JP3573015B2 - 成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂などの成形品の成形と塗装を同時に行うために金型内のキャビティに予め塗料を塗布(モールドコート)する成形品の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種の成形品として、例えば、車両用のステアリングホイールがある。ステアリングホイールは、芯金を金型キャビティ(成形品形状を作る空洞部)にセットした後に、金型キャビティに樹脂材料を注入し硬化させて成形されている。ステアリングホイールの樹脂成形に使用されているウレタン樹脂は、耐光性に劣り黄変する欠点があるため、その樹脂部分の表面に耐光性をもたせるための塗膜を形成する必要がある。
【0003】
この塗膜の形成方法として、金型キャビティに予め塗料を塗り、その後、製品の成形を行う方法が適用されている。具体的には、金型を開いてキャビティに塗料溶液をスプレーガンで塗布(モールドコート)する。そして、キャビティにステアリングホイールの芯金をセットした後、金型を閉じてキャビティにウレタンの材料を混合注入して反応硬化させる。これによりステアリングホイールの樹脂部分の表面に耐光性のある塗膜が形成される。なお、金型キャビティに所定の材料を混合注入して反応硬化させる成形方法を反応射出成形(RIM:Reaction Injection Molding)という。また、ここで用いられる塗料は、例えば、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)及びイソプロピルアルコール(IPA)と、耐光性に優れたウレタン樹脂とからなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上述のようにスプレーガンにより塗料をキャビティに塗布(モールドコート)した場合では、塗料が金型のキャビティ以外の部分に塗布されたり、金型に塗着せずに空気中に飛散し塗着効率が悪化してしまう。このため、本願発明者は、金型キャビティ内に塗料を注入した後に、そのキャビティを減圧させることで、塗料をキャビティ内に塗布(モールドコート)する方法を提案している。
【0005】
具体的には、金型外部とキャビティとを連通する排出孔からキャビティ内が減圧されることで、塗料溶液の溶剤が沸騰し、その沸騰時の体積増加及び破泡により塗料がキャビティ壁面に塗布(モールドコート)される。そして、塗料が乾いた後に、ウレタンの材料がキャビティ内に注入されて、同材料がキャビティ内で反応硬化することでウレタン樹脂の成形と塗装が同時に実施される。
【0006】
ところが、成形品の形状によっては塗料の塗布を十分に行えない場合がある。つまり、金型キャビティ内が均一に減圧されずに、排出孔から遠くなるほど、塗料溶液の沸騰が弱くなり、キャビティ上部への塗布状態が悪化してしまう。例えば、ステアリングホイールの樹脂成形において、リング部よりも容量が大きくなるスポーク部では、塗料が塗布され難くその部分の塗布状態が悪化してしまう。また、塗料の乾燥も悪化してしまう。
【0007】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は、塗料の塗布を短時間で的確に行うことができる成形品の製造方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、金型キャビティに溶剤とウレタン樹脂とを含む塗料溶液を流し込み、減圧状態とした金型キャビティ内で塗料溶液を沸騰させ、沸騰時の体積増加及び破泡により塗料を金型キャビティの壁面に塗布すると共に気化した溶剤を排気して塗膜層を金型キャビティに形成した後、所定材料を金型キャビティに注入し硬化させて形成する成形品の製造方法において、前記金型キャビティ内を均一に減圧するべく複数個の排出孔から金型キャビティ内を減圧するようにしたことをその要旨としている。
【0009】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、前記金型キャビティの容積が大きくなる部位の前記排出孔ほどその面積が大きくなるよう形成し、その複数の排出孔から金型キャビティ内を減圧するようにしたことをその要旨としている。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1又は2に記載の発明において、前記金型キャビティの上側に形成した前記複数の排出孔から金型キャビティ内を減圧するようにしたことをその要旨としている。
【0011】
請求項4に記載の発明では、インサート部材を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の発明において、予熱した前記インサート部材を金型キャビティにセットした後に、金型キャビティを減圧することをその要旨としている。
【0012】
請求項5に記載の発明では、請求項1〜4のいずれか一項に記載の発明において、前記成形品はステアリングホイールであり、前記金型キャビティにおけるステアリングホイールの複数のスポーク部に対応する位置に形成した前記排出孔から金型キャビティ内を減圧するようにしたことをその要旨としている。
【0013】
(作用)
請求項1に記載の発明によれば、複数個の排出孔から金型キャビティ内が均一に減圧される。この場合、金型キャビティ内の減圧が急速に行われるため、キャビティ全体で塗料溶液中の溶剤が激しく沸騰し、この沸騰時の体積増加及び破泡により塗料が金型キャビティの壁面に塗布(モールドコート)される。また、溶剤の気化ガスの抜けが向上されて塗料の乾燥時間が短縮される。つまり、塗料の塗布(モールドコート)が短時間で的確に行えるようになる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、キャビティの容積が大きくなる部位の排出孔ほどその面積が大きくなるよう形成される。従って、キャビティにおける減圧状態が均一となり、塗料が金型キャビティに的確に塗布(モールドコート)される。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、減圧するための排出孔が金型キャビティの上側に形成される。その結果、金型キャビティの上側にも確実に塗料が塗布(モールドコート)される。
【0016】
請求項4に記載の発明によれば、金型キャビティの減圧に伴い芯金が所定温度以下に低下することが防止され、芯金に付着する塗料の乾燥が促進される。
請求項5に記載の発明によれば、金型キャビティにおけるステアリングホイールの複数のスポーク部に対応する位置に排出孔が形成される。つまり、リング部よりもキャビティ容量が大きいため、塗料が塗布されにくいが、スポーク部に対応する位置からキャビティ内が減圧されることで、沸騰時の体積増加及び破泡による塗料の塗布が確実に実施される。つまり、スポーク部のキャビティ部分に確実に塗料が塗布される。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体化した実施の形態を図面に従って説明する。
図1〜4は、本実施形態における射出成形機の一部断面図であり、図5は同射出成形機により成形される車両用のステアリングホイール1の斜視図である。
【0018】
図5に示すようにステアリングホイール1は、リング部2、スポーク部3,4,5及びボス部6を有しており、図1〜4に示す射出成形機の金型7(下型8,上型9)は、リング部2及びスポーク部3,4,5の芯金10をウレタン樹脂で被覆するためのものである。なお、図1,2,4は、ステアリングホイール1のスポーク部4における中心線上での断面図を示し、図3は、ステアリングホイール1のスポーク部3,5における中心線上での断面図を示している。また、本実施形態では、図5に示すステアリングホイール1を裏返した状態で樹脂成形が行われる。
【0019】
図1〜図4に示すように、金型7は枠体11と蓋体12とからなるボックス13内に配設されている。詳しくは、枠体11には金型7の下型8が固定され、蓋体12には金型7の上型9が固定されている。また、蓋体12における枠体11との接合部にはシール部材14が配設されている。そして、図1に示すように金型7が開けられている状態から枠体11及び下型8が上方へ移動されて図2に示すように芯金10がセットされた状態で金型7が閉じられ型締めされる。なおこのとき、枠体11と蓋体12とによりボックス13が形成され、シール部材14によりボックス13内が密封される。また、本実施形態の芯金10は、アルミダイカスト、マグネシウムダイカスト、またはそれらからなる合金のダイカスト成形により製造され、芯金10のリング部10aの断面形状は、図2に示すようにU字形状となっている。
【0020】
下型8及び上型9には凹部15,16が形成されており、同凹部15,16が成形品形状を作るためのキャビティ17となる。また、成形時にステアリングホイール1の芯金10を固定するために、下型8の中央部に固定部材18が突設されるとともに、上型9の中央部に固定部材19が突設されている。さらに、上型9の凹部16には、図2に示す排出孔20a,20bと、図3に示す排出孔20c,20dが形成され、同排出孔20a,20b,20c,20dによりキャビティ17がボックス13内の中空部21に連通される。
【0021】
詳しくは、上型9の凹部16において図5に示すステアリングホイール1のリング部2に対応する位置に排出孔20aが形成され、スポーク部4の両端部4a,4bに対応する位置に2つの排出孔20bが形成されている。また、スポーク部3の両端部3a,3bに対応する位置に2つの排出孔20cが形成され、スポーク部5の両端部5a,5bに対応する位置に2つの排出孔20dが形成されている。なお、排出孔20aの断面積は4mm2であり、排出孔20bの断面積は10mm2である。また、排出孔20c,20dの断面積は5mm2である。これら排出孔20a,20b,20c,20dは、図2及び図3に示すように、金型7内のキャビティ17において最も高くなる位置に形成されている。この場合、塗布状態を向上させる上で望ましいが、成形後の外観を考慮してパーティングライン(Parting Line)に形成するようにしてもよい。また、各スポーク部3,4,5に対してそれぞれ2つの排出孔20b,20c,20dを形成するようにしたが、各スポーク部3,4,5に対してそれぞれ1つの排出孔を形成してもよい。
【0022】
枠体11の一方の側壁(図1の右側の側壁)側に射出ノズル22が配設されており、図示しない射出装置本体からのウレタン材料が射出ノズル22からゲート23を介して金型7のキャビティ17に注入される。このウレタン材料は、液状であってポリオール成分、イソシアネート成分及び発泡成分を含む。また、枠体11の他方の側壁(図1の左側の側壁)には排出管31が設けられ、その排出管31は、配管32及びバルブ33を介して真空ポンプ34に接続されている。つまり、真空ポンプ34が駆動されると、ボックス13内の空気が排出管31から排出され、ボックス13内が減圧される。
【0023】
次に、本実施形態におけるステアリングホイール1のウレタン樹脂の成形方法を図1〜図4を用いて説明する。
先ず、図1に示すように、金型7を開いてキャビティ17(下型8の凹部15及び上型9の凹部16)の壁面に離型剤を塗布する。この離型剤は、ワックス、シリコンオイル等からなり、金型7に成形品が粘着することを防いで、成形品を取り出し易くする目的で塗布されるものである。
【0024】
次いで、金型7を水平に保ちつつ液状の塗料M(本実施形態では、170g)を下型8の凹部15に注ぎ込む。本実施の形態における塗料Mの溶液は、溶剤としてのメチルエチルケトン(MEK)及びイソプロピルアルコール(IPA)と、固形分としてのウレタン樹脂を含む。なお、塗料Mにおける各成分の割合を重量%で示すと、MEK=約85%、IPA=約10%、ウレタン樹脂=2.5%となる。
【0025】
そして、赤外線ヒータ等を用いて60℃に予熱されたインサート部材としての芯金10を図2及び図3に示すように金型7内にセットして金型7を閉じ型締めする。なおこのとき、枠体11と蓋体12とがシール部材14を介して接合されボックス13内は密閉状態となる。
【0026】
その後、真空ポンプ34を駆動し排出管31からボックス13内の空気を排出することでボックス13内を減圧する。このとき、キャビティ17内の空気が排出孔20a,20b,20c,20dを介してボックス13内の中空部21に吸い出されてキャビティ17内が減圧される。本実施形態では、複数の排出孔20a,20b,20c,20dによりキャビティ17内が減圧されるので、減圧が急速に行われ、さらにキャビティ17内での減圧状態が均一になる。そして、キャビティ17内が減圧されると、塗料Mの溶剤(MEK,IPA)の沸点が低下する。これにより、塗料Mは体積増加を伴いつつ沸騰して破泡する。正確には、塗料Mは排出孔20a,20b,20c,20d側に流動しながら沸騰する。なお、金型7の温度が55℃に保たれており、キャビティ17内が300torr以下に減圧されると溶剤は沸騰する。この沸騰時の体積増加及び破泡により、塗料Mがキャビティ17の壁面に塗布される。その結果、リング部2ばかりでなく容積の大きなスポーク部3,4,5に対応する部分にも確実に塗料Mが塗布される。
【0027】
そして、塗料Mの溶剤が気化して、塗料Mのウレタン樹脂成分がキャビティ17の壁面に塗着される。つまり、塗膜層がキャビティ17の壁面に形成(モールドコート)される。またこのとき、キャビティ17内における芯金10の表面が塗料Mの溶剤により洗浄されるとともに、接着剤の役割を果たす塗料Mが芯金10の表面にも塗着される。なお、気化した溶剤は排出孔20a,20b,20c,20dからボックス13内の中空部21及び排出管31等を介して真空ポンプ34から排気される。
【0028】
次いで、図示しない射出装置本体で混合されたウレタンの材料が射出ノズル22からゲート23を介してキャビティ17に注入されて、図4に示すように同材料がキャビティ17内で反応硬化する。具体的には、発泡成分とイソシアネート成分とが反応してCO2が発生するとともに、ポリオール成分とイソシアネート成分が反応することでウレタン樹脂の発泡成形が実施される。
【0029】
このようにして、ステアリングホイール1のリング部2及びスポーク部3,4,5のウレタン樹脂の成形と塗装が同時に実施される。つまり、反応成形により成形されるウレタン樹脂U2の表面に耐光性のあるウレタン樹脂U1の塗膜がほぼ均一な厚さ(例えば、10μm)で形成される。また、液状のウレタン材料を用いた発泡成形は、一般的な熱可塑性樹脂の射出成形と比較して、キャビティ17内が低温、低圧の条件下で樹脂成形が実施される。従って、キャビティ17の壁面に形成された塗膜層が成形時の圧力や温度によって壊されることが防止される。
【0030】
その後、金型7が開けられて、図5に示すようにリング部2及びスポーク部3,4,5がウレタン樹脂で被覆されたステアリングホイール1が取り出されて成形工程が終了する。なお、本実施形態では、ステアリングホイール1を裏返した状態で樹脂成形が行われるので、ステアリングホイール1において耐光性が必要となる上側ほど厚いウレタン樹脂U1の塗膜が形成される。
【0031】
次に、各条件を変更して上記方法によりステアリングホイール1の成形を行った結果を図6及び図7に示す。なお、変更条件としては、スポーク部における排出孔面積及びキャビティ17に注入する塗料溶液の量(使用量)である。ここで、排出孔面積とは、スポーク部3,4,5の排出孔20b,20c,20dの総断面積をいう。また、スポーク部4に形成される樹脂部分はスポーク部3,5に対してその容量が大きいので、排出孔20bを排出孔20c,20dに対して2倍の断面積となるよう形成している。例えば、排出孔面積が20mm2では、排出孔20bの断面積を5mm2とし、排出孔20c,20dの断面積を2.5mm2としている(前述したように各スポーク部3,4,5に対応する位置には2つの排出孔20b,20c,20dがそれぞれ形成されているので総面積=2×5+2×2×2.5=20mm2となる)。
【0032】
また、図6及び図7では、塗料溶液の使用量を、150gとした場合を「■」、160gとした場合を「▲」、170gとした場合を「●」で示している。
図6に示すように、乾燥時間は、塗料溶液の使用量が増えるほど長くなるが、排出孔面積を大きくするほど乾燥時間が短くなる。また、図7に示すように、各使用量において、排出孔面積を大きくするほど塗布状態が良く、特に、使用量=170g、排出孔面積を40mm2としたときに塗布状態が最も良い。従って、本実施形態では、排出孔面積=40mm2(排出孔20bの断面積=10mm2、排出孔20c,20dの断面積=5mm2)、使用量=170gでステアリングホイール1を成形している。
【0033】
因みに、スポーク部3,4,5の排出孔20b,20c,20dを設けずにリング部2の排出孔20aのみで減圧を行った場合では、塗料溶液の乾燥時間は180秒以上となり、塗布状態も悪化してしまう。つまり、減圧時における塗料溶液の沸騰が弱く、塗料Mをキャビティ上部に十分に塗布することができない。このため、キャビティ上部及び下部に形成される塗膜層の膜厚差が大きくなってしまう。
【0034】
また、排出孔20b,20c,20dを大きくするほど、塗料溶液の乾燥性及び塗布性は向上するが、ウレタン樹脂成形時における成形性が悪化してしまう。つまり、ウレタン樹脂成形時において、ウレタン材料が排出孔20b,20c,20dに到達するとき、その際にウレタン材料が反応硬化して排出孔20b,20c,20dを自己シールするようになっているが、排出孔20b,20c,20dが大きすぎると、ウレタン材料の反応硬化による自己シールができなくなり、ウレタン材料が排出孔20b,20c,20dから吹き出してしまう。従って、排出孔20b,20c,20dは、キャビティ形状等に応じて上述のように適度な大きさで設定している。
【0035】
なお、従来技術のようにスプレーガンにて塗料Mを塗布(モールドコート)した場合、キャビティ17内への塗着効率は約20%であった。これに対し本実施の形態のように、閉じられたキャビティ17内で塗料Mを塗布した場合では、キャビティ17内への塗着効率を約50%〜70%へ高めることが可能となる。
【0036】
また、他の製品に本実施形態の成形方法を適用する場合では、キャビティやインサート部材の形状等を考慮して、最適な条件となるように使用量、排出孔面積を適宜検討する必要がある。
【0037】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)複数の排出孔20a,20b,20c,20dからキャビティ17内の空気が吸い出されて減圧状態とされる。この場合、キャビティ17内を均一に減圧できる。さらに、キャビティ17内の減圧を急速に行うことができる。従って、塗料Mの溶剤の沸騰が激しくなり、この沸騰時の体積増加及び破泡によって、キャビティ17の上部にも確実に塗布できる。また、塗料溶液の気化ガスの排気が促進されて塗料Mの乾燥時間を短縮することができる。つまり、塗料Mの塗布を短時間で的確に行うことができる。
【0038】
(2)排出孔20a,20b,20c,20dは、キャビティ17の最も高くなる位置に形成されている。従って、キャビティ17の上側に塗料Mをより確実に塗布できる。また、排出孔20bは、スポーク部4の端部4a,4bに対応する位置に形成され、排出孔20c,20dは、スポーク部3,5の端部3a,3b,5a,5bに対応する位置に形成される。このようにすれば、キャビティ17におけるスポーク部3,4,5の端部3a,3b,4a,4b,5a,5bに対応する部位、つまり塗布し難い部分にも確実に塗料Mを塗布できる。
【0039】
(3)スポーク部における排出孔面積を40mm2、塗料溶液の使用量を170gとした。この場合、乾燥時間が短く、良好な塗布状態を実現できる。
(4)60℃に予熱した芯金10を金型7内にセットした。この場合、キャビティ17の減圧時において、芯金10が所定温度以下に低下することが防止され、芯金10に付着した塗料Mの乾燥を促進できる。具体的には、芯金10を加熱しない場合と比べ、乾燥時間を約10秒短縮できる。特に、本実施形態のように芯金10のリング部10aの断面形状がU字形状の場合では、沸騰時の体積増加及び破泡によりリング部10aの内側の底に塗料Mが貯まってしまうが、この塗料Mが芯金10の熱により再び沸騰する。従って、より的確に塗料Mの塗布を行うことができる。
【0040】
(5)閉じた金型7内において、塗料Mの塗布(モールドコート)が実施されるので、スプレーガンで塗料Mを塗布(モールドコート)した場合に比べて塗着効率を高めることができ、塗料Mの材料費を低減できる。また、塗料Mはキャビティ17外に塗布されることがなく、成形時におけるバリの発生を防止できる。従って、バリを除去するための処理工程が不要となる。その結果、製造コストを低く抑えることができる。さらに、塗料Mが外部に飛散することが防止され、作業場をきれいに保つことができ、周囲の環境の悪化を防止することができる。
【0041】
(6)耐光性に優れるウレタン樹脂塗装U1の塗膜がステアリングホイール1の樹脂部分の表面に形成されるので、ステアリングホイール1の樹脂部分の内部に反応射出成形により成形したウレタン樹脂U2の変色を防止できる。また、芯金10の表面が塗料Mの溶剤により洗浄され、その芯金10の表面には接着性に優れるウレタン樹脂系の塗料Mが塗布されるため芯金10とウレタン樹脂U1が強固に固着できる。
【0042】
(7)塗料Mが的確に塗布されるので、塗布むらが無くなり成形後において製品表面の塗膜が均一の厚さで形成される。従って、製品性能(耐光性)の悪化を防止できる。また、製品表面の色むらがなく外観不良を低減できる。さらに、塗料溶液をキャビティ17に流し込む際に、塗料溶液の注入量を調整するだけで、所望の厚さの塗膜を形成することができる。
【0043】
(8)ウレタン材料を用いた反応射出成形では、熱可塑性樹脂の射出成形と比べて、キャビティ17内が低温、低圧の条件下で樹脂成形が行われるので、キャビティ17の壁面に塗布された塗膜層が壊れることを防止できる。つまり、製品の歩留まりを向上できる。
【0044】
尚、上記実施形態は、以下の態様で実施してもよい。
○上記実施形態では、金型7を開けた状態で塗料溶液を注入するものであったが、塗料注入装置を別に設けて、金型7を型締めした状態で塗料注入装置からキャビティ17に塗料を注入するように構成してもよい。このようにすれば、減圧中のキャビティ17内に塗料溶液を注入でき、短時間で樹脂成形を実施できるようになる。
【0045】
○上記実施形態では、リング部10aの断面形状がU字形状の芯金10を用いてステアリングホイール1が成形されていたが、リング部の断面形状が丸パイプ状の芯金を用いて成形されるステアリングホイールに適用してもよい。この場合も、芯金を予熱した後に金型キャビティ内にセットすれば、芯金に付着する塗料Mの乾燥を促進することができる。
【0046】
○ステアリングホイール1の樹脂部分の内部をウレタン材料を発泡させて成形するものであったが、これに限定するものではない。要は、射出成形による成形品であればよく、他の樹脂材料、或いはゴム材料等を用いて成形するものでもよい。但し、上述のようなウレタン樹脂を用いた発泡成形等の反応射出成形に適用した方が、低圧、低温の条件下で成形できるので実用上好ましい。
【0047】
また、成形品はステアリングホイール1に限定されるものではない。例えば、インストルメントパネル、コンソールボックス、グローボックス、ヘッドレスト、アームレスト、ドアカバー、エアスポイラー、バンパー等の部品にも適用できる。勿論、自動車部品以外に家電製品等の樹脂製品に適用してもよい。
【0048】
○塗料Mの成分を適宜変更して実施してもよい。具体的には、ウレタン樹脂に代えて、他の熱硬化性樹脂を用いてもよい。また、塗料Mの溶剤として、メチルエチルケトン(MEK)及びイソプロピルアルコール(IPA)以外の溶剤を用いてもよい。或いは、MEK,IPAの溶剤にトルエン等を加えるものでもよい。実用的には、沸点が約160℃以下の溶剤を用いるものであればよい。
【0049】
○上記実施形態では、真空ポンプ34を駆動してキャビティ17内を300torr以下に減圧するものであったが、これに限定するものではない。例えば、金型7の温度が常温(約20℃)であれば、キャビティ17内を約70torrに減圧する。また、塗料Mの溶剤を変更した場合その沸点が変化するので、この場合もキャビティ17内の減圧時の圧力を変更する。つまり、キャビティ17内の減圧時の圧力は、金型7の温度及び用いられる溶剤の種類により適宜変更して実施する。
【0050】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、金型キャビティへの塗料の塗布を短時間で的確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施形態のステアリングホイールの形成方法を説明するための図。
【図2】実施形態のステアリングホイールの形成方法を説明するための図。
【図3】実施形態のステアリングホイールの形成方法を説明するための図。
【図4】実施形態のステアリングホイールの形成方法を説明するための図。
【図5】実施形態のステアリングホイールの斜視図。
【図6】使用量と乾燥時間との関係を示す図。
【図7】使用量と塗布状態との関係を示す図。
【符号の説明】
1…成形品としてのステアリングホイール、3,4,5…スポーク部、7…金型、10…インサート部材としての芯金、17…キャビティ、20a,20b,20c,20d…排出孔、M…塗料。
Claims (5)
- 金型キャビティに溶剤とウレタン樹脂とを含む塗料溶液を流し込み、減圧状態とした金型キャビティ内で塗料溶液を沸騰させ、沸騰時の体積増加及び破泡により塗料を金型キャビティの壁面に塗布すると共に気化した溶剤を排気して塗膜層を金型キャビティに形成した後、所定材料を金型キャビティに注入し硬化させて形成する成形品の製造方法において、
前記金型キャビティ内を均一に減圧するべく複数個の排出孔から金型キャビティ内を減圧するようにしたことを特徴とする成形品の製造方法。 - 請求項1に記載の成形品の製造方法において、
前記金型キャビティの容積が大きくなる部位の前記排出孔ほどその面積が大きくなるよう形成し、その複数の排出孔から金型キャビティ内を減圧するようにしたことを特徴とする成形品の製造方法。 - 請求項1又は2に記載の成形品の製造方法において、
前記金型キャビティの上側に形成した前記複数の排出孔から金型キャビティ内を減圧するようにしたことを特徴とする成形品の製造方法。 - インサート部材を有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の成形品の製造方法において、
予熱した前記インサート部材を金型キャビティにセットした後に、金型キャビティを減圧することを特徴とする成形品の製造方法。 - 請求項1〜4のいずれか一項に記載の成形品の製造方法において、
前記成形品はステアリングホイールであり、前記金型キャビティにおけるステアリングホイールの複数のスポーク部に対応する位置に形成した前記排出孔から金型キャビティ内を減圧するようにしたことを特徴とする成形品の製造方法。
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