明 細 書
炭化タングステン粉末とその製造方法、 およびそれを用いた超硬材 料と工具
技術分野
[0001] 本発明は炭化タングステン粉末とその製造方法、 およびそれを用いた超硬 材料と工具に関する。 背景技術
[0002] 高硬度が必要とされる切削工具には超硬材料が使用されている。 超硬材料 としては、 炭化タングステン (WC) 粉末のような硬質粉末を加圧成形し、 これを還元雰囲気中で焼成した焼結体が用いられている。 W C粉末の焼結体 において、 切削工具用超硬材料に要求される硬度等の特性は焼結後の結晶粒 径が小さいほど向上することが知られている。
[0003] このようなことから、 切削工具用超硬材料の原料粉末として用いられる W C粉末には、 より一層の微粒子化が要求されている。 微粒子状の WC粉末の 製造方法としては、 これまでも様々な方法が提案されており、 工業レベルで 約 0. 3〜0. 6 m程度の平均粒子径を有する WC粉末が得られている。
[0004] 特許文献 1には、 三酸化タングステン (W03) 粉末と炭素粉末との混合粉 末をペレット化した後、 これを窒素ガス中で 1 097〜 1 497°Cの温度で 加熱し、 続いて水素ガス中で 1 297〜 1 697°Cの温度で加熱し、 得られ た塊状の炭化物を粉砕および篩い分けして、 平均粒子径が 0. 以下の WC粉末を作製する方法が記載されている。
[0005] しかしながら、 ここでは衝撃粉砕機を用いて塊状の炭化物を粉砕して WC 粉末を作製しているため、 不純物が混入しやすいという問題がある。 衝撃粉 砕機では、 一般的にアルミナ (A I 203) 製のメディアが用いられている。 汎用のアルミナメディアにはシリカ (S i 02) が 7質量%程度含有されてい る。 このため、 アルミナメディアを用いて粉砕を行うと WC粉末に A Iや S iが不純物として混入してしまう。
[0006] 特許文献 2には、 還元雰囲気中で 6 5 0〜8 0 0 °Cの温度と 9 5 0〜 1 2 0 0 °Cの温度で 2度の熱処理を行うことによって、 粉砕工程を実施すること なく、 微粉末状の W C粉末を作製する方法が記載されている。 ここでは、 不 純物硫黄 (S ) 量を 0 . 0 0 1重量% ( 1 0 p p m ) 以下、 不純物鉄 (F e ) 量を 0 . 0 5重量% ( 5 0 0 p p m ) 以下と一定の水準まで減らしている 。 ただし、 これら以外の不純物元素の低減効果は必ずしも十分とは言えない 。 このため、 Sや F e以外の不純物元素に起因して、 W C粉末を焼結して作 製した超硬材料の硬度等の特性が低下するおそれがある。
特許文献 1 :特開平 3— 2 0 8 8 1 1号公報
特許文献 2:特開 2 0 0 1 _ 0 7 2 4 0 6公報
発明の開示
[0007] 本発明の目的は、 超硬材料等の原料粉末として用いられる炭化タングステ ン粉末の不純物元素量を低減し、 これにより超硬材料等の特性の向上を図る ことを可能にした炭化タングステン粉末とその製造方法、 およびそのような 炭化タングステン粉末を用いた超硬材料と工具を提供することにある。
[0008] 本発明の態様に係る炭化タングステン粉末は、 0 . 8 m以下の平均粒子 径を有する炭化タングステン粉末であって、 前記炭化タングステン粉末中の S i含有量および C a含有量がいずれも 1 0 p p m未満であることを特徴と している。
[0009] 本発明の態様に係る炭化タングステン粉末の製造方法は、 三酸化タングス テン粉末とカーボン粉末とを湿式で混合する工程と、 前記三酸化タングステ ン粉末と前記カーボン粉末との混合粉末を還元雰囲気中にて 7 5 0 °C以下の 温度で加熱し、 前記三酸化タングステン粉末を還元してタングステン粉末を 生成する工程と、 前記タングステン粉末を含む前記混合粉末を還元雰囲気中 にて 1 0 0 0 °C以上の温度で加熱し、 前記タングステン粉末と前記カーボン 粉末とを反応させて炭化タングステン粉末を生成する工程とを具備すること を特徴としている。
[0010] 本発明の態様に係る超硬材料は、 本発明の態様に係る炭化タングステン粉
末の焼結体を具備することを特徴としている。 本発明の態様に係る工具は、 本発明の態様に係る超硬材料を具備することを特徴としている。
発明を実施するための形態
[0011] 以下、 本発明を実施するための形態について説明する。 本発明の実施形態 による炭化タングステン (WC) 粉末は 0. 8 m以下の平均粒子径を有し ている。 このような微粉末状態の WC粉末は、 超硬用材料等として用いられ る WC焼結体の結晶粒径の微細化に寄与し、 これに基づいて硬度等の特性を 向上させることが可能となる。
[0012] WC粉末の平均粒子径が 0. 8 mを超えると、 WC焼結体の結晶粒径の 微細化効果を十分に得ることができず、 これにより硬度等の特性が低下する 。 WC粉末の平均粒子径は 0. 5 m以下とすることがより好ましい。 平均 粒子径の下限値は特に限定されるものではないが、 製造の容易さ等から 0. 01 ; U m以上とすることが好ましい。 WC粉末の平均粒子径を 0. 01 m より小さくしても、 それ以上の効果が得られないだけでなく、 製造性や取扱 い性が低下する。 WC粉末の平均粒子径は FS S S法 (フィッシャー■サブ ■シ一ブ■サイザ一法) に基づいて測定した値を示すものとする。
[0013] WC粉末を用いて作製した WC焼結体の硬度等の特性を向上させるために は、 WC粉末を微粉末化することに加えて、 WC粉末中の不純物元素量を低 減することが重要となる。 特に、 珪素 (S i ) とカルシウム (Ca) の含有 量が多い WC粉末を用いた場合、 WC焼結体中に S iや C aが例えば酸化物 の形態で凝集して存在する。 これらはクラックの起点となるため、 WC焼結 体の硬度等の特性が低下する。 WC焼結体中における S iや C aの偏析を抑 制するために、 この実施形態の WC粉末は S i含有量と C a含有量をそれぞ れ 1 0 p p m未満 (質量比) としている。
[0014] WC粉末の S i含有量が 1 0 p pm以上になると、 WC焼結体中で S iが 偏析しゃすくなり、 この S iの偏析を起点としてクラックが生じやすくなる 。 同様に、 WC粉末の Ca含有量が 1 O p pm以上になると、 WC焼結体中 で C aが酸化物等の形態で偏析しゃすくなり、 この C a酸化物の偏析を起点
としてクラックが生じやすくなる。 WC粉末の S i含有量は 5 p pm以下と することがより好ましい。 WC粉末の C a含有量は 5 p pm以下とすること がより好ましい。
[0015] S i含有量と C a含有量がそれぞれ 1 0 p 未満の\^〇粉末は、 後述す るようにステンレス製の容器とメディアを備える混合機を用いて、 WC粉末 の原料となる三酸化タングステン (wo3) 粉末と力一ボン粉末とを湿式で混 合することにより得ることができる。 従来の WC粉末の作製方法においては 、 wo3粉末とカーボン粉末とを混合する際の混合容器やメディアから S iや C aが混入していたものと考えられる。 そこで、 ステンレス容器とステンレ スポールを用いると共に、 混合時に分散媒として有機溶媒等を使用して湿式 で混合することによって、 S iや C aの混入量を低減することができる。
[0016] 湿式混合を適用した場合、 WC粉末中の鉄 (F e) 含有量が増加すること が考えられる。 し力、し、 F eは WC焼結体の硬度等に対して S iや C aのよ うに悪影響を及ぼすことはない。 このため、 WC粉末は 1 0 以上1 0 00 p pm以下の範囲であれば F eを含有していてもよい。 WC粉末の F e 含有量が 1 O O O p pmを超えると、 超硬材料として用いたときに機械的特 性 (抗折力等) が低下する。 F e含有量が少なすぎると焼結時に WCの結晶 粒子が粒成長しやすくなるため、 WC粉末の F e含有量は 1 O p pm以上と することが好ましい。 F e含有量は 1 00 p pm以上であることがさらに好 ましい。
[0017] WC粉末は S i含有量が 1 0 p pm未満、 C a含有量が 1 0 p p m未満、
F e含有量が 1 O p pm以上 1 O O O p p m以下であることが好ましい。 こ れら以外の不純物元素 (Wと C以外の元素、 例えば A I、 Mg、 N i等) に ついても、 その含有量が多すぎると WC焼結体の硬度等を低下させる要因と なるおそれがある。 このため、 WC粉末中の不純物元素の総含有量 (S i、 Ca、 F eの含有量を含む) は 5000 p pm以下とすることが好ましい。 不純物元素の総含有量は 3000 p pm以下であることがさらに好ましい。
[0018] さらに、 この実施形態の WC粉末は、 WCを構成しないフリー力一ボン (
遊離炭素) の含有量が 1 000 p pm以下であることが好ましい。 WC粉末 中のフリ一力一ボン量が 1 000 p pmを超えると、 それを用いて作製した WC焼結体の超硬材料としての特性、 具体的には超硬材料を切削工具として 用いた場合の切削性等が低下する。 WC粉末中のフリ一力一ボン量は 500 p pm以下とすることがより好ましい。 なお、 フリーカーボン量は上述した 不純物元素の総含有量には含まれない。
[0019] この実施形態の炭化タングステン (WC) 粉末は、 例えば以下のようにし て作製される。 まず、 タングステンの原料として三酸化タングステン (wo3 ) 粉末を用意する。 W03粉末はパラタングステン酸アンモニゥム (APT) を大気中にて 600〜800°Cの範囲の温度で焼成して作製することが好ま しい。 このような W03粉末を用いることによって、 微細な WC粉末を再現性 よく得ることができる。
[0020] 次に、 三酸化タングステン (W03) 粉末と力一ボン (C) 粉末とを所定の 比率で混合する。 これらの混合比率は C粉末の割合が 4. 5〜5. 5質量% の範囲となるように調整することが好ましい。 C粉末の混合比がこの範囲を 外れると未反応の Wや Cの量が多くなり、 WC焼結体の強度劣化の要因とな る。 wo3粉末と C粉末との混合は、 分散媒として有機溶媒を使用した湿式混 合により実施する。 wo3粉末と C粉末との湿式混合は、 分散媒として有機溶 媒を適用した高エネルギー型混合機を用いて実施することが好ましい。 高工 ネルギ一型混合機はステンレス容器とステンレスポールを備えることが好ま しい。
[0021] 上述したような湿式混合によれば、 有機溶媒等の分散媒が混合容器や混合 メディアから不純物 (特に S iや Ca) が混合粉末中に混入することを抑制 する。 さらに、 ステンレス製容器とステンレスポールを適用した混合機を用 いることによって、 混合粉末中への S iや C aの混入量を低減することがで きる。 これらによって、 S iや C aの含有量を低減した混合粉末、 ひいては WC粉末を得ることが可能となる。 湿式混合は WO 3粉末の凝集の抑制、 ひい ては WC粉末の微粉末化に対しても有効に作用する。
[0022] さらに、 高エネルギー型混合機によれば、 不可避的に混入した微量の S i や C aを均一分散させることができる。 従って、 W C焼結体中の S iや C a の偏析を起点とするクラックの発生がより効果的に抑制される。 高工ネルギ —型混合機を用いて WO 3粉末と C粉末とを湿式混合することで、 wo 3粉末 に対する C粉末の混合状態がより均一化される。 その後の還元工程で作製す る W C粉末の平均粒子径が再現性よく微細化される。
[0023] W0 3粉末と C粉末とを湿式混合するにあたって、 分散媒として使用する有 機溶媒としてはアルコール、 アセトン、 へキサンから選ばれる少なくとも 1 種が挙げられる。 湿式混合時の分散媒としてはメタノール、 エタノール等の 低級アルコールゃァセトンが一般的であるが、 乾燥性や環境負荷等を考慮す るとエタノールのようなアルコールを使用することが望ましい。 揮発性を有 する有機溶媒を分散媒として使用することによって、 後工程への悪影響等を 抑制することができる。
[0024] 有機溶媒は W0 3粉末と C粉末との合計量に対して 1 0質量%以下の範囲で 添加することが好ましい。 有機溶媒の添加量を多くするほど不純物の混入量 が低下するものの、 有機溶媒の添加量が多すぎると乾燥工程に時間を要する ことで、 W C粉末の製造工数が増大する。 さらに、 揮発した有機溶媒が排水 や大気中に放出されて環境負荷が増大する。 これを防ぐためには新たな回収 装置が必要になる等、 製造コストに悪影響を及ぼす。 このため、 有機溶媒の 添加量は 1 0質量%以下とすることが好ましい。
[0025] 次に、 W0 3粉末と C粉末との混合粉末を水素雰囲気等の還元雰囲気中にて 7 5 0 °C以下の温度で加熱し、 W0 3粉末を還元して混合粉末中で W粉末を生 成する。 W0 3粉末を還元する第 1の還元工程の処理温度が 7 5 0 °Cを超える と、 W粉末の粒成長を招いて W C粉末の平均粒子径を十分に微細化すること ができない。 さらに、 処理温度が 7 5 0 °Cを超えると、 添加した Cが W0 3の 還元で生成した Oと反応して系外に放出されるため、 最終的に得られる W C 中の Cが不足するおそれがある。 ただし、 WO 3粉末の還元処理温度が低すぎ ると wo 3粉末を十分に還元することができない。 従って、 第 1の還元工程は
500°C以上 750°C以下の範囲の温度で実施することが好ましい。
[0026] 続いて、 第 1の還元工程を経た混合粉末を水素雰囲気等の還元雰囲気中に て 1 000°C以上の温度で加熱し、 第 1の還元工程で生成した W粉末と C粉 末とを反応させて WC粉末を生成する。 WC粉末を生成する第 2の還元工程 の処理温度が 1 000°C未満であると、 W粉末と C粉末とが十分に反応せず 、 フリーカーボン量が増大して特性が低下する。 ただし、 処理温度が高すぎ ると WC粒子の粒成長や粗粒子化が進み、 微細な WC粉末を得ることができ ない。 第 2の還元工程は 1 400°C以下の温度で実施することが好ましい。 第 2の還元工程の処理温度は 1 1 00°〇以上1 400°C以下とすることがよ り好ましい。
[0027] 二段階の還元工程を適用することによって、 微細化した WC粉末 (平均粒 子径が 0. 以下の WC粉末) を再現性よく得ることができる。 さらに
、 WC粉末中の不純物元素量に対して影響を及ぼす wo3粉末と C粉末との混 合工程に、 例えば有機溶媒を使用した高エネルギー型混合機による湿式混合 を適用することによって、 不純物元素量を低減した WC粉末を再現性よく得 ることが可能となる。 すなわち、 S i含有量が 1 O p pm未満、 Ca含有量 が 1 0 p p m未満の WC粉末が再現性よく得られる。
[0028] この実施形態の WC粉末は、 超硬材料の原料として好適である。 WC粉末 を例えば液相焼結して得られる WC焼結体は、 切削工具用材料として使用さ れる超硬材料に好適である。 WC粉末の焼結工程は、 WC粉末に Co、 V、 H f 、 T i、 T a、 N i、 C r等の金属、 あるいはこれら金属の合金や化合 物 (炭化物等) を液相焼結用の助剤として添加、 混合した後、 例えば 1 20 0〜1 900°Cの温度で加熱することにより実施される。 焼結工程には常圧 焼結、 雰囲気加圧焼結、 ホットプレス、 H I P等が適用される。
[0029] WC焼結体からなる超硬材料は、 切削工具等の高硬度が必要とされる工具 の構成材料として有効に用いられる。 本発明の実施形態による工具はこのよ うな超硬材料を具備する。 工具の具体例としては切削工具が挙げられる。
[0030] 次に、 本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
[0031] (実施例 1 )
まず、 平均粒子径が 1 20 の八 丁粉末を大気中にて800°〇で2時 間加熱して W03粉末を作製した。 この W03粉末に C粉末を 4. 96質量% の割合で添加して湿式混合した。 湿式混合工程はステンレス容器とステンレ スポールを使用し、 分散媒としてエタノールを用いて実施した。 高工ネルギ —型混合機としてはアトライタ (商品名、 三井鉱山社製) を使用した。 wo3 粉末と C粉末との合計量に対して 1 0質量%のエタノールを添加し、 質量比 30%相当の S U Sポールと共に 2時間の条件下で湿式混合した。
[0032] 次に、 W03粉末と C粉末との混合粉末を、 水素雰囲気中にて 750°Cの温 度で 4時間加熱処理して WO 3粉末を還元した。 WO 3粉末を還元して生成し た W粉末と C粉末とを含む混合粉末を、 水素雰囲気中にて 1 300°Cの温度 で 2時間加熱処理し、 W粉末と C粉末とを反応させて W C粉末を作製した。 WC粉末の平均粒子径は 0. 6エ であった。
[0033] 得られた WC粉末中の不純物元素量を I CP発光分析法で分析した。 その 結果、 S i含有量は 2 p p m、 C a含有量は 3 p p m、 F e含有量は 20 p pm、 これらを含む不純物元素の総含有量は 200 p pmであった。 さらに 、 WC粉末中のフリ一力一ポン量は 700 p pmであった。 このような WC 粉末を後述する特性評価に供した。
[0034] (実施例 2〜 4)
上述した実施例 1において、 W03粉末と C粉末との合計量に対するェタノ ールの添加量を、 5質量% (実施例 2) 、 1質量% (実施例 3) 、 30質量 % (実施例 4) とする以外は、 実施例 1 と同一条件で W03粉末と C粉末との 湿式混合工程を実施した。 得られた混合粉末をそれぞれ用いて、 実施例 1 と 同一条件で第 1および第 2の還元工程を実施して WC粉末を作製した。 これ ら WC粉末の平均粒子径と不純物元素量を表 1に示す。 なお、 不純物元素の 総含有量はいずれも 5000 p pm以下、 フリー力一ポン量はいずれも 1 0 00 p pm以下であった。 これらの WC粉末を後述する特性評価に供した。
[0035] (実施例 5)
上述した実施例 1において、 湿式混合時の分散媒としてァセトンを用いる 以外は、 実施例 1 と同一条件で wo3粉末と C粉末との湿式混合工程を実施し た。 得られた混合粉末を用いて、 実施例 1 と同一条件で第 1および第 2の還 元工程を実施して WC粉末を作製した。 この WC粉末の平均粒子径と不純物 元素量を表 1に示す。 なお、 不純物元素の総含有量は 5000 p pm以下、 フリー力一ポン量は 1 000 p pm以下であった。 このような WC粉末を後 述する特性評価に供した。
[0036] (実施例 6)
上述した実施例 2において、 W03粉末の原料粉末として純度が 99. 9% と低い A P T粉末を用いる以外は、 実施例 2と同一条件で WO 3粉末と C粉末 との湿式混合工程を実施した。 得られた混合粉末を用いて、 実施例 2と同一 条件で第 1および第 2の還元工程を実施して WC粉末を作製した。 この WC 粉末の平均粒子径と不純物元素量を表 1に示す。 なお、 不純物元素の総含有 量は 5000 p pm以下、 フリー力一ポン量は 1 000 p pm以下であった 。 このような W C粉末を後述する特性評価に供した。
[0037] (比較例 1 )
実施例 1 と同様にして作製した W03粉末に、 実施例 1 と同様の C粉末を 4 . 92質量%の割合で添加して混合した。 W03粉末と C粉末との混合工程は 乾式混合により実施した。 具体的には、 混合機としてアトライタ (商品名、 三井鉱山社製) を使用し、 質量比 30%相当の S USポールと共に 2時間の 条件下で乾式混合した。 得られた混合粉末を用いて、 実施例 1 と同一条件で 第 1および第 2の還元工程を実施して WC粉末を作製した。 この WC粉末の 平均粒子径と不純物元素量を表 1に示す。 このような WC粉末を後述する特 性評価に供した。
[0038] 次に、 実施例 1〜 5および比較例 1による各 WC粉末に、 液相焼結用の助 剤として C o等を添加してポールミルで 3時間混合した。 次に、 これら各粉 末を金型で成形した後、 真空中にて 1 400°Cの条件で焼結することによつ て、 それぞれ WC焼結体を作製した。 これら WC焼結体の特性を以下のよう
にして評価した。 すなわち、 ビッカース硬度計による硬さの測定と切り出し た試験片での抗折力の測定を行った。 評価結果を表 1に示す。
ほ 1 ]
[0040] 表 1から明らかなように、 実施例 1〜5による各 W C粉末を用いて作製し た W C焼結体はいずれも高硬度を有し、 かつ抗折カも良好であることが分か る。 これら各 W C焼結体を用いて切削工具 (半導体基板用切削工具) を作製 したところ、 いずれも高精度、 高寿命と良好な結果を示した。
[0041 ] ただし、 実施例 4は湿式混合時のエタノールの添加量が多かったため、 粉 末乾燥に時間がかかった上、 部分的にダマが発生した。 実施例 5は工程的に は問題がないものの、 環境負荷が大きいアセトンを使用しているため、 量産 時の排気、 排水の処理対応に問題が残った。 wo3粉末と C粉末とを乾式で混 合した比較例 1では、 W C粉末の S i含有量や C a含有量が多く、 そのため に焼結体の抗折力が低下した。
[0042] なお、 本発明は各種形態の炭化タングステン粉末、 それを用いた超硬材料 や工具に適用可能であり、 その形態や構造等に何等限定されるものではない 。 実施段階においては本発明の技術的思想を逸脱しない範囲で構成要素を変 形して具体化することができる。 さらに、 上記実施形態に示される複数の構 成要素を適宜に組合せたり、 また実施形態に示される全構成要素からいくつ かの構成要素を削除する等、 種々の変形が可能である。 本発明の実施形態は
本発明の技術的思想の範囲内で拡張もしくは変更することができ、 この拡張 、 変更した実施形態も本発明の技術的範囲に含まれるものである。
産業上の利用可能性
本発明の態様に係る炭化タングステン粉末は S i含有量と C a含有量を低 減しているため、 これを用いて作製した焼結体の特性を向上させることがで きる。 従って、 本発明の態様に係る炭化タングステン粉末は超硬材料やそれ を用いた工具の原料として有用である。