WO2014181648A1 - インクジェット用インク及びインクジェット印刷方法 - Google Patents
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Abstract
Description
例えば、紫外線硬化型インクは、紫外線照射によって重合硬化するため、加熱が不要で短時間で硬化可能であるという利点があるが、熱光重合開始剤などの配合が必須であり、このため、非常に高価であるばかりか、重合硬化に伴って開始剤などに由来する低分子量成分が発生し、異臭を発生するという欠点がある。
これに対して溶剤加熱硬化型のインクは、安価であり、異臭の発生の問題も無いのであるが、反面、重合硬化のために養生過程が必要である。また、短時間で硬化しようとする場合、プラスチックの融点を大きく超えるような高温での加熱を必要とし、プラスチック成形品などのへの印刷に際しては、加熱により、プラスチック成形品が熱変形してしまうなどの問題を生じる。
例えば、特許文献2の実施例9には、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを含むコーティング溶液を用いてプラスチックキャップの天面上面(頂板部外面)にポリウレタン樹脂層を形成することが開示されている。しかしながら、このコーティング液を用いてキャップに強固に密着したポリウレタン樹脂層を形成するには、130℃に近い温度で数分間加熱しなければならず、このため、キャップ変形という問題がしばしば発生していた。この場合、加熱時間を短縮することによりキャップの変形を確実に回避することもできるが、このような場合、コーティング液の滲みなどが発生してしまい、このため、このコーティング液をインクとして使用するには無理がある。
(1)前記ポリイソシアネートが、3以上の官能基を有していること、
(2)前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から成る群より選択された少なくとも1種を構成単位とすること、
(3)前記ポリイソシアネートは、活性メチレン化合物により末端がブロック化されていること、
(4)前記揮発性溶剤としてジエチレングリコールジエチルエーテルが使用されていること、
(5)さらに、顔料を含有していること、
が好ましい。
上述したインクジェット用インクを使用し、
該インクを用いてのインクジェット印刷により前記成形品の表面に印刷層を形成し、
次いで前記成形品の表面を70~130℃の温度に加熱することにより、前記印刷層を固定すること、
を特徴とする印刷方法が提供される。
かかる印刷方法においては、
(1)前記成形品としてプラスチック製のものを使用すること、
(2)前記成形品の少なくとも表面がポリオレフィン製であること、
(3)前記成形品がポリオレフィン製キャップであり、該キャップの天面外面にインクジェット印刷を行うこと、
が特に好適である。
特に、本発明のインクジェット用インクは、低温短時間で速やかに硬化するため、特にプラスチック成形品の表面へのインクジェット印刷に極めて適しており、加熱硬化に際してのプラスチック成形品の熱変形等を有効に回避することができる。
以下、各成分について説明する。
本発明のインクジェット印刷用インクに樹脂成分として含まれるポリエステルポリオール及びポリイソシアネートは、適宜の温度(例えば70~130℃)に加熱することにより容易に反応してポリウレタンを形成するものである。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、オルソフタル酸、P-β-オキシエトキシ安息香酸、ナフタレン2,6-ジカルボン酸、ジフェノキシエタン-4,4’-ジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、アジピン酸、セバシン酸、コハク酸、マロン酸などの少なくとも1種を例示することができる。さらに、ピロメリット酸やトリメリット酸、3,4,3',4’-ビフェニルテトラカルボン酸乃至その無水物の如き、多塩基性のカルボン酸も併用することができる。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,6-ヘキシレングリコール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物等の少なくとも1種が使用される。また、トリメチロールメタン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の3価以上のアルコールを併用することもできる。
例えば、水酸基価が上記範囲よりも大きいポリエステルポリオールでは、ポリイソシアネートとの反応点が多くなり過ぎる結果、硬化速度が低下してしまい、硬化速度を高めるには、例えば130℃を超える高温での加熱が必要となってしまう。また、水酸基価が上記範囲よりも小さい場合には、ポリイソシアネートとの反応点が少なくなってしまい、この結果、得られる硬化物は緻密性を欠き、密着性、耐熱水性、耐薬品性などが損なわれてしまう傾向がある。
尚、硬化温度とは、末端を封鎖しているブロック化剤が反応し硬化反応が進行する温度である。
Y=NCOモル数/PEO/OHモル数/PIN (1)
=(PIN/PEO)・(NCOモル数/OHモル数)
式中、PEOは、ポリエステルポリオールの数平均分子量であり、
PINは、ポリイソシアネートの数平均分子量である、
で表される官能基指数Yが0.4~2.0となるような量で使用することが好ましい。
この官能基指数Yは、(ポリオール単位分子量あたりのNCOモル数)と(ポリイソシアネート単位分子量あたりのOHモル数)の比を表す。Yの値が1に近ければOHとNCOとが反応系内全体にわたって均等に近い状態で存在する状態になり、ウレタン反応が素早く進行することを意味する。従って、Yの値が1値に近いほど硬化反応に要する時間が短く且つ成形品に対する密着性の点でも有利となり、Yの値が上記範囲から外れるほど、多くのOHとNCOとが離れてばらばらに存在していることとなり、硬化反応に時間を要するか、もしくは反応に寄与できない官能基が多数生じることとなり、速硬化性や成形品に対する密着性の点で不利となる。
NCO/OH(モル比)
=(B/A)×(561/OHV)×(NCO%/42)
式中、
OHV:ポリエステルポリオール(溶剤溶解後)の水酸基価(mg
KOH/g)
NCO%:ポリイソシアネート(溶剤溶解後)のイソシアネート基
の量(wt%)
即ち、上記のNCO/OH(モル比)から算出されるY値が0.4~2.0の範囲にあることが好ましいが、硬化皮膜物性の観点から、このNCO/OH(モル比)が0.5~10.0、特に0.8~6.0の範囲となるように、ポリエステルポリオールとポリイソシアネートとを使用することがより好ましい。特に、ポリエステルポリオールの使用量が少なく、NCO/OH(モル比)が上記範囲よりも大きい場合には、未反応のイソシアネートが系内に多数残存し、また、ポリエステルポリオールの使用量が多く、NCO/OH(モル比)が上記範囲よりも小さい場合には、架橋されていないポリオール側の官能基が多数存在する結果となってしまい、何れの場合にも最終硬化皮膜の耐薬品性などが顕著に悪化し、さらに後述する実験例1に示されている硬化性判定も不良となってしまうおそれがある。
本発明のインクジェット用インクでは、上記の樹脂成分は揮発性有機溶剤に溶解乃至分散される。即ち、低温短時間での硬化を実現するためには、用いる有機溶剤としては、当然、揮発性のものを使用しなければならない。
尚、本発明において、揮発性有機溶剤とは、上述したポリエステルポリオールやポリイソシアネートの溶解性に優れており、ノズルヘッドなどでも目詰まりを発生することなく、吐出性に支障をきたすようなことの無いようにヘッド部材への浸食性が低く、インク固形分が変化しにくいように揮発性の高い溶剤は避け、インクジェット印刷をスムーズに行い得るという観点から、大気圧下での沸点が100℃以上の中沸点の有機溶剤を含んでいることが好ましい。
このような有機溶剤の具体例としては、これに限定されるものではないが、以下のものを例示することができる。
アルコール系有機溶剤;
イソプロパノール、n-ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール。
ジアルキルグリコールエーテル系溶剤;
ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル。
エチレングリコールエーテル系溶剤;
エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノイソブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノイソブチルエーテルグリコール、エチレングリコールアセテート。
プロピレングリコールエーテル系溶剤;
プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート。
エステル系溶剤;
酢酸エチル、酢酸メチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル。
ケトン系溶剤;
ペンタン、アセトン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)。
エーテル系溶剤;
例えば、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン。
炭化水素系溶剤;
例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン。
勿論、これらの有機溶剤は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を混合して混合溶媒の形で使用することもできる。
本発明において、最も好適なものは、ジエチレングリコールジエチルエーテル(DEDG)である。
本発明のインクジェット用インクにおいては、当然、加飾や情報表示のための印刷層を形成するために、各色の顔料が適宜配合される。
このような顔料としては、下記の顔料を例示することができる。
カーボンブラック、アセチレンブラック、ランブラック、アニリンブラック。
黄色顔料;
黄鉛、亜鉛黄、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、ミネラルファストイエロー、ニッケルチタンイエロー、ネーブルスイエロー、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、ハンザイエロー10G、ベンジジンイエローG、ベンジジンイエローGR、キノリンイエローレーキ、パーマンネントイエローNCG、タートラジンレーキ、アゾイエロー、ベンズイミドアゾイエロー、アゾビスイエロー。
橙色顔料;
赤口黄鉛、モリブテンオレンジ、パーマネントオレンジGTR、ピラゾロンオレンジ、バルカンオレンジ、インダスレンブリリアントオレンジRK、ベンジジンオレンジG、インダスレンブリリアントオレンジGK、キナクリドンバーンオレンジ。
赤色顔料;
ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッドカルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ローダミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3B。
紫色顔料;
マンガン紫、ファストバイオレットB、メチルバイオレットレーキ。
青色顔料;
紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBC、ピグメントバイオレット、キナクリドンレッド、キナクリドンクリムゾン、キナクリドンマゼンタ。
緑色顔料;
クロムグリーン、酸化クロム、ピグメントグリーンB、マラカイトグリーンレーキ、ファナルイエローグリーンG。
白色顔料;
亜鉛華、酸化チタン、アンチモン白、硫化亜鉛。
体質顔料;
バライト粉、炭酸バリウム、クレー、シリカ、ホワイトカーボン、タルク、アルミナホワイト。
本発明のインクジェット用インクには、低温短時間での硬化性を損なわない範囲において、それ自体公知の各種配合剤、例えば界面活性剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、増粘剤、酸化防止剤、フィラー等を適宜の量で配合することができる。
本発明においては、上述したインクジェット用インクを用いてのインクジェット印刷を用いて種々の印刷層を各種の成形品の表面に形成する。この印刷層は、種々の色のベタ層であってもよいし、文字像のような像であってもよい。
このようにしてインクジェットインクの層(未硬化層)を形成した後、この成形体表面を加熱して該インク層を硬化させ、成形体表面に固定し、これにより、インクジェット印刷が完了する。
先にも述べたように、本発明のインクジェット用インクは、低温短時間での加熱により、成形品表面に対して密着性の高い印刷層を形成することができため、インクジェット用インクを保持するための受容層の形成にも用いることができるわけである。このような受容層を形成した後のインクジェット印刷は、一般的には、前述した本発明のインクジェット用インクを用いて行われるが、成形品が特に低温短時間加熱を要求しないようなものであれば、公知のインクジェット用インクを用いて行うことも可能である。また、受容層用のインクを施した後、続いてインクジェット印刷を重ねて行った後、最後に加熱して硬化することも可能である。
表1に示すA~Pのポリエステルポリオールについて、有機溶剤に対する溶解性を以下の方法で評価し、その結果を表1に併せて示した。
溶解性の評価;
試料のポリエステルポリオールを、ジエチレンジグリコール(DEDG)100重量部当り25重量部添加し、45℃の温浴で16時間湯煎した。
湯煎後、ろ過を行って凝集物の有無を目視確認し、以下の基準で溶解性を判定した。
X:凝集物が確認され、溶解性が悪い。
〇:凝集物は確認されず、溶解性が良好である。
高分子活性剤をジエチレングリコールジエチルエーテルに添加後、カーボンブラックが15Wt%となるように加え、攪拌機及びビーズミルにて分散処理を行った後、遠心分離法にて粗粒を取り除き、分散液を調製した。
また、ポリエステルポリオールMと、ポリイソシアネートとを、NCO/OHモル比が5.36となるように混ぜた混合液を調製した。
尚、ポリエステルポリオールとしては、ジエチレングリコールジエチルエーテルに溶解したものを用いた。ポリイソシアネートとしては、活性メチレン化合物でブロックされた平均官能基数5.5、平均分子量1500のものを、酢酸n-ブチルおよびn-ブチルの混合溶液に溶解したものを用いた。
このようにして作成したサンプルについて、硬化性を判定した。
硬化性評価は、次のようにして行った。
印刷キャップ単体の印刷面を、王子コンテナー(株)製の厚み4mmの段ボール紙に、重さ1kgの荷重をかけて接触させた状態で、一定の速度で60mmの距離を1分間に45往復の速度で(株)東洋精機製作所製の摺動試験機にて摺動試験を行った。試験は100往復とし、試験後に印刷面のインクの剥離状態を視覚評価した。
◎:剥離が認められなかった。
○:剥離が認められたが、剥離面積は印刷面積に対し5%以内である。
×:剥離が認められ、剥離面積は印刷面積に対し6%以上である。
◎、○が許容範囲内、×を許容範囲外である。
以上の硬化性の評価結果を、用いたポリエステルポリオール毎に示すと、以下のとおりである。
ポリエステルポリオール 硬化性評価
M 〇
N 〇
O ◎
P ◎
Claims (10)
- ポリエステルポリオールとブロック化されたポリイソシアネートとが揮発性有機溶剤に溶解乃至分散されている液からなり、該ポリエステルポリオールは、数平均分子量が8000以下、水酸基価(KOHmg/g)が17~50の範囲にあり、且つ70℃以下のガラス転移点(Tg)を有していることを特徴とするインクジェット用インク。
- 前記ポリイソシアネートが、3以上の官能基を有している請求項1に記載のインクジェット用インク。
- 前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、メタキシリレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、リジンイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)から成る群より選択された少なくとも1種を構成単位とする請求項2記載のインクジェット用インク。
- 前記ポリイソシアネートは、活性メチレン化合物により末端がブロック化されている請求項1に記載のインクジェット用インク。
- 前記揮発性溶剤としてジエチレングリコールジエチルエーテルが使用されている請求項1に記載のインクジェット用インク。
- さらに、顔料を含有している請求項1に記載のインクジェット用インク。
- プラスチック製或いは非金属製の成形品の表面にインクジェット印刷像を形成する印刷方法において、
請求項1に記載のインクジェット用インクを使用し、
該インクを用いてのインクジェット印刷により前記成形品の表面に印刷層を形成し、
次いで前記成形品の表面を70~130℃の温度に加熱することにより、前記印刷層を固定すること、
を特徴とする印刷方法。 - 前記成形品としてプラスチック製のものを使用する請求項7に記載の印刷方法。
- 前記成形品の少なくとも表面がポリオレフィン製である請求項8に記載の印刷方法。
- 前記成形品がポリオレフィン製キャップであり、該キャップの天面外面にインクジェット印刷を行う請求項9に記載の印刷方法。
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