JP5481169B2 - 極圧潤滑剤組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、極圧潤滑剤組成物、特には、高温下あるいは高負荷による摩擦熱で高温になる接触部材間の摩擦を軽減し、焼付きを防止する極圧潤滑剤組成物、更には、該極圧潤滑剤組成物が金属表面に残留した場合でも耐食性が高く、環境へ悪影響を及ぼす金属を含まない、油性の極圧潤滑剤組成物に関する。
例えば、近年、開発の容易な油井、ガス井が減少すると共に、より高深度でかつ高温高圧の井戸が増加している。また、掘削技術の進歩に伴い、傾斜井戸、水平井戸など、より複雑な形状の井戸が増加している。これに伴い、油井管のねじ継ぎ手に対する要求、例えば、引張り、圧縮、内外圧、曲げなどの複合荷重下における気密性などの要求が益々高度化しており、使用される潤滑剤についても、ねじの締め付け又は締め戻しにおける耐焼付き性、摩擦の軽減が求められている。
また、熱間加工装置による鋼管の製造において、ビレットが穿孔機で穿孔される際には、その外面がガイドシューと接触した状態で加工される。従って、ビレット外面とガイドシューとの間の潤滑が不良の場合、ガイドシュー自体に焼付き疵が発生するだけでなく、穿孔された管の外面に焼付き疵が生じるため、高温下での潤滑を良好に保ち、焼付きを防止することが極めて重要である。
一方、このような用途に使用される従来の潤滑剤には、苛酷な条件下でも潤滑性の有る鉛、スズ等の軟らかな金属が配合されている場合が多いが、環境へ悪影響を及ぼすこれらの金属は使用が規制される動きにある。
これに対して、例えば、下記特許文献1には、酸化鉄の粉末、アクリル酸系水溶性高分子及び界面活性剤を含むステンレス鋼の熱間圧延用潤滑剤が開示されている。また、下記特許文献2には、酸化鉄、珪酸ナトリウム、澱粉類、キサンタンガムを含む熱間加工用潤滑剤が開示されている。更に、下記特許文献3には、金属酸化物粉末及び珪酸ナトリウムを含有する水溶液からなる、加熱された熱間状態の被圧延材の表面にスプレ−塗布される熱間圧延用潤滑剤が開示されている。また更に、下記特許文献4には、酸化鉄、珪酸ナトリウム、酸化カルシウムを含有する熱間塑性加工用潤滑剤が開示されている。しかしながら、これらの特許文献に開示される潤滑剤は水系であり、難加工材を穿孔する時に用いる場合には、金属間の摩擦を十分には軽減できず、焼付き防止の効果は必ずしも十分ではない。
更に、下記特許文献5には、被圧延材とガイドシューとの間に、膨潤雲母水溶液に固体潤滑剤を混合して供給しつつ圧延する方法が記載されている。しかしながら、該特許文献に開示されている潤滑剤は、水溶性であり、塗布時に突沸し剥がれてしまうという課題があり、焼付き防止効果は十分ではない。
特開平7−126684号公報 特開平11−35967号公報 特許第2638317号公報 国際公開第2007/105774号パンフレット 特開平7−284817号公報
そこで、本発明は、上記従来技術の問題を解決し、高温下あるいは高負荷による摩擦熱で高温になる接触部材間の摩擦を軽減し、焼付きを防止する極圧潤滑剤組成物、更には、かかる潤滑剤が金属表面に残留した場合でも耐食性が高く、環境へ悪影響を及ぼす金属を含まない、油性の極圧潤滑剤組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題である高温下でも摩擦を低減し、焼付きを防止する潤滑剤を開発するにあたり、環境に悪影響のあるものは使用しないとの大前提の下、各種の固体潤滑剤に着目して鋭意検討を重ねた結果、ニオブ化合物、特には炭化ニオブを添加し、半固体状にした潤滑剤組成物が有効なことを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明の極圧潤滑剤組成物は、(1)40℃における動粘度が32〜1000mm2/sの基油10〜90重量%、炭化ニオブであるニオブ化合物を1〜40質量%、並びにアミド化合物、尿素化合物、及び金属石けんの中から選ばれる1種以上の化合物1〜50質量%を含有する油性の極圧潤滑剤組成物である。ここで、油性とは、極圧潤滑剤組成物が水系ではなく油系であることを指し、実質的には水を含まず、具体的には水の含有量が1質量%以下である。
本発明の極圧潤滑剤組成物は、
(2)前記基油10〜90重量%、前記ニオブ化合物を1〜40質量%、銅化合物を1〜40質量%、並びにフッ素樹脂を1〜20質量%及び/又は炭素粉末を1〜30質量%含有してなること、
(3)前記アミド化合物、尿素化合物、及び金属石けんの中から選ばれる1種以上の化合物により半固体化されていること、
(4)前記基油に、更にモリブデン化合物、リン酸化合物、及びカルシウム系清浄剤の中から選ばれる1種以上を合計で1〜20質量%配合してなることも好ましい。なお、ここで、半固体とは、極圧潤滑剤組成物が塑性体でも液体でもないグリース状であることを指す。
また、本発明の極圧潤滑剤組成物は、(5)油井管ねじ継ぎ手用の極圧潤滑剤組成物として好適である。
本発明の極圧潤滑剤組成物を用いることにより、室温から300℃を超えるような高温まで摩擦を低減し、焼付きを防ぐことができることから、本発明の極圧潤滑剤組成物は、熱間塑性加工用、油井管ねじ継ぎ手用などの潤滑剤として有用である。
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の極圧潤滑剤組成物は基油を含み、該基油としては、鉱油系基油、合成油系基油、動植物油系基油などの潤滑油基油を用いることができる。なお、これら潤滑油基油は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。ここで、鉱油系基油としては、パラフィン鉱油、ナフテン鉱油などが挙げられ、合成油系基油としては、ポリ−α−オレフィン、ポリブテン、アルキルベンゼン、エステル、エーテル、シリコーン油などが挙げられ、動植物油系基油としては、牛脂、鯨脂、にしん油、大豆油、菜種油などが挙げられる。但し、本発明においては、ポイントとなる特性が潤滑性であり、基油の種類の差は小さい。なお、特定構造のエステルや動植物油を使用すると、基油は生分解性となり、より環境に優しいものとなる。
上記基油の40℃における動粘度は、32〜1000mm2/sの範囲であり、46〜500mm2/sの範囲が好ましい。基油の40℃における動粘度が32mm2/s未満では、基油分子の分子量が小さくなるため沸点が低く、高温下で蒸発しやすくなってしまい、一方、1000mm2/sを超えると、組成物が硬くなりすぎ、取り扱いが難しくなるからである。
また、上記基油の配合量は、10〜90質量%の範囲であり、好ましくは25〜75質量%の範囲である。極圧潤滑剤組成物中の基油の配合量が10質量%より少ないと、増ちょう剤の配合により半固体状の潤滑剤組成物とするのが難しく、一方、基油の配合量が90質量%を超えると、添加剤の配合量が少なくなるため潤滑性が不充分となる。なお、上記基油の引火点は、安全面から高いほど良く、200℃以上が好ましく、250℃以上がより好ましい。
本発明の極圧潤滑剤組成物は、金属系固体潤滑剤としてニオブ(Nb)化合物を含有する。該ニオブ化合物としては、炭化ニオブ(NbC)を用いる。また、ニオブ化合物の粒径は小さいほど良く、50μm以下が好ましく、20μm以下が更に好ましく、10μm以下がより一層好ましい。固体のニオブ化合物が好ましく、通常、粒径は0.1μm以上である。なお、本明細書での粒径は、光学式あるいは遠心式の粒径分布測定装置で測定できる平均粒径である。
上記ニオブ化合物の配合量は、1〜40質量%であり、好ましくは2〜20質量%、より好ましくは2〜10質量%である。極圧潤滑剤組成物中のニオブ化合物の配合量が1質量%より少ないと、潤滑性向上の効果がなく、一方、40質量%を超えると、他の添加剤とのバランスがとれず、効果が小さくなる。
本発明の極圧潤滑剤組成物は、その他の金属系固体潤滑剤として銅化合物を含むことが好ましい。該銅化合物としては、銅粉等の金属銅、酸化銅、硫化銅などが挙げられるが、固体状が好ましく、これらの中でも、耐焼付き性の効果が大きい点で、銅粉が好ましい。また、銅化合物の粒径は小さいほど良く、50μm以下が好ましい。通常、粒径は5μm以上である。
上記銅化合物の配合量は、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは5〜30質量%、より一層好ましくは10〜30質量%である。極圧潤滑剤組成物中の銅化合物の配合量が1質量%より少ないと、潤滑性向上の効果がなく、一方、40質量%を超えると、他の添加剤とのバランスが崩れ、その効果が小さくなる。
また、本発明の極圧潤滑剤組成物は、フッ素樹脂及び/又は炭素粉末を含むことが好ましい。ここで、フッ素樹脂及び/又は炭素粉末の配合量は、合計で1〜30質量%、特には10〜25質量%の範囲が好ましく、この範囲内であれば、潤滑性を向上させる効果が高い。
上記フッ素樹脂としては、耐熱性のフッ素樹脂が好ましく、該耐熱性のフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニル(PVF)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)、四フッ化エチレン・六フッ化プロピレン共重合体(FEP)、エチレン・四フッ化エチレン共重合体(ETFE)など種々のものがあるが、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)が好ましく、また、該PTFEの中でも、分子量が1万〜30万程度で粒径が50μm以下、融点が300℃以上のPTFEが好ましく、分子量が2万〜20万で粒径が30μm以下、融点が310〜320℃のPTFEが特に好ましい。通常、フッ素樹脂の粒径は5μm以上である。
上記フッ素樹脂の配合量は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%、より一層好ましくは2〜10質量%である。極圧潤滑剤組成物中のフッ素樹脂の配合量が1質量%より少ないと、効果がなく、一方、20質量%を超えると、他の添加剤とのバランスが悪くなり、その効果が小さくなる。
また、上記炭素粉末としては、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノホーン、ダイヤモンド、グラフェンなどが挙げられる。これらの中でも、粒径が100μm以下のグラファイトが適しており、粒径は小さいほうが良い。通常、炭素粉末の粒径は1μm以上である。
上記炭素粉末の配合量は、好ましく1〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%、より一層好ましくは5〜15質量%である。極圧潤滑剤組成物中の炭素粉末の配合量が1質量%より少ないと、効果がなく、一方、30質量%を超えると、他の添加剤とのバランスが悪くなり、その効果が小さくなる。
本発明の極圧潤滑剤組成物は、更に他の添加剤を含有することができる。ここで、その他の添加剤としては、モリブデン化合物が挙げられる。該モリブデン化合物としては、二硫化モリブデン、モリブデンジチオカーバメート、モリブデンジチオフォスフェートなどが挙げられるが、耐熱性の良い二硫化モリブデンが適しており、粒径が20μm以下のものが好ましく、その配合により摩擦が低減される。モリブデン化合物の配合量は、0.5〜20質量%の範囲が好ましく、1〜10質量%の範囲が更に好ましい。
本発明の極圧潤滑剤組成物は、上記基油に上述の添加剤を配合したものを半固体化させてなる。潤滑剤組成物を半固体化させるのに用いる増ちょう剤は、アミド化合物、尿素化合物、及び金属石けんからなる群から選択され、これら化合物(増ちょう剤)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、増ちょう剤として作用するこれら化合物の配合量は、合計で1〜50質量%の範囲であり、3〜30質量%の範囲が好ましく、8〜20質量%の範囲が特に好ましい。極圧潤滑剤組成物中のこれら化合物の総配合量が1〜50質量%の範囲であれば、潤滑剤組成物を確実に半固体化することができる。
上記増ちょう剤としては、耐熱性に優れたものが適しており、アミド化合物及び尿素化合物が好ましく、アミド化合物がより好ましい。増ちょう剤としてアミド化合物を配合することにより、常温で半固体状(ゲル状)の極圧潤滑剤組成物とすることができる。ここで、該アミド化合物はゲル化剤として作用し、本発明の極圧潤滑剤組成物に、ゲル化剤の融点を超える温度で液体になり、融点以下の温度だと半固体状(ゲル状)となる熱可逆性の温度特性を付与する。なお、金属石けん等の増ちょう剤を用いたグリースの場合は、高温下で固体が一旦融解すると、その後冷却されても元の状態には戻らず不均一となり特性が低下するが、熱可逆性ゲル状潤滑剤組成物の場合は、一旦液状になった後に冷却されたゲルでも特性が変わらず、初期の良好な特性を維持できるという特長がある。
上記アミド化合物としては、アミド基を1つ以上有する脂肪酸アミドが好ましく、特にはアミド基が1つのモノアミド及びアミド基を2つ有するビスアミドを好ましく用いることができる。上記モノアミド化合物としては、ラウリン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド、およびステアリルステアリン酸アミド、オレイルオレイン酸アミド、オレイルステアリン酸アミドなどの飽和または不飽和の長鎖脂肪酸と長鎖アミンによる置換アミド類などが挙げられる。また、上記ビスアミド化合物としては、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、メチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、m−キシリレンビスステアリン酸アミドなどが挙げられる。
上記尿素化合物としては、従来から尿素系増ちょう剤として使用されている尿素化合物の中から、任意のものを用いることができる。尿素化合物としては、ジウレア化合物、トリウレア化合物、テトラウレア化合物、ウレア・ウレタン化合物などがあり、目的に応じて適宜用いることが好ましい。尿素化合物は、耐熱性、耐水性ともに優れ、特に高温での安定性が良好なため、高温箇所に好適に用いられる。
上記金属石けんは、カルボン酸又はそのエステルをアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属等の金属水酸化物でケン化したものである。ここで、金属としては、ナトリウム、カルシウム、リチウム、アルミニウム等が好適であり、カルボン酸としては、油脂を加水分解してグリセリンを除いた粗製脂肪酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸や、12−ヒドロキシステアリン酸等のモノヒドロキシカルボン酸、アゼライン酸等の二塩基酸、テレフタル酸、サリチル酸、安息香酸等の芳香族カルボン酸などが好適である。これらは1種を単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。具体的には、12−ヒドロキシステアリン酸を用いたリチウム石けんが特に好ましい。
本発明の潤滑剤組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、従来から潤滑油、グリースなどに用いられている、アルキル土類金属系清浄剤、摩耗防止剤、極圧剤、分散剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、消泡剤などの添加剤を、より性能を向上させるために含有することができる。
上記アルカリ土類金属系清浄剤としては、マグネシウム、カルシウム、バリウム等のアルカリ土類金属を含有するもので、例えば、アルカリ土類金属のスルホネート、フェネート、サリシレートなどが挙げられる。これらの中でもカルシウム系清浄剤は、本発明に好適に用いられる。該カルシウム系清浄剤として、具体的には、カルシウムスルホネート、カルシウムフェネート、カルシウムサリシレートなどが挙げられ、特には過塩基性(塩基価が150〜500mgKOH/g、特には250〜500mgKOH/g)のものが好ましい。該清浄剤の配合量は、好ましくは0.1〜20質量%、より好ましくは1〜15質量%、より一層好ましくは5〜15質量%である。極圧潤滑剤組成物中の清浄剤の配合量が0.1質量%より少ないと、防錆、潤滑性向上の効果がなく、一方、20質量%を超えると、他の添加剤とのバランスが悪くなり、効果が小さくなる。
上記摩耗防止剤としては、リン酸エステル、酸性リン酸エステル、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸アミン塩などのリン酸化合物が挙げられる。これらのリン酸化合物は、本発明に好適に用いられる。該摩耗防止剤の配合量は、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは2〜15質量%、より一層好ましくは5〜15質量%である。極圧潤滑剤組成物中の摩耗防止剤の配合量が1質量%より少ないと、潤滑性向上の効果がなく、一方、20質量%を超えると、他の添加剤とのバランスが悪くなり、効果が小さくなる。
その他の添加剤として、極圧剤としては硫化オレフィン、硫化油脂などが使用でき、分散剤としてはポリアルケニルコハク酸イミド、ポリアルケニルコハク酸エステル及びそれぞれのホウ酸変性物などが使用できる。また、酸化防止剤としてはアミン系、フェノール系の酸化防止剤などが挙げられ、金属不活性剤としてはベンゾトリアゾールなどが挙げられ、防錆剤としてはアルケニルコハク酸エステル又は部分エステルなどが挙げられ、消泡剤としてはシリコーン化合物などが挙げられる。これらの添加剤には、鉛、亜鉛、スズなどの環境への悪影響のある金属を実質的に含まないこと、具体的にはこれらの金属成分を元素重量として合計で1質量%以下であることが好ましい。
本発明の極圧潤滑剤組成物は、上述したモリブデン化合物、リン酸化合物、及びカルシウム系清浄剤の中から選ばれる1種以上を合計で1〜20質量%含有することが好ましく、この場合、耐摩耗性、耐焼付き性が大幅に高まるとともに良好な耐食性を有する組成物となる。特に、リン酸化合物及びカルシウム系清浄剤を配合することが好ましい。
本発明の極圧潤滑剤組成物は、固体潤滑剤としてニオブ化合物を配合することにより、さらには他の添加剤との組み合わせで潤滑性を高めており、高温下あるいは高負荷による摩擦熱で高温になる接触部材間の摩擦を軽減し、焼付きを防止し、更には耐食性を確保できることから、苛酷な条件下用の潤滑剤として幅広く使用することができる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例によって何ら制限されるものではない。
〔潤滑剤組成物の調製〕
次に示す基油、増ちょう剤、添加剤を用い、表1、2の配合に従って、実施例、比較例の潤滑剤組成物を調製した。なお、比較例6としては、市販の潤滑剤であるモリペーストAS[住鉱潤滑剤(株)製]を用いた。
(A)潤滑油基油:パラフィン系鉱油基油[動粘度(40℃)97mm2/s、粘度指数98、流動点−12.5℃、引火点274℃、(株)ジャパンエナジー製]を用いた(VG100)。
(B)増ちょう剤:ビスアミドとしては、エチレンビスステアリルビスアミド(融点145℃)、リチウム石鹸としては、12−ヒドロキシステアリン酸リチウム、芳香族ジウレアとしては、アリールウレアを用いた[いずれも和光純薬工業(株)の試薬]。
(C)固体系添加剤:炭化ニオブ[NbC、三津和化学薬品(株)の試薬、純度99%以上、平均粒径1μm]、銅粉[日鉱金属(株)製、平均粒径20μm]、グラファイト[和光純薬工業(株)の試薬、平均粒径20μm]、ポリテトラフルオロエチレン[PTFE、(株)喜多村製KTL−8N、平均粒径15μm、融点316℃]、二硫化モリブデン[MoS2、住鉱潤滑剤(株)製、平均粒径1μm]を用いた。
(D)油溶性添加剤:酸性リン酸エステルとしては、亜リン酸ジオレイル、クレジル酸リン酸エステル及びそのアミン塩を含むLZ−6178、過塩基性カルシウムスルホネートとしては、カルシウム含量12質量%、塩基価が305mgKOH/gであるLZ−74A[いずれも日本ルーブリゾール(株)製]を用いた。
実施例1〜10及び比較例1〜5で使用した潤滑剤組成物を、上記A〜Dの各成分を用い、表1、2に示す配合割合(組成物全量基準での質量%)でブレンドして調製した。また、得られた潤滑剤組成物の状態を目視で観察した。このようにして得た実施例および比較例の潤滑剤組成物について、以下の方法で潤滑性能(FALEX焼付き荷重、摩耗量)、防錆性を測定、評価し、得られた結果を表1、2の下部に示した。
(FALEX試験)
・焼付き荷重:ASTM D3233を参考に、Vブロックに実施例、比較例の試料を塗布し、回転数100rpm、常温、大気中で荷重を上げ、焼付き荷重(Lbf)を測定した。
・摩耗量:ASTM D2670を参考に、Vブロックに実施例、比較例の試料を塗布し、回転数100rpm、荷重500Lbf、常温、大気中で30分摩擦させた後のピンの摩耗量(質量減、mg)を測定した。
(防錆試験)
JIS K2246(6.35中性塩水噴霧試験方法)により、実施例及び比較例の試料をJIS G3141規定の試験片(鋼板)に塗布し、温度35℃で5質量%塩水を噴霧し、90時間後の試験片(3枚)の錆発生度(平均値)を求めた。
Figure 0005481169
Figure 0005481169
表1、2から分かるように、本発明の極圧潤滑剤組成物は焼付き荷重が高く、摩耗量が少なく、耐摩耗性に優れており、極めて潤滑性の良好な潤滑剤であると言える。なお、防錆性に関しては、実施例、比較例のすべての試料が問題のないレベルであった。
本発明の極圧潤滑剤組成物は、固体潤滑剤としてニオブ化合物を配合することにより、更には他の添加剤との組み合わせで潤滑性を高めており、高温下あるいは高負荷による摩擦熱で高温になる接触部材間の摩擦を軽減し、焼付きを防止し、さらには耐食性を確保できることから、苛酷な条件下用の潤滑剤として幅広く使用することができ、特には、油井管ねじ継ぎ手用の潤滑剤として、好適に使用することができる。

Claims (5)

  1. 40℃における動粘度が32〜1000mm2/sの基油10〜90重量%、炭化ニオブであるニオブ化合物1〜40質量%、並びにアミド化合物、尿素化合物、及び金属石けんの中から選ばれる1種以上の化合物1〜50質量%を含有する油性の極圧潤滑剤組成物。
  2. 前記基油を10〜90重量%、前記ニオブ化合物を1〜40質量%、銅化合物を1〜40質量%、並びにフッ素樹脂を1〜20質量%及び/又は炭素粉末を1〜30質量%含有する請求項1に記載の極圧潤滑剤組成物。
  3. 前記アミド化合物、尿素化合物、及び金属石けんの中から選ばれる1種以上の化合物により半固体化された、請求項1又は2に記載の極圧潤滑剤組成物。
  4. 更にモリブデン化合物、リン酸化合物、及びカルシウム系清浄剤の中から選ばれる1種以上を合計で1〜20質量%含有する請求項1〜のいずれかに記載の極圧潤滑剤組成物。
  5. 油井管ねじ継ぎ手用である、請求項1〜のいずれかに記載の極圧潤滑剤組成物。
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