JPWO2020054348A1 - ポリウレタン樹脂組成物 - Google Patents

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Abstract

耐ブロッキング性、弾性回復率及び残留歪率に優れる共に、弾性繊維に適用した場合、解舒性及び平滑性に優れ、ポリウレタン紡糸原液の経時的な粘度上昇が抑えられ、更には糸道上に脱落堆積物(スカム)が発生しにくいポリウレタン樹脂組成物を提供する。
本発明のポリウレタン樹脂組成物(W)は、ブロックポリマー(X)とポリウレタン樹脂(U)とを含有し、(X)がウレタン結合を有しないポリエステル樹脂からなるブロック(a1)、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂からなるブロック(a2)又はエステル結合を有しないポリウレタン樹脂からなるブロック(a3)と、炭素数16〜44の1価の炭化水素基からなるブロック(b1)及び/又は1価のポリオルガノシロキサン基からなるブロック(b2)とを有し、前記ポリウレタン樹脂(U)が前記ブロック(b1)及び前記ブロック(b2)のいずれをも有さず、前記ポリウレタン樹脂(U)の構成単量体としてのポリオールが芳香環を有しないことを特徴とする。

Description

本発明は、ポリウレタン樹脂組成物、特に弾性繊維に好適に使用できるポリウレタン樹脂組成物に関する。
従来、ポリウレタン樹脂は引張強伸度、弾性回復率及び残留歪率等に優れることから、成形材料、塗料、接着剤、合成皮革、人工皮革及び弾性繊維等、広範囲の用途に利用されている。しかし、ポリウレタン樹脂をフィルム、シート又は弾性繊維として使用する場合、ブロッキング現象が発生しやすいという問題がある。この問題を解決する方法として、アミド系化合物や金属石けんのような滑剤又は無機質微粉末を配合する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
しかし、弾性繊維に従来の高級脂肪酸の金属塩を使用しても弾性繊維の紡糸工程において、解舒性及び平滑性が十分でない場合が多々ある。
また、この問題を改善すべく、脂肪酸金属塩の濃度を高くした場合、脂肪酸金属塩が凝集し、貯槽タンクでポリウレタン紡糸原液を貯蔵中に経時的に粘度が上昇し、このため配管内を通して、脂肪酸金属塩組成物の紡糸工程への輸送が困難になるという問題がある。
更に、固体粒子を使用するため、糸への均一付着が困難であり、また糸道上に脱落堆積物(スカム)が多く発生し、製造工程上問題となる。
特開平6−32917号公報
本発明の目的は、耐ブロッキング性、弾性回復率及び残留歪率に優れると共に、弾性繊維に適用した場合、解舒性及び平滑性に優れ、ポリウレタン紡糸原液の経時的な粘度上昇が抑えられ、更には糸道上に脱落堆積物(スカム)が発生しにくいポリウレタン樹脂組成物を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明に到達した。即ち本発明は、ブロックポリマー(X)とポリウレタン樹脂(U)とを含有するポリウレタン樹脂組成物であって、前記ブロックポリマー(X)がウレタン結合を有しないポリエステル樹脂からなるブロック(a1)、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂からなるブロック(a2)又はエステル結合を有しないポリウレタン樹脂からなるブロック(a3)と、炭素数16〜44の1価の炭化水素基からなるブロック(b1)及び/又は1価のポリオルガノシロキサン基からなるブロック(b2)とを有し、前記ポリウレタン樹脂(U)が前記ブロック(b1)及び前記ブロック(b2)のいずれをも有さず、前記ポリウレタン樹脂(U)の構成単量体としてのポリオールが芳香環を有しないポリウレタン樹脂組成物(W)である。
本発明のポリウレタン樹脂組成物は、耐ブロッキング性、弾性回復率及び残留歪率に優れると共に、弾性繊維に適用した場合、解舒性及び平滑性に優れ、ポリウレタン紡糸原液の経時的な粘度上昇が抑えられ、更には糸道上に脱落堆積物(スカム)が発生しにくいため製造効率を大きく改善することができる。
本発明のポリウレタン樹脂組成物(W)は、ブロックポリマー(X)とポリウレタン樹脂(U)とを含有する。ポリウレタン樹脂組成物(W)がブロックポリマー(X)を含有することにより、耐ブロッキング性に優れ、弾性繊維として使用した場合には解舒性、平滑性、紡糸原液の粘度上昇抑制効果及びスカム発生抑制効果に優れたポリウレタン樹脂組成物が得られる。
本発明におけるブロックポリマー(X)は、ウレタン結合を有しないポリエステル樹脂からなるブロック(a1)、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂からなるブロック(a2)又はエステル結合を有しないポリウレタン樹脂からなるブロック(a3)と、炭素数16〜44の1価の炭化水素基からなるブロック(b1)及び/又は1価のポリオルガノシロキサン基からなるブロック(b2)とを有する。
[ウレタン結合を有しないポリエステル樹脂からなるブロック(a1)]
ウレタン結合を有しないポリエステル樹脂からなるブロック(a1)を構成するポリエステル樹脂としては、縮合型ポリエステル樹脂、ポリラクトンポリオール及びポリカーボネートポリオール等が挙げられ、縮合型ポリエステル樹脂は末端に水酸基及び/又はカルボキシル基を有する。
縮合型ポリエステル樹脂としては、数平均分子量(以下、Mnと略記)又は化学式量が500未満のポリオール(c1)と炭素数2〜20のポリカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体[酸無水物、低級(炭素数1〜4)アルキルエステル及び酸ハライド等]との縮合により得られるもの等が挙げられる。
尚、本発明におけるMnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定した値を意味する。
装置:「Waters Alliance 2695」[Waters社製]
カラム:「Guardcolumn Super H−L」(1本)、「TSKgel SuperH2000、TSKgel SuperH3000、TSKgel SuperH4000(いずれも東ソー株式会社製)を各1本連結したもの」
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:10μl
流量:0.6ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリエチレングリコール
Mn又は化学式量が500未満のポリオール(c1)としては、炭素数2〜20の多価アルコール;炭素数2〜20の多価アルコールの炭素数2〜12のアルキレンオキサイド(以下、AOと略記)付加物であってMn又は化学式量が500未満のもの;ビスフェノール(ビスフェノールA、ビスフェノールS及びビスフェノールF等)の炭素数2〜12のAO付加物であってMn又は化学式量が500未満のもの;ビス(2−ヒドロキシエチル)テレフタレート及びその炭素数2〜12のAO付加物であってMn又は化学式量が500未満のもの;カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、スルファミン酸(塩)基及びリン酸(塩)基からなる群から選ばれる少なくとも1種のイオン性基を有するジオール等が挙げられる。
Mn又は化学式量が500未満のポリオール(c1)は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
本発明における炭素数2〜12のAOとしては、エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−,1,3−又は2,3−ブチレンオキサイド、テトラヒドロフラン、3−メチルテトラヒドロフラン、スチレンオキサイド、α−オレフィンオキサイド及びエピクロルヒドリン等が挙げられる。
炭素数2〜20の多価アルコールとしては、炭素数2〜12の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコールや、炭素数6〜20の脂環式2価アルコールや、炭素数8〜20の芳香脂肪族2価アルコールや、炭素数3〜20の3価アルコールや、炭素数5〜20の4〜8価アルコール等が挙げられる。
炭素数2〜12の直鎖又は分岐の脂肪族2価アルコールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−ドデカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオール、1,13−トリデカンジオール、1,14−テトラデカンジオール、1,18−オクタデカンジオール、1,20−エイコサンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール及びテトラエチレングリコール等の直鎖アルコールや、1,2−、1,3−又は2,3−ブタンジオール、2−メチル−1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,6−ヘキサンジオール、2−メチル−1,7−ヘプタンジオール、3−メチル−1,7−ヘプタンジオール、4−メチル−1,7−ヘプタンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、3−メチル−1,8−オクタンジオール及び4−メチルオクタンジオール等の分岐アルコール等が挙げられる。
炭素数6〜20の脂環式2価アルコールとしては、1,4−シクロヘキサンジオール、1,3−又は1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロペンタンジオール、1,4−シクロヘプタンジオール、2,5−ビス(ヒドロキシメチル)−1,4−ジオキサン、2,7−ノルボルナンジオール、テトラヒドロフランジメタノール、1,4−ビス(ヒドロキシエトキシ)シクロヘキサン、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン及び2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン等が挙げられる。
炭素数8〜20の芳香脂肪族2価アルコールとしては、m−又はp−キシリレンジオール、ビス(ヒドロキシエチル)ベンゼン及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等が挙げられる。
炭素数3〜20の3価アルコールとしては、脂肪族トリオール(グリセリン及びトリメチロールプロパン等)等が挙げられる。
炭素数5〜20の4〜8価アルコールとしては、脂肪族ポリオール(ペンタエリスリトール、ソルビトール、マンニトール、ソルビタン、ジグリセリン及びジペンタエリスリトール等)や、糖類(ショ糖、グルコース、マンノース、フルクトース、メチルグルコシド及びその誘導体)等が挙げられる。
カルボン酸(塩)基を有するジオールとしては、酒石酸(塩)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロパン酸(塩)、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸(塩)及び3−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]プロパン酸(塩)等が挙げられる。
スルホン酸(塩)基を有するジオールとしては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)エタンスルホン酸(塩)、2−[ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エタンスルホン酸(塩)及び5−スルホ−イソフタル酸−1,3−ビス(2−ヒドロキシエチル)エステル(塩)等が挙げられる。
スルファミン酸(塩)基を有するジオールとしては、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸(塩)、N,N−ビス(3−ヒドロキシプロピル)スルファミン酸(塩)、N,N−ビス(4−ヒドロキシブチル)スルファミン酸(塩)及びN,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)スルファミン酸(塩)等が挙げられる。
リン酸(塩)基を有するジオールとしては、ビス(2−ヒドロキシエチル)ホスフェート(塩)等が挙げられる。
カルボン酸(塩)基、スルホン酸(塩)基、スルファミン酸(塩)基及びリン酸(塩)基を構成する塩としては、アンモニウム塩、アミン塩(メチルアミン塩、ジメチルアミン塩、トリメチルアミン塩、エチルアミン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、プロピルアミン塩、ジプロピルアミン塩、トリプロピルアミン塩、ブチルアミン塩、ジブチルアミン塩、トリブチルアミン塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩、N−メチルエタノールアミン塩、N−エチルエタノールアミン塩、N,N−ジメチルエタノールアミン塩、N,N−ジエチルエタノールアミン塩、ヒドロキシルアミン塩、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン塩及びモルホリン塩等)、4級アンモニウム塩[テトラメチルアンモニウム塩、テトラエチルアンモニウム塩及びトリメチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム塩等]、アルカリ金属塩(ナトリウム塩及びカリウム塩等)が挙げられる。
イオン性基を有するジオールの内、ウレタン樹脂との相溶性の観点から好ましいのは、カルボン酸(塩)基を有するジオール及びスルホン酸(塩)基を有するジオールである。
Mn又は化学式量が500未満のポリオール(c1)の内、ポリウレタン樹脂(U)との親和性及び得られるポリウレタン樹脂組成物(W)の柔軟性の観点から好ましいのは脂肪族ジオールであり、更に好ましいのは炭素数2〜20の多価アルコール、特に好ましいのはエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールである。
炭素数2〜20のポリカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体としては、脂肪族ジカルボン酸(コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、オクタデカンジカルボン酸、デシルコハク酸、フマル酸及びマレイン酸等)、脂環式ジカルボン酸(ダイマー酸等)、芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、t−ブチルイソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸及び4,4’−ビフェニルジカルボン酸等)、3価又はそれ以上のポリカルボン酸(トリメリット酸及びピロメリット酸等)、これらの無水物(無水コハク酸、無水マレイン酸、無水フタル酸及び無水トリメリット酸等)、これらの酸ハロゲン化物(アジピン酸ジクロライド等)、これらの低分子量アルキルエステル(コハク酸ジメチル及びフタル酸ジメチル等)並びこれらの併用が挙げられる。
炭素数2〜20のポリカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体の内でポリウレタン樹脂(U)との親和性及び得られるポリウレタン樹脂組成物(W)の柔軟性の観点から好ましいのは、炭素数2〜20の脂肪族ジカルボン酸、そのエステル形成性誘導体及びこれらと芳香族ジカルボンとの併用であり、更に好ましいのは直鎖型の脂肪族ジカルボン酸及びそのエステル形成性誘導体である。脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジカルボン酸を併用する場合、芳香族ジカルボン酸の使用量はカルボン酸の総モル数に基づいて20モル%以下が好ましい。炭素数2〜20のポリカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリラクトンポリオールとしては、上記炭素数2〜20の多価アルコールを開始剤として炭素数3〜12のラクトンモノマー(β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、ε−カプロラクトン、η−カプリロラクトン、11−ウンデカノラクトン及び12−トリデカノイド等)を開環重合させたもの等が挙げられる。ラクトンモノマーは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリカーボネートポリオールとしては、上記炭素数2〜20の多価アルコール(好ましくは炭素数3〜9、更に好ましくは炭素数4〜6の脂肪族2価アルコール)の1種又は2種以上(好ましくは2〜4種)と、低分子カーボネート化合物(例えば、アルキル基の炭素数1〜6のジアルキルカーボネート、炭素数2〜6のアルキレン基を有するアルキレンカーボネート及び炭素数6〜9のアリール基を有するジアリールカーボネート)から、脱アルコール反応させながら縮合させることによって製造されるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
ブロック(a1)を構成するポリエステル樹脂としてポリウレタン樹脂(U)との親和性及び得られるポリウレタン樹脂組成物(W)の柔軟性の観点から好ましいのは縮合型ポリエステル樹脂であり、更に好ましいのは炭素数2〜20の多価アルコールと炭素数2〜20のジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体とを構成単量体とするものである。
[ウレタン結合を有するポリエステル樹脂からなるブロック(a2)]
ウレタン結合を有するポリエステル樹脂からなるブロック(a2)を構成するポリエステル樹脂としては、ポリエステルポリオールと有機ポリイソシアネート(d)とを構成単量体とし、鎖伸長剤(e)及び反応停止剤(f)を任意の構成単量体とし、末端に水酸基、イソシアネート基又はアミノ基を有するポリエステル樹脂等が挙げられる。
当該ポリエステルポリオールとしては、上記ブロック(a1)で例示した、縮合型ポリエステル樹脂で末端に水酸基を有するもの(縮合型ポリエステルポリオール)、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等が挙げられる。
ウレタン結合を有するポリエステル樹脂には、上記縮合型ポリエステルポリオール等と有機ポリイソシアネート(d)とを繰り返し単位としてそれぞれ複数有するものや、上記縮合型ポリエステルポリオール等の一つを有機ポリイソシアネート(d)でブロック(b1)及び/又はブロック(b2)とジョイントしたものが含まれる。
使用する構成単量体の種類と使用量を調整することにより、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂が有する末端の官能基を所望のものにすることができる。
有機ポリイソシアネート(d)としては、2個以上のイソシアネート基を有する炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(d1)、炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート(d2)、炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(d3)、炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(d4)及びこれらの有機ポリイソシアネートの変性物(d5)等が挙げられる。
炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(d1)としては、例えば1,3−又は1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート(以下、トリレンジイソシアネートをTDIと略記)、粗製TDI、4,4’−又は2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(以下、ジフェニルメタンジイソシアネートをMDIと略記)、粗製MDI、ポリアリールポリイソシアネート、4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトビフェニル、3,3’−ジメチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタン、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート及びm−又はp−イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネートが挙げられる。
炭素数4〜22の脂肪族ポリイソシアネート(d2)としては、例えばエチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以下、HDIと略記)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネート及び2−イソシアナトエチル−2,6−ジイソシアナトヘキサノエートが挙げられる。
炭素数8〜18の脂環式ポリイソシアネート(d3)としては、例えばイソホロンジイソシアネート(以下、IPDIと略記)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート及び2,5−又は2,6−ノルボルナンジイソシアネートが挙げられる。
炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(d4)としては、例えばm−又はp−キシリレンジイソシアネート及びα,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネートが挙げられる。
炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(d1)〜炭素数10〜18の芳香脂肪族ポリイソシアネート(d4)の有機ポリイソシアネートの変性物(d5)としては、前記ポリイソシアネートのウレタン基、カルボジイミド基、アロハネート基、ウレア基、ビウレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基又はオキサゾリドン基含有変性物[例えば、ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI及びトリヒドロカルビルホスフェート変性MDI等の変性MDI、ウレタン変性TDI、ビウレット変性HDI、イソシアヌレート変性HDI及びイソシアヌレート変性IPDI]が挙げられる。
これらの中で弾性回復率及び残留歪みの観点から好ましいのは、炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(d1)であり、更に好ましいのは、TDI、MDIであり、特に好ましいのは、MDI、最も好ましいのは4,4’−MDIである。である。有機ポリイソシアネート(d)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
鎖伸長剤(e)としては、水、上記Mn又は化学式量が500未満のポリオール(c1)及びMn又は化学式量が500未満のポリアミン化合物等が挙げられる。
Mn又は化学式量が500未満のポリアミン化合物としては、炭素数2〜36の脂肪族ポリアミン、炭素数6〜20の脂環式ポリアミン、炭素数6〜20の芳香族ポリアミン、炭素数8〜20の芳香脂肪族ポリアミン、炭素数3〜20の複素環式ポリアミン、ヒドラジン又はその誘導体、炭素数2〜20のアミノアルコール類等が挙げられる。
炭素数2〜36の脂肪族ポリアミンとしては、エチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミン等のアルキレンジアミン;ジエチレントリアミン、ジプロピレントリアミン、ジヘキシレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチエレンヘキサミン、ヘキサエチレンヘプタミン等のポリ(n=2〜6)アルキレン(炭素数2〜6)ポリ(n=3〜7)アミン等が挙げられる。
炭素数6〜20の脂環式ポリアミンとしては、1,3−又は1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−又は2,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン及びイソホロンジアミン等が挙げられる。
炭素数6〜20の芳香族ポリアミンとしては、1,3−又は1,4−フェニレンジアミン、2,4−又は2,6−トリレンジアミン、4,4’−又は2,4’−メチレンビスアニリン等が挙げられる。
炭素数8〜20の芳香脂肪族ポリアミンとしては、1,3−又は1,4−キシリレンジアミン、ビス(アミノエチル)ベンゼン、ビス(アミノプロピル)ベンゼン及びビス(アミノブチル)ベンゼン等が挙げられる。
炭素数3〜20の複素環式ポリアミンとしては、2,4−ジアミノ−1,3,5−トリアジン、ピペラジン及びN−(2−アミノエチル)ピペラジン等が挙げられる。
ヒドラジン又はその誘導体としては、二塩基酸ジヒドラジド例えばアジピン酸ジヒドラジド等が挙げられる。
炭素数2〜20のアミノアルコール類としては、エタノールアミン、ジエタノールアミン、2−アミノ−2−メチルプロパノール及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
反応停止剤(f)としては、炭素数1〜15のモノアルコール類(メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、デカノール、ドデシルアルコール及びミリスチルアルコール等)、炭素数1〜15のモノアミン(モノメチルアミン、モノエチルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミン及びモノオクチルアミン等のモノ又はジアルキルアミンや、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン及びジイソプロパノールアミン等のモノ又はジアルカノールアミン等)が挙げられる。
尚、反応停止剤(f)を使用する場合、ブロック(a2)とブロック(b1)及び/又はブロック(b2)とを結合させるために、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂の少なくとも1つの末端を反応停止剤(f)で封止しないことが必要である。
[エステル結合を有しないポリウレタン樹脂からなるブロック(a3)]
エステル結合を有しないポリウレタン樹脂からなるブロック(a3)を構成するポリウレタン樹脂としては、活性水素成分と上記有機ポリイソシアネート(d)とを構成単量体とする末端に水酸基、イソシアネート基又はアミノ基を有するポリウレタン樹脂等が挙げられる。
使用する構成単量体の種類と使用量を調整することにより、ポリウレタン樹脂が有する末端の官能基を所望のものにすることができる。
ブロック(a3)に用いられる活性水素成分としては、Mnが500以上の高分子ポリオール(c2)であってエステル結合を有しないもの、上記鎖伸長剤(e)及び上記反応停止剤(f)等が挙げられる。ブロック(a3)を構成するポリウレタン樹脂においては、これらの活性水素成分にエステル結合を有する化合物は含まれない。尚、高分子ポリオール(c2)にポリエステルポリオールを用いたものは、上記ブロック(a2)を構成するウレタン結合を有するポリエステル樹脂に含まれる。
Mnが500以上の高分子ポリオール(c2)の内、エステル結合を有しないものとしては、上記Mn又は化学式量が500未満のポリオール(c1)に上記炭素数2〜12のAOを付加させたポリエーテルポリオール等が挙げられる。AOは1種を単独で用いても2種以上を併用してもよく、後者の場合はブロック付加(チップ型、バランス型、活性セカンダリー型等)でもランダム付加でもこれらの併用系でもよい。
Mn又は化学式量が500未満のポリオール(c1)へのAOの付加は、例えば無触媒で又は触媒(アルカリ触媒、アミン系触媒、酸性触媒等)の存在下に常圧又は加圧下に1段階又は多段階で行なわれる。
ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリ(オキシエチレン)グリコール、ポリ(オキシプロピレング)グリコール、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリ(オキシ−3−メチルテトラメチレン)グリコール、テトラヒドロフラン/エチレンオキサイド共重合ジオール及びテトラヒドロフラン/3−メチルテトラヒドロフラン共重合ジオール等が挙げられる。
これらの内、弾性回復率及び残留歪率の観点から好ましいのはポリ(オキシテトラメチレン)グリコールである。
ポリウレタン樹脂に反応停止剤(f)を使用する場合、ブロック(a3)とブロック(b1)及び/又はブロック(b2)とを結合させるために、ポリウレタン樹脂の少なくとも1つの末端を反応停止剤(f)で封止しないことが必要である。
[炭素数16〜44の1価の炭化水素基からなるブロック(b1)]
炭素数16〜44の1価の炭化水素基からなるブロック(b1)を形成するために用いる原料としては、炭素数16〜44のモノオール及び炭素数16〜44(カルボキシル基の炭素を除く)のモノカルボン酸等が挙げられる。
炭素数16〜44のモノオールとして、耐ブロッキング性及び解舒性の観点から好ましいのは炭素数18〜44のアルキルモノアルコール、更に好ましいのは炭素数18〜42のアルキルモノアルコール、特に好ましいのはセチルアルコール、ステアリルアルコール、エイコサノール、ベヘニルアルコール及びテトラコサノールである。
炭素数16〜44のモノカルボン酸として、耐ブロッキング性及び解舒性の観点から好ましいのはアルキルモノカルボン酸、更に好ましいのは炭素数17〜42のアルキルモノカルボン酸、特に好ましいのはステアリン酸、ヘンエイコサン酸、ベヘン酸及びトリコサン酸である。
尚、本発明におけるモノカルボン酸の炭素数は、カルボキシル基の炭素を除いた炭素数である。
[1価のポリオルガノシロキサン基からなるブロック(b2)]
ブロック(b2)における1価のポリオルガノシロキサン基は、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン基であることが好ましい。
Figure 2020054348
一般式(1)におけるRは炭素数1〜6のアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基を表し、nは1〜100の整数である。
耐ブロッキング性及び耐摩耗性の観点から一般式(1)で表される基のケイ素含量は高い方が望ましいことから、Rは炭素数1〜3のアルキル基が好ましく、R〜Rは炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。
ブロック(b2)を形成するための原料としては、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン基に水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基が結合したモノオール及び一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン基にエポキシ基を有する炭素数1〜12の炭化水素基が結合したモノエポキサイド等が挙げられる。
一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン基に水酸基を有する炭素数1〜12の炭化水素基が結合したモノオールは、有機アルカリ金属化合物を開始剤として1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状ポリシロキサンをアニオン重合し、片末端がアルカリ金属シラノレートであるポリシロキサン(いわゆるリビングポリマー)を得て、これと水酸基を有するアルキルクロロシラン化合物とを反応させて片末端に水酸基を導入する方法や、有機アルカリ金属化合物を開始剤として環状ポリシロキサンをアニオン重合し、片末端がアルカリ金属シラノレートであるポリシロキサン(いわゆるリビングポリマー)を得て、これとジアルキルクロロシラン化合物とを反応させて片末端SiH基含有ポリシロキサンを製造し、アリルアルコール等の分子末端に二重結合を1つ有するアルコールを白金系触媒によって反応させる方法等により得ることができる。
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン基にエポキシ基を有する炭素数1〜12の炭化水素基が結合したモノエポキサイドは、有機アルカリ金属化合物を開始剤として1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等の環状ポリシロキサンをアニオン重合し、片末端がアルカリ金属シラノレートであるポリシロキサン(いわゆるリビングポリマー)を得て、これとエポキシ基を有するアルキルクロロシラン化合物とを反応させて片末端にエポキシ基を導入する方法等により得ることができる。
[ブロックポリマー(X)]
ブロックポリマー(X)は、同一分子内にブロック(a1)、ブロック(a2)又はブロック(a3)とブロック(b1)及び/又はブロック(b2)とが、エステル結合、ウレタン結合及びアミド結合の内の少なくとも1種の結合を介して化学結合されている。
化学結合は、弾性回復率及び残留歪率の観点からエステル結合及び/又はウレタン結合であることが好ましい。
上述の通り、ブロック(a1)の原料は末端官能基として水酸基及び/又はカルボキシル基を有し、ブロック(a2)及びブロック(a3)の原料は水酸基、イソシアネート基又はアミノ基を有する。一方、ブロック(b1)の原料の内、モノオールは水酸基をモノカルボン酸はカルボキシル基を有し、ブロック(b2)の原料の内、モノオールは水酸基をモノエポキサイドはエポキシ基を有する。従って、ブロック(a1)、ブロック(a2)又はブロック(a3)とブロック(b1)及び/又はブロック(b2)のブロック間の結合はそれぞれのブロックに使用する原料を選択することにより、エステル結合、ウレタン結合及びアミド結合の内の任意の結合とすることができ、例えば、一方の末端官能基がカルボキシル基で他方が水酸基又はエポキシ基であればエステル結合が、一方が水酸基で他方がイソシアネート基であればウレタン結合が、一方がアミノ基で他方がカルボキシル基であればアミド結合が形成される。
ブロック(a1)、ブロック(a2)及びブロック(a3)に用いる原料は末端官能基(反応性基)を2個以上有し、ブロック(b1)及びブロック(b2)に用いる原料は末端官能基(反応性基)を1個有することから、ブロック(a1)、ブロック(a2)及び(a3)に用いる原料1モルに対してブロック(b1)及び(b2)に用いる原料1モルを反応させることにより、ブロックポリマー(X)はジブロック構造となる。
また、ブロック(a1)、ブロック(a2)及びブロック(a3)に用いる原料1モルに対してブロック(b1)及びブロック(b2)に用いる原料を2モル以上反応させることにより、ブロックポリマー(X)はマルチブロック構造となる。マルチブロック構造の際のブロック(b1)及びブロック(b2)に用いる原料は1種単独でも2種以上を併用してもよい。
ブロックポリマー(X)の重量平均分子量(以下、Mwと略記)は、耐ブロッキング性、解舒性及び紡糸原液の粘度上昇抑制の観点から、1,000〜50,000が好ましく、更に好ましくは1,200〜40,000、特に好ましくは1,500〜30,000である。
尚、本明細書における、ブロックポリマー(X)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定した値のことを意味する。
装置:東ソー(株)製 HLC−8120
カラム:TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度:40℃
試料溶液:0.25重量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:100μL
検出装置:屈折率検出器
基準物質:東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 9100 18100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
ブロックポリマー(X)は、上述のブロック(a1)、ブロック(a2)及びブロック(a3)の原料の内の少なくとも1種とブロック(b1)及び/又はブロック(b2)の原料とを常法によりエステル化反応、ウレタン化反応又はアミド化反応させて得られる。
また、各ブロックの原料を反応させる以外に、一方の原料を製造する際に他方の原料を共存させて一括して反応させて製造することもできる。例えば、ポリオールとポリカルボン酸を脱水縮合させてブロック(a1)を構成する縮合型ポリエステル樹脂を製造する際に、ブロック(b1)の原料である炭素数16〜44のモノオール又はモノカルボン酸を共存させて脱水縮合することによりブロック(a1)とブロック(b1)を有するブロックポリマーを製造することができる。
[ポリウレタン樹脂組成物(W)]
本発明のポリウレタン樹脂組成物(W)は、上記ブロックポリマー(X)とポリウレタン樹脂(U)とを含有する。
ポリウレタン樹脂組成物(W)に用いられるポリウレタン樹脂(U)は、活性水素成分と有機ポリイソシアネートとを構成単量体とするポリウレタン樹脂であって、上記ブロック(b1)及びブロック(b2)のいずれをも有さず、構成単量体としてのポリオールが芳香環を有しないポリウレタン樹脂である。ポリウレタン樹脂(U)の構成単量体としてのポリオールが芳香環を有しないことによって、弾性回復率、残留歪率及び柔軟性に優れるポリウレタン樹脂組成物が得られる。
ポリウレタン樹脂(U)に用いられる活性水素成分としては、Mnが500以上の高分子ポリオール(c2)であって芳香環を有しないもの、上記鎖伸長剤(e)及び上記反応停止剤(f)等が挙げられ、これらの活性水素成分はエステル結合を有していてもよい。
従って、ポリウレタン樹脂(U)に用いられる高分子ポリオール(c2)であって芳香環を有しないポリオールとしては、上述の縮合型ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール及びポリエーテルポリオール等の内の芳香環を有しないポリオールが使用できる。活性水素成分のそれぞれの成分は1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
ポリウレタン樹脂(U)に用いられるMnが500以上の高分子ポリオール(c2)は、弾性回復率、残留歪率及び柔軟性の観点から、芳香環を有しないポリオールである必要があり、ポリエーテルポリオールであることが好ましく、更に好ましいのはポリ(オキシテトラメチレン)グリコールである。
Mnが500以上の高分子ポリオール(c2)のMnは、ポリウレタン樹脂の柔軟性及び原料の取扱い性の観点から、好ましくは500〜10,000、更に好ましくは1,000〜4,000、特に好ましくは1,500〜2,500である。
ポリウレタン樹脂(U)に用いられる有機ポリイソシアネートとしては、上記有機ポリイソシアネート(d)と同様のものが挙げられるが、ポリウレタン樹脂の弾性回復率及び残留歪率の観点から、2個以上のイソシアネート基を有する炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(d1)が好ましく、更に好ましいのはTDI、粗製TDI、MDI、粗製MDI及びこれらのイソシアネートの変性物、特に好ましいのはMDI、最も好ましいのは4,4’−MDIである。
ポリウレタン樹脂(U)のMwは、引張強度の観点から、好ましくは50,000〜1,000,000、更に好ましくは100,000〜500,000である。
尚、本明細書において、ポリウレタン樹脂(U)のMwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより、以下の条件で測定した値のことを意味する。
装置:「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
カラム:「Guardcolumn α」+「TSKgel α−M」[いずれも東ソー(株)製]
試料溶液:0.125重量%のジメチルホルムアミド溶液
溶液注入量:100μl
流量:1ml/分
測定温度:40℃
検出装置:屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン
ポリウレタン樹脂(U)のウレタン基含有量は、得られるポリウレタン樹脂組成物(W)の弾性回復率、残留歪率及び柔軟性の観点から(U)の重量に基づいて、好ましくは10〜20重量%、更に好ましくは12〜18重量%である。
ポリウレタン樹脂(U)の製造方法は特に限定されず、公知の方法等で製造できる。例えば、活性水素成分、有機ポリイソシアネート(d)並びに必要により有機溶剤及び添加剤を一括して仕込んで反応させてもよいし、高分子ポリオール(c2)と有機ポリイソシアネート(d)とを反応させてイソシアネート基末端のプレポリマーを得た後、鎖伸長剤(e)により伸長反応を行い、必要により反応停止剤(f)により停止反応を行うこともできる。更に、反応装置としてニーダー等を用いることにより、上記反応を無溶剤下で行うこともできるが、ブロックポリマー(X)をポリウレタン樹脂(U)に混合する容易さから有機溶剤を用いた製造方法が好ましい。
本発明における有機溶剤としては、炭素数3〜10のケトン溶剤(アセトン、メチルエチルケトン及びメチルイソブチルケトン等)、炭素数2〜10のエステル溶剤(酢酸エチル、酢酸ブチル及びγ−ブチロラクトン等)、炭素数4〜10のエーテル溶剤(ジオキサン、テトラヒドロフラン、エチルセロソルブ及びジエチレングリコールジメチルエーテル等)、炭素数3〜10のアミド溶剤(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン及びN−メチルカプロラクタム等)、炭素数2〜10のスルホキシド溶剤(ジメチルスルホキシド等)、炭素数1〜8のアルコール溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール及びオクタノール等)及び炭素数4〜10の炭化水素溶剤(シクロヘキサン、トルエン及びキシレン等)等が挙げられる。ポリウレタン樹脂(U)の溶解性の観点からアミド系溶剤が好ましく、最も好ましいのはN,N−ジメチルホルムアミド及びN,N−ジメチルアセトアミド(以下、DMACと略記)である。
ポリウレタン樹脂組成物(W)は、ブロックポリマー(X)及びポリウレタン樹脂(U)を成分として含有するが、必要により上記有機溶剤、安定剤、顔料及びその他の添加剤(融着防止剤及び難燃剤等)を含有することができる。
安定剤としては特に限定されず公知の酸化防止剤及び紫外線吸収剤を使用することができる。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤[2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール及びブチル化ヒドロキシアニソール等];ビスフェノール系酸化防止剤[2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)等];リン系酸化防止剤[トリフェニルフォスファイト及びジフェニルイソデシルフォスファイト等]等が挙げられる。
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤[2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン及び2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等];ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤[2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール等];サリチル酸系紫外線吸収剤[フェニルサリシレート等];ヒンダードアミン系紫外線吸収剤[ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等]等が挙げられる。
顔料としては特に限定されず、公知の有機顔料及び無機顔料を使用することができる。
有機顔料としては、不溶性アゾ顔料、溶性アゾ顔料、銅フタロシアニン系顔料及びキナクリドン系顔料等が挙げられ、無機系顔料としてはクロム酸塩、フェロシアン化合物、金属酸化物、硫化セレン化合物、金属塩(硫酸塩、珪酸塩、炭酸塩、燐酸塩等)、金属粉末及びカーボンブラック等が挙げられる。
ポリウレタン樹脂組成物(W)におけるブロックポリマー(X)の使用量は、弾性回復率、残留歪率、耐ブロッキング性、解舒性、平滑性、紡糸原液の粘度上昇抑制効果及びスカム発生抑制効果の観点からポリウレタン樹脂(U)の重量を基準として、好ましくは0.1〜10重量%、更に好ましくは0.5〜5重量%である。
安定剤の使用量は、ポリウレタン樹脂組成物(W)の重量に基づいて好ましくは0〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
顔料の使用量は、ポリウレタン樹脂(U)の重量に基づいて好ましくは0〜5重量%、更に好ましくは0.1〜3重量%である。
ポリウレタン樹脂組成物(W)の製造方法としては、ブロックポリマー(X)及びポリウレタン樹脂(U)は任意の順序で混合することで行うが、ブロックポリマー(X)を均一にポリウレタン樹脂(U)に溶解又は分散させるため、ポリウレタン樹脂(U)を予め有機溶剤溶液とし、そこにブロックポリマー(X)を混合した後、加熱、混合処理を行うことが好ましい。
顔料、安定剤及びその他の添加剤は、ブロックポリマー(X)又はポリウレタン樹脂(U)の製造時の任意の段階で添加することでき、製造後にブロックポリマー(X)及びポリウレタン樹脂(U)の混合時や(W)を用いてウレタンフィルムや弾性繊維等の成形物を製造する際に任意の段階で添加してもよい。
本発明のポリウレタン樹脂組成物(W)は、弾性回復率、残留歪率及び伸び等の伸縮物性や耐ブロッキング性に優れるため、天然皮革を代替する合成皮革として、ウレタンフィルムを生地に貼り付けて製造される靴、鞄及び車両シート等広範な用途に使用できる。また、本発明のポリウレタン樹脂組成物(W)で作製した弾性繊維は解舒性及び平滑性にも優れる。更にポリウレタン樹脂組成物(W)を含む弾性繊維生産用の紡糸原液は経時的に粘度が上昇しにくく、糸道上に脱落堆積物(スカム)が発生しにくいため、生産性も改善できるものである。溶融紡糸法で使用される場合は溶融状態、無溶剤ペレット又は無溶剤ブロックの形状で使用されるが、ブロックポリマー(X)とポリウレタン樹脂(U)の混合性を確保する観点からは、DMAC等の溶剤で樹脂濃度30〜80重量%に希釈して乾式紡糸法で使用されることが好ましい。
以下、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。以下の記載において「部」は重量部を示す。
製造例1 [ブロックポリマー(X−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、アジピン酸695部、エチレングリコール498部、ベヘニルアルコール168部及び縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート1.0部を入れ、160℃まで昇温し、常圧で1時間反応後、0.5〜2.5kPaの減圧下で生成する水及びエチレングリコールを留去しながら8時間反応させた。次いで200℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、酸価が0.5以下になった時点で取り出して室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、ブロックポリマー(X−1)を得た。回収されたエチレングリコールは190部で、ブロックポリマー(X−1)のMwは7,500であった。ブロックポリマー(X−1)はブロック(a1)とブロック(b1)とを有する。
製造例2 [ブロックポリマー(X−2)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、コハク酸560部、1,4−ブタンジオール533部、ベヘニルアルコール166部及び縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート1.0部を入れ、160℃まで昇温し、常圧で1時間反応後、0.5〜2.5kPaの減圧下で生成する水及び1,4−ブタンジオールを留去しながら8時間反応させた。次いで200℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及び1,4−ブタンジオールを留去しながら4時間反応させ、酸価が0.5以下になった時点で取り出して室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、ブロックポリマー(X−2)を得た。回収された1,4−ブタンジオールは88.8部で、ブロックポリマー(X−2)のMwは1,500であった。ブロックポリマー(X−2)はブロック(a1)とブロック(b1)とを有する。
製造例3 [ブロックポリマー(X−3)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、アジピン酸714部、エチレングリコール397部、ベヘン酸166部及び縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート1.0部を入れ、160℃まで昇温し、常圧で1時間反応後、0.5〜2.5kPaの減圧下で生成する水及びエチレングリコールを留去しながら8時間反応させた。次いで200℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させて取り出し、室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、ブロックポリマー(X−3)を得た。回収されたエチレングリコールは100部で、ブロックポリマー(X−3)のMwは6,000であった。ブロックポリマー(X−3)はブロック(a1)とブロック(b1)とを有する。
製造例4 [ブロックポリマー(X−4)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、アジピン酸698部、エチレングリコール498部及び縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート1.0部を入れ、160℃まで昇温し、常圧で1時間反応後、0.5〜2.5kPaの減圧下で生成する水及びエチレングリコールを留去しながら8時間反応させた。次いで200℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ(回収されたエチレングリコールは190部)、酸価が0.5以下になった時点で80℃に冷却し、次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート50部を仕込んで95℃に昇温した後10時間反応させ、イソシアネート基を末端に有するポリエステル樹脂を得た後、ベヘニルアルコール70部を仕込み、更に10時間反応させた後、取り出して室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、ブロックポリマー(X−4)を得た。ブロックポリマー(X−4)のMwは8,200であった。ブロックポリマー(X−4)はブロック(a2)とブロック(b1)とを有する。
製造例5 [ブロックポリマー(X−5)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中にMnが2,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール[三菱ケミカル(株)製「PTMG2000」:以下「PTMG2000」と略記]266.5部、1,4−ブタンジオール25.6部及びDMAC500部を加えた後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート140.1部を添加し、70℃で3時間反応させてイソシアネート基を末端に有するポリウレタン樹脂を得た。そこにステアリルアルコール67.8部を仕込み、更に5時間反応させた後、イソシアネート基が消失したことを確認して、室温に冷却してブロックポリマー(X−5)の50重量%DMAC溶液を得た。ブロックポリマー(X−3)のMwは15,000であった。ブロックポリマー(X−5)はブロック(a3)とブロック(b1)とを有する。
製造例6 [ブロックポリマー(X−6)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、PTMG2000を264.0部、エチレングリコール31.1部及びDMAC500部を加えた後、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート162.3部を添加し、70℃で3時間反応させてイソシアネート基を末端に有するポリウレタン樹脂を得た。そこにユニリン550[Mnが550で平均炭素数約40のアルキルモノアルコール:東洋アドレ(株)製]を42.5部仕込み、更に5時間反応させた後、イソシアネート基が消失したことを確認して、室温に冷却してブロックポリマー(X−6)の50重量%DMAC溶液を得た。ブロックポリマー(X−6)のMwは50,000であった。ブロックポリマー(X−6)はブロック(a3)とブロック(b1)とを有する。
製造例7 [ブロックポリマー(X−7)の製造]
攪拌機、温度計及び冷却管を備えた反応容器に、ブチルリチウムを触媒として1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサンをアニオン重合して更にジメチルクロロシランを反応させて得られた片末端がブチル基で封鎖されもう一方の末端にSiH基を有する直鎖状ポリジメチルシロキサン(Mn=400)100部と、アリルアルコール72部中に酸化白金0.3部を懸濁させた懸濁液とを仕込み、105℃で16時間撹拌下で反応させた。室温まで冷却した後、反応混合物をメンブレンフィルタ(ポリテトラフルオロエチレン[PTFE]、ポアサイズ0.45μm)に通して不溶物を除去した。その後、ろ液に含まれる過剰なアリルアルコールを減圧下で除去して、Mnが500のα−ブチル−ω−ヒドロキシ変性ポリジメチルシロキサンを得た。
続いて、別の冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、アジピン酸695部、エチレングリコール520部、上記α−ブチル−ω−ヒドロキシ変性ポリジメチルシロキサン280部及び縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート1.0部を入れ、160℃まで昇温し、常圧で1時間反応後、0.5〜2.5kPaの減圧下で生成する水及びエチレングリコールを留去しながら8時間反応させた。次いで200℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、酸価が0.5以下になった時点で取り出して室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、ブロックポリマー(X−7)を得た。回収されたエチレングリコールは200部で、ブロックポリマー(X−7)のMwは6,300であった。ブロックポリマー(X−7)は一般式(1)におけるRがブチル基で、R〜Rがいずれもメチル基であるブロックを有する。ブロックポリマー(X−7)はブロック(a1)とブロック(b2)とを有する。
比較製造例1 [ブロック化していないポリエステル樹脂(X’−1)の製造]
冷却管、撹拌機及び窒素導入管を備えた反応槽中に、アジピン酸695部、エチレングリコール520部及び縮合触媒としてのテトラブトキシチタネート1.0部を入れ、160℃まで昇温し、常圧で1時間反応後、0.5〜2.5kPaの減圧下で生成する水及びエチレングリコールを留去しながら8時間反応させた。次いで200℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水及びエチレングリコールを留去しながら4時間反応させ、酸価が0.5以下になった時点で取り出て室温まで冷却後、粉砕して粒子化し、ブロック化していないポリエステル樹脂(X’−1)を得た。回収されたエチレングリコールは200部で、ポリエステル樹脂(X’−1)のMwは7,500であった。
比較製造例2 [芳香環含有ポリオールの製造]
攪拌装置及び温度制御装置を備えたステンレス製オートクレーブに、PTMG2000を522.6部(1モル)、無水フタル酸77.4部(2モル)及びアルカリ触媒(N−エチルモルフォリン)0.9部(0.03モル部)を仕込み、窒素雰囲気下、0.20MPa、120±10℃で1時間反応させハーフエステル化を行った。
ハーフエステル化後、エチレンオキシド36.4部(3モル部)を120±10℃、圧力0.50MPa以下となるよう制御しながら、5時間かけて滴下した後、120±10℃で1時間熟成した。熟成終了後、未反応のエチレンオキサイドを0.1MPaにて1時間減圧除去した。90℃まで冷却した後、触媒除去のため、水と合成珪酸塩(協和化学社製「キョーワード600」)を加えて加熱処理後、ろ過、減圧脱水し、Mnが2,430の比較用の芳香環含有ポリオールを得た。
製造例8 [ポリウレタン樹脂(U−1)の製造]
高分子ポリオール(c2)としてのPTMG2000を200部、鎖伸長剤(e)としての1,4−ブタンジオール30部、有機ポリイソシアネート(d)としての4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート109部及び有機溶剤としてのDMAC790部を反応容器に仕込み、乾燥窒素雰囲気下、70℃で12時間反応させた。その後、反応停止剤(f)としてのn−ブチルアルコール5.7部を仕込んで1時間末端停止反応を行い、ポリウレタン樹脂(U−1)の30重量%DMAC溶液を得た。
製造例9〜11 [ポリウレタン樹脂(U−2)〜(U−4)の製造]
高分子ポリオール(c2)を表1に記載のものに代える以外は製造例8と同様にして、ポリウレタン樹脂(U−2)〜(U−4)の30重量%DMAC溶液を得た。
比較製造例3 [ポリウレタン樹脂(U’−1)の製造]
使用原料とその使用量を表1に記載のものに代える以外は製造例8と同様にして、ポリウレタン樹脂(U’−1)を製造した。
Figure 2020054348
尚、表1において商品名で表した原料の組成は以下の通りである。
・PTMG2000:Mn=2,000のポリ(オキシテトラメチレン)グリコール[三菱ケミカル(株)製]
・サンニックスPP−2000:Mn=2,000のポリオキシプロピレンジオール[三洋化成工業(株)製]
・デュラノールG4672:Mn=2,000のポリ(テトラメチレン/ヘキサメチレン)カーボネートジオール[旭化成(株)製]
・サンエスター4620:Mn=2,000のポリブチレンアジペートジオール[三洋化成工業(株)製]
実施例1 [ポリウレタン樹脂組成物(W−1)の製造]
加温できる反応容器に製造例8で得られたポリウレタン樹脂(U−1)の30重量%DMAC溶液1,000部を仕込み、更にブロックポリマー(X−1)9部を投入し、80℃に加温して、1時間混合して均一化した後、冷却することでポリウレタン樹脂(U−1)のDMAC溶液にブロックポリマー(X−1)が分散した固形分濃度30.6重量%のポリウレタン樹脂組成物(W−1)を得た。
実施例2〜10及び比較例1〜3
ブロックポリマー(X)及びポリウレタン樹脂(U)の30重量%DMAC溶液を表2に記載のものに代える以外は実施例1と同様にしてポリウレタン樹脂組成物(W−2)〜(W−10)及び比較用のポリウレタン樹脂組成物(W’−1)〜(W’−3)を得た。
尚、実施例5及び6におけるブロックポリマー(X−5)及び(X−6)は50重量%DMAC溶液のため、ポリウレタン樹脂(U)1,000部に対してブロックポリマー(X−5)又は(X−6)のDMAC溶液18部(固形分として9部)を投入した。
また、比較例3においては、「ブロックポリマー(X−1)9部」に代えて比較用の「ステアリン酸マグネシウム9部」を投入した。
実施例1〜10のポリウレタン樹脂組成物(W−1)〜(W−10)及び比較例1〜3のポリウレタン樹脂組成物(W’−1)〜(W’−3)を用いて、以下の試験方法により測定したフィルムの弾性回復率及び残留歪率並びに貯蔵安定性評価としてのポリウレタン樹脂組成物(W)の経時的粘度変化、弾性繊維に用いた際の解舒性及びスカムの発生についての評価結果を表2に示す。
[1]弾性回復率及び残留歪率の測定方法
各実施例及び各比較例に係るポリウレタン樹脂組成物を、離型処理したガラス板上に1.0mmの厚みに塗布し、70℃の循風乾燥機で3時間乾燥した後、ガラス板から剥がすことにより、厚さが約0.2mmのフィルムを作製した。
作製したフィルムから、縦100mm×横5mmの短冊状の試験片を切り出して標線間距離が50mmとなるように標線をつけた。この試験片をインストロン型引張り試験機(島津製作所社製オートグラフ)のチャックにセットして、25℃の雰囲気下、500mm/分の一定速度で標線間の距離が300%になるまで伸長後、直ちに同じ速度で伸長前のチャック間の距離まで戻す操作を行った。この操作時の伸長過程における150%伸長時の応力(M)と戻り過程における150%伸長時の応力(M)を測定し、次式から弾性回復率を求めた。
弾性回復率(%)=M/M×100
また、前記操作後の標線間の距離(L)を測定してこの値と試験前の標線間の距離(L=50mm)を用いて下式から残留歪率(%)を求めた。
残留歪率(%)={(L−L)/L}×100
残留歪率が小さい程、衣料用の弾性繊維に使用したときのフィット性が良好である。
[2]ポリウレタン樹脂組成物の経時的粘度変化の評価方法
各実施例及び各比較例に係るポリウレタン樹脂組成物100gを、蓋付き145mlガラス製ボトルに入れ、50℃の恒温槽中に30日間静置した後の粘度(V)を測定し、この粘度(V)と製造直後の粘度(V)との差の絶対値を用いて次式から粘度変化率を求めて以下の判定基準により評価した。
粘度変化率(%)=(|V−V|/V)×100
尚、粘度はBH型粘度計を用いて温度25℃で測定した。
<判定基準>
◎:粘度変化率が30%以内
○:粘度変化率が30%超、70%以内
△:粘度変化率が70%超、150%以内
×:粘度変化率が150%を超える
[3]解舒性試験
各実施例及び各比較例に係るポリウレタン樹脂組成物を用いてポリウレタン繊維を乾式紡糸法で以下のようにポリウレタン弾性繊維を製造した。
まず、弾性繊維用油剤として流動パラフィン50重量部及びポリジメチルシロキサン50.0重量部を110〜120℃で1時間混合した。
その後、ローラー給油で弾性繊維用油剤付着量がフィラメント重量に対し4重量%になるように付与させ、600m/分でボビンに巻き取り、40Dの評価用ポリウレタン弾性繊維が巻き取られたチーズを得た。
その後、紡糸工程で巻き取ったチーズを50℃で2週間エージングを行い、可変倍率(引き出し速度と巻き取り速度との比率の変更が可能)の引き出し巻き取り装置にかけた。
50m/分の速度で糸が引き出された時、糸が膠着により自身のチーズの中に巻き込まれずに解舒でき、異なるボビンに巻き取ることのできる最低の速度倍率(巻き取り速度/引き出し速度)を求め、次の基準で判定した。
一般的に、糸が膠着するため、巻き取り速度を引き出し速度よりも高速にして速度倍率を1.2倍以上として解舒を促すが、巻き取り時の糸の形状保持と巻き取る効率の観点から、速度倍率は1.2倍以上、2倍未満が好ましく、1.5倍以上、1.8倍未満が特に好ましいとされている。
<判定基準>
◎:速度倍数が1.5倍以上、1.8倍未満
○:速度倍数が1.2倍以上、1.5倍未満、又は1.8倍以上、2.0倍未満
×:速度倍数が2.0倍以上又は糸切れが発生
[4]スカム発生の評価方法
スカム発生の有無の評価として、上記の紡糸工程を24時間実施した後の糸道でのスカム発生を目視にて判定した。
<判定基準>
○:スカムの発生無し
△:スカムの発生が少し有り
×:スカムの発生が多い
Figure 2020054348
本発明のポリウレタン樹脂組成物(W)は、耐ブロッキング性、弾性回復率及び残留歪率に優れることから、天然皮革を代替する合成皮革として、ウレタンフィルムを生地に貼り付けて製造される靴、鞄及び車両シート等広範な用途に使用できるほか、衣料や紙おむつ等の衛生材料に用いられる弾性繊維としても利用できる。特に弾性繊維では、紡糸原液の貯蔵安定性や解舒性を改善でき、紡糸時のスカム発生という不具合も解消できることから有用である。

Claims (7)

  1. ブロックポリマー(X)とポリウレタン樹脂(U)とを含有するポリウレタン樹脂組成物であって、前記ブロックポリマー(X)が、
    ウレタン結合を有しないポリエステル樹脂からなるブロック(a1)、ウレタン結合を有するポリエステル樹脂からなるブロック(a2)又はエステル結合を有しないポリウレタン樹脂からなるブロック(a3)と、
    炭素数16〜44の1価の炭化水素基からなるブロック(b1)及び/又は1価のポリオルガノシロキサン基からなるブロック(b2)とを有し、
    前記ポリウレタン樹脂(U)が前記ブロック(b1)及び前記ブロック(b2)のいずれをも有さず、
    前記ポリウレタン樹脂(U)の構成単量体としてのポリオールが芳香環を有しないポリウレタン樹脂組成物(W)。
  2. 前記1価のポリオルガノシロキサン基が、一般式(1)で表される基である請求項1記載のポリウレタン樹脂組成物。
    Figure 2020054348
    [一般式(1)中、Rは炭素数1〜6のアルキル基を表し、R〜Rはそれぞれ独立に炭素数1〜6の炭化水素基を表し、nは1〜100の整数である。]
  3. 前記ブロックポリマー(X)の重量平均分子量が、1,000〜50,000である請求項1又は2記載のポリウレタン樹脂組成物。
  4. 前記ブロック(a1)及び前記ブロック(a2)を構成するポリエステル樹脂が、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール及び1,6−ヘキサンジオールからなる群から選ばれる少なくとも1種を構成単量体とする請求項1〜3のいずれか記載のポリウレタン樹脂組成物。
  5. 前記ポリウレタン樹脂(U)が、構成単量体としてポリ(オキシテトラメチレン)グリコールを含有する請求項1〜4のいずれか記載のポリウレタン樹脂組成物。
  6. 前記ポリウレタン樹脂(U)が、構成単量体として炭素数8〜26の芳香族ポリイソシアネート(d1)を含有する請求項1〜5のいずれか記載のポリウレタン樹脂組成物。
  7. 弾性繊維用である請求項1〜6のいずれか記載のポリウレタン樹脂組成物。
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