JP3751648B2 - 廃水処理用触媒、その製造方法、およびその触媒を用いた廃水の処理方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、廃水処理用触媒、その製造方法、およびその触媒を用いた廃水の処理方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、化学プラント設備、メッキ工業設備、皮革製造設備、金属工業設備、金属鉱業設備、食品製造設備、医薬品製造設備、繊維工業設備、紙パルプ工業設備、染色染料工業設備、電子工業設備、機械工業設備、印刷製版設備、ガラス製造設備、写真処理設備等から排出される廃水を浄化処理する場合に用いられる。特に廃水の浄化方法の中でも触媒湿式酸化処理の方法で該廃水を浄化する場合に用いられ、この場合の廃水中の有機物および/または無機COD成分を分解するための触媒、および該触媒の製造方法に関し、さらには該廃水を該触媒の存在下に湿式酸化処理する該廃水の浄化方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、廃水の処理方法として、活性汚泥法と広く一般的に呼ばれる生物的処理法、および焼却による燃焼処理法、チンマーマン法と呼ばれる無触媒湿式酸化処理法などが知られている。
【0003】
生物的処理法は、有機物等の分解に長時間を要し、またアンモニアなどの難分解性窒素含有化合物の処理のためには複雑な工程を要し、しかも藻類、バクテリヤ等の微生物の生育に適した濃度に廃水を希釈したり、微生物の生育に適したpHに廃水を調節するなどの必要があるため処理施設の設置面積が広大になるなどの欠点がある。
【0004】
燃焼処理法は、燃焼のための燃料費等のコストがかかるうえ、排ガス等の二次公害の問題などの欠点がある。
【0005】
チンマーマン法と呼ばれる無触媒湿式酸化処理法は、高温高圧下で廃水を酸素ガスの存在下に処理し、有機物および/または無機COD成分等を酸化もしくは酸化分解させる方法であり、優れた処理方法ではあるが、一般的に処理効率が低いため、二次処理設備を必要とする場合が多分にある。
【0006】
このため、この湿式酸化処理法において処理効率を向上させることを主たる目的として各種の触媒を使用する方法が提案されている。特に固体触媒を用いた湿式酸化法(以下、触媒湿式酸化処理とも記載する)はその高い廃水の浄化性ならびに優れた経済性等の面から近年特に注目されている。ここで提案されている従来の触媒は、パラジウム、白金等の貴金属類をアルミナ、シリカ、シリカゲル、活性炭等の担体に担持した触媒である(特開昭49−44556号、特開昭49−94157号)。
【0007】
しかしながら廃水は、一般に、含有される成分の種類が同じであることは希であり、例えば、窒素原子や、硫黄原子、ハロゲン原子を含まない有機物以外に窒素含有化合物、硫黄含有化合物、ハロゲン含有化合物等が廃水に含まれている場合も多く生じる。従って、上記の触媒を使用するだけでは、これらの成分を充分に処理することができないことが多いものである。
【0008】
例えば、上に挙げた従来の方法では、各種化学プラント廃水等に多く含まれるアミン化合物、アミド化合物、アミノ酸化合物等の有機窒素化合物、もしくはアンモニア、ヒドラジン等の無機窒素化合物などの窒素含有化合物を含む廃水;石油化学系および写真廃水系等の廃水に多く含まれるチオ硫酸および亜硫酸、硫化物などの無機硫黄化合物、界面活性剤および溶剤などに多く使用される有機硫黄化合物等の硫黄含有化合物を含む廃水;洗浄剤およびファインケミカル系等の廃水に多く含まれる有機ハロゲン化合物などのハロゲン含有化合物を含む廃水等の種々の廃水の処理に関しては、特に処理効率が充分ではなかった。また、上記の従来の触媒湿式酸化処理では、本発明者らの検討によれば長期使用により、触媒の強度の低下および破砕粉化を生じ、さらに触媒の溶解を生ずる場合もあり、耐久性に劣り、実用的ではなかった。
【0009】
また、その他に問題を解決する技術として、チタニアまたはジルコニアを担体として用いる方法が提案されている(特開昭58−64188号)。これによると、球状または円筒状のチタニアまたはジルコニアの担体にパラジウム、白金等の貴金属化合物、鉄、コバルト等の重金属化合物を担持した触媒が開示され、従来の担体と比べて優れた強度を有することが記載されている。しかしながら、これらの触媒はいずれも触媒活性および耐久性において未だ充分満足できるものではなかった。
【0010】
これらの問題を解決しようとして、本発明者らは既に、チタンとジルコニウムの複合酸化物と、パラジウムおよび白金等の貴金属類、および/またはコバルト、ニッケル等の重金属類を含有する触媒を用いた廃水の処理方法(特公平3−34997号)、鉄とチタン、ケイ素およびジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含む酸化物と、パラジウムおよび白金等の貴金属類、および/またはコバルト、ニッケル等の重金属類を含有する触媒およびその触媒を用いた廃水の処理方法(特開平5−138027号)を提案した。これらの触媒はいずれも触媒活性が高く、耐久性においても高いものであるが、廃水の処理における経済性および浄化効率の向上の観点からすれば、さらに好ましい結果を得ることができる。
【0011】
また、一般に廃水の触媒湿式酸化処理においてはコストの面からステンレス鋼などの反応管等が使用されるが、このものは酸性域では腐食に弱いために廃水のpHはアルカリ域に調整されて反応に供されている場合が多い。特に窒素含有化合物、硫黄含有化合物、ハロゲン含有化合物を含む廃水は、該処理により、硝酸イオン、硫酸イオン、ハロゲン化物イオン等を生成するため、酸性域での処理が困難な場合が多い。しかし、この場合、これらの触媒の中にはアルカリ域での使用において充分な耐久性および処理活性でないものもあり、廃水がアルカリ域にあっても充分な耐久性および処理活性等を有する触媒が望まれている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明の目的は、新規な廃水処理用触媒、その製造方法およびその触媒を用いた廃水の処理方法を提案することにある。
【0013】
さらに詳しくは、本発明の目的は、廃水の処理にあたり、例えば湿式酸化法による処理、オゾン法による処理、紫外線法による処理、電気分解法による処理等の種々の廃水の処理方法による新規な廃水処理用の触媒を提供することにあり、特に本発明の触媒は、固体触媒を用いた湿式酸化処理法に適した廃水処理用の触媒、その製造方法およびその触媒を用いた廃水の処理方法を提案することにある。
【0014】
さらに具体的には、本発明は特に触媒湿式酸化処理において、窒素原子や、硫黄原子、ハロゲン原子を含まない炭化水素系有機物以外に、窒素含有化合物、硫黄含有化合物、ハロゲン含有化合物等が含まれている処理の困難な廃水においても、言い換えれば如何なる種類の有機物および/または無機COD成分等の河川等を汚染する有害物質を含有する廃水においても浄化性高く廃水を処理し、なおかつ経済性にも優れた廃水の処理方法を提供することにあり、このためにより触媒活性が高く、耐久性および耐アルカリ性に優れた湿式酸化処理用の廃水処理用触媒、その製造方法およびその触媒を用いた廃水の処理方法を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、より触媒活性が高く、耐久性および耐アルカリ性に優れた廃水処理用触媒、特に有機窒素化合物、硫黄含有化合物および有機ハロゲン含有化合物に対して触媒活性が高く、耐久性および耐アルカリ性に優れた廃水処理用触媒の使用方法に関する触媒湿式酸化処理による廃水の処理方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
廃水処理用触媒の触媒活性成分として、従来、種々の重金属類、貴金属類元素が有効であることが知られているが、本発明者等は上記の課題を解決するため鋭意研究の結果、(1)廃水処理用触媒の触媒活性成分として、マンガンと鉄のそれぞれの酸化物および/または複合酸化物を組み合わて併用すれば種々の廃水に対して特異的に触媒活性が向上し、かつ耐久性および耐アルカリ性に優れること、(2)さらにチタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物をも併用すれば上記効果が一層助長されること、また(3)ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、白金よりなる群から選ばれる元素の金属および/またはその金属の化合物の少なくとも1種をも併用すれば上記効果が一層助長されること、(4)触媒成分であるマンガンの酸化物および/または複合酸化物は、マンガンの酸化数がMnOxの形態で換算してx=1.5〜2.0の範囲にある場合に特に特異的に触媒の耐久性ならびに処理活性が高まること、(5)マンガンの酸化物が鉄の酸化物と、あるいは鉄、チタンおよび/またはジルコニウムの金属の酸化物と複合酸化物を形成するなどの緊密に混合されてなる形態であることで、より特異的に触媒の耐久性ならびに処理活性が高まること、さらに(6)チタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物が、マンガンおよび/または鉄の酸化物および/または複合酸化物と緊密に混合されることでより効果を高め得ることを見いだし、本発明を完成するに至ったのである
かくして、本発明は、以下のごとくの廃水処理用触媒およびその製造方法を提供する。
【0017】
(1)マンガン化合物と鉄化合物とを混合し、次いで酸化性雰囲気下で焼成して得られ、かつBET比表面積が30〜120m 2 /gである廃水処理用触媒。
【0018】
(2)マンガン化合物と鉄化合物とチタン化合物および/またはジルコニウム化合物とを混合し、次いで酸化性雰囲気下で焼成して得られ、かつBET比表面積が30〜120m 2 /gである廃水処理用触媒。
【0019】
(3)チタンおよび/またはジルコニウムとマンガンおよび/または鉄とが緊密に混合されてなる上記(2)記載の廃水処理用触媒。
【0020】
(4)ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、および白金よりなる群から選ばれる元素の金属および/またはその金属の化合物の少なくとも1種をさらに含む上記(1)〜(3)記載の廃水処理用触媒。
【0021】
(5) 上記(1)記載の触媒において、マンガンの酸化物および/または複合酸化物がMnO2換算として0.05〜50重量%であり、かつ鉄の酸化物および/または複合酸化物がFe2O3換算として99.95〜50重量%である上記(1)記載の廃水処理用触媒。
【0022】
(6) 上記(2)または(3)記載の触媒において、マンガンの酸化物および/または複合酸化物がMnO2換算として0.05〜50重量%であり、鉄の酸化物および/または複合酸化物がFe2O3換算として95〜30重量%であり、かつチタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物がTiO2換算およびZrO2換算として5〜70重量%(鉄、チタンおよびジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物および/または複合酸化物は、Fe2O3換算、TiO2換算およびZrO2換算として合計で99.95〜50重量%である)である上記(2)または(3)記載の廃水処理用触媒。
【0023】
(7) 上記(1)、(2)、(3)、(5)または(6)記載の触媒に100重量部対して、さらにルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、および白金よりなる群から選ばれる元素の金属および/またはその金属の化合物の少なくとも1種を0.05〜10重量部の範囲の量で含んでなる上記(1)〜(6)記載の廃水処理用触媒。
【0024】
(8) マンガンの酸化物および/または複合酸化物が、MnOxの形態で換算してx=1.5〜2.0の範囲にある上記(1)〜(7)記載の廃水処理用触媒。
【0026】
(9)マンガンの酸化物前駆体と鉄の酸化物前駆体および/またはマンガンと鉄の複合酸化物前駆体とを、酸化性雰囲気中にて300℃以上で熱処理する工程を少なくとも採用する上記(1)、(3)、(5)または(6)記載の廃水処理用触媒の製造方法。
【0027】
(10)チタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物の前駆体をも、酸化性雰囲気中にて300℃以上で熱処理する工程を少なくとも採用する上記(2)、(3)または(6)記載の廃水処理用触媒の製造方法。
【0028】
(11)140℃以上370℃未満の処理温度、廃水が液相を保持する圧力下で、上記(1)〜(10)記載の触媒の存在下に酸素含有ガスにより廃水を湿式酸化処理することによりなる廃水の処理方法。
【0029】
(12)廃水が窒素含有化合物、硫黄含有化合物およびハロゲン含有化合物からなる少なくとも1種を含むものである上記(11)記載の廃水の処理方法。
【0030】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0031】
【作用】
本発明の第1の廃水処理用触媒の組成は、マンガンと鉄のそれぞれの酸化物および/または複合酸化物を含有する。そして特に好ましくはマンガンと鉄とが緊密に混合されたものであり、さらに好ましくはマンガンと鉄とが複合酸化物の形態を有するなどの緊密に両者が混合されたものである。
【0032】
マンガンおよび鉄を併用することによって触媒活性および耐久性に優れた触媒となり、各成分の比率は特に限定されないが、好ましくは、触媒全体において、マンガンの酸化物および/または複合酸化物がMnO2換算として0.05〜50重量%であり、鉄の酸化物および/または複合酸化物がFe2O3換算として99.95〜50重量%からなる。また好ましくはマンガンの酸化物および/または複合酸化物がMnO2換算として0.5〜30重量%および鉄の酸化物および/または複合酸化物がFe2O3換算として99.5〜70重量%からなり、より好ましくはマンガンの酸化物および/または複合酸化物がMnO2換算として1〜20重量%および鉄の酸化物および/または複合酸化物がFe2O3換算として99〜80重量%の組成を有するものである。マンガンの酸化物および/または複合酸化物の割合が0.05重量%未満である場合は、本発明によるところの触媒湿式酸化処理する条件下で該触媒を使用したときに、触媒の活性が十分でなく、50重量%よりも多い場合は、本発明によるところの触媒湿式酸化処理する条件下で該触媒を使用したときに、触媒活性は十分であるが、該触媒の形状維持のための機械的強度が低下するという欠点を有する。従って、触媒が具備すべき種々の条件を考慮して上記好ましい範囲からマンガンの酸化物および/または複合酸化物と鉄の酸化物および/または複合酸化物の使用割合が決定される。
【0033】
本発明の第2の廃水処理用触媒の組成は、上記第1の触媒にチタンおよび/またはジルコニウムのそれぞれの酸化物および/または複合酸化物をさらに含むものである。チタンおよび/またはジルコニウムのそれぞれの酸化物および/または複合酸化物を併用することにより、本願発明の第1触媒における触媒形状維持のための機械的強度がさらに改善されるという効果が得られる。特に好ましくはマンガンおよび/または鉄とチタンおよび/またはジルコニウムとが緊密に混合されたものであり、さらに好ましくは鉄とチタンおよび/またはジルコニウムとが複合酸化物の形態を有するなどの緊密に両者が混合されたものである。
【0034】
各成分の比率は特に限定されないが、好ましくは、触媒全体において、マンガンの酸化物および/または複合酸化物がMnO2換算として0.05〜50重量%であり、鉄の酸化物および/または複合酸化物がFe2O3換算として95〜30重量%であり、かつチタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物がTiO2換算およびZrO2換算として5〜70重量%(鉄、チタンおよびジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物および/または複合酸化物は、Fe2O3換算、TiO2換算およびZrO2換算としてその合計で99.95〜50重量%である)である。チタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物が5重量%未満の場合にはこれらの成分の添加効果が低く、また70重量%を越える場合には逆に触媒の活性が低下したり耐久性および耐アルカリ性が低下する。
【0035】
また好ましくは、触媒全体に対して、マンガンの酸化物および/または複合酸化物がMnO2換算として0.5〜30重量%であり、鉄の酸化物および/または複合酸化物がFe2O3換算として93〜40重量%であり、かつチタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物がTiO2換算として、ZrO2換算として7〜60重量%(鉄、チタンおよびジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物および/または複合酸化物は、Fe2O3換算として、TiO2換算として、ZrO2換算としてその合計で99.5〜70重量%である)である。
【0036】
さらに本発明の第2触媒の最も好ましい組成は、触媒全体に対して、マンガンの酸化物および/または複合酸化物がMnO2換算として1〜20重量%であり、鉄の酸化物および/または複合酸化物がFe2O3換算として90〜50.0重量%であり、かつチタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物がTiO2換算として、ZrO2換算として10〜50.0重量%(鉄、チタンおよびジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物および/または複合酸化物は、Fe2O3換算として、TiO2換算として、ZrO2換算としてその合計で99〜80重量%である)である。
【0037】
本発明の第3の廃水処理用触媒は、上記第1触媒にルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、および白金よりなる群から選ばれる元素の金属および/またはその金属の化合物(以下これらを総称して貴金属元素類ということもある)を少なくとも1種含むものである。
【0038】
本発明の第4の廃水処理用触媒は、上記第2触媒にルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、および白金よりなる群から選ばれる元素の金属および/またはその金属の化合物を少なくとも1種含むものである。
【0039】
この貴金属元素類は第1触媒または第2触媒の全量(100重量部)に対して、それぞれ0.05〜10重量部、好ましくは0.1〜2.5重量部の範囲で含有せしめることが効果的である。0.05重量部未満である場合には、貴金属元素類の効果が少なく、触媒の活性が向上しないものであり、10重量部を越える場合には、触媒費の上昇に見合った触媒の性能向上が得られないため経済的に好ましくない。また、触媒の耐久性ならびに触媒の機械的強度も低下するものである。
【0040】
本発明に係る触媒は、いずれも該触媒の前駆体中に含有される物質および不純物、ならびに該触媒製造工程中に混入する物質および不純物などが不純物として含有されることがある。例えば、ケイ素、アルミニウム、硫黄、ハロゲン、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、窒素、クロム、ニッケルなどの物質があるが、これらを微量含有しても、本発明によるところの触媒の物性に大きく影響を与えるものでない限り、特に触媒としての効果に何ら差し障りのないものである。
【0041】
本発明の触媒は、例えばペレット状、粒状、球状もしくはリング状のもの、または、ハニカムなどの一体構造体等、種々の形状の物に成形して使用することができる。また、上記形状を有する無機酸化物担体、金属担体等に担持して使用することもできる。また触媒を成形する場合、触媒に無機酸化物を添加し成形することができる。この場合、無機酸化物は、ガラス繊維等の成型助材と同じように本発明に係る触媒成分と混合し、成型して使用することも可能であり、この場合、触媒の成型性および機械的強度等を向上させるのに有効である。
【0042】
無機酸化物としては、コバルト、ニッケル、クロム、銅、錫、ニオブ、バリウム、ランタン、セリウム、プラセオジウム、アルミニウム、ケイ素、ナトリウム、カリウム等を含む酸化物、これらの複合酸化物、ガラス繊維等を挙げられる。これらの無機酸化物は本発明の触媒成分と混合して成形して使用することも可能であり、この場合、触媒の成形性、機械的強度等を向上させるのに有効である。
【0043】
これらの無機酸化物は、触媒成分と混合し、成型して使用する場合には、触媒全量に対して、好ましくは70〜0.01重量%、より好ましくは10〜0.1重量%である。70重量%を越える場合は、触媒としての効果が減少するものであり、0.01重量%未満である場合は、不純物とみなすことができるものである。
【0044】
これらの無機酸化物担体(チタン、ジルコニウム、鉄、マンガンの元素の酸化物類は除く)もしくは金属担体は、これらに本発明に係る触媒成分を担持して使用する場合には、触媒全量に対して、好ましくは99.5〜20重量%、より好ましくは95〜50重量%であるときに効果的である。99.5重量%を越える場合は、触媒としての効果が減少するものであり、20重量%未満である場合は、担体としての効果が少なく、触媒としての形状を維持するための機械的強度が減少するものである。
【0045】
本発明に係る粒状および球状の触媒としては、好ましくは平均粒径1〜10mm、より好ましくは2〜7mmである。平均粒径が1mm未満であると触媒を充填したときの反応塔の圧力損失が増加し、また10mmよりも大きい場合には十分な幾何学的表面積をとれず、接触効率が低下し、十分な処理能力が得られなくなる。
【0046】
本発明に係るペレット状の触媒としては、好ましくは平均径1〜10mm、より好ましくは3〜8mmで、好ましくは平均長さ2〜15mm、より好ましくは3〜10mmである。平均径が1mm未満または平均長さが2mm未満であると圧力損失が増加し、また平均径が10mmよりも大きいもしくは平均長さが15mmよりも大きい場合には十分な幾何学的表面積をとれず、接触効率が低下し、十分な処理能力が得られなくなる。
【0047】
本発明に係るリング状の触媒としては、好ましくは平均外径4〜15mm、より好ましくは6〜12mmで、好ましくは平均長さ2〜15mm、より好ましくは3〜10mmで、好ましくは平均肉厚0.5〜5mm、より好ましくは1〜4mmである。平均外径が4mm未満または平均長さが2mm未満であると圧力損失の増加ならびに成形性が困難であり、また平均外径が15mmよりも大きいもしくは平均長さが15mmよりも大きい場合には十分な幾何学的表面積をとれず、接触効率が低下し、十分な処理能力が得られなくなる。また平均肉厚が0.5mm未満の場合には圧力損失が小さくなり、触媒を軽量化できるという利点があるが、触媒の機械的強度が低下することがあり、平均肉厚が5mmを越える場合には機械的強度は十分であるが、十分な幾何学的表面積をとれず、接触効率が低下し、十分な処理能力が得られなくなる。
【0048】
本発明に係るハニカム状触媒の形状としては、貫通孔の相当直径が2〜20mm、セル肉厚が0.1〜3mmおよび開孔率が50〜90%の範囲が好ましい。さらに貫通孔の相当直径が2.5〜15mm、セル肉厚が0.5〜3mmおよび開孔率が50〜90%の範囲であることがより好ましい。貫通孔の相当直径が2mm未満である場合には圧力損失が大きく、また相当直径が20mmを越える場合には圧力損失は小さくなるが、接触効率が低下して吸着効率が低くなる。またセル肉厚が0.1mm未満の場合には圧力損失が小さくなり、触媒を軽量化できるという利点があるが、触媒の機械的強度が低下することがある。セル肉厚が3mmを越える場合には機械的強度は十分であるが、圧力損失が大きくなることがある。開孔率についても上記と同様の理由から50〜90%の範囲が好ましい。
【0049】
本発明に係る触媒のBET法比表面積は5〜200m2/gであるならば特に限定されるものではないが、好ましくは10〜150m2/gであり、さらに好ましくは30〜120m2/gである。5m2/g未満の場合には被処理物質と触媒との接触効率が低下し、触媒の活性が低下するものであり、また200m2/gよりも大きい場合には触媒の機械的強度が弱くなる。
【0050】
次に、本発明の廃水処理用触媒の製造方法について説明する。
【0051】
本発明に係る触媒の製造方法は特に限定されるものではなく、種々の製造方法で作成することができる。基本的にはマンガン元素を含有する化合物と鉄元素を含有する化合物の混合したのち、酸化雰囲気下で焼成して調製される。
【0052】
以下、マンガン元素を含有する化合物と鉄元素を含有する化合物の混合方法を例にとり具体的に説明する。
【0053】
(1)マンガン元素を含有する化合物の水溶液と鉄元素を含有する化合物の水溶液とを混合し、アンモニア水または水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリでpH調整し、上記化合物を水酸化物として共沈する。すなわち、共沈法で調製する。
【0054】
(2)マンガン元素を含有するゲル状もしくは固体の水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩化物などの化合物もしくは酸化物と、鉄元素を含有するゲル状または固体の水酸化物、硝酸塩、有機酸塩、塩化物、酸化物などの化合物を緊密に混練し、練り合わせる混練り法で調製する。
【0055】
(3)鉄元素を含有するゲル状または固体の水酸化物、硝酸塩、有機酸塩、塩化物、酸化物などの化合物にマンガン元素を含有する化合物の水溶液を添加する添加法で調製してもよく、またはマンガン元素と鉄元素とを逆の形態で添加する添加法で調製する。
【0056】
(4)鉄元素を含有する酸化物などの化合物の成型体に、マンガン元素を含有する化合物の水溶液を含浸する含浸法で調製する。
【0057】
(5)上記方法を組み合わせて調製する。
【0058】
等の方法を挙げることができる。
【0059】
なお特に限定されるものではないが、さらにチタンおよび/またはジルコニウム元素を触媒系に導入する際、または貴金属元素類を導入する際には、当該元素を含有する化合物を上記(1)〜(5)記載の方法において任意の時機に添加すればよい。すなわち、マンガン元素を含有する化合物または鉄元素を含有する化合物、もしくはその一部を当該元素を含有する化合物で置き換えて使用してもよいし、複数回操作を行ってもよい。また各種化合物の添加順序についても適宜選択すればよい。
【0060】
本発明に係る触媒は、マンガンの酸化物と鉄の酸化物が緊密に混合された形で酸化物および/または複合酸化物を形成したものであり、これにより構成する各成分単独の酸化物では見られない特異な物性が特に発現する。このことにより、該触媒を廃水処理用触媒として使用した場合、触媒活性の向上ならびに耐久性、耐アルカリ性の向上が顕著になるという効果を奏したものと推定される。特に本発明に係る触媒では作成した触媒のX線回折を測定すると、マンガンと思われる酸化物のピークが現れないか、あるいは現れても単にマンガンの酸化物と他の酸化物を混合しただけのもののX線回折のピークと比較して非常に弱いピーク強度しか示さないものであった。このことから推察して、本発明に係る触媒のマンガンの酸化物は、ただ単にマンガンの酸化物として存在しているのではなく、鉄あるいは鉄、チタンおよび/またはジルコニウムと複合酸化物を形成しているものと考えられる。
【0061】
また、同様にチタンおよび/またはジルコニウムを含む酸化物は、マンガンまたは鉄の酸化物、および/またはマンガンと鉄の複合酸化物と緊密に混合された形で酸化物および/または複合酸化物を形成し、これにより構成する各成分単独の酸化物では見られない特異な物性が発現する。このことにより、該触媒の機械的強度が特に著しく向上するという効果を奏したものと推定される。しかし、マンガンの酸化物は鉄の酸化物と緊密に混合された形で酸化物または複合酸化物を形成することで、該触媒を廃水処理用触媒として使用した場合に特に触媒活性の向上および耐久性、耐アルカリ性の向上が顕著である。従って、チタンおよび/またはジルコニウムの元素を含有する化合物の添加は、マンガン元素を含有する化合物と鉄元素を含有する化合物が、緊密に混合された形で形成された後に加え、さらに緊密に混合するのが、含浸法以外の方法では効果的である。
【0062】
また他方本発明に係る触媒では、鉄とチタンの複合酸化物、鉄とジルコニウムの複合酸化物、チタンとジルコニウムの複合酸化物ならびに鉄とチタンとジルコニウムの複合酸化物が含有されることのある触媒がある。これらの複合酸化物を使用した場合には、単独の酸化物だけを使用した場合には見られない特異な物性が発現することがある。特に鉄とチタンおよび/またはジルコニウムの複合酸化物は、それ単独のそれぞれ酸化物を使用した場合には見られない特異な物性が発現する。鉄の酸化物との比較では、これらの複合酸化物を使用した場合には触媒として成型した場合に、この得られた成型物に強い機械的強度が得られる特徴が現れる。またチタンの酸化物またはジルコニウムの酸化物との比較では、湿式酸化用の触媒として触媒を調製し、湿式酸化処理した場合に、鉄との複合酸化物として用いた触媒の方がより耐アルカリ性に優れ、また処理活性も向上する特徴が現れる。このため本発明に係る触媒では、これらの元素を単独の酸化物として用いるよりも、複合酸化物として用いた方がより好ましい。
【0063】
この場合の鉄とチタンの複合酸化物、鉄とジルコニウムの複合酸化物、チタンとジルコニウムの複合酸化物ならびに鉄とチタンとジルコニウムの複合酸化物とは、これらの元素が緊密に混合された形で酸化物を形成したものである。この時、これらの化合物のX線回折を測定すると、これらの化合物のX線回折の結果は、単独の酸化物では得られない複合酸化物としてのピークが得られるか、あるいはこのピークが得られなくとも、別々に同様の方法で調製したこれらの酸化物を、単純に混合しただけのものの酸化物のX線回折のピークよりも弱いピーク強度しか得られないものである。このことから推察してこれらの元素を緊密に混合した形で酸化物を形成したものは、複合酸化物を形成しているものと考えられる。
【0064】
このため本発明における緊密に混合するとは、上記のようにして調製されたもののX線回折の結果において、単独の酸化物では得られない複合酸化物としてのピークが得られるか、あるいはこのピークが得られなくとも、別々に同様の方法で調製したこれらの酸化物を、単純に混合しただけのものの酸化物のX線回折のピークよりも弱いピーク強度しか得られないものとなるように混合することを言う。
【0065】
マンガンの酸化物および/または複合酸化物の前駆体としては、各種マンガンを含有する化合物を用いることができ、マンガンの水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩化物、硫酸塩などの化合物もしくは活性二酸化マンガン、電解二酸化マンガンなどの酸化物、もしくは過マンガン酸カリウムなどの複合酸化物等がある。鉄の酸化物および/または複合酸化物の前駆体としては、水酸化物、硝酸塩、有機酸塩、塩化物、硫酸塩などの化合物もしくは酸化第一鉄、酸化第二鉄、四三酸化鉄などの酸化物等がある。チタンまたはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物の前駆体としては、水酸化物、硫酸塩、塩化物などの化合物もしくはチタニア、ジルコニアなどの酸化物、またはチタン酸バリウムなどの複合酸化物等がある。貴金属元素類の前駆体としては水酸化物、硝酸塩、炭酸塩、有機酸塩、塩化物、硫酸塩、酸化物などの化合物および金属がある。
【0066】
また本発明に係る触媒の成形方法は特に限定されるものではなく、種々の成型方法によって触媒を作成することができ、目的とする触媒の形状によって適した成型機を使用する。
【0067】
さらに本発明に係る触媒は製造するに当たり、例えば上記(1)〜(5)の調製方法で得られたマンガンの酸化物および/または複合酸化物の前駆体と鉄の酸化物および/または複合酸化物の前駆体とを、あるいはマンガンの酸化物および/または複合酸化物の前駆体と鉄の酸化物および/または複合酸化物の前駆体、チタンおよび/またはジルコニウムの酸化物および/または複合酸化物の前駆体とを、酸化性雰囲気中にて300℃以上で熱処理することが好ましい。すなわち触媒を調製もしくは成形する場合に、300℃以上で酸素含有ガスの供給下に焼成することが効果的である。またこの場合の焼成時間は、触媒を斑なく均一に焼成する必要性から1時間以上であることが好ましい。さらに焼成温度は300〜550℃、焼成時間は1〜5時間、酸化雰囲気中とするには酸素含有ガスのもとで行うのが好ましい。またさらに好ましくは焼成温度は350〜500℃であることが効果的であり、酸素含有ガスは空気であることがよい。焼成温度が300℃未満もしくは焼成時間が1時間未満である場合は、触媒の機械的強度が低下するため好ましくない。また550℃よりも高い場合には本発明に係る触媒の活性が低下し、なおかつ触媒の耐久性も低下する場合がある。本発明に係る触媒の製造方法における酸化性雰囲気中での触媒の熱処理は、前もって焼成炉等を用いて行ってもよく、また湿式酸化反応塔内に充填した後に反応塔内で行ってもよく、特に限定されるものでない。
【0068】
本発明に係る触媒成分であるマンガンの酸化物および/または複合酸化物は、鉄を含む酸化物と、または鉄とチタンおよび/またはジルコニウムを含む酸化物とが緊密に混合された形で酸化物を形成しているため酸化数を正確に求めることはできないが、一般的なマンガンの酸化物から考慮して、550℃よりも高い高温で焼成した場合には、マンガンの酸化物が低温での焼成した酸化物よりも、より低位の酸化物に変化することが知られており、またその酸化数が求められている。これに基づき本発明に係るマンガンの酸化数を推定することができる。このことから本発明に係る触媒におけるマンガンの酸化物の酸化数は、MnOxの形態で換算してx=1.5〜2.0の範囲であることが効果的であると考えられ、すなわちマンガンの酸化数が3価もしくは4価であることが効果的であると考えられる。またさらには、MnOxの形態でx=1.7〜2.0の範囲であることが効果的であると考えられ、特にマンガンの酸化数が4価であることが効果的であると考えられる。
【0069】
またマンガンの酸化物および/または複合酸化物は種々の変態を形成するが、それにより本発明に係る触媒が限定されるものではない。
【0070】
本発明において、マンガンを含有していない本発明における触媒の製造過程での鉄の酸化物および/または複合酸化物の前駆体、あるいは鉄、チタンおよびジルコニウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の酸化物および/または複合酸化物の前駆体に対しては、より高温の500℃よりも高い焼成温度で焼成でき、さらには550℃よりも高い焼成温度で焼成することができる。この場合、本発明に係る触媒の活性は若干低下するが、触媒の機械的強度が増加することもある。ただしこの場合においても焼成温度は800℃以下であることが効果的である。800℃を越える場合には、生成する酸化物の比表面積が低下するため、被処理物質と触媒との接触効率が低下し、触媒の活性が低下するものである。
【0071】
次に、本発明の廃水処理用触媒を用いた廃水の処理方法について説明する。
【0072】
本発明における触媒湿式酸化処理の処理温度は、140℃以上370℃未満であり、好ましくは150℃以上300℃未満であり、さらに好ましくは160℃以上280℃未満である。処理温度が370℃以上である場合は廃水の液相を維持することができないものであり、300℃以上である場合は液相を維持するためにかなりの加圧条件を必要とするため、設備費ならびに運転費的にコストが高くなるものである。また、処理温度が140℃未満である場合は有機物および無機COD成分等の処理効率が低下し、廃水の浄化が不完全なものとなり、150℃未満の場合でもまだ十分に有機物等を分解することができないことが多いため廃水の浄化の不十分な場合が多い。
【0073】
また本発明における酸素含有ガスの種類は特に限定されるものではなく、酸素、オゾン等のガスを用いることもできるが、好ましくは価格の安価な空気であり、場合によってはこれらを適宜不活性ガス等により希釈して用いることもできる。またこれらのガス以外にも他のプラント等より生じる酸素含有の排ガスも適宜使用することができる。
【0074】
この酸素含有ガスの使用量は処理廃水の濃度により適宜選択されるが、廃水中のCOD成分等を完全に水、炭酸ガス、無機塩、その他灰分等にするに必要な酸素量の0.3〜5倍、より好ましくは1.0〜3倍である。5倍を越えるときは無用の酸素の供給となり、0.3倍未満である場合は必要な酸素量に足らず廃水の浄化が不完全なものとなる。また0.3〜1.0倍の範囲は、廃水中のCOD成分等を完全に水、炭酸ガス、無機塩、その他灰分等にするに必要な酸素量として足らないが、通常の湿式酸化処理ではCODの処理効率は100%未満となることから、例えば1.0倍で供給した酸素は最終的に100%使用されることはなく、処理後の排ガス中に残ることが多い。このため、このような場合には供給する酸素量を実際の処理効率にあわせて1.0倍未満に減少させても、処理後に酸素が残存する酸素過剰の状態が保たれるのであれば処理に支障をきたさない場合もあるからである。
【0075】
本発明に係る触媒を使用した廃水の処理における液の処理量は、一般的に空間速度としては、0.1hr-1〜10hr-1であり、より好ましくは、0.5hr-1〜5hr-1である。空間速度10hr-1を越える場合には、廃水の処理効率が低下し、空間速度0.1hr-1未満である場合は、廃水の処理量が低下し、設備が過大なものとなる。
【0076】
本発明に係る触媒で廃水を湿式酸化処理する時のpHは、特に限定されるものではなく、適宜設定することが可能である。特に該触媒は従来触媒に比較して耐アルカリ性に優れるという特質を生かして廃水のpHがアルカリ性であるものを処理するのに好都合である。例えばpH6以上で使用することが好ましく、さらに好ましくはpH7.5以上で使用することが好ましい。またこれは湿式酸化処理後の処理液pHならびに湿式酸化処理中の液pHについても同様であり、pH6以上で使用することが好ましく、さらに好ましくはpH7.5以上で使用することが好ましい。
【0077】
一般に触媒湿式酸化処理に使用する配管および反応器等の材質はステンレス鋼等が使用されており、酸性域では配管等の腐食の問題がある。そこで廃水は腐食を防ぐ観点からもアルカリ域のpHに調整されて反応に供されるのが好ましい。従来の触媒の多くは、液のpHがアルカリ域である場合、酸性の場合よりも活性が低下することが多くあった。本発明に係る触媒が耐アルカリ性に優れ、活性も高いという特質は、これらの要求からも好ましいものである。
【0078】
本発明に係る触媒は、前記のとおりアルカリ性において触媒の耐久性および活性が高いので、廃水のpHを高アルカリ域に調整することが可能となり、装置の材質面において耐食性を向上させることができる。この装置材質の耐食性の問題は、従来廃水中に塩素イオン、臭素イオン、有機ハロゲン化合物などのハロゲン含有化合物;チオ硫酸イオン、亜硫酸イオン、硫化物、有機硫黄化合物などの硫黄含有化合物;硝酸イオン、亜硝酸イオン、アンモニウムイオン、有機窒素化合物などの窒素含有化合物を含有した場合に特に問題であったが、本発明に係る触媒は、これらを含む廃水に対しても有効である。
【0079】
また本発明に係る触媒で廃水を湿式酸化処理するときのpHの上限は、特に限定されるものではないが、好ましくは湿式酸化処理後の処理液のpHが12以下であることが効果的であり、さらに効果的にはpHが10以下である。pHが12よりも高い場合、処理液のpHが10以下の場合と比較して処理効率が低下することがある。また処理液を河川等に放流する場合、アルカリ性が高いときにはpHを調製し、アルカリを中和する必要があるが、処理液のpHが高いと、このときに使用する酸の量が増加する問題も生じる。またさらにステンレス鋼などの材質を反応塔などに使用した場合、pHが12よりも高いときには材質のアルカリ腐食などの問題がある。
【0080】
また、従来の触媒の中にはアミン化合物、アミド化合物、アミノ酸化合物などの有機窒素化合物を含む廃水、有機硫黄化合物などの硫黄含有化合物を含む廃水および有機ハロゲン化合物を含む廃水の処理に対して特に耐久性に問題があるものもあったが、本発明に係る触媒を用いれば耐久性よく、しかも処理効率も高く廃水を処理できる。
【0081】
本発明において、廃水のpHを調整する際には、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等もしくはこれらの水溶液等を適宜添加して調整すればよく、特に限定されるものではない。また必要に応じて、硫酸等の酸性のpH調節用の薬剤を添加することもでき、特に限定されるものではない。またこの場合の添加方法も特に限定されるものではなく、廃水のストックタンク等に前もって添加しておく場合もあれば、フィ−ドポンプ等を用いて連続的に添加し、pHを調整することもできる。
【0082】
同様に本発明に係る触媒で廃水を処理した後の処理液を、放流するに適した、あるいは後処理を実施するのに適したpHとなるように適宜上記と同じようにpH調整を行うことができ、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、硫酸等もしくはこれらの水溶液等を添加することができ、特に限定されるものではなく、この添加方法に関しても特に限定されるものではない。
【0083】
本発明においては、本発明の実施前に、予め従来からある廃水の浄化方法を用いて廃水を処理することもでき、特に限定されるものではない。例えば、触媒湿式酸化処理においてスケール等を生成するために問題となる重金属類やカルシウム、マグネシウム、ケイ素、アルミニウム、リンなどの除去に関する浄化処理を行うことができ、具体的には活性炭、無機吸着材もしくは有機高分子材料などを用いた吸着分離除去法および電気透析法などを用いて除去することもできる。また廃水中の固形物などを分離除去する浄化処理を行うこともでき、更には有機物ならびに無機COD成分等を分解する無触媒での湿式酸化処理法等の浄化処理を採用することもできる。
【0084】
また同様に本発明の実施後にも従来からある廃水の浄化方法を用いて本発明による処理液を処理することもでき、特に限定されるものではない。本発明の実施後は、例えば、生物処理または化学的処理する場合にあっても、予め有害物質等が廃水から除かれ、かつCOD成分等もかなり低減され、しかも残留しているCOD成分等は生物処理、化学的処理において非常に分解処理され易い物質まで分解されているため、生物処理設備または化学的処理設備への負担が非常に小さくなる。
【0085】
また、本発明は、用地が狭くてすみ、装置もコンパクトであるため、従来からあるような廃水処理設備、例えば生物処理設備、燃焼処理設備などを採用した場合と比較して処理設備は小さく、処理プロセスも簡素化され、設備投資や、ランニングコストの面においても有利となる。
【0086】
本発明において触媒は適宜洗浄することができ、その洗浄方法等によって特に限定されるものではなく、例えば、水、ならびにアルカリ性の水溶液を用いて実施するが、好ましくはアルカリ性の水溶液を用いて実施するのが効果的である。水単独では触媒に物理的に弱く付着したようなスケール分を取り除くことはできるが、物理的に強く吸着したスケール分および化学的に吸着したスケール分等を取り除くことは困難である。本発明に係る触媒はこの洗浄においても劣化しないものである。
【0087】
この洗浄剤として使用するアルカリ性の水溶液は特に限定されるものではなく、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、炭酸ナトリウム水溶液等の種々のアルカリ水溶液を用いることができる。これらの洗浄剤は洗浄する触媒上に付着した物質の種類によって使い分けるものであるが、一般的には水酸化ナトリウム水溶液が好ましいものである。
【0088】
このアルカリ水溶液の濃度は、例えば水酸化ナトリウム水溶液を用いる場合には水酸化ナトリウムの濃度で、1g/リットル以上含まれている場合が効果的であり、さらに効果的であるのは10g/リットル以上である。水酸化ナトリウムの濃度が1g/リットル未満の場合は、洗浄の効果が著しく減少する。また10g/リットル未満の場合は洗浄液の量が多いものとなり、洗浄後の処理が煩雑なものとなるうえ短時間で洗浄処理を完結するためには処理温度を比較的高温にする必要がある。また水酸化ナトリウムの濃度が400g/リットル未満の場合が好ましく、さらに好ましいのは300g/リットル未満の場合である。400g/リットル以上の場合は該洗浄液の粘性が増加し、洗浄液をフィ−ドするのが困難になるうえ、高温での使用には装置材質の耐食性が低下する場合もある。
【0089】
またアルカリ性の洗浄液を用いて洗浄を実施する温度は、50℃〜300℃の温度であれば特に限定されるものではないが、好ましくは130℃〜270℃である。処理温度が低い場合は洗浄効果が少なく、洗浄時間も多くかかる。このため高温の方が洗浄時間が短縮されかつ洗浄力も向上するが、洗浄液が液相を保持する圧力下の温度で洗浄する必要がある。また過剰な高温度の条件は運転コストの増大を生じるのみならず、装置材質の耐食性が低下する場合もある。
【0090】
触媒洗浄の時の処理圧力は、洗浄温度との相関性により適宜選択され、洗浄液が液相を保持する圧力下によりなされ、特に限定されるものではない。
【0091】
本発明においての洗浄方法は、該洗浄液を常に流した状態で洗浄する連続式の洗浄方法でも良いし、触媒の充填された容器内に溜めて一定時間放置して洗浄し、随時抜き出すバッチ式の洗浄方法であっても良く、特に限定されるものではない。
【0092】
本発明に係る廃水は、一般的に化学プラント設備、メッキ工業設備、皮革製造設備、金属工業設備、金属鉱業設備、食品製造設備、医薬品製造設備、繊維工業設備、紙パルプ工業設備、染色染料工業設備、電子工業設備、機械工業設備、印刷製版設備、ガラス製造設備、写真処理設備等からの廃水を対象とするものであるが、好ましくは廃水中に窒素含有化合物、硫黄含有化合物およびハロゲン含有化合物よりなる群から選ばれる少なくと1種の化合物を含むものである。またさらに、窒素含有化合物は有機窒素化合物の場合、ハロゲン含有化合物は有機ハロゲン化合物の場合に、特に本発明における廃水の処理の効果が従来よりもよい結果である。
【0093】
本発明に係る窒素含有化合物とは、アンモニア、ヒドラジン等の無機の窒素化合物および有機窒素化合物のことである。さらに有機窒素化合物とは、窒素原子を少なくとも1つ含む有機の化合物のことであり、例えば、ジメチルホルムアミド、ピリジン、ピコリン、アセトアミド、アニリン、グリシン、アラニン、フェニルアラニン、グルタミン酸、リジン、アスパラギン酸、セリン、メチオニン、ヒスチジン、エチレンジアミン、エタノールアミン、トリエタノールアミンなどの窒素原子含有の低分子な有機物、またはドデシルアミンなどのカチオン系または両性系の界面活性剤、またはポリアクリル酸アミドなどの窒素原子含有のポリマーなどである。
【0094】
また本発明に係る硫黄含有化合物とは、硫酸根以外の硫黄原子を少なくとも1つ含む無機あるいは有機の化合物であり、例えば、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホン、メタンスルホン酸、チオフェン、チオフテン、p−トルエンスルホン酸、スルホ安息香酸、チオ酢酸、ナフタリンスルホン酸などの硫黄原子含有の低分子な有機物、またはドデシルベンゼンスルホン酸などのアニオン系あるいは両性系の界面活性剤、またはポリスルホン酸系などの硫黄原子含有のポリマー、またはチオ硫酸、亜硫酸、硫化ソーダなどの硫黄原子含有の無機物などである。
【0095】
また本発明に係るハロゲン含有化合物とは、塩化ナトリウム、臭素酸ナトリウムなどの無機ハロゲン化合物および有機ハロゲン化合物のことである。さらに有機ハロゲン化合物とは、ハロゲン原子を少なくとも1つ含む有機の化合物のことであり、例えば、塩化メチル、臭化メチル、塩化エチル、臭化エチル、ジクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、塩化ビニル、臭化ベンジル、p−クロルフェノール、トリクロロフルオロメタン、ジクロロフルオロメタンなどのハロゲン原子含有の有機物などである。
【0096】
これらの化合物の濃度は特に限定されるものではないが、無機COD成分および有機物の場合には廃水中に10mg/リットル〜100g/リットル、好ましくは100mg/リットル〜50g/リットルである。10mg/リットル未満である場合は、特に本発明に係る触媒を用いて処理を実施しなくとも充分処理できるものであり、100g/リットルを超える場合は、濃度が濃すぎるために、湿式酸化処理のための処理温度、供給酸素含有ガス量などの各種の制御が困難になるものである。また無機の塩類等の場合、濃度が濃いときにはこれらの液中からの析出によるラインの閉塞などを生じる。このため無機の塩類は、200g/リットル未満が好ましい。
【0097】
本発明において処理される廃水のCODの濃度は、特に限定されるものではないが、1g/リットル〜200g/リットル含まれている場合が効果的であり、より効果的であるのは10g/リットル〜100g/リットルである。CODの濃度が200g/リットルを越える場合は、CODの酸化熱が非常に大きくなるため処理装置の制御が困難であり、100g/リットルを越える場合においてもCODの酸化熱が大きいため冷却のための設備等を有する場合が多くコスト的に高くなる。また1g/リットル未満である場合は、昇温に必要な熱量をほぼすべて熱供給装置により供給しなければならない。また10g/リットル未満である場合においてもCODの酸化熱が小さく、付属設備として熱交換装置を用いて熱回収しても、この熱だけによる湿式酸化処理装置の自立運転は困難な場合が多い。このためこのような場合にも別途熱供給装置を必要とする場合が多く、使用エネルギー面からも相対的に不利となる。
【0098】
本発明において使用する触媒を充填した湿式酸化処理装置、すなわち触媒湿式酸化処理装置は、通常使用されるものが用いられ、処理塔あるいは反応塔は、単管式、多管式のいずれの形式であってもよいし、廃水に含まれる成分、その量等によっては単管式と多管式とを、単独または組み合わせて処理に適した条件で処理することもできる。
【0099】
さらに、本発明は触媒の充填されてなる反応塔に酸素含有ガスおよび廃水を供給して、廃水が液相を保持する圧力下で、廃水を湿式酸化処理するに際して、ひとつの反応塔に少なくとも2種以上の触媒組成の異なる触媒を積層充填し、かつ該廃水の流れ方向に対して上流側に本発明に係る触媒を充填して廃水を湿式酸化処理する廃水の処理方法も提供する。
【0100】
また、本発明は触媒の充填されてなる反応塔に酸素含有ガスおよび廃水を供給して、廃水が液相を保持する圧力下で、廃水を湿式酸化処理するに際して、複数の反応塔にそれぞれ少なくとも2種以上の触媒組成の異なる触媒を充填し、かつ該廃水の流れ方向に対して上流側の反応塔に本発明に係る触媒を充填して廃水を湿式酸化処理する廃水の処理方法も提供する。
【0101】
さらにこれら2つの方法を組み合わせて廃水を処理することもできる。
【0102】
ひとつの反応塔あるいは複数の反応塔に充填される少なくとも2種以上の触媒組成の異なる触媒は、本発明に係る触媒は必ず充填されるが、残部は他の組成の本発明に係る触媒であってもよいし、従来公知の触媒であってもよい。従来公知の触媒としては、例えば本願明細書の従来技術の欄で記載した触媒系などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また好ましくは、該廃水の流れ方向に対して下流側にルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウム、および白金よりなる群から選ばれる元素の金属および/またはその金属の化合物の少なくとも1種を含有してなる触媒を設置して廃水を湿式酸化処理する廃水の処理方法をも提供する。
【0103】
上記のように複数の触媒を使用する理由としては、これにより前記のとおり従来の触媒の多くが有していた有機窒素化合物、硫黄含有化合物および有機ハロゲン化合物等を含有した廃水の処理における耐久性および処理効率の問題点が解消されることにある。つまり、難分解性の有機窒素化合物、硫黄含有化合物、有機ハロゲン化合物等は本発明に係る触媒で前もって処理される。このため、処理液中には残部の易分解性のCOD成分等が残り、従来公知の触媒で充分処理できるものである。このことにより従来公知の触媒の耐久性はあがり、コストの低減をはかることもできる。そして該廃水中のCOD成分等の汚染物質は、高処理効率で酸化ならびに酸化分解処理され、廃水は高レベルで浄化されるものである。
【0104】
また、この場合廃水の上流側に設置する触媒の体積と、廃水の下流側に設置する触媒の体積比は、1/10〜10/1であることが好ましく、より効果的には1/5〜5/1である。上流側の触媒が下流側の触媒に比べ1/10未満である場合、および上流側の触媒が下流側の触媒に比べ10/1を超える場合には触媒組成もしくは触媒組成比が異なる2種類以上の触媒を用いた効果が少なく、1種類の触媒を用いた結果とあまり差がないものである。すなわち触媒の効果が異なる複数の触媒を用いる意味があまりない。この場合には複数の触媒を製造するよりも、単一の触媒を製造した方が触媒の製造単価が下がり、好ましいものである。
【0105】
【実施例】
以下に、本発明の具体的な実施例にかかる触媒調製例、触媒成形例および廃水処理例と、比較例にかかる調製例および廃水処理例をあげて詳細に説明するが、本発明はこれだけに限定されるものではない。
【0106】
(調製例1)
マンガンおよび鉄を含有する酸化物および/または複合酸化物を以下に記載する方法で調製した。
【0107】
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]9.10kgを 溶解させ、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 250g/ リットル)0.80リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で500℃で3時間焼成した。
【0108】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2: Fe2O3=10:90であった。また比表面積をBET法で測定したところ51m2/gであった。さらにX線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0109】
(調製例2)
マンガンおよび鉄、チタンを含有する酸化物および/複合酸化物を以下に記載する方法で調製した。チタン源としては下記に組成を有する硫酸水溶液を用いた。
【0110】
TiOSO4 250g/リットル(TiO2換算)
全H2SO4 1,100g/リットル
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]7.08kgを 溶解させ、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 250g/ リットル)0.80リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルの水溶液を再度30℃の温度に維持しつつ攪拌しながら上記組成の硫酸チタニル硫酸水溶液1.60リットルを添加し、さらにアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で500℃で3時間焼成した。
【0111】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2=10:70:20であった。また比表面積をBET法で測定したところ65m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0112】
引き続きここで得られた粉体を用いて以下に述べる方法で触媒を成形した。
【0113】
(成形例1)
水と調製例2で得られた粉体と澱粉を混合し、ニーダーでよく練り合わせた。この混練物を成型機で平均粒径5mm、平均長さ6mmのペレット状に成形し、空気雰囲気下450℃で3時間焼成した。得られた触媒の比表面積はBET法で測定したところ65m2/gであった。
【0114】
(調製例3)
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]7.08kgと オキシ硝酸ジルコニウム[ZrO(NO3)2・2H2O]0.87kgを溶解さ せ、塩化マンガン水溶液[MnCl2](MnO2換算 250g/リットル)0.80リットル添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で480℃で3時間焼成した。
【0115】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:Zr O2=10:70:20であった。また比表面積をBET法で測定したところ60m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0116】
引き続きここで得られた粉体を用いて成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0117】
(調製例4)
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]7.28kgと オキシ硝酸ジルコニウム[ZrO(NO3)2・2H2O]0.52kgを溶解さ せ、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 250g/リット ル)0.32リットルと硫酸チタニル硫酸水溶液0.96リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で480℃で3時間焼成した。
【0118】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2:ZrO2=4:72: 12:12であった。また比表面積をBET法で測定したところ65m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0119】
引き続きここで得られた粉体を用いて成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0120】
(調製例5)
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]8.90kgを 溶解させ、硫酸チタニル硫酸水溶液0.80リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、活性二酸化マンガンの粉末を0.040kg添加し、ニーダーでよく練り合わせ、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で450℃で4時間焼成した。
【0121】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2=2:88:10であった。また比表面積をBET法で測定したところ63m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したところ、β−MnO2と一致する回折線のピークを得た。しかしこの回折線のピーク強度は、下記方法で作成し、同様にX線回折法により測定したβ−MnO2の回折線のピークと比較して非常に小さく、約1/5の強度であった。
【0122】
X線回折法で比較に用いたものは、上記活性二酸化マンガンの粉末の0.040kgを450℃で4時間焼成したものと、上記と同様の方法で作成した硝酸第二鉄と硫酸チタニル硫酸水溶液から作成した沈澱(ゲル)を450℃で4時間焼成した鉄とチタンの酸化物および/または複合酸化物の粉体1.96kgとを単によく混合したものである。
【0123】
引き続きここで得られた粉体を用いて成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0124】
(調製例6)
水100リットルに、硫酸チタニル硫酸水溶液2.00リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。そして得られたゲルは濾別し、水洗した。また別途、ニーダーに鉄の水酸化物(FeOOH)1.52kgと硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 250g/リットル)0.56リットルを加え よく練り合わせた。得られた混練り物には、更に上記で作成したゲルの濾別し水洗したものを加え、ニーダーでよく練り合わせ、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で450℃で4時間焼成した。
【0125】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2=7:68:25であった。また、比表面積をBET法で測定したところ70m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0126】
引き続きここで得られた粉体を用いて成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0127】
(調製例7)
水100リットルに、硫酸チタニル硫酸水溶液1.60リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。そして得られたゲルは濾別し、水洗した。また別途、ニーダーに鉄の水酸化物(FeOOH)1.34kgと炭酸マンガン[MnCO3]0.53kgを加えよく練り合わせた。得られた混練り物には、更に上記で 作成したゲルの濾別し水洗したものを加え、ニーダーでよく練り合わせ、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で350℃で4時間焼成した。
【0128】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2=20:60:20であった。また、比表面積をBET法で測定したところ92m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0129】
引き続きここで得られた粉体を用いて焼成温度を330℃とした以外は成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0130】
(調製例8)
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]9.00kgを 溶解させ、硫酸チタニル硫酸水溶液0.80リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で700℃で5時間焼成した。
【0131】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりFe2O3:TiO2=90:10であった。
【0132】
引き続きここで得られた粉体を用いて成形例1で記載した方法と同様の方法で上記組成の粉体を成形した。
【0133】
得られたペレット状成型体を1.98kg用い、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 50g/リットル)0.40リットルを含浸し、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で480℃で3時間焼成した。
【0134】
得られた触媒の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2=1:89:10であった。また、比表面積をBET法で測定したところ34m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0135】
(調製例9)
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]7.08kgを 溶解させ、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 250g/ リットル)0.80リットル、硝酸パラジウム水溶液(Pd換算 5g/リットル)1.20リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルの水溶液を再度30℃の温度に維持しつつ攪拌しながら上記組成の硫酸チタニル硫酸水溶液1.60リットルを添加し、さらにアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で500℃で3時間焼成した。
【0136】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2:Pd=10:70:20:0.3であった。また、比表面積をBET法で測定したところ68m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0137】
引き続きここで得られた粉体を用いて成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0138】
(調製例10)
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]7.08kgと オキシ硝酸ジルコニウム[ZrO(NO3)2・2H2O]0.52kgを溶解さ せを、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 250g/ リットル)0.80リットル、硝酸ルテニウム水溶液(Ru換算 5g/リットル)4.00リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で450℃で3時間焼成した。
【0139】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:ZrO2:Ru=10:70:20:1.0であった。また、比表面積をBET法で測定したところ65m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0140】
引き続きここで得られた粉体を用いて焼成温度を400℃とした以外は成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0141】
(調製例11)
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]8.60kgを 溶解させ、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 250g/ リットル)0.40リットル、硝酸白金水溶液(Pt換算 5g/リットル)0.80リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルの水溶液を再度30℃の温度に維持しつつ攪拌しながら上記組成の硫酸チタニル硫酸水溶液0.80リットルを添加し、さらにアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で350℃で4時間焼成した。
【0142】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2:Pt=5:85:10:0.2であった。また、比表面積をBET法で測定したところ80m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0143】
引き続きここで得られた粉体を用いて焼成温度を330℃とした以外は成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0144】
(調製例12)
水100リットルに、硫酸チタニル硫酸水溶液1.60リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。そして得られたゲルは濾別し、水洗した。次に、ニーダーに鉄の水酸化物(FeOOH)1.68kgと上記で得られたゲルを加えよく練り合わせた。得られた混練り物は、空気雰囲気下で600℃で3時間焼成し、さらに粉砕して粉体を得た。
【0145】
引き続きここで得られた粉体を用いて焼成温度を500℃とした以外は成形例1で記載した方法と同様の方法で上記組成の粉体を成形した。
【0146】
得られたペレット状成型体は、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 50g/リットル)2.00リットルと塩化イリジウム水溶液(Ir換算 2g/リットル)5.00リットルを含浸し、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で400℃で3時間焼成した。
【0147】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2:Ir=5:75:20:0.5であった。また、比表面積をBET法で測定したところ45m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0148】
(調製例13)
水100リットルに硝酸第二鉄[Fe(NO3)3・9H2O]9.10kgを 溶解させ、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 250g/ リットル)0.80リットル、硝酸ロジウム水溶液(Rh換算 5g/リットル)2.00リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で300℃で5時間焼成した。
【0149】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:Rh=10:90:0.5であった。また、比表面積をBET法で測定したところ60m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0150】
(調製例14)
調整例2と同様の方法で得たゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥し、さらに空気雰囲気下、600℃で3時間焼成した。
【0151】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMn2O3:Fe2O3:TiO2換算で9.2:70.6:20.2であった。また、比表面積をBET法で測定したところ43m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0152】
引き続きここで得られた粉体を用いて成形例1で記載した方法と同様の方法で触媒を成形した。
【0153】
(調製例15)
粉体の焼成温度を600℃とした以外は調整例5と同様の方法で得た粉体を、成形例1で記載した方法と同様の方法で成形した。
【0154】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりMn2O3:Fe2O3:TiO2換算で1.8:88.2:10であった。また、比表面積をBET法で測定したところ38m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したところ、α−Mn2O3と一致する回折線のピークを得た。しかしこの回折線のピーク強度は、下記方法で作成した試料を同様にX線回折法により測定したα−Mn2O3の回折線のピークと比較して非常に小さく、約1/6の強度であった。比較に用いた試料は、調製例5と同様の方法で作成した鉄とチタンを含有するゲルを、120℃で10時間乾燥し、空気雰囲気下で600℃で3時間焼成した粉体0.982kgと、別途調製例5で用いた活性二酸化マンガンの粉末を600℃で3時間焼成した粉体0.018kgとを単によく混合したものを用いた。
【0155】
(調製例16)
調製例8で得られたFe2O3:TiO2=90:10ペレット状成型体1.98kgを用いて、以下の溶液を含浸し、焼成して触媒を調製した。含浸に用いた溶液は、硝酸マンガン水溶液[Mn(NO3)2](MnO2換算 50g/リットル)0.40リットルと硝酸カリウム水溶液[KNO3](K換算 2.5g/リットル)0.45リットルの混合溶液を用いた。そして含浸後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で300℃で3時間焼成した。
【0156】
得られた触媒の各成分の重量比は蛍光X線法によりMnO2:Fe2O3:TiO2:K=1:89:10:0.06であった。また、比表面積をBET法で測定したところ34m2/gであった。さらに、X線回折法によりマンガンの酸化物および/または複合酸化物の結晶構造を測定したが、マンガンの酸化物の回折線は得られなかった。
【0157】
(比較調製例1)
調製例1において硝酸マンガンの水溶液を用いなかったこと以外は、調製例1と同様にして粉体を得た。
【0158】
得られた粉体の組成は蛍光X線法によりFe2O3=100%であった。
【0159】
(比較調製例2)
調製例2において硝酸マンガンの水溶液を用いなかったこと以外は、調製例2と同様にして粉体を得、成形例1で記載した方法と同様の方法で成形体を得た。
【0160】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりFe2O3:TiO2=78:22であった。
【0161】
(比較調製例3)
水100リットルに硝酸パラジウム水溶液(Pd換算 5g/リットル)1.20リットルと硫酸チタニル硫酸水溶液8.00リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で500℃で3時間焼成した。
【0162】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりTiO2:Pd=100:0.3であった。
【0163】
引き続きここで得られた粉体を用いて成形例1で記載した方法と同様の方法で成型体を得た。
【0164】
(比較調製例4)
水100リットルに硝酸白金水溶液(Pt換算 5g/リットル)1.20リットルと硫酸チタニル硫酸水溶液8.00リットルを添加し、よく混合した。これを30℃の温度に維持しつつ攪拌しながらアンモニア水を徐々に滴下し、pHが8になるまで加え、更にそのまま放置して15時間静置して沈澱(ゲル)を生成させた。このゲルを濾別し、水洗後、120℃で10時間乾燥した。次に空気雰囲気下で400℃で5時間焼成した。
【0165】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりTiO2:Pt=100:0.3であった。
【0166】
引き続きここで得られた粉体を用いて焼成温度を380℃とした以外は成形例1で記載した方法と同様の方法で成型体を得た。
【0167】
(比較調製例5)
調製例10において硝酸マンガンの水溶液を用いなかったこと以外は、調製例10と同様にして粉体を得、焼成温度を400℃とした以外は成形例1で記載した方法と同様の方法で成形体を得た。
【0168】
得られた粉体の各成分の重量比は蛍光X線法によりFe2O3:ZrO2:Ru=78:22:1.0であった。
【0169】
(処理例1)
内容積1リットルのチタン製オートクレーブを使用し、このオートクレーブに調製例1で作成した触媒30gおよび廃水250gを充填し、さらに空気を25kg/cm2G張り込んだ。そして250℃に昇温し、82kg/cm2Gで3時間処理を行った。冷却後、液を抜き出し、処理前の廃水原液と処理液のCOD(Cr)濃度を測定し、処理効率を求めた。この処理に使用した廃水には、前処理として触媒を使用しない無触媒の条件下において、上記と同様の方法で、一度湿式酸化処理を行った廃水の処理液を使用した。この廃水の性状は、COD(Cr)濃度17g/リットル、pH9.5であった。
【0170】
得られた結果は、COD(Cr)濃度0.7g/リットル、COD(Cr)処理効率96%でpH8.2であった。
【0171】
(比較処理例1)
処理例1と同様の方法ならびに同じ廃水を使用し、比較調製例1で作成した粉体を30gを用いて処理を行った。
【0172】
得られた結果は、COD(Cr)濃度14g/リットル、COD(Cr)処理効率18%でpH9.3であった。
【0173】
(処理例2)
図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、この湿式酸化反応塔に調製例2で作成した触媒を1リットル充填して湿式酸化処理条件下で処理を500時間連続して行った。そして500時間後に得られた処理水のCOD(Cr)、pHを測定し、ならびにガスクロマト分析法によりトリエタノールアミンを分析した。以下に詳細な実験方法および結果について記述する。
【0174】
触媒を使用した湿式酸化条件下での処理の詳しい方法は、廃水供給ライン7より送られてくる廃水を廃水供給ポンプ2で2リットル/hrの流量で80kg/cm2Gまで昇圧フィードした。一方、酸素含有ガス供給ライン8より供給され る空気をコンプレッサー3で昇圧した後、O2/COD(Cr)(空気中の酸素量/ 化学的酸素要求量)=2.0の割合で前記該廃水に混入した。この気液混合物を気液混合物供給ライン9を経て、触媒を充填した湿式酸化反応塔1に下部より導入し、電気ヒーター4で加熱して処理温度250℃で触媒湿式酸化処理し、被処理水を処理水ライン10を経て、冷却器5において冷却し、気液分離器6へ流した。この触媒層における廃水の空間速度は2hr-1であった。気液分離器6においては、液面コントローラ(LC)により液面を検出して液面制御弁12を作動させて一定の液面を保持するとともに、圧力コントローラ(PC)により、圧力を検出して圧力制御弁14を作動させて一定の圧力を保持するように操作され、処理水排出ライン13から該処理水は排出される。
【0175】
処理に供した該廃水の性状は、COD(Cr)を37g/リットル、pHは8.7で、トリエタノールアミンを5.0g/リットル含有していた。
【0176】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は1.2g/リットル、COD(Cr)処理効率97%でpHは7.7であった。またトリエタノールアミンは検出されなかった。
【0177】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0178】
(処理例3)
処理例2において使用した触媒の代わりに調製例3で得られた触媒を用いた以外は、処理例2で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0179】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は1.8g/リットル、COD(Cr)処理効率95%でpHは7.8であった。またトリエタノールアミンは検出されなかった。
【0180】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0181】
(処理例4)
処理例2において使用した触媒の代わりに調製例9で得られた触媒を用いた以外は、処理例2で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0182】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は1.1g/リットル、COD(Cr)処理効率97%でpHは7.7であった。またトリエタノールアミンは検出されなかった。
【0183】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0184】
(比較処理例2)
処理例2において使用した触媒の代わりに比較調製例2で得られた成型体を用いた以外は、処理例2で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0185】
開始直後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は19g/リットル、COD(Cr)処理効率49%でpHは8.2であった。またトリエタノールアミンを測定したところ1.9g/リットル検出された。
【0186】
(比較処理例3)
処理例2において使用した触媒の代わりに比較調製例3で得られた成型体を用いた以外は、処理例2で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0187】
開始直後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は3.1g/リットル、COD(Cr)処理効率92%でpHは7.8であった。またトリエタノールアミンを測定したところ検出されなかった。
【0188】
しかし、500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は8.3g/リットル、COD(Cr)処理効率78%でpHは8.0であった。またトリエタノールアミンを測定したところ0.3g/リットル検出された。
【0189】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた成型体を抜き出した。蛍光X線法で抜き出した成型体の組成の変化を解析した結果、廃水処理前のものよりも成型体中のパラジウムの含有量が、特に反応塔の入口部の成形体において若干減少していた。入口部成形体の各成分の重量比は、TiO2:Pd換算で100:0.12であった。
【0190】
(処理例5)
図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、この湿式酸化反応塔に調製例4で作成した触媒を1リットル充填して湿式酸化処理条件下で処理を500時間連続して行った。そして500時間後に得られた処理水のCOD(Cr)濃度、pHを測定し、ならびに液体クロマト分析法によりエチレンジアミン四酢酸を分析した。
【0191】
処理に供した該廃水の性状は、COD(Cr)を26g/リットル、pHは12.8で、エチレンジアミン四酢酸は2.1g/リットルであった。
【0192】
また廃水の処理条件は、処理温度270℃、処理圧力90kg/cm2G、O2/COD(Cr)(空気中の酸素量/化学的酸素要求量)=1.2、廃水の空間速度は1hr-1であり、処理例2と同様の方法により処理を行った。
【0193】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は0.32g/リットル、COD(Cr)処理効率99%でpHは9.4であった。またエチレンジアミン四酢酸は検出されなかった。
【0194】
またその後、廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0195】
(処理例6)
処理例5において使用した触媒の代わりに調製例6で得られた触媒を用いた以外は、処理例5で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0196】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は0.37g/リットル、COD(Cr)処理効率99%でpHは9.4であった。またエチレンジアミン四酢酸は検出されなかった。
【0197】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0198】
(処理例7)
処理例5において使用した触媒の代わりに調製例7で得られた触媒を用いた以外は、処理例5で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0199】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は0.21g/リットル、COD(Cr)処理効率99%でpHは9.4であった。またエチレンジアミン四酢酸は検出されなかった。
【0200】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0201】
(比較処理例4)
処理例5において使用した触媒の代わりに比較調製例2で得られた成型体を用いた以外は、処理例5で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0202】
開始直後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は16g/リットル、COD(Cr)処理効率38%でpHは10.4であった。またエチレンジアミン四酢酸は0.74g/リットル検出された。
【0203】
(処理例8)
図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、この湿式酸化反応塔に調製例5で作成した触媒を1リットル充填して湿式酸化処理条件下で処理を500時間連続して行った。そして500時間後に得られた処理水のCOD(Cr)濃度、pHを測定し、ならびにガスクロマト分析法によりジメチルホルムアミドを分析した。
【0204】
処理に供した該廃水の性状は、COD(Cr)を46g/リットル、pHは10.2で、ジメチルホルムアミドは7.8g/リットルであった。
【0205】
また廃水の処理条件は、処理温度200℃、処理圧力40kg/cm2G、O2/COD(Cr)(空気中の酸素量/化学的酸素要求量)=1.2、廃水の空間速度は1hr-1であり、処理例2と同様の方法により処理を行った。
【0206】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は3.7g/リットル、COD(Cr)処理効率92%でpHは8.7であった。またジメチルホルムアミドは検出されなかった。
【0207】
またその後、廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0208】
(処理例9)
処理例8において使用した触媒の代わりに調製例8で得られた触媒を用いた以外は、処理例8で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0209】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は4.2g/リットル、COD(Cr)処理効率91%でpHは8.7であった。またジメチルホルムアミドは検出されなかった。
【0210】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0211】
(比較処理例5)
処理例8において使用した触媒の代わりに比較調製例2で得られた成型体を用いた以外は、処理例8で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0212】
開始直後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は20g/リットル、COD(Cr)処理効率57%でpHは9.3であった。またジメチルホルムアミドを測定したところ2.1g/リットル検出された。
【0213】
(処理例10)
図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、この湿式酸化反応塔1に調製例6で作成した触媒を1リットル充填して湿式酸化処理条件下で処理を100時間連続して行った。そして100時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度、pHを測定し、ならびにガスクロマト分析法によりp−クロルフェノールを分析した。
【0214】
処理に供した該廃水の性状は、COD(Cr)濃度24g/リットル、pHは9.1で、p−クロルフェノールは0.9g/リットルであった。
【0215】
また廃水の処理条件は、処理温度250℃、処理圧力75kg/cm2G、O2/COD(Cr)(空気中の酸素量/化学的酸素要求量)=1.2、廃水の空間速度は1hr-1であり、処理例2と同様の方法により処理を行った。
【0216】
100時間後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は0.4g/リットル、COD(Cr)処理効率98%で、pHは8.4であった。またp−クロルフェノールは検出されなかった。
【0217】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0218】
(比較処理例6)
処理例10において使用した触媒の代わりに比較調製例2で得られた成形体を用いた以外は、処理例11で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0219】
開始直後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は7.5g/リットル、COD(Cr)処理効率69%で、pHは8.7であった。またp−クロルフェノールが0.35g/リットル検出された。
【0220】
(処理例11)
図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、この湿式酸化反応塔1に調製例2で作成した触媒を1リットル充填して湿式酸化処理条件下で処理を100時間連続して行った。そして100時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度、pHを測定し、ならびにガスクロマト分析法によりジメチルスルホキシド(以下DMSOとも記載する)を分析した。
【0221】
処理に供した該廃水の性状は、COD(Cr)濃度33g/リットル、pHは13.1で、DMSOは4.5g/リットルであった。
【0222】
また廃水の処理条件は、処理温度220℃、処理圧力50kg/cm2G、O2/COD(Cr)(空気中の酸素量/化学的酸素要求量)=2.0、廃水の空間速度は1hr-1であり、処理例2と同様の方法により処理を行った。
【0223】
100時間後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は1.0g/リットル、COD(Cr)処理効率97%で、pHは8.1であった。またDMSOは検出されなかった。
【0224】
またその後、廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0225】
(比較処理例7)
処理例11において使用した触媒の代わりに比較調製例2で得られた成形体を用いた以外は、処理例12で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0226】
開始直後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は12g/リットル、COD(Cr)処理効率64%で、pHは8.6であった。またDMSOが0.8g/リットル検出された。
【0227】
(比較処理例8)
処理例11において使用した触媒の代わりに比較調製例4で得られた成形体を用いた以外は、処理例11で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0228】
開始直後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は2.3g/リットル、COD(Cr)処理効率93%で、pHは8.3であった。またDMSOは検出されなかった。
【0229】
しかし、100時間後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は6.3g/リットル、COD(Cr)処理効率81%で、pHは8.5であった。またDMSOが0.11g/リットル検出された。
【0230】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた成形体を抜き出した。蛍光X線法で抜き出した成形体の組成の変化を解析した結果、廃水処理前のものよりも成形体中の白金の含有量が、特に反応塔の入口部の成形体において若干減少していた。入口部成形体の各成分の重量比は、TiO2:Pt換算で100:0.16であった。
【0231】
(処理例12)
図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、この湿式酸化反応塔1に調製例4で作成した触媒を1リットル充填して湿式酸化処理条件下で処理を500時間連続して行った。そして500時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度、pHを測定し、ならびに検知管により硫化物イオン、陰イオンクロマト分析法によりチオ硫酸イオンを分析した。
【0232】
処理に供した該廃水の性状は、COD(Cr)濃度10.5g/リットル、pHは13.3で、硫化物イオンは3.7g/リットル、チオ硫酸イオンは0.30g/リットルであった。
【0233】
また廃水の処理条件は、処理温度160℃、処理圧力9kg/cm2G、O2/COD(Cr)(空気中の酸素量/化学的酸素要求量)=2.5、廃水の空間速度は1hr-1であり、処理例2と同様の方法により処理を行った。
【0234】
100時間後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は2.8g/リットル、COD(Cr)処理効率73%で、pHは8.2であった。また硫化物イオンおよびチオ硫酸イオンは検出されなかった。
【0235】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0236】
(比較処理例9)
処理例12において使用した触媒の代わりに比較調製例2で得られた成形体を用いた以外は、処理例12で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0237】
開始直後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は3.9g/リットル、COD(Cr)処理効率63%で、pHは8.7であった。また硫化物イオンは検出されなかったが、チオ硫酸イオンが0.35g/リットル検出された。
【0238】
(処理例13)
図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、この湿式酸化反応塔1に調製例10で作成した触媒を1リットル充填して湿式酸化処理条件下で処理を100時間連続して行った。そして100時間後に得られた処理液のCOD(Cr)濃度、pHを測定し、ならびにガスクロマト分析法によりアニリンを分析した。
【0239】
処理に供した該廃水の性状は、COD(Cr)濃度28g/リットル、pHは12.9で、アニリンは1.8g/リットルであった。
【0240】
また廃水の処理条件は、処理温度250℃、処理圧力75kg/cm2G、O2/COD(Cr)(空気中の酸素量/化学的酸素要求量)=1.2、廃水の空間速度は1hr-1であり、処理例2と同様の方法により処理を行った。
【0241】
100時間後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は0.17g/リットル、COD(Cr)処理効率99%で、pHは8.6であった。またアニリンは検出されなかった。
【0242】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0243】
(処理例14)
処理例13において使用した触媒の代わりに調製例11で得られた触媒を用いた以外は、処理例13で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0244】
100時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は0.62g/リットル、COD(Cr)処理効率98%でpHは8.6であった。またアニリンは検出されなかった。
【0245】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0246】
(処理例15)
処理例13において使用した触媒の代わりに調製例12で得られた触媒を用いた以外は、処理例13で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0247】
100時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は1.4g/リットル、COD(Cr)処理効率95%でpHは8.8であった。またアニリンは検出されなかった。
【0248】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0249】
(比較処理例10)
処理例13において使用した触媒の代わりに比較調製例2で得られた成形体を用いた以外は、処理例13で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0250】
開始直後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は13.5g/リットル、COD(Cr)処理効率52%で、pHは10.7であった。またアニリンが0.51g/リットル検出された。
【0251】
(比較処理例11)
処理例13において使用した触媒の代わりに比較調製例5で得られた成形体を用いた以外は、処理例13で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0252】
開始直後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は2.5g/リットル、COD(Cr)処理効率91%で、pHは8.9であった。またアニリンは検出されなかった。
【0253】
しかし、100時間後に得られた処理液の結果は、COD(Cr)濃度は4.8g/リットル、COD(Cr)処理効率83%で、pHは9.4であった。またアニリンが0.15g/リットル検出された。
【0254】
(処理例16)
処理例1において使用した触媒の代わりに調製例13で得られた触媒を用いた以外は、処理例1で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0255】
得られた処理水の結果は、COD(Cr)は0.4g/リットル、COD(Cr)処理効率98%でpHは7.6であった。
【0256】
またその後触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0257】
(処理例17)
処理例2において使用した触媒の代わりに調製例14で得られた触媒を用いた以外は、処理例2で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0258】
開始直後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は2.2g/リットル、COD(Cr)処理効率93%でpHは7.8であった。またトリエタノールアミンは検出されなかった。
【0259】
しかし、250時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は4.0g/リットル、COD(Cr)処理効率89%でpHは7.9であった。トリエタノールアミンは検出されなかった。
【0260】
(処理例18)
処理例8において使用した触媒の代わりに調製例15で得られた触媒を用いた以外は、処理例8で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0261】
開始直後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は6.0g/リットル、COD(Cr)処理効率87%でpHは8.9であった。またジルチルホルムアミドは検出されなかった。
【0262】
しかし、250時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は8.3g/リットル、COD(Cr)処理効率82%でpHは9.2であった。ジルチルホルムアミドは検出されなかった。
【0263】
(処理例19)
図1に示す湿式酸化処理装置を使用し、この湿式酸化反応塔に調製例7で作成した触媒を1リットル充填して湿式酸化処理条件下で処理を500時間連続して行った。そして500時間後に得られた処理水のアンモニウムイオン濃度、硝酸イオン濃度、亜硝酸イオン濃度をイオンクロマト分析法で、全窒素濃度を全窒素分析法で、ならびにpHを測定した。
【0264】
処理に供した該廃水の性状は、pHは10.2、アンモニウムイオンは3.5g/リットルで、亜硝酸イオンおよび硝酸イオンは含有していなかった。また全窒素濃度は2.7g/リットルであった。
【0265】
また廃水の処理条件は、処理温度250℃、処理圧力75kg/cm2G、廃水の空間速度は1hr-1であった。また供給空気量は、アンモニウムイオン1molの供給に対して3mol倍の分子状酸素を供給するようにした。そして処理例2と同様の方法により処理を行った。
【0266】
500時間後に得られた処理水の結果は、pHは7.4で、硝酸イオン濃度0.31g/リットルであり、アンモニウムイオンおよび亜硝酸イオンは検出されなかった。また全窒素濃度0.09g/リットルで、全窒素処理効率は97%であった。
【0267】
またその後、廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【0268】
(処理例20)
処理例8において使用した触媒の代わりに調製例16で得られた触媒を用いた以外は、処理例8で記述した条件と同条件で処理を行った。
【0269】
500時間後に得られた処理水の結果は、COD(Cr)は4.0g/リットル、COD(Cr)処理効率91%でpHは8.7であった。またジメチルホルムアミドは検出されなかった。
【0270】
またその後廃水の処理を停止し、湿式酸化反応塔内に充填していた触媒を抜き出したが、廃水処理前と特に変化は認められなかった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る処理装置の実施態様の一つである。
【符号の説明】
1.湿式酸化反応塔
2.廃水供給ポンプ
3.コンプレッサー
4.電気ヒーター
5.冷却器
6.気液分離器
7.廃水供給ライン
8.酸素含有ガス供給ライン
9.気液混合物供給ライン
10.処理水ライン
11.冷却水ライン
12.液面制御弁
13.処理水排出ライン
14.圧力制御弁
15.ガス排出ライン
Claims (7)
- マンガン化合物と鉄化合物とを混合し、次いで酸化性雰囲気下で焼成して得られ、かつBET比表面積が30〜120m 2 /gである廃水処理用触媒。
- マンガン化合物と鉄化合物とチタン化合物および/またはジルコニウム化合物とを混合し、次いで酸化性雰囲気下で焼成して得られ、かつBET比表面積が30〜120m 2 /gである廃水処理用触媒。
- 300〜550℃で焼成する請求項1または2記載の廃水処理用触媒。
- マンガン酸化物がMnOxの形態で換算してx=1.2〜2の範囲にあり、その含有量が0.05〜50重量%(MnO 2 換算)である請求項1ないし3のいずれかに記載の廃水処理用触媒。
- さらに、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、イリジウムおよび白金から選ばれる少なくとも1種の元素の金属または化合物を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の廃水処理用触媒。
- マンガン酸化物が少なくとも鉄酸化物と緊密な混合状態にある請求項1ないし5のいずれかに記載の廃水処理用触媒。
- 廃水を触媒の存在下に湿式酸化処理するにあたり、触媒として、請求項1ないし6のいずれかに記載の触媒を用いることを特徴とする廃水の処理方法。
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