明 細 書 板状チタン酸力リゥム及びその製造方法並びに摩擦材 技術分野
本発明は、 板状 8チタン酸カリウム、 板状 6チタン酸カリウム及び板 状 4チタン酸力リゥム並びにそれらの製造方法及び摩擦材に関するもの である。 背景技術
8チタン酸力リウム (Κ20 · 8 Τ ί 02) 、 6チタン酸カリウム (Κ 2〇 · 6 T i 02) 及び 4チタン酸力リウム (Κ20 · 4 Τ ί 02) は、 通 常、 繊維状の化合物として得られ、 優れた結晶強度と高い断熱性を有す ることから、 摩擦調整剤や樹脂等の強化剤として広く使用されている。 しかしながら、 従来の 8チタン酸カリウム、 6チタン酸カリウム及び 4チタン酸力リゥムは繊維形状を有しているため嵩高く、流動性に劣り、 製造時において供給路の壁に付着して、 供給路を閉塞させるといった問 題点を有している。 また、 樹脂強化剤としては、 ねじれ方向に加わる力 に対する補強性能が十分でないという欠点を有している。 また、 摩擦剤 用途においては、 摩擦面における高い効果を確保するため板状のものが 要望されている。
しかしながら、 8チタン酸カリウム、 6チタン酸カリウム及び 4チタ ン酸カリゥムは繊維状に結晶成長する性質があるため、 これまでに板状 の 8チタン酸力リウム、 6チタン酸力リゥム及び 4チタン酸力リウムは 得られていなかった c
発明の開示
本発明の目的は、 板状 8チタン酸カリウム、 板状 6チタン酸カリウム 及び板状 4チタン酸力リゥム並びにそれらの製造方法及びそれらを用い た摩擦材を提供することにある。
以下、 板状 8チタン酸カリウム、 板状 6チタン酸カリウム及び板状 4 チタン酸カリウムに共通する事項については、 単に 「板状チタン酸カリ ゥム」 として説明する。
本発明の板状チタン酸カリウムは、 平均長径 1〜 1 0 0 /i m、 平均ァ スぺク ト比 3〜 5 0 0を有することを特徴としている。
本発明の板状チタン酸カリウムの製造方法は、 板状チタン酸を水酸化 カリゥム溶液中に浸漬した後、 焼成することを特徴としている。
板状チタン酸としては、 例えば、 チタン酸カリウムマグネシウムまた はチタン酸力リゥムリチウムの板状物を酸処理して得られるものを用い ることができる。
本発明の製造方法において、 焼成温度は、 板状 8チタン酸カリウムの 場合 4 0 0〜 7 0 0 Cであることが好ましく、 さらに好ましくは 4 0 0 〜 6 5 0 °C、 さらに好ましくは 4 5 0〜 6 5 0 °C、 さらに好ましくは 5 0 0〜 6 5 0 °Cである。 また、 板状 6チタン酸力リゥムの場合 6 0 0〜 8 0 0 °Cであることが好ましく、 板状 4チタン酸力リゥムの場合 7 0 0 〜 8 0 0 °Cが好ましい。
本発明の摩擦材は、 板状チタン酸カリゥムを摩擦調整剤として含有す ることを特徴としている。 含有量は、 3〜 5 0重量%であることが好ま しい。 図面の簡単な説明
図 1は、 実施例 1において得られた板状 8チタン酸力リゥムの走査型
電子顕微鏡写真 (倍率 5 0 0 0倍) である。
図 2は、 実施例 2において得られた板状 8チタン酸力リゥムの走査型 電子顕微鏡写真 (倍率 5 0 0 0倍) である。
図 3は、 実施例 5において得られた板状 6チタン酸力リゥムの走査型 電子顕微鏡写真 (倍率 5 0 0 0倍) である。
図 4は、 実施例 1において得られた板状 8チタン酸カリゥムの X線回 折チヤ一トである。
図 5は、 実施例 2において得られた板状 8チタン酸力リゥムの X線回 折チヤ一トである。
図 6は、 実施例 5において得られた板状 6チタン酸カリウムの X線回 折チヤ一トである。
図 7は、 実施例 6において得られた板状 4チタン酸カリゥムの X線回 折チヤ一トである。 発明を実施するための最良の形態
本発明の板状チタン酸力リ ゥムは、 平均長径 1〜 1 0 0 μ m、 好まし くは 3〜 3 0 m、 平均ァスぺク ト比 3〜 5 0 0、 好ましくは 3〜 1 0 0、 さらに好ましくは 5〜 2 0の板状物である。 ここで、 平均長径は、 いわゆる平均粒子径を意味しており、 例えばレーザー回折式粒度分布測 定装置によりメジアン径として測定される値である。 また、 アスペク ト 比は、 平均短径 (厚み) に対する平均長径の比 (平均長径/平均短径) をいう。 平均ァスぺク ト比は、 走査型電子顕微鏡で平均短径 (厚み) を 測定し、 上記平均長径との比率を算出することにより求めることができ る。 この場合一般に、 走査型電子顕微鏡の視野内で厚みを確認できるも の 2 0個程度について測定し、平均短径の平均値を求める。平均短径(厚 み) は、 5 0〜 1 0 0 0 n m程度であることが好ま
本発明の板状チタン酸カリ ゥムの製造方法は、 板状チタン酸を水酸化 力リゥム溶液中に浸漬し、力リゥムイオンをィンタ一カーレ一トした後、 焼成することを特徴としている。 板状チタン酸は、 酸処理により層間の 陽イオンをディンターカーレ一トすることができる化合物を用い、 これ を酸処理することにより得ることができる。このような化合物としては、 板状チタン酸カリゥムマグネシウム及び板状チタン酸カリゥムリチウム 等が挙げられる。 これらの化合物は、 例えば特開平 5— 2 2 1 7 9 5号 公報及び本出願人による特願平 1 1— 1 5 8 0 8 6号に開示された方法 に従って製造することができる。
板状チタン酸カリウムマグネシウムは、 チタン源とカリウム源とマグ ネシゥム源を混合し、 フラックスを添加し、 十分混合した後、 1 0 0 0 〜 1 1 0 0 °Cで 1〜 8時間焼成することにより得ることができる。
チタン源としては酸化チタンを含有する化合物より任意に選択でき、 具体的には、 酸化チタン、 ルチル鉱石、 水酸化チタンウエッ トケーキ、 含水チタニアを例示できる。
カリウム源としては、 加熱により酸化力リゥムを生じる化合物より選 択することができ、 具体例としては、 酸化カリウム、 炭酸カリウム、 水 酸化カリウム、 硝酸カリウム等が例示できる。 中でも炭酸カリウムが好 ましい。
マグネシゥム源としては、 水酸化マグネシゥム、 炭酸マグネシウム、 フッ化マグネシウム等を例示できる。
チタン源とカリウム源とマグネシウム源の混合割合としては、 T i :
K : M g = 4 : 2 : 1 (モル比) の割合を基本とするが、 各々 5 %程度 であれば変化させても支障ない。 前記割合を大きく外れると、 板状でな い副生物である K 2M g T i - 0 1 5の析出を生じることがあり、 好ま なレ、。
フラックスとしては、 塩化カリウム、 フッ化カリウム、 モリブデン酸 カリウム、 タングステン酸カリウムを例示でき、 中でも塩化カリウムが 好ましい。
フラックスの添加割合としては、 前記原料とのモル比 (原料: フラッ クス) で、 3 : :!〜 3 : 1 5、 好ましくは 3 : 3 . 5〜 3 : 1 0の割合 とするのがよい。フラックスの添加量は少ない程経済的に有利であるが、 少なすぎると板状結晶が崩れるため好ましくない。
焼成は、電気炉、マツフル炉等任意の方法により行うことができるが、 量産する際には、 調製した原料を煉瓦状、 円柱状等の形状の成形体にプ レス成形した上、 トンネルキルンを用いて行うのが好ましい。
焼成温度は 1 0 0 0 °C〜 1 1 0 0 °Cの間で 1〜 2 4時間保持すること により行うのが好ましい。 昇温、 降温速度は特に制限はないが、 通常、 3〜 7 °C/分とするのが好ましい。 焼成温度が高い程、 大型の板状物が 得られるが、 1 1 0 0 °Cを超えると溶融により形状が損なわれるので一 般に好ましくない。 また、 保持時間が長い程、 粒子形状を大型化するこ とができる。
焼成後はジョークラッシャー、 ビンミル等を用いて粗粉砕、 微粉砕を 行った後、 水中に分散させ 5〜 1 0 %程度のスラリーとして撹拌するこ とにより湿式解砕を行うことができる。 さらに、 必要に応じて分級、 ろ 過、 乾燥して板状のチタン酸カリウムマグネシウムを得る。 板状のチタ ン酸カリゥムマグネシウムは、 平均長径 3〜 3 0 μ m程度の比較的小型 の本発明の板状チタン酸力リゥムの原料として好適である。
また、 チタン酸カリウムリチウムの製造方法としては、 例えば、 チタ ン源とカリウム源とリチウム源を混合し、 フラックスを添加し、 十分混 合した後、 8 2 5〜 1 1 5 0 2Cで 1〜 1 2時間保持する方法が例示でき る:
チタン源、 カリウム源、 フラックスとしては、 前記のチタン酸力リウ ムマグネシウムの製造に用いられるものと同様のものを使用することが できる。
リチウム源としては、 加熱により酸化リチウムを生成し得る化合物よ り適宜選択することができ、 例えば、 炭酸リチウム、 硝酸リチウム等を 例示できる。
チタン源とカリウム源とリチウム源の混合割合としては、 T i : κ : L i = 1 . 7 3 : 0 . 8 : 0 . 2 7 (モル比) の割合を基本とするが、 それぞれ 5 %程度であれば変化させても支障ない。 また、 フラックスの 添加割合は、 原料 1に対して 1〜4 (モル比) の割合で使用するのがよ レ、。 フラックスの量が少なすぎると生成物が板状にならず、 またフラッ タスの量が多すぎると経済的に不利であるため、それぞれ好ましくない。 焼成手段は、 前記チタン酸力リゥムマグネシウムの製造と同様の手段 により行うことができるが、 焼成温度は 8 2 5〜 1 1 5 0 °Cの間とし、 ;!〜 2 4時間保持することにより行うことが好ましい。
解砕、 分級、 ろ過、 乾燥工程は、 前記チタン酸カリウムマグネシウム の製造と同様の手段により行うことができる。
チタン酸力リウムリチウムは、 平均長径 1 0〜 1 0 0 m程度の比較 的大型の本発明の板状チタン酸力リゥムの原料として好適である。
これらの化合物の酸処理によるディンター力レーションに用いる酸と しては硫酸、 硝酸、 塩酸等の鉱酸が例示できる。 酸処理は、 これらの酸 の 1モル Zリ ッ トル ( 1 N ) 程度の水溶液中で層間の陽イオンが略完全 に溶出されるまで撹拌することにより行うのが好ましい。 撹拌は通常 5 時間〜 8時間程度かけて行うのがよい。
得られた板状チタン酸は水洗して次の力リゥムイオンィンタ一力レー シヨ ン工程に供する = なお、 このインタ一カレ一シヨン工程以降の工程
の条件により、 板状 8チタン酸カリウムが製造されるか、 板状 6チタン 酸力リゥムが製造されるか、 あるいは板状 4チタン酸力リゥムが製造さ れるかが決定する。 以下、 板状 8チタン酸カリウムを製造する場合と板 状 6チタン酸力リゥムを製造する場合と板状 4チタン酸力リゥムを製造 する場合に分けて説明する。
(板状 8チタン酸力リゥムの製造)
力リゥムイオンのィンタ一力レーションは、 前記で得られた板状チタ ン酸を 1〜 3 0 %程度、 好ましくは 5〜 2 0 %程度の水酸化力リウム水 溶液スラリーとし、 スラリー中の水酸化力リゥム濃度がスラリーの p H で 1 1 . 5以上 1 3未満、 好ましくは 1 2以上 1 3未満、 さらに好まし くは約 1 2となるように、 必要に応じて水酸化力リゥムを添加して維持 しながら、 撹拌を続けることにより行うことができる。 撹拌は、 好まし くは 1時間以上、 より好ましくは 5〜 1 0時間程度行う。
p Hが 1 3以上になると次工程において 6チタン酸力リゥムの副生が 多くなるため好ましくなく、 p Hが 1 1 . 5未満では酸化チタンの副生 が多くなるため好ましくない- カリウムイオンのインターカレーシヨン完了後、 ろ過、 水洗、 乾燥し た後、 4 0 0〜 7 0 0 °C、 より好ましくは、 4 0 0〜6 5 0 、 より好 ましくは 4 5 0〜 6 5 0 、 より好ましくは 5 0 0〜 6 5 0 °Cで焼成す ることにより、 板状 8チタン酸カリウムを得ることができる。 焼成は、 電気炉、 マツフノレ炉、 口一タ リーキノレン等の トンネルキルン、 ロータ リ ングキルン等により行うことができる c
焼成温度が 4 0 0 °Cを下回ると結晶内に水分が残存し、 また、 焼成温 度が 7 0 0 °Cを超えると生成物に酸化チタン、 6チタン酸力リゥムの副 生が増えるため好ましくない -
(板状 6チタン酸力リ ゥムの製造)
カリウムィオンのィンタ一力レーションは、 前記で得られた板状チタ ン酸を 1〜 3 0 %程度、 好ましくは 5〜 2 0 %程度の水酸化力リゥム水 溶液スラリ一とし、 スラリ一中の水酸化力リゥム濃度がスラリ一の p H で 1 3 . 5以上 1 4未満、 好ましくは約 1 3 . 7 5となるように、 必要 に応じて水酸化カリウムを添加して維持しながら、 撹拌を続けることに より行うことができる。 撹拌は、 好ましくは 1時間以上、 より好ましく は 5〜 1 0時間程度行う。
p Hが 1 4以上になると次工程において 4チタン酸力リゥム及び 2チ タン酸カリウムの副生が多くなるため好ましくなく、 p Hが 1 3 . 5未 満では次工程において酸化チタンの副生が多くなるため好ましくない。 カリウムイオンのインタ一カレ一シヨン完了後、 ろ過、 水洗、 乾燥し た後、 6 0 0〜8 0 0 °Cで焼成することにより、 板状 6チタン酸力リウ ムを得ることができる。 焼成は、 電気炉、 マツフル炉、 口一タリーキル ン等のトンネルキルン、ロータリングキルン等により行うことができる。 焼成時間は 3時間以上であることが好ましい。
焼成温度が 6 0 0 °Cを下回ると結晶構造が変化せず、 レビドク口サイ トとなり 6チタン酸カリ ウムが得られない場合がある。 また、 焼成温度 が 8 0 0 :Cを超えると板状形状が損なわれ、 柱状または繊維状結晶とな る場合があるため好ましくない。
(板状 4チタン酸カリ ウムの製造)
力リゥムイオンのインタ一力レーションは、 前記で得られた板状チタ ン酸を 1〜 3 0 %程度、 好ましくは 5〜 2 0 %程度の水酸化力リゥム水 溶液スラリーとし、 スラリ一中の水酸化力リゥム濃度がスラリーの p H で 1 4 . 5以上 1 6 . 3未満、 好ましくは約 1 5 . 0〜 1 5 . 5となる ように、 必要に応じて水酸化カリウムを添加して維持しながら、 撹拌を 続けることにより行うことができる。 撹拌は、 好ましくは 1時間以上、
より好ましくは 5〜 1 0時間程度行う。
p H^S l 6. 3以上になると次工程において 2チタン酸カリゥムの副 生が多くなるため好ましくなく、 pHが 14. 5未満では次工程におい て 6チタン酸カリゥムの副生が多くなるため好ましくない。
カリウムイオンのインタ一カレ一シヨン完了後、 ろ過、 水洗、 乾燥し た後、 700〜800 で焼成することにより、 板状 4チタン酸カリゥ ムを得ることができる。 焼成は、 電気炉、 マツブル炉、 ロータリーキル ン等のトンネルキルン、口一タリングキルン等により行うことができる。 焼成時間は 3時間以上であることが好ましい。
焼成温度が 700 Cを下回ると結晶構造が変化せず、 レビドク口サイ トとなり 4チタン酸力リ ゥムにならないか、 あるいは 2チタン酸力リゥ ムが析出する場合があるので好ましくない。 また、 焼成温度が 800°C を超えると板状形状が損なわれ、 柱状または繊維状結晶となる場合があ るため好ましくない。
なお、 上記インターカレーシヨン工程における水酸化カリウムは、 粉 末、ペレツ ト、水溶液等の態様で使用することができ、例えば 8 5重量% ペレツ トゃ 5〜4 8重量%水溶液等の使用を例示できる。 水酸化力リゥ ムを、 粉末、 ペレッ ト、 水溶液等のいずれの態様で使用するかは、 設定 すべき水溶液の P Hの値により適宜選択される。
当業者の便宜のため、 各々のインターカレーシヨン工程における各々 の所定の p Hへの設定に必要な水酸化力リゥム濃度の目安を示せば、 1 8〜 20。Cにおいて、 p H 1 2 ( 1. 46 gZl ) 、 p H 1 2. 5 (3. 09 gZ l ) 、 p H 13. 0 (8. O gZl ) 、 p H 13. 5 (30. 57 gZ l ) 、 p H 1 4 (6 5. 9 7 g / 1 ) 、 p H 1 5 (400 g / 1 ) 、 p H 1 6. 0 (4 8 0 8X 1 ) となる。
インター力レ一ション工程においては、 必要に応じてスラリーの p H
をモニターし、 所定範囲に維持されるように水酸化カリウム (水溶液) の追加または水の追加を行うことができる。
かく して得られる本発明の板状チタン酸カリウムは、 その形状及び結 晶系に由来する性質を除く他、 繊維状チタン酸力リゥムと同様の物理的 性質を有しており、 繊維状チタン酸カリウムと同様に安定で無毒の化合 物である。
さらに樹脂に配合した際に引張強度や曲げ強度といった機械的強度を 向上させる効果を有する点においても繊維状チタン酸力リゥムと同様で あるが、 板状物であるため、 高い表面平滑性、 摺動特性の実現やねじれ 方向に加わる力に対する強度の確保、 アイゾッ ト衝撃強度の向上に一層 顕著な効果が期待できる。 さらに、 以下に説明するように、 ブレーキ用 摩擦材としても一層顕著な効果が期待できる。
本発明の摩擦材は、 摩擦調整剤として上記本発明の板状チタン酸力リ ゥムを含有することを特徴としている。
板状チタン酸カリウムの摩擦材中の配合量は、 3〜 5 0重量%でぁる ことが好ましい。 3重量%未満であると、 摩擦摩耗特性の改善効果を発 現させることができない場合があり、 また 5 0重量%を超えると、 摩擦 摩耗特性の効果改善はそれ以上期待できないため経済的に不利となる場 合がある。
本発明の摩擦材の具体例としては、 例えば基材繊維、 摩擦調整剤及び 結合剤からなる摩擦材を例示できる。 該摩擦材中の各成分の配合割合と しては、 基材繊維 1〜6 0重量部、 摩擦調整剤 (板状チタン酸カリウム を含めて) 2 0〜 8 0重量部、 結合剤 1 0〜4 0重量部、 その他の成分 0〜 6 0重量部を例示できる。
基材繊維としては、例えばァラミ ド繊維等の樹脂繊維、スチール繊維、 黄銅繊維等の金属繊維、 炭素繊維、 ガラス繊維、 セラミ ック繊維、 ロッ
0
クウ一ル、 木質パルプ等を挙げられる。 これらの基材繊維は、 分散性及 び結合剤との密着性向上のためにァミノシラン系、 エポキシシラン系ま たはビニルシラン系等のシラン系力ップリング剤、 チタネ一ト系カップ リング剤あるいはリン酸エステル等の表面処理を施して用いてもよい。 本発明の摩擦材における摩擦調整剤としては、 板状チタン酸カリウム に加えて、 本発明の効果を損なわない範囲で、 他の摩擦調整剤を併用し てもよい。 例えば、 加硫または未加硫の天然、 合成ゴム粉末、 カシュ一 樹脂粉末、 レジンダスト、 ゴムダス ト等の有機物粉末、 カーボンブラッ ク、 黒鉛粉末、 二硫化モリブデン、 硫酸バリウム、 炭酸カルシウム、 ク レ一、 マイ力、 タルク、 ケイソゥ土、 アンチゴライ ト、 セピオライ ト、 モンモリロナイ ト、 ゼォライ ト、 三チタン酸ナトリウム、 五チタン酸ナ トリゥム、 繊維状チタン酸力リゥム等の無機質粉末、銅、 アルミニウム、 亜鉛、 鉄等の金属粉末、 アルミナ、 シリカ、 酸化クロム、 酸化チタン、 酸化鉄等の酸化物粉末等が挙げられる。
結合剤としては、 フユノール樹脂、 ホルムアルデヒ ド樹脂、 メラミン 樹脂、 エポキシ樹脂、 アクリル樹脂、 芳香族ポリエステル樹脂、 ユリア 樹脂等の熱硬化性樹脂、 天然ゴム、 二トリルゴム、 ブタジエンゴム、 ス チレンブタジエンゴム、 クロロプレンゴム、 ポリイソプレンゴム、 ァク リ ゴム、 ハイスチレンゴム、 スチレンプロピレンジェン共重合体等の エラス トマ一、 ポリアミ ド樹脂、 ポリフエ二レンサルファイ ド樹脂、 ボ リエーテル樹脂、 ポリイミ ド樹脂、 ポリエーテルエーテルケトン樹脂、 熱可塑性液晶ポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂等の有機質結合剤及び アルミナゾル、 シリ力ゾル、 シリコーン樹脂等の無機質結合剤を例示で さる。
本発明の摩擦材には、 前記各成分に加えて、 必要に応じて防鲭剤、 潤 滑剤、 研削剤等の成分を配合することができる。
本発明の摩擦材の製造に際しては、 特に制限はなく、 従来公知の摩擦 材の製造方法に準じて適宜製造することができる。
本発明の摩擦材の製造方法の一例を挙げれば、 基材繊維を結合剤中に 分散させ、 摩擦調整剤及び必要に応じて配合されるその他の成分を組み 合わせて配合して摩擦材組成物を調製し、 次いで金型中に該組成物を注 入し加圧加熱して結着成形する方法を例示できる。
また、 他の一例を挙げれば、 結合剤を二軸押出機にて溶融混練し、 サ ィ ドホッパーから基材繊維、 摩擦調整剤及び必要に応じて配合されるそ の他の成分を組み合わせて配合し、 押出成形後、 所望の形状に機械加工 する方法を例示できる。
また、 他の一例を挙げれば、 摩擦材組成物を水等に分散させ抄き網上 に抄き上げ、 脱水してシー ト状に抄造した後、 プレス機にて加熱加圧し 結着成形し、 得られた摩擦材を適宜切削 ·研磨加工して所望の形状とす る方法を例示できる。
本発明の摩擦材は、 低温から高温域までの広い温度範囲にわたって、 優れた安定した摩擦係数と耐摩耗性を有している。 従って、 自動車、 鉄 道車両、 航空機、 各種産業用機器類等に用いられる制動部材用材料、 例 えばクラッチフエ一シング用材料及びブレーキライニングゃデイスタパ ッ ド等のブレーキ用材料等として用いることにより、 制動機能の向上、 安定化、 耐用寿命の改善効果が得られる。
本発明の摩擦材は、 摩擦調整剤として板状チタン酸力リゥムを含有す ることにより、 以下のような作用効果を奏する。
1 ) 摩擦調整剤が板状形状を有しているので安定した摩擦摩耗特性が 得られる。
2 ) 摩擦調整剤のァスベタ ト比が大きいので摩擦材自体の強度の向上 に資する。
3) 摩擦調整剤の流動性が高く、 原料混合物の調整が容易である。
4) 耐熱性が高く、 低温〜高温の広い温度領域で安定した摩擦係数が 得られる。
[実施例]
以下、 本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
(実施例 1 )
1. 板状チタン酸カリ ウムマグネシウム (K
0.
8Mg
0.
4T i
の 合成
アナターゼ酸化チタン粉末 1 3 k g、 炭酸力リウム 6. 06 k g、 水 酸化マグネシウム 2. 4 6 k g、 塩化カリウム 8. 48 k g、 水 3 リ ツ トルをヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した後、 1 9. 6MP a ( 20 0 k g f / c m2) の圧力にて加圧プレスし、 1個約 3 k g程度 の煉瓦状の成形物とした。
このものを台車に乗せトンネルキルンにより焼成した。 焼成は、 5°C Z分の割合で 1 0 50°Cまで昇温し、 3時間保持した後、 S :,分の割 合で室温まで降温することにより行った。
得られた焼成物をジョークラッシヤーを用いて粗粉砕した後、 ピンミ ルを用いて数 mm以下に微粉砕し、 次いでこのものを水に分散させ 1 0%のスラリー溶液とし、 プロペラ羽根で 1時間撹拌し、 湿式解砕を行 つた。 次いでスラリー液を 200メ ッシュ (目開き 75 /i m) のフルイ に通し、 分級を行った。 フルイ上の粉体は再度湿式解砕を行い分級を行 つた。 遠心濾過後、 乾燥して、 板状チタン酸カリウムマグネシウム (K 0.8M g04T i 平均長径 4. 6 μ m, 平均アスペク ト比約 1 0)
1 5. 4 6 k gを得た。 なお、 形状は走査型電子顕微鏡 (S EM) 観察 により確認し、 同定は X線回折法及び蛍光 X線分析により行った。 平均 長径 (メジアン径) はレ一ザ回折式粒度分布測定装置で測定した。
3
2. 酸処理によるディンターカレーシヨ ン
前工程で得られた板状チタン酸カリゥムマグネシウム (K0.8Mg0.4T i !.504) の全量を、 7 0 %硫酸 1 5. 6 8 k gを水 29 3. 5 2 リ ツ トルに溶解させた溶液に分散させ、 5%スラリーとした。 撹拌羽根によ り約 5時間撹拌を続けた後、 ろ過、水洗、 乾燥して、板状のチタン酸(H 2T i 2Os) 1 1. 9 7 k gを得た。 得られた板状チタン酸は、 板状チ タン酸カリウムマグネシウムとほぼ同様の形状を有していた。 なお、 形 状は S EM観察により確認し、 同定は X線回折法及び蛍光 X線分析によ り行った。 平均長径 (メジアン径) はレーザ回折式粒度分布測定装置で 測定した。
3. アル力リ処理による力リ ゥムイオンのィンタ一カレーシヨン 前工程で得られた板状チタン酸の全量を水 1 1 2. 2 9リツ トルに分 散させ、 1 0 %スラリーとし、 p Hが終始 1 2前後に維持されるように 8 5%水酸化カリゥムを加えながら、 攪拌羽根により約 5時間撹拌を続 けた後、 ろ過、 水洗、 1 1 0°C 2時間乾燥した。 8 5%水酸化カリウム の添加量は合計で 74 1 gであった。
4. 板状 8チタン酸カリウムの合成
次いで、 このものを電気炉により 500°Cにて 3時間焼成し、 板状 8 チタン酸カリウム (平均長径 4. 2 μ m、 平均アスペク ト比約 1 0 ) 1 3. 3 6 k gを得た。 なお、 形状は S EM観察により確認し、 同定は X 線回折法及び蛍光 X線分析により行った。 平均長径 (メジアン径) はレ 一ザ回折式粒度分布測定装置で測定し、 平均短径は S EM観察で測定し た。 図 1は、 得られた板状 8チタン酸カリウムの S EM写真である。 図 4は、 得られた板状 8チタン酸力リゥムの X線回折チヤ一トである。
(実施例 2)
平均長径 9 /X m、 平均ァスぺク ト比約 1 0のチタン酸力リウムリチウ
4
ム (K0.8L i 0.27T i L Oj を原料として用いた以外は、 上記実施例 1 と同様にして、 板状 8チタン酸カリウムを製造した。 得られた板状 8チ タン酸カリウムの平均長径は 9. 4 mであり、 平均アスペク ト比は約 1 0であった。 なお、 形状は S EM観察により確認し、 同定は X線回折 法及び蛍光 X線分析により行った。 平均長径 (メジアン径) はレーザ回 折式粒度分布測定装置で測定し、 平均短径は S EM観察で測定した。 図 2は、 得られた板状 8チタン酸カリウムの S EM写真である。 図 5は、 得られた板状 8チタン酸力リゥムの X線回折チヤ一トである。
(実施例 3)
Ko. s L i 2 T i , 8 04で表される板状チタン酸力リウムリチウム を塩酸中で酸処理し、 板状チタン酸とした後、 これを飽和 KOH水溶液 中に分散し p Hを約 1 2とし、 2時間攪拌した。 濾別分離した後、 6 0 0°Cで 2時間焼成し、 板状 8チタン酸力リゥムを得た。
(実施例 4)
実施例 3で得られた板状 8チタン酸カリウム (平均長径 50〜60 / m、 平均短径 (厚み) 0. 3 μ m、 平均ァスぺク ト比約 1 80〜 200 ) 20重量部、 ァラミ ド繊維 (商品名 「ケプラーパルプ」 、 平均長 3 mm、 東レ株式会社製) 1 0重量部、 結合剤 (フエノール樹脂) 20重量部、 硫酸バリゥム 50重量部を混合した原料混合物を、 加圧力 3 00 k g f Z c ms 、 常温、 1分間で予備成形した後、 金型による結着成形 (加圧 力 1 50 k g f /c m2 、 温度 1 70°C、 時間 5分間) を行い、 成形後、 熱処理 ( 1 80°Cで 3時間保持) した。 金型から取り出した後、 研磨加 ェを施して供試ディスクパッ ド A ( J I S D 44 1 1試験片) を得 た。
摩擦調整剤の流動性は良好であり、原料混合物の調製は容易であった。
(実施例 5)
1. 板状チタン酸カリ ウムマグネシウム (K。.8M g。.4T i sO J の合成
アナターゼ酸化チタン粉末 1 4. 73 k g、 炭酸カリ ウム 6. 3 8 k g、 水酸化マグネシゥム 2. 7 9 k g, 塩化力リウム 1 0. 0 3 k g、 水 2リ ッ トルをヘンシェルミキサーを用いて十分に混合した後、 1 9. 6MP a ( 200 k g f c m2)の圧力にて加圧プレスし、 1個約 3 k g程度の煉瓦状の成形物とした。
このものを台車に乗せトンネルキルンにより焼成した。 焼成は、 5°C 分の割合で 1 0 50°Cまで昇温し、 3時間保持した後、 5°C/分の割 合で室温まで降温することにより行った。
得られた焼成物をジョークラッシャ一を用いて粗粉砕した後、 ピンミ ルを用いて数 mm以下に微粉砕し、 次いでこのものを水に分散させ 1 0%のスラリー溶液とし、 プロペラ羽根で 1時間撹拌し、 湿式解碎を行 つた。 次いでスラリー液を 200メ ッシュ (目開き 7 5 m) のフルイ に通し、 分級を行った。 フルイ上の粉体は再度湿式解砕を行い分級を行 つた。 遠心濾過後、 乾燥して、 板状チタン酸カリウムマグネシウム (K 。. sMg 0.4T i 1 6〇4、 平均長径 4. 6 μ m、 平均ァスぺク ト比約 1 0 ) 1 7. 80 k gを得た。 なお、 形状は走査型電子顕微鏡 (S EM) 観察 により確認し、 同定は X線回折法及び蛍光 X線分析により行った。 平均 長径 (メジアン径) はレーザ回折式粒度分布測定装置で測定した。
2. 酸処理によるディンターカレーシヨン
前工程で得られた板状チタン酸力リウムマグネシウム (K。.8Mg。.4 T i ,.604) の全量を、 3 5 %硫酸 36. l k gを水 1 4 1. 9 リ ッ ト ルに溶解させた溶液に分散させ、 1 0%スラリーとした。 撹拌羽根によ り約 5時間撹拌を続けた後、 ろ過、 水洗、 乾燥して、板状のチタン酸(H 2T i 2〇5) 1 2. 0 3 k gを得た。 得られた板状チタン酸は、 板状チ
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タン酸カリウムマグネシウムとほぼ同様の形状を有していた。 なお、 形 状は S EM観察により確認し、 同定は X線回折法及び蛍光 X線分析によ り行った。 平均長径 (メジアン径) はレーザ回折式粒度分布測定装置で 測定した。
3. アルカリ処理によるカリウムイオンのインタ一カレ一シヨン 前工程で得られた板状チタン酸の全量を水 1 1 4. 4 リツ トルに分散 させ、 1 0%スラリーとし、 p Hが終始 1 3. 7 5前後に維持されるよ うに 8 5 %水酸化力リゥムを加えながら、 攪拌羽根により約 5時間撹拌 を続けた後、 ろ過、 水洗、 1 1 0°C 2時間乾燥した。 8 5%水酸化カリ ゥムの添加量は合計で 6. 9 9 k gであった。
4. 板状 6チタン酸カリウムの合成
次いで、 このものを電気炉により 700°Cにて 3時間焼成し、 板状 6 チタン酸カリウム (平均長径 4. 2 μ m、 平均アスペク ト比約 1 0) 1 3. 8 7 k gを得た。 なお、 形状は S EM観察により確認し、 同定は X 線回折法及び蛍光 X線分析により行った。 平均長径 (メジアン径) はレ 一ザ回折式粒度分布測定装置で測定し、 平均短径は S EM観察で測定し た。 図 3は、 得られた板状 6チタン酸カリウムの S EM写真である。 図 6は、 得られた板状 6チタン酸力リゥムの X線回折チヤ一トである。
(実施例 6)
上記実施例 5の工程 2で得られた板状チタン酸を用いて板状 4チタン 酸カリウムを製造した。 具体的には、 板状チタン酸 50 gを 40 %水酸 化力リゥム水溶液 800 m l に分散し、プロペラ羽根にて 500 r p m、 24時間撹拌を行った。 この間 PHは終始 1 5程度に維持されていた。 このスラリーを吸引濾過器にて濾過し、 濾過ケーキを 1 1 0°Cで乾燥し た後、 電気炉で 800¾ 2時間焼成した。 なお、 昇温速度は 5°CZ分と した。 得られた粉末を X線回折法及び蛍光 X線分析により同定したとこ
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ろ、 4チタン酸カリウムであった。 平均長径 (メジアン径) はレ一ザ回 折式粒度分布測定装置で測定し、 平均短径は S EMで観察した。 その結 果、 得られた粉末の平均長径は 3. であり、 平均アスペク ト比は 約 1 5であった。 図 7は、 得られた板状 4チタン酸カリゥムの X線回折 チャートである。
(実施例 7)
実施例 5で得られた板状 6チタン酸カリゥム 20重量部、 ァラミ ド繊 維 (商品名 「ケブラ一パルプ」 、 平均長 3 mm、 東レ株式会社製) 1 0 重量部、 結合剤 (フエノール樹脂) 20重量部、 硫酸バリウム 50重量 部を混合した原料混合物を、 加圧力 3 0 0 k g f m2 、 常温、 1分 間で予備成形した後、 金型による結着成形 (加圧力 1 50 k g f Z c m 2 、 温度 1 70°C、 時間 5分間) を行い、 成形後、 熱処理 (1 80 で 3時間保持) した。 金型から取り出した後、 研磨加工を施して供試ディ スクパッ ド A ( J I S D 44 1 1試験片) を得た。
摩擦調整剤の流動性は良好であり、原料混合物の調製は容易であった。
(実施例 8 )
実施例 6で得られた板状 4チタン酸力リウム 20重量部、 ァラミ ド繊 維 (商品名 「ケブラ一パルプ」 、 平均長 3 mm、 東レ株式会社製) 1 0 重量部、 結合剤 (フエノール樹脂) 20重量部、 硫酸バリ ウム 50重量 部を混合した原料混合物を、 加圧力 3 0 0 k g f Zc m2 、 常温、 1分 間で予備成形した後、 金型による結着成形 (加圧力 1 50 k g f Zc m 2 、 温度 1 70°C、 時間 5分間) を行い、 成形後、 熱処理 (1 80°Cで 3時間保持) した。 金型から取り出した後、 研磨加工を施して供試ディ スクパッ ド A (J I S D 44 1 1試験片) を得た。
摩擦調整剤の流動性は良好であり、原料混合物の調製は容易であった 3
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産業上の利用可能性
本発明の板状チタン酸力リゥムは、 樹脂に配合した際に引っ張り強度 や曲げ強度といった機械的強度を向上させる効果を有すると共に、 板状 物であるため、 高い表面平滑性、 摺動特性の実現やねじり方向に加わる 力に対する強度の確保、 アイゾッ ト衝撃強度の向上に一層顕著な効果が 期待できる。 さらに、 本発明の板状チタン酸カリウムは、 摩擦部材に含 有させる摩擦調整材として用いた場合、 流動性が良く、 原料混合物の調 整が容易である。 また、 このような本発明の板状チタン酸カリウムを摩 擦調整材として含有した摩擦材は、 耐熱性が高く、 低温〜高温の広い温 度領域で安定した摩擦係数を得ることができる。