JP4156791B2 - プレフィルドシリンジ用注射器およびプレフィルドシリンジ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、予め薬液が充填されるいわゆるプレフィルドシリンジ用注射器および予め薬液が充填されたプレフィルドシリンジに関する。
【0002】
【従来の技術】
患者に輸液を投与するのに先立って、輸液容器内に充填された輸液にビタミン剤、ミネラル類、抗生物質のような様々な薬剤を必要に応じて配合することが行われている。また、救急医療の現場では注射器によって自律神経作用薬、昇圧薬などの複数併用および大量投与が行われている。このような薬剤の配合や投与は、バイアル瓶から注射器によって薬液を吸引し、次いで輸液容器あるいは直接血管に薬液を注入することによって行われている。しかしながら、このような薬剤の配合および投与は操作が煩雑であり、配合に要する時間、投与に要する時間が長くかかるという欠点がある。そこで、予め薬液が充填されるいわゆるプレフィルドシリンジが提案されている。
【0003】
プレフィルドシリンジとしては、シリンジ使用前、特に輸送中にシリンジ内部の薬液等がノズル先端開口から漏れないようにすることが必要である。このようなプレフィルドシリンジとしては、特表平11−501597号公報にノズル部とその周りを取り囲むカラー部を備える注射針取付部とノズル部およびカラー部を内表面および外表面から被包するシールキャップとからなり、シールキャップを螺合のみにより注射針取付部に取り付け、ノズル先端開口を液密に密封したものが開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、螺合のみで密封したプレフィルドシリンジは、輸送中の振動等により螺合がゆるみ液漏れするおそれがある。
そこで、本発明は、上記問題点を解決して、シリンジ使用前、特に輸送中の振動によるシールキャップのゆるみを防止するプレフィルドシリンジ用注射器およびそれを用いたプレフィルドシリンジを提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 先端に注射針取付部と後端にフランジとを備える外筒と、前記注射針取付部に液密かつ着脱可能に取り付けられているシールキャップと、外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、該ガスケットの後端に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャーとを備えるプレフィルドシリンジ用注射器であって、前記注射針取付部は、ノズル部と、該ノズル部を取り囲むように設けられたカラー部とを備え、前記シールキャップは、前記ノズル部を収納する一端が閉塞した円筒状のノズル収納部と、該ノズル収納部を取り囲むように形成され、かつ前記ノズル収納部との間に前記カラー部を収納する一端が閉塞した円筒状のカラー部収納部とを備え、かつ前記注射針取付部と前記シールキャップは前記カラー部内周面と前記ノズル収納部外周面との間にて螺合するものであって、さらに、前記プレフィルドシリンジ用注射器は、前記カラー部外周面に形成された注射針取付部側係合部と、前記カラー部収納部内周面に形成され、前記シールキャップを前記ノズル部に液密に取り付けた時に前記注射針取付部側係合部と係合するシールキャップ側係合部とを備え、前記注射針取付部側係合部と前記シールキャップ側係合部との係合により前記シールキャップの前記ノズル部から離間する方向への回転抵抗が高くなっているプレフィルドシリンジ用注射器。
【0006】
(2)上記(1)において、前記注射針取付部側係合部は、前記カラー部外周面に設けられたリブであり、前記シールキャップ側係合部は、前記カラー部収納部内周面に沿って形成された環状リブであることが好ましい。
(3)上記(2)において、前記注射針取付部側係合部として形成された前記リブは、前記カラー部外周面円周上にほぼ等間隔に複数配置されていることが好ましい。
【0007】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(4) 上記(1)ないし(3)のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ用注射器と、前記外筒と前記ガスケットと前記シールキャップにより形成される空間内に収納された薬剤とからなるプレフィルドシリンジである。
【0008】
【発明の実施の形態】
そこで、本発明のプレフィルドシリンジ用注射器およびプレフィルドシリンジを図面に示す実施例を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施例であるプレフィルドシリンジ用注射器を用いたプレフィルドシリンジの正面図であり、図2は、図1に示すプレフィルドシリンジの断面図であり、図3は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器の外筒の正面図であり、図4は、図3に示す外筒の平面図であり、図5は、図3に示す外筒の底面図であり、図6は、図2に示すプレフィルドシリンジの先端部分の拡大図であり、図7は、図3に示す外筒の注射針取付部分の拡大断面図であり、図8は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器に用いられるシールキャップの拡大断面図であり、図9は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器に用いられるシールキャップの平面図であり、図10は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器に用いられるシールキャップの底面図である。そこで、図面を用いて詳細に説明する。
【0009】
本発明のプレフィルドシリンジ用注射器10は、先端に注射針取付部3と後端にフランジ4とを備える外筒2と、注射針取付部3に液密かつ着脱可能に取り付けられているシールキャップ5と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット6と、ガスケット6の後端に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャー7とを備えるプレフィルドシリンジ用注射器10である。注射針取付部3は、ノズル部31と、ノズル部31を取り囲むように設けられたカラー部32とを備える。シールキャップ5は、ノズル部31を収納する一端が閉塞した円筒状のノズル収納部51と、ノズル収納部51を取り囲むように形成され、かつノズル収納部51との間にカラー部32を収納する一端が閉塞した円筒状のカラー部収納部52とを備える。注射針取付部3とシールキャップ5はカラー部内周面322に形成された外筒側螺合部とノズル収納部外周面513に形成されたキャップ側螺合部との間にて螺合するものであって、さらに、プレフィルドシリンジ用注射器10は、カラー部32に形成された注射針取付部側係合部33と、カラー部収納部52に形成され、シールキャップ5をノズル部31に液密に取り付けた時に注射針取付部側係合部33と係合するシールキャップ側係合部53とを備え、注射針取付部側係合部33とシールキャップ側係合部53との係合によりシールキャップのノズル部31から離間する方向への回転抵抗が高くなっている。
【0010】
また、本発明のプレフィルドシリンジ1は、プレフィルドシリンジ用注射器10と、外筒2とガスケット6とシールキャップ5により形成される空間内に収納された薬剤8とからなる。
【0011】
実施例のプレフィルドシリンジ用注射器10は、図1に示すように、外筒2と、外筒2の先端部に設けられた注射針取付部3と、外筒2の後端に設けられたフランジ部4と、外筒内に摺動可能に収納されたガスケット6と、ガスケット6に取り付けられたプランジャー7と、注射針取付部3に取り付けられたシールキャップ5とからなる。
外筒2は、透明もしくは半透明材料により、好ましくは、酸素透過性、水蒸気透過性の少ない材料により形成された筒状体である。
注射針取付部3は、図2、図3、図4に示すようにノズル部31と、カラー部32とを備える。
【0012】
ノズル部31は、外筒2の先端に設けられており、先端に外筒内の薬液等を排出するための開口を備えるとともに先端に向かってテーパー状に縮径するように形成されている。
カラー部32は、ノズル部31を取り囲むようにノズル部31と同心的に円筒状に形成されている。また、カラー部32は、先端が開口しており、カラー部32の内径および外径は基端(外筒先端面21)から先端までほぼ同一径となっている。また、カラー部32の先端開口321からはノズル部31の先端部が突出しており、ノズル部31およびカラー部32の先端部は、ノズル部31およびカラー部32をシールキャップ5内に収納しやすくするため面取り加工されている。
【0013】
カラー部内周面322には、ノズル収納部外周面513に形成されたネジ山(キャップ側螺合部)513aと螺合するためのネジ溝(外筒側螺合部)322aが形成されている。これにより、注射針取付部3とシールキャップ5はカラー部内周面322とノズル収納部外周面513との間で螺合する。また、ネジ溝(外筒側螺合部)322aは、シールキャップ5を注射針取付部3から取り外した後注射針(注射針のハブ)を取り付ける部分となる。
【0014】
フランジ4は、図3に示すように外筒2の後端全周より垂直方向に突出するように形成された楕円ドーナツ状の円盤部である。フランジ4は、図1、図2、図3に示すように向かい合う幅広となった2つの把持部4a、4bを備え、さらに、把持部4a、4bの先端面側には、複数のリブ40a、40bが形成されている。また、図2、図5に示すように外筒2の筒状本体部分の後端とフランジの周縁およびリブ部分以外となる部分は凹部41a、41bとなっている。
【0015】
外筒2本体部、注射針取付部3およびフランジ4の形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0016】
シールキャップ5は、図1、図2、図8に示すようにキャップ状に作製されノズル収納部51とカラー部収納部52を備えている。
ノズル収納部51は、シールキャップ5の中央部に設けられ、先端が閉塞し円筒状である。ノズル収納部51の内径は、ノズル部31より若干大きく作製され、先端から基端まで基端に向かって若干テーパー状に拡径しており、基端開口511からノズル部31全体を収納するものとなっている。
【0017】
ノズル収納部51の内側閉塞面には、ノズル部先端開口311を液密に密封するためのシール部材514が収納されており、ノズル部先端開口311がシール部材514に当接することによりノズル部31は液密に密封されるものとなっている。シール部材としては、先端開口311を液密に密封可能なように弾性部材であることが好ましい。シール部材の形成材料としては、例えば、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の合成ゴム、オレフィン系エラストマーやスチレン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー等を使用することが好ましい。
【0018】
また、ノズル収納部51の内側閉塞面から少し基端側となる位置には内径がノズル部31の外径とほぼ同じ大きさとなるように作製された環状リブ512aが設けられている。このため、シールキャップ5を注射針取付部3に取り付ける際、ノズル部31がノズル収納部51の中心付近から外れることが抑制され、シールキャップ5を注射針取付部3にスムーズに取り付けることができる。
【0019】
また、本発明の実施例では、ノズル部31をノズル収納部51内に収納した状態でノズル部31とノズル収納部51との間には隙間が存在するため、注射針取付部3とシールキャップ5との螺合をスムーズに行うことができる。また、ノズル収納部51内周面512とノズル部31の外周面とが密着嵌合していないため、シールキャップ5を注射針取付部3から取り外す際においても強い力を必要とせず注射針取付部3を破損するおそれがない。なお、ノズル部外周面とノズル収納部内周面とが密着嵌合するようにしてもよい。
【0020】
ノズル収納部51の基端は後述するカラー部収納部52の基端より少し先端側となるように作製されており、ノズル収納部51の基端は基端開口511に向かってテーパー状に拡径している。このため、ノズル部31をノズル収納部51に収納しやすいものとなっている。
また、ノズル収納部外周面513には、カラー部内周面322に形成されたネジ溝(外筒側螺合部)322aと螺合するためのネジ山(キャップ側螺合部)513aが形成されている。これにより、注射針取付部3とシールキャップ5はノズル収納部外周面513とカラー部内周面322との間で螺合する。
【0021】
カラー部収納部52は、ノズル収納部51を取り囲むように形成され先端が閉塞した円筒状体であり、カラー部収納部内周面522とノズル収納部外周面513との間にカラー部32を収納する。また、円筒状に形成されたカラー部収納部52は、ノズル収納部51と同心的に作製されており、カラー部収納部52の内径は、先端から基端までほぼ同一径となっている。
【0022】
カラー部収納部52の内側閉塞面には、基端に向かって突出した環状リブ522aが形成されている。環状リブ522aは、ノズル部31先端がシール部材514にネジ込まれすぎシール部材514が切れることを防止するためのものである。具体的には、カラー部32先端が環状リブ522aの先端(図6、図8の下側)に当接し環状リブ522aの先端が少し変形することにより、ノズル部31のそれより先端側への螺合を抑制しさらにノズル部31先端のシール部材514への押圧力を調節してシール部材514のネジ切れを防止する。環状リブの縦断面形状としては、ノズル部先端と当接した際少し変形するように先端が縮径していることが好ましく、三角形状、半円形状、半楕円形状であることが好ましい。環状リブの内側閉塞面からの高さは、ノズル部先端がシール部材により液密に密封されるとともにノズル部先端のネジ込みによりシール部材が切れない程度であることが好ましい。
【0023】
また、カラー部収納部52の基端521はノズル収納部51の基端より少し基端側に位置しており、カラー部収納部52の基端付近は基端開口に向かってテーパー状に拡径している。このため、カラー部32をカラー部収納部52に収納しやすいものとなっている。
また、図1、図9に示すようにシールキャップ5の外側面(カラー部収納部52の外周面)には、シールキャップを回転させる時指等が滑らないようにするために縦方向に刻み加工が施されている。
【0024】
シールキャップの形成材料としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル、ポリ−(4−メチルペンテン−1)、アクリル樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、環状ポリオレフィンのような各種樹脂が挙げられるが、その中でも成形が容易で耐熱性があることから、ポリプロピレン、環状ポリオレフィンのような樹脂が好ましい。
【0025】
さらに、プレフィルドシリンジ用注射器10は、図3、図4、図6、図7、図8に示すように、カラー部32に形成された注射針取付部側係合部33と、カラー部収納部52に形成され、シールキャップ5をノズル部31に液密に取り付けた時に注射針取付部側係合部33と係合するシールキャップ側係合部53とを備えている。具体的には、注射針取付部側係合部33は、カラー部外周面323に形成され、シールキャップ側係合部53は、カラー部収納部内周面522に形成されている。また、注射針取付部側係合部33は、カラー部外周面323に設けられたリブであり、シールキャップ側係合部53は、カラー部収納部内周面522に沿って形成された環状リブである。
【0026】
注射針取付部側係合部33であるリブは、カラー部32の先端開口321から少し基端側となる位置のカラー部外周面に連続せずほぼ同一円周上となるように複数設けられている。そして、複数のリブはほぼ等間隔に配置されていることが好ましい。注射針取付部側係合部33に形成されたリブの縦断面形状は、保管中および輸送中の振動によっては緩まず、しかも開封時にはキャップをひねるだけで容易に開けられるように半楕円形状、半円形状、三角形状に作製するのが好ましい。
【0027】
リブのカラー部外周面からの高さは、0.05〜0.15mmであることが好ましい。リブの数としては、2〜6個であることが好ましい。なお、本発明の実施例では、注射針取付部側係合部33のリブは、カラー部外周面円周上に等間隔に4個配置されているが、等間隔に配置しなくてもよく、リブ数も4個でなくてもよい。キャップの安定性の点からは等間隔に3個以上配置することが好ましい。また、リブ数を6個以下にすれば、開封が特に良好になる。
【0028】
シールキャップ側係合部53である環状リブは、カラー部収納部内周面のカラー部収納部52の内側閉塞面から少し基端側となる位置に、シールキャップ5の中心軸とほぼ直交するように形成されている。環状リブの断面形状は、半楕円形状、半円形状、三角形状であることが好ましい。また、カラー部収納部内周面からの高さは、0.05〜0.15mmであることが好ましい。
【0029】
また、シールキャップ側係合部53は、シールキャップ5をノズル部31に液密に取り付けた時に注射針取付部側係合部33と係合するものである。具体的には、シールキャップ5と注射針取付部3とが螺合してノズル部先端開口311がシール部材514に当接した状態において、注射針取付部側係合部33はシールキャップ側係合部53と係合してシールキャップ側係合部53より先端側に位置し、注射針取付部側係合部33の基端部とシールキャップ側係合部53の先端部はほぼ接触する。このため、注射針取付部側係合部33とシールキャップ側係合部53との係合によりシールキャップ5のノズル部31から離間する方向への回転抵抗が高くなり、輸送中の振動によるシールキャップのゆるみが防止される。
【0030】
また、注射針取付部側係合部は、カラー部外周面323に沿って形成された環状リブであり、シールキャップ側係合部は、カラー部収納部内周面522に設けられたリブであってもよい。
この場合、注射針取付部側係合部である環状リブは、カラー部32の先端開口321から少し基端側となる位置のカラー部外周面323円周上に沿って、カラー部32の中心軸とほぼ直交するように形成されていることが好ましい。
シールキャップ側係合部は、カラー部収納部52の内側閉塞面から少し基端側となる位置のカラー部収納部内周面に連続せずほぼ同一円周上となるように複数設けられていることが好ましい。そして、複数のリブは、ほぼ等間隔に配置されていることが好ましい。
【0031】
ガスケット6は、図1、図2に示すようにほぼ同一外径にて延びる本体部と、この本体部に設けられた複数の環状リブ(この実施例では2つ、2つ以上であれば、液密性と摺動性を満足できれば適宜数としてもよい)を備え、これらリブが、外筒2の内面に液密に接触する。また、ガスケット6の先端面は、外筒2の先端内面に当接した時に、両者間に極力隙間を形成しないように、外筒2の先端内面形状に対応した形状となっている。ガスケット6の形成材料としては、弾性を有するゴム(例えば、ブチルゴム、ラテックスゴム、シリコーンゴムなど)、合成樹脂(例えば、SBSエラストマー、SEBSエラストマーなどのスチレン系エラストマー、エチレン−αオレフィン共重合体等のポリオレフィン系エラストマーなど)等を使用することが好ましい。
【0032】
そして、ガスケット6には、その後端部より内部に延びる凹部が設けられ、この凹部は、雌ねじ状となっており、プランジャー7の先端部に形成された突出部の外面に形成された雄ねじ部と螺合可能となっている。両者が螺合することにより、プランジャー7は、ガスケット6より離脱しない。なお、プランジャー7は取り付けられておらず、使用時に取り付けるようにしてもよい。
【0033】
プランジャー7は、上述したように、先端部に筒状に突出する突出部を備え、突出部の外面にはガスケット6の凹部と螺合する雄ねじが形成されている。また、プランジャー7は、断面十字状の軸方向に延びる本体部と、後端部に設けられた押圧用の円盤部を備えている。
【0034】
次に、本発明の他の実施例のプレフィルドシリンジ用注射器について説明する。
図11は、本発明の他の実施例であるプレフィルドシリンジの先端部分の拡大断面図であり、図12は、本発明の他の実施例であるプレフィルドシリンジに用いられるプレフィルドシリンジ用注射器のシールキャップの拡大断面図であり、図13は、本発明の他の実施例であるプレフィルドシリンジに用いられるプレフィルドシリンジ用注射器の注射針取付部分の拡大断面図である。
この実施例のプレフィルドシリンジ用注射器20の基本構成は、上述したプレフィルドシリンジ用注射器10と同じであり、注射針取付部およびシールキャップの構成のみ異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0035】
本発明のプレフィルドシリンジ用注射器20は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器10と同様に、先端に注射針取付部30と後端にフランジ4とを備える外筒2と、注射針取付部30に液密かつ着脱可能に取り付けられているシールキャップ50と、外筒2内に摺動可能に収納されたガスケット6と、ガスケット6の後端に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャー7とを備えるプレフィルドシリンジ用注射器20である。注射針取付部30は、ノズル部31と、ノズル部31を取り囲むように設けられたカラー部32とを備える。シールキャップ50は、ノズル部31を収納する一端が閉塞した円筒状のノズル収納部51と、ノズル収納部51を取り囲むように形成され、かつノズル収納部51との間にカラー部32を収納する一端が閉塞した円筒状のカラー部収納部52とを備える。注射針取付部30とシールキャップ50はカラー部内周面322に形成された外筒側螺合部とノズル収納部外周面513に形成されたキャップ側螺合部との間にて螺合するものであって、さらに、プレフィルドシリンジ用注射器20は、カラー部32に形成された注射針取付部側係合部34と、ノズル収納部外周面513に形成され、シールキャップ50をノズル部31に液密に取り付けた時に注射針取付部側係合部34と係合するシールキャップ側係合部54とを備え、注射針取付部側係合部34とシールキャップ側係合部54との係合によりシールキャップのノズル部31から離間する方向への回転抵抗が高くなっている。
【0036】
注射針取付部30は、図13に示すようにノズル部31とカラー部32とからなっている。ノズル部31は、上述したプレフィルドシリンジ1の注射針取付部3のノズル部と同じである。また、カラー部32は、ネジ溝(外筒側螺合部)322aとカラー部内周面に形成された注射針取付部側係合部34を備えている。
【0037】
カラー部32のカラー部内周面322の基端側には、図13に示すように、ノズル収納部外周面513に形成されたネジ山(キャップ側螺合部)513aと螺合するためのネジ溝(外筒側螺合部)322aが形成されている。これにより、注射針取付部30とシールキャップ50はカラー部内周面322とノズル収納部外周面513との間で螺合する。また、ネジ溝(外筒側螺合部)322aは、シールキャップ50を注射針取付部30から取り外した後注射針(注射針のハブ)を取り付ける部分となる。カラー部外周面323には、プレフィルドシリンジ用注射器10と異なり注射針取付部側係合部が形成されていない。
【0038】
シールキャップ50は、図12に示すように、ノズル収納部51と、カラー部収納部52を備えている。また、ノズル収納部51は、ノズル収納部外周面513に形成されたシールキャップ側係合部54およびネジ山(キャップ側螺合部)513aを備えている。
【0039】
ノズル収納部外周面513の基端側には、カラー部内周面322に形成されたネジ溝(外筒側螺合部)322aと螺合するためのネジ山(キャップ側螺合部)513aが形成されている。これにより、注射針取付部30とシールキャップ50はノズル収納部外周面513とカラー部内周面322との間で螺合する。また、本発明のカラー部収納部は、カラー部収納部内周面522でなくノズル収納部外周面513にシールキャップ側係合部が設けられていることを除き、プレフィルドシリンジ用注射器10のカラー部収納部と同じである。
【0040】
さらに、プレフィルドシリンジ用注射器20は、カラー部32に形成された注射針取付部側係合部34と、ノズル収納部外周面513に形成されシールキャップをノズル部31に液密に取り付けた時に注射針取付部側係合部34と係合するシールキャップ側係合部54とを備えている。また、注射針取付部側係合部34は、カラー部内周面322の螺合部分より先端側に形成され、シールキャップ側係合部54は、ノズル収納部外周面513の螺合部分より先端側に形成されている。また、注射針取付部側係合部34は、カラー部内周面322に設けられたリブであり、シールキャップ側係合部54は、ノズル収納部外周面513に沿って形成された環状リブである。
【0041】
具体的には、図13に示すように、カラー部32の先端部分(ネジ溝322a形成部分より先端側部分)は、内径がネジ溝322a形成部分の内周面322の内径より拡径した内径拡径部35となっている。注射針取付部側係合部34であるリブは、内径拡径部35の内周面352に連続せずかつほぼ同一円周上となるように複数設けられている。複数のリブはほぼ等間隔に配置されていることが好ましい。また、リブの内径拡径部内周面352からの高さは、図13に示すように、ネジ溝形成部分の内周面322より低いものとなっている。このため、注射針取付部側係合部34であるリブは、カラー部内周面322に形成されたネジ溝322aとノズル収納部外周面513に形成されたネジ山513aとが螺合する時ネジ山513aに引っかかることがなく、両者の螺合を阻害しない。
【0042】
注射針取付部側係合部34であるリブの縦断面形状は、半楕円形状、半円形状、三角形状に作製するのが好ましい。リブの内径拡径部分内周面からの高さは、0.05〜0.15mmであることが好ましい。リブの数としては、2〜6個であることが好ましい。なお、本発明の実施例では、注射針取付部側係合部34のリブは、内径拡径部内周面352上に等間隔に4個配置されているが、等間隔に配置しなくてもよく、リブ数も4個でなくてもよい。
【0043】
また、図12に示すようにノズル収納部51のネジ山(キャップ側螺合部)513aより先端側部分は、外径がネジ山(キャップ側螺合部)513aを含めたノズル収納部51の外径とほぼ同じ大きさの外径拡径部55となっている。そして、シールキャップ側係合部54である環状リブは、外径拡径部外周面553の基端部円周上にシールキャップ50の中心軸とほぼ直交するように形成されている。環状リブのノズル収納部外周面513からの高さは、ノズル収納部外周面513からのネジ山(キャップ側螺合部)513aの高さより高いものとなっている。環状リブの断面形状は、半楕円形状、半円形状、三角形状であることが好ましい。環状リブの外径拡径部外周面からの高さは、0.05〜0.15mmであることが好ましい。
【0044】
また、シールキャップ側係合部54は、シールキャップ50をノズル部31に液密に取り付けた時に注射針取付部側係合部34と係合するものである。具体的にシールキャップ50と注射針取付部30とが完全に螺合してノズル部先端開口311がシール部材514に当接した状態において、注射針取付部側係合部34はシールキャップ側係合部54と係合してシールキャップ側係合部54より先端側に位置し、注射針取付部側係合部34の基端部とシールキャップ側係合部54の先端部はほぼ接触する。このため、注射針取付部側係合部34とシールキャップ側係合部54との係合によりシールキャップ50のノズル部31から離間する方向への回転抵抗が高くなり、輸送中の振動によるシールキャップのゆるみが防止される。
【0045】
また、注射針取付部側係合部34は、カラー部内周面に沿って形成された環状リブであり、シールキャップ側係合部54は、ノズル収納部外周面513に設けられたリブであってもよい。
この場合、注射針取付部側係合部である環状リブは、カラー部の先端部分に形成された内径拡径部35の内周面352に沿って、カラー部32の中心軸とほぼ直交するように形成されていることが好ましい。また、シールキャップ側係合部であるリブは、ノズル収納部51の先端部に設けられた外径拡径部55の外周面553に連続せずほぼ同一円周上となるように複数設けられていることが好ましい。複数のリブは、ほぼ等間隔に配置されていることが好ましい。また、環状リブおよびリブの構成としては、上述したものであることが好ましい。
【0046】
次に、本発明のプレフィルドシリンジ用注射器10、20を用いたプレフィルドシリンジについて説明する。
プレフィルドシリンジ1は、図1に示すようにプレフィルドシリンジ用注射器10、20と、外筒2とガスケット6とシールキャップ5、50により形成される空間内に収納された薬剤8とからなる。
薬剤としては、生理食塩水、高濃度塩化ナトリウム注射液、ビタミン剤、ミネラル類、抗生物質などの薬液、さらには、粉末状もしくは凍結乾燥薬剤が使用される。なお、本発明のシリンジは、プレフィルドシリンジ用に限らず一般の注射器にも利用できる。
【0047】
次に、本発明のプレフィルドシリンジ1の使用方法について説明する。
一方の手でプレフィルドシリンジ1の先端を上側にして固定しつつ、他方の手でシールキャップ5、50を回転させることにより注射針取付部3、30からシールキャップ5、50を取り外すことができる。具体的に、まずシリンジ未使用状態では注射針取付部側係合部33、34はシールキャップ側係合部53、54と係合しておりシールキャップ側係合部53、54より先端側に位置している。
【0048】
シールキャップ5、50を回し始めると、シールキャップ5、50のネジ山513aがネジ溝322aに沿って注射針取付部3、30から離間していき、注射針取付部3、30は、シールキャップ側係合部53、54を基端側に乗り越えようとするためシールキャップ5、50に回転抵抗が生じる。さらに、シールキャップ5、50を回転させると、注射針取付部側係合部33、34がシールキャップ側係合部53、54を完全に乗り越え係合が解除され、回転を続けることによりシールキャップ5、50が取り外され、注射針取付部3、30が露出する。その後、注射針取付部3、30のカラー部内周面322に設けられたネジ溝322aに注射針(注射針のハブ)等を取り付け作業を行う。
【0049】
【発明の効果】
本発明のプレフィルドシリンジ用注射器は、先端に注射針取付部と後端にフランジとを備える外筒と、前記注射針取付部に液密かつ着脱可能に取り付けられているシールキャップと、外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、該ガスケットの後端に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャーとを備えるプレフィルドシリンジ用注射器であって、前記注射針取付部は、ノズル部と、該ノズル部を取り囲むように設けられたカラー部とを備え、前記シールキャップは、前記ノズル部を収納する一端が閉塞した円筒状のノズル収納部と、該ノズル収納部を取り囲むように形成され、かつ前記ノズル収納部との間に前記カラー部を収納する一端が閉塞した円筒状のカラー部収納部とを備え、かつ前記注射針取付部と前記シールキャップは前記カラー部内周面と前記ノズル収納部外周面との間にて螺合するものであって、さらに、前記プレフィルドシリンジ用注射器は、前記カラー部に形成された注射針取付部側係合部と、前記カラー部収納部もしくは前記ノズル収納部外周面に形成され、前記シールキャップを前記ノズル部に液密に取り付けた時に前記注射針取付部側係合部と係合するシールキャップ側係合部とを備え、前記注射針取付部側係合部と前記シールキャップ側係合部との係合により前記シールキャップの前記ノズル部から離間する方向への回転抵抗が高くなっている。
【0050】
また、本発明のプレフィルドシリンジは、プレフィルドシリンジ用注射器と、前記外筒と前記ガスケットと前記シールキャップにより形成される空間内に収納された薬剤とからなるプレフィルドシリンジである。
このため、本発明のプレフィルドシリンジ用注射器およびプレフィルドシリンジは、シリンジ使用前、特に輸送中の振動によるシールキャップのゆるみを防止する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明の一実施例であるプレフィルドシリンジ用注射器を用いたプレフィルドシリンジの正面図である。
【図2】図2は、図1に示すプレフィルドシリンジの断面図である。
【図3】図3は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器の外筒の正面図である。
【図4】図4は、図3に示す外筒の平面図である。
【図5】図5は、図3に示す外筒の底面図である。
【図6】図6は、図2に示すプレフィルドシリンジの先端部分の拡大図である。
【図7】図7は、図3に示す外筒の注射針取付部分の拡大断面図である。
【図8】図8は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器に用いられるシールキャップの拡大断面図である。
【図9】図9は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器に用いられるシールキャップの平面図である。
【図10】図10は、図1に示すプレフィルドシリンジ用注射器に用いられるシールキャップの底面図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施例であるプレフィルドシリンジの先端部分の拡大断面図である。
【図12】図12は、本発明の他の実施例であるプレフィルドシリンジに用いられるプレフィルドシリンジ用注射器のシールキャップの拡大断面図である。
【図13】図13は、本発明の他の実施例であるプレフィルドシリンジに用いられるプレフィルドシリンジ用注射器の注射針取付部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 プレフィルドシリンジ
2 外筒
3,30 注射針取付部
4 フランジ
5,50 シールキャップ
6 ガスケット
7 プランジャー
10,20 プレフィルドシリンジ用注射器
31 ノズル部
32 カラー部
33,34 注射針取付部側係合部
51 ノズル収納部
52 カラー部収納部
53,54 シールキャップ側係合部
Claims (4)
- 先端に注射針取付部と後端にフランジとを備える外筒と、前記注射針取付部に液密かつ着脱可能に取り付けられているシールキャップと、外筒内に摺動可能に収納されたガスケットと、該ガスケットの後端に取り付けられたもしくは取り付け可能なプランジャーとを備えるプレフィルドシリンジ用注射器であって、前記注射針取付部は、ノズル部と、該ノズル部を取り囲むように設けられたカラー部とを備え、前記シールキャップは、前記ノズル部を収納する一端が閉塞した円筒状のノズル収納部と、該ノズル収納部を取り囲むように形成され、かつ前記ノズル収納部との間に前記カラー部を収納する一端が閉塞した円筒状のカラー部収納部とを備え、かつ前記注射針取付部と前記シールキャップは前記カラー部内周面と前記ノズル収納部外周面との間にて螺合するものであって、さらに、前記プレフィルドシリンジ用注射器は、前記カラー部外周面に形成された注射針取付部側係合部と、前記カラー部収納部内周面に形成され、前記シールキャップを前記ノズル部に液密に取り付けた時に前記注射針取付部側係合部と係合するシールキャップ側係合部とを備え、前記注射針取付部側係合部と前記シールキャップ側係合部との係合により前記シールキャップの前記ノズル部から離間する方向への回転抵抗が高くなっていることを特徴とするプレフィルドシリンジ用注射器。
- 前記注射針取付部側係合部は、前記カラー部外周面に設けられたリブであり、前記シールキャップ側係合部は、前記カラー部収納部内周面に沿って形成された環状リブである請求項1に記載のプレフィルドシリンジ用注射器。
- 前記注射針取付部側係合部として形成された前記リブは、前記カラー部外周面円周上にほぼ等間隔に複数配置されている請求項2に記載のプレフィルドシリンジ用注射器。
- 請求項1ないし3のいずれかに記載のプレフィルドシリンジ用注射器と、前記外筒と前記ガスケットと前記シールキャップにより形成される空間内に収納された薬剤とからなることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
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