JP3573018B2 - 樹脂成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂成形品の成形と塗装を同時に行うために金型内のキャビティに予め塗料を塗布した後に樹脂材料を用いて射出成形した樹脂成形品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、樹脂成形品を大量生産する方法として熱可塑性樹脂の射出成形が採用されている。具体的に、自動車部品における射出成形では、成形性に優れ軽量安価であるポリプロピレン(PP)等が成形材料として適用されている。
【0003】
しかしながら、PPは耐候性に劣るため、このPPを用いて樹脂成形される自動車部品では、その表面に耐候性に優れた塗膜を形成する必要があった。そこで、金型内のキャビティに予め塗料を塗りその後製品の成形を行うようにした方法が提案されている。具体的には、キャビティにアクリル系の塗料溶液をスプレーガンで塗布して、キャビティ表面に塗膜層を形成する。その後、金型を閉じ加熱軟化され流動性が付与されたPPをキャビティに注入してそのキャビティ内で冷却硬化させる。これにより製品の表面に耐候性に優れた塗膜を形成する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上述のようにスプレーガンにより塗料溶液をキャビティに塗布した場合では、金型のキャビティ以外の部分に塗布されたり、金型に塗着せずに空気中に飛散し塗着効率が悪化してしまう。また、キャビティ以外の部分に塗布された塗料は成形後のバリ発生の原因となってしまうため、このバリを除去するための処理工程が必要となる。さらに、塗着せずに空気中に飛散した塗料は、作業場を汚すばかりでなく、周囲の環境を悪化させてしまう。
【0005】
また、スプレーガン塗布では、塗料を均一に塗布することができない。特に、パーティングラインの部分では、十分に塗布することができず、キャビティ表面に形成される塗膜層が薄くなってしまう。このため、樹脂成形時の成形圧力や温度等によって塗膜層が破れ、製品歩留まりが悪化する。
【0006】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その第1の目的は、アクリル樹脂の塗膜を効率よく均一に形成することができる樹脂成形品の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、成形と塗装とを同時に行うために、予め金型キャビティに塗料溶液を塗布する樹脂成形品の製造方法において、アクリル樹脂と溶剤とからなる塗料溶液を減圧状態の金型キャビティ内で沸騰させ、沸騰時の体積増加及び破泡により金型キャビティに塗膜層を形成した後、加熱軟化され流動性が付与された樹脂材料を金型キャビティ内に注入し冷却硬化させて成形するようにしたことをその要旨としている。
【0009】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、減圧状態とした金型キャビティで塗料溶液を沸騰させ、その沸騰時の体積増加及び破泡により金型キャビティにアクリル樹脂の塗膜層が形成される。つまり、閉じられた金型キャビティにおいて、その壁面に塗料が効率よく均一に塗布される。また、塗料溶液の注入量を調整することで塗膜を所望の厚さで均一に形成できることから、アクリル樹脂の塗膜層を所望の強度で均一に形成することが可能となる。従って、加熱軟化され流動性が付与された樹脂材料がキャビティに注入されて同材料がキャビティ内で成形されるとき、その際の成形圧力によって金型キャビティに形成した塗膜層が壊れることが防止される。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に従って説明する。
図1〜3は、本実施形態における射出成形機の一部断面図であり、図4は同射出成形機により板状に成形されるバックパネル1の斜視図である。なお、バックパネル1は、自動車の後部のストップランプ間に装着される部品である。
【0012】
図1〜図3に示すように、金型2は枠体3と蓋体4とからなるボックス5内に配設されている。詳しくは、枠体3には金型2の下型8が固定され、蓋体4には金型2の上型9が固定されている。また、蓋体4における枠体3との接合部にはシール部材10が配設されている。そして、図1に示すように金型2が開けられている状態から枠体3及び下型8が上方へ移動されて図2に示すように金型2が閉じられ型締めされる。なおこのとき、枠体3と蓋体4とによりボックス5が形成され、シール部材10によりボックス5内が密封される。
【0013】
下型8及び上型9には凹部11,12が形成されており、同凹部11,12が成形品形状を作るためのキャビティ13となる。また、上型9の凹部12には、排出孔14(例えば、断面積=4mm2)が形成されて、同排出孔14によりキャビティ13がボックス5内の中空部21に連通される。なお、排出孔14は、図4に示すバックパネル1の角部1aに対応する位置にも形成されている。
【0014】
枠体3の一方の側壁(図の右側の側壁)側に射出ノズル22が配設されており、図示しない射出装置本体からのポリプロピレン(PP)が射出ノズル22からゲート23を介してキャビティ13に注入される。また、枠体3の他方の側壁(図の左側の側壁)には排出管31が設けられ、その排出管31は、配管32及びバルブ33を介して真空ポンプ34に接続されている。真空ポンプ34が駆動されると、ボックス5内の空気が排出管31から排出され、ボックス5内が減圧される。
【0015】
次に、本実施形態におけるバックパネル1の樹脂成形方法を図1〜図3を用いて説明する。
先ず、図1に示すように、金型2を開いてキャビティ13(下型8の凹部11及び上型9の凹部12)の壁面に離型剤を塗布する。この離型剤は、ワックス、シリコンオイル等からなり、金型2に成形品が粘着することを防いで、成形品を取り出し易くする目的で塗布されるものである。
【0016】
次いで、金型2を水平に保ちつつ液状の塗料Mを下型8の凹部11に注ぎ込む。本実施の形態における塗料Mの溶液は、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)と、固形分としてのアクリル樹脂を含む。そして、枠体3及び下型8を上方に移動させて、図2に示すように金型2を閉じ型締めする。なおこのとき、枠体3と蓋体4とがシール部材10を介して接合されボックス5内は密閉状態となる。
【0017】
その後、真空ポンプ34を駆動し排出管31からボックス5内の空気を排出することでボックス5内を減圧する。このとき、キャビティ13内の空気が排出孔14を介してボックス5内の中空部21に吸い出されてキャビティ13内も減圧される。キャビティ13内が減圧されると、塗料Mの溶剤(MEK)の沸点が低下する。これにより、塗料Mは体積増加を伴いつつ沸騰して破泡する。具体的には、金型2の温度は常温(約20℃)に保たれており、キャビティ13内が70torr以下に減圧されると溶剤は沸騰する。この沸騰時の体積増加及び破泡により、塗料Mがキャビティ13の壁面に塗布される。
【0018】
そして、塗料Mの溶剤が気化して、アクリル樹脂がキャビティ13の壁面に塗着されることとなる。なお、気化した溶剤は排出孔14からボックス5内の中空部21及び排出管31等を介して真空ポンプ34から排気される。
【0019】
次いで、図示しない射出装置本体で加熱軟化され流動性が付与されたポリプロピレンが射出ノズル22からゲート23を介してキャビティ13に注入されて、図3に示すようにキャビティ13内で冷却されて硬化する。これにより、バックパネル1の樹脂成形と塗装が同時に実施される。つまり、射出成形により成形されるポリプロピレンP1の表面に耐候性に優れたアクリル樹脂A1の塗膜がほぼ均一な厚さで形成される。
【0020】
その後、金型2が開けられて、図4に示すバックパネル1が取り出されて成形工程が終了する。
因みに、スプレーガンで塗布した場合、塗料を的確に塗布することができず、特に、パーティングラインへの塗布が不十分となる。その結果、このパーティングラインの部分における塗膜が薄くなり、ポリプロピレン(PP)を用いて樹脂成形するとき、その際の成形圧力によってパーティングラインの部分の塗膜が壊れ、製品歩留まりが悪化してしまう。しかしながら、上記成形方法によれば、塗料Mの注入量を調整することにより、パーティングラインの部分にも適正な厚さでアクリル樹脂A1の塗膜層を形成することが可能となる。そのため、成形時の圧力によってキャビティ13の壁面に形成された塗膜層が壊れることが防止される。
【0021】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)閉じた金型2内において、塗料Mの塗布が実施されるので、スプレーガンで塗料Mを塗布した場合に比べて塗着効率を高めることができ、塗料Mの材料費を低減できる。また、塗料Mはキャビティ13外に塗布されることがなく、成形時におけるバリの発生を防止できる。従って、従来技術で必要であったバリを除去するための処理工程が不要となる。その結果、製造コストを低く抑えることができる。さらに、塗料Mが外部に飛散することが防止され、作業場をきれいに保つことができ、周囲の環境の悪化を防止することができる。
【0022】
(2)塗料Mは、その溶剤が沸騰して体積増加及び破泡することによりキャビティ13の壁面に均一に塗布される。つまり、塗布むらが無くなり成形後においてバックパネル1の表面に耐候性に優れるアクリル樹脂A1の塗膜がほぼ均一な厚さで形成される。従って、耐候性がどの場所でも均一に得られ、製品性能の悪化を防止できる。さらに、均一に塗膜を形成できることから製品表面の色むらがなく外観不良を低減できる。
【0023】
(3)スプレーガンにより塗布した場合と比較して短時間での厚塗りが可能であり、塗料溶液をキャビティ13に流し込む際に、塗料溶液の量を調整するだけで、所望の厚さの塗膜を形成することができる。つまり、従来のように塗料をスプレーガンで塗布した場合、パーティングライン(PL部)の塗膜を厚くすることは困難であるが、本実施形態のバックパネル1では、パーティングラインの部分に適正な厚さの塗膜を形成できる。従って、ポリプロピレン(PP)を注入して樹脂成形するとき、その際の成形圧力が高くなったとしてもアクリル樹脂A1の塗膜が壊れることを防止できる。
【0024】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
○上記実施形態では、金型2を開けた状態で塗料Mを注入するものであったが、塗料注入装置を別に設けて、金型2を型締めした状態で塗料注入装置からキャビティ13に塗料Mを注入するように構成してもよい。このようにすれば、減圧中のキャビティ13内に塗料Mを注入でき、短時間で樹脂成形を実施できるようになる。
【0025】
○上記実施形態では、ポリプロピレン(PP)を用いて成形したが、他の熱可塑性樹脂材料、例えば、ABS樹脂等を用いて射出成形するものでもよい。また、成形品は、バックパネル1に限定されず、例えば、ステアリングホイール、インストルメントパネル、コンソールボックス、グローボックス、ドアカバー、エアスポイラー、バンパー等の他の部品にも適用できる。勿論、自動車部品以外に家電製品等の成形品に適用してもよい。
【0026】
○上記実施形態では、塗料Mの溶剤は、メチルエチルケトン(MEK)であったが、これに限定するものではなく、アクリル樹脂を溶解させる溶液であればよい。例えば、アセトン、メチルイソブチルケトン、酢酸エチル等を用いてもよく、それらのうちの2種以上を混ぜ合わせたものを用いてもよい。
【0027】
さらに、上記実施形態により把握される請求項以外の技術的思想について、以下にそれらの効果とともに記載する。
(イ)成形と塗装とを同時に行うべく予め金型キャビティに塗膜層を形成した後に、熱可塑性樹脂の射出成形により製造される樹脂成形品において、前記射出成形による成形部分の表面にアクリル樹脂の塗膜がほぼ均一な厚さで形成されることを特徴とする樹脂成形品。この場合、樹脂成形品の耐候性を向上できる。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、アクリル樹脂の塗膜を効率よく均一に形成することができる。また、所望の厚さの塗膜が樹脂成形品の表面に均一に形成されるので、その耐候性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のバックパネルの成形方法を説明するための図。
【図2】実施形態のバックパネルの成形方法を説明するための図。
【図3】実施形態のバックパネルの成形方法を説明するための図。
【図4】実施形態のバックパネルの斜視図。
【符号の説明】
1…バックパネル、2…金型、13…キャビティ、M…塗料、A1…塗膜としてのアクリル樹脂、P1…樹脂材料としてのポリプロピレン。
Claims (1)
- 成形と塗装とを同時に行うために、予め金型キャビティに塗料溶液を塗布する樹脂成形品の製造方法において、
アクリル樹脂と溶剤とからなる塗料溶液を減圧状態の金型キャビティ内で沸騰させ、沸騰時の体積増加及び破泡により金型キャビティに塗膜層を形成した後、加熱軟化され流動性が付与された樹脂材料を金型キャビティ内に注入し冷却硬化させて成形するようにしたことを特徴とする樹脂成形品の製造方法。
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JP27619299A JP3573018B2 (ja) | 1999-09-29 | 1999-09-29 | 樹脂成形品の製造方法 |
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