WO2009123150A1 - 薬液吐出部密封キャップ - Google Patents

Abstract

　液漏れの原因となる減圧を作り出す空間を最小限にするとともに、外す際に、ねじりやすく、変形しやすく、減圧を開放するための空気が入りやすいものとすることにより外しやすく、且つ、ルアーノズルからの薬液漏れを防止することのできるシリンジの薬液吐出部密封キャップを提供する。 　弾性素材よりなるキャップであって、肉厚天面部と、その外周より下方に形成された外筒部、その内側に形成された内筒部とから構成されるキャップに次の手段を採用する。 　第１に、内筒部は、その中にルアーノズルの先端部が密に挿入可能で、その接触部にて、ルアーノズルを密封可能に形成される。 　第２に、外筒部は、その内側にルアーロック部が密に接し、その接触部にてルアーロック部を密封可能に形成される。 　第３に、内筒部とルアーノズルとの接触部の長さより、外筒部とルアーロック部の接触部の長さが、短いものとする。

Description

薬液吐出部密封キャップ

　本発明は、薬液吐出部密封キャップの改良に関するものであって、詳しくは、注射器兼容器（以下シリンジという）のルアーノズルの外周に間隙を設けて、筒形ルアーロック部が立設されている薬液吐出部を密封する弾性素材よりなるキャップの改良に関するものである。

　従来よりシリンジの加熱滅菌処理時に水蒸気や水が薬液吐出部に進入することを防止するために、薬液吐出部にオーバーキャップと称されるキャップが装着されることが、特許文献１でも示されるように知られている。

　この種のキャップ（特許文献１ではノズルキャップと称する）は、外形をなす天面部と、その外周より下方に形成されるルアーロック部を密封する外筒部と、その内側の天面部下方に形成されルアーノズルを密封する内筒部とから構成されている。そして、ルアーロック部を密封する外筒部は、特許文献１に示されるようにルアーノズル部を密封する内筒部と比較して長いものであるのが通常であった。

　このルアーロック部を密封する外筒部が長く、内側に存在する空部が大きいと、キャップを外す際に、内側の空部に減圧が生じ、減圧によりシリンジ内の薬液が漏れてしまうことがあった。更に、該外筒部が長く、ルアーロック部との密着部分が大きいと、簡単にキャップを外すことができず不便であるばかりか、密着部分が時間の経過により密着力が増加してしまうと、更に外し難くなることがあった。
特開２００２－２１０００８号公開特許公報

　本発明は、内筒部とルアーノズルとの接触部の長さより、外筒部とルアーロック部との接触部の長さを短く形成することにより、液漏れの原因となる減圧を作り出す空間を最小限にするとともに、外す際に、ねじりやすく、変形しやすく、減圧を開放するための空気が入りやすいものとすることにより外しやすく、且つ、ルアーノズルからの薬液漏れを防止することのできる薬液吐出部密封キャップを提供することを目的とする。

　上記課題を解決するため、第１の発明は、ルアーノズルの外周に間隙を設けて、筒形ルアーロック部が立設されているシリンジの薬液吐出部を密封する弾性素材よりなるキャップであって、外形をなす肉厚天面部と、その外周より下方に形成された外筒部と、その内側の天面部下方に形成された内筒部とから構成される薬液吐出部密封キャップに次の手段を採用する。

　第１に、上記内筒部は、その中にルアーノズルの先端部が密に挿入可能で、該内筒部とルアーノズルとの接触部にて、ルアーノズルを密封可能となるように形成される。

　第２に、上記外筒部は、その内側にルアーロック部が密に接し、該外筒部とルアーロック部との接触部にてルアーロック部を密封可能となるように形成される。

　第３に、上記内筒部とルアーノズルとの接触部の長さより、外筒部とルアーロック部との接触部の長さが、短いこととする。

　第２の発明は、第１の発明における前記外筒部が、その内側下端部に外方向に開く傾斜面を形成したことを付加した薬液吐出部密封キャップであり、第３の発明は、第１の発明または第２の発明における前記外筒部が、前記内筒部の厚みより薄く形成したことを付加した薬液吐出部密封キャップである。

　本発明は、内筒部とルアーノズルとの接触部の長さより、外筒部とルアーロック部との接触部の長さが、短いため、薬液吐出部密封キャップの脱着時に、内筒部とルアーノズルとの密接が開放する前に、外筒部とルアーロック部との密接が開放される。このことによりルアーノズルが密封された状態の間に、ルアーロック部内部の減圧を開放できるため、ルアーロック部の減圧によるルアーノズルからの液漏れを防止することができるものとなった。同時に、本発明は、薬液吐出部密封キャップを外す際に、ねじりやすく、変形しやすいものとなった。

　第２の発明及び第３の発明の効果であるが、外筒部を、その内側下端部に外方向に開く傾斜面を形成したものとすること、及び内筒部の厚みより薄く形成することにより、薬液吐出部密封キャップを外す際に、より一層、ねじりやすく、変形しやすく、減圧を開放するための空気が入りやすいものとなった。

実施例に係る密封キャップとシリンジを示す断面説明図 実施例での密封キャップの平面図 同正面図 密封キャップを薬液吐出部に装着した状態を示す断面説明図

符号の説明

　　１・・・・・・密封キャップ
　　２・・・・・・シリンジ
　　３・・・・・・ルアーノズル
　　４・・・・・・ルアーロック部
　　５・・・・・・薬液吐出部
　　６・・・・・・凸状螺旋突条
　　７・・・・・・天面部
　　８・・・・・・外筒部
　　９・・・・・・内筒部
　　１０・・・・・・指
　　１１・・・・・・ノズル挿入間隙
　　１２・・・・・・ルアーロック部挿入間隙
　　１３・・・・・・密接部
　　１４・・・・・・傾斜面

　以下、図面に従って、実施例と共に本発明の実施の形態について説明する。図１は、本発明に係る実施例における密封キャップ１とシリンジ２の関係を示す断面説明図である。本発明が利用されるシリンジ２は、環状オレフィン樹脂（ゼオネックス「日本ゼオン社商品名」、アペル「三井石油化学社商品名」等）などの樹脂製シリンジであり、図１に示されるように先端部（図１中上方）に、ルアーノズル３とルアーロック部４を有する薬液吐出部５が形成されている。

　薬液吐出部５のルアーノズル３とルアーロック部４は同心円に形成されており、ルアーロック部４はルアーノズル３より低い円筒形状をしている。勿論、本発明は、ルアーノズル３とルアーロック部４の関係は、同じ高さであっても、更には、逆にルアーノズル３よりルアーロック部４が高いものであっても利用可能である。

　ルアーロック部４は、ルアーノズル３の外周に間隙を設けて立設されている。通常ルアーノズル３とルアーロック部４の間隙には注射針又はエクステンションチューブ等の円筒状接続部がねじ込み嵌合される。そのため実施例でのルアーロック部４の内周面には凸状螺旋突条６が形成されている。

　密封キャップ１は、ゴムなどの弾性素材よりなるキャップであって、実施例ではブチルゴムが用いられている。従って、薄くすることで柔らかく変形しやすくすることができ、厚くすることで硬く押しやすくすることもできる。

　密封キャップ１は、外形をなす肉厚の天面部７と、その外周より下方に形成された外筒部８、その内側の天面部７下方に形成された内筒部９とから構成される。実施例での天面部７の厚みは、密封キャップ１の高さ（図１中上下の長さ）を１０．５ｍｍとした場合、４ｍｍとしている。勿論、この大きさ及び厚みは一例であって図４に示すように指１０で天面部７の側面を押し上げて密封キャップ１をねじって外す際に、適切な硬さと面積を確保できる厚みであればよい。具体的には密封キャップ１の高さ（Ｔ）に対し、天面部７の厚みは２０～５０％程度、好ましくは３０～４０％程度である。

　内筒部９の内側は、図４に示されるようにルアーノズル３の先端部が密に挿入可能であるノズル挿入間隙１１が形成されている。ノズル挿入間隙１１は、図１に示される。ノズル挿入間隙１１の深さは、ルアーノズル３の長さ、密封キャップ１の高さ（Ｔ）および天面部７の厚みに依存するが、例えば密封キャップ１の高さ（Ｔ）を基準にすると、４０～８０％程度、好ましくは５０～７０％程度である。実施例でのノズル挿入間隙１１の深さは、密封キャップ１の高さ（図１中上下の長さ）を１０．５ｍｍとした場合、約６．５ｍｍとしている。実施例では挿入間隙１１が、内筒部９とルアーノズル３との接触部となる。

　内筒部９は、円筒形とされ、それ自体がルアーノズル３とルアーロック部４との間隙に嵌挿可能な厚みと形状に形成されている。

　外筒部８の内側にはルアーロック部挿入間隙１２が形成される。該ルアーロック部挿入間隙１２も図１に示される。外筒部８は、図４に示されるように、その内側にルアーロック部４の外周面が密に接し、且つ、外筒部８とルアーロック部４との接触部が薬液吐出部５、直接的にはルアーロック部４を密封可能な長さを限度に短く形成されている。

　上記内筒部９とルアーノズル３との接触部の長さより、外筒部８とルアーロック部４との接触部の長さは、短い。すなわち、上記内筒部９とルアーノズル３との接触部の長さ（ａ）と外筒部８とルアーロック部４との接触部の長さ（ｂ）の関係は、ａ＞ｂである。ここで、ａは前記のノズル挿入間隙１１の深さに相当する。実施例では、外筒部８は内側下端付近に１ｍｍ程度のルアーロック部４の外周面との接触部としての密接部１３が確保できる長さとされている。この長さは、ルアーロック部４に水蒸気や水が進入しない長さであり、シリンジ２の内面と液密を保つためのガスケットピークとの密接部が１ｍｍ程度であることより、実験され決定されたものである。密接部１３の長さ(c)は、ルアーロック部挿入間隙１２の深さ（ｄ）と同等以下（ｄ≧ｃ）である。ルアーロック部４は、ルアーロック部挿入間隙１２の最深部まで嵌挿される必要はなく、ルアーノズル３の先端部が密に挿入されていればよいので、ルアーロック部４の先端部と該挿入間隙１２の最深部との間にわずかな空間があってもよい。また、後述のとおり、外筒部８の内側下端部に外方向に開く傾斜面１４が形成されている場合、ルアーロック部４の外周面は該傾斜面１４とは接触しない。密接部１３は実施例の１ｍｍ程度に限定されるものではなく、上記の条件、ルアーノズル３およびルアーロック部４の長さ、加熱滅菌処理の条件などを考慮して決定される。通常、密接部１３は１±0.1～0.2ｍｍである。

　密接部１３とルアーロック部４の外周面との密接は、図示の実施例では、面接触とされているが、ルアーロック部４及び密接部１３に設けられた突起が、それと対向する外筒部８の密接部１３またはルアーロック部４の外周面と接触するものであってもよい。

　更に、外筒部８には、その内側下端部に外方向に開く傾斜面１４を形成されている。実施例での傾斜面１４は外方向に向かって２５度の角度（外筒部８の内側鉛直面に対する角度）で開いている。この傾斜面１４の存在が、密封キャップ１にルアーロック部を挿入する際には、案内ガイドの役割を果たし、挿入しやすくするのみならず、図４に示すように指１０により密封キャップ１の天面部７を斜め上方に押し上げた際、外筒部８をルアーロック部４から簡単に外すことができる。このような機能を果たす限り、傾斜面１４の上記角度は２５度には限定されず、５～４５度程度まで変動させることができる。

　外筒部８の側壁は、内筒部９の側壁の厚みより薄く形成したものである。外筒部８は、ルアーロック部４の外周との密封を確保するだけでよく、肉薄とすることにより、図４に示すように指１０により密封キャップ１の天面部７を斜め上方に押し上げた際、外筒部８が変形しやすく、変形によりルアーロック部４から簡単に外れ、且つ、空気が入りやすくすることができる。外筒部８の側壁は、内筒部９の側壁の厚みの２５～７５％、好ましくは４０～６０％程度である。

Claims (3)

1. 　ルアーノズルの外周に間隙を設けて、筒形ルアーロック部が立設されているシリンジの薬液吐出部を密封する弾性素材よりなるキャップであって、
   　外形をなす肉厚天面部と、その外周より下方に形成された外筒部と、その内側の天面部下方に形成された内筒部とから構成される薬液吐出部密封キャップにおいて、
   　上記内筒部は、その中にルアーノズルの先端部が密に挿入可能で、該内筒部とルアーノズルとの接触部にて、ルアーノズルを密封可能となるように形成され、
   　上記外筒部は、その内側にルアーロック部が密に接し、該外筒部とルアーロック部との接触部にてルアーロック部を密封可能となるように形成されると共に、
   　上記内筒部とルアーノズルとの接触部の長さより、外筒部とルアーロック部との接触部の長さが、短いことを特徴とする薬液吐出部密封キャップ。
2. 　前記外筒部が、その内側下端部に外方向に開く傾斜面を形成したものである請求項1記載の薬液吐出部密封キャップ。
3. 　前記外筒部が、前記内筒部の厚みより薄く形成したものである請求項１または２記載の薬液吐出部密封キャップ。

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