無機多孔体系触媒及びその触媒を用いた有機物含有排水の無害化方法 技術分野
本発明は、 湿式分解触媒に関する。 また、 本発明は、 湿式分解触媒を用いる 有機物、 特に有機酸を含む排水の無明害化方法に関する。
細
背景技術
化学工業、 食品工場またはめつき工場などから排出される排水には、 多量の 有機物、 特に有機酸が含まれることが多い。 有機物を含む排水の放出は、 湖沼 、 河川又は海を栄養過多にして水の富栄養化を起こし、 環境汚染の原因になる ため、 排水に含まれる有機物を分解除去し無害化する必要がある。 排水中の有 機物を除去する方法としては従来から、 焼却処理法、 生物処理法、 吸着除去法 または酸化処理法などが知られており、 従来はそれらの何通りかの方法の組み 合せで有機物の除去無害化を行っている (非特許文献 1 ) 。
燃焼処理法は、 排水を処理するのに化石燃料を多量に燃焼させるので、 資源 を浪費することになり、 燃料費等の処理コストが著しく高くなる等の問題を有 していた。 さらに、 燃焼処理法は、 燃焼により排出される排ガス等による二次 公害が生じる恐れがあり、 地球温暖化の原因とされる二酸化炭素、 亜硫酸ガス 、 N〇 X又は S O X等の排出量が増加するなどの問題があつた。
生物処理法は、 排水の p H、 塩濃度や有機物濃度などの水質変動や共存重金 属によつて微生物等が死滅してしまったり、 重金属で微生物が衰弱するために 作用効果が減少したりする。 このような問題を回避するために、 例えば、 処理 前に重金属の除去、 p H、 有機物濃度などの水質調整をせねばならない。 排水 の希釈または重金属の除去などの水質調整を行うためにはそれに付随して今度
は装置や運転が複雑なものとなり、 しかも、 微生物を利用した分解であるが故 に反応速度が低く、 結果として生物処理法は広大な敷地面積を必要するという 問題がある。 さらに、 生物処理法を適用すると余剰汚泥を生じ、 排水以外に余 剰汚泥を処理しなければならないという弊害もあり、 必然的に処理コストが高 くなるという問題もある。
また、 逆浸透膜を用いる方法も理論的には可能であるが、 膜自体が高価であ る上に、 処理中に膜の目詰まり現象あり、 濃縮された有機物、 重金属等を二次 処理しなければならないので、 現実には実施が困難である。
また、 吸着剤を用いた吸着除去法の場合には、 例えばその代表例の一つとし て活性炭を用いる有機物の吸着除去法がある。 この方法は有機物を含む排水に 活性炭を加えて、 活性炭に有機物を吸着させて除去するものである。 しかレ、 この方法は、 濾別した有機物の付着した活性炭の二次処理が必要になるという 問題がある。
従来の酸化剤による酸化処理法は、 除去率が最大でも 5 0 %と低く、 以上に 述べた他の処理法と併用して用いられるために工業的には有利に実施すること ははなはだ困難であった。
また、 触媒を用いた有機物の湿式酸化処理法が現在提案されているが (特許 文献 1 ) 、 水または水蒸気が触媒毒となったり、 あるいは活性が低く、 有機物 の完全分解が困難で、 例えば副生成物であるより低級な有機物が生成されるの で、 工業的に実施された例はない。
【特許文献 1】
特開 2 0 0 3— 1 0 6 8 7号公報
【非特許文献 1】
平成 1 2年 1 2月 2 0日オーム社発行 「水処理技術」 、 P . 6 4〜6 7 発明の開示
本発明は、 排水中の有機物、 特にカルボン酸やォキシカルボン酸等の有機酸 の除去効果が優れた湿式分解触媒並びにその触媒を用いる有機物含有排水の無 害化方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、 上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、 無機多孔体に F e 又は Z及び N iを担持してなる触媒の存在下に排水に含まれている有機物、 特 に有機酸を湿式分解に付すると、 その有機物、 特に有機酸の湿式分解が驚くほ ど促進されることを見出した。 本発明者らは、 さらに、 酸化剤の存在下に C、 H及び Oからなる有機物と本発明の触媒とを接触させると、 前記有機物は二酸 化炭素及ぴ水にまで分解できること、 有機物が窒素を含有している場合には N O xにまで分解できること、 さらに有機物が硫黄を含有していると S O Xにま で分解できることを知見した。 本発明者らは、 酸化剤の非存在下に有機物と本 発明の触媒とを接触させると有機物が低級炭化水素にクラッキングされること を見出した。
さらに、'本発明者らは、 有機物含有排水を酸化剤と無機多孔体に F e又は/ 及び N iを担持してなる有機物湿式分解触媒との存在下に湿式分解すると、 排 水に含まれる有機物、 特に有機酸が効率よく湿式分解されること、 その結果と して、 排水処理にかかるコストを低く抑えることができることを知見し、 従つ て、 上記した従来の問題点を一挙に解決することを見出した。
本発明者らは、 かかる種々の知見を得た後、 さらに検討を重ね、 本発明を完 成するに至った。
すなわち、 本発明は、
( 1 ) 無機多孔体に F e又は/及び N iを担持してなることを特徴とする 有機物湿式分解触媒、
( 2 ) 無機多孔体が吸着能を有することを特徴とする前記 (1 ) 記載の触 媒、
( 3 ) 無機多孔体が、 アルミナシリケ一ト、 シリカ、 ポーラス材料又はァ
ルミナであることを特徴とする前記 (1) 記載の触媒、
(4) 有機物が有機酸であることを特徴とする前記 (1) 記載の触媒、
( 5 ) 有機酸がカルボン酸又はォキシカルボン酸であることを特徴とする 前記 (4) 記載の触媒、
(6) 無機多孔体に F e又は/及び N iの金属塩を吸着させ、 ついで反応 生成物を焼成することを特徴とする有機物湿式分解触媒の製造方法、
(7) 有機物を前記 (1) 記載の触媒の存在下に湿式分解することを特徴 とする有機物の無害化方法、
(8) 排水に含有されている有機物を前記 (1) 記載の触媒の存在下に湿 式分解することを特徴とする排水の無害化方法、
(9) さらに酸化剤の存在下に湿式分解することを特徴とする前記 (7) 又は (8) に記載の無害化方法、
(10) 有機物が有機酸であり、 酸化剤が空気、 酸素、 過酸化水素又はォ ゾンであることを特徴とする前記 (9) 記載の排水の無害化方法、
(11) 加熱又は Z及び加圧下で湿式分解することを特徴とする前記 (8 ) 記載の排水の無害化方法、
(12) 加熱温度が 100 °C以上であり、 加熱時間が 0. 1秒間〜 1週間 であることを特徴とする前記 (11) 記載の排水の無害化方法、 および
(13) 前記 (8) 記載の無害化方法によって無害化されたことを特徴と する排水、
に関する。 図面の簡単な説明
第 1図は、 試験例 1、 試験例 2、 比較例 4及び比較例 9におけるキヤビラリ 一電気泳動分析装置による分析結果を示す。 この図から、 処理液に含まれてい たクェン酸が本発明の処理によって効果的に除去され、 副生物の生成も実質的
にないことが分かる。 C o 2〇3触媒の場合は、 クェン酸が残留しているのみな らず、 種々の副生物が生成していることが分かる。 又、 C o—H—モルデナィ ト触媒の場合は、 クェン酸はほぼ消失しているが、 種々の生成物が生成してい ることが分かる。
第 2図は、 試験例 3、 試験例 4および比較例 1 9のキヤピラリー電気泳動分 析装置による分析結果を示す。 第 2図中、 3つのデータがあるが、 一番上のデ —夕は、 比較例 1 9の反応溶液および分析時に添加した酒石酸の吸光度を示し、 一番下のデータは試験例 4の反応溶液および分析時に添加した酒石酸の吸光度 を示し、 これら 2つのデータの中間に位置するデータは、 試験例 3の反応溶液 および分析時に添加した酒石酸の吸光度を示す。 また、 第 2図中、 9分あたり に酒石酸のピークが見られる。 なお、 試験例 3および試験例 4の酒石酸のピー クは、 ほぼ分析時に添加された酒石酸のピークである。
第 3図は、 試験例 5および試験例 6におけるキヤビラリ一電気泳動分析装置 による分析結果を示す。 図中、 1のデータは、 反応前のエチレンジァミン四酢 酸溶液 (以下、 E D T Aと略す) および試験例 5および 6の分析時に添加する E D TAの吸光度を示し、 2のデータは、 試験例 5および 6の分析時に添加す る E D T Aのみの吸光度を示す。 3のデ一夕は、 試験例 5の反応溶液および分 析時に添加した E D T Aの吸光度を示し、 4のデ一夕は、 試験例 6の反応溶液 および分析時に添加した E D T Aの吸光度を示す。 また、 第 3図中、 1 0分あ たりに E D TAのピークが見られる。 発明を実施するための最良の形態
本発明は、 無機多孔体に F e又は Z及び N iを担持してなることを特徴とす る有機物湿式分解触媒である。
本発明に使用される無機多孔体としては、 例えば、 多孔性無機酸化物等が挙 げられ、 より具体的には、 例えば Y型ゼオライト、 X型ゼオライト、 T型ゼォ
ライト、 〇型ゼオライト、 )3ゼォライト、 ZSM— 3、 EMT、 EMC— 2、 ZSM— 5、 ZSM— 11、 ZSM— 18、 ZK— 5、 FSM— 16、 L型ゼ オライト、 シャバザイト、 ォフレタイト、 レビナイト、 エリオナイト、 A型ゼ オライト、 モルデナイト、 クリノプチ口ライト、 口一モンタイト、 フィリプサ イト、 フェリエライト、 ヮイラカイト、 グメリナイト、 クライノ夕イロライト 、 マザイト、 フォージャサイト X、 ファージャサイト Y、 スチルバイト、 クリ ノプチ口ライト、 ヒユーランダイト又は TS— 1などのゼォライト等のアルミ ナシリケート (結晶質又は非晶質アルミナシリゲート) 、 アルミナ、 CMS、 シリカ (MCM— 41、 FSM— 16、 KSM— 1、 KSM— 2等) 、 メソポ —ラスジルコニァ又はへテロポリ酸セシウム塩等のポーラス材料、 シリカ ·ァ ルミナ、 チタニア、 又はアルミナ,チタニア等が挙げられる。 また、 本発明に おいては、 上記無機多孔体が、 例えばクレー、 カオリン、 バーミキユライト、 パーライト又はベントナイト等の粘土鉱物であってもよい。 本発明によれば、 上記無機多孔体が、 アルミナシリゲート、 シリカ、 ポーラス材料又はアルミナ であるのが好ましく、 ゼォライトであるのがより好ましい。 また、 上記無機多 孔体が吸着能を有するのが好ましく、 さらにイオン交換能を有するのがより好 ましい。
本発明の触媒は、 上記無機多孔体に F e又は Z及び N iを担持することで調 製される。 かかる調製方法は、 上記無機多孔体に F e又は 及び N iを担持で きさえすればどのような方法であってもよい。 例えば、 上記無機多孔体と Fe 又は Z及び N iの金属塩とを吸着させる方法などが挙げられる。 より具体的に は、 例えば含浸法又はイオン交換等の公知の吸着手段を用いて担持させる方法 などが挙げられる。 本発明によれば、 このようにして担持させた生成物をさら に焼成するのが好ましい。 上記焼成温度は、 好ましくは約 350°C〜130 0°Cであり、 より好ましくは約 450°C〜900 である。 上記焼成時間は、 好ましくは約 1時間〜 1週間であり、 より好ましくは約 3時間〜 12時間であ
り、 最も好ましくは約 5時間〜 8時間である。 上記 F eの金属塩としては、 例えば、 リン酸鉄、 硝酸鉄、 硫酸鉄、 硫酸アン モニゥム鉄、 過塩素酸鉄、 塩化鉄、 クェン酸鉄、 クェン酸アンモニゥム鉄、 シユウ酸鉄、 シユウ酸アンモニゥム鉄又はエチレンジァミン四酢酸の鉄キレー ト錯塩などが挙げられる。
上記 N iの金属塩としては、 例えば、 酢酸ニッケル四水塩 (N i ( C H 3 C
〇〇) 2 · 4 H 20) 、 硫酸ニッケル六水塩 (N i S 04 · 6 H 20) 、 硝酸ニッ ケル六水塩 (N i (Ν 03) 2 · 6 H 20) 、 塩化ニッケル六水塩 (N i C 1 ·
6 H 20) 又は塩ィ匕ニッケル無水塩 (N i C 1 2) 等が挙げられる。
F e又は 及び N iの担持量は、 無機多孔体に対して、 通常 0 . 0 1〜 5 0 質量%であり、 好ましくは 0 . 1〜1 0質量%であり、 より好ましくは 0 . 5
〜5質量%である。 本発明の触媒は有機物の湿式分解処理、 特に有機物含有排水の湿式分解処理 に用いられる。 本発明の触媒を有機物含有排水の湿式分解処理に付することで 、 有機物含有排水を無害化し得る。 本発明によれば、 上記湿式分解は、 水又は 水蒸気の存在下での酸化分解又は Z及びクラッキングを意味する。
本発明で無害化される排水は、 どのような有機物を含んでいてもよく、 さら に無機物を含んでいてもよい。 上記有機物としては、 例えば、 有機酸、 アルコ ール、 ァミン又は炭化水素などが挙げられる。 上記無機物としては、 例えば、 銅、 亜鉛、 ジルコニウム、 銀、 カドミウム、 錫、 ニオブ、 アンチモン、 ハフ二 ゥム、 タンタル、 水銀、 タリウム、 ビスマス、 クロム、 コバルト、 セリウム、 バナジウム、 ルテニウム、 タングステン又は鉛等の重金属などが挙げられ、 上 記無機物はそれらから派生する重金属イオンの形態であってもよい。
上記有機酸としては、 例えば、 カルボン酸又はォキシカルボン酸等が挙げら れ、 より具体的には、 マレイン酸、 ギ酸、 酢酸、 プロピオン酸、 酪酸、 イソ酪 酸、 吉草酸、 カブロン酸、 アミノ酸 (例えばグリシン又はァスパラギン酸等)
、 ェナント酸、 力プリル酸、 ペラルゴン酸、 力プリン酸、 ゥンデシル酸、 ラウ リン酸、 トリデシル酸、 ミリスチン酸、 ペン夕デシル酸、 パルミチン酸、 ぺプ 夕デカン酸、 ステアリン酸、 ァラキン酸、 アクリル酸、 クロトン酸、 2—フロ 酸、 サリチル酸、 コハク酸、 アコニット酸、 ィタコン酸、 シトラコン酸、 マロ ン酸、 アセトンジカルボン酸、 アジピン酸、 フマル酸、 ニコチン酸、 イソニコ チン酸、 シトラコン酸、 エチレンジァミン四酢酸 (E D T A) 、 イミノジ酢酸 、 プロピオル酸、 ゲンチシン酸、 バニリン酸、 安息香酸、 フタル酸、 イソフタ ル酸、 テレフタル酸、 メタクリル酸、 ォレイン酸、 カフェイン酸、 ベンジル酸 、 アントラニル酸、 ダルタル酸、 ケィ皮酸、 シユウ酸、 リンゴ酸、 クェン酸、 酒石酸、 乳酸、 グリコール酸、 ダリオキシル酸、 クマル酸又はダルコン酸など が挙げられる。 本発明によれば、 上記有機酸はフエノール又はナフタレン等を 含む。 上記有機酸はキレート能力がある有機酸であってよい。
上記アルコールとしては、 例えば、 脂肪族アルコール、 芳香族アルコール、 脂環式アルコール、 複素環アルコール又は多価アルコール等が挙げられ、 より 具体的には、 メタノール、 エタノール、 n—プロパノール、 イソプロパノ一ル、 ァリルアルコール、 クロチルアルコール、 ブタノール、 ペンタノ一ル、 へキサ ノール又はォク夕ノール等の脂肪族アルコール、 ベンジルアルコール又は p— クロルーベンジルアルコール等の芳香族アルコール、 シクロへキサノール、 4 ーメチルーシクロへキサノール又はシクロペンタノ一ル等の脂環式アルコール、 フルフリルアルコール等の複素環アルコール、 又はェチレングリコール又はグ リセリン等の多価アルコール等である。
上記ァミンとしては、 例えば、 メチルァミン、 ェチルァミン、 プロピルアミ ン、 プチルァミン、 ペンチルァミン、 へキシルァミン、 ヘプチルァミン、 ォク チルァミン、 ノニルァミン、 デシルァミン、 ジメチルァミン、 ジェチルァミン、 ジプロピルァミン、 ジブチルァミン、 ジペンチルァミン、 ジへキシルァミン、 ジヘプチルァミン、 ジォクチルァミン、 ジノニルァミン、 ジデシルァミン、 ト
リメチルァミン、 トリェチルァミン、 ジメチルェチルァミン、 ジメチルプロピ ルァミン、 ジメチルブチルァミン、 ジメチルペンチルァミン、 ジメチルへキシ ルァミン、 ジェチルプロピルァミン、 ジェチルブチルァミン、 ジェチルペンチ ルァミン、 ジェチルへキシルァミン、 シクロへキシルァミン、 メチルシクロへ キシルァミン、 ジメチルシクロへキシルァミン又はトリエタノールァミン等の 脂肪族ァミン、 又はァニリン、 フルォロア二リン、 クロロア二リン、 プロモア 二リン、 ョードア二リン、 二トロア二リン、 キシリジン、 メチルァニリン、 フ ルォロメチルァ二リン、 クロロメチルァ二リン、 プロモメチルァニリン、 ョー ドメチルァ二リン、 ニトロメチルァニリン、 メチルァミノフエノール、 トルイ ルメチルァミン又はキシリルメチルァミン等の芳香族ァミンが挙げられる。 上記炭化水素としては、 例えばェタン、 プロパン、 ブタン、 ペンタン、 へキ サン、 ヘプタン、 オクタン、 ノナン、 デカン、 ドデカン又はゥンデカン等が挙 げられる。
上記排水としては、 例えば、 化学プラント、 電子部品製造設備、 食品加工設 備、 金属加工設備、 金属めつき設備、 印刷製版設備又は写真設備等の各種産業 プラントから排出される排水などが挙げられる。 さらに、 上記排水は、 下水や し尿などの生活排水であってもよいし、 環境ホルモン等の有機物を含有してい る排水であってもよい。
本発明の方法は、 酸化剤の存在下に行われてよい。
上記酸化剤としては、 例えば空気、 酸素、 過酸化水素又はオゾンなどが挙げ られる。 上記酸化剤の添加量は、 有機物がカルボン酸又はォキシカルボン酸で ある場合、 好ましくは、 すべてのカルボン酸やォキシカルボン酸が二酸化炭素 に酸化分解されると仮定して算出される当量の約 0 . 5〜1 0倍の量であり、 より好ましくは約 1〜2倍の量であり、 最も好ましくは約 1〜1 . 5倍の量で ある。
本発明においては、 湿式分解は水又は水蒸気の存在下で行われ、 上記湿式分
解が加熱又は 及び加圧下で行われることが好ましい。 上記加熱条件は、 上記 排水又は上記触媒などによって適宜に設定され得るが、 好ましくは加熱温度約
100°C以上及び加熱時間約 0. 1秒間以上であり、 より好ましくは加熱温度 約 100〜 500 °C及び加熱時間約 0. 1秒間〜 1週間であり、 最も好ましく は加熱温度約 140 °C〜 180 °C及び加熱時間約 0. 5秒間〜 30分間である 。 上記加圧圧力は、 好ましくは約 0. IMP a〜l OMP aであり、 より好ま しくは約 0. 1〜 IMP aである。 実施例
(実施例 1)
モルデナイト 5 gに 0. 01 mo 1 Zdm3塩化ニッケル水溶液 0. 5 d m3を加え、 3日間 80°Cにて撹拌した。 その溶液を濾過後、 5 dm3のイオン 交換水で洗浄し、 100°Cで一昼夜乾燥させた後 800°Cで 5時間焼成し、 N i—H—モルデナィト触媒を得た。
(実施例 2)
塩化ニッケル水溶液を塩化鉄 (I I) 水溶液に代えて用いたこと以外、 実施 例 1と同様にして Fe— H—モルデナィト触媒を得た。
(試験例 1)
0. lmo 1 /dm3のクェン酸アンモニゥム溶液 10 cm3、 35質量%過 酸化水素水 2 cm3及び実施例 1の触媒 0. 2 gを、 容量 30 cm3のバッチ式 オートクレーヴに加え、 140°Cにて 30分間加熱した。 反応温度が 140°C と、 水の沸点より高いため、 オートクレーヴを用いた。 反応終了後、 得られた 溶液を濾過により触媒と溶液とを分離した。 分離した溶液をキヤビラリ一電気 泳動分析装置 (CAP I— 3300、 大塚電子株式会社製) で分析した。 結果 を第 1表に示す。 この分析から、 より低級の分解物に変換されていることを確 認した。 分析結果を第 1図に示す。 第 1図に示すとおり、 反応前の 98%以上
のクェン酸のピ一クがなくなり、 かつ新たな有機酸めピークが見あたらなかつ た。 また、 この反応終了後の溶液を H— NMR (株式会社島津製作所製) で分 祈した結果、 カルボキシル基及びヒドロキシル基のピークが見あたらなかった (試験例 2)
実施例 1の触媒を実施例 2の触媒に代えて用いたこと以外、 試験例 1と同様 にして分析した。 結果を第 1表に示す。 なお、 キヤビラリ一電気泳動分析の結 果を第 1図に示す。 試験例 1と同様に、 実施例 2の触媒によって、 クェン酸が より低級の分解物に変換されていることを確認した。
(比較例 1〜17)
実施例 1の触媒を、 比較例 1としてアンバーリスト (Rohm&Ha a s社 製、 登録商標) 、 比較例 2としてアンバーライト (Rohm&Ha a s社製、 登録商標) 、 比較例 3としてナフイオン一 13 (含フッ素系イオン交換樹脂、 デュポン社製、 登録商標) 、 比較例 4としてナフイオン NR— 50 (含フッ素 系イオン交換樹脂、 デュポン社製、 登録商標) 、 比較例 5として H型モルデナ イト、 比較例 6として F e 203、 比較例 7として W03、 比較例 8として N i 〇、 比較例 9として Co203、 比較例 10として P tZ活性炭 (和光純薬株式 会社製) 、 比較例 11として P tZA 12〇3、 比較例 12として CuO、 比較 例 13として CuCoOx、 比較例 14として Co— H—モルデナイト、 比較 例 15として Cu— H—モルデナイト、 比較例 16として CuC o—モルデナ ィト、 比較例 17として Mn— H—モルデナィトに代えてそれぞれ用いたこと 以外、 試験例 1と同様に試験 ·評価した。 結果を第 1表に示す。 P t系の触媒 ではォキシカルボン酸が 50%に満たない除去率であった。 その他の酸化物に 関しても同様の結果を得た。 タングステンにいたっては金属成分の流失が起こ つた。 なお、 比較例 4及び比較例 9のキヤピラリー電気泳動分析装置による分 析結果を第 1図に示す。
第 1表 触媒 除去率(%) 副生成物 比較例 1 酸触媒 アンハ" -リスト 12.5
比較例 2 アン -ラ仆 11.5
比較例 3 ナフイオン - 13 14.3
比較例 4 ナフイオン- NR-50 0.0
比較例 5 薩モルテ'、ナ仆 58.6 あり 比較例 6 酸化物系 Fe203 62.0 あり 比較例 7 W03 66.4 あり 比較例 8 NiO 78.5 あり 比較例 9 Co203 55.0 あり 比較例 10 Pt/活性炭 48.7 あり 比較例 11 Pt/Al203 23.1 あり 比較例 12 CuO 79.1 あり 比較例 13 CuCoOx 72.4 あり 比較例 14 モルテ'ナ仆触媒 Co - H-モルデ、ナ仆 100.0 あり 比較例 15 Cu- H-モルデナ仆 100.0 あり 比較例 16 CuCo-モルデナ仆 100.0 あり 比較例 Π Mn-H -モルデ、ナ仆 100.0 あり 試験例 1 Nト H-モルテ'ナイト 100.0 なし 試験例 2 Fe-H-モルテ'、ナ仆 100.0 なし
(試験例 3)
0. 0 lmo 1 Zdm3の酒石酸ナトリウムカリウム溶液 10 cm3、 35質 量%過酸化水素水 2 c m3および実施例 1の触媒 0. 2 gを、 容量 30 cm3の パッチ式オートクレーヴに加え、 140°Cにて 30分間加熱し、 反応させた。 反応終了後、 得られた溶液を濾過することにより触媒と反応溶液とに分離した 。 分離した反応溶液をキヤビラリ一電気泳動分析装置 (CAP 1— 3300、 大塚電子株式会社製) で分析した。 分析は、 標準添加法を用いて酒石酸塩を定 量することにより行われた。 結果を第 2表に示す。 また、 キヤピラリー電気泳
動分析装置による分析結果を第 2図に示す。 酒石酸のピークの値を計算したと ころ 1 0 0 %の酒石酸が消失していた。 このことより、 これらの N i— H—モ ルデナイ卜は酒石酸分解に有効な触媒であることがわかる。 また、 第 2図から 、 N i—H—モルデナィトでは酒石酸のピーク以外に何らかの生成物があり、 酒石酸が分解し、 より低級な炭化水素化合物に変化したことがわかる。
(試験例 4 )
実施例 1の触媒を実施例 2の触媒に代えて用いたこと以外、 試験例 3と同様 にして試験,評価した。 結果を第 2表に示す。 また、 キヤピラリー電気泳動分 析装置による分析結果を第 2図に示す。 試験例 3と同様に実施例 2の触媒によ つて酒石酸が分解されたことがわかる。 また、 第 2図に示すとおり実施例 2の 触媒では他の生成物ができている。 このことから、 酒石酸が分解し、 より低級 な炭化水素化合物に変化したことがわかる。
(比較例 1 8および 1 9 )
実施例 1の触媒を、 比較例 1 8として P t 7舌性炭 (和光純薬株式会社製) 、 比較例 1 9として W〇3に代えてそれぞれ用いたこと以外、 試験例 3と同様 にして試験 *評価した。 結果を第 2表に示す。 P t Z活性炭では 5 1 . 7 %、 〇3では5 9 . 6 %の酒石酸が消失していた。 また、 比較例 1 9のキヤビラ リ一電気泳動分析装置による分析結果を第 2図に示す。
第 2表
触媒 酒石酸の除去率 (%)
比較例 1 8 酸化物系 Pt/活性炭 51 . 7
比較例 1 9 wo3 59. 6
試験例 3 モルテ'ナ仆触媒 ll卜 H-モルデナ仆 100
試験例 4 Fe-H-モルテ♦ナ仆 100
(試験例 5 )
0. 05mo 1 /dm3の EDTA溶液 10 cm3、 35質量%過酸化水素水 2 cm3および実施例 1の触媒 0. 2 gを、 容量 30 cm3のバッチ式ォ一トク レーヴに加え、 140°Cにて 30分間加熱し、 反応させた。 反応終了後、 得ら れた溶液を濾過することにより、 触媒と反応溶液とに分離した。 分離した反応 溶液をキヤピラリー電気泳動分析装置 (CAP I— 3300、 大塚電子株式会 社製) で分析した。 分析は、 標準添加法を用いて EDTAを定量することによ り行われた。 結果を第 3表に示す。 なお、 キヤピラリー電気泳動分析装置によ る分析結果を第 3図に示す。 EDTAのピークの値を計算したところ 95. 8 %の EDTAが消失していた。 このことより、 N i— H—モルデナイトは ED T A分解に有効な触媒であることがわかる。
(試験例 6)
実施例 1の触媒を実施例 2の触媒に代えて用いた以外、 試験例 5と同様にし て反応および分析した。 結果を第 3表に示す。 また、 キヤピラリー電気泳動分 析装置による分析結果を第 3図に示す。 試験例 5と同様に実施例 2の触媒によ つて EDTAが分解されたことがわかる。
(比較例 20)
実施例 1の触媒を、 比較例 20として P t Z活性炭 (和光純薬株式会社製) に代えて用いたこと以外、 試験例 5と同様にして試験 ·評価した。 結果を第 3 表に示す。 P t/活性炭では 35. 7%の EDTAが消失していた。
第 3表
触媒 EDTAの除去率(%)
比較例 20 酸化物系 Pt/活性炭 35.7
試験例 5 モルデナ仆触媒 Ni-H-モルデナ仆 95.8
試験例 6 Fe-H -モルデナ仆 100 産業上の利用可能性
本発明の有機物の湿式分解触媒は、 有機物、 特に有機酸の酸化分解及びクラ ッキングに対して強い活性を有する。 本発明の排水無害化方法は、 効果的に排 水中の有機物、 特に有機酸を分解して除去することができる。