WO2006068270A1

WO2006068270A1 - 冷間塑性加工用潤滑剤組成物及びそれを用いた冷間塑性加工方法

Info

Publication number: WO2006068270A1
Application number: PCT/JP2005/023750
Authority: WO
Inventors: Keishi Matsumoto; Yasunobu Murai; Masaki Nakane; Hidenori Ogawa; Yasunari Oshimoto; Kazuyoshi Ohashi; Masahiko Fukuhara; Yuji Mishima
Original assignee: Sumitomo Metal Industries, Ltd.
Priority date: 2004-12-24
Filing date: 2005-12-26
Publication date: 2006-06-29
Also published as: ES2805345T3; EP1835012A1; JP4611014B2; BRPI0519409B1; JP2006182809A; EP1835012A4; BRPI0519409A2; EP1835012B1

Description

明細書

冷間塑性カ卩ェ方法とそのための潤滑剤組成物

技術分野

[0001] 本発明は、冷間塑性加工用潤滑剤組成物及びそれを用いた冷間塑性加工方法に関する。更に詳しくは、発ガン性、ダイォキシン発生等の問題を有する塩素系化合物を含有することなぐ潤滑条件が厳しぐ焼付きの生じやすい冷間鍛造加工及び冷間製管加工（以下、このような加工を難加工という）において良好な潤滑性及び耐焼付き性を示す、環境に適応し且つ引火しにくい冷間塑性カ卩ェ用潤滑剤組成物と、それを用いた冷間塑性加工方法とに関する。

背景技術

[0002] 従来、冷間鍛造などの冷間塑性加工用の潤滑油には、潤滑性を付与する目的で、油脂、脂肪酸、エステル等の油性剤、及び/又は硫黄系、塩素系、リン系等の極圧添加剤（EP剤）が添加されている。極圧添加剤のうち、塩素化パラフィンや塩素化脂肪酸エステル等の塩素系極圧添加剤は、他の極圧添加剤と比較して廉価である上、潤滑性能に優れ、且つ引火しにくいことから、冷間鍛造などの難力卩ェに用レ、られる潤滑剤組成物に添加されてきた。

[0003] しかし、塩素系化合物には次に述べるように、発ガン性及びダイォキシン発生という問題点を抱えている。

発ガン性に関しては、例えば、特定の塩素化パラフィンが IARC (国際ガン機構）によって 2B (発ガン性がある力もしれない物質）に指定されている。また、 EUにおいては、水生生物に対するリスクを制限するための措置が必要との観点から、金属加工用の特定の塩素化パラフィンに関し、 1 %を超える濃度で同物質を含有する製品の上市が規制されている。

[0004] 塩素系化合物を含有する潤滑油の廃液を焼却処分する場合、燃焼時に大気汚染の原因となる塩化水素（HC1)の発生や、あるいは焼却時の燃焼温度によってはダイォキシンが発生して、環境汚染を引き起こすおそれがあることが指摘されるようになつてきた。 [0005] このような健康面及び地球環境面での問題点から、多くの国で、塩素化パラフィン等の塩素系化合物を含有する金属加工用潤滑油の使用が敬遠されつつある。そこで、塩素化パラフィン等の塩素系化合物を含有しない冷間塑性加工用潤滑剤組成物が開発されてきた。

[0006] 例えば、特開平 8— 333594号には、基油に高塩基性のアルカリ土類金属塩（フエネート、カルボキシレート又はスルホネート）を分散させた鍛造用型潤滑剤が提案されている。特開平 8— 34988号には、基油に高塩基性の石油スルホネートとリン酸ェステルのカルシウム塩又は硫黄系油脂類といった極圧添加剤とを添加した潤滑油が提案されている。特開平 6— 256784号には、 ZnDTP (ジチォリン酸亜鉛）、硫化ラード等の被膜増強剤と、澱粉等の炭水化物又はその誘導体とを基油に分散させた潤滑油が提案されている。

発明の開示

[0007] しかし、上記特許文献に提案された、有機塩素系化合物を含まない潤滑剤組成物はレ、ずれも、難加工にぉレ、ては十分な潤滑性および耐焼付き性が得られないとレ、う問題点がある。したがって、塩素系化合物による環境汚染を防止すると共に、難加工においても優れた耐焼付き性を発揮し、引火しにくい金属加工用潤滑剤組成物は未だに求められている。

[0008] 本発明は、発ガン性、ダイォキシン発生等の問題を有する塩素系化合物を含有することなぐ潤滑条件が厳しぐ焼付きの生じやすい冷間鍛造加工及び冷間製管加ェ (すなわち、難加工）において良好な潤滑性及び耐焼付き性を示し、環境に適応していて且つ引火しにくい、冷間塑性加工用潤滑剤組成物と、それを用いた冷間塑性加工方法とを提供する。

[0009] 本発明は、アルカリ金属及び Z又はアルカリ土類金属の炭酸塩 (特に、特定の結晶構造を有する炭酸塩）と、アルカリ金属及び Z又はアルカリ土類金属の水酸化物とを特定の割合で含有する潤滑剤組成物が、塩素系化合物を含有しなくても、優れた耐焼付き性及び潤滑性を発揮するという知見に基づくものである。

[0010] 加工条件の厳しい塑性加工においては、潤滑油の温度が 150°C以上になることがあるが、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩の含有割合を大きくすることで、可燃性物質の含有割合を小さくすることができ、その結果、引火しにくくなる。

[0011] 本発明に係る冷間塑性加工用潤滑剤組成物は、潤滑基油中に、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩から選ばれた少なくとも 1種の炭酸塩と、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれた少なくとも 1種の水酸化物とを含有し、塩素系化合物を含有していない。この冷間塑性カ卩ェ用潤滑剤組成物は、組成物中の前記炭酸塩の含有量が 10質量％以上 100質量％未満であり、前記水酸化物の含有量は前記炭酸塩 100質量部当たり 0質量部を超え 5質量部以下であることを特徴とする。

[0012] この冷間塑性カ卩ェ用潤滑組成物は、潤滑条件が厳しぐ焼付きの生じやすい冷間鍛造加工及び冷間製管加工 (例えば、冷間ピルガー圧延加工等）においても、良好な潤滑性及び耐焼付き性を発揮することができる。また、この組成物は引火しにくレ、。更に、この組成物は、発ガン性、ダイォキシン等の問題を有する塩素系化合物が含有されていなくても優れた性能を発揮し、環境に適応している。

[0013] 本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物は下記の好適態様を包含する。

'アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、サリチレート、フエネート及びカルボキシレートから選ばれた少なくとも 1種の金属塩をさらに含有する。こうして潤滑剤組成物に清浄分散作用を付与することができる。この金属塩の含有量は、好ましくは前記炭酸塩 100質量部当たり 1〜 50質量部である。

[0014] ·硫黄原子と窒素原子又は酸素原子とが結合している炭素原子を有する有機硫黄化合物をさらに含有し、組成中の該有機硫黄化合物の含有量が 0.：!〜 50質量％である。こうして、より優れた潤滑性を得ることができる。

[0015] ·前記炭酸塩の結晶構造がアモルファス型である。より優れた耐焼付き性を得ることができる。

•前記炭酸塩の平均粒径が 0. 5 x m以下である。やはり、より優れた耐焼付き性を得ること力 Sできる。

[0016] ·前記アルカリ金属がナトリウムであり、且つ前記アルカリ土類金属がカルシウムである。使用材料が安価となり、安定して潤滑剤組成物を供給できる。

•引火点が 150°C以上である。それにより、潤滑剤組成物が高温となる加工条件の厳しい塑性カ卩ェ時にも安全に用いることができる。

[0017] 前記有機硫黄化合物は、好ましくは下記の式（1)〜（12)で表される化合物から選ばれた少なくとも 1種である：

[0018] [化 1]

[0020] 〔式中、 Xは 2〜4の整数である〕

[0021] [化 3]

[0022] 〔式中、 R及び Rは各々— CH又は— C Hであり、互いに同一であっても異なつ

1 2 3 2 5

ていてもよい〕

[0023] [化 4]

[0024] 〔式中、 Xは 1又は 2である〕

2

[0025] [化 5]

[0026] 〔式中、 Rは— C (CH ) 又は— C H である〕

3 3 3 6 11

[0027] [化 6]

[0028] [化 7]

〔式中、 χ及び xは各々 2 4の整数であり、互いに同一であっても異なっていても

3 4

よぐ R及び Rは各々—C H ― C H 又は _C(S)N(C H ) であり、互いに同

4 5 8 17 12 25 2 5 2 一であっても異なってレ、てもよレ、〕

[0030] [化 8]

[0031] 〔式中、 R及び Rは各々—CH ― C H ― C H ― C H ― C H又は—CH

6 7 3 2 5 3 7 4 9 6 5

C Hであり、互いに同一であっても異なっていてもよぐ Mは Na K又は l/2Caで

6 5

ある〕

[0032] [化 9]

[0033] 〔式中、 Rは H又は— CHであり、 Rは— C H NH又は— CH(CH ) C H NH

8 3 9 5 10 2 3 4 8 である〕

[0034] [化 10]

^RW、N入^ Ν,¹

(10)

[0035] 〔式中、 R R R 及び R は各々—CH C H C H C H又は—C H CH (C H ) C Hであり、互いに同一であっても異なっていてもよぐ Xは:!〜 4の

2 2 5 4 9 5 整数である〕

[0036] [化 11]

[0037] 〔式中、 Xは 1〜4の整数である〕

6

[0038] [化 12]

ひ2)

[0039] 〔式中、 R 及び R は各々 H、一 CH又は一 C Hであり、互いに同一であっても異

14 16 3 2 5

なっていてもよぐ R 及び R は各々— CH、― C H又は— C Hであり、互いに同

15 17 3 2 5 6 5

一であっても異なってレ、てもよレ、〕。

[0040] 本発明によれば、上記冷間塑性加工用潤滑剤組成物を用いて被加工材の冷間塑性加工を行うことを特徴とする冷間塑性加工方法も提供される。この方法によれば、使用する冷間塑性加工用潤滑剤組成物が耐焼付き及び潤滑性に優れているため、被加工材を良好に塑性加工することができる。

[0041] 本発明の冷間塑性カ卩ェ方法によれば、材質力 Sステンレス鋼、高合金鋼、アルミニゥム、銅、チタニウム、エッケノレ又はそれらの合金等である被加工材を良好に塑性カロェすること力 Sできる。

[0042] また、上述した耐焼付き及び潤滑性に優れる冷間塑性加工用潤滑剤組成物を用いるため、

•金属管、金属線、金属棒又はビレット等の塑性カ卩ェ品を安定して製造することができ、或いは

•冷間鍛造カ卩ェ又は冷間製管加工等の冷間塑性カ卩ェを安定して行うことができる。図面の簡単な説明 [0043] [図 1]しごき試験に用いた試験機を模式的に示す説明図である。

発明を実施するための最良の形態

[0044] (1)冷間塑性加工用潤滑剤組成物

本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物は、潤滑基油中に、アルカリ金属及び Z 又はアルカリ土類金属の炭酸塩 (以下、単に「炭酸塩」という）と、アルカリ金属及び/ 又はアルカリ土類金属の水酸化物（以下、単に「水酸化物」という）と、を含有し、且つ塩素系化合物を含有しない。これらの炭酸塩及び水酸化物はいずれも、基油中に分散状態で存在するが、部分的には溶解していてもよい。

[0045] 「潤滑基油」の種類には特に限定はなぐ公知の潤滑基油を使用できる。潤滑基油としては、例えば、鉱物油、油脂及び合成潤滑油等が挙げられる。鉱物油としては、灯油、軽油、スピンドル油、マシン油、ニュートラル油、タービン油、シリンダー油及び流動パラフィン等が挙げられる。油脂としては、牛脂、豚脂、ナタネ油、ヤシ油、パーム油、ヌカ油及びこれらの水素添加油等が挙げられる。合成潤滑油としては、上記油脂から得られる脂肪酸、脂肪酸とアルコールのエステル、ポリブテン等のポリ α—才レフイン、ポリエチレングリコール、ポリオールエステル等のポリオール類、ポリエーテノレ若しくはポリエステル及び高級アルコール等が挙げられる。「潤滑基油」は、 1種または 2種以上の成分力構成しうる。

[0046] 冷間塑性加ェ用潤滑剤組成物中の潤滑基油の含有量は特に限定されなレ、が、良好な潤滑性と優れた耐焼付き性を確保するには、組成物 (組成物を構成する全成分の合計量、以下同じ）に基づいて 1〜90質量％であることが好ましぐより好ましくは 5 〜80質量％、更に好ましくは 10〜70質量％、特に好ましくは 10〜60質量％である

[0047] 上記炭酸塩の「アルカリ金属」としては、リチウム、ナトリウム及びカリウム等が挙げられ、「アルカリ土類金属」としては、マグネシウム、カルシウム及びバリウム等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシゥム、炭酸カルシウム及び炭酸ノくリウム等が挙げられる。これらの中でも、廉価な塩素系化合物に替わる化合物として考慮すれば、安価であり、潤滑剤組成物を安定して供給できる炭酸ナトリウム及び/又は炭酸カルシウムが好ましレ、。炭酸塩は 1 種または 2種以上を使用できる。

[0048] 炭酸塩の結晶構造は特に限定されず、アルカリ土類金属炭酸塩の場合、例えば、パテライト型、カルサイト型及びアモルファス型等が挙げられる。結晶構造がァモルファス型である炭酸塩を使用するのが、耐焼付き性により優れる冷間塑性用潤滑剤組成物を得ることができる点で好ましい。勿論、結晶構造の異なる 2種以上の炭酸塩を併用してもよい。

[0049] 炭酸塩の平均粒径は特に限定されなレ、が、 0. 以下（通常、 0. 001 z m以上 )であることが好ましぐより好ましくは 0. 3 x m以下、更に好ましくは 0. l z m以下である。平均粒径が 0. 5 x m以下であるのが好ましいのは、耐焼付き性により優れる冷間塑性用潤滑剤組成物を得ることができるからである。

[0050] 炭酸塩の含有量は、組成物に基づいて 10質量％以上 100質量％未満 (通常、 95 質量％以下）であり、好ましくは 10〜90質量％、より好ましくは 10〜80質量％、更に好ましくは、 10〜70質量⁰ /₀、特に好ましくは 15〜65質量％である。この含有量が 10 質量％未満の場合、良好な潤滑性を有し、且つ耐焼付き性に優れる冷間塑性加工用潤滑剤組成物を得ることができない。また、潤滑剤組成物の引火点を十分に高くすることができない。

[0051] 上記水酸化物における「アルカリ金属」及び「アルカリ土類金属」としては、それぞれ、上記炭酸塩と同様のものが挙げられる。水酸化物を構成するアルカリ金属及び/ 又はアル力リ土類金属は、炭酸塩を構成するアルカリ金属及び/又はアル力リ土類金属と同じものでも、異なるものでもよい。上記水酸化物の具体例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、水酸化力ルシゥム及び水酸化バリウム等が挙げられる。水酸化物は、 1種または 2種以上を使用できる。

[0052] 水酸化物の含有量は、炭酸塩 100質量部に対する水酸化物の量で、 0質量部を超え 5質量部以下（通常、 0. 01質量部以上）であり、好ましくは 0. 05〜5質量部、より好ましくは 0. 05〜4質量部、特に好ましくは 0. 09〜3. 5質量部である。この水酸化物の含有量が 5質量部を超えると、十分な耐焼付き性を得ることができない。この水酸化物の含有量は、酸による中和滴定等の一般的な滴定法により求めることができる。

[0053] 水酸化物の含有量は、組成物に基づく含有量では、通常、 0質量％を超え 5質量 %未満、好ましくは 0. 05〜4質量％、より好ましくは 0. 05〜3質量％、更に好ましくは、 0. 05〜2質量％、特に好ましくは 0. ：!〜 1質量％である。

[0054] 水酸化物の含有量を上記範囲とすることにより、良好な潤滑性を有し、且つ耐焼付き性に優れる冷間塑性カ卩ェ用潤滑剤組成物を得ることができる。

炭酸塩及び水酸化物は、合成品でも市販品でもよい。市販品は粉体として入手すること力 Sできる。或いは、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属の炭酸塩並びに水酸化物が適当な媒体 (無機溶媒又は有機溶媒、特に潤滑基油として使用される油剤）に均一に溶解又は分散された溶液又は分散液としても入手することができる。

[0055] 本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物は、塩素系化合物を含有しない。「塩素系化合物」とは、塩素原子を含有する無機化合物及び有機化合物であり、具体的には、例えば、塩素化パラフィン及び塩素化脂肪油等の塩素系極圧添加剤、四塩化炭素、トリクロロエチレン、及び塩化メチレン等の塩素系溶媒、クロ口フルォロカーボン等の塩素含有フッ素系溶媒、並びに塩化アンモニゥムの無機塩素化合物等が挙げられる

[0056] 「塩素系化合物を含有しない」本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物は、塩素系化合物の含有量が 0質量％であることが理想的である力不純物等の不可避的含有物等により、微量の塩素系化合物を含む組成物も本発明に包含される。本発明では、冷間塑性加工用潤滑剤組成物が、組成物に基づいて 0質量％を超え 1質量％以下の塩素系化合物を含有することまで排除するものではなレ、。この場合において、塩素系化合物の含有量は、好ましくは 0. 5質量％以下、より好ましくは 0. 1質量％以下、さらにより好ましくは 0. 01質量％以下、最も好ましくは 0. 001質量％以下である。

[0057] 本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、サリチレート、フエネート並びにカルボキシレートから選ばれた少なくとも 1種の金属塩を更に含有させることができる。それにより、潤滑剤組成物に清浄分散作用を付与することができる。

[0058] この金属塩の「アルカリ金属」及び「アルカリ土類金属」については、それぞれ、前記と同様のものを挙げることができる。金属塩の「アルカリ金属」及び「アルカリ土類金属」は、炭酸塩及び/又は水酸化物を構成するアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属と同じものでもよぐ異なるものでもよい。

[0059] 「スルホネート」としては、石油スルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸等のアルキル芳香族スルホン酸、アルキルスルホン酸、ポリイソブテニルスルホン酸等のスルホン酸類のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。「サリチレート」としては、アルキルサリチル酸等のサリチル酸類のアルカリ金属塩及びアル力リ土類金属塩が挙げられる。「フエネート」としては、フエノール、アルキルフエノール等のフエネート類のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。「カルボキシレート」としては、マレインィ匕ポリブデン、脂肪酸、カルボキシ変性アクリル樹脂等のカルボン酸類のアルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩が挙げられる。金属塩は 1種または 2種以上を使用することができる。

[0060] アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のスルホネート、サリチレート、フエネート又はカルボキシレートといった金属塩は、対応する酸、すなわち、スルホン酸、サリチル酸、フエノール又はカルボン酸を溶解させた基油中に、アルカリ金属及び/又はァルカリ土類金属水酸化物（及び/又は酸化物）を含有させた系に二酸化炭素を吹き込むことにより製造することができる。

[0061] 通常はアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を過剰に使用する。その場合、製造された金属塩は、アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属炭酸塩、並びに場合により未反応のアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属水酸化物を含有し、したがって塩基性を示す。金属塩の塩基価は、系に含有させたアルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属水酸化物の量に依存し、場合によっては塩基価が 100m g— KOHZg以上の高塩基性の金属塩となる。本発明で使用する金属塩の塩基価は特に制限されない。

[0062] 本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物がスルホネートなどの金属塩を含有し、かつこの金属塩がアルカリ金属及び Z又はアルカリ土類金属の炭酸塩及び/又は水酸化物を含有してレ、る場合、この金属塩に含まれてレ、る炭酸塩及び Z又は水酸化物の量も、本発明の組成物にぉレ、て必須成分である上記の「炭酸塩」及び/又は「水酸化物」の量に含める。

[0063] 金属塩（アルカリ金属及び/又はアルカリ土類金属のスルホネート、サリチレート、フエネート及び/又はカルボキシレート）の含有量は、炭酸塩 100質量部に対する金属塩の質量 (金属塩が炭酸塩及び/又は水酸化物を含有する場合には、それらの炭酸塩及び/又は水酸化物は除外した質量)で、：!〜 50質量部であることが好ましく、より好ましくは 1〜40質量部、更に好ましくは 5〜30質量部である。この含有量が上記範囲であると、潤滑剤組成物の安定性に優れると共に、耐焼付き性を向上させることができる。

[0064] 本発明の冷間塑性カ卩ェ用潤滑剤組成物には、潤滑性をさらに向上させるために、硫黄原子と窒素原子又は酸素原子とが結合している炭素原子を有する有機硫黄化合物を更に含有させることができる。この有機硫黄化合物としては、例えば、 N = C- S、 N— C = S、 N— C_S、 N = C = S、〇 = C_ S、〇_C = S、〇_C_S及び〇=C = S等の構造部分を有する有機化合物が挙げられる。この有機硫黄化合物の好ましい具体例は上記の式（1)〜（12)で表される化合物であり、より潤滑性に優れる潤滑剤組成物を確実に得ることを可能にする。有機硫黄化合物は 1種または 2種以上を使用すること力できる。

[0065] 有機硫黄化合物の含有量は特に限定されないが、組成物に基づいて 0.：!〜 50質量％であることが好ましぐより好ましくは 1〜40質量％、更に好ましくは 5〜30質量 %である。この含有量が上記範囲内であると、潤滑性により優れた潤滑剤組成物を得ること力 Sできる。

[0066] 本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物には、上記成分以外に、一般的な塑性加ェ油剤に添加されている種々の添加剤を必要に応じて適宜含有させることができる。例えば、ヒンダードエステル、アルキルアミン等の油性剤；ポリスルフイド、硫化油脂等の有機硫黄化合物、（亜）リン酸エステル、酸性（亜）リン酸エステル等の有機リン化合物を含む極圧添加剤；ジチォリン酸亜鉛、ジチォ力ルバミン酸モリブデン等の有機金属塩;黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤;酸化防止剤、防鲭剤、防食剤等が挙げられる。黒鉛、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤は、作業環境を悪化させることがあるため、使用を控えることが好ましい。 [0067] 本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物は、塩素系化合物を含有しないので、任意添加物も塩素系化合物以外のものを使用する。しかし、塩素系化合物を含有させることによる弊害をもたらさない限り、微量で使用される任意添加物に塩素系化合物を使用することを排除するものではない。

[0068] 本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物の形態は、常温 (約 25°C)で、液状又はゲル状である。この組成物の引火点は好ましくは 150°C以上であり、より好ましくは 170 °C以上、更に好ましくは 200°C以上である。引火点が 150°C以上であると、潤滑剤組成物が高温となる加工条件の厳しい塑性カ卩ェ時にも安全に用いることができる。 (2)冷間塑性加工方法

本発明の冷間塑性加工用潤滑剤組成物を用いて被加工材の冷間塑性加工を行う場合、被力卩ェ材の材質は特に限定されない。被力卩ェ材としては、例えば、ステンレス鋼、高合金鋼、アルミニウム、銅、チタニウム、ニッケル又はそれらの合金等が挙げられる。被加工材の形状は、棒材ゃブロック材等だけでなぐ熱間鍛造後の形状物 (ギャゃシャフト等）の加工も考えられるので、特に限定されない。冷間塑性加工方法により得られる塑性加工品についても特に限定はない。塑性加工品として具体的には、例えば、金属管、金属線、金属棒又はビレット等が挙げられる。

[0069] 冷間塑性加工として具体的には、例えば、板圧延、管圧延、条鋼 (形鋼、棒線、線材)圧延、引抜き (抽伸）、鍛造等が挙げられる。特に好ましい冷間塑性加工は冷間鍛造加工又は冷間製管加工である。冷間鍛造加工及び冷間製管加工等の冷間塑性加工の条件、方法については特に限定されず、公知の装置等を用いて、適宜条件を設定して行うことができる。

実施例

[0070] 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。尚、本発明は以下の実施例に限定されるものではなレ、。また、本実施例の記載において「％」は「質量％」を、「部」は「質量部」を示す。

[0071] [1]冷間塑性加工用潤滑剤組成物の調製

表 1に示す No.：!〜 5の炭酸塩の分散液を、表示のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩及び水酸化物、並びに金属スルホネート（アルキルベンゼンスルホン酸のカルシウム塩又はナトリウム塩)を表示の含有量となるように鉱物油（精製鉱油；新日本石油社製）に分散させることにより調製した。使用したアルカリ金属又はアル力リ土類金属の炭酸塩の平均粒径及び結晶構造、並びに分散液の外観も表 1に併記する。各分散液において、炭酸塩と水酸化物とスルホネートの金属種は同一であつた。

[表 1]

上記 No.：! 5から選んだ炭酸塩の分散液と、下記 No. 1〜： 12から選んだ有機硫黄化合物を、表 2及び表 3に示す含有量となるように、鉱物油（精製鉱油；新日本石油社製）に分散させて、実施例：!〜 18及び比較例:!〜 2の各冷間塑性加工用潤滑剤組成物を調製した。表 2及び表 3には、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩の含有量、結晶構造及び平均粒径、並びにアルカリ金属又はアルカリ土類金属の炭酸塩に対する水酸化物の含有量を併記した。表 3の「 *」は、本発明の範囲外であることを示す。

[0074] 使用した有機硫黄化合物：

No. 1 前記式（1)の化合物、

No. 2 前記一般式（2)の化合物 (X = 2)、

1

No. 3 前記一般式（3)の化合物（R =R =— C H )、

1 2 2 5

No. 4 前記一般式 (4)の化合物 (X = 2)、

2

No. 5 前記一般式（5)の化合物 [R = - C (CH ) ]、

3 3 3

No. 6 前記式（6)の化合物、

No. 7 前記一般式（7)の化合物（X =x = 2、且つ R =R = C H )、

3 4 4 5 8 17

No. 8 前記一般式（8)の化合物（R =R =— C H、且つ M = l/2Ca)、

6 7 4 9

No. 9 前記一般式（9)の化合物（R =H、且つ R =— C H NH )、

8 9 5 1C 2

No. 10 :前記一般式（10)の化合物 [x = 2、且つ R 〜R = CH CH (C H )

5 10 13 2 2 5

C Hコ、

4 9

No. 11：前記一般式（11)の化合物 (x =4)、

6

No. 12 :前記一般式（12)の化合物（R =R =H、且つ R =R C H )。

14 16 15 17 6 5

[0075] 比較例 3として、不水溶性型の潤滑油（主成分:脂肪酸エステル 15%、硫化油脂 7 0%)を用いた。

[2]潤滑剤組成物の性能評価

実施例:!〜 18及び比較例:!〜 3の各塑性加工用潤滑剤組成物の性能評価を次に述べる方法で行った。

[0076] (1)小型抽伸機による鋼管の冷間抽伸試験

被加工材として外径 21. 5mm X内径 16. 04mm X長さ 750mmである鋼管（材質： SUS304)を使用した。この鋼管は、予め溶体化処理した後、酸洗により表面の粗面化処理が施されていた。小型抽伸機のダイスの口径は直径 17. 5mm,プラグはストレート部の外径が 13. 2mmのセミフロートタイプのものを使用した。この小型抽伸機による冷間抽伸加工後の減面率は 35. 6%となる。

[0077] 上記実施例:!〜 18及び比較例:!〜 3の各塑性加工用潤滑剤組成物を、上記鋼管内外表面に塗布すると共に、抽伸の直前にも、上記鋼管内外表面に上記実施例：!〜 18及び比較例 1〜 3の各塑性加工用潤滑剤組成物を供給することにより、冷間抽伸を行った。

[0078] 抽伸後の上記鋼管表面を目視で観察し、焼付きの有無を調べることにより、性能評価を行った。結果をそれぞれ表 2及び表 3に併記する。各表中の「©」は焼付きの発生がなかったことを表し、「〇」は極僅かな焼付きが発生したことを表し、「△」は僅かな焼付きが発生したことを表し、「 X」は重度の焼付きが発生したことを表す。

[0079] (2)しごき試験

図 1に示す潤滑性を評価する試験機を用いて、下記のようにしごき試験を行った。試験機 Tは、基台 7上に載置されたダイス（凹部工具、材質;超硬工具、径； 20. 85m m) 1と、鋼球 [凸部工具、材質；3¾12 (軸受け鋼）、径；1 9111111]4と、ダイス 1の上方に配置され垂直方向のストローク動作が可能なプレス機 5と、を備える。

[0080] 被加工材として、中心部に径 10mmの孔 6が形成された試験板（材質； SUS304、板厚； 2. Omm、形状；円板状） 2を使用した。試験板 2の両面に、上記実施例:!〜 18 及び比較例:!〜 3の各塑性加工用潤滑剤組成物を十分に塗布した。その後、板押さえ 3により、試験板 2をダイス 1上の中央に固定した。次いで、鋼球 4を、試験板 2の中央部の孔 6上に載置した。この載置は、ダイス 1、試験板 2、鋼球 4、プレス機 5及びシリンダロッド 8の軸心が一致するように行った。その後、プレス機 5のシリンダロッド 8の下端 81を鋼球 4にあて力 Sい、油圧シリンダを下方に伸張させ、しごき加工を行レ、、ボス部を形成した。ダイス 1と鋼球 4との間で、試験板 2がー回の加工でしごかれる割合 (しごき率）は 45%とした。電気炉を使用し、試験前にダイス 1及び鋼球 4を、予め 10 0°Cに加温しておいた。

[0081] 加工後のボス部を目視で観察し、焼付きの有無を調べることにより、性能評価を行つた。その結果をそれぞれ表 2及び表 3に併記する。各表中の「◎」は焼付きの発生がなかったことを表し、「〇」は僅かな焼付きが発生したことを表し、「△」は半面の焼付きが発生したことを表し、「 X」は重度の焼付きが発生したことを表す。

[0082] (3)引火性の評価

実施例:!〜 18及び比較例:!〜 3の各塑性加工用潤滑剤組成物の引火点を、 JIS

K2265に準じ、クリーブランド開放型引火点測定装置を用いて測定した。その結果を表 2及び表 3に併記した。

[0083] [表 2]

表 3に示すように、本発明の範囲外である比較例:!〜 3では、冷間抽伸加工後の管内表面に重度の焼付きが発生し、上記しごき試験ではボス部で焼付き疵が発生したこれに対し、表 2及び表 3に示すように、本発明の範囲内である実施例:!〜 18ではいずれも、焼付き等の表面疵を発生させずに抽伸でき、かっしごき試験でボス部に焼付き等の表面疵が発生してレ、なレ、ことを確認した。 [0086] 更に、実施例：!〜 18の潤滑剤組成物の引火点は、 150〜260°Cと高ぐ潤滑剤組成物が高温となる加工条件の厳しい塑性加工時にも安全に用いることができることが確認できた。

[0087] 本発明は、上記具体的実施例に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で各種の変更をなすことができる。

Claims

請求の範囲

[1] 潤滑基油中に、アルカリ金属炭酸塩及びアルカリ土類金属炭酸塩力選ばれた少なくとも 1種の炭酸塩と、アルカリ金属水酸化物及びアルカリ土類金属水酸化物から選ばれた少なくとも 1種の水酸化物とを含有し、塩素系化合物を含有しない冷間塑性加工用潤滑剤組成物であって、組成物中の前記炭酸塩の含有量が 10質量％以上 1 00質量％未満であり、前記水酸化物の含有量は前記炭酸塩 100質量部当たり 0質量部を超え 5質量部以下であることを特徴とする冷間塑性加工用潤滑剤組成物。

[2] アルカリ金属又はアルカリ土類金属のスルホネート、サリチレート、フエネート及び力ルポキシレートから選ばれた少なくとも 1種の金属塩を更に含有する請求項 1記載の冷間塑性加工用潤滑剤組成物。

[3] 硫黄原子と窒素原子又は酸素原子とが結合している炭素原子を有する有機硫黄化合物を更に含有し、組成中の該有機硫黄化合物の含有量が 0.：!〜 50質量％である請求項 1又は 2記載の冷間塑性加工用潤滑剤組成物。

[4] 前記炭酸塩の結晶構造がアモルファス型である請求項 1〜3のいずれかに記載の冷間塑性加工用潤滑剤組成物。

[5] 前記炭酸塩の平均粒径が 0. 5 x m以下である請求項 1〜4のいずれかに記載の冷間塑性加工用潤滑剤組成物。

[6] 前記アルカリ金属がナトリウムであり、且つ前記アルカリ土類金属がカルシウムである請求項 1〜5のいずれかに記載の冷間塑性カ卩ェ用潤滑剤組成物。

[7] 引火点が 150°C以上である請求項 1〜6のいずれかに記載の冷間塑性カ卩ェ用潤滑剤組成物。

[8] 前記金属塩の含有量が、前記炭酸塩 100質量部当たり 1〜50質量部である請求項 2記載の冷間塑性加工用潤滑剤組成物。

[9] 前記有機硫黄化合物が、下記の式（1)〜（： 12)で表される化合物から選ばれた少なくとも 1種である請求項 3記載の冷間塑性加工用潤滑剤組成物：

[化 1]

[化 2]