JP4868308B2 - 転写用機能性薄膜の形成用組成物およびそれを用いた機能性薄膜被覆樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

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本発明は、金型表面に転写用機能性薄膜の形成用組成物、該組成物を用いて機能性薄膜被覆樹脂成形体を製造する方法、および該方法により得られる成形体に関する。
樹脂成形体に種々の性能、例えば、導電性、絶縁性、撥水性など所望の性質を付与するため、その表面に機能性薄膜を形成することが行われている。例えば、特許文献1では、樹脂成形体などの基材表面に耐水性を付与するために、エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーおよびキトサンを含む水性分散体を付与し、耐水性を有する機能性薄膜を形成している。上記方法においては、まず、フィルムなどの成形体を形成し、その表面に水性分散体を、ディップ(浸漬)コートやスプレーコートなどの手段によって付与して薄膜を形成し、次いで、乾燥させるという工程を必要とするため繁雑である。
特許文献2には、樹脂基材表面に反射防止層を有する成形体を製造する方法が記載されている。この方法においては、剥離性シート表面に反射防止層と熱融着性層とを有する反射防止層付与用シートを金型内にセットし、この金型に樹脂を導入して射出成形を行い、熱融着性層を樹脂に融着させることにより、表面に反射防止層を有する成形体を得ている。本方法では、まず反射防止層付与シートを作成し、これを金型内にセットして、そのシートから成形体に熱融着性層と反射防止層とを転写する必要があり、操作が煩雑である。さらに、金型の形状や成形条件によっては樹脂が充分に金型内に充填されず、金型の形状どおりの成形体が得られない場合がある。
特開平9−31274号公報 特開2002−267816号公報
本発明は、上記従来の課題を解決するためになされ、その目的とするところは、導電性、絶縁性、撥水性など所望の性質を付与するための機能性薄膜を有する成形体を得るための、転写用機能性薄膜の形成用組成物、それを用いた機能性薄膜被覆樹脂成形体の製造方法、および該方法により得られる成形体を提供することにある。
本発明の転写用機能性薄膜の形成用組成物は、機能性材料、および溶媒または分散媒を含有する。
1つの実施態様によれば、上記機能性材料は導電性ポリマーである。
1つの実施態様によれば、上記導電性ポリマーは、以下の式(1)
Figure 0004868308
(式中、RおよびRは相互に独立して水素またはC1−4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよいC1−4のアルキレン基を表す)の反復構造を有するポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリ陰イオンとの複合体である。
1つの実施態様によれば、上記溶媒または分散媒に、沸点が110℃以上の溶媒または分散媒が含有される。
本発明の機能性薄膜被覆樹脂成形体の製造方法は、上記転写用機能性薄膜の形成用組成物を金型表面に付与して、溶媒または分散媒を含む薄膜を形成する工程、および該薄膜に溶媒または分散媒が残留している状態で該金型に樹脂を導入して成形を行うことにより、機能性薄膜をその表面の少なくとも一部に有する樹脂成形体を得る工程を包含する。
1つの実施態様によれば、上記成形は射出成形である。
本発明は、上記製造方法により得られる機能性薄膜被覆樹脂成形体を包含する。
本発明によれば、導電性、絶縁性、撥水性など所望の性質の機能性薄膜を有する成形体を製造するために用いられる組成物が提供される。本発明においては、この組成物を金型表面に付与して薄膜を形成した後、所定の条件において樹脂を導入して成形を行うことにより、機能性薄膜を有する成形体を得ることが可能となる。従って、所望の成形体を得た後、塗布・乾燥などの工程によりその表面に薄膜を形成したり、成形工程の前に予め転写シートを作製したりするなどの必要がなく、容易に機能性薄膜を有する成形体を得ることができる。得られた機能性薄膜被覆樹脂成形体は、所望の機能性を有し、広い分野で利用可能である。
本発明の転写用機能性薄膜の形成用組成物(以下、「転写用薄膜形成用の組成物」あるいは単に「組成物」などという場合がある)は、機能性材料、溶媒または分散媒、および必要に応じてバインダー、導電性向上剤、架橋剤、レベリング剤などを含有する。以下、本発明の組成物に含まれる成分、本発明の組成物、および該組成物を用いた機能性薄膜被覆樹脂成形体の製造方法を順次説明する。
1.機能性材料
本発明の転写用薄膜形成用の組成物に含有される機能性材料は、成形体表面に所望の機能性を付与するための材料である。例えば、目的の機能が導電性であれば、導電性ポリマー、金属、金属酸化物などの導電材料であり、目的の機能が絶縁性であれば、絶縁性樹脂などの絶縁材料であり、目的の機能が色であれば、染料、顔料、および発光体などである。これらの材料は、溶媒に溶解し、あるいは分散媒に分散し得る材料であれば特に限定されない。機能性材料の量は特に限定されず、薄膜としたときにその機能が目的のレベルを発現するだけの量であればよい。作業性などを考慮すると、一般には、組成物中に1〜60質量%の割合で含有される。
以下、機能性材料が導電性ポリマーである場合を例に挙げて、本発明を説明する。
上記導電性ポリマーの種類に特に制限はない。好ましい導電性ポリマーとしてポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびその誘導体、並びにそれらの混合物を挙げることが出来る。中でも以下の式(1)
Figure 0004868308
(式中、RおよびRは相互に独立して水素またはC1−4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよいC1−4のアルキレン基を表す)の反復構造を有するポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリ陰イオンとの複合体が特に好ましい。
2.溶媒または分散媒
本発明の組成物に含有される溶媒または分散媒は、機能性材料を溶解または分散できるものであれば特に制限はなく、水、水系溶剤、有機溶剤のいずれもが使用可能である。
水系溶剤の場合は、水と、水に混和可能な有機溶剤との混合溶剤が使用可能である。水に混和可能な有機溶剤は特に制限はないが、例えば、次の溶剤が挙げられる:メタノール、エタノール、2−プロパノール、1−プロパノール、n−ブタノールなどのアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールなどのエチレングリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテルなどのグリコールエーテル類;エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートなどのグリコールエーテルアセテート類;プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどのプロピレングリコール類;プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテルなどのプロピレングリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテルアセテートなどのプロピレングリコールエーテルアセテート類;N−メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、アセトン、アセトニトリルおよびそれらの混和物。
溶媒または分散媒が有機溶剤系の場合は、上記水と混和する溶剤として挙げた溶剤および水と混和しない溶剤が挙げられ、後者としては、トルエン、キシレン(o-、m-、あるいはp-キシレン)、ベンゼン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル、ヘキサン、ヘプタンなどが使用できる。なお、通常、上記機能性材料や必要に応じて含有される添加剤が上記溶剤に完全に溶解している場合は、該溶剤は「溶媒」、何れかの成分が溶解せずに分散している場合は「分散媒」と記載される。
上記溶媒または分散媒の沸点が105℃以下の場合には、沸点が110℃以上の溶剤がさらに含有されることが好ましい。このような溶剤が含有されることにより、溶媒または分散媒の蒸発が抑制される。そのため、後述のように転写用薄膜形成用の組成物を金型表面に付与し、溶媒または分散媒を残留させた状態で金型に樹脂を導入する際に、組成物の金型上への付与から樹脂を導入して成形を行うまでの時間や金型温度を制御することが容易となり、作業性に優れる。
沸点が110℃以上の溶剤としては、上記溶剤のうち、トルエン(沸点:110.6℃)、n-ブタノール(沸点:117.7℃)、エチレングリコールジメチルエーテル(沸点:121℃)、o-キシレン(沸点:144.4℃)、m-キシレン(沸点:139.1℃)、p-キシレン(沸点:138.3℃)、N,N-ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、エチレングリコール(沸点:197.2℃)などが挙げられる。本明細書において、このような高沸点の溶媒または分散媒を「蒸発抑制用溶媒または分散媒」という場合がある。
3.組成物中のその他の成分
3.1 バインダー
本発明の組成物に含有され得るバインダーは、通常、上記機能性材料自体の成膜性および密着性が乏しい場合に、該組成物中に好適に含有される。このようなバインダーとしては、例えば、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート、ポリウレタン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアミド、ポリイミドなどの単独重合体;スチレン、塩化ビニリデン、塩化ビニル、およびアルキル(メタ)アクリレートからなる群より選択される共重合成分を有する共重合体;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのアルコキシシラン化合物などが挙げられる。バインダーが含有される場合には、その量は特に限定されないが、通常、組成物中に95質量%以下の割合で含有される。
3.2 導電性向上剤
本発明の組成物中の機能性材料が導電性ポリマーの場合、導電性を向上させる目的で、導電性向上剤を含有させることができる。このような導電性向上剤としては、水に混和する有機溶剤が利用される。それには、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、カテコール、シクロヘキサンジオール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、シクロヘキサンジメタノール、グリセリン、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトン、イソホロン、プロピレンカーボネート、シクロヘキサノンなどがある。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの有機溶剤は、溶媒または分散媒を兼ねて用いられてもよい。導電性向上剤が含有される場合には、その量は特に限定されないが、通常、組成物中に95質量%以下の割合で含有される。
3.3 架橋剤
本発明の組成物には、得られる成形体表面の機能性薄膜の強度を向上させる目的で、架橋剤が含有されていてもよい。このような架橋剤としては、メラミン系架橋剤、ポリカルボジイミド系架橋剤、ポリオキサゾリン系架橋剤、ポリエポキシ系架橋剤、ポリイソシアネート系架橋剤などが挙げられる。架橋剤が含有される場合には、その量は特に限定されないが、通常、組成物中に70質量%以下の割合で含有される。
3.4 レベリング剤
本発明の組成物には、レベリング剤として、界面活性剤、アルコールなどが含有されていてもよい。界面活性剤はレベリング性向上効果、アルコールはレベリング性の向上効果および乾燥性の向上効果を与える。レベリング剤が含有される場合には、その量は特に限定されないが、通常、組成物中に20質量%以下の割合で含有される。
4.成形体に用いられる樹脂
本発明の機能性薄膜被覆樹脂成形体の本体を形成する樹脂は、成形可能な樹脂であれば特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エステル共重合体、アイオノマー共重合体、シクロオレフィン系樹脂などのポリオレフィン樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリオキシエチレン、変性ポリフェニレン、ポリフェニレンスルフィドなどのポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン6,6、ナイロン9、半芳香族ポリアミド6T6、半芳香族ポリアミド6T66、半芳香族ポリアミド9Tなどのポリアミド樹脂;アクリル樹脂;ポリスチレン;アクリロニトリル−スチレン共重合体;アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、塩化ビニル樹脂などを挙げることができる。
5.転写用機能性薄膜の形成用組成物および該組成物を用いた機能性薄膜被覆樹脂成形体の製造方法
本発明の組成物は、上述のように、機能性材料、溶媒または分散媒、および必要に応じてバインダー、導電性向上剤、架橋剤、レベリング剤などを含有する。この組成物は、通常、これらの成分が混合された溶液または分散液の状態で利用される。この溶液または分散液は、上記成分を、通常の攪拌機などを用いて攪拌・混合することにより、機能性材料およびその他の材料を溶剤中に溶解させ、あるいは分散させることにより得られる。攪拌・混合時の温度は特に制限されないが、含有される各成分の沸点以下の温度であることが好ましい。分散液とする場合には、上記方法により不溶の成分が分散媒にナノ単位の微細な粒子状で分散した分散液とすることが可能である。
本発明の方法により機能性薄膜被覆樹脂成形体を製造するにはまず、所望の形状の成形体を製造するための成形機を準備する。この成形機は、金型を具備する成形機であれば特に限定されない。例えば、射出成形機、ブロー成形機、プレス成形機などが挙げられる。
この金型表面に上記溶液または分散液の状態の組成物(塗布液)が付与される。付与方法は特に限定されない。例えば、成形時に樹脂が導入されて接する金型表面の部分に、スプレーコーティング、刷毛塗りなどの方法を用いて塗布することにより、溶媒または分散媒を含む薄膜(湿潤状態の薄膜)が形成される。この薄膜は、金型の所望の部分に付与される。例えば、目的とする成形体表面の全体にわたり薄膜を形成する場合には、金型内部の全体にわたり、そして薄膜を成形体の一部に形成する場合は、目的とする部分に対応する金型の部分に薄膜が形成される。次いで、この薄膜は、必要に応じて乾燥される。上記塗布液を付与するときの温度および乾燥時の温度は特に限定されず、該塗布液の種類、濃度、目的とする成形体の形状、成形機の種類などによっても異なるが、例えば射出成形機の場合は、金型温度が30℃〜150℃であることが好ましく、80℃〜120℃であることがさらに好ましい。乾燥時間は特に限定されないが、1秒から10分間が好ましく、5秒から2分間が更に好ましい。上記湿潤状態の薄膜あるいは乾燥後の薄膜中には溶媒または分散媒が残留していることが必要である。その量は、特に限定されないが、通常、薄膜中の固形分を100質量部とした場合、3〜5000質量部、好ましくは、5〜100質量部である。例えば、タックフリー(指触乾燥)の状態であって、かつ溶媒または分散媒が残留している状態が好ましい。このときの薄膜の厚みは特に限定されないが、0.02μm〜1.00μmの範囲が好ましく、0.01〜0.50μmの範囲がさらに好ましい。
上記金型上の薄膜に溶媒または分散媒が残留している状態で該金型に樹脂を導入して成形が行われる。具体的には、樹脂成形体を得るための1つの工程において、上記金型表面に上記の薄膜が形成され、引き続く成形工程により、薄膜が樹脂成形体表面に転写されて、被覆樹脂成形体が形成される。以下に、その一例として、射出成形により機能性薄膜被覆樹脂成形体を製造する方法を記載するが、本発明の方法はこれに限定されない。
まず、粒状の樹脂原料(熱可塑性樹脂のペレット)を射出成形機に導入し、スクリュの回転で加熱筒内に送り込み、樹脂原料を溶融させる。樹脂を溶融させる温度は樹脂の種類により異なるが、通常は150℃〜350℃の範囲である。次に、射出成形機の金型表面に、スプレーコーティングなどの手法により、塗布液が付与され、上述のように湿潤状態の薄膜が形成され、必要に応じて乾燥される。このときの金型の温度は、溶融樹脂が金型内に導入される際に該樹脂が固化し得る温度範囲であり、通常30℃〜150℃の範囲である。次に、金型表面の薄膜に溶媒または分散媒が残留している状態において、金型を閉じて、スクリュを前進させて加圧することにより、予め溶融させておいた樹脂を金型内に注入する。これにより、溶融樹脂が金型内に流れ込み、溶融樹脂の熱により、金型の薄膜に含まれる溶媒または分散媒が蒸発する。蒸発により生じた蒸気および金型内の空気は、ガスベントを通じて外部に排出される。樹脂の注入が終わると、金型温度により溶融樹脂は温度が下がり、やがて固化する。樹脂が固化した後、金型を開いて、機能性薄膜により表面が被覆された樹脂成形体を取り出す事ができる。
上記得られた成形体は、その表面の少なくとも一部に所望の機能性薄膜を有する。このような被覆樹脂成形体においては、薄膜の樹脂成形体への密着性が極めて高い。これは、成形時に溶融した樹脂が金型内に導入されて金型上の塗膜と接するため、このときに薄膜の表面部分が樹脂と相容すると考えられる。このようにして、本発明により、例えば、機能性材料として導電性ポリマーを用いることにより、その表面全体が、あるいはその表面の一部が導電性を有する樹脂成形体が得られる。機能性薄膜被覆成形体は、目的に応じた用途に好適に用いられる。例えば、導電性表面を有する成形体は、半導体の搬送容器、電子部品の包装用トレイなどに好適に用いられる。
以下に、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
I.使用原料および機器
I.1 機能性材料
機能性材料を含む水分散液として、ポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリ陰イオンとの複合体でなる導電性ポリマーの水分散液である、H.C.スタルク社製のBaytron Pを用いた。本材料は固形分が1.3質量%の水分散体であり、残り98.7%は水である。
I.2 分散媒
分散媒としては、水を用いた。この水の大半は、Baytron Pに含まれる水であるが、新たに加える水はイオン交換処理をして用いた。さらに、蒸発抑制用分散媒として、ナカライテスク(株)製のエチレングリコール(試薬1級)を用いた。
I.3 バインダー
バインダーを含む水分散液として、ナガセケムテックス(株)製のガブセンES−210を用いた。本製品は、固形分が25%の水分散体である。
I.4 導電性向上剤およびその他の材料
導電性向上剤として、ナカライテスク(株)製のN−メチルピロリドン(試薬1級)を用いた。界面活性剤として互応化学工業(株)製のプラスコートRY−2を用いた。
I.5 成形樹脂
ポリカーボネートとしては、ペレット状のポリカーボネートである三菱エンジニアリングプラスチックス(株)製のユーピロンS3000Nを、110℃で12時間、真空乾燥させることによって水分を除去して用いた。ゼオノアは、シクロオレフィン系樹脂であり、ペレット状の樹脂である日本ゼオン(株)製のゼオノア1020Rをそのまま用いた。
I.6 成形機
射出成形機はBattenfeld社製のPLUS250を用いた。金型の樹脂注入部分のサイズは、縦80mm×横50mm×厚さ3.2mm(プレート形状)である。
II.評価方法
II.1 機能性薄膜転写率
金型表面から成形体への機能性薄膜の転写率は、得られた樹脂成形体の表面積に対する機能性薄膜被覆部分の面積を目視で評価し、百分率で表した。例えば、転写率が50%とは、成形体の表面積の半分の部分が機能性薄膜で被覆され、残りの半分の部分に対応する薄膜は金型上に残存することを意味する。
II.2 表面抵抗率
表面抵抗率は、JIS K6911に従い、三菱化学(株)製ハイレスターUP(MCP−HT450)を用いて測定した。
II.3 全光線透過率およびヘイズ値
全光線透過率およびヘイズ値は、JIS K7150に従い、スガ試験機(株)製ヘイズコンピュータHGM−2Bを用いて測定した。
II.4 密着性
薄膜の基材への密着性は、JIS K5400の碁盤目剥離試験に従って評価した。
III.塗布液の調製
表1に示す各成分を混合して、転写用機能性薄膜を形成するための、分散液の状態の組成物(塗布液)を3種調製した。各々を塗布液A、塗布液B、および塗布液Cとし、以下の実施例および比較例で用いた。
Figure 0004868308
(実施例1)
射出成形機に金型をセットし、100℃に保持した金型表面に、塗布液Aをスプレーコートし、湿潤状態の薄膜を形成した。この薄膜を10秒間乾燥した後、250℃で溶融させたポリカーボネート樹脂を金型に注入して、10秒間保持してから金型を開き、プレート形状の被覆樹脂成形体を得た。得られた成形体表面への機能性薄膜転写率、成形体の表面抵抗率、全光線透過率およびヘイズ値、ならびに薄膜の密着性について評価を行なった。
使用した塗布液の種類、成形樹脂、および薄膜乾燥時間を表2に、そして、上記試験の結果を表3に示す。なお、本実施例では、上記10秒間の薄膜乾燥時間の後、該薄膜には分散媒が残留している状態であった。
以下の各実施例および比較例の塗布液の種類、成形樹脂、および薄膜乾燥時間についても併せて表2に、そして、各々の試験の結果についても併せて表3に示す。
(比較例1)
薄膜の乾燥時間を180秒としたこと以外は実施例1と同様に操作した。この場合、乾燥後の薄膜は、完全に乾燥し、分散媒が実質的に存在しない状態であった。
(実施例2)
成形樹脂をゼオノアとしたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例2)
成形樹脂をゼオノアとし、薄膜の乾燥時間を180秒としたこと以外は実施例1と同様である。
(実施例3)
塗布液として塗布液Bを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
(比較例3)
塗布液として塗布液Bを用い、薄膜の乾燥時間を180秒としたこと以外は実施例1と同様である。
(実施例4)
塗布液として塗布液Cを用い、薄膜の乾燥時間を180秒としたこと以外は実施例1と同様である。
(実施例5)
塗布液として塗布液Cを用いたこと以外は、実施例1と同様である。
Figure 0004868308
Figure 0004868308
表2および3を参照して、実施例1および比較例1を比較すると、金型上の薄膜に分散媒が残留している状態で成形を行った実施例1の場合は、薄膜が転写率95%という高い割合で成形体上に転写された。これに対して、薄膜を完全に乾燥させた比較例1の場合は、転写率が40%と低い値であった。これは、実施例1においては、薄膜が完全には乾燥していない状態では薄膜が金型には充分に密着しておらず、そのため、容易に樹脂表面に転写されるためであると考えられる。これに対して、薄膜を完全に乾燥させた比較例1の場合には、薄膜が金型に強固に密着するため、樹脂表面への転写が行われにくくなるためであると考えられる。
実施例1で得られた被覆成形体の表面抵抗率は1.2E+06Ω/□であり、十分な帯電防止性能を有している。この被覆成形体の全光線透過率は80%以上、ヘイズ値は19.0%であり、充分な透明性が維持されている。これは、薄膜が薄い為、樹脂の透明性が維持できるためであると考えられる。更に、樹脂に転写された薄膜の密着性は10点であり、充分な値であった。
実施例2および比較例2で用いたゼオノア樹脂はシクロオレフィン系樹脂であり、これは比較的他の樹脂との接着性に劣ることが知られている。実施例2においては、ゼオノア樹脂の成形体への密着性は低いが、充分に高い転写率(70%)で成形体表面に転写されたことがわかる。これに対して、比較例2では、転写率が0%であった。
実施例3および比較例3は、各々実施例1および比較例1の塗布液のバインダー成分を22質量%から13質量%に減少させた例である。転写率、表面抵抗率、全光線透過率、ヘイズ値および密着性の評価は、ほぼ実施例1および比較例1と同様であり、ヘイズ値はやや低い値であった。
実施例4においては、薄膜の乾燥時間が比較例1と同様に比較的長時間であるが、塗布液中に沸点が197.2℃のエチレングリコールが13質量%含有されているので、分散媒(エチレングリコール)が薄膜中に残留する。その結果、100%という高い転写率で薄膜が成形体表面に転写された。これは、比較例1の40%に比較して極めて高い値である。
実施例5においては、実施例4と同様の条件で乾燥時間だけが短くなっているが、転写率、表面抵抗率、全光線透過率、ヘイズ値および密着性とも、実施例4とほぼ同様の結果であった。
以上のように、金型上の薄膜に分散媒が残留している状態で成形を行う方法により、高い転写率で薄膜が樹脂表面に転写されることがわかる。
本発明によれば、導電性、絶縁性、撥水性など所望の性質の機能性薄膜を有する成形体を調製するための組成物、それを用いた機能性薄膜被覆樹脂成形体の製造方法、および該方法により得られる機能性薄膜被覆樹脂成形体が提供される。上記方法によれば、成形と同時に機能性薄膜が金型から成形体表面に転写されるので、簡便に機能性薄膜被覆樹脂成形体が得られる。

Claims (7)

  1. 機能性材料、および固形分100質量部に対して3〜5000質量部の溶媒または分散媒を含有する、転写用機能性薄膜。
  2. 前記機能性材料が導電性ポリマーである、請求項1に記載の薄膜
  3. 前記導電性ポリマーが、以下の式(1)
    Figure 0004868308
    (式中、RおよびRは相互に独立して水素またはC1−4のアルキル基を表すか、あるいは一緒になって任意に置換されてもよいC1−4のアルキレン基を表す)の反復構造を有するポリ(3,4−ジアルコキシチオフェン)とポリ陰イオンとの複合体である、請求項2に記載の薄膜
  4. 前記溶媒または分散媒に、沸点が110℃以上の溶媒または分散媒が含有される、請求項1から3のいずれかに記載の薄膜
  5. 請求項1から4のいずれかに記載の転写用機能性薄膜が表面に形成された金型に樹脂を導入して成形を行うことにより、機能性薄膜をその表面の少なくとも一部に有する樹脂成形体を得る工程、
    を包含する、機能性薄膜被覆樹脂成形体の製造方法。
  6. 前記成形が射出成形である、請求項5に記載の製造方法。
  7. 請求項5または6の製造方法により得られる機能性薄膜被覆樹脂成形体。
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