WO2010113847A1

WO2010113847A1 - 型内塗装品形成金型及び型内塗装品の製造方法

Info

Publication number: WO2010113847A1
Application number: PCT/JP2010/055526
Authority: WO
Inventors: 弘一浜岡
Original assignee: 日本写真印刷株式会社
Priority date: 2009-03-31
Filing date: 2010-03-29
Publication date: 2010-10-07
Also published as: TW201041717A; JP2010234647A

Abstract

　裏面形成金型（３）の成形キャビティ形成部（３ａ）に吸引口（４）が配置された型内塗装品形成金型を用い、成形品（２２）を裏面形成金型から突き出して成形品と裏面形成金型との間に連通空間部（１４）を形成することによって塗装キャビティ（１３）と吸引口との間を連通させ、吸引口からのエア吸引後に塗装キャビティに熱硬化性塗料を注入して成形品の表面に熱硬化性塗料層（２１）を形成する。

Description

型内塗装品形成金型及び型内塗装品の製造方法

　本発明は、ＡＶ機器又は家電製品のフロントパネル又はケース、ボタン、自動車の計器パネル又はボタン等として用いられる型内塗装品を製造する型内塗装品形成金型及び型内塗装品の製造方法に関する。

　従来の型内塗装品の製造方法として、表面形成金型１０１と塗膜形成金型１０２と裏面形成金型１０３とを備える型内塗装品形成金型を用い、以下の方法により型内塗装品１１０を形成する技術が特許文献１に開示されている。

　（１）表面形成金型１０１と裏面形成金型１０３とによって成形キャビティ１０４を形成したところに、成形樹脂を成形キャビティ１０４に充填させることによって成形品１０８の射出成形を行い（図３Ａ参照）、
　（２）裏面形成金型１０３が成形品１０８を保持する状態で、裏面形成金型１０３に対向する金型を、表面形成金型１０１から塗膜形成金型１０２に切り替え、成形品１０８の表面と塗膜形成金型１０２との間に、間隙による塗装キャビティ１０５を形成し（図３Ｂ参照）、
　（３）塗装キャビティ１０５に、液状熱硬化型組成物からなる加飾用の熱硬化性塗料を注入して、成形品１０８の表面に熱硬化性塗料層１０９を成形して、型内塗装品１１０を形成する（図３Ｃ参照）。

特許３９８８６６０号公報

　しかし、従来の型内塗装品の製造方法においては、熱硬化性塗料を塗装キャビティ１０５に注入する際に、型内塗装品形成金型内にエア溜まりが発生することによって、型内塗装品１１０の外観不良又は熱硬化性塗料層１０９の硬化不足（ラジカル重合反応における酸素阻害による）が生じてしまう場合があった。

　ここで、一般に、樹脂成形品を形成する場合には、エア溜まりを防ぐため、金型パーティング面に空かし（エアベント）を形成しておき、成形樹脂の充填時に、キャビティ内のエアを、上記空かしを形成した箇所から排出する方法を採ることができる。しかし、型内塗装品を形成する場合に、熱硬化性塗料の充填のために金型パーティング面に空かしを形成すると、熱硬化性塗料の粘度が数十ｃｐｓと非常に低いため、熱硬化性塗料の充填時に、空かしを形成した箇所から塗料が漏れ出して硬化し、その結果、型内塗装品１１０の外周にバリが発生してしまうので、この金型パーティング面に空かしを形成する方法は採用できない。

　本発明の目的は、熱硬化性塗料層形成時のエア溜まりに起因する外観不良及び熱硬化性塗料層の硬化不足の問題が発生しないようにすることができる型内塗装品を製造する型内塗装品形成金型及び型内塗装品の製造方法を提供することにある。

　本発明は上記目的を達成するため、以下のような特徴を備える。

　本発明の第１態様によれば、裏面形成金型と、
　上記裏面形成金型と型締めされて、成形品を形成可能な成形キャビティを上記表面形成金型との間で形成する表面形成金型と、
　上記表面形成金型に代えて、上記裏面形成金型と型締めされて、上記成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成可能な塗装キャビティを上記成形品を保持する上記裏面形成金型と上記塗膜形成金型とで形成する塗膜形成金型と、
　上記裏面形成金型の上記成形キャビティの形成部に吸引口が配置されている型内塗装品形成金型を提供する。

　本発明の第２態様によれば、上記裏面形成金型を貫通して移動可能でかつ上記成形キャビティ内で成形された成形品を押圧して上記裏面形成金型の上記成形キャビティの形成部から上記成形品の裏面を離して上記塗装キャビティと連通する連通空間部を形成可能な押圧部材をさらに備える、第１の態様に記載の型内塗装品形成金型を提供する。

　本発明の第３態様によれば、上記吸引口と接続されて、上記塗装キャビティ内のエアを吸引可能な吸引装置をさらに備える、第１又は２の態様に記載の型内塗装品形成金型を提供する。

　本発明の第４態様によれば、第１～３のいずれか１つの態様に記載の型内塗装品形成金型を用い、
　上記表面形成金型と上記裏面形成金型の成形キャビティ形成部とによって上記成形キャビティを形成した状態で、成形樹脂を上記成形キャビティに充填させることによって上記成形品の射出成形を行い、
　上記裏面形成金型が上記成形品を保持する状態で上記裏面形成金型に対向する金型を上記表面形成金型から上記塗膜形成金型に切り替えて、上記成形品の表面と上記塗膜形成金型との間に塗装キャビティを形成し、
　上記成形品の裏面を上記裏面形成金型の上記成形キャビティ形成部から離して上記成形品の裏面と上記裏面形成金型の上記成形キャビティ形成部との間に連通空間部を形成することによって上記塗装キャビティと上記吸引口との間を上記連通空間部を介して連通させ、
　上記吸引口及び上記連通空間部を介して上記塗装キャビティからのエア吸引後に上記塗装キャビティに熱硬化性塗料を注入して上記成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成して型内塗装品を得る型内塗装品の製造方法を提供する。

　本発明の第５態様によれば、上記成形品の裏面を上記裏面形成金型の上記成形キャビティ形成部から０．０１～０．０３ｍｍ突き出して上記連通空間部を形成する第４の態様に記載の型内塗装品の製造方法を提供する。

　本発明の第６態様によれば、上記塗装キャビティと上記吸引口との間を上記連通空間部を介して連通させるとき、上記裏面形成金型を貫通して移動可能でかつ上記成形キャビティ内で成形された成形品を押圧部材で押圧して、上記裏面形成金型の上記成形キャビティの形成部から上記成形品の裏面を離して、上記塗装キャビティと上記吸引口との間を上記連通空間部を介して連通させる、第４又は５の態様に記載の型内塗装品の製造方法を提供する。

　本発明の型内塗装品を製造する型内塗装品形成金型によれば、塗装キャビティに熱硬化性塗料を注入して成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成する前に、成形品の裏面側の吸引口と塗装キャビティとを連通させて塗装キャビティ内のエアを吸引可能とすることができて、塗装キャビティに熱硬化性塗料を注入して成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成するとき、塗装キャビティ内を真空状態に近い状態とすることができる。よって、熱硬化性塗料層形成時にエア溜まりが生じないため、意匠性に優れ十分な表面硬度を持つ型内塗装品を得ることができる。

　本発明の型内塗装品の製造方法は、成形品の裏面側に形成した連通空間部により塗装キャビティと吸引口との間を連通させ、吸引口からのエア吸引後に、塗装キャビティに熱硬化性塗料を注入して成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成する。したがって、塗装キャビティ内を真空状態に近いようにできて熱硬化性塗料層形成時にエア溜まりが生じないため、意匠性に優れ十分な表面硬度を持つ型内塗装品を得ることができる。

　本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
図１Ａは、本発明の一実施形態にかかる型内塗装品形成金型を使用する型内塗装品の製造方法により型内塗装品を形成する工程を示す断面図であり、図１Ｂは、本発明の上記実施形態にかかる上記型内塗装品形成金型により上記型内塗装品を形成する工程を示す断面図であり、図１Ｃは、本発明の上記実施形態にかかる上記型内塗装品形成金型により上記型内塗装品を形成する工程を示す断面図であり、図１Ｄは、本発明の上記実施形態にかかる上記型内塗装品形成金型により上記型内塗装品を形成する工程を示す断面図であり、図２は、本発明の上記実施形態にかかる上記型内塗装品の製造方法に用いる塗料注入機の概略図であり、図３Ａは、従来の型内塗装品の製造方法により型内塗装品を形成する工程を示す断面図であり、図３Ｂは、従来の型内塗装品の製造方法により型内塗装品を形成する工程を示す断面図であり、図３Ｃは、従来の型内塗装品の製造方法により型内塗装品を形成する工程を示す断面図である。

　本発明の記述を続ける前に、添付図面において同じ部品については同じ参照符号を付している。

　図面を参照しながらこの発明の実施の形態について詳しく説明する。

　本発明の一実施形態にかかる型内塗装品の製造方法に使用する型内塗装品形成金型は、表面形成金型１と塗膜形成金型２と裏面形成金型３とを備え、裏面形成金型３と表面形成金型１とで形成される成形キャビティ１２で成形品２２を形成可能であり、成形品２２を保持する裏面形成金型３と塗膜形成金型２とで形成される塗装キャビティ１３で、成形品２２の表面に熱硬化性塗料層２１を形成可能であり、裏面形成金型３の成形キャビティ形成部３ａに、裏面形成金型３を貫通する吸引口４が配置されたものである（図１Ａ～図１Ｃ参照）。

　裏面形成金型３は、成形品２２の裏面形状を形成するために用いられる。このため、裏面形成金型３は、パーティング面３Ｐに、成形キャビティ１２を形成する成形キャビティ形成部３ａを有している。成形キャビティ形成部３ａは、図１Ａでは、一例として凸状部として形成されているが、凹部でもよい。この裏面形成金型３の成形キャビティ形成部３ａには、裏面形成金型３を貫通する吸引口４が開口されている。吸引口４は、成形キャビティ１２を形成する成形キャビティ形成部３ａに開口することにより、後述するように、塗装キャビティ１３と連通可能としている。吸引口４は、吸引装置４６と連通されており、吸引装置４６の吸引動作により、吸引口４を介して塗装キャビティ１３内などのエアを吸引可能としている。

　表面形成金型１は、成形品２２の表面形状を形成するために用いられる。このため、表面形成金型１は、パーティング面１Ｐに、成形キャビティ１２を形成する成形キャビティ形成部１ａを有している。成形キャビティ形成部１ａは、図１Ａでは、一例として凹部として形成されているが、凸状部でもよい。表面形成金型１は、裏面形成金型３に対向する位置に配置され、裏面形成金型３と型締めされるとき、表面形成金型１と裏面形成金型３との間で、成形キャビティ形成部１ａと成形キャビティ形成部３ａとで成形キャビティ１２を形成することができる。

　型内塗装品２３を形成するには、まず、裏面形成金型３と表面形成金型１と型締めして裏面形成金型３の成形キャビティ形成部３ａと表面形成金型１の成形キャビティ形成部１ａとで形成される成形キャビティ１２に、裏面形成金型３又は表面形成金型１を貫通する通路１ｈを利用して、樹脂注入機４０から成形樹脂を充填させることによって成形品２２を射出成形樹脂工程により形成する（図１Ａ参照）。ここで、成形キャビティ形成部３ａに配置される吸引口４の開口の大きさ（直径又は断面の最大寸法）は、粘度の大きい成形樹脂が入り込まない程度とする。

　塗膜形成金型２は、表面形成金型１に代えて、裏面形成金型３と型締め可能な金型である。すなわち、裏面形成金型３と表面形成金型１との間で、上記したように成形品２２を形成したのち、表面形成金型１に代えて、裏面形成金型３に対向する位置に塗膜形成金型２を配置したのち、裏面形成金型３と塗膜形成金型２とを型締めするように構成している。塗膜形成金型２は、表面形成金型１の成形キャビティ形成部１ａよりも外形形状を大きくし、成形品２２の表面側に、成形品２２の表面と接しない空間部分が形成できる程度の、塗装キャビティ形成部２ａを有するように構成されている。この接しない空間部分である塗装キャビティ形成部２ａが塗装キャビティ１３に該当する。すなわち、塗装キャビティ１３は、成形品２２の表面と、裏面形成金型３のパーティング面３Ｐの一部(後述する塗装キャビティ形成部３ｃ)と、塗膜形成金型２の塗装キャビティ形成部２ａとの間に形成される。成形品２２の形成後、裏面形成金型３が成形品２２を保持する状態で、裏面形成金型３に対向する金型を、表面形成金型１から塗膜形成金型２に切り替え、成形品２２の表面に、塗装キャビティ形成部２ａなどの間隙による塗装キャビティ１３を形成する（図１Ｂ参照）。ここで、裏面形成金型３が成形品２２を保持するためには、例えば、一般成形と同様、成形品２２を、裏面形成金型３に移動可能に配置されたエジェクト部材又は押圧部材の一例としてのエジェクターピン３１に喰い込ませるによって、裏面形成金型３から成形品２２が外れないように保持することができる。そして、エアシリンダなどのエジェクターピン駆動装置４５の駆動動作によるエジェクターピン３１の移動（図１Ｂでは右方向への移動）で、成形品２２を押圧して裏面形成金型３から、エジェクターピン３１の軸方向沿いに微小量だけ突き出し（図１Ｂでは右方向に突き出し）、成形品２２の裏面と裏面形成金型３の成形キャビティ形成部３ａとの間に連通空間部１４を吸引口４に連通して形成することによって、連通空間部１４を介して塗装キャビティ１３と吸引口４との間を連通させる（図１Ｂ参照）。

　続いて、吸引装置４６により吸引口４からエアを吸引して塗装キャビティ１３内を真空状態に近くする。この状態で、塗装キャビティ１３に、液状熱硬化型組成物からなる加飾用の熱硬化性塗料を、後述する塗料注入機４１より塗料ゲート２ｊ(図１Ｃ参照)を通して注入し、成形品２２の表面に熱硬化性塗料層２１を成形する（図１Ｃ参照）。

　ここで、連通空間部１４を形成するために成形品２２の裏面を裏面形成金型３の成形キャビティ形成部３ａから突き出す微小量としては０．０１～０．０３ｍｍとするのがよい。上記突き出す微小量が０．０１ｍｍ未満であると、連通空間部１４の厚みが薄くなり、連通空間部１４を介して塗装キャビティ１３の内部の空気を吸引口４内に十分に吸引しきれずに、エア溜まりが生じる恐れがある。また、上記突き出す微小量が０．０３ｍｍを超えると、連通空間部１４の厚みが厚くなりすぎて、塗装キャビティ１３内に注入する熱硬化性塗料が吸引口４にまで流れ込んで吸引口４を塞いでしまい、エア溜まりが生じる恐れがある。従って、上記０．０１～０．０３ｍｍの範囲に突き出し量を設定すると、例えばおおよそ０．１ｍｍ前後の厚みの塗装キャビティ１３内では、熱硬化性塗料は塗装キャビティ１３の全体を速やかに充填しながらも、塗装キャビティ１３よりも薄い空間である連通空間部１４内では熱硬化性塗料が速やかに加熱されて熱硬化性塗料の粘度が高くなり、熱硬化性塗料が吸引口４まで到達しないようにすることができる。

　吸引完了後、エジェクターピン駆動装置４５の駆動動作によりエジェクターピン３１を上記移動時とは反対方向に移動（図１Ｂでは左向へ移動）させて成形品２２を裏面形成金型３側に戻す（図１Ｄ参照）。成形品２２は一旦裏面形成金型３から離型しているために、成形品２２の裏面と裏面形成金型３の成形キャビティ形成部３ａとの間にわずかの隙間は残るが、この隙間の箇所の熱硬化性塗料は即座に熱硬化する。また、この隙間の箇所の熱硬化性塗料は、成形品２２の背面に密着して形成されているため、成形品２２の外観にも影響せず、バリ取りのような後処理は不要である。

　熱硬化性塗料層２１が完全に硬化すると、塗装キャビティ１３内で熱硬化性塗料層２１にエア溜まりが生じないため、意匠性に優れかつ十分な表面硬度を持つ型内塗装品２３を得ることができる。

　以下、型内塗装品２３の形成に用いられる型内塗装品形成金型以外の材料又は装置を説明する。

　熱硬化性塗料の材質としては、例えば、有機過酸化物を硬化反応の開始剤とする、少なくとも２個の（メタ）アクリレート基を有するウレタンアクリレートオリゴマー、エポキシアクリレートオリゴマー等のオリゴマー若しくはその樹脂、又は、不飽和ポリエステル樹脂２０～７０重量％と、メチル（メタ）アクリレート、エチル（メタ）アクリレート、プロピル（メタ）アクリレート、ブチル（メタ）アクリレート、２－エチルヘキシル（メタ）アクリレート、（メタ）アクリル酸、酢酸ビニル、トリプロピレングリコールジアクリレート、１，６－ヘキサンジオールジアクリレート、又は、スチレン等の共重合可能なエチレン性不飽和モノマー８０～３０重量％からなるビヒクル成分とを主成分とし、ラジカル捕捉剤、各種着色顔料、アルミニウム顔料、パール顔料、離型剤、及び光安定剤等を含有したものを使用できる。

　塗料注入機４１は、塗料タンク４３の上部に圧力をかけ、１ショット分の熱硬化性塗料４４の正確な量が、塗料タンク４３から計量・射出・バルブの構造を兼ね備えた塗料注入ユニット４２に送られる構造になっている（図２参照）。

　塗料注入ユニット４２の位置設定としては、塗膜形成金型２の内部に設けてもよい。また、塗膜形成金型２に設けられる熱硬化性塗料の注入口を、裏面形成金型３との合わせ面に設け、塗料注入ユニット４２の長手軸方向と樹脂注入機４１の樹脂射出ユニットの注入方向とを直交させるように配置してもよい。この場合、成形品２２を保持する裏面形成金型３と塗膜形成金型２とが型閉じして、成形品２２を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティ１３が成形品２２と塗膜形成金型２との間に形成された段階で、塗料注入ユニット４２が前進して塗膜形成金型２に直接タッチし、熱硬化性塗料が、塗料注入ユニット４２から、塗膜形成金型２に設けられる塗料ゲート２ｊ(図１Ｂ参照)を通して、塗装キャビティ１３に注入される仕組みにとなる。

　成形樹脂は、通常の熱可塑性の射出成形樹脂又はエンジニアリングプラスチックのほか、熱硬化性の成形樹脂材料など特に限定はされないが、成形しやすく熱硬化性塗料との密着が良いものが好ましい。成形樹脂として、具体的には、アクリロニトリルブタジエンスチレン系樹脂（ＡＢＳ系樹脂）、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、又は、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。

　成形樹脂は、樹脂注入機４０によって、成形キャビティ１２内に充填する。樹脂注入機４０としては射出成形機を用いることができる。

　本発明の上記実施形態にかかる型内塗装品形成金型は、裏面形成金型３を複数備えるようにして、可動盤、又は、可動盤についている回転盤、が回転する二色成形用の射出成形機に配置できる（図示せず）。射出成形機内での金型配置として、表面形成金型１と塗膜形成金型２とを固定盤にそれぞれ固定し、表面形成金型１と塗膜形成金型２との間の位置に可動盤又は回転盤を配置し、裏面形成金型３を射出成形機の可動盤又は可動盤についている回転盤に固定すればよい。また、裏面形成金型３を固定盤に固定し、表面形成金型１と塗膜形成金型２とを射出成形機の可動盤又は可動盤についている回転盤に固定してもよい。このように設置すると、複数の裏面形成金型３のうちのある１つの裏面形成金型３と表面形成金型１とによって成形品２２を形成する間、別の成形品２２を保持する裏面形成金型３と塗膜形成金型２とによって熱硬化性塗料層２１を形成する、すなわち、成形品２２の形成と同時に型内塗装品２３の製造ができ、好適である。

　上記実施形態にかかる型内塗装品を製造する型内塗装品形成金型によれば、塗装キャビティ１３に熱硬化性塗料を注入して成形品２２の表面に熱硬化性塗料層２１を形成する前に、成形品２２の裏面側の吸引口４と塗装キャビティ１３とを連通させて塗装キャビティ１３内のエアを吸引可能とすることができて、塗装キャビティ１３に熱硬化性塗料を注入して成形品２２の表面に熱硬化性塗料層２１を形成するとき、塗装キャビティ１３内を真空状態に近い状態とすることができる。よって、熱硬化性塗料層形成時にエア溜まりが生じないため、意匠性に優れ十分な表面硬度を持つ型内塗装品２３を得ることができる。

　上記実施形態にかかる型内塗装品の製造方法によれば、成形品２２の裏面側に形成した連通空間部１４により塗装キャビティ１３と吸引口４との間を連通させ、吸引口４からのエア吸引後に、塗装キャビティ１３に熱硬化性塗料を注入して成形品２２の表面に熱硬化性塗料層２１を形成することができる。従って、熱硬化性塗料層２１を形成するとき塗装キャビティ１３内を真空状態に近いようにできて、熱硬化性塗料層形成時にエア溜まりが生じないため、意匠性に優れ十分な表面硬度を持つ型内塗装品を得ることができる。

　表面形成金型１と塗膜形成金型２と２つの裏面形成金型３とを備える型内塗装品形成金型を用いて型内塗装品２３を製造した。塗膜形成金型２として塗料注入ユニット４２を内蔵して塗料注入口を備えるものを使用した。裏面形成金型３として成形キャビティ形成部３ａに吸引口４が配置されたものを使用した。型内塗装品２３の製造には、可動盤についている回転盤が回転する二色成形用の射出成形機を使用した。

　表面形成金型１に対向する裏面形成金型３を表面形成金型１に対して型閉じして形成した成形キャビティ１２に加熱溶融したソリッド色の耐熱ＡＢＳ樹脂を充填、冷却固化させて成形品２２を形成した（図１Ａ参照）。次いで、射出成形機の回転盤を回転させ、裏面形成金型３が成形品２２を保持する状態で、裏面形成金型３に対向する金型を表面形成金型１から塗膜形成金型２に切り替え、裏面形成金型３と塗膜形成金型２とを型閉じして、成形品２２を熱硬化性塗料で塗装するための塗装キャビティ１３を形成した。そして、成形品２２を裏面形成金型３からエジェクターピン３１により突き出して成形品２２と裏面形成金型３との間に連通空間部１４を形成することによって、塗装キャビティ１３と吸引口４との間を連通させた（図１Ｂ参照）。吸引装置４６による吸引口４からのエア吸引後、塗装キャビティ１３内に熱硬化性塗料（大日本塗料株式会社製プラグラス８０００）を注入して熱硬化性塗料層２１を形成し（図１Ｃ参照）、最後に、突き出しを戻し、熱硬化性塗料層２１を硬化させて型内塗装品２３を形成した（図１Ｄ参照）。

　吸引装置４６による吸引口４から連通空間部１４経由のエア吸引によって塗装キャビティ１３内を真空状態に近いようにしてから、熱硬化性塗料を塗装キャビティ１３内に注入したので、熱硬化性塗料層２１の形成の際にエア溜まりが生じず、得られた型内塗装品２３は意匠性に優れ十分な表面硬度を備えるものであった。

　なお、上記様々な実施形態又は変形例のうちの任意の実施形態又は変形例を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。

　本発明にかかる型内塗装品を製造する型内塗装品形成金型及び型内塗装品の製造方法は、塗装キャビティ内を真空状態に近い状態で塗装キャビティに熱硬化性塗料を注入して成形品の表面に熱硬化性塗料層を形成した型内塗装品を得ることができて、ＡＶ機器又は家電製品のフロントパネル又はケース、ボタン、自動車の計器パネル又はボタン等として用いられる型内塗装品として有用である。

　本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。

Claims

　裏面形成金型（３）と、
　上記裏面形成金型と型締めされて、成形品(２２)を形成可能な成形キャビティ（１２）を上記表面形成金型との間で形成する表面形成金型（１）と、
　上記表面形成金型に代えて、上記裏面形成金型と型締めされて、上記成形品の表面に熱硬化性塗料層（２１）を形成可能な塗装キャビティ（１３）を上記成形品を保持する上記裏面形成金型と上記塗膜形成金型とで形成する塗膜形成金型（２）と、
　上記裏面形成金型の上記成形キャビティの形成部（３ａ）に吸引口（４）が配置されている型内塗装品形成金型。
　上記裏面形成金型を貫通して移動可能でかつ上記成形キャビティ内で成形された成形品（２２）を押圧して上記裏面形成金型の上記成形キャビティの形成部（３ａ）から上記成形品の裏面を離して上記塗装キャビティ（１３）と連通する連通空間部（１４）を形成可能な押圧部材（３１）をさらに備える、請求項１に記載の型内塗装品形成金型。
　上記吸引口（４）と接続されて、上記塗装キャビティ（１３）内のエアを吸引可能な吸引装置（４６）をさらに備える、請求項１又は２に記載の型内塗装品形成金型。
　請求項１～３のいずれか１つに記載の型内塗装品形成金型を用い、
　上記表面形成金型と上記裏面形成金型の成形キャビティ形成部（３ａ）とによって上記成形キャビティを形成した状態で、成形樹脂を上記成形キャビティに充填させることによって上記成形品の射出成形を行い、
　上記裏面形成金型が上記成形品を保持する状態で上記裏面形成金型に対向する金型を上記表面形成金型から上記塗膜形成金型に切り替えて、上記成形品の表面と上記塗膜形成金型との間に塗装キャビティ（１３）を形成し、
　上記成形品の裏面を上記裏面形成金型の上記成形キャビティ形成部（３ａ）から離して上記成形品の裏面と上記裏面形成金型の上記成形キャビティ形成部との間に連通空間部（１４）を形成することによって上記塗装キャビティ（１３）と上記吸引口（４）との間を上記連通空間部を介して連通させ、
　上記吸引口及び上記連通空間部を介して上記塗装キャビティからのエア吸引後に上記塗装キャビティに熱硬化性塗料を注入して上記成形品の表面に熱硬化性塗料層（２１）を形成して型内塗装品（２３）を得る型内塗装品の製造方法。
　上記成形品の裏面を上記裏面形成金型の上記成形キャビティ形成部から０．０１～０．０３ｍｍ突き出して上記連通空間部を形成する請求項４に記載の型内塗装品の製造方法。
　上記塗装キャビティ（１３）と上記吸引口（４）との間を上記連通空間部を介して連通させるとき、上記裏面形成金型を貫通して移動可能でかつ上記成形キャビティ内で成形された成形品（２２）を押圧部材（３１）で押圧して、上記裏面形成金型の上記成形キャビティの形成部（３ａ）から上記成形品の裏面を離して、上記塗装キャビティ（１３）と上記吸引口（４）との間を上記連通空間部を介して連通させる、請求項４又は５に記載の型内塗装品の製造方法。