明 細 書 弾性無端クローラ 技術分野
本発明は、 弾性無端クローラに関する。 背景技術
例えば、 地上を走行する車両等に用いられるラバークローラは、 図 7及び 8に 示すように無端のベルト状を呈する。 図示ラバークローラ 1 0 1は、 基本的にラ バー製の本体 1 0 3から構成される。 ラバークローラ 1 0 1は、 駆動ローラ 1 0 5とアイドラーローラ 1 0 7とに懸架され、ラバークローラ 1 0 1の内周側には、 複数のテ一クアップローラ 1 0 9が配設される。
ラバークローラ本体 1 0 3の中には、 多数の芯金 1 1 1がラバークローラ長手 方向に一定のピッチで埋設され、 各芯金 1 1 1は、 ラバークローラ長手方向に直 角な方向(即ち、 ラバークローラ幅方向) に延びており、芯金相互は平行である。 芯金間には、 係合孔 (スプロケット孔) 1 1 3が一定ピッチで多数穿設され、 そ れらには駆動ローラ (スプロケット) 1 0 5の歯が係合する。
芯金 1 1 1の突起 1 1 1 Aは、 ラバ一クローラ 1 0 1の内周面から突出してい る。
芯金 1 1 1の背部 (ラバークローラ外周側) でラバークローラ幅方向の各側に は、 コード層が設けられる。 各コード層は、 各々がラバークローラ長手方向に延 び、 相互に平行であるように埋設されたスチール製の複数のコード Cから成る。 ラバークローラ 1 0 1の外周面には、 ラバークローラ長手方向に所定ピッチで 複数個のラグ 1 1 5が規則正しく突設されている。各ラグ 1 1 5は、ラバークロー ラ 1 0 1の本体 1 0 3と一体である。
以上のような一般的なラバークローラは、通常、スプロケット孔(ラバークロー ラ長手中央軸線) を境にして左右対称な形状及び構造から成るが、 最近、 左右非 対称であるラバークローラも出現している。 これは、 ラバークロ一ラが装着され
る車両の大型化によるラバ一クローラ幅の拡大等のために、 スプロケット孔の形 成位置が幅中央から一方側にずれるからである。 ラバークローラ本体の左側部分 の厚さ (ラバー厚) と右側部分の厚さ (ラバー厚) は、 一般的な対称型ラバーク ローラと同様に、 等しい。
斯かる非対称型ラバークローラにあっては、 スプロケット孔の中心から端面ま での寸法が短い側のラパークローラ本体部分やラグが、 他方側のそれよりも損傷 し易い。 つまり、 弱い側のラバー製のラバークローラ本体部分が一方的に損傷- 摩滅等する虞れがある。 これは、 ラバークローラ使用時にラバークローラに作用 する負荷を受ける面積が左右で異なり、従って、面圧が異なるからと考えられる。 これに対して、 ラグの接地面積を左右ほぼ同じにする簡便な解決策が考えられ るが、 それはラバ一クローラの設計上、 困難な場合が多い。
以上のことから、 非対称型ラバークローラは寿命が短いという評価が一般的に 為されている。 発明の開示
本発明は、 上記従来の不都合に鑑みて想到されたものであって、 非対称型の弾 性無端クローラの幅方向 (左右方向) における一方側と他方側の強度の大差を実 質的になくし、 同じ程度の強度をもたせることによって、 クローラ全体としての 耐久性 ·信頼性の改善ないし寿命の向上を図ることを目的とする。
上記課題を解決するために、 本発明に係る、 環状のベルト状の弾性クローラ本 体を含む弾性無端クローラにおいては、 クローラ本体は、 クローラ駆動用の一連 の被駆動要素と、 被駆動要素の各々の中央を通り且つクローラ長手方向に延びる 基準面と、 を含み、 基準面を境にして左右のクローラ本体の厚さが異なることを 構成上の特徴とする。 図面の簡単な説明
図 1は、 本発明の一実施例に係るラバークローラの長手方向横断面図である。 図 2は、 同ラバークローラの側面図である。
図 3は、 同ラバ一クローラの内周側から見た図である。
図 4は、 同ラバークローラの外周側から見た図である。
図 5は、 耐久性実験後における実験例のラバークローラの外表面を模写した図 である。
図 6は、 同実験後における比較例のラバークローラの外表面を模写した図であ る。
図 7は、 従来の使用中のラバークローラの側面図である。
図 8は、 従来のラバークローラの部分切断した斜視図である。 発明を実施するための最良の形態
以下、 図 1〜図 4を参照して、 本発明の一実施例を説明するが、 本発明自体は これに限定されない。
図示ラバークローラ 1は、 無端ベルト状を呈し、 ラバー製の本体 3から構成さ れる。 ラバ一クローラ本体 3の中には、 複数の金属製芯金 5がラバ一クローラ長 手方向に一定のピッチで埋設される。 各芯金 5は、 ラバークローラ長手方向に直 角な方向 (即ち、 ラバークローラ幅方向) に延び、 芯金相互は平行である。 芯金 間のラバークローラ本体部分の各々には、 係合孔 (スプロケット孔) 7が穿設さ れる。
ラバークローラ外周面には、 ラバークローラ長手方向に所定ピッチで複数のラ グ 1 1が規則正しく突設される。 各ラグ 1 1はラバークローラ本体 3と一体であ る。 これらのラグ 1 1は、 基準面 Aを境にして同図右側のラグ群と、 同図左側の ラグ群とに別けることができる(図 4参照)。右側のラグ 1 1と左側のラグ 1 1と では、 相互に大きさ及び形状が異なると共に、 ラバークローラ長手方向位置に関 して相互にずれている。即ち、 ラグ 1 1は全体的に千鳥状に配置される。 これは、 振動発生の低減を企図したものである。 尚、 ラグ 1 1は、 図示形状に限定されず、 任意の適当な形状を有することができる。
ここで、 各係合孔 7の中央を通り且つラバークローラ長手方向に延びる面を基 準面 Aと定義し、基準面 Aを境にして、例えば、長さの長い側、 図示実施例では、 右側を W、 長さの短い側、 図示実施例では、 左側を Nとする (図 1参照)。
各芯金 5は、 其れを挟む両側の係合孔 7、 7の中間を中心にして概ね点対称に
配置され且つラバークローラ内周面から突出する 2つの角部 (突起) 5 a、 5 b と、 基準面側から左側 (N側) 及び右側 (W側) に各々延出する翼部 5 c 、 5 d と、 を含む。 各芯金 5の側面には、 隣り合う芯金 5との連結のための嵌合凹部 5 e及び嵌合凸部 5 fが設けられる。
基準面 Aから芯金 5の右側翼部 5 dの端面までの寸法 S wは、 基準面 Aから芯 金 5の左側翼部 5 cの端面までの寸法 S Nよりも大きい (S W〉S N)。 同様に、 基 準面 Aからラバークローラ本体右端までの寸法 Wwは、 基準面 Aからラバーク ローラ本体左端までの寸法 WNよりも大きい (WW>WN;)。
各芯金 5の左側翼部 5 cと右側翼部 5 dは、 ラバークローラ内周面と面一であ り且つラバ一クローラ内周側に露出している略矩形状の転輪走行部 (走行面) 5 gを有する。
芯金間のラパークローラ内周面部分には、 ラバ一クローラ装着時の巻き掛け抵 抗を小さくするために、 溝 1 3が形成される。 該溝 1 3は、 転輪走行部近傍まで 形成されるが、 ラバークローラ幅方向端縁に達するように形成しても差し支えな い。
図 1から理解されるように、各芯金 5の背部(ラバークローラ外周側)、即ち、 詳細には、 左側翼部 5 cの背部と右側翼部 5 dの背部には、 各々コード層が設け られる。 いずれのコード層も、 各々がラバークローラ長手方向に延び且つ相互平 行であるように埋設されたスチール製の複数のコード Cから成る。
各側のコード群のコード中心からラバークローラ本体内周面までの寸法 HN、 Hwは、 相互に略等しい (HN^HW)。 しかし、 各側のコード群のコード中心から ラバークローラ本体外周面までの寸法 TN、 Twは、 相互に異なる (TN≠TW又 は、 TN>TW、 或いは、 (HN + TN) ≠ (Hw+ Tw) )。
本願発明者は、 TN と Tw とが如何なる関係を有していれば、 所期の目的が達 せられるかについて種々の実験を行い、 その結果、 以下の 3つの式の中で少なく とも 1つが成立するようにラバークローラ構成要素の寸法を決定することによつ て、 所期の効果が得られる、 ということを見い出した。
TN/TW≤ (WW+WN) °· vww°- 5 … ( 1 )
T Νノ Γ γ^== \ ~f* ^ jyj ) らノ ^ …
ここにおいて、
TN は、 Ν側におけるコード中心からラバークローラ本体外周面までの長さ、
Twは、 W側におけるコード中心からラバ一クローラ本体外周面までの長さ、
Wwは、 基準面 Aから W側のラバークローラ本体端面までの長さ、
WN は、 基準面 Aから N側のラバークローラ本体端面までの長さ、
Swは、 基準面 Aから W側の芯金端面までの長さ、
S N は、 基準面 Aから N側の芯金端面までの長さ、
Lwは、 基準面 Aから W側のラグ端縁までの長さ、
L N は、 基準面 Aから N側のラグ端縁までの長さ、 である。
上記計算式から求められ得る TN と Twは、 実際上、 その差が概ね 2 〜 1 5 mmになるように設定されるべきである。即ち、 この差が 1 5 mmを越える場合、 ラバークロ一ラ左右のラグ高さが違い過ぎるために、 該ラバークロ一ラの装着さ れる車両の推進力に悪影響が及ぶ虞れがあるからであり、 他方、 2 mmを下回る 場合、 所期の目的を達成できない虞れがあるからである。
最後に、 本発明に係るラバークローラの性能を検証するために、 以下のような 耐久性実験を行ったので、 これについて簡潔に説明する。
当該実験には、 TN— Tw= l 0 mmであるラバークローラ (実験例) と、 TN
=TWであるラバークロ一ラ (比較例) とを使用した。 いずれのラバークローラ も、 ラグの硬度が約 7 0度、伸びが 4 0 0 %以上、内周側(転輪側)の本体ラバー の硬度が約 7 4度、 伸びが 2 0 0 %以上であった。
実験では、 準備した各実験車両にそれぞれのラバークローラを装着し、 該実験 車両を次の走行条件の下で走行させ、その後にラバークローラの概観を観察した。 走行条件としては、 不整地路をジグザグ走行で 8時間、 碎石路をジグザグ走行 で 1時間、 栗石路を八の字走行で 1 5分、 コンクリート路をジグザグ走行で 4 5 分を 1サイクルとし、 実験車両を 5 0時間走行させた。
上記走行後における実験例のラバークローラの外表面を模写した図 5から理解 され得るように、 ラグの表面に摩耗が見られるが、 大したものではなく、 また、 大きな欠けは殆ど無い。 ラグに挟まれた本体外面部分には、 大きな亀裂が生じて
いない。
他方、 同走行後における比較例のラバークロ一ラの外表面を模写した図 6から 理解され得るように、 ラグの表面に相当な摩耗が見られ、 その形状も相当に崩れ ており、一部が欠損しているものもある。また、本体内に埋設されている害のコー ド群が部分的に露出している箇所がある。 更に、 ラグに挟まれた本体外面部分が 大きく摩耗しており、 大きな亀裂が生じている箇所がある。
ところで、 走行実験中の脱輪については、 実験例では発生ゼロであつたが、 比 較例では 6回ほど発生した。 産業上の利用可能性
以上のように、 本発明によれば、 非対称型ラバークロ一ラに内在し得る幅方向 一方側が損傷し易いという不都合を効果的に緩和 ·解消でき、 全体的に耐久性 · 信頼性に優れた高寿命ラバークローラを安価且つタイムリ一に市場に提供するこ とが可能になる。