JP4372363B2 - 注射器兼容器用密封ゴム栓 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はルアーノズル及びルアーロック部からなる薬液吐出部を有する注射器兼容器〔プレフィルドシリンジ(pre-filled syringe)〕の薬液吐出部に装着する密封ゴム栓に関し、詳しくは、打栓が容易で、打栓時及び打栓後の加熱滅菌処理時の浮き上がりが防止された密封ゴム栓に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、薬液や栄養剤等を予め注射器の注射筒内に充填、密封したプレフィルドシリンジと称される容器兼用注射器が使用されるようになってきた。容器兼用注射器の使用によって、アンプルやバイアル等の容器から薬液等を注射器に吸引する際の誤操作、異物混入汚染や注射針の損傷等が防止でき、更に、緊急時の揺変性(チクソトロピック性)薬液等を注射器へ吸引する手間や時間を省くことが可能となった。
【0003】
本発明のプレフィルドシリンジは、従来の注射器とは図3(a)に示すように形状は同じで、輸液等に薬剤を混合したり、粘性の高い薬剤等を注射する際に、エクステンションチューブ(延長チューブ)や三方コックあるいは注射針がルアーノズル(注射ノズル)に装着されるが、これらが脱着する(抜け落ちる)ことを防止するための図3(b)に示すルアーロック部が設けられている点、即ち、薬液吐出部がルアーノズルとルアーロック部とからなる点で異なっている。
【0004】
図3(b)は薬液吐出部の拡大図であり、ルアーノズル及びルアーロック部の断面図(左半分)と側面図(右半分)を同時に示している。ルアーロック部はルアーノズルと同心円に形成されたルアーノズルよりは高さの低い円筒形状を有し、その内周面には凸状螺旋突条が形成されており、ルアーノズルとルアーロック部の間隙にエクステンションチューブ等の凸状螺旋突条を有する円筒状接続部をねじ込み嵌合させる。
【0005】
薬液等が充填されたプレフィルドシリンジは、上記のルアーノズルとルアーロック部からなる薬液吐出部に、通常ノズルキャップと称されるゴム製の密封栓を被せ、フランジのある他端にはプレフィルドシリンジ使用時にはピストンとなるゴム製の密封栓を装着し、薬液等が密封された容器として加熱滅菌されたものが供給される。密封栓を薬液吐出部に装着する(被せる)操作は、通常打栓と称される。
【0006】
従来から使用されているプレフィルドシリンジの薬液吐出部に装着する密封栓(以下ではノズルキャップと称することがある。)は、その一例の断面図を図4(a)に示すが、ルアーロック部の外周面に被せる外側円筒とその中にルアーノズルが挿入されるとともに、ルアーノズルとルアーロック部との間隙に挿入可能に形成され内側円筒とが天面部下方にそれぞれ一体に形成されたほぼ円筒状の構造を有するゴム栓が用いられている。このノズルキャップが薬液吐出部に装着された状態の概略断面図を図4(b)に示す(但し、ルアーロック部の凸状螺旋突条は省略してある。)。
【0007】
ノズルキャップの打栓の過程を図5に示すが、(a)打栓開始時、(b)は打栓がある程度進んだ状態の模式図である。(a)において、ノズルキャップの内外円筒の間隙及びプレフィルドシリンジの薬液吐出部のルアーロック部とルアーノズルとの間隙には空気が存在する。打栓により(b)におけるように、これらの間隙の空気は逃げ道がなく加圧密封され、ノズルキャップは浮き上がり易い状態となる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
このような浮き上がり易い状態で打栓されたノズルキャップは、プレフィルドシリンジの加熱滅菌処理時に密封加圧空気が加熱により更に加圧されることから、更に浮き上がり易くなって抜け易くなるという問題が生じ、改良が必要である。
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、注射器兼容器(プレフィルドシリンジ)のルアーノズルとルアーロック部からなる薬液吐出部にゴム製の密封栓(ノズルキャップ)を打栓する際、ノズルキャップと薬液吐出部との間隙の空気の排出が可能で、打栓時及び打栓後の注射器兼容器の加熱滅菌処理時のノズルキャップの抜け落ちが防止された注射器兼容器の薬液吐出部に装着するゴム製密封栓の提供にある。
【0009】
本発明者は、上記目的を達成すべく種々検討した結果、従来の上記のノズルキャップのルアーロック部の外面と接触する面に、その長手方向に空気の逃げ道となる溝を形成することで目的が達成されることを見いだし、この知見に基づいて本発明を完成した。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下の本発明によって達成される。即ち、本発明は、ルアーノズル及びルアーロック部からなる薬液吐出部を有する注射器兼容器の薬液吐出部に装着するゴム製円筒状密封栓において、上記の密封栓は、その外形をなす天面部及び外側円筒と、その内側の天面部下方に形成された内側円筒とから構成され、上記内側円筒は、その中にルアーノズルの少なくとも先端部が密に挿入可能、且つ、それ自体がルアーノズルとルアーロック部との間隙に密に嵌挿可能に形成され、上記外側円筒のルアーロック部の外面と接触する内面には少なくとも1本の空気が流通可能な溝がその長手方向に形成され、且つ上記密封栓の内側円筒がルアーロック部に挿入される長さH2とルアーロック部の深さH1とが、0.3H1<H2≦0.8H1の関係にあることを特徴とする注射器兼容器用密封ゴム栓である。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に発明の実施の形態を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
本発明のルアーノズル及びルアーロック部からなる薬液吐出部を有する注射器兼容器の薬液吐出部に被せるゴム製の密栓(ノズルキャップ)は、前記の従来のゴム製ノズルキャップと形状は同じで、そのルアーロック部の外面と接触する円筒(外側円筒)の面に空気の逃げ道となる空気が流通可能な溝(以下では空気排出溝と称する。)がノズルキャップの長手方向に形成されていることが特徴である。
【0012】
図面を参照して本発明のノズルキャップの構造を説明する。図1(a)に本発明のノズルキャップの一例の概略断面図を、(b)にはプレフィルドシリンジの薬液吐出部に装着した状態のノズルキャップの概略断面図をそれぞれ示す。ノズルキャップ1は、天面部2の下方に同心円の外側円筒3と内側円筒4を有する二重円筒構造を有し、このノズルキャップ1をプレフィルドシリンジの薬液吐出部に装着すると、薬液吐出部のルアーノズル8は内側円筒4の内側6(ルアーノズル挿入部)に、ルアーロック部9は内外円筒3、4の間7(ルアーロック挿入部)に、それぞれの先端を天面部2に接触させ密に挿入され、内側円筒4はルアーノズル8とルアーロック部9との間隙10に密に嵌挿されるように形成され、ルアーロック部9の外面と接触する外側円筒3の内面には、打栓時に空気を外部に逃がす空気排出溝5が、ノズルキャップの長手方向に形成されている。ルアーロック部9の内面には図3に示す凸状螺旋突条が形成されているが、図1(b)では省略してある。
【0013】
ノズルキャップ1の内側円筒4の内径は、ルアーノズルは先端から下方に向かって外径が徐々に増加するテーパーに形成されているので、ルアーノズルの平均外径より通常5〜30%小さく形成され、外側円筒3の内径はルアーロック部の外径より通常5〜30%小さく形成されている。又、内側円筒4の厚み(幅)は、ルアーノズル8とルアーロック部9との間隙の平均幅より通常5〜20%大きく形成され、内側円筒4の内側は、ルアーノズル8がその先端から、その全長の少なくとも20%の長さが挿入可能な深さに形成されている。外側円筒3の厚みはノズルキャップ1が、その外側円筒3によって密にルアーロック部に装着される厚さであれば特に制限されない。
【0014】
ノズルキャップ1の外側円筒3の内面に、その長手方向に沿って形成される打栓時の空気排出溝5は、外側円筒3の内面がルアーロック部9の外面と圧接して押し潰されて塞がれない形状及び大きさ(幅と深さ)に形成されたものであれば、例えば、断面が半円、長方形、台形等のいずれの形状及び大きさの凹状又は凸状の溝であってもよく、特に制限されない。空気排出溝5は、ルアーロック部9の先端がノズルキャップ1の天面部2と接する高さを先端とし、ノズルキャップ1の外側円筒の内面下端まで空気が排出可能に形成される。
溝の本数は、少なくとも1本は必要であるが、溝の形状や大きさ(溝幅及び/又は溝深さ)によって異なり一概に決めることはできないが、通常、3〜4本程度で充分である。
【0015】
上記の空気排出溝5と共に本発明において重要なことは、図2に示すノズルキャップの内側円筒4がルアーロック部9に挿入される長さH2が、ルアーロック部の深さH1と、0.3H1<H2≦0.8H1の関係にあることが好ましく、更に好ましくは 0.3H1<H2<0.5H1の関係にあることである。この関係を満足する長さにノズルキャップの内側円筒4を形成することにより、空気排出溝5を外側円筒3の内面のみに形成するだけで内側円筒4には空気排出溝5を形成することなく、内側円筒4によってルアーノズル8とルアーロック部9の間隙に密封された加圧空気によるノズルキャップ1の打栓時及びプレフィルドシリンジの加熱滅菌時の浮き上がりによる抜け落ちは防止され、ノズルキャップでプレフィルドシリンジの薬液吐出部を充分に密封することができる。
【0016】
本発明のプレフィルドシリンジ用のノズルキャップは、以上のような空気を排出させる溝をノズルキャップの外側円筒の内面に形成すること以外は前記の従来のノズルキャップと同様にして製造される。本発明の該ノズルキャップの製造に用いられるゴム原料及び配合剤等も従来の注射器用ノズルキャップや医薬品及び医療用ゴム栓の製造に用いられているものはいずれも使用でき、これらも特に限定されない。
【0017】
又、プレフィルドシリンジに充填された薬液等とノズルキャップとが直接接触することを防止するために、本発明のノズルキャップは、その内面の少なくともルアーノズル先端と接触する面を、従来の注射ノズルキャップや医薬品及び医療用ゴム栓と同様にフッ素系樹脂等のプラスチックフィルムで被覆することもできる。プラスチックフィルム被覆により、密封性を確保したうえで、薬液等を安全に長期的に保存することができるので、プラスチックフィルム被覆は好ましい態様である。製造上及びより安全性を高めるうえからもノズルキャップの全内面をプラスチックフィルムで被覆することが好ましい。この例を図6に示す。
【0018】
本発明における注射器兼容器は、プラスチック製であり、プラスチックとしては従来から注射器及び注射器兼容器の製造に使用されているものがいずれも使用でき、特に制限されない。特に好ましいプラスチックは、特願平9−38594号明細書等に記載の環状オレフィン系重合体であり、ゼオネックス(日本ゼオン社製)、アペルCOC(三井石油化学社製)やTopas COC(ティコナ社製)等が市販されており、入手可能である。
【0019】
【実施例】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0020】
実施例1、比較例1
ルアーノズル(長さ8mm、平均外径4.2mm)とルアーロック部(外径10mm、内径8mm、深さ5mm)からなる薬液吐出部を形成した容量が100mlのプレフィルドシリンジ用の架橋ブチルゴム製の全内面がフッ素系樹脂でラミネートされたノズルキャップを作製した。このノズルキャップは、図7(フッ素系樹脂フィルムのラミネートは不図示。)に示すように外径が15mm、長さが13mmの円筒形であり、外側円筒の内径10mm;内側円筒の外径6.9mm、内径3.7mm;外円筒の厚さ2.5mm、内円筒の厚さ1.6mm;内側円筒の内側の長さ5.0mm、外側の長さ2.8mm;外側円筒の下端からの長さ9mm;内外円筒が形成する間隙の先端と天面部上端との距離4mmである。外側円筒下端部の内側は、プレフィルドシリンジの頭部(薬液吐出部が設けられている周辺部)面にノズルキャップの下端部が密接するように形成されている。
又、空気排出溝は、ノズルキャップの内外円筒が形成する間隙の先端から下端まで、深さ0.3mm、幅(円弧)2mmの断面がほぼ台形の凹状溝が外側円筒の内面に4本、それぞれ対称の位置に形成されている(図7)。
又、空気排出溝が形成されていない以外は上記と同じノズルキャップを作製した。
【0021】
上記のプレフィルドシリンジに押棒を螺着した摺動面及び薬液と接触する面がフッ素系樹脂でラミネートされたブチルゴム製ピストンを装着して注射用蒸留水をルアーノズルから吸引し、押棒を外した。薬液吐出部に上記のノズルキャップを手で装着し、その時の浮上りの感触の有無及び手を離した後のノズルキャップの戻りの有無を試験した。パネラー5人、一人10個のノズルキャップについて試験した。
上記の本発明のノズルキャップでは、パネラー5人共全てのノズルキャップで浮上りの感触は実感せず、又、ノズルキャップの戻りも認められなかった。
【0022】
一方、空気排出用溝が形成されていない比較例のノズルキャップにおいても同様にして試験したが、5人のパネラーはいずれも全てのノズルキャップで浮上りの感触を実感し、ほぼ全てのノズルキャップで戻りが認められた。
【0023】
【発明の効果】
以上の本発明によれば、プレフィルドシリンジの打栓時、及び加熱滅菌処理時に浮き上がり及び抜け落ちが防止されたノズルキャップが提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の注射器兼容器用のノズルキャップの一例を説明する概略断面図である。(a)は薬液吐出部への装着前、(b)は装着時の状態を示す。
【図2】 本発明のノズルキャップの一例の内側円筒の外側の長さと注射器兼容器のルアーロック部の深さの関係を説明する概略断面図である。
【図3】 注射器兼容器を説明する概略断面図である。(a)は全体図であり、(b)は薬液吐出部の拡大図である。
【図4】 従来の注射器兼容器用のノズルキャップを説明する概略断面図である。(a)は薬液吐出部への装着前、(b)は装着時の状態を示す。
【図5】 従来の注射器兼容器用のノズルキャップの打栓の過程を説明する図である。
【図6】 ノズルキャップの全内面がプラスチックフィルムでラミネートされた本発明のノズルキャップの一例の概略断面図である。
【図7】 実施例1のノズルキャップを説明する概略断面図及び側面図(a)と矢視の正面図である。
【符号の説明】
1:本発明の注射器兼容器用のノズルキャップノズルキャップ
2:天面部
3:外側円筒
4:内側円筒
5:空気排出溝
6:ルアーノズル挿入部
7:ルアーロック部挿入部
8:ルアーノズル
9:ルアーロック部
10:ルアーノズルとルアーロック部の間隙
Claims (2)
- ルアーノズル及びルアーロック部からなる薬液吐出部を有する注射器兼容器の薬液吐出部に装着するゴム製円筒状密封栓において、上記の密封栓は、その外形をなす天面部及び外側円筒と、その内側の天面部下方に形成された内側円筒とから構成され、上記内側円筒は、その中にルアーノズルの少なくとも先端部が密に挿入可能、且つ、それ自体がルアーノズルとルアーロック部との間隙に密に嵌挿可能に形成され、上記外側円筒のルアーロック部の外面と接触する内面には少なくとも1本の空気が流通可能な溝がその長手方向に形成され、且つ上記密封栓の内側円筒がルアーロック部に挿入される長さH2とルアーロック部の深さH1とが、0.3H1<H2≦0.8H1の関係にあることを特徴とする注射器兼容器用密封ゴム栓。
- 少なくともルアーノズル挿入部内面がプラスチックフィルムで被覆されている請求項1に記載の注射器兼容器用密封ゴム栓。
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