作る事ができないので(0001)ジャストのGaNを斜めに切ると損失が大きい。
それともう一つ問題がある。GaNは気相成長でゆっくりと成長させるが、成長とともに転位密度などが変わってくる。成長の初めで転位密度が高いが成長とともに転位密度が低下するというGaN結晶の場合、それを斜めに切ると転位密度が面内で著しく不均一になる。
本発明は、オフアングルの(111)GaAs結晶基板を用いて、その上にGaNを厚く気相成長させGaAs基板を除去する。そうするとオフアングルのGaN結晶基板を得ることができる。本発明は、さらにオフアングルの(111)GaAs結晶基板を用いて、その上にGaNを複数枚分に当たる膜厚程度に厚く気相成長させGaAs基板を除去しGaNインゴットを得、それを成長軸線に直交するオフアングル面でスライスして複数枚のオフアングルGaN基板結晶を一挙に製造することができる。
あるいはELO法を用い、オフアングル(111)GaAs基板に多数の周期的(1μm〜4μm周期)に配列した窓をもつマスクを付けその上からGaNを気相成長させる。
あるいは、もっと大きい周期(30μm〜400μm)のストライプマスクやドッド状のマスクを付けファセットを生成維持しながら成長させるファセット成長法も本発明に適用することができる。
さらに具体的に本発明を述べる。
窒化ガリウムの結晶成長には既に述べたようにHVPE法、MOC法、MOCVD法、昇華法など気相成長法がある。どの方法でも本発明を実施することができる。ここではHVPE法を用いる(図2に概略を示す)。ここで用いたHVPE法というのは次のような手法である。
石英ボートにGa金属を入れたものをホットウォール型の炉の上部に設け、炉の下方にはサセプタによって下地基板を保持し加熱しておき、炉の上方から、水素で希釈されたHClを流し、800℃以上の高温でGa+HCl→GaClの反応を起こさせ、GaClガスを下方へ流し、下方で水素ガスで運ばれたNHガスとGaClによって、GaCl+NH→GaNの反応を起こし、GaNを生成し加熱された基板の上にGaNを堆積させる。HVPE法は成長速度が早くて炭素汚染が少なく設備も比較的簡易で良いという利点がある。GaNのバルク結晶を作るには最適の手法である。
しかし本発明は、MOCVD法やMOC法、昇華法などの気相成長法を使うこともできる。
本発明の基本は、オフ角度を有したGaAs基板を下地基板として用い、GaAs下地基板の上に、GaN単結晶を気相成長させ、GaAs下地基板を除去して、オフ角度を有したGaN自立結晶基板を作製するということである。
本発明者は、オフアングルのGaAs単結晶を下地基板としてGaNを気相成長させるとオフアングルのGaN単結晶ができるということを見出した。これは全く新しい知見である。この原理を利用して、本発明は、オフアングルGaAs基板を下地基板とし、その上にGaNを気相成長させることによって、オフアングルのGaN基板を作製する。しかも重要なことはGaNのオフアングルの方向、傾斜角を、下地基板のGaAs基板の方位、傾斜角によって完全に指定できるということである。だから本発明は、任意の方位、任意の傾斜角のGaN結晶基板を製造することができる。
オフアングルGaN結晶を、直接にオフアングルGaAs(111)基板の上に成長させて製造することはもちろんできる。その他にも様々の手法を使ってオフアングルGaNをオフアングルGaAs基板から製造することができる。
オフ角を持つ(111)GaAs基板の上に多数の周期的に分布した小さい窓を有するマスク(SiO、SiN)を付けてその上からGaNを気相成長させ転位が横方向へ伸びるようにしてマスクの上の部分は転位密度が低くなるようにするような工夫をすることもできる。それは既に説明したELO法をオフアングル基板に適用できるということである。マスクを使ったELO法でもオフアングル(111)GaAs基板の上にはオフアングルのGaNが成長する。しかもオフ角やオフアングルの方位も決まる。
ELO法を行うにはオフ角(111)GaAs基板の上にGaNバッファ層(20nm〜80nm)を薄く成長させてからマスクを付けてもよい。その場合でもオフアングルのGaN結晶を成長させることができる。適当な厚さのGaN結晶が成長したら基板とマスクを除去する。するとオフ角をもったGaN自立結晶ができる。ELOを使うからより転位の少ないものが得られる。
さらにまた、下地基板により大きいSiO、SiNのパターン(ストライプ、ドット状)を付けてファセットを維持しながら結晶成長し、被覆部から成長する部分に転位を掃き集めて転位の集合場所とし残りのマスク開口部の上方の部分を低転位にするファセット成長法を利用してもよい。
本発明は、図4に示すようにオフアングルの(111)GaAs下地基板の上にGaN単結晶を成長させ成長軸線に直角に単結晶を切断して所望のオフアングルをもつGaNウエハを得る。軸線に対して斜めでなく成長軸線に直角にスライスすればよいのだから無駄が少ない。薄い結晶しかできない事が多いので、その効果は大きい。たとえば400μm厚みのウエハを取るために、2インチ径の(0001)ジャストの1000μm厚みのGaN結晶を作ったとする。
ジャストのウエハなら切り代を入れても2枚取ることができる。1゜のオフ角の400μm厚みのウエハは1枚しか取れない。2゜オフ角の400μm厚みのGaNウエハであれば1枚も取ることができない。ところが本発明では2゜オフ角のウエハが欲しいという場合は初めから2゜オフアングルのGaAs下地基板の上に2゜オフアングルのGaNを成長させるのだから、1000μmの厚みの結晶から、400μmの厚みの2゜オフアングルのウエハを2枚得る事ができる。GaNウエハは極めて高価なものであるから、その効果は大きい。
さらにGaN結晶は成長の初めと中間期と終期で転位密度などが大きく相違することがあるので斜め切断するとウエハの部位によって転位密度が大きく変化することもあるが本発明は成長軸線に直角に切断するからウエハ面内で成長の時期が同一であるから転位密度などの揺らぎは少なく品質は一定している。
そのような効果があるが、本発明の価値はそれよりも、下地基板のオフ角と方向によってGaN結晶のオフ角とオフ角の方向を予め指定することができるという予見可能性の発見というところにある。
本発明が下地基板として用いるGaAs基板は、量産が可能になってから、すでに20年に近い実績があり安価容易に入手可能であるから、本発明は実施しやすい状況にある。販売されているものは(100)ジャストのGaAs基板が多いのであるが、長い(100)GaAs単結晶インゴットがLEC法やVB法、HB法で製造可能なので、それを斜めに切ってオフ角ウエハを製造するのは可能である。
本発明の骨子は、(111)オフアングルGaAs基板のオフ角αとその上に成長したGaNのオフ角βが等しいこと(β=α)、GaAsの傾斜の方位によって一義的にGaNの傾斜角の方向が決まることにある。実施例においてハッキリするが、(111)GaAs基板の法線([111]方向とαの角をなす:αがオフ角)が[111]に直交する[11−2]、[1−10]の2方向に対し、どのように傾斜しているかで傾斜角の方向を表現できる。
GaN結晶は(0001)面が、GaAsの(111)面の上に重なるように成長する。GaNの法線方向([0001]とβの角度をなす)が、[0001]に直交する[1−100]、[11−20]に対し、どのように傾斜しているかで傾斜角の方向を表現することができる。そして本発明者は、GaAs基板法線が[11−2]方向に傾いているとき、GaN結晶の法線は[1−100]に傾き、GaAs基板法線が[1−10]方向に傾いているとき、GaN結晶の法線は[11−20]方向に傾くということを見出した。つまりGaAsの[11−2]方向に、GaNの[1−100]方向が一致するし、GaAsの[1−10]方向に、GaNの[11−20]方向が一致するということである。そしてGaAs[111]軸が、GaNの[0001]に一致する。
そのような対応関係がどうして成り立つのか?その理由を推測してみた。
図5はGaNの結晶構造を表現する斜視図である。これはいくつかのセルを含むが六方晶系の対称性がわかりやすいので複数セルを図示している。大きい白丸が窒素原子、小さい丸がGa原子である。底面で中心にGaがあり、それを中心とする正六角形の頂点にもGa原子が存在する。底面の中心Gaから周辺の6個のGaを結ぶ方向が反時計廻りに、[2−1−10]、[11−20]、[−12−10]、[−2110]、[−1−120]、[1−210]である。これがGaNにおけるGa−Ga結合の方向である。ガリウム原子の存在しない方向が[1−100]などである。
図6はGaAsの結晶構造を示す斜視図である。立方晶系で閃亜鉛鉱型である。黒丸がGa、白丸がAsである。Ga原子は上下左右にある廻りの最近接(Nearest Neighbor)の4つのAsと結合している。4つの結合方向は[111]、[1−1−1]、[−11−1]、[1−1−1]である。この図で3つのGaを含む斜めの面が(111)面である。Ga原子は次近接(Second Nearest Neighbor)で6つのGa原子に対応している(結合ではない)が、その方向は、[−110]、[01−1]、[10−1]、[1−10]、[0−11]、[−101]である。これが(111)GaAsの表面におけるGa−Ga結合の方向である。
GaAsの(111)面のGa原子を囲む正六角形の頂点にある6つのGaと中心のGaを結ぶ方向が上記の[−110]、[01−1]、[10−1]、[1−10]、[0−11]、[−101]であり、GaNの(0001)面のGa原子を囲む正六角形の頂点にある6つのGaと中心のGaを結ぶ方向が上記の[2−1−10]、[11−20]、[−12−10]、[−2110]、[−1−120]、[1−210]である。GaAsとGaNではGaを共通にする。
(111)オフアングルGaAsでもGaが表面にほぼ規則正しく並んでいるから、GaAsのGa−Ga方向と、GaNのGa−Ga方向は共通であるべきである。ということはGaAs/GaNの境界において、GaAsの[−110]、[01−1]、[10−1]、[1−10]、[0−11]、[−101]が、GaNの[2−1−10]、[11−20]、[−12−10]、[−2110]、[−1−120]、[1−210]に等しいということである。そのような訳で、GaAsの法線の[−110]に対する傾きと、GaNの[2−1−10]に対する傾きが完全に対応するのであろうと推測されるのである。
[オフ角を有するGaAs基板上にELOマスクを付け或いは付けずGaN結晶を成長させてオフ角GaN基板を製造する方法]
次のような手順でオフアングルGaAs下地基板の上にGaN結晶を作り自立膜にして研削、研磨しオフアングルと結晶性を調べた。
下地基板としてオフアングルのGaAs(111)A面を用いた。GaAsは閃亜鉛鉱(Zincblende:ZnS)型で立方晶系の結晶である。GaAs(111)面は三回回転対称性のある面である。GaAs(111)面はGa原子だけが表面に出ている面と、As原子だけが表面に出ている面がある。前者を(111)Ga面あるいは(111)A面という。後者を(111)As面あるいは(111)B面という。ここではGaAs(111)結晶でGa面を上にして使うということである。
(111)Ga面は三回対称性があるから、その上に六方晶系の結晶を成長させることができる。しかし厳密に(111)Ga面でなくてオフアングルにしてある。(111)面上に存在できる結晶方向<hkm>はh+k+m=0を満足するものである。それらのうち低指数の結晶方向で互いに直交する方向は<11−2>と<1−10>である。ここで<…>は方向の集合表現、[…]は方向の個別表現である。それに対して(…)は面の個別表現であり、{…}は面の集合表現である。集合表現というのはその結晶がもつ対称操作によって互いに変換される全ての面あるいは方向の集合をいう。GaAsの(hkm)という面は、その最小面がa軸、b軸、c軸の切片の長さがa/h、b/k、c/mだということである。指数h,k、mは接片の逆数であり整数である。[hkm]という方向は(hkm)面の法線方向を意味する。
六方晶系の場合はc軸方向が少し違い、前の3つの指数は、c面に定義される120゜をなす軸(a−、b−、d−)を切る切片の長さがa/h、b/k、d/mであるとき前3指数をhkmとする。常にh+k+m=0という規則が成り立つ。4番目の指数nはその面がc軸を切る切片がc/nだということである。それで(hkmn)という4指数で六方晶系の面を指定できる。方向[hkmn]は面(hkmn)の法線として定義される。それは立方晶系の場合と同様である。
下地基板のオフアングル(オフ角)としては次の14種類のものを採用した。
(甲群) 基板表面の法線ベクトルに対し、結晶方位[111]が<1−10>の方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜しているもの7種類
(乙群) 基板表面の法線ベクトルに対し、結晶方位[111]が<11−2>の方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜しているもの7種類全てオフアングルのGaAs基板である。
そして、これらのオフアングルGaAs基板のあるものに以下のようなパターンA、パターンBのマスクを付けたエピタキシャルラテラルオーバーグロース法(ELO法:epitaxial lateral overgrowth)でGaNを成長させ、あるものはELO法を用いなかった。
パターンA=図1左に示すようなピッチが8μmで開口部幅2μm被覆部幅6μmの平行ストライプ状のマスク
パターンB=図1右に示すような一辺2μmの正方形開口部を、一辺が4μmの正三角形を敷き詰めたパターンにおいて六回対称性のある正三角形の頂点に設けたもの
(イ類) パターンAのELOマスクをGaAs基板面に形成したもの
イ類で甲群の<1−10>方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜しているものを基板1〜7とする。イ類で乙群の<11−2>方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜しているものを基板8〜14とする。
(ロ類) パターンBのELOマスクをGaAs基板面に形成したもの
ロ類で甲群の<1−10>方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜しているものを基板15〜21とする。ロ類で乙群の<11−2>方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜しているものを基板22〜28とする。
(ハ類) いずれのパターンをも持たないもの、非ELO法によるもの
ハ類で甲群の<1−10>方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜しているものを基板29〜35とする。ハ類で乙群の<11−2>方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜しているものを基板36〜42とする。
Figure 2006306722
これらの基板1〜42のオフアングルGaAs基板上に、HVPE法によってGaNの結晶層を成長させた。図2にHVPE装置を示す。反応管(炉)2の上方にGa金属を有するGaボート3を設け、下方のサセプタ4によってGaAs基板5を保持する。反応管2の周囲にはヒータ6があって反応管2の全体を加熱しGaボート3、サセプタ4を所望の温度に保持する。上方の第1ガス供給口7からH+HClガスをGaボートに吹き込みGaClガスを生成し、上方の第2ガス供給口8からH+NHガスをGaAs基板5に吹き付けGaClとNHからGaNを合成しGaAs基板の上に成長させる。
GaAs基板上へのGaN結晶の成長は初め低温で薄いバッファ層を成長させバッファ層の上に高温で厚いGaNエピタキシャル膜を成長させる。バッファ層は20nm〜80nmの厚みとする。マスクを付ける場合は、基板の上に付けても良いし、バッファ層の上に付けても良い。また、バッファ層の上にエピタキシャル層を0.4μm〜10μm程度積んでからマスク層を載せても良い。この場合、バッファ層とエピタキシャル層を合わせて0.5μm〜10μm積層してからマスクを形成することになる。バッファ層、エピ層の生成条件は次のようである。
[バッファ層の生成条件]
成長方法 HVPE法
NH分圧 0.1atm(10000Pa)
HCl分圧 1×10−3atm(100Pa)
成長温度 500℃
成長時間 60分
成長膜厚 60nm
[厚膜のエピ層の生成条件]
成長方法 HVPE法
NH分圧 0.2atm(20000Pa)
HCl分圧 3×10−2atm(3000Pa)
成長温度 1010℃
成長時間 10時間
成長膜厚 1.0mm
図3の左に示すように、GaAs基板1〜42を下地基板として上記の条件でGaN厚膜を成長させた。そのあとGaAs基板をエッチングによって除去した。それによって1mm厚みの自立GaN結晶基板が得られた。基板1〜42によって作られたGaN結晶を試料1〜42と呼ぶ。試料1〜42のいずれにおいても、GaN結晶は単結晶であった。いずれの試料においても、GaN基板表面は(0001)面(C面)とファセットが混在する凹凸のある面であった。試料1〜42の何れも、裏面は平坦面であった。
重要なことは、試料1〜42の全てにおいて下地のオフアングルGaAs基板の方位[111]と、成長したGaN厚膜の方位[0001]が平行になるようにGaNが成長したということである。GaN[0001]方位はGaN基板表面に立てた法線に対してGaAs基板のオフアングルαに等しい角度傾いていた。GaN基板[0001]方位が表面に立てた法線に対してなす角度をGaNのオフアングルβとする。この実験の結果では試料1〜42の全てにおいて、β=αとなっている。
しかもGaN[0001](c軸)が、下地基板のGaAs[111]に平行だというだけでなくて軸廻りの方位にも厳密な対応関係が維持されていた。これは重要な知見である。
GaAs下地基板の方向[111]が、GaAs<1−10>方向に傾斜していたもの、つまり甲群の基板1〜7、15〜21、29〜35の上に、GaNを成長させた試料はGaN単結晶の[0001](c軸)が<−1−120>方向へ同じ角度だけ傾斜していた。それは前記の軸の傾きが同一であるとするβ=αを前提条件(必要条件)とするが、β=αの限定を越えるものである。だからGaAsの<1−10>方向=GaN<−1−120>方向だということを意味する。つまり軸廻りにおいても方向が決まってくるということである。ここで方向について等号(=)を使って表現しているものは、それが平行だということである。方向ベクトルには長さが定義されないから平行ということを等号で強調して示しているのである。
GaAs下地基板の方向[111]が、GaAs<11−2>方向に傾斜していたもの、つまり乙群の基板8〜14、22〜28、36〜42の上に、GaNを成長させた試料はGaN単結晶の[0001](c軸)が<1−100>方向へ同じ角度だけ傾斜していた。それはGaAs<11−2>=GaN<1−100>だというような整合した結晶成長がなされるということである。それは前記の軸の傾きが同一であるとするβ=αを前提条件(必要条件)と上記のGaAs<1−10>=GaN<−1−120>から、当然に帰結することである。
だからオフアングルGaAsの上にGaNを成長させた場合、軸方向も軸廻りの方位もGaAsの方位によって一義的に決定されるということである。簡単に書くと
GaAs[111]=GaN[0001]
GaAs<1−10>=GaN<−1−120>
GaAs<11−2>=GaN<1−100>
というようなオフアングルの関係があったということが本発明者の実験によって分かった。
これらの面、方向の対応関係は、X線回折法によってGaN結晶(0001)面のオフ角度、オフ角度の方向を測定して見出したことである。基板・試料1〜42の全てについて、そのような対応があるのだから、それはもう確実な再現性をもってそのようになるということができる。
これら試料1〜42のGaN結晶基板の反りの曲率半径が5m以上であった。キャリヤ濃度はn=1×1018cm−3〜1×1019cm−3であった。電子移動度は100〜200cm/Vsであった。そのような電気的特性は、従来のGaAs(111)ジャストの基板の上に気相成長させて作ったGaN自立基板と殆ど同じであり、それに比較して遜色のないものである。
試料1〜42の自立GaN結晶を裏面の平坦部を基準面として表面を研削加工し、凹凸を除去し平滑化した。さらに研磨加工して、オフ角付きの研磨済みGaN基板を作製することができた。
これら42種類の研磨ウエハをX線面検装置によって[0001]方向の傾きを調べた。それによると基板傾きの大きさと方位は先ほどの自立膜GaNとしたときにX線回折で調べたものとほぼ同一であった。
つまり、甲群の平坦化GaN試料1〜7、15〜21、29〜35は、<−1−120>方向へ0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾いたオフアングルGaN結晶基板であった。
乙群の平坦化GaN試料8〜14、22〜28、36〜42は、<1−100>方向へ0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾いたオフアングルGaN結晶基板であった。
また結晶性は面内で均一であった。
具体的な例によって説明する。
試料18: <1−10>方向5゜傾斜GaAs(111)A面の上にパターンB(正三角形繰り返し)を作り、その上にGaNを成長させたGaN基板
このGaN試料18を測定したところ、GaN[0001]方向が<−1−120>方向に4゜25min、<1−100>方向に0゜07min傾いていた。先ほどの説明だと、試料18は<−1−120>方向に5゜、<1−100>方向に0゜の傾きの筈であるが、少し違う。それはGaN厚膜結晶に反りがあるのと測定上の問題とによって発生した食い違いである。しかしながら、その違いは微少であって、むしろ初めの下地基板のオフアングルGaAsによって、GaNのオフアングルを正確に決めることができるということが驚くべき事である。
オフアングルの範囲については、GaAs基板の[111]方向が法線より<1−10>方向(甲群)、<11−2>方向(乙群)にそれぞれ、0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾斜したものを下地基板とし、上記の3種類(パターンA、パターンB、パターンなし)の製造方法でGaN試料を作った。傾き方向が甲群、乙群のどちらでもオフアングル25゜まで成長が可能であることを確かめた。だから0〜25゜までのオフアングルのGaN結晶の製造が可能だということが確認された。
25゜を越えるとオフアングルのGaN結晶が製造できないかというとそうではない。(111)GaAsで25゜を越えるオフアングルの基板が入手できなかったので、25゜を越えるGaAs基板について本発明者はいまだGaN成長の実験をしていないのである。それで25゜を越えるオフアングルについても本発明が可能かどうかわからない。可能かもしれないし、そうでないかもしれない。
[オフ角を有するGaAs基板上にGaNを薄く成長させELOパターンを設けあるいは設けずその上にGaN結晶を成長させてオフ角GaN基板を製造する方法]
実施例1はオフ角GaAs下地基板の上に直接にELOマスクを設け(或いは設けず)その上にGaNをエピ成長させた。実施例2はオフ角GaAs基板の上に薄くGaNエピ層を付け、その上にELOマスクを設け(或いは設けず)その上にGaNをエピ成長させることにした。つまりGaNの成長が2段階になり中間でELO成長するようにする。そのようにして作ったオフアングルGaN結晶を研削研磨して平滑平坦ウエハを作りオフアングル、結晶性を調べた。
実施例1と同様に、甲群として、GaAs[111]方向が<1−10>方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾いたオフアングルのGaAs基板を準備した。
乙群としてGaAs[111]方向が<11−2>方向に0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜傾いたオフアングルのGaAs基板を準備した。
そのようなオフアングルGaAs(111)下地基板に、同じ炉内で、GaNバッファ層・エピ層を次の条件で積んで約10μmの膜厚のGaN結晶層を製造した。10μmというように薄いのはエピ層表面の平坦性を確保するためである。
[バッファ層の生成条件]
成長方法 HVPE法
NH分圧 0.1atm(10000Pa)
HCl分圧 1×10−3atm(100Pa)
成長温度 500℃
成長時間 60分
成長膜厚 60nm
[エピ層の生成条件]
成長方法 HVPE法
NH分圧 0.2atm(20000Pa)
HCl分圧 2×10−3atm(200Pa)
成長温度 1010℃
成長時間 30分
成長膜厚 10μm
オフアングルGaN/GaAs結晶に実施例1と同様なELOマスク(パターンA、B)を形成し、あるいはマスク形成しなかった。
パターンA=図1左に示すようなピッチが8μmで開口部幅2μm被覆部幅6μmの平行ストライプ状のマスク
パターンB=図1右に示すような4μmの正三角形を敷き詰めたパターンにおいて六回対称性のある正三角形の頂点に一辺2μmの正方形開口部を設けたもの
前記の甲群、乙群に加えて
(イ類)パターンAのELOをGaN膜の上に形成したもの
(ロ類)パターンBのELOをGaN膜の上に形成したもの
(ハ類)ELOマスクなし
これによって42種類のマスク/GaN/GaAsの組み合わせができる。実施例1と同様に表2の組み合わせで基板43〜基板84を定義する。
Figure 2006306722
これらの42種類のマスク/GaN/GaAsの複合基板の上に、高温で厚いGaNエピ成長膜を形成した。
[エピ層の生成条件]
成長方法 HVPE法
NH分圧 0.2atm(20000Pa)
HCl分圧 3×10−2atm(3000Pa)
成長温度 1010℃
成長時間 10時間
成長膜厚 1.0mm
こうして作製した42種類(試料43〜84)のGaN/マスク/GaN/GaAs複合基板からGaAs基板とマスクをエッチングによって除去した。そうして1.0mm厚みの自立したGaN結晶基板を得た。
GaN基板の裏面は平坦であった。GaN基板の表面は(0001)面とファセットが混在した凹凸のある面であった。
試料43〜84のGaNもオフアングルβが、GaAs基板のオフアングルαに等しかった(β=α)。しかもGaAsの<1−10>方向とGaNの<−1−120>方向が合致し、GaAs<11−2>方向とGaN<1−100>方向が一致していた。
GaN厚膜結晶の裏面の平坦部を基準面として、表面を研削加工し凹凸を除去し平滑化した。さらにGaN厚膜結晶を研磨加工して平坦平滑な表面をもつオフアングルのGaN研磨基板を作製した(図3参照)。
この平坦平滑GaN基板をX線面検装置によって[0001]方向の傾きを調べた。実施例1と同様にGaNの表面は、GaAsのオフアングルと同一オフ角(β=α)で意図した方向に傾いていることがわかった。
試料43〜84の結晶性は面内で均一であった。
[オフ角を有するGaAs基板上にGaNを厚く成長させGaN結晶を切断して複数枚のGaNウエハを作製する方法]
実施例1と同様に、二つの方向に傾斜し7種類の異なったオフアングルのGaAs基板の上にパターンA、BのELOマスクを形成しあるいは形成しないものを下地基板として初め薄いバッファ層、のちに厚い(10mm)エピ層を成長させて成長面に平行に切断してオフアングルの複数枚のGaNウエハを作製し、その特性を調べた。
GaAs(111)A面
傾斜角: 0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜
甲群: GaAs[111]方向が<1−10>方向に傾斜している
乙群: GaAs[111]方向が<11−2>方向に傾斜している
(イ類)パターンAのELOをGaN膜の上に形成したもの
(ロ類)パターンBのELOをGaN膜の上に形成したもの
(ハ類)ELOマスクなし
パターンA=図1左に示すようなピッチが8μmで開口部幅2μm被覆部幅6μmの平行ストライプ状のマスク
パターンB=図1右に示すような一辺2μmの正方形開口部を、一辺が4μmの正三角形を敷き詰めたパターンにおいて六回対称性のある正三角形の頂点に設けたもの
Figure 2006306722
上の表のように、基板の種類は42種類ある。これを基板85〜126とする。その基板によって作られたGaN結晶を試料85〜126とする。初め低温で薄いバッファ層を形成し次いで高温で厚いエピ層を形成する。
[バッファ層の生成条件]
成長方法 HVPE法
NH分圧 0.1atm(10000Pa)
HCl分圧 1×10−3atm(100Pa)
成長温度 500℃
成長時間 60分
成長膜厚 60nm
[エピ層の生成条件]
成長方法 HVPE法
NH分圧 0.2atm(20000Pa)
HCl分圧 3×10−3atm(300Pa)
成長温度 1010℃
成長時間 100時間
成長膜厚 10mm
こうしてGaN/GaAsの10mm以上の高さを有する複合基板を得た。全ての試料において、GaNのオフアングルβとGaAsのオフアングルαは等しい(β=α)。傾きの方向も同一であり、GaAs<1−10>方向がGaN<−1−120>方向に等しく、GaAs<11−2>方向がGaN<1−100>方向に等しかった。
GaAsとマスクをエッチングによって除去した。10mm厚みのGaNの自立結晶を得た。GaN結晶の裏面は平坦であった。GaN結晶の表面は(0001)面とファセットが混在する凹凸のある面であった。
これらGaNインゴットの裏面の平坦部を基準面として、表面を研削加工し凹凸を除去し平滑化した。円柱形のGaNインゴットになった。裏面の平坦面を基準面にして、ワイヤーソーによって裏面法線に垂直の方向にインゴットを切断した。400μm厚みのGaNウエハを10枚切り出すことができた。
これらのスライスしたウエハを研磨して、オフ角度付きのGaNウエハを作製することができた。ウエハをX線面検装置によって、[0001]方向の傾きを調べた。全ての試料において、意図した方位に意図した角度だけ傾いたオフアングルウエハであることを確かめた。
また結晶性は面内で均一であった。
このようにオフアングルGaAs基板上にGaNを厚膜成長し面平行に切り出す手法によると、より数多くのオフアングルのGaNウエハを得ることができる。
たとえば、10mm厚みのインゴット(実質使用可能領域7mm)から5゜オフ角、400μm厚みの2インチ径GaNウエハを本発明では10枚切り取ることができた。
しかし、それがオフ角のない10mm厚みの2インチ径GaN自立結晶から5゜オフアングルの400μm厚みのウエハを切り出そうとすると切断面と結晶裏面が平行でなく5゜傾くことになる。そのため5゜オフ角ウエハは5枚しか取れない。初めからオフアングルのインゴットを作る本発明は、その点でも極めて有用である。オフアングルGaNウエハのコスト削減に効果的である。
[オフ角GaN基板上にGaNを成長させてオフ角GaN基板を製造する方法]
以上に述べたものはオフアングルのGaAs下地基板の上にGaNを成長させるものであった。実施例4ではオフ角をもつGaN基板を下地基板として用いる。実施例1で製造したオフ角のあるGaN基板があるので、これを種結晶として用いる。つまり下地基板はこれまでオフアングルGaAsであったが、ここではオフアングルGaNを下地基板とする。だから、これはヘテロエピタキシャル成長ではなくて、ホモエピタキシャル成長である。
甲群:GaN[0001](c軸)が<−1−120>方向に傾いているもの
乙群:GaN[0001](c軸)が<1−100>方向に傾いているもの
傾斜角: 0.1゜、0.3゜、1゜、5゜、10゜、20゜、25゜
だから基板は14種類ある。甲群の7つのオフ角のものを基板127〜133、乙群の7つのオフ角のものを基板134〜140とする。
Figure 2006306722
GaNが種結晶になるのでELOは使わない。GaN基板をクリーニングした。
(クリーニング条件)
クリーニング温度 1000℃
NH分圧 0.4atm(40000Pa)
クリーニング時間 10分
この条件で基板表面のクリーニングを行った。低温バッファ層を挟まずに、直接高温でGaNの厚膜成長した。
[エピ成長の条件]
成長方法 HVPE法
NH分圧 0.2atm(20000Pa)
HCl分圧 3×10−3atm(300Pa)
成長温度 1010℃
成長時間 100時間
成長膜厚 10mm
このようなエピタキシャル成長によって、厚さ10mmのフリースタンディング(自立)のGaNインゴットを作ることができた。
このGaNインゴットはホモエピタキシャル成長であり、下地基板のGaN基板の結晶方位をそのまま引き継いで成長していた。だから成長部分のGaNのオフアングルβは下地GaNのオフアングルαと等しい。またc軸が<−1−120>方向に傾いている甲群のGaN下地基板(基板127〜133)からは、やはりc軸が<−1−120>方向に傾いたオフ角のGaNができた。乙群(基板134〜140)についても同様であった。
裏面は平坦であるが、表面は凹凸があり(0001)面とファセットの混合面となっていた。表面を研削加工して凹凸を除去した。裏面の平坦面を基準面としてワイヤソーで裏面平行に切断した。400μm厚みのウエハを10枚切り出すことができた。これらのウエハを研磨加工しオフ角付きのGaN研磨基板を得ることができた。
そのようなウエハをX線面検装置によって[0001]方向の傾きを調べた。種結晶のGaNと同じ結晶方位、オフアングルをもつことがわかった。
[オフ角GaN基板上にGaN膜エピ成長、LEDの作製]
実施例1で製造した1゜のオフ角のあるGaN基板の上にMOCVD法でGaNエピ層を成長させた。オフ角をもたないC面ジャスト基板の上にエピ成長させたものは表面に凹凸が生じたが、本発明のオフ角GaN基板の上に成長させたGaNエピ層はモフォロジーが改善され平坦になっている。オフアングル基板の長所である。そのエピ層の上にInGaNを発光層とする青色LEDを作製した。ジャスト基板の上に作ったLEDよりもオフアングル基板の上に作ったLEDの方が輝度が高かった。それはエピ層のモフォロジーが良いからであり、それはオフアングルに起因する。オフアングルGaN基板はC面ジャストの基板より高輝度のLEDの製造を可能にする。
本発明でGaAs基板上にELOマスクとして形成するELOマスクパターンの図。パターンAが、平行に伸びる開口部2μm幅、遮蔽部6μm幅でピッチが8μmであるストライプパターンである。パターンBは、一辺が4μmの正三角形を敷き詰めた繰り返し正三角形の頂点に一辺が2μmの正方形の窓を開けたものである。 ホットウォール型反応炉の上部分にGa溜めを、下部に下地基板(ウエハ)を置いたサセプタを設けて、周囲にあるヒータでGa溜めと下地基板を加熱し、上方から水素希釈HClを吹き込んでGaと反応させてGaClを生成しGaClとNHを反応させて下地基板の上にGaNを成長させるHVPE法を説明する図。 オフ角GaAs下地基板の上にマスクを形成しマスクを通してGaNを気相成長させてオフ角GaAs下地基板とマスクを除去することによってオフ角GaN結晶を得るようにした実施例1、2の製造工程の説明図と、そうして作ったオフ角GaN結晶を下地基板としてその上にGaNをエピタキシャル成長させ厚いオフ角GaN結晶を作りそれを薄くスライスして多数のオフ角GaNを作る実施例4の製造工程の説明図と、オフ角GaAs下地基板に低温成長GaNバッファ層を付けさらにマスクを付けてGaNを厚くエピタキシャル成長させオフ角GaAs下地基板とマスクを除去してオフ角GaN結晶基板を得るようにした実施例3の製造工程の説明図。 オフ角(111)GaAs下地基板の上に気相成長によってオフ角GaN結晶を厚く成長させたあと、GaAs下地基板を除去し、成長軸線に直角方向に切断してむだなくオフ角のGaN結晶ウエハを得るようにした本発明の利点を説明するための図。 GaNの結晶構造を示す原子模型図。 GaAsの結晶構造を示す原子模型図。
符号の説明
2 反応管
3 Gaボート
4 サセプタ
5 GaAs基板
6 ヒータ

Claims (15)

  1. GaN自立基板であって表裏面が平行であり表面のC面からのオフ角度が10゜よりも大きく20゜未満であることを特徴とするGaN単結晶基板。
  2. ウエハ面内のオフ角に、±35min以下のばらつきを有することを特徴とする請求項1に記載のGaN単結晶基板。
  3. GaN自立基板であって表裏面が平行でありC面からのオフ角度が0.1゜から25゜であり、キャリヤ濃度が1×1018cm−3から1×1019cm−3であることを特徴とするGaN単結晶基板。
  4. GaN自立基板であって表裏面が平行でありC面からのオフ角度が0.1゜から25゜であり、電子移動度が100cm/Vs以上200cm/Vs以下であることを特徴とするGaN単結晶基板。
  5. GaN自立基板であって表裏面が平行でありC面からのオフ角度が0.1゜から25゜であり、反りの曲率半径が5m以上であることを特徴とするGaN単結晶基板。
  6. GaN自立基板であって表裏面が平行でありC面からのオフ角度が0.1゜から25゜であり、ウエハ面内のオフ角に、±35min以下のばらつきを有することを特徴とするGaN単結晶基板。
  7. 組成がGaNとは異なるオフ角を有した下地基板上にオフ角がついたGaN結晶を成長し、下地基板を除去してGaN自立結晶とし、GaN結晶の裏面を基準として加工することで得られた表裏面が平行であることを特徴とするGaN単結晶基板。
  8. オフ角を有した下地基板が、GaAs基板であることを特徴とする請求項7に記載のGaN単結晶基板。
  9. オフ角を有したGaN基板上にオフ角がついたGaN結晶を成長し、GaN基板の裏面を基準として加工することで得られた表裏面が平行であることを特徴とする請求項7に記載のGaN単結晶基板。
  10. C面からのオフ角が0.1゜から25゜であることを特徴とする請求項7〜請求項9のいずれかに記載のGaN単結晶基板。
  11. ウエハ面内のオフ角に、±35min以下のばらつきを有することを特徴とする請求項10に記載のGaN単結晶基板。
  12. 組成がGaNとは異なるオフ角を有した下地基板にオフ角を有する結晶を成長させた後、下地基板を除去してGaN自立結晶とし、GaN結晶の裏面を基準として加工して表裏が平行な基板を得ることを特徴とするGaN単結晶基板の製造方法
  13. オフ角を有した下地基板が、GaAs基板であることを特徴とする請求項12に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
  14. オフ角を有したGaN基板上にオフ角がついたGaN結晶を成長し、GaN基板の裏面を基準として加工して表裏が平行な基板を得ることを特徴とする請求項12に記載のGaN単結晶基板の製造方法。
  15. 加工が研削、研磨もしくはスライスのうちのひとつであることを特徴とする請求項12〜請求項14のいずれかに記載のGaN単結晶基板の製造方法。
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