WO2007083427A1 - イカを用いたねり製品の製造方法、およびイカを用いたねり製品 - Google Patents

イカを用いたねり製品の製造方法、およびイカを用いたねり製品 Download PDF

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Abstract

 本発明は、スルメイカ等のイカを用いて、魚肉から作るねり製品並みの弾力性を有するねり製品を製造する、イカを用いたねり製品の製造方法を提供することを課題とする。  本発明は、イカを用いたねり製品の製造方法であって、原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行うミンチ工程と、前記ミンチ工程後のイカ肉に対し、擂潰処理を行う擂潰工程と、前記擂潰工程中のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する有機酸塩添加工程とを備えたことを特徴としている。

Description

明 細 書
イカを用いたねり製品の製造方法、およびイカを用いたねり製品 技術分野
[0001] 本発明は、イカを用いたねり製品(例えば、蒲鋅)の製造方法、およびイカを用いた ねり製品(例えば、蒲鋅)に関するものである。
背景技術
[0002] 長崎県は、国内有数の漁獲高を誇る水産県であり、種々の魚介類が水揚げされる と共に、それらの魚介類を用いた水産加工品の製造も盛んである。中でも、県内産漁 獲物から生産されるすり身等の魚肉ねり製品は、重要な水産加工品となっている。
[0003] すり身および蒲鋅等の魚肉ねり製品の主な原料魚としては、従来からマイワシゃ以 西底曳網漁獲物 (例えば、ェソ、グチ等)(以下、「従来主原料魚」という。)が用いら れている。し力しながら、近年、これらの従来主原料魚は漁獲高が減少しているため 、魚肉ねり製品の原料魚は不足しつつあり、代替原料の開発が望まれている。
[0004] 一方、定置網等で漁獲されるスルメイ力の約三割は、その外観に傷を有して 、る。
これは、漁獲時にスルメイ力が互いに嚙み合いを起こすためである。スルメイ力は、国 内で漁獲されるイカ類の中でも最も安価である力 このようにして外観に傷を有する に至ったスルメイ力は、商品としての価値が下がり、さらに安価で取引がなされることと なる。そして、このように傷を有して安価で取引がなされたスルメイ力は、現在、養殖 魚用の餌、あるいはサキイカの原料等として利用されているにすぎず、その付加価値 向上策が求められている。
[0005] 上記のように「ねり製品」の原料は不足しており、スルメイ力(特に、外傷を有するス ルメイ力)については付加価値向上策が求められていることから、このスルメイ力を「ね り製品」の原料として用いることができれば、双方の問題点を解決することが可能とな る。
[0006] し力しながら、スルメイ力がねり製品の原料として適していないことは古くから知られ ている。具体的には、スルメイ力を原料として用いても、魚肉の場合とは大きく異なつ たポソポソした食感を有する、極めて脆いねり製品(例えば、蒲鋅)しか調製すること ができない。つまり、スルメイ力をねり製品の原料として用いることは非常に困難であ る。
[0007] 巿場には「イカ蒲鋅」と呼ばれるねり製品も存在するが、これは、単に魚肉蒲鋅の中 にイカの切身が混ぜ合わされたものである(例えば、特許文献 1参照)。
[0008] 特許文献 1 :特開平 9 168375号公報
発明の開示
発明が解決しょうとする課題
[0009] 上述したように、良好な魚肉ねり製品の原料となる原料魚 (マイワシ等の従来主原 料魚)の漁獲高は年々減少しているため、これ (従来主原料魚)にかわる代替原料( 代替原料魚)が求められている。一方では、外傷を有するスルメイ力等は、養殖魚用 の餌、あるいはサキイカの原料等として安価で取引されており、その付加価値向上策 が求められている。つまり、一方では、ねり製品の原料不足という問題が存在し、他方 では、スルメイ力等の有効な利用法が求められているという問題が存在する。
[0010] そこで、本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、スルメ イカ等のイカを用いて、魚肉から作るねり製品並みの弾力性を有するねり製品を製造 する、イカを用いたねり製品の製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は 、魚肉から作るねり製品並みの弾力性を有する、イカを用いたねり製品を提供するこ とを課題とする。
課題を解決するための手段
[0011] 本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、イカを用いたねり製品の製 造方法であって、原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行うミンチ 工程と、前記ミンチ工程後のイカ肉に対し、擂潰処理を行う擂潰工程と、前記擂潰ェ 程中のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する有機酸塩添加工程とを備えたことを特徴 としている。より具体的には、本発明は、イカを用いたねり製品の製造方法であって、 原料となるイカから採取したイカ肉に対し、比較的大きめの孔径を有するプレートを 用いてミンチ処理を行うミンチ工程と、前記ミンチ工程後のイカ肉に対し、高速カツタ を用いて擂潰処理を行う擂潰工程と、前記擂潰工程中のイカ肉に対し、有機酸塩を 添加する有機酸塩添加工程とを備えたことを特徴としている。 [0012] イカから採取したイカ肉に対してミンチ処理を行う場合、従来主原料魚等のミンチ処 理を行うのと同様の孔径(例えば、 2mm〜5mm程度)のプレートを用いると、イカの 表皮や繊維がプレートの孔に詰まってしまい、適切なミンチ処理を行うことができない (生産レベルには不適である)。プレートの目詰まりが起こると、イカ肉が排出されにく くなることから、ミンチ機のモータは過負荷状態となり、イカ肉の品温が著しく上昇する 。イカ肉の品温が上昇すると、内在する酵素(蛋白質分解酵素)が活性化するため、 従来主原料魚等を用いて形成したねり製品と比較して、極めて脆い物性のねり製品 になってしまう(物性が劣化する)。したがって、イカを用いたねり製品の製造を行う場 合には、目詰まりおよび品温上昇を防止するために、比較的大きめの孔径 (例えば、 8mn!〜 15mm程度)を有するプレートを用いてミンチ処理を行うことが好ましい。この ように、比較的大きめの孔径を有するプレートを用いてミンチ処理を行えば、ミンチ機 のプレートにおけるイカ肉(表皮、繊維)の目詰まりを回避して、イカ肉の品温の上昇 を抑えることができる。
[0013] ただし、このようにプレートの孔径を大きくすると、ミンチ工程後のイカ肉が比較的大 きい状態であるため、ミンチ工程後の可溶ィ匕に時間を要することとなる。例えば、石臼 式の擂潰機等を用いて、ミンチ工程後の擂潰処理を行うとすれば、擂潰処理に時間 を要する (石臼式の擂潰機を用いた場合には 30分程度を要する)ため、イカ肉の品 温が上昇してしまう。上述したように、イカ肉の品温が上昇すると、内在する酵素(蛋 白質分解酵素)が活性ィ匕するため、従来主原料魚等を用いて形成したねり製品と比 較して、極めて脆い物性のねり製品になってしまう。そこで、本発明においては、高速 カツタを用いて擂潰処理が行われる構成が好まし、。高速カツタ等のカツタ類を用い れば、擂潰工程の時間を 3分〜 15分程度 (石臼式の 1Z10〜1Z2程度)に短縮す ることができるため、イカ肉の品温上昇を抑え、イカ肉に内在する酵素の影響を緩和 することが可能となる。
[0014] 上述したように、イカを用いたねり製品を製造する場合には、イカ肉に内在する酵 素の働きを抑制することが重要である。そこで、本発明においては、この酵素の働き を抑制すベぐ擂潰工程中のイカに対して有機酸塩を添加する、有機酸塩添加工程 を行うこととしている。本発明によれば、このように有機酸塩添カ卩工程を行うことによつ て、イカの筋原繊維蛋白質の溶解および安定ィ匕を図ることができる。
[0015] 本発明にかかるイカを用いたねり製品の製造方法によれば、上述したような「ミンチ 工程」、「擂潰工程」、および「有機酸塩添加工程」を有するため、イカ肉の目詰まりを 防止すると共に、擂潰工程の時間を短縮することによって、イカ肉の品温の上昇を抑 制することができる。つまり、イカ肉の品温上昇の抑制と、有機酸塩の添加とによって 、イカ肉に内在する酵素の活性ィ匕を緩和することができる。カロえて、有機酸塩の添加 により、イカ肉の可溶ィ匕を促進することもできる。したがって、本発明によれば、イカ肉 に内在する酵素の影響を緩和しつつ、適切なねり製品 (例えば、蒲鋅)を製造するこ とができる。また、酵素の影響を緩和するためには、高温加熱処理 (加熱工程)する 直前までは、品温は低く保つことが好ましい。ただし、凍結状態になるとイカの筋原繊 維タンパク質は変性すること、および、 30°C以上になると、タンパク質が変性し凝固し てしまうことから、具体的には、 0°C〜30°Cに保持することが好ましい。
[0016] また、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、イカを用いたねり製 品の製造方法であって、原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行う ミンチ工程と、前記ミンチ工程後のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する第一有機酸塩 添加工程と、前記第一有機酸塩添加工程後のイカ肉を凍結して保管する凍結保管 工程と、前記凍結保管工程後のイカ肉を解凍して擂潰処理を行う擂潰工程と、前記 擂潰工程中のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する第二有機酸塩添加工程とを備え たことを特徴としている。
[0017] このような構成によれば、ねり製品の製造時において、凍結保管を行う必要がある 場合であっても、前記第一有機酸塩添加工程によって加えられた有機酸塩の作用に より、凍結保管中の品質劣化を抑えることが可能となる。すなわち、本発明によれば、 品質劣化を抑えながら、イカ肉からねり製品への製造途中で凍結保管を行うことが可 能となることから、ねり製品の安定した生産や生産効率を高めるという効果を得ること ができる。
[0018] さらに、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、イカを用いたねり製 品の製造方法であって、原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行う 第一ミンチ工程と、原料となる魚力 採取した魚肉に対し、ミンチ処理を行う第二ミン チェ程と、前記第一ミンチ工程後のイカ肉および前記第二ミンチ工程後の魚肉に対 し、擂潰処理を行う擂潰工程と、前記擂潰工程中あるいは前記第二ミンチ工程後の 魚肉に対し、有機酸塩を添加する有機酸塩添加工程とを備えたことを特徴としている 。本発明に示すように、必要に応じて、イカ肉に直接的に有機酸塩を添加するので はなぐイカ肉と混合される魚肉に対して有機酸塩を添加してもよぐあるいは擂潰ェ 程中の混合物 (イカ肉と魚肉との混合物)に対して有機酸塩を添加してもよい。つまり 、擂潰工程までの間に、何等かの手段によってイカ肉に対して有機酸塩が添加され る構成であればよい。
[0019] また、本発明にかかるイカを用いたねり製品の製造方法においては、前記擂潰ェ 程中に (前記擂潰工程中のイカ肉あるいは混合物 (イカ肉と魚肉との混合物)に対し) 食塩を添加する、食塩添加工程を有する構成が好ましい。
[0020] イカ肉に対して単に食塩を添加すると、イカ肉に内在する酵素が活性ィ匕される。し たがって、イカ肉のみを用いてねり製品を製造する場合には、従来主原料魚等を用 いてねり製品を製造する場合と同様の感覚で、食塩を添加することは好ましくない (ィ 力肉に内在する蛋白質分解酵素が食塩によって活性化し、ねり製品の物性を劣化さ せる)。し力しながら、原料の可溶化を促進すると共に、ねり製品の「味」を調えるため には、原料としてイカを用いる場合であっても、食塩を添加することが好ましい。そこ で、本発明においては、前記有機酸塩添加工程と前記食塩添加工程とを複合的に 行うこととした。このように、有機酸塩と食塩とを添加すれば、食塩を添加することによ る問題点 (酵素の活性化)を抑制して、良好な味を有するねり製品を製造することが できる。ただし、当然のことながら、食塩を添加することなぐ有機酸塩を添加して、ィ 力を用いたねり製品を製造することも可能である。
[0021] また、本発明にかかるイカを用いたねり製品の製造方法においては、前記有機酸 塩添加工程において、前記有機酸塩が約 1%〜20%添加される構成であることが好 ましい。また、高濃度の有機酸塩はイカの味を損なうため、前記有機酸塩添加工程 において添加される有機酸塩は、約 1%〜8%であることが好ましい。さらに、イカの 味が強く感じられるようにするには、約 1. 5%〜5%のより低濃度の有機酸塩を添カロ するのが好ましい。つまり、より良好なイカの味を有するねり製品を製造するためには 、より低濃度の有機酸塩を添加することが好ましい。
[0022] 本件発明者らの実験結果によれば、有機酸塩と食塩とを両方添加してねり製品の 製造を行う場合には、食塩よりも有機酸塩を多めに添加する方が、酵素の活性化の 抑制、可溶化の促進、および味の調製を適切に行うことが可能であることを確認して いる。したがって、本発明によれば、食塩が約 0. 3%〜6%添加されるのに対して、 有機酸塩が約 1. 5%〜20%添加される構成が好ましい。より具体的には、例えば、 有機酸塩としてクェン酸塩を用いる場合、クェン酸塩は、酵素の活性化の抑制、およ び、ミオシンの可溶ィ匕を行う両方の作用を有しているため、クェン酸塩の添加濃度を 基本として、味の調節を行いながら、食塩の添加量を決定した方が良い。本発明によ れば、クェン酸塩が約 1. 5%〜5%添加されるのに対して、食塩が約 0. 3%〜1. 5 %添加される構成が、最も好ましい。これらの濃度は、内在する酵素の作用を不完全 ながら抑制し、良好な弾力のねり製品が出来ると同時に、イカ肉の味を阻害しない濃 度である。
[0023] また、本発明にかかるイカを用いたねり製品の製造方法においては、前記有機酸 塩として、クェン酸塩、ダルコン酸塩、およびコハク酸塩の少なくとも一つが用いられ る構成が好ましい。
[0024] また、本発明にかかるイカを用いたねり製品の製造方法においては、前記擂潰ェ 程中のイカに対し、約 2%〜20%の澱粉を添加する澱粉添カ卩工程を有することが好 ましい。
[0025] イカを用いてねり製品を製造する場合、従来主原料魚等を用いてねり製品を製造 する場合と比較して、加熱後の離水が多い。そこで、本発明においては、前記澱粉を 添加することによって、その離水を防止した。このように澱粉を添加すれば、ねり製品 における加熱後の離水を効果的に防止すると共に、弾力性のあるねり製品を製造す ることが可能となる。 2%以上の澱粉を添加すれば、ねり製品における加熱後の離水 を効果的に防止し、弾力性のあるねり製品を製造することが可能となる。しかし、 20 %を超える澱粉を添加すると、イカ肉らしい味が感じ難くなる。また、 2%未満の澱粉 を添加しても、効果的な離水防止機能を得ることができない。これらのことから、本発 明に力かる澱粉添カ卩工程にぉ 、ては、約 2%〜20%の澱粉を添加して 、る。 [0026] また、本発明にかかるイカを用いたねり製品の製造方法においては、前記イカとし て、金属プロテアーゼを含有するイカが用いられる構成が好ましい。金属プロテア一 ゼを含有するイカとしては、例えば、スルメイ力、ソデイカ、アメリカォオアカイ力、ケン サキイカ等が用いられる。また、「イカ肉」としては、これらのイカから採取された、外套 膜肉、脚肉、および鰭肉の全て、あるいは少なくとも一つが利用される。
[0027] さらに、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、イカを用いたねり製 品の製造方法であって、原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行う ミンチ工程と、前記ミンチ工程後のイカ肉に対し、擂潰処理を行う擂潰工程と、前記 擂潰工程中のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する有機酸塩添加工程と,前記擂潰ェ 程中のイカ肉に対し、食塩を添加する食塩添加工程を備え、前記有機酸塩添加工 程にて、クェン酸塩が 1%〜8%添加され、前記食塩添カ卩工程にて食塩が 0. 3%〜 3%添加されることを特徴として 、る。
[0028] また、本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、イカを用いたねり製 品の製造方法であって、原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行う ミンチ工程と、前記ミンチ工程後のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する第一有機酸塩 添加工程と、前記第一有機酸塩添加工程後のイカ肉を凍結して保管する凍結保管 工程と、前記凍結保管工程後のイカ肉を解凍して擂潰処理を行う擂潰工程と、前記 擂潰工程中のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する第二有機酸塩添加工程と、前記 擂潰工程中のイカ肉に対し、食塩を添加する食塩添加工程とを備え、前記有機酸塩 としてクェン酸塩が用いられ、前記第一有機酸塩添加工程にて前記クェン酸塩が 0. 2%〜1. 5%添加され、前記第一有機酸塩添加工程および前記第二有機酸塩添加 工程にて前記クェン酸塩が 1%〜8%添加され、前記食塩添加工程にて前記食塩が 0. 3%〜3%添加されることを特徴としている。
[0029] イカを用いたねり製品を製造するには、イカの味を残すこと、イカ肉に内在する酵素 の働きを抑制すること、イカ肉中のミオシン (蛋白質)を溶解させること、これら 3つの 現象を同時に解決する必要があり、これは、擂潰工程中に、有機酸塩添加工程およ び食塩添加工程 (少なくとも有機酸塩添加工程)を行うことにより、可能となる。
[0030] イカの味を残すためには、添加物の量を出来る限り低く抑える必要がある。また、前 記食塩添カ卩工程においては、低濃度の食塩 (0. 3%〜1. 5%)をカ卩えた方力 イカら しい味となり、好ましい。
[0031] イカ肉中の酵素の働きを抑制するには、有機酸塩が効果を示し、有機酸塩の中で はクェン酸塩が最も効果的である。しかし、酵素の働きを完全に抑制するためには、 高濃度のクェン酸塩 (約 7%以上)が、必要である。高濃度のクェン酸塩を加えると、 イカの味が感じられないイカねり製品となる。そこで、本発明においては、有機酸塩 添加工程にて加えるクェン酸塩の添加濃度を低濃度側に調整し、イカ肉中の酵素の 働きを、不完全ながらある程度抑制する濃度に低下させることにより、イカを用いたね り製品に、イカの味を残すことが可能となる。
[0032] イカ肉中のミオシンを溶解するには、食塩が最も効果的である。しかし、食塩のみ加 えると、イカ肉中の酵素は活性化される。有機酸塩は食塩と同様に、ミオシンの溶解 作用を示し、有機酸塩の中では、クェン酸塩が最も低濃度でミオシンを溶解する作 用を有している。また、クェン酸塩力 オシンを溶解する濃度は、食塩の場合の濃度 とほぼ同じであり、クェン酸塩と食塩は、ミオシンの溶解性に協同的に働ぐつまり、 一般的なねり製品にミオシンの溶解の目的で添加されている食塩濃度である 1. 5% 以上と同様に、有機酸塩添加工程と食塩添加工程とにおけるクェン酸塩と食塩との 合計が、 1. 5%以上であれば、ミオシンを溶解することは可能である。
[0033] 本発明によれば、上述したように、クェン酸塩を加える「有機酸塩添カ卩工程」、およ び食塩を加える「食塩添加工程」を行うことによって、イカ肉中の酵素作用を調節しな がら、イカミオシンを溶解することが可能となり、さらに、イカの味を維持したねり製品 を製造することができる。
[0034] さらに、本発明に力かるイカを用いたねり製品の製造方法においては、前記クェン 酸塩の代わりに、前記クェン酸塩添カ卩量の 50%を超えない範囲で、ダルコン酸塩、 グルタミン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩等の他の有機酸塩に置き換えてもよ い。
[0035] また、本発明にかかるイカを用いたねり製品の製造方法においては、前記イカ肉の 一部を、 50%を超えない範囲で魚肉に置き換えて、前記擂潰工程を行ってもよい。
[0036] さらに、本発明にかかるイカを用いたねり製品の製造方法においては、前記擂潰ェ 程後のイカ肉を成型して加熱する加熱工程を有することが好ましい。本発明にかかる イカを用いたねり製品の製造方法にぉ 、ては、イカ肉に内在する酵素の影響を緩和 するため、加熱工程の直前までの品温は、 0°C〜30°Cの低温に保持することが好ま しい。
[0037] また、本発明にかかるイカを用いたねり製品は、上記課題を解決するためになされ たものであって、上述した!/、ずれかの方法によって得られたことを特徴として 、る。
[0038] さらに、本発明にかかるイカを用いたねり製品は、金属プロテアーゼを含有するイカ と、有機酸塩と、食塩と、澱粉とを用いて構成されたことを特徴としている。より具体的 には、本発明にかかるイカを用いたねり製品は、前記有機酸塩として、例えば、タエ ン酸塩が用いられる。
発明の効果
[0039] 本発明によれば、スルメイ力等のイカを用いて、魚肉から作るねり製品並みの弾力 性を有するねり製品を製造する、イカを用いたねり製品の製造方法を得ることができ る。また、本発明によれば、魚肉力も作るねり製品並みの弾力性を有する、イカを用 いたねり製品を得ることができる。つまり、本発明によれば、イカを用いて良好なねり 製品を製造することが可能となるため、イカ(特に、外傷を有するスルメイ力等)の付 加価値を向上させると共に、ねり製品の原料不足という問題も解決することができる。 図面の簡単な説明
[0040] [図 1]有機酸塩および食塩力イカ肉の自己消化 (筋肉に内在する酵素 (金属プロテア ーゼ)による筋肉蛋白質の分解)に及ぼす影響を示すグラフである。
[図 2]有機酸塩および食塩力 Sイカ肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフであ る。
[図 3]有機酸塩および食塩がねり製品の物性 (実際に蒲鋅状のねり製品を調製した 場合の物性)に与える影響を示したグラフである。
[図 4]有機酸塩および食塩が共存する場合において、イカ肉の自己消化 (筋肉に内 在する酵素 (金属プロテアーゼ)による筋肉蛋白質の分解)にどのような影響を及ぼ すかを示すグラフである。図 4 (a)は、クェン酸ナトリウムと食塩とが共存する場合、図 4 (b)は、ダルコン酸ナトリウムと食塩とが共存する場合、図 4 (c)は、コハク酸ナトリウ ムと食塩とが共存する場合を示して 、る。
圆 5]有機酸塩および食塩が共存する場合において、イカ肉蛋白質の溶解性にどの ような影響を及ぼすかを示すグラフである。図 5 (a)は、クェン酸ナトリウムと食塩とが 共存する場合、図 5 (b)は、ダルコン酸ナトリウムと食塩とが共存する場合、図 5 (c)は 、コハク酸ナトリウムと食塩とが共存する場合を示している。
圆 6]澱粉がイカ肉ねり製品に及ぼす影響を示すグラフである。図 6 (a)は、澱粉添加 量と離水率とを示すグラフであり、図 6 (b)は、澱粉添加量と破断強度とを示すグラフ である。
符号の説明
L11 クェン酸ナトリウム (濃度)がイカ肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L12 ダルコン酸ナトリウム (濃度)がイカ肉の自己消化に及ぼす影響を示すダラ フ
L13 コノ、ク酸ナトリウム (濃度)がイカ肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ L14 食塩 (濃度)がイカ肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L21 クェン酸ナトリウム (濃度)がイカ肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグ ラフ
L22 ダルコン酸ナトリウム (濃度)力イカ肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示す グラフ
L23 コノ、ク酸ナトリウム (濃度)カイ力肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグ ラフ
L24 食塩 (濃度)がイカ肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L31 クェン酸ナトリウム (濃度)がねり製品の物性に与える影響を示すグラフ L32 ダルコン酸ナトリウム (濃度)がねり製品の物性に与える影響を示すグラフ L34 食塩 (濃度)がねり製品の物性に与える影響を示すグラフ
L41a クェン酸ナトリウム(2. 9%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L42a クェン酸ナトリウム(7. 4%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ L43a クェン酸ナトリウム(14. 7%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L44 食塩 (濃度)がイカ肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L41b ダルコン酸ナトリウム(2. 2%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるィ 力肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L42b ダルコン酸ナトリウム(5. 5%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるィ 力肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L43b ダルコン酸ナトリウム(10. 9%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるィ 力肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L41c コハク酸ナトリウム(1. 6%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L42c コハク酸ナトリウム (4. 1%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L43c コハク酸ナトリウム (8. 1%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉の自己消化に及ぼす影響を示すグラフ
L50a クェン酸ナトリウム(1. 5%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L51a クェン酸ナトリウム(2. 9%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L52a クェン酸ナトリウム(7. 4%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L53a クェン酸ナトリウム(14. 7%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L54 食塩 (濃度)がイカ肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L51b ダルコン酸ナトリウム(2. 2%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるィ 力肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L52b ダルコン酸ナトリウム(5. 5%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるィ 力肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ L53b ダルコン酸ナトリウム(10. 9%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるィ 力肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L51c コハク酸ナトリウム(1. 6%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L52c コハク酸ナトリウム (4. 1%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L53c コハク酸ナトリウム(8. 1%)と食塩 (濃度)とが共存する場合におけるイカ 肉蛋白質の溶解性に及ぼす影響を示すグラフ
L61a 馬鈴薯製の澱粉が添加された状態のイカ肉ねり製品の離水率を示すダラ フ
L62a 小麦製の澱粉が添加された状態のイカ肉ねり製品の離水率を示すグラフ L61b 馬鈴薯製の澱粉が添加された状態のイカ肉ねり製品の破断強度を示すグ ラフ
L62b 小麦製の澱粉が添加された状態のイカ肉ねり製品の破断強度を示すダラ フ
発明を実施するための最良の形態
[0042] 以下、本発明の実施形態を説明する。
[0043] 本実施形態は、従来、養殖魚用の餌、あるいはサキイカの原料等として安価で取引 がなされて!/ヽる「スルメイ力(特に外傷を有するスルメイ力)」を用いて、「ねり製品」を製 造する技術に関するものである。つまり、本実施形態は、これまで有効利用されてい なかった「スルメイ力(特に外傷を有するスルメイ力)」を原料 (従来から用いられて ヽる マイワシ等の代替原料)として、魚肉並みの弾力性を有する良好な「ねり製品」を得る ための技術に関するものである。
[0044] 本実施形態にカゝかる「ねり製品」を製造する際の原料としては、安価で取引がなさ れている「スルメイ力(外観に傷があるもの、規格外の大きさのもの)」が用いられる。よ り具体的には、スルメイ力の肉、一定量にカットしたスルメイ力肉の残りの部分、スルメ イカの鰭や脚肉等、どのような態様の「イカ」でも用いることが可能である。
[0045] さて、先にも説明した通り、定置網で漁獲されるスルメイ力は、集中して漁獲される 際に、スルメイ力同士が嚙み合いを起こすため、外套膜等に傷のあるスルメイ力が多 数発生する。このように外傷を有するスルメイ力は、鮮魚価値が低いため、これまで付 加価値を向上させる手段が模索されてきた。その一つの手段としては、原料の外観 が製品品質に影響を及ぼさない、ねり製品化があげられる。イカ肉は、特有の風味を 有し、呈味成分を多く含むため、ねり製品としての製品化が可能であれば、魅力ある 商品となり、外傷を有するスルメイ力の付加価値を向上させることができる。
[0046] し力しながら、イカ肉からなるねり製品(例えば、蒲鋅)は、一般的な魚肉を用いたね り製品に比べると、著しく脆い物性を有し、従来からイカ肉単独でのねり製品化は困 難であるといわれている。
[0047] そこで、本件発明者らは、イカ肉からなるねり製品が著しく脆い物性を有する原因を 探るベぐ種々の実験等を行った。その結果、本件発明者らは、イカ肉からなるねり製 品が著しく脆い物性を有する原因が、ミオシン重鎖等に起因することに想到した。具 体的には、本件発明者らは、イカ肉は魚肉の場合と異なり、予備加熱を行ってもミオ シン重鎖が多量化せず、逆に予備加熱によって自己消化による分解が起こることを 確認し、これが原因となって、イカ肉力もなるねり製品が著しく脆い物性を有すること に想到した。つまり、これらの実験'検討等の結果から、本件発明者らは、イカ肉から なるねり製品の物性を向上させるためには、ミオシンの分解を抑制することが重要で あることに想到した。
[0048] ねり製品の原料として使用される魚肉では、 10°C以下の温度に維持することにより 、ミオシン重鎖の分解は起こらないが、イカ (スルメイ力)肉の場合には、内在する酵 素 (金属プロテアーゼ)の働きにより、 5°C付近の低温度保存下においても、ミオシン 重鎖が分解される。この酵素 (金属プロテアーゼ)の働きは、温度が上昇するほど活 性ィ匕されるため、通常のねり製品製造工程において、この酵素の働きを抑制し、ミオ シンの分解を抑えることは非常に困難である。
[0049] 以上のことに鑑み、本件発明者らは、食品添加物として使用可能なものの中から、 この酵素 (金属プロテアーゼ)の作用を阻害する物質を探して、その阻害物質をイカ 肉に添加すると共に、種々の工夫を凝らして、「スルメイ力(金属プロテアーゼを含有 するイカ)」単独で、良好な「ねり製品」を製造することを可能とした。本件発明者らの 実験'検討等の結果から、この阻害物質としては、有機酸塩が適用可能であることが 明ら力となった。また、有機酸塩としては、クェン酸塩、ダルコン酸塩、およびコハク酸 塩の少なくとも一つが用いられることが好ましい。さらに、イカ肉に含まれる酵素の働 きを抑えるためには、加熱処理する加熱工程の直前までの品温は、 0°C〜30°Cの低 温に保持することが好ま 、。
[0050] 以下、より具体的に、本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法につい て説明する。
[0051] <第一実施形態 >
まず、本発明の第一実施形態においては、原料として金属プロテアーゼを含有す るイカである「スルメイ力」を用いた。前処理として、このスルメイ力の内蔵、鰭部、頭脚 部を除去して、外套膜肉を採取した。なお、ねり製品の色をより白くしたい場合には、 表皮も除くことが好ましい。また、必要に応じて、鰭部、頭脚部等も併せて利用しても よい。
[0052] 次いで、採取した外套膜肉に対し、ミンチ機(肉挽機)を用いてミンチ処理を行った
(本発明の「ミンチ工程」に相当)。ここでは、穿孔されている孔径が 10mm程度のプ レートを用いてミンチ処理を行った。本実施形態においては、このプレートに穿孔さ れている孔径は、比較的大きめであることが好ましい。具体的には、プレートに穿孔さ れて 、る孔径は 8mn!〜 15mm程度であることが好まし!/、。
[0053] このように「比較的大きめ」の孔径を有するプレートを用いてミンチ工程を行えば、ィ 力肉が目詰まりを起こすことがないため、連続してミンチ処理を行うことができる。通常 、魚肉に対するミンチ処理を行う場合には、孔径が 2mn!〜 5mm程度のプレートが用 いられるが、このようなプレートを用いると、イカ肉はすぐに目詰まりを起こすため(イカ 表皮による目詰まりを起こすため)、連続的なミンチ処理を行うことができない。そこで 、本実施形態においては、上述したように、プレートに穿孔されている孔径は 8mn!〜 15mm程度であることが好まし!/、。
[0054] また、本実施形態においては、「比較的大きめ」の孔径を有するプレートを用いてミ ンチ工程を行っているため、通常の孔径(2mn!〜 5mm程度)を有するプレートを用 いる場合よりも負荷力 Sかかりにくい。したがって、イカ肉の品温上昇を抑えることができ る。例えば、 2. 5°C程度のイカ肉にミンチ処理を行う場合、 2mm程度の孔径を有す るプレートを用いた場合には、 1回のミンチ処理で品温が 5°Cを超えて 7°C程度にまで 上昇し、 2回のミンチ処理で品温は 10°Cを超える。また、 5mm程度の孔径を有する プレートを用いた場合には、 1回のミンチ処理で品温は 5°C程度となり、 2回のミンチ 処理で 8°C程度にまで上昇する。スルメイ力に内在している金属プロテアーゼは 5°C 程度でも作用するため、品温は可能な限り低温 (5°C以下)に維持したいが、上記の 通り、 2mn!〜 5mm程度の孔径を有するプレートを用いた場合には、品温上昇が激 しい。これに対して、本実施形態に力かる方法のように、孔径が 10mm程度のプレー トを用いた場合には、 3回のミンチ処理を行っても、その品温は 5°C程度までしか上昇 しない。つまり、本実施形態に力かる方法 (比較的大きめの孔径を有するプレートを 用いてのミンチ工程)によれば、イカ肉の品温上昇を抑えて、金属プロテア一ゼの影 響を緩和し、ミオシンの分解を抑制することができる。また、あまりに大きな孔径 (例え ば、 20mm以上等)を有するプレートを用いると、次の擂潰工程時における処理時間 が長くなるため、好ましくない。
[0055] 次いで、本実施形態においては、ミンチ工程後のイカ肉に対し、高速カツタを用い て擂潰処理を行った (本発明の「擂潰工程」に相当)。具体的には、ミンチ工程にて粗 めに砕いたイカ肉(ミンチ肉)を短時間(3分〜 15分程度)で細力べすることが可能な 高速カツタを用いた擂潰処理が行われる。この擂潰工程を行う場合には、イカ肉を入 れた容器の外側に冷却ジャケット等を設けることが好ましい。この冷却ジャケットを設 けることによって、品温上昇をより効果的に抑えることができる。このように、本実施形 態においては、品温上昇を抑える構成を有することが好ましぐ加熱処理する加熱ェ 程の直前までの品温は、例えば、 0°C〜30°Cの低温に保持することが好ましい。より 好ましくは、品温を、 3°C〜10°Cの低温に保持することである。
[0056] このように「高速カツタ」を用いるのは、擂潰工程に要する時間を短縮して、金属プ 口テアーゼの影響を緩和するためである。例えば、石臼式の擂潰機を用いて、同様 の擂潰工程を行うとすれば、 30分程度の時間を要するため、この間に品温が上昇し 、金属プロテアーゼが活性ィ匕してしまう。これに対し、本実施形態によれば、高速カツ タを用いることによって、短時間で擂潰工程を行うことができるため、金属プロテア一 ゼの影響を緩和し、ミオシンの分解を抑制することができる。
[0057] 次いで、本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法においては、上記 擂潰工程中に、「有機酸塩」を添加する有機酸塩添加工程が行われる。
[0058] 有機酸塩添カ卩工程を行うのは、主に金属プロテアーゼの影響を緩和するためであ る。また、有機酸塩は、金属プロテアーゼの影響を緩和させる機能と共に、イカ肉の 可溶化を促進する機能も有して!/ヽる。
[0059] 有機酸塩添カ卩工程時には、クェン酸ナトリウム、ダルコン酸ナトリウム、およびコハク 酸ナトリウムの少なくとも一つ力 擂潰工程中のイカ肉内に添加される。この際、タエ ン酸ナトリウム、ダルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウムのそれぞれを単独で添加し ても、また、これらを複合的に添加してもよい。
[0060] ここで、図 1は、有機酸塩 (有機酸ナトリウム)および食塩がイカ肉の自己消化 (筋肉 に内在する酵素 (金属プロテアーゼ)による筋肉蛋白質の分解)に及ぼす影響を示 すグラフである。この図 1においては、縦軸が HC含量 (HCとは筋肉に存在するミオ シン (蛋白質)の重鎖)を示し、横軸が添加される有機酸塩 (有機酸ナトリウム等)の濃 度(%)を示している。この図 1においては、 HC含量が高いほどミオシンが分解されて いないこととなる。
[0061] また、この図 1中において、「〇」で記された実線のグラフ L11がクェン酸ナトリウム を添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L12がダルコン酸ナトリウムを添 カロした場合を示し、「口」で記された実線のグラフ L 13がコハク酸ナトリゥムを添加した 場合を示し、「 X」で記された破線のグラフ L14が食塩 (NaCl)を添加した場合を示し ている。そして、「◊」が、コントロール (有機酸塩および食塩を添加する前のイカ肉試 料中に含まれて 、る HC含量)を示して!/、る。
[0062] この図 1に示すように、イカ肉に食塩を 0. 5%〜3%程度添加すると、 HC含量が大 きく低減することから、食塩はイカ肉の自己消化を促進していることが明らかである。 例えば、食塩の添加濃度が 0. 58%のときには HC含量が 10. 1%となり、 1. 75%の ときには HC含量が 0. 4%となり、 2. 34%のときには HC含量が 0. 8%となり、 2. 92 %のときには HC含量が 0. 9%となる。食塩の添加濃度を高めれば (例えば、 10%濃 度以上に高めれば)、食塩であっても自己消化抑制効果があるとも考えられる力 一 般的なねり製品の製造工程において、食塩の添加濃度を 3%以上にも高めることは あり得ない。したがって、ねり製品を製造する際においては、食塩はイカ肉の自己消 化を促進する作用を有するといえる。
[0063] これに対し、図 1から明らかなように、有機酸塩はイカ肉の自己消化を抑制する機 能を有する。例えば、図 1において、イカ肉中の塩濃度と同程度の食塩濃度である 0 . 58%での HC含量(10. 1%)を基準とし、これ以上の HC含量を有すれば、自己消 化抑制効果があると判断すれば、クェン酸ナトリウムの場合には約 1. 5%以上、ダル コン酸ナトリウムの場合には約 11%以上、コハク酸ナトリウムの場合には約 12%以上 添加することによって、イカ肉の自己消化を抑制することができるといえる。
[0064] 上記の通り、食塩はイカ肉の自己消化を促進するため、弾力性のあるねり製品を製 造するためには添加しな 、方が好ま 、とも考えられる力 食塩はイカ肉の蛋白質の 可溶ィ匕を行うという機能も有するため、通常、ねり製品の製造を行う際には、その添 カロは避けられない。例えば、魚肉の場合には、蛋白質の溶解のため、一般的に 1. 5 %〜3%程度の食塩を添加する。
[0065] し力しながら、本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法によれば、食 塩を添加することなぐねり製品を製造することが可能である。なぜならば、上述した ように、有機酸塩が、イカ肉の可溶ィ匕を促進する機能も有しているからである。
[0066] ここで、図 2は、有機酸塩 (有機酸ナトリウム)および食塩がイカ肉蛋白質の溶解性 に及ぼす影響を示すグラフである。この図 2においては、縦軸が濁度を示し、横軸が 添加される有機酸塩 (有機酸ナトリウム等)の濃度 (%)を示して ヽる。濁度は蛋白質 の溶解性の指標であり、数値が低い程蛋白質が溶解されていることを示すこととなる
[0067] また、この図 2中において、「〇」で記された実線のグラフ L21がクェン酸ナトリウム を添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L22がダルコン酸ナトリウムを添 カロした場合を示し、「口」で記された実線のグラフ L23がコハク酸ナトリウムを添加した 場合を示し、「 X」で記された破線のグラフ L24が食塩 (NaCl)を添加した場合を示し ている。
[0068] 先述したように、例えば、魚肉の場合には、蛋白質の溶解のため、一般的に 1. 5% 〜3%程度の食塩を添加する。図 2においては、この一般的な量の食塩を添カ卩した 場合、その濁度は「0. 5」程度となる。つまり、イカ肉を用いてねり製品を製造する場 合においても、濁度が「0. 5」程度となるくらいまで、可溶ィ匕させる必要がある。
[0069] 図 2によれば、上記濁度の条件を満たすためには、クェン酸ナトリウムであれば約 2 %〜15%程度、ダルコン酸ナトリウムであれば約 7%以上、コハク酸ナトリウムであれ ば約 4%〜16%程度が必要であることが明らかである。つまり、本実施形態によれば 、これらの有機酸塩を添加することによって、食塩を添加することなぐイカ肉蛋白質 を適切に溶解することができる。
[0070] 本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法においては、上述した「前処 理」、「ミンチ工程」、「擂潰工程」、および擂潰工程中の「有機酸塩添加工程」を経て 、イカを用いた肉糊を得ることができる。
[0071] 次いで、本実施形態においては、得られた肉糊に対して、予備加熱を行うことなぐ 直ちに高温加熱処理を行う(「加熱工程」)。ここでは、 90°C前後のお湯で 20分〜 30 分間程度ボイルする(茹でる)、あるいは 160°C〜180°C程度の油で 10分間程度揚 げる、高温加熱処理が行われる。
[0072] 本実施形態においては、上述したように、予備加熱を行うことなぐ直ちに加熱工程 を行っている。これは、予備加熱を行うと、イカ肉蛋白質が分解され、完成したねり製 品の物性が劣化するからである。
[0073] 加熱工程が終了した後は、室温に置く等して放冷し、その後、包装して製品 (イカを 用いたねり製品)とする。
[0074] 以上説明したように、本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法におい ては、イカ肉に対して悪影響(内在する酵素 (金属プロテアーゼ)の活性化)を及ぼす 食塩を用いることなぐ有機酸塩を添加することによって、良好な弾力性を有するねり 製品を得ることが可能となった。このことを、以下の図 3を用いて具体的に説明する。
[0075] 図 3は、有機酸塩 (有機酸ナトリウム)および食塩がねり製品の物性 (モデル的に蒲 鋅状のねり製品を調製した場合の物性)に与える影響を示したグラフである。この図 3 においては、縦軸が破断強度、横軸が添加される有機酸塩 (有機酸ナトリウム)の濃 度(%)を示している。破断強度については、その数値が高い程、弾力性等の物性は 優れて 、るものと考えられる。
[0076] また、この図 3中において、「〇」で記された実線のグラフ L31がクェン酸ナトリウム を添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L32がダルコン酸ナトリウムを添 カロした場合を示し、「 X」で記された破線のグラフ L34が食塩 (NaCl)を添加した場合 を示している。
[0077] この図 3に示すように、食塩を添加した場合 (グラフ L34)には、添加する濃度が増 すほど、その物性は劣化した。これは、食塩を添加することによって、金属プロテア一 ゼが活性化して、イカ肉内において自己消化が起こったためであると考えられる。
[0078] これに対し、有機酸塩を添加した場合 (グラフ L31, L32)には、添加する濃度が増 すほど、その物性は向上した。具体的には、 5%以上のクェン酸ナトリウム、および 8 %以上のダルコン酸ナトリウムを添加した場合には、無添加の場合 (縦軸上)よりも有 意(pく 0. 01)に高い値となった。
[0079] なお、本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法においては、原料の イカに対して、有機酸塩を 1. 5%〜20%程度添加することが好ましい。また、本実施 形態において、有機酸塩として「タエン酸ナトリウム」を用いる場合には、原料のイカ に対して、 1. 5%〜15%程度添加することが好ましい。また、有機酸塩として「ダルコ ン酸ナトリウム」を用いる場合には、原料のイカに対して、 7%〜20%程度添加するこ とが好ましい。さらに、有機酸塩として「コハク酸ナトリウム」を用いる場合には、原料の イカに対して、 4%〜16%程度添加することが好ましい。
[0080] <第二実施形態 >
次に、本発明の第二実施形態について説明する。
[0081] 本発明の第二実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法は、基本的には 、第一実施形態と同様の構成を有し、擂潰工程中に、食塩を添加する「食塩添加工 程」を行う点のみが、第一実施形態と異なる。そこで、以下においては、主に、この異 なる部分について説明する。
[0082] 本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法においては、第一実施形態 と同様に、「前処理」、「ミンチ工程」、および「擂潰工程」が行われ、この擂潰工程中 に、「有機酸塩添加工程」と「食塩添加工程」とが行われる。 [0083] 第一実施形態においては、イカ肉に内在する酵素 (金属プロテアーゼ)の影響を緩 和すべく有機酸塩を添加し、イカ肉蛋白質の可溶化もこの有機酸塩にて行った。つ まり、イカ肉に対して悪影響を及ぼす可能性の高い食塩を用いることなぐねり製品を 製造した。し力しながら、食塩は蛋白質の溶解作用を促すだけではなぐねり製品製 造時の「調味料」としての機能も有するため、可能であれば (悪影響を抑えることがで きれば)、添カ卩したいところである。
[0084] そこで、本件発明者らは、有機酸塩と食塩とを併用することによって、金属プロテア ーゼを活性化させると!、う食塩の悪影響を抑え、可溶化促進および調味料として食 塩を使用することを可能とした。つまり、有機酸塩と食塩とを適切な割合で添加するこ とによって、より良好なねり製品を製造することを可能とした。
[0085] ここで、図 4は、有機酸塩 (有機酸ナトリウム)および食塩が共存する場合において、 イカ肉の自己消化 (筋肉に内在する酵素 (金属プロテアーゼ)による筋肉蛋白質の分 解)にどのような影響を及ぼすかを示すグラフである。図 4 (a)は、クェン酸ナトリウムと 食塩とが共存する場合、図 4 (b)は、ダルコン酸ナトリウムと食塩とが共存する場合、 図 4 (c)は、コハク酸ナトリウムと食塩とが共存する場合を示している。この図 4におい ては、縦軸が HC含量 (HCとは筋肉に存在するミオシン (蛋白質)の重鎖)を示し、横 軸が添加される食塩の濃度(%)を示している。この図 1においては、 HC含量が高い ほどミオシンが分解されて ヽな 、こととなる。
[0086] 図 4 (a)中においては、「〇」で記された実線のグラフ L41aが 2. 9%のクェン酸ナト リウムを添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L42aが 7. 4%のクェン酸 ナトリウムを添加した場合を示し、「口」で記された実線のグラフ L43aが 14. 7%のク ェン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「 X」で記された破線のグラフ L44が食塩 (N aCl)を添加した場合を示している。そして、「◊」が、コントロール (有機酸塩および食 塩を添加する前のイカ肉試料中に含まれて 、る HC含量)を示して 、る。
[0087] また、図 4 (b)中においては、「〇」で記された実線のグラフ L41bが 2. 2%のダルコ ン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L42bが 5. 5%の ダルコン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「口」で記された実線のグラフ L43bが 10 . 9%のダルコン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「X」で記された破線のグラフ L4 4が食塩 (NaCl)を添カ卩した場合を示して!/、る。
[0088] さらに、図 4 (c)中においては、「〇」で記された実線のグラフ L41cが 1. 6%のコハ ク酸ナトリウムを添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L42cが 4. 1%の コハク酸ナトリウムを添加した場合を示し、「口」で記された実線のグラフ L43cが 8. 1 o/oのコハク酸ナトリウムを添加した場合を示し、「 X」で記された破線のグラフ L44が 食塩 (NaCl)を添カ卩した場合を示して!/、る。
[0089] この図 4から明らかなように、食塩のみを添加する場合と比較して、有機酸塩と食塩 とを併用した場合の方が、イカ肉の自己消化を抑制することがわかる。例えば、クェン 酸ナトリウムを併用した場合は、食塩濃度に関係なぐ自己消化抑制効果を有するこ とが明ら力となった(図 4 (a)参照)。また、ダルコン酸ナトリウム、あるいはコハク酸ナト リウムを併用した場合も、食塩のみを添加した場合よりも、自己消化抑制効果を有す る傾向があることが明らかとなった(図 4 (b)、図 4 (c)参照)。
[0090] 次に、食塩と有機酸塩 (有機酸ナトリウム)とを併用した場合におけるイカ肉蛋白質 の溶解性にっ 、て説明する。
[0091] ここで、図 5は、有機酸塩 (有機酸ナトリウム)および食塩が共存する場合において、 イカ肉蛋白質の溶解性にどのような影響を及ぼすかを示すグラフである。図 5 (a)は、 クェン酸ナトリウムと食塩とが共存する場合、図 5 (b)は、ダルコン酸ナトリウムと食塩と が共存する場合、図 5 (c)は、コハク酸ナトリウムと食塩とが共存する場合を示してい る。この図 5においては、縦軸が濁度を示し、横軸が添加される食塩の濃度(%)を示 している。濁度は蛋白質の溶解性の指標であり、数値が低い程蛋白質が溶解されて 、ることを示すこととなる。
[0092] 図 5 (a)中においては、「◊」で記された実線のグラフ L50aが 1. 5%のクェン酸ナト リウムを添加した場合を示し、「〇」で記された実線のグラフ L51aが 2. 9%のクェン酸 ナトリウムを添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L52aが 7. 4%のタエ ン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「口」で記された実線のグラフ L53aが 14. 7% のクェン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「 X」で記された破線のグラフ L54が食 塩 (NaCl)を添カ卩した場合を示して!/、る。
[0093] また、図 5 (b)中においては、「〇」で記された実線のグラフ L51bが 2. 2%のダルコ ン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L52bが 5. 5%の ダルコン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「口」で記された実線のグラフ L53bが 10 . 9%のダルコン酸ナトリウムを添加した場合を示し、「X」で記された破線のグラフ L4 4が食塩 (NaCl)を添カ卩した場合を示して!/、る。
[0094] さらに、図 5 (c)中においては、「〇」で記された実線のグラフ L51cが 1. 6%のコハ ク酸ナトリウムを添加した場合を示し、「△」で記された実線のグラフ L52cが 4. 1%の コハク酸ナトリウムを添加した場合を示し、「口」で記された実線のグラフ L53cが 8. 1 o/oのコハク酸ナトリウムを添加した場合を示し、「 X」で記された破線のグラフ L44が 食塩 (NaCl)を添カ卩した場合を示して!/、る。
[0095] この図 5においても、先に説明した図 2と同様に、可溶化の基準を濁度「0. 5」程度 とすると、クェン酸ナトリウムの場合は、その濃度が 1. 5%の場合 (グラフ L50a)には 、食塩濃度が 1. 5%程度以上であれば、適切に蛋白質を溶解させることができる。ま た、クェン酸ナトリウムの濃度が 2. 9%、 7. 4%、 14. 7%の場合(グラフ L5 la, L52 a, L53a)には、食塩濃度に関係なぐ適切に蛋白質を溶解させることができる。
[0096] ダルコン酸ナトリウムの場合には、その濃度が 2. 2%、 5. 5%の場合 (グラフ L51b, L52b)には、食塩濃度が 1. 5%以上であれば、適切に蛋白質を溶解させることがで きる。また、ダルコン酸ナトリウムの濃度が 10. 9%の場合 (グラフ L53b)には、食塩濃 度に関係なぐ適切に蛋白質を溶解させることができる。
[0097] コハク酸ナトリウムの場合には、その濃度が 1. 6%の場合 (グラフ L51c)には、食塩 濃度が 1. 5%以上であれば、適切に蛋白質を溶解させることができる。また、コハク 酸ナトリウムの濃度が 4. 1%の場合 (グラフ L52c)には、食塩濃度が 0. 6%以上であ れば、適切に蛋白質を溶解させることができる。さらに、コノ、ク酸ナトリウムの濃度が 8 . 1%の場合 (グラフ L53c)には、食塩濃度に関係なぐ適切に蛋白質を溶解させる ことができる。
[0098] 上述したように、本実施形態に力かる方法によれば、食塩と有機酸塩 (有機酸ナトリ ゥム)とを併用することによって、イカ肉に対する悪影響 (金属プロテアーゼの活性化) を抑えつつ、イカ肉蛋白質の可溶ィ匕およびねり製品の調味料として、食塩を効果的 に利用することが可能となる。 [0099] 本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法においては、上述した「前処 理」、「ミンチ工程」、「擂潰工程」、および擂潰工程中の「有機酸塩添加工程」と「食塩 添加工程」とを経て、イカを用いた肉糊を得ることができる。
[0100] 次いで、本実施形態においては、得られた肉糊に対して、予備加熱を行うことなぐ 直ちに高温加熱処理を行う(「加熱工程」)。ここでは、 90°C前後のお湯で 20分〜 30 分間程度ボイルする(茹でる)、あるいは 160°C〜180°C程度の油で 10分間程度揚 げる、高温加熱処理が行われる。また、本実施形態においては、イカ肉に含まれる酵 素の働きを緩和するために、加熱工程の直前までは、品温を 3°C〜10°Cの低温に維 持することが好ましい。
[0101] 本実施形態においても、第一実施形態と同様、予備加熱を行うことなぐ直ちに加 熱工程を行っている。これは、予備加熱を行うと、イカ肉蛋白質が分解され、完成した ねり製品の物性が劣化するからである。
[0102] 加熱工程が終了した後は、室温に置く等して放冷し、その後、包装して製品 (イカを 用いたねり製品)とする。
[0103] 以上説明したように、本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法におい ては、有機酸塩と食塩とを併用することによって、食塩のイカ肉に対する悪影響 (金 属プロテアーゼの活性化)を緩和すると共に、食塩のねり製品に対する好影響 (溶解 作用、調味料)を利用して、よりおいしく且つ良好な弾力性を有するねり製品を得るこ とが可能となった。
[0104] なお、本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法においては、食塩と有 機酸塩とを併用する場合、原料のイカに対して、有機酸塩を約 1%〜20%添加する と共に、食塩を約 0. 3%〜6%添加することが好ましい。また、有機酸塩として「タエン 酸ナトリウム」を用いる場合には、原料のイカに対して、クェン酸ナトリウムを約 1%〜1 5%添加すると共に、食塩を約 0. 3%〜6%添加することが好ましい。また、有機酸塩 として「ダルコン酸ナトリウム」を用いる場合には、原料のイカに対して、ダルコン酸ナト リウムを約 2%〜20%添加すると共に、食塩を約 0. 3%〜6%添加することが好まし い。さらに、有機酸塩として「コハク酸ナトリウム」を用いる場合には、原料のイカに対 して、コハク酸ナトリウムを約 2%〜16%添加すると共に、食塩を約 0. 3%〜6%添加 することが好ましい。
[0105] ところで、ねり製品を食品として製造する場合には、溶解性や自己消化の抑制等も 重要であるが、このような製品の物性への影響だけではなぐ総合的な「味」というも のも重要である。そこで、上述した結果を踏まえて、イカを用いたねり製品を製造する 際における、有機酸塩の適合割合について検討した。ここでは、溶解性および自己 消化抑制に最も高い効果を示したクェン酸ナトリウムの添加を基本とした。
[0106] クェン酸ナトリウムは高濃度になるほど苦味を発現し、 10%になると食に適する味 ではないと感じられた。イカ肉の重量に対しては、クェン酸ナトリウムの添加量が 1% 〜8% (重量)であれば、イカ肉の味を損なわずに、良好な物性を保っていると判断さ れた。
[0107] そこで、クェン酸ナトリウムの添加量を 3%として、食塩添カ卩による影響を比較考量し た。クェン酸ナトリウムの添加重量に対して、 10%〜30% (重量)の食塩をカ卩えた状 態であれば、イカらしい「味」と感じられた。この食塩の添加量をクェン酸ナトリウムの 添加重量に対して 40%以上とすると、塩辛く感じられた。
[0108] また、ダルコン酸ナトリウム、コハク酸ナトリウム、グルタミン酸ナトリウム等をカ卩えるこ とにより、クェン酸ナトリウム単独で添加する場合よりも、クェン酸ナトリウムの味を目立 たなくできるのではないかと考え、それぞれ複合的な添加を試みた。具体的には、ィ 力肉に添加するクェン酸ナトリウムを 3%として、他の有機酸塩を共存させた。
[0109] その結果、クェン酸ナトリウムの添加重量に対して、 5%〜20% (重量)のクェン酸 ナトリウム以外の有機酸塩を添加した方が、好ましい味になると感じられた。この範囲 内であれば、有機酸塩の種類やその比率等は特に限定されるものではない。ただし 、グルタミン酸ナトリウムについては、クェン酸ナトリウムの添加重量に対して、 50%程 度カロえても好ま U、味になると感じられる。
[0110] <第三実施形態 >
次に、本発明の第三実施形態について説明する。
[0111] 本発明の第三実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法は、基本的には 、第一実施形態と同様の構成を有し、擂潰工程中に、澱粉を添加する「澱粉添加工 程」を行う点のみが、第一実施形態と異なる。そこで、以下においては、主に、この異 なる部分について説明する。
[0112] 本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法においては、第一実施形態 と同様に、「前処理」、「ミンチ工程」、および「擂潰工程」が行われ、この擂潰工程中 に、「有機酸塩添加工程」と「澱粉添加工程」とが行われる。
[0113] イカを用いてねり製品を製造する場合、従来主原料魚等を用いてねり製品を製造 する場合と比較して、加熱後の離水が多い。そこで、本実施形態においては、擂潰 工程中のイカ肉に澱粉を添加することによって、その離水を防止した。このように澱粉 を添加すれば、ねり製品における加熱後の離水を効果的に防止すると共に、弾力性 のあるねり製品を製造することが可能となる。
[0114] ここで、図 6は、澱粉がモデル的に調製した蒲鋅状のねり製品の品質に及ぼす影 響を示すグラフである。図 6 (a)は、澱粉添加量と離水率とを示すグラフであり、図 6 ( b)は、澱粉添加量と破断強度とを示すグラフである。図 6 (a)において、縦軸はイカ 肉ねり製品の離水率を示し、横軸は澱粉添加量を示している。図 6 (b)において、縦 軸はイカ肉ねり製品の破断強度を示し、横軸は澱粉添加量を示している。なお、本 実施形態に力かるイカ肉ねり製品は、約 3%のクェン酸ナトリウムを添加して蒲鋅状 に構成されている。つまり、本実施形態は、有機酸塩添加工程にて、約 3%のクェン 酸ナトリウムが添加された状態を示して 、る。
[0115] 図 6 (a)中においては、「◊」が澱粉が無添加状態のイカ肉ねり製品の離水率を示 し、「〇」で記された実線のグラフ L61aが馬鈴薯製の澱粉が添加された状態のイカ 肉ねり製品の離水率を示し、「△」で記された実線のグラフ L62aが小麦製の澱粉が 添加された状態のイカ肉ねり製品の離水率を示している。
[0116] また、図 6 (b)中においては、「◊」が澱粉が無添加状態のイカ肉ねり製品の破断強 度を示し、「〇」で記された実線のグラフ L61bが馬鈴薯製の澱粉が添加された状態 のイカ肉ねり製品の破断強度を示し、「△」で記された実線のグラフ L62bが小麦製の 澱粉が添加された状態のイカ肉ねり製品の破断強度を示している。
[0117] この図 6から明らかなように、馬鈴薯製あるいは小麦製のいずれの澱粉を用いる場 合であっても、 5%程度の澱粉を添加することによって、イカ肉ねり製品における加熱 後の離水をほぼ抑えることが可能となる。また、破断強度についても、澱粉の種類に かかわらず、澱粉の添加量を増せば増すほど、強度が高まることが明ら力となった。
[0118] 上述の通り、 5%程度以上の澱粉を添加すれば、イカ肉ねり製品における加熱後の 離水をほぼ完全に抑えることができる。しかしながら、あまりに多くの澱粉を添加する と、イカ肉の味を感じにくくなる。したがって、離水率を抑えて、破断強度を高めると共 に、良好な味のねり製品を得るためには、イカ肉重量に対する澱粉の添加量は、 5% 〜 10%程度であることが好ましい。
[0119] さらに、第一実施形態〜第三実施形態までの結果を総合的に判断して、本件発明 者らは、イカを用いたねり製品を製造する際には、クェン酸ナトリウム、食塩、クェン酸 ナトリウム以外の有機酸塩、および澱粉を以下に示す割合にて配合することが好まし いことに想到した。また、加熱工程の直前までは、品温を 5°C前後の低温に保持する
(1)クェン酸ナトリウム: 1%〜8% (イカ肉の重量に対して)
(2)食塩: 10%〜30% (タエン酸ナトリウムの添加重量に対して)
(3)クェン酸ナトリウム以外の有機酸塩: 5%〜20% (タエン酸ナトリウムの添加重量 に対して)
(4)澱粉: 5%〜10% (イカ肉の重量に対して)
[0120] <第四実施形態 >
次に、本発明の第四実施形態について説明する。
[0121] 本発明の第四実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製造方法は、基本的には 、第一実施形態と同様の構成を有するが、有機酸塩添加工程を二段階に分け、本発 明の第一有機酸塩添加工程の後に、イカ肉を凍結して保管する「凍結保管工程」(「 冷凍すり身化」工程)を行い、ねり製品化する際に適宜解凍して、解凍したイカ肉に 対して擂潰工程を行い、この擂潰工程時に第二有機酸塩添加工程を行う点が、第一 実施形態と異なる。より具体的には、本実施形態に力かるイカを用いたねり製品の製 造方法は、原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行うミンチ工程と、 ミンチ工程後のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する第一有機酸塩添加工程と、第一 有機酸塩添加工程後のイカ肉を凍結して保管する凍結保管工程と、凍結保管工程 後のイカ肉を解凍して擂潰処理を行う擂潰工程と、擂潰工程中のイカ肉に対し、有 機酸塩を添加する第二有機酸塩添加工程とを備えたことを特徴としている。
そこで、以下においては、主に、この異なる部分について説明する。
[0122] ねり製品を計画的に生産するためには、原料であるイカの凍結保管と併せて、擂潰 前の段階で凍結保管が出来ると、安定的に、あるいは効率的に、ねり製品を生産す ることが可能である。すなわち、原料のイカから「冷凍すり身化」までと、冷凍すり身か ら「ねり製品化」までとの、二段階に分けて、生産を行う体制が有効である。
[0123] 本実施形態においては、第一実施形態と同様に、「前処理」、および「ミンチ工程」 が行われ、このミンチ工程後に、「冷凍すり身化工程」が行われる。すり身を凍結保管 すると、すり身中のミオシンが変性する現象が、魚肉などで明らかにされており、ミオ シンが変性すると最終製品であるねり製品の物性が劣化する。そこで、本実施形態 においては、冷凍変性を防止するため、第一有機酸塩添加工程を行う。すなわち、ミ ンチ工程後のイカ肉に対し、そのイカ肉に対して添加される有機酸塩の一部(例えば 、タエン酸ナトリウムの一部(0. 2%〜1. 5%) )を添加した後に、「冷凍すり身化工程 (凍結保管工程)」が行われる。
[0124] ミオシンの冷凍変性は、冷凍すり身の品質指標ともなっており、ねり製品の弾力に 直接影響する。そこで、実際に— 20°Cで 6ヶ月間凍結保管し、クェン酸ナトリウムが ねり製品の弾力に及ぼす影響を調べ、ごく僅かな 0. 2%のクェン酸ナトリウムを凍結 保管前に加えることで、弾力を維持する効果を有することが確認された。また、クェン 酸ナトリウムが 3%以上になると、ミオシンの溶解が起こり、すり身として形を維持する ことが出来ず、現実的には利用出来ない状態であった。図 2に示したように、溶解が 起こる濃度は、クェン酸ナトリウムであれば約 2%〜15%程度、ダルコン酸ナトリウム であれば約 7%以上、コハク酸ナトリウムであれば約 4%〜16%程度が必要である。 しかしながら、本件発明者らは、凍結保管工程前の第一有機酸塩添加工程において は、図 2で示した値よりも少ない量の有機酸塩を添加することが適切であることを見出 すに至った。つまり、図 2にて示した範囲内の有機酸塩を添加しても、その後凍結保 管する場合には、すり身として形を維持できないことがある。したがって、凍結保管ェ 程前の第一有機酸塩添加工程においては、図 2にて示した範囲にかかわらず、その 値以下(図 2にて示した範囲も含む)の有機酸塩を添加することが好ましいことが明ら 力となった。例えば、第一有機酸塩添加工程にてクェン酸ナトリウムを添加する場合 には、上述したように、約 0. 2%〜3%未満のクェン酸ナトリウムを添加することが好 ましい。
[0125] 本実施形態においては、「冷凍すり身化工程 (凍結保管工程)」を行うことによって、 「イカ冷凍すり身」を得ることができる。そして、ねり製品を製造する際には、イカ冷凍 すり身を解凍し、「擂潰工程」および「第二有機酸塩添加工程」が行われる。この「第 二有機酸塩添加工程」にお 、ては、第一実施形態等の「有機酸塩添加工程」で示し た添加量から、「第一有機酸塩添加工程」にて添加した量を差し引いた残りの量の有 機酸塩 (例えば、クェン酸ナトリウム)が添加される。
[0126] なお、本実施形態においては、第二実施形態および第三実施形態にて説明した「 食塩添加工程」および「澱粉添加工程」を行うことが好ましい。このような構成とすれ ば、本実施形態は、上述した本実施形態にかかる特有の効果に加えて、第一実施 形態〜第三実施形態にて説明された効果を得ることができる。
[0127] 本件発明者らは、以上の結果を踏まえ、第一実施形態〜第四実施形態までの結 果を総合的に判断して、イカを用いたねり製品を製造する際には、クェン酸ナトリウム 、食塩、および澱粉を以下に示す割合にて配合することが好ましいことに想到した。 また、加熱工程の直前までは、品温を 5°C前後の低温に保持する。
(1)クェン酸ナトリウム (第一クェン酸ナトリウム添カ卩工程時): 0. 2%〜1. 5% (イカ肉 の重量に対して)
(2)クェン酸ナトリウム (第二クェン酸ナトリウム添カ卩工程時):0%〜2. 8% (イカ肉の 重量に対して)
(3)食塩: 10%〜30% (タエン酸ナトリウムの添加重量に対して)
(4)澱粉: 2%〜20% (イカ肉の重量に対して)
[0128] <実施例 >
次に本発明の実施例を示すが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受ける ものではなぐ前後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも 勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に含まれる。
[0129] 本実施例にお!、ては、原料として金属プロテアーゼを含有するイカである「スルメイ 力」を用いた。前処理として、このスルメイ力の内蔵、鰭部、頭脚部を除去して、外套 膜肉を採取した。
[0130] 次いで、採取した外套膜肉に対し、ミンチ機を用いてミンチ処理を行った (本発明の 「ミンチ工程」に相当)。ここでは、穿孔されている孔径が 10mmのプレートを用いてミ ンチ処理を行った。
[0131] 次いで、本実施例においては、ミンチ工程後のイカ肉に対し、高速カツタを用いて 擂潰処理を行った (本発明の「擂潰工程」に相当)。具体的には、ミンチ工程にて粗 めに砕いたイカ肉(ミンチ肉)を短時間(3分〜 15分程度)で細力べすることが可能な 高速カツタを用いた擂潰処理を行った。
[0132] 次いで、本実施例においては、上記擂潰工程中に、クェン酸ナトリウム、食塩、ダル タミン酸ナトリウム、および澱粉を以下の割合 (イカ肉の重量に対して)で添加した (本 発明の「有機酸塩添加工程」「食塩添加工程」「澱粉添加工程」に相当)。
(1)クェン酸ナトリウム: 1. 5% (イカ肉の重量に対して)
(2)グルタミン酸ナトリウム: 0. 3% (イカ肉の重量に対して)
(3)食塩: 0. 5% (イカ肉の重量に対して)
(4)澱粉 : 5% (イカ肉の重量に対して)
[0133] 次いで、本実施例においては、前処理、ミンチ工程、擂潰工程、有機酸塩添加工 程、食塩添加工程、および澱粉添加工程を経て得られたイカを用いた肉糊に対して 、予備加熱を行うことなぐ直ちに高温加熱処理 (加熱工程)を行った。ここでは、 160 °C〜180°C程度の油で 10分間程度揚げる、高温加熱処理を行った。なお、加熱ェ 程の直前までは、品温を 5°C前後の低温に保持する。
[0134] 最後に、加熱工程が終了した後は、室温に置く等して放冷し、その後、包装して製 品 (イカを用いたねり製品)が完成した。
[0135] 以上のようにして得られたねり製品に対し、官能評価(23名)を行った。
[0136] その結果、官能評価に参加した全員力 「おいしい」と評価した。また、「イカらしい」 、「イカの味がする」、「今までにない蒲鋅」等の好意的な意見が多力つた。
[0137] 本実施例にて得られた「ねり製品」の味については、官能評価の通りであり、また、 その弾力性等の物性についても、魚肉から作るねり製品並みの弾力性を有するねり 製品を得ることに成功した。
[0138] なお、本発明は上記各実施形態および上記実施例に限定されるものではなぐそ の趣旨を逸脱しな 、限りにお 、て、上記以外のものであっても必要に応じて種々の 変更を行うことが可能である。
[0139] 上記実施形態および実施例にお!、ては、原料となるイカとして「スルメイ力」を用い る場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。つまり、本発明にか 力る技術は、金属プロテアーゼを有するイカ等の魚介類を原料とするねり製品を製造 する場合には、どのような原料を利用する場合にも適用可能である。
[0140] 上記実施形態および実施例においては、クェン酸塩として「タエン酸ナトリウム」を 用いる場合について説明したが、本発明はこの構成に限定されない。つまり、本発明 にかかる技術である、金属プロテアーゼを抑制するためのクェン酸塩の作用は、陰ィ オンであるクェン酸による金属キレート作用と推定されるものであり、陽イオンの種類 は限定されるものではなぐいかなる種類のクェン酸塩を用いても適用可能である。
[0141] また、上記実施形態および実施例においては、クェン酸塩 (タエン酸ナトリウム)を 用いる場合について説明した力 本発明はこの構成に限定されない。したがって、例 えば、クェン酸塩の代わりに、クェン酸塩添カ卩量の 50%を超えない範囲で、ダルコン 酸塩、グルタミン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、乳酸塩等の他の有機酸塩に置き換え てもよい。
[0142] また、上記各実施形態および実施例においては、それぞれの製造工程時における 温度等については特に言及しな力つた力 本発明における加熱工程までの全てのェ 程にっ 、ては、可能な限り低温を保持する方が好ま U、。
[0143] また、本発明においては、必要に応じて、擂潰工程終了前に、真空ポンプ等を用い て、イカ肉内部の脱気処理を行うことが好ましい。これは、含気作用の強いイカ肉糊 中に含まれる気泡を可能な限り取り除くためである。このように、イカ肉糊中から気泡 を取り除けば、イカを原料として、より弾力性のあるねり製品を製造することができる。

Claims

請求の範囲
[1] イカを用いたねり製品の製造方法であって、
原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行うミンチ工程と、 前記ミンチ工程後のイカ肉に対し、擂潰処理を行う擂潰工程と、
前記擂潰工程中のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する有機酸塩添加工程と を備えたことを特徴とするイカを用いたねり製品の製造方法。
[2] イカを用いたねり製品の製造方法であって、
原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行うミンチ工程と、 前記ミンチ工程後のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する第一有機酸塩添加工程と 前記第一有機酸塩添加工程後のイカ肉を凍結して保管する凍結保管工程と、 前記凍結保管工程後のイカ肉を解凍して擂潰処理を行う擂潰工程と、 前記擂潰工程中のイカ肉に対し、有機酸塩を添加する第二有機酸塩添加工程と を備えたことを特徴とするイカを用いたねり製品の製造方法。
[3] イカを用いたねり製品の製造方法であって、
原料となるイカから採取したイカ肉に対し、ミンチ処理を行う第一ミンチ工程と、 原料となる魚から採取した魚肉に対し、ミンチ処理を行う第二ミンチ工程と、 前記第一ミンチ工程後のイカ肉および前記第二ミンチ工程後の魚肉に対し、擂潰 処理を行う擂潰工程と、
前記擂潰工程中、あるいは前記第二ミンチ工程後の魚肉に対し、有機酸塩を添加 する有機酸塩添加工程と
を備えたことを特徴とするイカを用いたねり製品の製造方法。
[4] 前記擂潰工程中に食塩を添加する、食塩添加工程を有する
請求項 1から 3のいずれか 1項に記載のイカを用いたねり製品の製造方法。
[5] 前記有機酸塩添加工程において、前記有機酸塩が約 1%〜20%添加される 請求項 1から 4のいずれか 1項に記載のイカを用いたねり製品の製造方法。
[6] 前記有機酸塩として、クェン酸塩、ダルコン酸塩、およびコハク酸塩の少なくとも一 つが用いられる 請求項 1から 5のいずれか 1項に記載のイカを用いたねり製品の製造方法。
[7] 前記擂潰工程中のイカ肉に対し、約 2%〜20%の澱粉を添加する澱粉添加工程 を有する
請求項 1から 6のいずれか 1項に記載のイカを用いたねり製品の製造方法。
[8] 前記イカとして、金属プロテアーゼを含有するイカが用いられる
請求項 1から 7のいずれか 1項に記載のイカを用いたねり製品の製造方法。
[9] 請求項 1から 8の 、ずれかの方法によって得られた
ことを特徴とするイカを用いたねり製品。
[10] 金属プロテアーゼを含有するイカと、有機酸塩と、食塩と、澱粉とを用いて構成され た
ことを特徴とするイカを用いたねり製品。
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