JP4268831B2 - 酸化物系触媒及びその触媒を用いた有機物含有排水の無害化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、湿式酸化分解に用いられる酸化物系触媒に関する。また、本発明は、そのような酸化分解触媒を用いる有機物、特に有機酸を含む排水の無害化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
化学工業、食品工場またはめっき工場などから排出される排水には、多量の有機物、特に有機酸が含まれることが多い。有機物を含む排水の放出は、湖沼、河川又は海を栄養過多にして水の富栄養化を起こし、環境汚染の原因になるため、排水に含まれる有機物を分解除去し無害化する必要がある。排水中の有機物を除去する方法としては従来から、焼却処理法、生物処理法、吸着除去法または生物処理法などが知られており、従来はそれらの何通りかの方法の組み合せで有機物の除去無害化を行っている(非特許文献1)。
【0003】
燃焼処理法は、排水を処理するのに化石燃料を多量に燃焼させるので、資源を浪費することになり、燃料費等の処理コストが著しく高くなる等の問題を有していた。さらに、燃焼処理法は、燃焼により排出される排ガス等による二次公害が生じる恐れがあり、地球温暖化の原因とされる二酸化炭素、亜硫酸ガス、NOx又はSOx等の排出量が増加するなどの問題があった。
【0004】
生物処理法は、排水のpH、塩濃度や有機物濃度などの水質変動や共存重金属によって微生物等が死滅してしまったり、重金属で微生物が衰弱するために作用効果が減少したりする。このような問題を回避するために、例えば、処理前に重金属の除去、pH、有機物濃度などの水質調整をせねばならない。排水の希釈または重金属の除去などの水質調整を行うためにはそれに付随して今度は装置や運転が複雑なものとなり、しかも、微生物を利用した分解であるが故に反応速度が低く、結果として生物処理法は広大な敷地面積を必要するという問題がある。さらに、生物処理法を適用すると余剰汚泥を生じ、排水以外に余剰汚泥を処理しなければならないという弊害もあり、必然的に処理コストが高くなるという問題もある。
【0005】
また、逆浸透膜を用いる方法も理論的には可能であるが、膜自体が高価である上に、処理中に膜の目詰まり現象あり、濃縮された有機物、重金属等を二次処理しなければならないので、現実には実施が困難である。
【0006】
また、吸着剤を用いた吸着除去法の場合には、例えばその代表例の一つとして活性炭を用いる有機物の吸着除去法がある。この方法は有機物を含む排水に活性炭を加えて、活性炭に有機物を吸着させて除去するものである。しかし、この方法は、濾別した有機物の付着した活性炭の二次処理が必要になるという問題がある。
【0007】
従来の酸化剤による酸化処理法は、除去率が最大でも50%と低く以上に述べた他の処理法と併用して用いられるために工業的には有利に実施することははなはだ困難であった。
また、触媒を用いた有機物の湿式酸化処理法が現在提案されているが、水または水蒸気が触媒毒となるために、工業的に実施された例はほとんどない状態である。
【0008】
【非特許文献1】
平成12年12月20日オーム社発行「水処理技術」
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、排水中の有機物、特にカルボン酸やオキシカルボン酸等の有機酸の除去効果が優れた酸化分解触媒並びにその触媒を用いる有機物含有排水の無害化方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討した結果、モリブデン又は/及びマンガンを含む金属酸化物を含有する触媒の存在下に有機物を湿式酸化に付すると、有機物の湿式酸化分解効率が驚くほど向上することを知見した。
【0011】
そして、本発明者らは、例えば、C、H及びOのみで構成される有機酸を本発明の触媒の存在下に湿式酸化処理すると、別の有機物に変換されることなく、無害な二酸化炭素及び水にまで酸化分解できること、有機物が窒素を含有している場合にはNOxにまで分解できること、さらに有機物が硫黄を含有しているとSOxにまで分解できることを知見した。
本発明者らは、かかる種々の知見を得た後、さらに検討を重ね、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、
(1) マンガン・モリブデン混合物の酸化物を含有することを特徴とする有機物湿式酸化触媒、
(2) 有機物が有機酸であることを特徴とする(1)記載の触媒、
(3) 有機酸がカルボン酸又はオキシカルボン酸であることを特徴とする(2)記載の触媒、
【0013】
(4) モリブデン及びマンガンを含む金属塩化物と塩基とを反応させてモリブデン及びマンガンを含む金属水酸化物を製造し、ついで金属水酸化物を焼成することを特徴とする(1)記載の触媒の製造方法、
(5) 有機物を(1)記載の触媒の存在下に湿式酸化することを特徴とする有機物の無害化方法、
(6) 排水に含まれている有機物を酸化剤と(1)記載の触媒との存在下に湿式酸化することを特徴とする排水の無害化方法、
【0014】
(7) 有機物が有機酸であり、酸化剤が空気、酸素、過酸化水素又はオゾンであることを特徴とする(6)記載の排水の無害化方法、
(8) 加熱又は/及び加圧下で湿式酸化することを特徴とする(6)記載の排水の無害化方法、及び
(9) 加熱温度が50〜200℃であり、加熱時間が0.1秒間〜1週間であることを特徴とする(8)記載の排水の無害化方法、
に関する。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明は、モリブデン又は/及びマンガンを含む金属酸化物を含有することを特徴とする有機物湿式酸化触媒である。
【0016】
本発明で使用される金属酸化物は、モリブデン又は/及びマンガンを含む酸化物であればどのようなものでもよい。金属酸化物は、金属酸化物自体であってもよいし、ゼオライト又はアルミナ等の担体に担持させたものであってもよい。例えば、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、モリブデン酸、モリブデン酸アンモニウム又は例えばアルミナ等の担体に担持させた上記モリブデン酸化物、一酸化マンガン、二酸化マンガン、三酸化マンガン、四三酸化マンガン、三二酸化マンガン又は例えばアルミナ等の担体に担持させた上記マンガン酸化物等のマンガンを含む酸化物、又はマンガン・モリブデン合金酸化物などが挙げられる。本発明においては、上記金属酸化物が、三酸化モリブデン、例えばアルミナに担持させた三酸化モリブデン又はマンガン・モリブデン合金酸化物であるのが好ましく、マンガン・モリブデン合金酸化物であるのがより好ましい。
【0017】
本発明に使用される金属酸化物は、例えば金属水酸化物の酸化等の公知方法を用いて製造され得る。より具体的には、モリブデン又は/及びマンガンを含む金属塩化物等の塩と塩基とを反応させてモリブデン又は/及びマンガンを含む金属水酸化物を製造し、ついで金属水酸化物を焼成することで製造され得る。
【0018】
上記モリブデンを含む金属塩化物等の塩としては、例えば、三塩化モリブデン、四塩化モリブデン又は五塩化モリブデン等の金属塩化物、二硫化モリブデン、五フッ化モリブデン、炭化モリブデン、一ホウ化一モリブデン、一ホウ化二モリブデン、アルミ化モリブデン、二ケイ化モリブデン、二酸化モリブデン、三酸化モリブデン、五酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム四水和物、リン化モリブデン、又はセレン化モリブデンなどが挙げられる。
【0019】
上記マンガンを含む金属塩化物等の塩としては、例えば、二塩化マンガン又は三塩化マンガン等の金属塩化物、硫酸マンガン、硝酸マンガン、二酢酸マンガン、炭酸マンガン、炭酸二水素マンガン、アセチルアセトン酸マンガン、三酢酸マンガン、乳酸マンガン、蟻酸マンガン、アセチルメチオン酸マンガン、又はグルコン酸マンガンなどが挙げられる。
【0020】
上記塩基としては、例えばアンモニア水、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化リチウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム、重炭酸ナトリウム、重炭酸カリウム、重炭酸カルシウム、重炭酸マグネシウム又は重炭酸バリウム等が挙げられる。塩基の使用量は上記金属塩に対して当量以上である。
上記焼成温度は、好ましくは約350℃〜1300℃であり、より好ましくは約450℃〜900℃である。焼成時間は、好ましくは約1時間〜1週間であり、より好ましくは約3時間〜12時間であり、最も好ましくは約5時間〜8時間である。
【0021】
本発明の触媒は有機物の湿式酸化処理、特に有機物含有排水の湿式酸化処理に用いられる。本発明の触媒の存在下で有機物含有排水を湿式酸化に付することで、有機物含有排水を無害化し得る。本発明によれば、上記湿式酸化は水又は水蒸気の存在下での酸化分解を意味する。
【0022】
本発明で無害化される排水は、どのような有機物を含んでいてもよく、さらに無機物を含んでいてもよい。上記有機物としては、例えば、有機酸 、アルコール、アミン又は炭化水素などが挙げられる。上記無機物としては、例えば、銅、亜鉛、ジルコニウム、銀、カドミウム、錫、ニオブ、アンチモン、ハフニウム、タンタル、水銀、タリウム、ビスマス、クロム、コバルト、セリウム、バナジウム、ルテニウム、タングステン又は鉛等の重金属などが挙げられ、上記無機物はそれらから派生する重金属イオンの形態であってもよい。
【0023】
上記有機酸としては、例えば、カルボン酸又はオキシカルボン酸等が挙げられ、より具体的には、マレイン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、アミノ酸(例えばグリシン又はアスパラギン酸等)、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ペプタデカン酸、ステアリン酸、アラキン酸、アクリル酸、クロトン酸、2−フロ酸、サリチル酸、コハク酸、アコニット酸、イタコン酸、シトラコン酸、マロン酸、アセトンジカルボン酸、アジピン酸、フマル酸、ニコチン酸、イソニコチン酸、シトラコン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、イミノジ酢酸、プロピオル酸、ゲンチシン酸、バニリン酸、安息香酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、メタクリル酸、オレイン酸、カフェイン酸、ベンジル酸、アントラニル酸、グルタル酸、ケイ皮酸、シュウ酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、グリコール酸、グリオキシル酸、クマル酸又はグルコン酸などが挙げられる。本発明によれば、上記有機酸はフェノール又はナフタレン等を含む。上記有機酸はキレート能力がある有機酸であってよい。
【0024】
上記アルコールとしては、例えば、脂肪族アルコール、芳香族アルコール、脂環式アルコール、複素環アルコール又は多価アルコール等が挙げられ、より具体的には、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、アリルアルコール、クロチルアルコール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール又はオクタノール等の脂肪族アルコール、ベンジルアルコール又はp−クロル−ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、シクロヘキサノール、4−メチル−シクロヘキサノール又はシクロペンタノール等の脂環式アルコール、フルフリルアルコール等の複素環アルコール、又はエチレングリコール又はグリセリン等の多価アルコール等である。
【0025】
上記アミンとしては、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、ジノニルアミン、ジデシルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジエチルプロピルアミン、ジエチルブチルアミン、ジエチルペンチルアミン、ジエチルヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン又はトリエタノールアミン等の脂肪族アミン、又はアニリン、フルオロアニリン、クロロアニリン、ブロモアニリン、ヨードアニリン、ニトロアニリン、キシリジン、メチルアニリン、フルオロメチルアニリン、クロロメチルアニリン、ブロモメチルアニリン、ヨードメチルアニリン、ニトロメチルアニリン、メチルアミノフェノール、トルイルメチルアミン又はキシリルメチルアミン等の芳香族アミンが挙げられる。
【0026】
上記炭化水素としては、例えばペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン又はウンデカン等が挙げられる。
【0027】
上記排水としては、例えば、化学プラント、電子部品製造設備、食品加工設備、金属加工設備、金属めっき設備、印刷製版設備又は写真設備等の各種産業プラントから排出される排水などが挙げられる。さらに、上記排水は、下水やし尿などの生活排水であってもよいし、環境ホルモン等の有機物を含有している排水であってもよい。
【0028】
本発明の方法は、酸化剤の存在下に行われるのが好ましい。
上記酸化剤としては、例えば空気、酸素、過酸化水素又はオゾンなどが挙げられる。上記酸化剤の添加量は、好ましくは、すべての有機物が二酸化炭素、NOx、SOx等の酸化物に酸化分解されると仮定して算出される等量の約1〜10倍の量であり、より好ましくは約1〜2倍の量であり、最も好ましくは約1〜1.5倍の量である。
【0029】
本発明においては、上記湿式酸化が加熱又は/及び加圧下で行われることが好ましい。上記加熱条件は、上記排水、上記酸化剤又は上記触媒などによって適宜に設定され得るが、好ましくは加熱温度約50℃以上及び加熱時間約0.1秒間以上であり、より好ましくは加熱温度約100〜300℃及び加熱時間約0.1秒間〜1週間であり、最も好ましくは加熱温度約100℃〜140℃及び加熱時間約0.5秒間〜30分間である。上記加圧圧力は、好ましくは約0.1MPa〜10MPaであり、より好ましくは約0.1MPa〜1MPaである。
【0030】
【実施例】
(参考製造例1)
塩化マンガン水溶液0.2mol/dm3に、pHが11になるまで28質量%アンモニア水を滴下した。生成した沈殿物を濾過した後、100℃で8時間乾燥し、マッフル炉を用いて500℃、5時間焼成して、マンガン酸化物触媒を得た。
【0031】
(参考製造例2)
塩化マンガンをモリブデン酸アンモニウムに代えたこと以外、参考製造例1と同様にしてモリブデン酸化物触媒を得た。
【0032】
(参考製造例3)
モリブデン酸アンモニウム水溶液0.009mol/dm3をアルミナ(PRAXAIR社製)5gに含浸させた。100℃で一昼夜乾燥させた後、800℃で5時間焼成して、アルミナに担持させたモリブデン酸化物触媒を得た。
【0033】
(実施例4)
塩化マンガン水溶液0.1mol/dm3、モリブデン酸アンモニウム0.1mol/dm3を混合してマンガン・モリブデン混合物の塩化物を得た。マンガン塩化物を、得られたマンガン・モリブデン混合物の塩化物に代えたこと以外、参考製造例1と同様にしてマンガン・モリブデン混合物の酸化物触媒を得た。
【0034】
(試験例4および比較例14〜16)
0.1mol/dm3のクエン酸アンモニウム溶液10cm3、35質量%過酸化水素水2cm3及び比較例14として参考製造例1で得られたマンガン酸化物触媒0.2gを、比較例15として参考製造例2で得られたモリブデン酸化物触媒0.2gを、比較例16として参考製造例3で得られたアルミナに担持させたモリブデン酸化物触媒0.2gを、試験例4として実施例4で得られたマンガン・モリブデン混合物の酸化物触媒0.2gを、容量30cm3のバッチ式オートクレーヴに加え、140℃にて30分間加熱した。反応温度が140℃と水の沸点より高いため、オートクレーヴを用いた。反応終了後、得られた試験例4および比較例14〜16の溶液をそれぞれ濾過により触媒と溶液を分離した。試験例4および比較例14〜16の溶液をそれぞれキャピラリー電気泳動分析機(CAPI−3300、大塚電子株式会社製)で分析した結果、いずれも反応前の98%以上のクエン酸のピークがなくなり、さらにクエン酸以外の有機酸のピークもなかった。分析結果を表1に示す。なお、試験例4のキャピラリー電気泳動分析機による分析結果を図1に示す。また、反応後の試験例4および比較例14〜16の溶液をそれぞれH−NMR(株式会社島津製作所製)で分析した結果、いずれもカルボキシル基およびヒドロキシル基のピークが見あたらなかった。
【0035】
(比較例1〜13)
試験例4および比較例14〜16の触媒を、比較例1としてアンバーリスト(Rohm&Haas社製、登録商標)、比較例2としてアンバーライト(Rohm&Haas社製、登録商標)、比較例3としてナフィオン−13(含フッ素系イオン交換樹脂、デュポン社製、登録商標)、比較例4としてナフィオンNR−50(含フッ素系イオン交換樹脂、デュポン社製、登録商標)、比較例5としてH型モルデナイト、比較例6としてFe2O3、比較例7としてWO3、比較例8としてNiO、比較例9としてCo2O3、比較例10としてPt/活性炭(和光純薬株式会社製)、比較例11としてPt/Al2O3(和光純薬株式会社製)、比較例12としてCuO、比較例13としてCuCoOxに代えてそれぞれ用いたこと以外、試験例4および比較例14〜16と同様に試験・評価した。結果を表1に示す。Pt系の触媒ではクエン酸が50%満たない除去率であった。その他の酸化物に関しても同様の結果を得た。タングステンにいたっては金属成分の流失が起こった。なお、比較例9のキャピラリー電気泳動分析機による分析結果を図1に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
(試験例5)
0.1mol/dm3のクエン酸水溶液10cm3を、0.005mol/dm3のクエン酸、0.001mol/dm3の蟻酸、0.001mol/dm3のプロピオン酸及び0.001mol/dm3の酢酸を含有する水溶液10cm3に代えて用いたこと以外、試験例4と同様にして試験・評価を行った。結果を図2に示す。図2に示すとおり、処理後、有機酸であるクエン酸、蟻酸、プロピオン酸、酢酸のピークがなくなり、本発明の触媒によって有機酸が除去されたことが分かる。
【0038】
(試験例6)
0.1mol/dm3のクエン酸水溶液10cm3を、0.01mol/dm3の硫酸ニッケル、0.05mol/dm3のタングステン酸ナトリウム、0.01mol/dm3のクエン酸2ナトリウム、0.0003mol/dm3の蟻酸ナトリウムを含有する水溶液10cm3に代えて用いたこと以外、試験例4と同様にして試験・評価を行った。結果を図3に示す。図3に示すとおり、処理後、無機物である硫酸、タングステン酸、ニッケルのピークは残るが、有機酸であるクエン酸及び蟻酸のピークがなくなった。従って、本発明の触媒によって有機酸が除去されたことが分かる。
【0039】
【発明の効果】
本発明の触媒は、マンガン又はモリブデンを含有する酸化物触媒であり、有機物、特に有機酸の酸化分解に対して強い活性を有する。本発明の排水の無害化方法は、効果的に排水中の有機物、特に有機酸を酸化分解して除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 試験例4におけるキャピラリー電気泳動分析の結果を示す。この図から、処理液に含まれていたクエン酸が本発明の処理によってほぼ完全に除去されたことが分かる。一方、Co2O3触媒処理の場合、クエン酸が残留しているのみならず、複数の副生物が生成していることが分かる。
【図2】 試験例5におけるキャピラリー電気泳動分析の結果を示す。この図から、処理液に含まれていた有機酸が本発明の処理によって除去されたことが分かる。本発明の触媒処理によって、クエン酸、蟻酸、酢酸、プロピオン酸が除去されていることが分かる。
【図3】 試験例6におけるキャピラリー電気泳動分析の結果を示す。この図から、本発明の触媒処理によって、無機物である硫酸、タングステン酸、ニッケルのピークは残るが、有機酸であるクエン酸及び蟻酸のピークがなくなった。従って、重金属含有処理液に含まれていた有機酸が本発明の触媒処理によって除去されたことが分かる。
Claims (9)
- マンガン・モリブデン混合物の酸化物を含有することを特徴とする有機物湿式酸化触媒。
- 有機物が有機酸であることを特徴とする請求項1記載の触媒。
- 有機酸がカルボン酸又はオキシカルボン酸であることを特徴とする請求項2記載の触媒。
- モリブデン及びマンガンを含む金属塩化物と塩基とを反応させてモリブデン及びマンガンを含む金属水酸化物を製造し、ついで金属水酸化物を焼成することを特徴とする請求項1記載の触媒の製造方法。
- 有機物を請求項1記載の触媒の存在下に湿式酸化することを特徴とする有機物の無害化方法。
- 排水に含まれている有機物を酸化剤と請求項1記載の触媒との存在下に湿式酸化することを特徴とする排水の無害化方法。
- 有機物が有機酸であり、酸化剤が空気、酸素、過酸化水素又はオゾンであることを特徴とする請求項6記載の排水の無害化方法。
- 加熱又は/及び加圧下で湿式酸化することを特徴とする請求項6記載の排水の無害化方法。
- 加熱温度が50〜200℃であり、加熱時間が0.1秒間〜1週間であることを特徴とする請求項8記載の排水の無害化方法。
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