JP2013040059A - Iii族窒化物半導体結晶の製造方法、及び該製造方法により製造されるiii族窒化物半導体結晶 - Google Patents

Iii族窒化物半導体結晶の製造方法、及び該製造方法により製造されるiii族窒化物半導体結晶 Download PDF

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Abstract

【課題】非極性面や半極性面の主面を有する結晶成長において、結晶成長に伴う積層欠陥を抑制し、かつ結晶面がc軸方向に反ってしまう結晶の反りを抑制することを課題とする。
【解決手段】結晶成長工程において、結晶表面に洗濯岩状の形状を呈するように結晶成長させることで、課題を解決する。具体的には、結晶表面に複数の凹部及び凸部を形成させ、且つ隣り合う前記凹部及び凸部の成長方向高さの差が500μm以上である箇所を連続して2以上形成させることで課題を解決する。
【選択図】図2

Description

本発明は、III族窒化物半導体結晶の製造方法、及び該製造方法により製造されるIII族窒化物半導体結晶に関する。
窒化ガリウムに代表される窒化物半導体は、大きなバンドギャップを有し、またバンド間遷移が直接遷移型であることから、紫外、青色又は緑色等の発光ダイオード、半導体レーザー等の比較的短波長側の発光素子や、電子デバイス等の半導体デバイスの基板として有用な材料である。
このような窒化物半導体基板の主表面は、効率よく製造することができるなどの理由により(0001)面であることが一般的である。しかし、(0001)面を主面とするGaN基板上にInGaNなど半導体層を形成して半導体装置を製造した場合、ピエゾ電界が生じることに起因して本来期待される特性が得られないという問題が生じた。
これに対し、非極性面や半極性面を主面とする窒化物半導体を用いたデバイスが検討されるようになり、大型化の技術が進んできている。例えば特許文献1では、シードの主面が略同一方向に向くようにしてシードを複数配置し、シードの主面上に結晶を成長させることで大型の結晶を得ることが開示されている。また、特許文献2では、シード基板を並べ、その上に成長させた結晶を{20−21}面等を主面とするように切出し、切出した基板上で結晶成長させる方法が開示されている。
特開2010−275171号公報 特開2011−026181号公報
非極性面や半極性面の主面を有する結晶成長では、結晶成長に伴い積層欠陥が生じる。積層欠陥とは、C軸方向の結晶の原子面の積み重ねの順序が乱れている欠陥であり、積層欠陥を含む領域に発光層を成長させた場合、発光波長が長波長化してしまうことから、発光デバイスとして用いた場合にはその発光強度が低下するという問題があった。
また、結晶の外観からは認識できないが、結晶面がc軸方向に反ってしまう現象が生じる。結晶に反りが生じると、積層欠陥が生じる場合と同様に、発光デバイスとして用いた場合にはその発光強度が低下するという問題があった。
本発明者らは、上記積層欠陥及び結晶の反りの問題を解決すべく鋭意研究を進め、様々な結晶成長を試みた。そして、結晶成長時の結晶表面に、洗濯岩のように凹凸が現れる成長過程を経ることで、成長した結晶における積層欠陥、結晶面の反りが改善されることに想到し、本発明を完成させた。
通常、結晶成長時の表面は平坦成長であり、場合によっては表面が多少粗れることがある。また、特許文献2においては、結晶成長の速度が所定の速度以上である場合には、結晶成長面にストライプ形状を有する複数のファセットが形成されること、ファセットのストライプの幅及び深さは2μm〜300μmであり、ファセットが形成されると結晶に面
欠陥が発生して結晶性が低下すること、が開示されている。本発明者らは、あえて結晶成長表面に凹凸を呈することで、課題を解決した。
即ち本発明は以下のとおりである。
III族窒化物半導体結晶からなり、非極性面又は半極性面を主面とする下地基板を準備する工程、及び前記下地基板上にIII族窒化物半導体結晶を成長させる成長工程、を含むIII族窒化物半導体結晶の製造方法であって、
前記成長工程において、III族窒化物半導体結晶はその表面に複数の凹部及び凸部を形成し、且つ隣り合う前記凹部及び凸部の成長方向高さの差が500μm以上である箇所を連続して2以上形成することを特徴とする、III族窒化物半導体結晶の製造方法。
また、前記下地基板は、主面が半極性面であることが好ましく、主面が{20−21}面であることが好ましい。
また、前記成長工程において、結晶成長面における凹部と凸部を結ぶ傾斜部の傾斜方向のうち、少なくとも一方向のC軸方向とのなす角度が30°以内であることが好ましい。
また、本発明の別の態様は、上記記載の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体結晶であり、積層欠陥密度が3×104cm-1以下であることが好ましい。
本発明のIII族窒化物半導体結晶の製造方法によれば、非極性面や半極性面の主面を有する結晶成長において、結晶成長に伴う積層欠陥を抑制し、かつ結晶面がc軸方向に反ってしまう結晶の反りを抑制することができる。また、本発明の製造方法により製造したIII族窒化物半導体結晶は、発光デバイスに用いた場合に、十分な発光強度を有する結晶となる。
本発明の実施例に用いる結晶製造装置を示す概略図である。 実施例1におけるGaN結晶の形状を示す図である(図面代用写真)。
本発明のIII族窒化物半導体結晶の製造方法について、以下詳細に説明する。構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づきされることがあるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
本発明のIII族窒化物半導体結晶の製造方法は、III族窒化物半導体結晶からなり非極性面又は半極性面を主面とする下地基板を準備する工程、及び前記下地基板上に、III族窒化物半導体結晶を成長させる成長工程、を含むIII族窒化物半導体結晶の製造方法である。
<下地基板準備工程>
本発明の製造方法に用いる下地基板は、主面を非極性面又は半極性面とするものである。主面が非極性面又は半極性面であれば特段限定されないが、非極性面としては{11−20}面、{1−100}面などがあげられ、半極性面としては{20−21}面、{10−11}面、{10−12}面、{11−22}面、{11−21}面などがあげられる。このうち、下地基板の主面が半極性面であることが好ましく、{20−21}面であることがより好ましい。なお、ここでいう主面とは、デバイスを形成すべき面、あるいは構造体において最も広い面を意味する。
本明細書において非極性面および半極性面と称する場合には、±0.01°以内の精度で計測される各結晶軸から、10°以内のオフ角を有する範囲の面を含むものとする。好ましくはオフ角が5°以内であり、より好ましくは3°以内である。
また、本明細書において<・・・・>との表記は方向の集合表現、[・・・・]との表記は方向の個別表現を表す。それに対して{・・・・}との表記は面の集合表現、(・・・・)との表記は面の個別表現を表す。
下地基板はIII族窒化物半導体結晶であれば種類は特段限定されるものではないが、製造しようとしている窒化物半導体結晶を構成するIII族元素と同じ種類のIII族元素を少なくとも含む窒化物半導体の下地基板である場合が好ましく、製造しようとしている窒化物半導体結晶と同一種類のIII族窒化物半導体結晶であることがより好ましい。
本発明の製造方法で用いる下地基板は、いわゆるタイル法によるタイルとして準備しても良く、マザーシードとして準備しても良い。タイル法によるタイルとして準備する方法は、下地基板を複数準備する工程、及び下地基板の主面が略同一方向に向くようにして複数の下地基板を配置する工程、を含む方法である。この方法により、下地基板が小さい場合であっても、同様の主面を有する複数枚の下地基板を並べ、その主面上にIII族窒化物結晶を成長させることで、大型の非極性又は半極性面を主面とするIII族窒化物基板を得ることができるため、好ましい。
一方マザーシードとして準備する方法は、非極性面又は半極性面を主面とする下地基板を複数準備する工程、下地基板の主面が略同一方向に向くようにして複数の下地基板を配置する工程、複数の下地基板の主面上にIII族窒化物結晶を成長させる工程、及び得られたIII族窒化物結晶を下地基板として準備する工程、を含む方法である。このような方法を採用することにより、結晶の質が向上するため好ましい。また、大型で単一の結晶であるマザーシードを下地基板とするので、下地基板の側面を本発明の範囲にするための加工を容易に行うことができるため、好ましい。なお、上記略同一とは、主面の方向の同一性を厳密に求められない意味であり、おおよそ同じ方向を向いていれば上記実施態様の目的を達成できることを、当業者は理解する。具体的には、プレートの主面の軸方向が、プレート間で±5°以内となるように配置することが好ましく、より好ましくは±3°以内、さらに好ましくは±1°以内、特に好ましくは±0.2°以内である。
<結晶成長工程>
本発明の結晶成長工程は、III族窒化物半導体結晶の表面に複数の凹部及び凸部を形成し、且つ隣り合う前記凹部及び凸部の成長方向高さの差が500μm以上である箇所を連続して2以上形成することを特徴とする。このようにかなり大きい複数の凹凸が形成するように結晶成長させることで、結晶成長に伴う積層欠陥を抑制し、かつ結晶面がc軸方向に反ってしまう反りを抑制することができる。
先に説明のとおり、結晶成長においてはファセットが形成されることなどにより結晶の表面に凹凸が生じる場合には、結晶に面欠陥が発生し結晶性が低下することが知られていた。そのため、欠陥を生じないように結晶成長を行うためには、平坦な結晶表面を呈しつつ結晶成長させることが重要であると考えられていた。しかしながら本発明者らは、従来の知見とまったく異なり、あえて結晶成長の際に表面に凹凸を生じさせ、洗濯岩状の結晶表面を呈しながら結晶を成長させることで、結晶成長に伴う積層欠陥を抑制し、かつ結晶面がc軸方向に反ってしまう反りを抑制することができるという知見に想到した。
本発明の結晶成長では、表面の凹凸が非常に大きいことを特徴としており、隣り合う凹部及び凸部の成長方向高さの差が500μ以上であることを特徴としており、600μm以上であることが好ましく、700μm以上であることがより好ましく、800μm以上
であることが更に好ましく、1mm以上であることが特に好ましい。上限は特に限定されず、成長した結晶の大きさにもよるが通常2cm以下、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1cm以下である。なお、ここでいう成長方向とは、シード主面の法線方向のことを指す。
また、本発明の結晶成長では、上記隣り合う凹部及び凸部の成長方向の高さの差が500μm以上である箇所が、連続して2以上結晶表面に形成されることを特徴とする。このように本発明は、ファセット成長の過程において下地基板上のマスクの影響により一時的に大きな凹凸が生じる結晶の製造方法や、異状成長により一部分のみ突出した高さを有する結晶の製造方法とは異なる。すなわち、本発明の結晶成長では、階段(ステップ)の如く凹凸が連続して生じる表面を呈することを特徴とする。
このことについて、図を用いて具体的に説明する。
図2は、本発明の結晶成長工程により成長させた結晶の写真、模式図、及びその断面図である。図面中の数値は、結晶の膜厚を示す(単位:mm)。図2から明らかなように、本発明の結晶成長工程により成長させた結晶表面は、ごつごつした洗濯岩状の形状を呈する。本発明の結晶成長では、凹部12及び凸部13の成長方向高さの差14が500μm以上であることを特徴とする。また、このように成長方向高さの差14が500μm以上である箇所が連続して2以上結晶表面に形成される。
また、本発明の結晶成長を行った際、結晶の表面に存在する上記凹部と凸部との間の傾斜部15についてもある程度の長さを有することが好ましい。隣り合う凹部と凸部との間の傾斜部15の長さは500μm以上であることが好ましく、700μm以上であることがより好ましく、1mm以上であることが更に好ましい。上限は3cm以下であることが好ましく、2mm以下であることがより好ましく、1cm以下であることが更に好ましい。なお、結晶の断面図における傾斜部15は、結晶表面の模式図においては、傾斜面16に含まれる。
このように、結晶成長において洗濯岩状の表面を呈することで積層欠陥や反りが解消される理由は定かではないが、本発明者らは以下のように考えている。
洗濯岩状の表面を呈する成長では、平坦成長と比較して結晶の成長方向に成長力に対するキャップがないと考えられる。すなわち、結晶表面が平坦となるようにそろって成長せず自由に成長することから、成長方向へ成長する力に対しての妨げがないために、他の結晶への応力が緩和されているのではないかと考えられる。
本発明の成長工程において、その表面に隣り合う凹部及び凸部の成長方向の高さの差が500μm以上である箇所が連続して2以上形成されるように成長させるための方法としては例えば以下の方法が挙げられる。
まず、下地基板の主面について特定の面を選択することが挙げられる。下地基板の主面が半極性面であることが好ましく、{20−21}面であることがより好ましい。
次に、成長工程において、結晶成長面における凹部と凸部を結ぶ傾斜部の傾斜方向のうち少なくとも一方向のC軸方向とのなす角度が30°以内、好ましくは25°以内、より好ましくは20°以内となるように成長させることが挙げられる。すなわち、結晶表面の傾斜方向のうち、成長方向高さが低くなる下り傾斜方向、又は成長方向高さが高くなる昇り傾斜方向のいずれかの傾斜方向がC軸方向となす角度が、前記範囲となるように成長させることである。
また、成長工程において、結晶成長面における凹部と凸部を結ぶ傾斜部の傾斜方向のうち少なくとも一方向の+C軸から成長方向に10°傾けた軸とのなす角度が10°以内、好ましくは8°以内、より好ましくは5°以内となるように成長させることが挙げられる。すなわち、結晶表面の傾斜方向のうち、成長方向高さが低くなる下り傾斜方向、又は成長方向高さが高くなる昇り傾斜方向のいずれかの傾斜方向が+C軸から成長方向に10°傾けた軸となす角度が、前記範囲となるように成長させることである。
さらに、成長工程において、結晶成長面のうち凹部と凸部を結ぶ傾斜部を含む傾斜面が、(10−10)面から+C軸方向に10°傾いた面から±5°以内のオフ角を有する面となるように成長させることが好ましく、(10−10)面から+C軸方向に10°傾いた面となるように成長させることがより好ましい。
また、成長工程において、結晶成長面のうち凹部と凸部を結ぶ傾斜部を含む傾斜面が、(10−13)面から±5°以内のオフ角を有する面となるように成長させることが好ましく、(10−13)面となるように成長させることがより好ましい。
その他、成長速度や窒素原料のIII族原料に対するモル存在比を調整したり、下地基板を表面処理したりすることが挙げられる。
これらの条件を適宜調整することで、当業者は本発明の成長工程を実施することが可能となる。
具体的には、窒素原料のIII族原料に対するモル存在比を40以下にして結晶成長を行うことが挙げられる。窒素原料のIII族原料に対するモル存在比は、35以下にすることが好ましく、20以下にすることがより好ましく、13以下にすることがさらに好ましい。窒素原料のIII族原料に対するモル存在比の下限については、3以上にすることが好ましく、5以上にすることがより好ましく、7以上にすることがさらに好ましい。
また、結晶成長は、1040℃以下で行うことが好ましく、1030℃以下で行うことがより好ましく、1025℃以下で行うことがさらに好ましい。
また、下地基板は表面処理されていることが好ましく、KOHで洗浄処理されていることがより好ましい。
リアクター内の圧力は10kPa以上、200kPa以下であるのが好ましく、30kPa以上、150kPa以下であるのがより好ましく、50kPa以上、120kPa以下であるのがさらに好ましい。80kPa以上が特に好ましく、98kPa以上が最も好ましい。また120kPa以下が特に好ましく、110kPa以下が特段に好ましく、102kPa以下が最も好ましい。
本発明の結晶成長では、成長速度は、成長方法、成長温度、原料ガス供給量、結晶成長面方位等により異なるが、70μm/h以上が好ましく、75μm/h以上がより好ましく、80μm/h以上であることがさらに好ましい。また成長速度は、120μm/h以下が好ましく、110μm/h以下がより好ましく、100μm/h以下であることがさらに好ましい。成長速度は、上記の他、キャリアガスの種類、流量、供給口−結晶成長端距離等を適宜設定することによって制御することができる。
なお、これらの要件については、すべて充足する必要がないことはいうまでもなく、当業者であれば、上記範囲内で適宜設定して本発明の製造方法を達成することが可能である。
本発明の結晶成長工程における成長方法としては、
1)ハライド気相成長法(HVPE法)
2)有機金属化学蒸着法(MOCVD法)
3)有機金属塩化物気相成長法(MOC法)
4)昇華法
5)液相エピタキシー法(LPE法)
6)アモノサーマル法
などの公知の方法を適宜採用することができる。本発明のIII窒化物半導体結晶の製造方法には気相成長法を採用することが好ましく、量産性の観点からHVPE法またはMOCVD法を採用することがより好ましく、HVPE法を採用することが特に好ましい。以下、HVPE法を採用した結晶成長方法を、製造装置と共に説明する。
図1には、HVPE法を採用した製造方法に用いられる製造装置の概念図を示す。図1に図示したHVPE装置は、リアクター100内に、下地基板(シード)を載置するためのサセプター107と、成長させるIII族窒化物半導体結晶の原料を入れるリザーバー105とを備えている。また、リアクター100内にガスを導入するための導入管101〜104と、排気するための排気管108が設置されている。さらに、リアクター100を側面から加熱するためのヒーター106が設置されている。
リアクター100の材質としては、石英、焼結体窒化ホウ素、ステンレス等を用いることができるが、好ましい材質は石英である。リアクター100内には、反応開始前にあらかじめ雰囲気ガスを充填しておく。雰囲気ガス(キャリアガス)としては、例えば、水素、窒素、He、Ne、Arのような不活性ガス等を挙げることができる。これらのガスは1種のみで用いてもよく、混合して用いてもよい。
サセプター107の材質としてはカーボンが好ましく、SiCで表面をコーティングしているものがより好ましい。サセプター107の形状は、本発明で用いる下地基板(シード)を設置することができる形状であれば特に制限されないが、結晶成長する際に結晶成長面付近に構造物が存在しないものであることが好ましい。結晶成長面付近に成長する可能性のある構造物が存在すると、そこに多結晶体が付着し、その生成物としてHClガスが発生して、結晶成長させようとしている結晶に悪影響が出る場合がある。シードとサセプター107の接触面は、シードの結晶成長面から1mm以上離れていることが好ましく、3mm以上離れていることがより好ましく、5mm以上離れていることがさらに好ましい。
リザーバー105には、成長させるIII窒化物半導体の原料を入れる。III族源となる原料として、Ga、Al、Inなどを挙げることができる。リザーバー105にガスを導入するための導入管103からは、リザーバー105に入れた原料と反応するガスを供給する。例えば、リザーバー105にIII族源となる原料を入れた場合は、導入管103からHClガスを供給することができる。このとき、HClガスとともに、導入管103からキャリアガスを供給してもよい。キャリアガスとしては、例えば水素、窒素、He、Ne、Arのような不活性ガス等を挙げることができる。これらのガスは1種のみで用いてもよく、混合して用いてもよい。
導入管104からは、窒素源となる原料ガスを供給する。通常はNH3を供給する。また、導入管101からは、キャリアガスを供給する。キャリアガスとしては、導入管104から供給するキャリアガスと同じものを例示することができる。このキャリアガスは原料ガスノズルを分離し、ノズル先端にポリ結晶が付着することを防ぐ効果もある。また、導入管102からは、ドーパントガスを供給することもできる。例えば、SiH4やSiH2Cl2、H2S等のn型のドーパントガスを供給することができる。
導入管101〜104から供給する上記ガスは、それぞれ互いに入れ替えて別の導入管から供給しても構わない。また、窒素源となる原料ガスとキャリアガスは、同じ導入管から混合して供給してもよい。さらに他の導入管からキャリアガスを混合してもよい。これらの供給態様は、リアクター100の大きさや形状、原料の反応性、目的とする結晶成長速度などに応じて、適宜決定することができる。
ガス排気管108は、リアクター内壁の上面、底面、側面に設置することができる。ゴミ落ちの観点から結晶成長端よりも下部にあることが好ましく、図1のようにリアクター底面にガス排気管108が設置されていることがより好ましい。
本発明の製造方法における結晶成長は、通常は950℃〜1120℃で行い、970℃〜1100℃で行うことが好ましく、980℃〜1090℃で行うことがより好ましく、990℃〜1080℃で行うことがさらに好ましい。リアクター内の圧力は10kPa〜200kPaであるのが好ましく、30kPa〜150kPaであるのがより好ましく、50kPa〜120kPaであるのがさらに好ましい。
また、本発明における結晶成長の成長速度は、成長方法、成長温度、原料ガス供給量、結晶成長面方位等により異なるが、一般的には5μm/h〜500μm/hの範囲であり、10μm/h以上が好ましく、50μm/h以上がより好ましく、70μm以上であることがさらに好ましく、140μm/h以上が特に好ましい。本発明の製造方法では、結晶の成長速度を遅くしなくても多結晶の発生を抑制することができることから、効率よくIII族窒化物半導体結晶を得ることができる。成長速度は、キャリアガスの種類、流量、供給口−結晶成長端距離等を適宜設定することによって制御することができる。なお、上記結晶成長条件は、先に述べた本発明の製造方法を達成するための好ましい要件とは異なる条件を含むものであるが、先に述べた本発明の製造方法を達成するための要件のうち、結晶成長の温度、圧力、速度以外の要件により本発明の製造方法を達成する場合には、結晶成長の温度、圧力、速度の条件は通常結晶成長を行う範囲の条件を用いれば良い。
<本発明のIII族窒化物半導体結晶>
本発明の製造方法により得られるIII族窒化物半導体結晶は、結晶成長に伴う積層欠陥を抑制し、かつ結晶面がc軸方向に反ってしまう反りを抑制することができる。
結晶の積層欠陥は低温PL法により評価することが可能であり、本発明の製造方法により製造したIII族窒化物半導体結晶は、積層欠陥密度が3×104cm-1以下であることが好ましく、1×103cm-1以下であることがより好ましい。
なお低温PL法は、例えば10Kまで冷却し、励起光源としてHe−Cdレーザーを用いて測定することができる。
c軸方向への反りについては、チルト角分布を測定することで評価することが可能であり、本発明の製造方法により製造したIII族窒化物半導体結晶は、チルト角分布が40mm間隔換算で±1°未満であることが好ましく、±0.5°未満であることがより好ましい。
なお、チルト角分布は、例えばX線回折法のωスキャンをc軸方向に3点実施することにより求めることができる。
また、本発明の製造方法により得られるIII窒化物半導体結晶は、主面の面積が大きいほど好ましい。上述したタイル法やマザーシードを用いた方法により、主面の面積を例えば500mm2以上にすることが可能であり、2500mm2以上にすることが可能であり、さらには10000mm2以上にすることが可能である。
また、本発明の製造方法による得られるIII族窒化物半導体結晶は、窒化ガリウム、窒化アルミニウム、窒化インジウムをあげることができる。
また、本発明の製造方法により得られるIII族窒化物半導体結晶は、結晶内キャリア濃度が1×1018cm-3以上であることが好ましく、1×1019cm-3であることがより好ましい。結晶内のキャリア濃度が高いと、結晶内の抵抗率が低く、導電性に優れた半導体結晶となる。上記結晶内のキャリア濃度は、van der Pauw法によるホール
測定を用いて測定することができる。
本発明の製造方法により得られた窒化物半導体結晶は、さまざまな用途に用いることができる。特に、紫外、青色又は緑色等の発光ダイオード、半導体レーザー等の比較的短波長側の発光素子や、電子デバイス等の半導体デバイスの基板として有用である。
以下、実施例と比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、以下の実施例に示す具体的な形態にのみ限定的に解釈されることはない。
<実施例1>
図1に示すHVPE法による結晶製造装置により、結晶成長を行った。(0001)面成長により作製された、<0001>(c軸)方向に17mm、<11−20>(a軸)方向に30mmの長方形で、主面が(20−21)面であるGaN自立基板を8枚準備した。8枚の基板を<0001>(c軸)方向に4列、<11−20>(a軸)方向に2列に並べたものを用意し、サセプター107上に置いた。並べた基板を搭載したサセプター107を図1に示すようにリアクター100内に配置して、反応室の温度を1020℃まで上げ、HVPE法にてGaN単結晶膜を78時間成長させた。この単結晶成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスG3の分圧を5.96×102Paとし、NH3ガスG4の分圧を6.98×103Paとした。単結晶成長工程が終了後室温まで降温し、GaNバルク結晶を得た。結晶は[20−21]方向に最大で12.2mm、最小8mm以下の成長膜厚であった。成長膜厚分布には傾向がなく、ランダムな膜厚分布であった。
得られたGaNバルク結晶について、断面蛍光像観察を行ったところ、シード界面から80μm厚の蛍光像の暗い層が観察された。この蛍光像の暗い層のSIMS測定を行ったところ、酸素濃度が5×1019cm-3であり、結晶の大部分の酸素濃度が3×1018cm-3であるのと比較して、酸素濃度が高い層であることが分かった。得られたGaNバルク結晶1について外形加工、表面研磨処理を行った後、通常の手法でこれをスライスし、研磨を行って、厚さ400μmの(20−21)面を主面とする55mm角の正方形のGaN自立基板を作製した。作製されたGaN自立基板には、貫通穴が多いことが確認された。
前記55mm角の(20−21)面を主面とするGaN自立基板をサセプター107上に置き、HVPE法にてGaN単結晶膜を130時間成長させたところ、結晶成長面が凹凸を有する洗濯岩形状のGaNバルク結晶1を得た。結晶は[20−21]方向に最大で19.6mm、最小で8.6mmの成長膜厚であった。成長膜厚分布には傾向がなく、ランダムな膜厚分布であり、隣り合う凹凸の成長方向高さの差が500μm以上である箇所がほとんどを占めた。また、成長したGaNバルク結晶1の模式図を図2に示す。
得られたGaNバルク結晶1について外形加工、表面研磨処理を行った後、通常の手法でこれをスライスし、研磨を行って、厚さ400μmの(10−10)面を主面とするGaN自立基板1を31枚作製した。
得られた31枚のGaN自立基板1のうち、シード側から15番目の基板の反りの評価を実施した。基板面内におけるc軸方向のチルト角分布を、X線回折法のωスキャンをc軸方向に3点実施することにより測定したところ40mm間隔換算で±0.35°であった。
次に、シード側から14番目のGaN自立基板1を用いて、MOCVD法により405nm発光のInGaN系のLED構造を作製した。具体的には、基板にInGaN/GaN量子井戸を含んだ構造を成長することによってLED構造を作製した。作製したLED
について、中心波長325nmのHe−Cdレーザーを励起光源として用いて室温にてPL(photo−luminescence)測定を実施したところ、PL強度は最大4.615、平均1.282であった。
<実施例2>
図1に示すHVPE法による結晶製造装置により、結晶成長を行った。(0001)面成長により作製された、<0001>(c軸)方向に17mm、<11−20>(a軸)方向に30mmの長方形で、主面が(20−21)面であるGaN自立基板を8枚準備した。8枚の基板を<0001>(c軸)方向に4列、<11−20>(a軸)方向に2列に並べたものを用意し、サセプター107上に置いた。並べた基板を搭載したサセプター107を図1に示すようにリアクター100内に配置して、反応室の温度を1020℃まで上げ、HVPE法にてGaN単結晶膜を140時間成長させた。この単結晶成長工程においては成長圧力を1.01×105Paとし、GaClガスG3の分圧を5.96×102Paとし、NH3ガスG4の分圧を6.98×103Paとした。単結晶成長工程が終了後室温まで降温し、GaNバルク結晶2を得た。結晶は、結晶成長面が凹凸を有する洗濯岩形状であり、[20−21]方向に最大で12.2mm、最小8mm以下の成長膜厚であった。成長膜厚分布には傾向がなく、ランダムな膜厚分布であり、隣り合う凹凸の成長方向高さの差が500μm以上である箇所がほとんどを占めた。
得られたGaNバルク結晶2について、断面蛍光像観察を行ったところ、シード界面から80μm厚の蛍光像の暗い層が観察された。この蛍光像の暗い層のSIMS測定を行ったところ、酸素濃度が5×1019cm-3であり、結晶の大部分の酸素濃度が3×1018cm-3であるのと比較して、酸素濃度が高い層であることが分かった。
得られたGaNバルク2結晶について外形加工、表面研磨処理を行った後、通常の手法でこれをスライスし、研磨を行って、厚さ400μmの(10−10)面を主面とするGaN自立基板2を31枚作製した。
得られた31枚のGaN自立基板2のうち、シード側から15番目の基板の反りの評価を実施した。基板面内におけるc軸方向のチルト角分布を、X線回折法のωスキャンをc軸方向に3点実施することにより測定したところ40mm間隔換算で±0.14°であった。
<比較例1>
シードとして主面が(10−10)面であるGaN自立基板を用いた点を変更した以外は、実施例2と同じ条件でGaNバルク結晶3を得た。結晶は、結晶成長面が平坦であり、[10−10]方向に5.0mmの成長膜厚であった。成長膜厚分布は、±0.2mm以内の分布であり、隣り合う凹凸の成長方向高さの差が500μm以上である箇所は存在しなかった。この結晶から実施例1と同じ方法により厚さ400μmのGaN自立基板3を10枚作製し、シード側から6番目の基板の反りの評価を実施した。結果を表1に示す。
次に、シード側から5番目のGaN自立基板3を用いて実施例1と同じ条件でLED構造を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
<比較例2>
シードとして主面が(10−1−1)面であるGaN自立基板を用いた点を変更した以外は、実施例2と同じ条件でGaNバルク結晶4を得た。成長は2回に分けて実施し、1回目は78時間成長、2回目は130時間成長であった。2回目の成長前に、結晶の酸洗浄を実施した。結晶は[10−1−1]方向に結晶中心で25mm成長した。中心から<0001>方向に向けては傾斜面になっており、<0001>方向にいくにつれて薄くなるような傾向であった。一方、中心から<000−1>方向に向けては、成長膜厚はほぼ一定であり、いずれの方向にも隣り合う凹凸の成長方向高さの差が500μm以上である
箇所は存在しなかった。この結晶から実施例1と同じ方法により厚さ400μmのGaN自立基板4を51枚作製し、シード側から32番目の基板の反りの評価を実施した。結果を表1に示す。
次に、シード側から25番目のGaN自立基板4を用いて実施例1と同じ条件でLED構造を作製し、同様に評価した。結果を表1に示す。
100 リアクター
101 キャリアガス用配管
102 ドーパントガス用配管
103 III族原料用配管
104 V族原料用配管
105 III族原料用リザーバー
106 ヒーター
107 サセプター
108 排気管
109 成長用基板
G1 キャリアガス
G2 ドーパントガス
G3 III族原料ガス
G4 V族原料ガス
1 GaN結晶
11 結晶表面
12 凹部
13 凸部
14 隣り合う凹凸の結晶成長方向高さ差
15 傾斜部
16 傾斜面

Claims (6)

  1. III族窒化物半導体結晶からなり、非極性面又は半極性面を主面とする下地基板を準備する工程、及び前記下地基板上にIII族窒化物半導体結晶を成長させる成長工程、を含むIII族窒化物半導体結晶の製造方法であって、
    前記成長工程において、III族窒化物半導体結晶はその表面に複数の凹部及び凸部を形成し、且つ隣り合う前記凹部及び凸部の成長方向高さの差が500μm以上である箇所を連続して2以上形成することを特徴とする、III族窒化物半導体結晶の製造方法。
  2. 前記下地基板は、主面が半極性面である請求項1に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  3. 前記下地基板は、主面が{20−21}面である請求項1に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  4. 前記成長工程において、結晶成長面における凹部と凸部を結ぶ傾斜部の傾斜方向のうち、少なくとも一方向のC軸方向とのなす角度が30°以内であることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のIII族窒化物半導体結晶の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されるIII族窒化物半導体結晶。
  6. 積層欠陥密度が3×104cm-1以下であることを特徴とする、請求項5に記載のIII族窒化物半導体結晶。
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