明 細 書
EL装置
技術分野
[0001] 本発明は、有機 ELディスプレイ等の EL (Electroluminescent)装置に関する。
背景技術
[0002] 有機 ELディスプレイ等の EL装置は、一般的に、マザ一基板上に複数の EL装置に 対応する構成を一度に形成し、そのマザ一基板を分割することにより複数の EL装置 が形成されるようになっている。その分割工程では、マザ一基板の分割ラインに沿つ て傷を付け、その傷の付いた部分に衝撃や外力等を付与し、分割ラインに沿ってマ ザ一基板を割るようになつている。他の分割方法としては、マザ一基板の分割ライン に沿ってレーザ照射を行って、マザ一基板を局所的に加熱して、クラック等を発生さ せること〖こより分害する方法ちある。
[0003] 一方、 EL装置では、有機材料を用いた有機層等を外界力も保護するため、素子形 成領域を覆うようにシリコン窒化膜等の保護膜が基板上に形成されている。
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0004] し力しながら、マザ一基板の分割時にマザ一基板に与えられる衝撃や外力等により 、あるいは、 EL装置の搬送時に該装置に印加される外力等により、有機層等を保護 している保護膜にクラックが生じ、そのクラックが基板の内方に位置する素子形成領 域にまで及ぶ場合がある (クラックが生じた際のより詳細な様子等は、図 1及び図 2に 基づいて後述する)。
[0005] そこで、本発明の解決すべき課題は、保護膜に生じたクラックが基板の内方の素子 形成領域に及ぶのを良好に防止することができる EL装置を提供することである。 課題を解決するための手段
[0006] 上記の課題を解決するため、請求項 1の発明では、四角形状を成す基板と、前記 基板の上面側に設けられ、有機発光素子を有する素子形成領域と、前記素子形成 領域と前記基板の端部との間の領域に設けられた凸部と、前記素子形成領域から前
記基板の端部までの領域内に被着され、前記凸部上を被覆するように形成された保 護膜とを備え、前記凸部は、前記基板の 4辺のうちの少なくとも 2辺に沿って略筋状 に形成されている。
[0007] また、請求項 2の発明では、請求項 1の発明に係る EL装置において、前記凸部は
、榭脂により形成されている。
[0008] また、請求項 3の発明では、請求項 1又は請求項 2の発明に係る EL装置において
、前記凸部は、その上部よりも下部が幅狭となるように側壁面を傾倒させている。
[0009] また、請求項 4の発明では、請求項 1な!、し請求項 3の 、ずれかの発明に係る EL 装置において、前記凸部は、前記基板の 4辺に沿って連続的に形成されている。
[0010] また、請求項 5の発明では、請求項 1な!、し請求項 4の 、ずれかの発明に係る EL 装置において、前記素子形成領域と前記基板の端部との間の領域のうち、前記基板 の 4辺のうちの少なくとも 1辺に沿って配設され、前記有機発光素子を駆動する駆動 素子をさらに備え、前記凸部は、前記駆動素子が配設されていない前記基板の 2辺 以上に沿って形成されている。
[0011] また、請求項 6の発明では、請求項 1ないし請求項 5のいずれかの発明に係る EL 装置において、前記凸部は、前記基板の 4辺のうちの少なくとも 2辺に沿って複数列 に形成されている。
[0012] また、請求項 7の発明では、請求項 1な!、し請求項 6の 、ずれかの発明に係る EL 装置において、前記凸部の高さは、保護膜の厚みよりも大きく設定される。
[0013] また、請求項 8の発明では、請求項 1な!、し請求項 7の 、ずれかの発明に係る EL 装置において、前記基板はマザ一基板カゝら分割されたものであり、前記基板の辺は 、前記基板が前記マザ一基板カゝら分割される際の分割ラインに対応して ヽる。
[0014] また、請求項 9の発明では、基板と、前記基板の上面側に設けられ、有機発光素子 を有する素子形成領域と、前記素子形成領域と前記基板の端部との間に配置され、 榭脂により形成された凸部と、前記素子形成領域力 前記基板の端部までの領域内 に被着され、前記凸部上を被覆するように形成された保護膜とを備え、前記凸部は、 前記基板の端部に沿って略筋状に形成されている。
[0015] また、請求項 10の発明では、基板と、前記基板の上面側に設けられ、有機発光素
子を有する素子形成領域と、前記素子形成領域と前記基板の端部との間に設けられ た凸部と、前記素子形成領域から前記基板の端部までの領域内に被着され、前記 凸部上を被覆するように形成された保護膜とを備え、前記凸部は、その上部よりも下 部が幅狭となるように側壁面を傾倒させて 、る。
[0016] また、請求項 11の発明では、基板と、前記基板の上面側に設けられ、有機発光素 子を有する素子形成領域と、前記素子形成領域と前記基板の端部との間に設けられ た凹部と、前記素子形成領域から前記基板の端部までの領域内に被着され、凹部の 内面を被覆するように形成された保護膜とを備え、前記凹部は、前記基板の端部に 沿って略筋状に形成されて!ヽる。
[0017] また、請求項 12の発明では、請求項 11の発明に係る EL装置において、前記凹部 の深さは、前記保護膜の厚みよりも大きい。
[0018] また、請求項 13の発明では、請求項 1ないし請求項 10のいずれかの発明に係る E L装置において、前記素子形成領域はシール材によって取り囲まれており、前記凸 部は前記シール材よりも前記基板の端部側に位置している。
[0019] また、請求項 14の発明では、請求項 11又は請求項 12の発明に係る EL装置にお いて、前記素子形成領域はシール材によって取り囲まれており、前記凹部は前記シ ール材よりも前記基板の端部側に位置している。
[0020] また、請求項 15の発明では、前記素子形成領域は、隣り合う前記有機発光素子間 の領域に配置される隔壁を更に有し、前記隔壁及び前記凸部は、上面よりも下面が 幅狭となる断面逆テーパー状に形成され、上面の幅と下面の幅との差が前記隔壁よ りも前記凸部の方が大きい。
[0021] また、請求項 16の発明では、基板と、前記基板の上面側に設けられ、有機発光素 子を有する素子形成領域と、前記素子形成領域と前記基板の端部との間の領域に 設けられた凸部と、前記素子形成領域力 前記基板の端部までの領域内に被着さ れ、前記凸部上を被覆するように形成された保護膜と、を備え、前記凸部は、前記基 板の端部に沿って形成されて 、る。
[0022] また、請求項 17の発明では、請求項 16に記載の EL装置において、前記凸部は、 榭脂により形成されている。
[0023] また、請求項 18の発明では、請求項 16又は請求項 17に記載の EL装置において 、前記凸部は、前記凸部の上部よりも下部が幅狭となるように側壁面を傾倒させてい ることを特徴とする。
[0024] また、請求項 19の発明では、請求項 16乃至請求項 18のいずれかに記載の EL装 置において、前記凸部は、前記基板の端部に沿って連続的に形成されている。
[0025] また、請求項 20の発明では、請求項 16乃至請求項 19のいずれかに記載の EL装 置において、前記凸部は、前記基板に沿って複数列に形成されていることを特徴と する。
[0026] また、請求項 21の発明では、請求項 16乃至請求項 20のいずれかに記載の EL装 置において、前記凸部の厚みは、前記凸部上における前記保護膜の厚みよりも大き い。
[0027] また、請求項 22の発明では、請求項 16乃至請求項 21に記載の EL装置において 、前記素子形成領域はシール材によって取り囲まれており、前記凸部は前記シール 材によって被覆されている。
[0028] また、請求項 23の発明では、基板と、前記基板の上面側に設けられ、有機発光素 子を有する素子形成領域と、前記素子形成領域と前記基板の端部との間に設けられ た凹部と、前記素子形成領域から前記基板の端部までの領域内に被着され、凹部の 内面を被覆するように形成された保護膜と、前記素子形成領域を取り囲むように形成 されたシール材と、を備え、前記凹部は、前記シール材によって被覆されている。
[0029] また、請求項 24の発明では、ネガ型のレジスト膜が被着した基板と、光が通過する 穴部と該穴部の周辺領域に光の通過する光量が前記穴部よりも少ないハーフトーン 部とを有するマスクと、を準備する工程と、前記基板上に被着した前記レジスト膜に対 して前記マスクを対向配置する工程と、前記マスクを介して前記レジスト膜に光を照 射する工程と、前記レジスト膜を現像し、前記ハーフトーン部の直下に対応する領域 に上部よりも下部が幅狭な逆テーパー状となる隔壁を形成する工程と、を備えたこと を特徴とする EL装置の製造方法。
発明の効果
[0030] 本発明によれば、基板の端部で生じた保護膜のクラックを凸部にて良好に低減す
ることができ、 EL装置が破壊されるのを効果的に抑制することが可能となる。
発明を実施するための最良の形態
[0031] く保護膜に生じるクラックについて〉
実施形態についての具体的な説明を行う前に、マザ一基板の分割時等に生じる保 護膜のクラックについて説明する。
[0032] EL装置 1の製造工程では、図 1及び図 2に示すようにガラス等により形成されたマ ザ一基板 2を用いて複数の EL装置 1に対応する構成 (有機発光素子や配線、隔壁 等)がー度に作成される。その後、マザ一基板 2を分断して複数の各 EL装置 1が得ら れるようになっている。より詳細には、
(I)マザ一基板 2上における各単位区画に有機発光素子や配線等を形成する。有 機発光層や配線の形成には、従来周知の薄膜形成技術 (蒸着法、 CVD法)及びフ オトリソグラフィー技術が採用される。
[0033] (II)次に、有機材料を用いた有機発光素子等を外界力 保護するための保護膜 6 を形成する。この保護膜 6は、 SiN系や SiO系、 SiON系の材料カゝら成り、有機発光 素子の形成後に、有機発光素子の上から、一部領域を除いてマザ一基板 2の全体 に形成される。保護膜 6が形成されない領域としては、例えば、後述する有機発光素 子を駆動するためのチップ状の駆動素子(例えば、駆動 IC (Integrated Circuits)等) 22 (図 3参照)が配設される領域が挙げられる。
[0034] (III)続いて、マザ一基板 2の各単位区画の内周に素子形成領域 3を取り囲むように 、例えばエポキシ榭脂等力もなるシール材 4を形成し、マザ一基板 2に対して一枚板 のカバーガラス 5を貼り合わせる。なお、シール材 4を構成するエポキシ榭脂は、ディ スペンサ一等を用 、てマザ一基板 2上に塗布される。
[0035] (IV)そして、マザ一基板 2の分割が行われる。すなわち、マザ一基板 2及びカバー ガラス 5の分割ライン 11, 12に沿って傷 11a, 12aを付け、その部分に衝撃や外力等 を付与し、分割ライン 11, 12に沿ってマザ一基板 2及びカバーガラス 5を割るようにな つている。他の分割方法としては、マザ一基板 2及びカバーガラス 5の分割ライン 11, 12に沿ってレーザ照射を行って、マザ一基板 2及びカバーガラス 5を局所的に加熱 して、意図的に分割ライン 11, 12に沿ってクラック等を発生させることにより分割する
方法もある。
[0036] このようにしてマザ一基板 2を分割する際に、その際の衝撃や外力により、図 2に模 式的に示すように保護膜 6にクラック 13が生じる場合がある。そして、そのクラック 13 力 EL装置 1の基板 14の外縁からシール材 4によって封止された素子形成領域 3内 に及ぶ場合がある。
[0037] ここで、本願で 、う「保護膜 6のクラック」とは、保護膜 6自体の亀裂と、保護膜 6とそ の下側の膜 15との間に生じる亀裂などを含む概念である。また、上記のようなクラック 13の発生原因としては、マザ一基板 2の分割時だけでなぐ分割後の EL装置 1に対 して与えられる衝撃や外力等により発生する場合もある。
[0038] そこで、本願発明者らは、この保護膜 6のクラック 13の伝播を止めることにより、 EL 装置 1の信頼性及び歩留まりの向上等を図ることを見出した。
[0039] <実施形態について >
図 3は、本発明の一実施形態に係る EL装置の分割される前の状態を示す平面図 であり、図 4は図 3の A2— A2断面図であり、図 5は図 4の凸部の周りを拡大して示す 図である。なお、図 3及び図 4に示す構成において、上述の図 1及び図 2に示す構成 や製造方法については、同一の参照符号を付して説明を省略する。
[0040] 本実施形態に係る EL装置 1では、図 3ないし図 5に示すように、基板 14の上面側 における素子形成領域 3の外方に、基板 14の上面側に向けて突出する凸部 21が設 けられている。この凸部 21は、基板 14の端部にて発生した保護膜 6のクラック 13が 素子形成領域 3内に及ぶのを低減するものであり、矩形の基板 14の辺に沿って略筋 状に形成されている。このため、保護膜 6は、凸部 21が設けられている部分では凸部 21の表面に密着している。なお、実質的に基板 14の辺はマザ一基板 2の分割ライン 11に相当しており、マザ一基板 2を分割ライン 11で分割すると、基板 14の辺が形成 されるようになつている。なお、略筋状とは、基板 14端部の少なくとも一部に沿って形 成された線であって、蛇行した折れ線であってもよい。また、凸部 21は、少なくとも 2 辺に沿って配置されることが好ましいが、 1辺でも良い。
[0041] また、凸部 21を基板 14のいずれの辺に設けるかについては、有機発光素子を駆 動するための駆動素子 22の配設形態に応じて決定される。すなわち、基板 14の駆
動素子 22の搭載領域には、保護膜 6が被着されていないことに加え、駆動素子 22の 配設スペース確保のため、基板 14の辺力も素子形成領域 3までの間隔が大きくなつ ている。このため、この部分では基板 14の外縁で生じた保護膜 6のクラック 13が素子 形成領域 3にまで及ぶ可能性が比較的小さぐ必ずしも凸部 21を形成する必要がな い。
[0042] そこで、本実施形態では、基板 14の 4辺のうち駆動素子 22が配設されていない辺 に沿って凸部 21を設け、 EL装置 1の大型化を抑制している。図 3に示す例では、基 板 14の 1辺に沿って駆動素子 22が配設されているため、凸部 21は残りの 3辺に沿つ て形成されている。図 3に示す以外の構成としては、駆動素子 22が基板 14の 2辺、 3 辺に沿って配設される場合もある。本実施形態に係る変形例として、駆動素子 22の 有無に関わらず、凸部 21を基板 14の 4辺、すなわち全周に沿って形成するようにし てもよい。
[0043] このような凸部 21の断面形状は、図 4及び図 5に示すように、下部より上部が幅広と なる略逆テーパー形状となっている。凸部 21の材料としては、衝撃や応力緩和の観 点から、軟らかい材質のもの、例えば、ノボラック榭脂、アクリル榭脂又はポリイミド榭 脂等の榭脂材料が用いられる。
[0044] そして、この凸部 21の働きにより、衝撃や外力等により基板 14の端部で生じた保護 膜 6のクラック 13が基板 14の内方の素子形成領域 3に及ぶのが抑制されるようにな つている。
[0045] 次に、この凸部 21によるクラック止めの原理について説明する。下記の 3つの効果 のうちのいずれ力 1つ、又は 2つないし 3つの組合せでクラック止めの効果が発揮され ているものと考えられる。
[0046] (1)基板 14の上面に突出する凸部 21の上力も保護膜 6が形成されるため、基板 1 4の外縁に衝撃や外力が与えられた際に、図 5に示すように、保護膜 6に作用する衝 撃や力の伝達方向 B1が、凸部 21が設けられる部分で大きく変化されることとなる。こ の点は、基板 14の端部で生じた保護膜 6のクラック 13の拡大を凸部 21にて止めるの に役立っているものと思われる。特に、本実施形態では凸部 21が略逆テーパー状の 断面形状を有しているため、保護膜 6に作用する衝撃や力の伝搬方向 B1が凸部 21
の下部でより大きく変化するようになっており、これによつてより大きなクラック 13の拡 大の抑止効果が期待できる。
[0047] (2)凸部 21の表面の起伏により、蒸着法、 CVD法等による保護膜 6の形成時に凸 部 21の表面の角部 21aや、凸部 21の側壁面と基板 14側の上面とにより形成される 隅部 21b等に保護膜 6の膜厚の薄い部分が必然的に生じる。その結果、その薄くな つた部分で衝撃や力の伝搬が抑制又は断絶されるため、その膜厚の薄くなつている 部分を超えて保護膜 6のクラックが拡大するのを止める効果が期待できる。特に、本 実施形態では、凸部 21が逆テーパー状の断面形状を有しているため、蒸着法や CV D法法により保護膜 6を形成する際に、凸部 21の下部(凸部 21の表面と基板 14側の 上面とにより形成される隅部 21b)の表面に形成される保護膜 6の膜厚を効果的に薄 くすることができる。その結果、その保護膜 6の膜厚の薄くなつている部分で、クラック の拡大の抑止効果を増大させることが期待できる。
[0048] (3)凸部 21が榭脂により形成されている場合、 EL装置 1の基板 14の端部に衝撃 や外力が与えられた際に、凸部 21が容易に弾性変形することにより、保護膜 6に作 用する衝撃や力が緩和されることとなる。よって、基板 14の端部で生じた保護膜 6の クラック 13を凸部 21にて止める効果を期待できる。衝撃や外力による凸部 21の弾性 変形のノリエーシヨンとしては、図 5に示すように、基板 14に平行な方向 B2に沿った 凸部 21の厚みが増減するような変形パターンや、基板 14に垂直な方向 B3に沿った 凸部 21の厚みが増減するような変形パターンや、それらの変形パターンの組み合わ せなどが考えられる。
[0049] 上記(1)を考慮すると、凸部 21は、その高さが保護膜 6の厚みよりも大きいことが好 ましい。ここで、凸部 21上における保護膜 6の厚みについて、図 12 (a)を用いて説明 する。図 12 (a)は、図 3の A2— A2断面図であって、凸部 21を拡大した図である。か 力る保護膜 6の厚みは、凸部 21の上面 21fに被着した保護膜 6の厚み t5とする。保 護膜 6の厚み t5よりも凸部 21の高さが小さいと、保護膜 6に作用する衝撃や力の伝 達方向 B1が、凸部 21の部分で変化する度合いが小さくなるおそれがあるからである
[0050] なお、凸部 21は、例えば榭脂材料力も成る場合、基板 14上に各種配線や絶縁膜
を形成した後、基板 14上に榭脂層を形成するとともに、該榭脂層を従来周知のフォト リソグラフィー技術等により加工することにより形成される。そして、凸部 21の形成後、 素子形成領域 3及び凸部 21を覆うように保護膜 6が蒸着により形成される。
[0051] なお、凸部 21は保護膜 6によって完全に覆われる必要はなぐ凸部 21の壁面で保 護膜 6が分断されていても良い。この場合、分断箇所で保護膜 6のクラックの進行は 止まるため、より好ましい。
[0052] また、基板 14上に、各有機発光素子間に配置される隔壁を形成する場合には、凸 部 21を隔壁と同一材料により形成するとともに、凸部 21と隔壁とを同一工程により一 括的に形成すれば、凸部 21を形成しても、 EL装置の製造工程の複雑ィ匕を良好に防 止し、 EL装置の生産性を高く維持することができる。
[0053] <変形例>
以下では、図 6 (a)ないし図 6 (c)及び図 7を参照して、上記実施形態に係る構成の 変形例について説明する。
[0054] 凸部 21の断面形状については、図 6 (a)及び図 6 (b)に示すように略矩形状や略順 テーパー状にしてもよぐ種々の形状が採用可能である。このような種々の凸状の断 面形状によっても、基板 14の外縁に衝撃や外力が与えられた際の保護膜 6に作用 する衝撃や力の伝達方向が、凸部 21が設けられる部分で大きく変化され、クラック 1 3の拡大抑制効果が期待できる。また、保護膜 6の成膜の際に凸部 21を構成する凸 部の外縁の角部 21a等に保護膜 6の薄い部分が生じるため、この薄くなつた部分によ りクラック 13の拡大を止める効果が期待できる。
[0055] また、凸部 21の代わりに、図 6 (c)に示すように凹部 23を設けるようにしてもよい。こ のような構成によっても、基板 14の外縁に衝撃や外力が与えられた際の保護膜 6に 作用する衝撃や力の伝達方向が、凹部 23が設けられる部分で大きく変化され、クラ ック 13の拡大抑制効果が期待できる。また、凹部 23を設けた場合であっても、保護 膜 6の成膜の際に凹部 23の外縁の角部 23a等に保護膜 6の薄い部分が生じるため、 この薄くなつた部分によりクラック 13の拡大を止める効果が期待できる。なお、凹部 2 3の深さ Gは、保護膜 6の厚みよりも大きいことが好ましい。また、凹部 23の角部 23a 同士の間隔 Sは、基板 14上に被着する保護膜 6の厚みよりも 2倍以上大きくなるよう
に形成することによって、凹部 23内に保護膜 6を被着させることができる。
[0056] ここで、凹部 23上に被着した保護膜 6の厚みについて、図 12 (b)を用いて説明す る。図 12 (b)は、図 3の A2— A2断面図であって、凹部 23を拡大した図である。かか る保護膜 6の厚みは、凹部 23の底面 23fに被着した保護膜 6のうち、上述した角部 2 3a間の中心 P1における厚み t6とする。保護膜の厚み t6よりも凹部 23の深さが小さ いと、保護膜 6に作用する衝撃や力の伝達方向 B1が、凹部 23の部分で変化する度 合!、が小さくなるおそれがある力 である。
[0057] また、図 7に示すように、凸部 21を 2重に設けるようにしてもょ 、。これによつて、基 板 14の端部で生じた保護膜 6のクラック 13が素子形成領域 3に及ぶのをより確実に 抑制することができる。さらに他の変形例として、凸部 21を 3重以上の構成で設けるよ うにしてもよい。
[0058] さらに、図 8に示すように、基板 14上に、隣り合う有機発光素子間に配置される隔 壁 24を形成するとともに、凸部 21と隔壁 24とを共に逆テーパー形状とする場合にお いて、隔壁 24よりも凸部 21の方が張り出し幅 [(張り出し幅) = (隔壁 24または凸部 21 の上面の幅) - (隔壁 24または凸部 21の下面の幅)]を大きく設定する。そして、凸部 21及び隔壁 24上に保護膜 6を、基板 14に垂直な方向から蒸着法や CVD法等によ つて形成する場合、凸部 21及び隔壁 24の上面の一部又は全部がマスクとして機能 し、凸部 21及び隔壁 24の上面の直下領域に保護膜 6を構成する材料は回り込みに くい。特に、凸部 21の張り出し幅を、隔壁 24の張り出し幅よりも大きくしたことによって 、凸部 21の直下領域は、隔壁 24の直下領域よりも保護膜 6を構成する材料が回り込 みにくい。その結果、基板 14上に形成される保護膜 6の厚みを凸部 21の側面で薄く したり、または、凸部 21によって保護膜 6を分離することができる。さらに、保護膜 6に 伝わるクラックが素子形成領域 3に及ぶ可能性をさらに低減することが可能となる。な お、隔壁 24の張り出し幅を大きくすると、素子形成領域 3内において保護膜 6が隔壁 24によって分離されるおそれがあり、この場合、保護膜 6による封止性が低下するこ と力 、隔壁 24の張り出し幅は小さい方が好ましい。したがって、隣り合う有機発光素 子間に配置される隔壁 24を形成するとともに、凸部 21と隔壁 24とを共に逆テーパー 形状とする場合において、隔壁 24よりも凸部 21の方が張り出し幅を大きく設定するこ
とが好ましい。また、保護膜 6は、素子形成領域 3内においては連続的に繋がった連 続膜として形成され、素子形成領域外にお!/ヽては複数領域に分離された形に形成さ れることが好ましい。
[0059] なお、隔壁 24および凸部 21の張り出し幅を上述のように設定するためには、従来 周知の薄膜形成技術を採用することにより容易に行うことができる。ネガレジスト膜等 を加工することにより隔壁 24及び凸部 21を形成する場合には、例えば、第 1および 第 2の方法が考えられる。
[0060] まず、第 1の方法として、図 9 1及び図 9 2に示すように、ネガレジスト膜 Rをカロェ する際に用いる露光マスク Mlの穴部 Ol周辺の領域を、穴部 Olを通過する光量よ りも少ない光量だけ通過できるハーフトーン領域 hとし、かかるハーフトーン領域 hを 隔壁 24よりも凸部 21で広くする方法がある。この方法によれば、ハーフトーン領域を 通過する光量が少ないため、かかる光 L1はネガレジスト膜 Rの下部まで届きに《な る。その結果、ハーフトーン領域 hにおけるネガレジスト膜 Rは下部が除去され、上部 が残存することとなり、張り出し幅は隔壁 24よりも凸部 21が広くなる。
[0061] また、ハーフトーン領域 hを透過する光量を穴部力 離れるにしたがって漸次小さく するようにすれば、良好な逆テーパー形状が得られる。なお、ハーフトーン領域 hを 実現する方法としては、ハーフトーン領域 hに露光機の解像度未満の直径を有する 微細な穴 02が多数形成する方法、ハーフトーン領域 hを構成する露光マスク Mlの 材料を、遮光領域 sを構成する材料よりも遮光性の低い材料とする方法、ハーフトー ン領域 hと遮光領域 sとで材料の光学濃度を調整することによりハーフトーン領域 hを 遮光領域 sよりも遮光性を低下させる方法等が考えられる。
[0062] なお、図 13に示すように、ハーフトーン領域 hを有する露光マスク Mlは、穴部 Ol の周辺領域であるハーフトーン領域 hに多数の微細な穴 02が形成されている。
[0063] 第 2の方法としては、図 10— 1〜図 10— 3に示すように、隔壁 24及び凸部 21を形 成する際にネガレジスト膜 Rの露光を複数回に分けて行う方法がある。例えば 2回の 露光を行う場合、 1回目の露光では、露光マスク M2を用いて隔壁 24及び凸部 21の 下面に対応する領域に所定の強度 (第 1の強度)で光 L2を照射する(図 10— 1参照) 。 2回目の露光では、露光マスク M3を用いて隔壁 24及び凸部 21の側壁面に対応
する領域に前記第 1の強度よりも低い強度で光 L3を照射する(図 10— 2参照)。 2回 目の露光では照射される光の強度が弱いため、レジスト膜の下部まで光が届きにくく 、レジスト膜 Rの下部は最終的に除去されるため、隔壁 24及び凸部 21は逆テーパー 形状となる。この 2回目の露光によって照射されるレジスト HRの幅を、隔壁 24に対応 する領域よりも凸部 21に対応する領域の方で広く設定すれば、張り出し幅が凸部 21 の方が隔壁 24よりも広くなる(図 10— 3参照)。
[0064] なお、第 1及び第 2の方法を説明するための図 9 1〜図 9 2、図 10— 1〜図 10 —3は、隔壁 24及び凸部 21の形成に焦点を当てるため、いずれの図面もマザ一基 板 2、隔壁 24および凸部 21以外の EL装置 1の構成を省略して表示している。
[0065] なお、露光マスク Mlを用いて、隔壁 24を形成した場合、例えば上面の幅は 7 m 力ら 12 μ mであって、下面の幅は 5 μ m力ら 10 μであって、高さは 3 μ mから 4 μ mと なるように設定されている。なお、隔壁 24を厚み方向に断面視した場合、隔壁 24の 側壁の下面に対する傾斜角度は、例えば 55度から 70度に設定されている。露光マ スク Mlのハーフトーン領域を透過する光量を調整することによって、所定形状の隔 壁を形成することができる。
[0066] さらに、図 11に示すように、凸部 21の形成箇所については、素子形成領域 3の外 周であって、シール材 4の下部に形成することができる。シール材 4から基板 14の外 縁までの間に形成されていた凸部 21を、シール材 4が形成される領域に配置する。 そして、分割ライン 11, 12の形成箇所を、より素子形成領域 3側に近づけて形成する ことができるため、分割ライン 11, 12とシール材 4との間を狭くすることができる。その 結果、 EL装置 1の非発光領域の面積を小さくすることができ、有機 ELディスプレイを 使用した各種機器の小型化に寄与することができる。
[0067] シール材 4は、上述したようにエポキシ榭脂等の弾性材料カゝら構成されており、基 板 14の外縁に衝撃や外力が与えられた際の保護膜 6に作用する衝撃や外力等の伝 搬カ シール材 4まで伝わると、そのシール材 4が弾性変形することによって、衝撃や 外力等の伝搬を緩和することができる。なお、保護膜 6に作用する衝撃や外力等の 伝搬を吸収するために、凸部 21についても、上述したようにノボラック榭脂、アクリル 榭脂又はポリイミド榭脂等の弾性変形可能な榭脂材料によって構成することが好まし
い。
[0068] また、シール材 4の下部に複数の凸部 211、 21m、 21ηを形成することによって、シ ール材 4における凸部 21の表面積を大きくし、凸部 21と保護膜 6との接触面積を大 きくすることができ、基板 14の外縁から基板 14の素子形成領域 3までの保護膜 6の 長さを大きく設定することができる。シール材 4と保護膜 6との接触面積を大きくするこ とで、シール材 4が保護膜 6に作用する衝撃や外力等の伝搬をより効果的に吸収す ることができる。また、仮に保護膜 6にクラックが発生したとしても、保護膜 6の長さを大 きくしたことによって、保護膜 6とシール材 4との界面力もの酸素又は水分が浸入する のを遅延させることができる。
[0069] また、凸部 21の形状は、基板 14の外縁から基板 14の素子形成領域 3までの保護 膜 6の長さを大きくするために、その上部が下部よりも幅狭となるテーパー形状とする ことよりも、その上部よりも下部が幅狭となる逆テーパー形状とすることが好ま 、。
[0070] さらに、シール材 4における保護膜 6の長さを大きくするために、凸部 21の厚み tlを シール材 4の厚み t2に近づけるように大きくすることが好ましい。その結果、凸部 21 上を被覆する保護膜 6の上面から、カバーガラス 5までのシール材 4の厚み t3を小さ くすることで、シール材 4の形成されている領域を少なくし、シール材 4に衝撃や外力 等が印加される機会を低減することができる。確率的にもシール材 4を通過する水分 や酸素の浸入を抑制することができる。
[0071] なお、凸部 21の厚み tlは、凸部 21上における保護膜 6の厚み t4よりも大きく形成 されており、上述したように保護膜 6がシール材 4内で分断するように設定することが できる。その結果、保護膜 6が連続的に形成されないようにすることで、保護膜 6に作 用する衝撃や外力等の伝搬を阻害することができる。
[0072] 保護膜 6に作用する衝撃や外力等は、外力等が印加された一点を中心に広がりな 力 伝搬する。し力しながら、図 11 (b)に示すように、基板 14の端部に沿って形成さ れる凸部 211、 21m、 21ηを平面視において連続的に蛇行するように設定することで 、保護膜 6に作用する衝撃や外力等の向きを部分的に変化させて、伝搬する衝撃や 外力等を打ち消しあうようにして減少させることができる。なお、凸部 211、 21m、 21η の形状は、平面視において略同一とするよりも、平面視において凸部 21が折れ曲が
る角度 αを隣接する凸部 21同士で別角度とすることで、保護膜 6に作用する衝撃や 力の向きをより効果的に変化させることができる。なお、凸部 21の形状は、従来周知 の薄膜形成技術を採用することにより容易に行うことができる。
[0073] なお、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなぐ本発明の範囲内に ぉ 、て、種々の変更 ·改良が可能であることは 、うまでもな 、。
図面の簡単な説明
[0074] [図 1]保護膜に生じるクラックについて説明するための図である。
[図 2]図 1の A1— A1断面図である。
[図 3]本発明の一実施形態に係る EL装置の分割される前の状態を示す平面図であ る。
[図 4]図 3の Α2— Α2断面図である。
[図 5]図 4の凸部の周りを拡大して示す図である。
[図 6]図 6 (a)ないし図 6 (c)は図 5に示す構成の変形例を示す断面図である。
[図 7]凸部が 2重に形成された構成を示す図である。
[図 8]本発明の変形例を示す断面図である。
[図 9-1]図 8の凸部及び隔壁を形成する第 1の方法を説明するための図である。
[図 9-2]図 8の凸部及び隔壁を形成する第 1の方法を説明するための図である。
[図 10-1]図 8の凸部及び隔壁を形成する第 2の方法を説明するための図である。
[図 10-2]図 8の凸部及び隔壁を形成する第 2の方法を説明するための図である。
[図 10-3]図 8の凸部及び隔壁を形成する第 2の方法を説明するための図である。
[図 11]本発明の変形例を示し、図 11 (a)は凸部の断面図、図 11 (b)は凸部の平面 図である。
[図 12]保護膜の厚みを示し、図 12 (a)は凸部の断面図、図 12 (b)は凹部の断面図で ある。
[図 13]ハーフトーン領域を有する露光マスクの平面図である。
符号の説明
[0075] 1 EL装置、 2 マザ一基板、 3 素子形成領域、 4 シール部、 5 カバーガラス、 6 保護膜、 11, 12 分割ライン、 13 クラック、 14 基板、 21 凸部、 22 駆動素子、
23 凹部、 24 隔壁、 Ml, M2, M3 露光マスク、 LI, L2, L3 光、 トーン領域、 s 遮光領域