WO2012133712A1

WO2012133712A1 - 成形金型及び光学素子の製造方法

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Publication number: WO2012133712A1
Application number: PCT/JP2012/058486
Authority: WO
Inventors: 大石哲史
Original assignee: コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社
Priority date: 2011-03-31
Filing date: 2012-03-29
Publication date: 2012-10-04

Abstract

　ノズルタッチ時の金型の局所的変形を抑えて高精度の光ピックアップ装置用レンズその他の光学素子を形成することができる成形金型を提供することを目的とする。　ノズルタッチ部６５ａの密着面である楕円体状面Ｓ３１ｂによってタッチ力をノズルタッチ部６５ａ内に広く分散させることができるので、ノズルタッチ部６５ａ周辺における第１金型４１の局所的な変形を抑えることができる。これにより、第１金型４１と第２金型４２とによって成形されるレンズＬＰの偏芯を低減して、高精度のレンズＬＰ（具体的には光ピックアップ装置用の対物レンズ）を形成することができる。

Description

成形金型及び光学素子の製造方法

　本発明は、光学素子の射出成形に際して用いられる成形金型及び光学素子の製造方法に関する。

　光学素子の射出成形では、型締めされた一対の金型間に形成された成形空間に連通するスプルーブッシュに対して、射出装置のノズルの先端の外周を環状に接触させたノズルタッチ状態で、射出装置のノズルからの樹脂を高速・高圧で成形空間中に充填する（特許文献１参照）。

　例えば光ピックアップ装置用の対物レンズは、近年の高性能化によってレンズのサイズが小型化するとともに相対的な肉厚が厚くなっており、その転写性を確保するため、射出装置のノズルから樹脂を高速で射出させ成形空間を高速で充填する必要がある。特に光学面に微細加工が施されている光ピックアップ装置用の対物レンズの場合、高速充填後に高圧力で保持する必要性がある。

　以上のように、射出装置のノズルから樹脂を高圧力で射出して高圧に保持する場合には、ノズルタッチ時にノズルをスプルーブッシュに一定以上の力で強く押しつける必要が生じる。この場合、ノズル先端の外周とスプルーブッシュとの接触点で応力が集中し、金型が局所的に湾曲する。このような金型の局所的湾曲も、ディスクの成形では特に問題が生じないレベルであるが、光ピックアップ装置用の対物レンズのように高い形状精度が要求されるものでは、ノズルタッチ時の局所的湾曲に起因する形状的な偏芯がコマ収差等として無視できなくなることが分かってきた。とりわけ、互換等の目的で微細な構造が設けられたピックアップ装置用レンズの場合、上記のような偏芯に対する感度が高く、金型の局所的湾曲が光学性能に大きく影響する。

国際公開第２００４／４５８２２号

　本発明は、上記背景技術の問題点に鑑みてなされたものであり、ノズルタッチ時の金型の局所的変形を抑えて高精度の光ピックアップ装置用レンズその他の光学素子を形成することができる成形金型及び光学素子の製造方法を提供することを目的とする。

　上記課題を解決するため、本発明に係る成形金型は、光学素子のうち一方の光学面を形成するための第１転写面を有する第１金型と、光学素子のうち他方の光学面を形成するための第２転写面を有する第２金型と、第１金型側に設けられて樹脂を射出する射出装置のノズル部に形成されたノズル端部を当接可能にしたノズルタッチ部と、ノズルタッチ部に連通し、当該ノズルタッチ部に供給された樹脂を第１金型と第２金型とを型締めしたときに第１転写面と第２転写面との間に形成される成形空間に導く流路とを備え、ノズルタッチ部が、ノズル端部をノズルタッチ部に当接させるノズルタッチ時の射出方向へのタッチ力のベクトルをノズルタッチ部の周囲に分散させる。ここで、タッチ力のベクトルを分散させることには、タッチ力のベクトルの向きを変更することを含むものとする。

　上記成形金型では、スプルーブッシュ部がノズルタッチ時の射出方向へのタッチ力のベクトルをノズルタッチ部の周囲に分散させるので、ノズルタッチ時にノズルタッチ部周辺に局在する変形が生じにくくなる。これにより、第１金型と第２金型とによって成形される光学素子の偏芯を低減して、高精度の光学素子を形成することができる。

　本発明の具体的な側面では、上記成形金型において、ノズルタッチ部が、ノズル端部の面形状を反転させた面形状を有する密着面を備える。この場合、ノズルタッチ部の密着面によってタッチ力をノズルタッチ部内に広く分散させることができるので、ノズルタッチ部周辺における金型の局所的な変形を抑えることができる。

　本発明の別の側面では、ノズルタッチ部が、ノズル端部を射出方向に関して複数の異なる箇所で支持する。この場合、ノズル端部が射出方向に沿って多段で受容されることになり、タッチ力の分散の効果を高めることができる。

　本発明のさらに別の側面では、ノズルタッチ部が、ノズルタッチ時に受けた押圧力を周囲の金型部分に拡散させる。この場合、ノズルタッチ部で受けたタッチ力を広く金型部分に分散させて局所的な変形を抑えることができる。

　本発明のさらに別の側面では、ノズルタッチ部が、射出方向に対して傾いた方向に延在する支持面を介して第１金型に支持される。この場合、傾斜した支持面によってタッチ力をノズルタッチ部から射出方向に垂直な横方向の周辺に向けて分散させることができる。

　本発明のさらに別の側面では、スプルーブッシュが、ノズル端部の後退を阻止するストッパーを有する。この場合、ノズルタッチ時にノズルが戻されにくくなるので、少ないタッチ力で樹脂の射出圧を高くすることができる。

　本発明のさらに別の側面では、第１金型が、ノズルタッチ部の射出方向側において射出方向に垂直な方向に広がる弾性部材を内蔵する。この場合、弾性部材が緩衝材となって、第１金型の第１転写面に変形や傾きが及びにくくなる。

　本発明のさらに別の側面では、第１金型が、第１転写面を設けた型板と、型板を第１転写面の反対側から支持するとともにノズルタッチ部を支持する取付板とを有し、型板の方が取付板よりも厚い。この場合、取付板が緩衝材となって、厚い型板に設けた第１転写面に変形や傾きが及びにくくなる。

　本発明のさらに別の側面では、第１金型において、スプルーブッシュに比較的近接する部分の射出方向の厚みが、スプルーブッシュから比較的離間した部分の射出方向の厚みよりも厚い。この場合、スプルーブッシュに比較的近接する部分の変形を抑えることができ、この部分に第１転写面を形成すれば、第１転写面に変形や傾きが生じにくくなる。

　本発明に係る光学素子の製造方法によれば、光学素子のうち一方の光学面を形成するための第１転写面を有する第１金型と、光学素子のうち他方の光学面を形成するための第２転写面を有する第２金型とを合わせることによって成形空間を形成する第１工程と、樹脂を射出する射出装置のノズル部に形成されたノズル端部を第１金型側に設けられたノズルタッチ部に当接させて、当該ノズルタッチ部に供給された樹脂を成形空間に導くことにより、成形空間中で光学素子を含む成形品を成形する第２工程と、第１金型と第２金型とを離間させる型開き後に、成形品を取り出す第３工程とを備え、第２工程において、ノズル端部をノズルタッチ部に当接させるノズルタッチ時の射出方向へのタッチ力のベクトルをノズルタッチ部の周囲に分散させる。

　上記光学素子の製造方法では、第２工程において、ノズル部の先端部をノズルタッチ部に当接させるノズルタッチ時の射出方向へのタッチ力のベクトルをノズルタッチ部の周囲に分散させるので、ノズルタッチ時にノズルタッチ部周辺に局在する変形が生じにくくなる。これにより、第１金型と第２金型とによって成形される光学素子の偏芯を低減して、高精度の光学素子を形成することができる。

第１実施形態の成形金型を組み込んだ成形装置を説明する概念図である。図２Ａ及び２Ｂは、成形金型を説明する側方断面図である。成形金型によって形成される光学素子の側面図である。第１金型のスプルーブッシュ周辺の部分拡大断面図である。第２実施形態の成形金型の要部を説明する部分拡大断面図である。図６Ａ～６Ｃは、第３実施形態の成形金型の要部を説明する部分拡大断面図及び平面図である。図７Ａ～７Ｄは、第４実施形態の成形金型の要部を説明する部分拡大断面図である。第５実施形態の成形金型を説明する側方断面図である。第６実施形態の成形金型を説明する側方断面図である。第７実施形態の成形金型を説明する側方断面図である。図１０に示す第７実施形態の変形例を説明する側方断面図である。

　〔第１実施形態〕
　以下、本発明の第１実施形態に係る射出成形用の成形金型について、図面を参照しつつ説明する。

　図１に示すように、成形装置１００は、射出成形を行って成形品ＭＰを作製する本体部分である射出成形機１０と、射出成形機１０から成形品ＭＰを取り出す付属部分である取出装置２０と、成形装置１００を構成する各部の動作を統括的に制御する制御装置３０とを備える。

　射出成形機１０は、横型の成形機であり、成形金型４０と、固定盤１１と、可動盤１２と、型締め盤１３と、開閉駆動装置１５と、射出装置１６とを備える。射出成形機１０は、固定盤１１と可動盤１２との間に成形金型４０を構成する第１金型４１と第２金型４２とを挟持して両金型４１，４２を型締めすることにより成形を可能にする。

　固定盤１１は、可動盤１２に対向して支持フレーム１４の略中央に固定され、取出装置２０をその上部に支持する。固定盤１１の内側１１ａは、可動盤１２の内側１２ａに対向しており、第１金型４１を着脱可能に支持している。固定盤１１には、後述するノズル１６ｄを通す開口１１ｂが形成されている。なお、固定盤１１は、タイバーを介して型締め盤１３に固定されており、成形時の型締めの圧力に耐え得るようになっている。

　可動盤１２は、リニアガイド１５ａによって固定盤１１に対して進退移動可能に支持されている。可動盤１２の内側１２ａは、固定盤１１の内側１１ａに対向しており、第２金型４２を着脱可能に支持している。なお、可動盤１２には、エジェクター駆動部４５が組み込まれている。このエジェクター駆動部４５は、第２金型４２内の成形品ＭＰを離型するために第１金型４１側に押し出すものである。

　型締め盤１３は、支持フレーム１４の端部に固定されている。型締め盤１３は、型締めに際して、開閉駆動装置１５の動力伝達部１５ｄを介して可動盤１２をその背後から支持する。

　開閉駆動装置１５は、リニアガイド１５ａと、動力伝達部１５ｄと、アクチュエーター１５ｅとを備える。リニアガイド１５ａは、可動盤１２を支持しつつ、固定盤１１に対する進退方向に関して可動盤１２の滑らかな往復移動を可能にしている。動力伝達部１５ｄは、制御装置３０の制御下で動作するアクチュエーター１５ｅからの駆動力を受けて伸縮する。これにより、型締め盤１３に対して可動盤１２が近接したり離間したり自在に進退移動する。結果的に、固定盤１１と可動盤１２とを互いに近接又は離間させることができ、第１金型４１と第２金型４２との型締め又は型開きを行うことができる。

　射出装置１６は、シリンダー１６ａ、原料貯留部１６ｂ、スクリュー駆動部１６ｃ等を備える。射出装置１６は、制御装置３０の制御下で適当なタイミングで動作するものであり、樹脂射出用のノズル１６ｄから温度制御された状態で溶融樹脂を射出することができる。射出装置１６は、第１金型４１と第２金型４２とを型締めした状態において、固定盤１１の開口１１ｂを介して後述するスプルーブッシュ６５（図２（Ａ）及び２（Ｂ）参照）にノズル１６ｄを接触させることにより、後述する流路空間ＦＣ（図２（Ｂ）参照）に対してシリンダー１６ａ中の溶融樹脂を所望のタイミング及び圧力で供給することができる。

　射出成形機１０に付随して設けられた金型温度調節機４６は、両金型４１，４２中に温度制御された熱媒体を循環させる。これにより、成形時に両金型４１，４２の温度を適切な温度に保つことができる。

　取出装置２０は、成形品ＭＰを把持することができるハンド２１と、ハンド２１を３次元的に移動させる３次元駆動装置２２とを備える。取出装置２０は、制御装置３０の制御下で適当なタイミングで動作するものである。取出装置２０は、第１金型４１と第２金型４２とを離間させて型開きした後に、第２金型４２に残る成形品ＭＰを把持して外部に搬出する役割を有する。

　制御装置３０は、開閉制御部３１と、射出装置制御部３２と、エジェクター制御部３３と、取出装置制御部３４とを備える。開閉制御部３１は、アクチュエーター１５ｅを動作させることによって両金型４１，４２の型閉じ、型締め、型開き等を可能にする。射出装置制御部３２は、スクリュー駆動部１６ｃ等を動作させることによって両金型４１，４２間に形成された成形空間ＣＶ中に所望の圧力で溶融樹脂を注入させる。エジェクター制御部３３は、エジェクター駆動部４５を動作させることによって型開き時に第２金型４２に残る成形品ＭＰを第２金型４２内から押し出させて離型を行わせる。取出装置制御部３４は、取出装置２０を動作させることによって型開き及び離型後に第２金型４２に残る成形品ＭＰを把持して射出成形機１０外に搬出させる。

　以下、成形金型４０について詳しく説明する。図２Ａ等に示すように、成形金型４０のうち第２金型４２は、ＡＢ方向に往復移動可能になっている。この第２金型４２を第１金型４１に向けて移動させ、両金型４１，４２を型合わせ面すなわちパーティング面ＰＳ１，ＰＳ２で型合わせして型締めすることにより、図２Ｂに示すように、レンズＬＰを成形するための成形空間ＣＶと、これに樹脂を供給するための流路である流路空間ＦＣとが形成される。

　第１金型４１は、内側すなわちパーティング面ＰＳ１側に配置される型板６１と、外側すなわち図１の固定盤１１側に配置される取付板６４とを備える。また、第１金型４１に付随して、スプルーブッシュ６５が設けられている。

　第１金型４１のうち型板６１は、金属製の板状の部材であり、複数のコア型６２を挿入する複数のコア孔６１ａと、スプルーブッシュ６５の先端側を挿入するスプルーブッシュ孔６１ｂと、レンズＬＰの光機能部ＯＰを形成するためのレンズ凹部６１ｅとを備える。各コア孔６１ａにはコア型６２が挿入されており、コア型６２の先端面がレンズ凹部６１ｅに対応するものとなっている。レンズ凹部６１ｅは、成形品ＭＰが光ピックアップ装置用の対物レンズである場合、光学面転写用の凹の鏡面状の第１転写面Ｓ１を有しており、特にＢＤ（Blu-ray Disc）／ＤＶＤ（Digital Versatile Disc）／ＣＤ（Compact Disc）の３互換型の光ピックアップ装置用の対物レンズである場合、微細な構造が設けられた光学面を有するものとなる場合もある。

　なお、型板６１内部には、成形時に金型の温度を適切な温度に保つため、熱媒体を流通させる温調流路、加熱用のヒーター、温度監視用の温度計等が形成されているが、説明の簡単のため図示を省略している。

　取付板６４は、金属製の板状の部材であり、型板６１を背後から支持している。取付板６４は、スプルーブッシュ６５の根元側を挿入するスプルーブッシュ孔６４ａを備える。取付板６４は、型板６１をパーティング面ＰＳ１やレンズ凹部６１ｅの反対側（背後側）から支持する。取付板６４に設けたスプルーブッシュ孔６４ａの固定盤１１側は、傾斜した円錐面を有するすり鉢状の拡径部６４ｃとなっており、スプルーブッシュ６５の根元側に設けたノズルタッチ部６５ａを周囲から支持している。なお、取付板６４は、取付板６４自体を固定盤１１に固定するため複数の締結部材６４ｆを有している。

　スプルーブッシュ６５は、取付板６４の背後からスプルーブッシュ孔６４ａに挿入されて固定されている。スプルーブッシュ６５の先端側は、型板６１のスプルーブッシュ孔６１ｂに挿入されている。スプルーブッシュ６５の根元側は、テーパー状のノズルタッチ部６５ａとなっている。ノズルタッチ部６５ａは、取付板６４の拡径部６４ｃに埋め込まれて嵌合するとともに、図示を省略するボルトや保持部材によって拡径部６４ｃから抜けないようにしっかりと固定されている。

　第２金型４２は、内側すなわちパーティング面ＰＳ２側に配置される型板７１と、外側すなわち図１の可動盤１２側に配置される取付板７４と、取付板７４に埋め込むように形成されたエジェクター部材７５とを備える。

　第２金型４２のうち型板７１は、金属製の板状の部材であり、複数のコア型７２を挿入する複数のコア孔７１ａと、スプルーブッシュ６５の先端に対向するコールドスラグ７１ｂと、レンズＬＰの光機能部ＯＰを形成するためのレンズ凹部７１ｅとを備える。各コア孔７１ａにはコア型７２が挿入されており、コア型７２の先端面がレンズ凹部７１ｅに対応するものとなっている。レンズ凹部７１ｅは、成形品ＭＰが光ピックアップ装置用の対物レンズである場合、光学面転写用の凹の鏡面状の第２転写面Ｓ２を有しており、特にＢＤ／ＤＶＤ／ＣＤの３互換型の光ピックアップ装置用の対物レンズである場合、微細な構造が設けられた光学面を有するものとなる場合もある。型板７１には、エジェクター部材７５を構成するエジェクターピン７５ａを通すピン孔７１ｇも形成されている。

　なお、型板７１内部には、成形時に金型の温度を適切な温度に保つため、熱媒体を流通させる温調流路、加熱用のヒーター、温度監視用の温度計等が形成されているが、説明の簡単のため図示を省略している。

　取付板７４は、金属製の板状の部材であり、型板７１を背後から支持している。取付板７４は、エジェクター部材７５を構成するエジェクターピン７５ａ，７５ｂを通すピン孔７４ｇ，７４ｈを備える。なお、取付板７４は、取付板７４自体を固定盤１１に固定するため複数の締結部材７４ｆを有している。

　エジェクター部材７５は、エジェクターピン７５ａ，７５ｂと、エジェクター板７５ｄとを有する機械的な機構であり、図１のエジェクター駆動部４５に駆動されて動作する。エジェクターピン７５ａ，７５ｂは、エジェクター板７５ｄに連結されており、型板７１のピン孔７１ｇと取付板７４のピン孔７４ｇ，７４ｈ内で一括して進退移動させることができる。エジェクター部材７５を前進状態とした場合、エジェクターピン７５ａ，７５ｂが前進し、このうち中央のエジェクターピン７５ａが型板７１のコールドスラグ７１ｂの底部に突起し、周辺のエジェクターピン７５ｂがコア型７２を押してパーティング面ＰＳ２から突出させる。逆に、エジェクター部材７５を後退状態とした場合、エジェクターピン７５ａ，７５ｂが後退し、このうち中央のエジェクターピン７５ａが型板７１のコールドスラグ７１ｂの底部に引っ込み、周辺のエジェクターピン７５ｂも同様に引っ込んでコア型７２の後退を許容する。なお、コア型７２は、不図示のバネ等を付随させた構造を有しており、エジェクターピン７５ａから前進させる付勢力を受けなくなった場合、後退してコア孔７１ａの奥に収納される。

　なお、第１金型４１と第２金型４２とは、第１金型４１に設けた位置決め嵌合部４１ｘと第２金型４２に設けた位置決め嵌合部４２ｘとを嵌合させることにより、パーティング面ＰＳ１，ＰＳ２に垂直な方向の位置決めが可能になっている。

　図３は、図１の取出装置２０によって射出成形機１０外に取り出される成形品ＭＰの一部であるレンズＬＰの外観を示している。レンズＬＰは、光機能部ＯＰとフランジ部ＦＬとを有している。光機能部ＯＰは、図２Ａの成形金型４０に設けたレンズ凹部６１ｅ，７１ｅのうち例えばレンズ凹部６１ｅによって形成される第１の光学面ＯＳ１と、例えばレンズ凹部７１ｅによって形成される第２の光学面ＯＳ２とを有している。レンズＬＰは、例えば光ピックアップ装置用の対物レンズであり、ＢＤ等の規格に対応するものとする。なお、レンズＬＰがＢＤ／ＤＶＤ／ＣＤの３互換型の光ピックアップ装置用の対物レンズである場合、第１の光学面ＯＳ１には、微細な構造が設けられる。

　図４を参照して、第１金型４１に設けたスプルーブッシュ６５の構造等の詳細について説明する。スプルーブッシュ６５のノズルタッチ部６５ａは、円錐台状の外形を有しており、円錐側面Ｓ１１と裏面Ｓ１２とを密着面として有する。これらの円錐側面Ｓ１１と裏面Ｓ１２とは、取付板６４のスプルーブッシュ孔６１ｂを構成する円錐内面Ｓ２１と段差面Ｓ２２とに密着している。これにより、ノズルタッチ部６５ａがスプルーブッシュ孔６１ｂに安定して確実に保持される。

　スプルーブッシュ６５のノズルタッチ部６５ａには、内壁面Ｓ３１を有する凹部６５ｒが形成されている。内壁面Ｓ３１は、開口側の円錐面Ｓ３１ａと、底側の楕円体状面Ｓ３１ｂと、これらの間に設けた段差面Ｓ３１ｃとを有する。ここで、凹部６５ｒのうち楕円体状面Ｓ３１ｂを設けた底部６５ｓは、アーチ状の断面を有するものとなっている。一方、射出装置１６のノズル１６ｄのノズル端部１８は、軸状の円筒部１８ａとドーム状の突起部１８ｂとを有する。円筒部１８ａの周囲は円筒面Ｓ４１となっており、突起部１８ｂは楕円体状面Ｓ４２となっている。円筒面Ｓ４１と楕円体状面Ｓ４２との間には、段差面Ｓ４３が形成されている。ノズル端部１８をノズルタッチ部６５ａに当接させるノズルタッチ時には、ノズル端部１８に設けた突起部１８ｂの楕円体状面Ｓ４２と、ノズルタッチ部６５ａの楕円体状面Ｓ３１ｂとが密着して、ノズル端部１８のタッチ力をノズルタッチ部６５ａで受け止めることができる。この際、ノズルタッチ部６５ａの楕円体状面Ｓ３１ｂの面形状がノズル端部１８の楕円体状面Ｓ４２を反転させた面形状となっている。そのため、ノズルタッチ部６５ａの楕円体状面Ｓ３１ｂとノズル端部１８の楕円体状面Ｓ４２とが互いに密着する密着面となって、ノズル端部１８を全体として受け止めることができ、ノズルタッチ時の射出方向ＣＤへのタッチ力のベクトルＴＦをノズルタッチ部６５ａの周囲に分散させることができる。つまり、ノズルタッチ部６５ａの一部に偏って極端に大きな圧力が加わることを防止できる。これにより、ノズルタッチ部６５ａの局所的変形が生じることを防止でき、ノズルタッチ部６５ａの局所的変形によって取付板６４や型板６１が局所的に大きく撓み変形することを防止できるので、第１金型４１のレンズ凹部６１ｅと第２金型４２のレンズ凹部７１ｅとの間に形成されるレンズの偏芯を防止することができる。なお、タッチ力をノズルタッチ部６５ａで受けきれない場合でも、タッチ力が分散するため、ノズルタッチ部６５ａから周辺の型部分である取付板６４や型板６１にかかる押圧力を拡散させることができる。これにより、ノズルタッチ部６５ａで受けたタッチ力を広く金型部分に分散させて局所的な変形を抑えることができる。

　以下、図１等に示す成形装置１００を用いた成形品ＭＰすなわちレンズＬＰの製造方法について説明する。まず、金型温度調節機４６により、両金型４１，４２を成形に適する温度まで加熱する。次に、開閉駆動装置１５を動作させ、可動盤１２を前進させて型閉じを開始させる。開閉駆動装置１５の閉動作を継続することにより、固定側の第１金型４１と可動側の第２金型４２とを必要な圧力で締め付ける型締めが行われる。次に、射出成形機１０において、射出装置１６を動作させて、ノズル１６ｄを第１金型４１のスプルーブッシュ６５に接触させるとともに、型締めされた第１金型４１と第２金型４２との間の成形空間ＣＶ中に、必要な圧力で溶融樹脂を注入する射出を行わせる。そして、射出成形機１０は、成形空間ＣＶ中の樹脂圧を保つ。なお、溶融樹脂を成形空間ＣＶに導入した後は、成形空間ＣＶ中の溶融樹脂が放熱によって徐々に冷却されるので、かかる冷却にともなって溶融樹脂が固化し成形が完了するのを待つ。次に、射出成形機１０において、開閉駆動装置１５を動作させて、可動盤１２を後退させる型開きが行われる。これに伴って、第２金型４２が後退し、第１金型４１と第２金型４２とが離間する。次に、射出成形機１０において、エジェクター駆動部４５を動作させ、エジェクターピン７５ａ，７５ｂ等の前進によって、レンズＬＰ等を含む成形品ＭＰの突き出しを行わせる。この結果、成形品ＭＰのうちレンズＬＰは、第１金型４１側に押し出されて第２金型４２から離型される。最後に、取出装置２０を動作させて、突き出された成形品ＭＰの適所をハンド２１で把持して外部に搬出する。

　以上のように、本実施形態の成形金型４０によれば、ノズルタッチ部６５ａの密着面である楕円体状面Ｓ３１ｂによってタッチ力をノズルタッチ部６５ａ内に広く分散させることができる。そのため、ノズルタッチ部６５ａ周辺における第１金型４１の局所的な変形を抑えることができる。これにより、第１金型４１と第２金型４２とによって成形されるレンズＬＰの偏芯を低減して、高精度のレンズＬＰ（具体的には光ピックアップ装置用の対物レンズ）を形成することができる。

　なお、ノズルタッチ部６５ａを旧来型としてタッチ力を分散させない場合、第１金型４１延いては型板６１に局所的な変形（例えばノズルタッチ部６５ａを中心として周辺に広がる傾斜）が生じ、コア型６２のレンズ凹部６１ｅがコア型７２のレンズ凹部７１ｅに対して僅かながら傾いてしまう。これにより、レンズＬＰにコマ収差等が生じて性能が劣化する傾向が生じる。

　〔第２実施形態〕
　以下、第２実施形態の成形金型等について説明する。第２実施形態の成形金型は、第１実施形態の成形金型等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第１実施形態の成形金型等と同様であるものとする。

　図５は、第２実施形態の第１金型４１に設けたスプルーブッシュ１６５の構造等を説明する図である。この場合、スプルーブッシュ１６５のノズルタッチ部１６５ａは、第１支持部６６ａと第２支持部６６ｂとを有する。第１支持部６６ａは、ノズルタッチ時にノズル端部１８の突起部１８ｂを支持する。第２支持部６６ｂは、ノズルタッチ時にノズル端部１８の円筒部１８ａを支持する。この際、第１支持部６６ａに設けた射出方向ＣＤに対して傾斜した環状の支持面６６ｃとノズル端部１８の楕円体状面Ｓ４２とが先端側で密着し、第２支持部６６ｂに設けた傾斜していない環状の支持面６６ｄとノズル端部１８の段差面Ｓ４３とが密着する。

　本実施形態の場合、ノズルタッチ部１６５ａが、ノズル端部１８を射出方向ＣＤに関して複数の異なる箇所で支持する。具体的には、第１支持部６６ａの支持面６６ｃでノズル端部１８の楕円体状面Ｓ４２を支持し、第２支持部６６ｂの支持面６６ｄでノズル端部１８の段差面Ｓ４３を支持する。これにより、ノズル端部１８がノズルタッチ部１６５ａにおいて射出方向ＣＤに沿って多段で受容されることになり、ノズル端部１８によるタッチ力を分散させることができる。

　〔第３実施形態〕
　以下、第３実施形態の成形金型等について説明する。第３実施形態の成形金型は、第１実施形態の成形金型等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第１実施形態の成形金型等と同様であるものとする。

　図６Ａ及び６Ｂは、第３実施形態の第１金型４１に設けたスプルーブッシュ２６５の構造等を説明する図である。この場合、スプルーブッシュ２６５のノズルタッチ部２６５ａは、支持部２６６ａと一対のストッパー６６ｊ，６６ｊとを有する。ここで、支持部２６６ａは、射出方向ＣＤに対して傾斜した環状の支持面６６ｃを有する。一方、各ストッパー６６ｊ，６６ｊは、凹部６５ｒ内に突起する扇状の部材であり、支持面６６ｃに対向する側に係止面６７ａを有する。

　ノズル１６ｄのノズル端部２１８には、円筒部１８ａと突起部１８ｂとの間に中間部１８ｍが設けられている。中間部１８ｍの周囲には、一対の鍔状部１８ｊ，１８ｊが形成されている。ノズル端部２１８は、その軸芯のまわりに回転させることができる。これにより、ノズル端部２１８を前進させてノズルタッチさせる場合、図６Ｃに示すように、射出方向ＣＤに関してノズル端部２１８の鍔状部１８ｊ，１８ｊをストッパー６６ｊ，６６ｊと重ならないように配置することができる。このようなノズルタッチ後にノズル端部２１８を９０°回転させることで、図６Ｂに示すように、鍔状部１８ｊ，１８ｊをストッパー６６ｊ，６６ｊの背後に移動させることができる。この状態で、鍔状部１８ｊ，１８ｊの係止面６７ｂがストッパー６６ｊ，６６ｊの係止面６７ａに近接して対向することになる。これにより、ノズル端部２１８の鍔状部１８ｊ，１８ｊはノズルタッチ部２６５ａのストッパー６６ｊ，６６ｊに阻止されて後退することができなくなり、ノズルタッチが完了する。この結果、ノズル１６ｄから高圧の樹脂を射出させる場合、ノズル１６ｄの射出方向ＣＤへの付勢力又はタッチ力をあまり大きくしなくてもノズル端部２１８の後退が防止され、樹脂の漏れを抑制できる。

　なお、射出を終えてノズル端部２１８を後退させる際には、以上と逆の動作を行う。具体的には、ノズル端部２１８をその軸まわりに例えば反対に９０°回転させ、射出方向ＣＤに関して鍔状部１８ｊ，１８ｊがストッパー６６ｊ，６６ｊと重ならないようにする。この状態で、ストッパー６６ｊ，６６ｊによる鍔状部１８ｊ，１８ｊの係止が解除され、ノズル端部２１８を自在に後退させることができる。

　〔第４実施形態〕
　以下、第４実施形態の成形金型等について説明する。第４実施形態の成形金型は、第１実施形態の成形金型等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第１実施形態の成形金型等と同様であるものとする。

　図７Ａに示す例では、スプルーブッシュ３６５のノズルタッチ部３６５ａが、ドーム状の外形を有しており、球面又は楕円面状の側面Ｓ３１１を密着面として有する。この側面Ｓ３１１は、取付板６４のスプルーブッシュ孔６１ｂを構成する球面又は楕円面状の支持面Ｓ３２１に密着している。この場合、ノズルタッチ部３６５ａの側面Ｓ３１１と取付板６４の支持面Ｓ３２１とは、射出方向ＣＤに対して全体的に滑らかに傾斜した状態となる。このように、傾斜した側面Ｓ３１１や支持面Ｓ３２１によって、ノズル端部１８のタッチ力をノズルタッチ部３６５ａから射出方向ＣＤに垂直な横方向の周辺に向けて広く分散させることができる。結果的に、ノズルタッチ部３６５ａで受けたタッチ力を押圧力として広く第１金型４１の取付板６４に分散させて局所的な変形を抑えることができる。

　図７Ｂに示す例は、図７Ａに示す例を変形したものである。この場合、スプルーブッシュ３６５のノズルタッチ部３６５ａと筒状部６５ｄとの間にアーチ状の連結部６５ｅを設けて、この連結部６５ｅの湾曲した側面Ｓ３０１により、ノズルタッチ部３６５ａの側面Ｓ３１１と、筒状部６５ｄの側面Ｓ０１とを滑らかに接続している。これにより、ノズル端部１８のタッチ力をノズルタッチ部３６５ａから周辺の取付板６４に向けて分散させる効果をより高めることができる。

　図７Ｃに示す例は、図７Ａに示す例を第２実施形態と同様に変更したものである。つまり、ノズルタッチ部４６５ａの第１支持部６６ａの支持面６６ｃでノズル端部１８の楕円体状面Ｓ４２を支持し、第２支持部６６ｂの支持面６６ｄでノズル端部１８の段差面Ｓ４３を支持している。ここで、ノズルタッチ部４６５ａの側面Ｓ３１１と取付板６４の支持面Ｓ３２１とは、射出方向ＣＤに対して全体的に傾斜した状態となっており、ノズルタッチ部４６５ａで受けたタッチ力を広く第１金型４１の取付板６４に分散させて局所的な変形を抑えることができる。

　図７Ｄに示す例は、図７Ｂに示す例を第２実施形態と同様に変更したものである。つまり、ノズルタッチ部４６５ａの第１支持部６６ａの支持面６６ｃでノズル端部１８の楕円体状面Ｓ４２を支持し、第２支持部６６ｂの支持面６６ｄでノズル端部１８の段差面Ｓ４３を支持している。ここで、ノズルタッチ部４６５ａの側面Ｓ３１１又は連結部６５ｅの側面Ｓ３０１と、取付板６４の支持面Ｓ３２１とは、射出方向ＣＤに対して全体的に傾斜した状態となっており、ノズルタッチ部４６５ａで受けたタッチ力を広く第１金型４１の取付板６４に分散させて局所的な変形を抑えることができる。

　〔第５実施形態〕
　以下、第５実施形態の成形金型等について説明する。第５実施形態の成形金型は、第１実施形態の成形金型等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第１実施形態の成形金型等と同様であるものとする。

　図８に示す成形金型４０の場合、第１金型４１の型板６１と取付板６４との間には、薄い弾性部材６８が配置されている。弾性部材６８は、ノズル１６ｄによる射出方向ＣＤに垂直な方向に広がっており、射出方向ＣＤに力を受けた場合に弾性変形する。つまり、弾性部材６８が緩衝材となって、ノズルタッチ部６５ａで受けたタッチ力や変形を弾性部材６８で吸収して型板６１に変形の影響が及ぶことを防止できる。

　なお、図８に示すノズルタッチ部６５ａは、第２及び第３実施形態として説明したノズルタッチ部１６５ａ，２６５ａ，３６５ａ，４６５ａに置き換えることができる。

　〔第６実施形態〕
　以下、第６実施形態の成形金型等について説明する。第６実施形態の成形金型は、第１実施形態の成形金型等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第１実施形態の成形金型等と同様であるものとする。

　図９に示す成形金型４０の場合、第１金型４１の型板６１をかなり厚くしている。結果的に、型板６１の射出方向ＣＤの厚みは、取付板６４の射出方向ＣＤの厚みよりもかなり厚くなっている。これにより、取付板６４に多少の力を受けても厚い型板６１は変形しにくくなり、ノズルタッチ部６５ａで受けたタッチ力や変形の影響が型板６１に及ぶことを防止できる。

　なお、図９に示すノズルタッチ部６５ａは、第２及び第３実施形態として説明したノズルタッチ部１６５ａ，２６５ａ，３６５ａ，４６５ａに置き換えることができる。

　〔第７実施形態〕
　以下、第７実施形態の成形金型等について説明する。第７実施形態の成形金型は、第１実施形態の成形金型等を変形したものであり、特に説明しない部分は、第１実施形態の成形金型等と同様であるものとする。

　図１０に示す成形金型４０の場合、第１金型４１の型板６１が、スプルーブッシュ６５を貫通させる中央部Ａ１において、スプルーブッシュ６５から離れた周辺部Ａ２よりも厚くなっている。この場合、スプルーブッシュ６５に比較的近接する中央部Ａ１の変形を抑えることができ、この中央部Ａ１にレンズ凹部６１ｅすなわち光学面（第１転写面）Ｓ１を形成しているので、光学面ＯＳ１に変形や傾きが生じにくくなる。

　なお、図１０に示すノズルタッチ部６５ａは、第２及び第３実施形態として説明したノズルタッチ部１６５ａ，２６５ａ，３６５ａ，４６５ａに置き換えることができる。また、型板６１単独とする必要はなく、型板６１を支持するための取付板６４を別体として設けることができる。

　図１１は、図１０に示す第１金型４１を変形したものであり、型板６１の中央部Ａ１と周辺部Ａ２との間に曲面を利用して部材間を繋ぐアーチ部Ａ３を設けており、応力の集中を防止できる。

　以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上記実施形態において、第１金型４１及び第２金型４２で構成される成形金型４０に設ける成形空間ＣＶの形状は、様々な形状とすることができる。すなわち、レンズ凹部６１ｅ，７１ｅ等によって形成される成形空間ＣＶの形状は、単なる例示であり、レンズＬＰその他の光学素子の用途等に応じて適宜変更することができる。

Claims

　光学素子のうち一方の光学面を形成するための第１転写面を有する第１金型と、
　前記光学素子のうち他方の光学面を形成するための第２転写面を有する第２金型と、
　前記第１金型側に設けられて、樹脂を射出する射出装置のノズル部に形成されたノズル端部を当接可能にしたノズルタッチ部と、
　前記ノズルタッチ部に連通し、当該ノズルタッチ部に供給された樹脂を前記第１金型と前記第２金型とを型締めしたときに前記第１転写面と前記第２転写面との間に形成される成形空間に導く流路と、
を備え、
　前記ノズルタッチ部は、前記ノズル端部を前記ノズルタッチ部に当接させるノズルタッチ時の射出方向へのタッチ力のベクトルを前記ノズルタッチ部の周囲に分散させる成形金型。
　前記ノズルタッチ部は、前記ノズル端部の面形状を反転させた面形状を有する密着面を備える、請求項１に記載の成形金型。
　前記ノズルタッチ部は、前記ノズル端部を前記射出方向に関して複数の異なる箇所で支持する、請求項１に記載の成形金型。
　前記ノズルタッチ部は、前記ノズルタッチ時に受けた押圧力を周囲の金型部分に拡散させる、請求項１に記載の成形金型。
　前記ノズルタッチ部は、前記射出方向に対して傾いた方向に延在する支持面を介して前記第１金型に支持される、請求項４に記載の成形金型。
　前記スプルーブッシュは、前記ノズル端部の後退を阻止するストッパーを有する、請求項１に記載の成形金型。
　前記第１金型は、前記ノズルタッチ部の前記射出方向側において前記射出方向に垂直な方向に広がる弾性部材を内蔵する、請求項１に記載の成形金型。
　前記第１金型は、前記第１転写面を設けた型板と、前記型板を前記第１転写面の反対側から支持するとともに前記ノズルタッチ部を支持する取付板とを有し、前記型板の方が前記取付板よりも厚い、請求項１に記載の成形金型。
　前記第１金型において、前記スプルーブッシュに比較的近接する部分の前記射出方向の厚みは、前記スプルーブッシュから比較的離間した部分の前記射出方向の厚みよりも厚い、請求項１に記載の成形金型。
　光学素子のうち一方の光学面を形成するための第１転写面を有する第１金型と、前記光学素子のうち他方の光学面を形成するための第２転写面を有する第２金型とを合わせることによって成形空間を形成する第１工程と、
　樹脂を射出する射出装置のノズル部に形成されたノズル端部を前記第１金型側に設けられたノズルタッチ部に当接させて、当該ノズルタッチ部に供給された樹脂を前記成形空間に導くことにより、前記成形空間中で前記光学素子を含む成形品を成形する第２工程と、
　前記第１金型と前記第２金型とを離間させる型開き後に、前記成形品を取り出す第３工程と、
を備え、
　前記第２工程において、前記ノズル端部を前記ノズルタッチ部に当接させるノズルタッチ時の射出方向へのタッチ力のベクトルを前記ノズルタッチ部の周囲に分散させる光学素子の製造方法。