JP2003082331A - 非石綿系摩擦材 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【解決手段】 石綿を除く繊維基材、結合材、充填材を
主成分とする非石綿系摩擦材組成物を成形、硬化してな
る非石綿系摩擦材において、上記繊維基材が、長さ５μ
ｍ以上，直径３μｍ以下かつアスペクト比が３を超える
無機繊維を含まず、上記結合材として、１２５℃のフロ
ーが２７ｍｍ以下のレジンを使用し、かつ気孔率が８〜
２０％であることを特徴とする非石綿系摩擦材。 【効果】 本発明の摩擦材は、効力性能が良好で安定で
あり、耐フェード性、耐摩耗性が良好であると共に、製
造用時の安全衛生性が向上し、使用時に排出される粉塵
の人体に与える影響が小さいものである。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、自動車、各種産業
用機械等のブレーキパッド、ブレーキライニング及びク
ラッチフェーシング等に好適に使用される非石綿系摩擦
材に関する。

【０００２】

【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】自動車
用の摩擦材、特にディスクパッドにおいては、優れた摩
擦性能や鳴き特性を得るために、各種の無機繊維が使用
されてきた。特に効きに効果的な硬質繊維である各種ウ
ィスカーや強度に寄与するロックウールなどが用いられ
てきたが、近年、これらの繊維の内、長さ５μｍ以上，
直径３μｍ以下かつアスペクト比が３を超える無機繊維
が、吸入可能な繊維で発癌性に影響があるとして、使用
を避ける傾向にある。即ち、従来から用いている人造無
機繊維は、その形状が石綿に類似しているため、近年、
石綿から類推し、発癌の引き金となるおそれがあるとし
て使用が敬遠されるようになっている。同様な形状の繊
維及び破壊時に同様な形状の繊維を生じるものなどの使
用回避の要求は厳しくなる一方である。

【０００３】しかし、これらの繊維は嵩密度が小さいた
め、フェード性能、高速の効きに有効である摩擦材の気
孔率を向上させる効果を有するが、使用しないことによ
り気孔率が低下し、フェード性能、高速の効きが低下し
てしまうという問題を生ずる。

【０００４】本発明は、上記事情に鑑みなされたもの
で、発癌性があるとされる長さ５μｍ以上，直径３μｍ
以下かつアスペクト比が３を超える無機繊維を含まず、
摩擦性能、耐摩耗性、鳴き特性が優れ、かつ、剪断強度
が充分あり、摩擦材側面の亀裂等が生じ難く、強度、外
観上問題の無い非石綿系摩擦材を提供することを目的と
する。

【０００５】

【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】本
発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結
果、繊維基材が発癌性があるとされる長さ５μｍ以上，
直径３μｍ以下でアスペクト比が３を超える無機繊維を
含まない非石綿系摩擦材において、結合材として１２５
℃のフローが２７ｍｍ以下のレジンを使用すると共に、
気孔率を８〜２０％とすることにより、効力性能が良好
で安定であり、耐フェード性、耐摩耗性が良好であると
共に、製造用時の安全衛生性が向上し、使用時に排出さ
れる粉塵の人体に与える影響が小さい非石綿系摩擦材が
得られることを知見し、本発明をなすに至った。

【０００６】従って、本発明は、石綿を除く繊維基材、
結合材、充填材を主成分とする非石綿系摩擦材組成物を
成形、硬化してなる非石綿系摩擦材において、上記繊維
基材が、長さ５μｍ以上，直径３μｍ以下かつアスペク
ト比が３を超える無機繊維を含まず、上記結合材とし
て、１２５℃のフローが２７ｍｍ以下のレジンを使用
し、かつ気孔率が８〜２０％であることを特徴とする非
石綿系摩擦材を提供する。

【０００７】以下、本発明につき更に詳しく説明する。

【０００８】本発明の非石綿系摩擦材は、繊維基材、結
合材、充填材を主成分とする非石綿系摩擦材組成物を成
形、硬化してなるものである。

【０００９】ここで、上記繊維基材としては、石綿（ア
スベスト）以外の摩擦材に通常用いられる無機質繊維、
有機質繊維などを使用できる。このような繊維基材とし
ては、例えば鉄、銅、真鍮、青銅、アルミニウム等の金
属繊維；セラミック繊維、チタン酸カリウム繊維、ガラ
ス繊維、ロックウール、ウォラストナイト、セピオライ
ト、アタパルジャイト、人工鉱物質繊維等の無機質繊
維；炭素繊維、アラミド繊維、アラミドパルプ、ポリイ
ミド繊維、ポリアミド繊維、フェノール繊維、セルロー
ス、アクリル繊維等の有機質繊維などが挙げられ、これ
らの１種を単独で又は２種以上を組み合わせて用いるこ
とができるが、長さ５μｍ以上，直径３μｍ以下かつア
スペクト比が３を超える無機繊維を含まない。

【００１０】この繊維基材は、短繊維状、粉末状等の形
態で使用することができ、その添加量は、摩擦材用組成
物全体に対して好ましくは１０〜５０体積％、より好ま
しくは１５〜４０体積％である。

【００１１】上記結合材としては、通常摩擦材に用いら
れる公知のものを使用することができる。このような結
合材としては、例えばフェノール樹脂、ＮＢＲゴム変性
ハイオルソフェノール樹脂、ＮＢＲゴム変性フェノール
樹脂、アクリルゴム変性フェノール樹脂等の各種ゴム変
性フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、ＮＢ
Ｒ、ニトリルゴム、アクリルゴムなどが挙げられ、これ
らの１種を単独で又は２種以上を組み合わせて用いるこ
とができるが、本発明においては、１２５℃のフローが
２７ｍｍ以下、通常２〜２７ｍｍ、より好ましくは２〜
２５ｍｍであるレジン（樹脂）を、摩擦材組成物全体に
対し、好ましくは１５体積％以上、より好ましくは１５
〜３０体積％、更に好ましくは１５〜２５体積％含有す
る。この場合、上記レジン以外の結合材を配合しても差
し支えないが、結合材総量は３０体積％以下とすること
が好ましい。

【００１２】なお、上記フローはＪＩＳ Ｋ６９１０−
９５によって測定した値である。

【００１３】充填材としては、有機質充填材と無機質充
填材があり、有機質充填材としては、例えばカシューダ
スト、タイヤリク、ゴムダスト（ゴム粉末、粒）、ニト
リルゴムダスト（加硫品）、アクリルゴムダスト（加硫
品）などが挙げられ、これらの１種を単独で又は２種以
上を組み合わせて用いることができる。この有機質充填
材の添加量は摩擦材組成物全体に対して好ましくは５〜
３０体積％、より好ましくは１０〜２５体積％である。

【００１４】一方、無機質充填材としては、硫酸バリウ
ム、炭酸カルシウム、マイカ、コークス、グラファイト
等のほか、鉄、銅、アルミニウム等の金属粉を使用する
ことができ、この無機質充填材は、摩擦材組成物全体の
３０〜７５体積％、特に３０〜６５体積％配合し得る
が、特に本発明においては、充填材として、モース硬度
４〜５で、粒子径１〜５００μｍ、好ましくは１０〜５
００μｍ、特に３０〜１００μｍの無機粒子を摩擦材組
成物全体の１〜５０体積％、好ましくは５〜５０体積
％、特に１０〜３０体積％含有することが好ましい。

【００１５】この場合、この無機粒子としては、鱗片状
又は板状チタン酸塩、例えば板状６チタン酸カリウム、
鱗片状８チタン酸カリウム、鱗片状８チタン酸マグネシ
ウムカリウム等が挙げられる。なお、これらチタン酸塩
の大きさとしては、鱗片状のものは平均粒径１〜３０μ
ｍのものが好ましく、板状のものは平均粒径１０〜５０
０μｍのものが好ましい。

【００１６】上記鱗片状、板状のチタン酸塩は、カップ
リング剤、特にアミノ系シランカップリング剤にて表面
処理したものが好ましく、これにより摩擦材の強度を向
上させることができる。この場合、表面処理は公知の方
法によって行うことができるが、カップリング剤は、チ
タン酸塩に対し０．１〜１重量％、特に０．３〜０．７
重量％の使用量とすることが好ましい。

【００１７】本発明の摩擦材の製造方法は、上記成分を
ヘンシェルミキサー、レディゲミキサー、アイリッヒミ
キサー等の混合機を用いて均一に混合して成形用金型内
で予備成形し、この予備成形物を成形温度１３０〜２０
０℃、成形圧力１００〜１０００ｋｇ／ｃｍ²で２〜１
５分間成形するものである。

【００１８】次に、得られた成形品を１４０〜２５０℃
の温度で２〜４８時間熱処理（後硬化）した後、必要に
応じてスプレー塗装、焼き付け、研磨処理を施して完成
品が得られる。

【００１９】なお、自動車等のディスクパッドを製造す
る場合には、予め洗浄、表面処理、接着剤を塗布した鉄
又はアルミニウム製プレート上に予備成形物を載せ、こ
の状態で成形用金型内で成形、熱処理、スプレー塗装、
焼き付け、研磨することにより製造することができる。

【００２０】この場合、本発明の摩擦材は、気孔率が８
〜２０％、好ましくは１０〜２０％、特に１３〜２０％
のものである。気孔率が８％未満では、摩擦係数が低下
したり、耐フェード性が悪化する。気孔率が２０％を超
えると、耐摩耗性が悪化したり、強度が低下する。な
お、気孔率はＪＩＳ Ｄ４４１８により測定した値であ
る。

【００２１】また、本発明の摩擦材は、せん断力が３．
５ＫＮ以上、好ましくは３．８〜６．０ＫＮ、特に４．
０〜５．５ＫＮであることが好ましい。なお、せん断力
強度はＪＩＳ Ｄ４４１５のせん断試験法により測定し
た値である（テストピースサイズ：１０×３０×５ｍ
ｍ）。

【００２２】本発明の非石綿系摩擦材は、自動車、大型
トラック、鉄道車両、各種産業機械等のブレーキライニ
ング、クラッチフェーシング、ディスクパッド、ペーパ
ークラッチフェーシング、制輪子などの各種用途に幅広
く用いることができるものである。

【００２３】

【発明の効果】本発明の摩擦材は、効力性能が良好で安
定であり、耐フェード性、耐摩耗性が良好であると共
に、製造用時の安全衛生性が向上し、使用時に排出され
る粉塵の人体に与える影響が小さいものである。

【００２４】

【実施例】以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体
的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるも
のではない。

【００２５】［実施例１〜５、比較例１〜４］表１に示
す組成の摩擦材組成物をレディゲミキサーを用いて均一
に混合し、加圧型内で１００ｋｇ／ｃｍ²で１〜３分間
加圧して予備成形した。この予備成形物を成形温度１６
０℃、成形圧力２５０ｋｇ／ｃｍ²の条件下で２〜１０
分間成形した後、２００℃で５時間熱処理（後硬化）を
行い、実施例１〜５、比較例１〜４の乗用車用ブレーキ
パッドを作成した。

【００２６】得られた実施例１〜５、比較例１〜４のブ
レーキパッドについて、下記評価方法により、気孔率、
フェード、効力、摩耗、環境負荷への影響について評価
し、下記基準により総合評価を行った。 （１）気孔率：ＪＩＳ Ｄ４４１８により測定した値で
ある。 ○：１３〜２０％、△：８〜１２％ （２）フェード：ＪＡＳＯ Ｃ ４０６−８７に基づき
ダイナモによる性能試験 ○：ｍｉｎμ＞０．３０、△：ｍｉｎμ＞０．２０ （３）効力：ＪＡＳＯ Ｃ ４０６−８７に基づきダイ
ナモによる性能試験（第３効力にて評価） ○：＞９５％、△：＞８５％（比較例１基準） （４）摩耗：ＪＡＳＯ Ｃ ４０６−８７に基づきダイ
ナモによる性能試験 ○：＜１０５％、△：＜１１０％（比較例１基準） （５）環境負荷への影響：各原料の粒子サイズの規格値
より判断した。 ○：長さ５μｍ以上，直径３μｍ以下かつアスペクト比
が３を超える無機繊維（吸入可能で発癌性に影響があ
る）を含まない。 ×：同無機繊維を含む。 （６）総合評価 ○：各評価項目の評価がいずれも×でない。 ×：各評価項目の評価が１項目以上×である。

【００２７】

【表１】

【００２８】［実施例６〜１３、比較例５〜７］表２に
示す組成の摩擦材組成物を用い、前記実施例と同様にし
て乗用車用ブレーキパッドを作成し、前記実施例と同様
の評価を行った。結果を表２に示す。

【００２９】

【表２】

【００３０】（１）有機ダスト：カシューダスト （２）アラミド繊維：長さ１〜３ｍｍ、直径１２〜１５
μｍ （３）銅繊維：長さ３ｍｍ、直径６０μｍ （４）グラファイト：平均粒径３００μｍ （５）無機質充填材：硫酸バリウム、平均粒径５μｍ （６）ウィスカー状８チタン酸カリウム：長さ１〜３μ
ｍ、直径０．３〜０．６μｍ （７）鱗片状８チタン酸カリウム：平均粒径３μｍ （８）板状６チタン酸カリウム：大きさ５０〜７０μｍ （９）鱗片状８チタン酸マグネシウムカリウム：平均粒
径１〜１０μｍ （１０）表面処理品は、鱗片状８チタン酸マグネシウム
カリウムをアミノプロピルトリエトキシシランで表面処
理したもの（シラン使用量：鱗片状８チタン酸塩に対し
て０．５重量％）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 長田 武夫 群馬県邑楽郡邑楽町赤堀1503 日清紡績株 式会社館林工場内 (72)発明者 長嶋 淳 群馬県邑楽郡邑楽町赤堀1503 日清紡績株 式会社館林工場内

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 石綿を除く繊維基材、結合材、充填材を
   主成分とする非石綿系摩擦材組成物を成形、硬化してな
   る非石綿系摩擦材において、上記繊維基材が、長さ５μ
   ｍ以上，直径３μｍ以下かつアスペクト比が３を超える
   無機繊維を含まず、上記結合材として、１２５℃のフロ
   ーが２７ｍｍ以下のレジンを使用し、かつ気孔率が８〜
   ２０％であることを特徴とする非石綿系摩擦材。
2. 【請求項２】 充填材として、モース硬度４〜５で、粒
   子径１〜５００μｍの無機粒子を摩擦材組成物全体の１
   〜５０体積％含有する請求項１記載の摩擦材。
3. 【請求項３】 無機粒子が鱗片状又は板状チタン酸塩で
   ある請求項２記載の摩擦材。
4. 【請求項４】 チタン酸塩が鱗片状チタン酸マグネシウ
   ムカリウムである請求項３記載の摩擦材。
5. 【請求項５】 チタン酸塩がシランカップリング剤で表
   面処理されたものである請求項３又は４記載の摩擦材。