JPWO2020004501A1 - 鋼の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
特許文献1では、脱窒された低窒素溶鋼を不活性ガスでシールしながら出鋼する技術が提案されている。
特許文献2では、蓋を有する受鋼用取鍋内において、酸素富化空気によって燃料を燃焼させ受鋼取鍋を予熱し、且つ燃焼排ガスで置換することにより受鋼用取鍋内の雰囲気中の窒素を低下せしめた後に、転炉出鋼時に受鋼用取鍋の蓋に設けられた溶鋼流を囲む円環状に配設されたノズルからアルゴンガスを溶鋼流に吹き付けることを特徴とする技術が提案されている。
特許文献3では、炭酸カルシウムを入れた取鍋内に溶鋼を出鋼し、出鋼時及び出鋼中の取鍋内の雰囲気をCO2ガス雰囲気として、溶鋼が空気と接触するのを抑制する方法が開示されている。
<1> 溶鋼炉から出鋼された溶鋼を取鍋に受鋼する工程と、
前記取鍋に受鋼した前記溶鋼を前記取鍋から排出して鋳造する工程と、を含み、
前記溶鋼炉から出鋼された前記溶鋼を前記取鍋に受鋼する際、下記(1)式によって算出されるスラグ厚みTが0.02m以上を満たす量Wの酸化物からなる副原料を、前記溶鋼の受鋼開始前に前記取鍋内の底部に入れ置きし又は受鋼開始と共に前記取鍋内に投入し、前記溶鋼炉から出鋼された前記溶鋼を前記取鍋に受鋼する、鋼の製造方法。
T=(W/ρ)/((π・D2)/4) (1)
T:スラグ厚み(m)
D:取鍋直径(m)
ρ:溶融酸化物密度(=3000kg/m3)
W:副原料の量(kg)
<2> 前記副原料の組成が、
CaO/Al2O3:0.8〜4.0 (2)
5%≦SiO2≦10% (3)
MgO≦10% (4)
CaO+Al2O3+SiO2+MgO≧90% (5)
を満たしている、<1>に記載の鋼の製造方法。
ただし、(2)〜(5)式中の分子記号は当該分子の含有量(質量%)を意味する。
<3> 前記副原料の量Wが、前記(1)式によって算出される前記スラグ厚みTが0.1m以下を満たす量である、<1>又は<2>に記載の鋼の製造方法。
<4> 前記溶鋼の受鋼開始前に、前記量Wの前記副原料を前記取鍋内の底部に入れ置きしておく、<1>〜<3>のいずれか1つに記載の鋼の製造方法。
<5> 前記取鍋内に入れ置きした前記副原料を予熱し、前記副原料の温度が800℃以上の状態で前記溶鋼を前記取鍋に受鋼する、<4>に記載の鋼の製造方法。
溶鋼炉(製鋼炉)とは、転炉、AOD(Argon Oxygen Decarburization)炉、電気炉といった、溶鋼を溶製するための保持容器を指す。
出鋼とは、製鋼炉に保持された溶融金属(溶鋼)を製鋼炉から取鍋といった搬送用の容器に移し替える操作を指す。また、受鋼とは、溶鋼炉から出た溶鋼を取鍋が受けることを意味し、出鋼と受鋼は同じタイミングで行われることになる。
副原料とは、溶鋼を精錬するのに必要な鉄分以外の添加物を指す。本開示では、酸化物からなる副原料を対象とし、鉄以外の成分が含まれる酸化物からなるものを副原料とする。具体的には、生石灰、珪砂、カルシウムアルミネート系造滓剤、アルミナレンガ屑、焼成ドロマイト等が使用できる。
取鍋直径Dとは、取鍋の内径を意味する。通常、取鍋内は底部と上部(開口部)の内径が同じ作りになっているが、底部と上部の内径が異なる場合は、取鍋底部と上部での各直径(内径)の平均値とする。また、取鍋の高さ方向に垂直な取鍋内部の断面が楕円形である場合は、長径と短径との平均値を取鍋直径Dとする。
すなわち、本開示に係る鋼の製造方法は、
溶鋼炉から出鋼された溶鋼を取鍋に受鋼する工程と、
前記取鍋に受鋼した前記溶鋼を前記取鍋から排出して鋳造する工程と、を含み、
前記溶鋼炉から出鋼された前記溶鋼を前記取鍋に受鋼する際、下記(1)式によって算出されるスラグ厚みTが0.02m以上を満たす量Wの酸化物からなる副原料を、前記溶鋼の受鋼開始前に前記取鍋内の底部に入れ置きし又は受鋼開始と共に前記取鍋内に投入し、前記溶鋼炉から出鋼された前記溶鋼を前記取鍋に受鋼する、鋼の製造方法である。
T=(W/ρ)/((π・D2)/4) (1)
T:スラグ厚み(m)
D:取鍋直径(m)
ρ:溶融酸化物密度(=3000kg/m3)
W:副原料の量(kg)
一方、合成フラックスを取鍋内の底部から少し浮かせた壁面に吊り下げ、出鋼開始から15秒後に溶鋼面に添加される条件で出鋼したところ、Δ[N]は24ppmであり、明確な吸窒抑制効果は認められなかった。この場合、合成フラックスは出鋼末期になって溶融していることが確認されたが、最も吸窒量が多い出鋼前半から中盤にかけては添加した合成フラックスの溶融は見られていないことから、溶鋼と空気との反応界面積低減には至らなかったと推定される。
低窒素鋼を製造する場合、高炉あるいは電気炉から搬送された炭素濃度の高い溶銑を転炉などの溶鋼炉に装入し、酸素吹錬により鋼中の炭素をCOガスとして除去する。その際、溶鋼炉ではC+O=CO反応によって炉内の窒素分圧が低下することに加え、底吹きおよび上吹きによる撹拌作用とも相まって鋼中の窒素濃度は10ppm程度まで低下する。脱炭処理後の溶鋼は成分調整や脱ガスを行うため、溶鋼炉から取鍋に出鋼される。その後、成分や温度が調整された溶鋼は鋳造プロセスに供され、鋳造された後は加熱、圧延、熱処理、表面処理といった工程を経て製品として出荷される。
副原料の形態としては、予熱中もしくは出鋼時の上昇気流で散逸しないように粒状であることが好ましいが、予熱を行う際は通常取鍋上部を蓋で覆った状態で予熱を行う為、粉状の副原料も使用可能である。好ましくは取鍋が溶鋼炉直下まで搬送された時点で、遅くとも溶鋼炉からの溶鋼の出鋼開始(受鋼開始)と共に、取鍋内には、(1)式で示されたスラグ厚みTが0.02m以上(好ましくは0.1m以下、より好ましくは0.05m以下)となるように求めた量Wの副原料が投入されることが必要である。また、出鋼開始後は速やかに溶融させることが必要である。なお、受鋼開始と共に副原料を取鍋に投入する場合、好ましくは、溶鋼炉から取鍋に溶鋼が注入され始めてから10秒以内に、より好ましくは5秒以内に、更に好ましくは溶鋼の注入と同時に取鍋内への副原料の投入を開始する。また、受鋼開始と共に副原料を取鍋に投入する場合は、受鋼開始後、好ましくは60秒以内に、より好ましくは40秒以内に、更に好ましくは20秒以内に、スラグ厚みTが0.02m以上となる量Wの副原料の投入を完了する。
また、副原料は、受鋼開始前の取鍋内の副原料の入れ置きと受鋼開始と共に取鍋内への副原料の投入を組み合わせてもよい。すなわち、受鋼開始前に量W1の副原料を取鍋内に入れ置きしておき、さらに受鋼開始と共に量W2の副原料を取鍋内に投入することで、副原料の合計量(W1+W2)が、(1)式で示されたスラグ厚みTが0.02m以上を満たすように求めた量Wとなるようにしてもよい。
なお、受鋼開始から数分後、脱酸等の目的でAl合金等を添加する場合があるが、このような目的、タイミングで添加される成分は、(1)式で示されたスラグ厚みTが0.02m以上を満たすように求めた量Wの副原料に含まれない。
滝壷部とは、注入流が取鍋内の溶鋼に進入する際に注入流周りの気相を巻き込んで生じる気泡の巻込みおよび上昇が生じている部分を指し、通常は注入流が取鍋内の溶鋼と接する部分の直下に生じる。出鋼中に滝壺部が溶融スラグに覆われていれば本開示による低窒素化の効果が得られる。溶鋼炉から出鋼された溶鋼を取鍋に受鋼する際、受鋼開示前又は受鋼開始と共に酸化物からなる副原料を、(1)式で示されたスラグ厚みTが0.02m以上(好ましくは0.1m以下、より好ましくは0.05m以下)を満たすように求めた量Wで取鍋内に入れ置き又は投入し、溶鋼炉から出鋼された溶鋼を取鍋に受鋼することにより、受鋼中において滝壷部に溶融スラグを存在させることができる。
このような本開示に係る鋼の製造方法は、炭素鋼に非常に有効であるが、炭素鋼以外のステンレス鋼、合金鋼の製造にも有効である。
高炉から搬送された溶銑(炭素含有量4.5%相当)を転炉に装入し、酸素吹錬を行った。転炉吹錬後の成分は、[C]=0.06〜0.14%、[Si]=0.01〜0.05%、[Mn]=0.1〜0.4%、[P]=0.01〜0.03%、[N]=9〜12ppm、残部がFeおよび不純物である。処理量は300ton規模、取鍋直径(内径)は3.9mであり、出鋼時間はおよそ5分である。出鋼前、取鍋を予熱する前段階、もしくは、取鍋予熱後に、取鍋底部に成分調整した所定量の副原料を入れ置きし、取鍋を転炉直下まで搬送した後、溶鋼を受鋼した。あるいは、溶鋼の受鋼と共に副原料を取鍋に投入した。出鋼の際、出鋼を開始してから2分後に出鋼流に巻き込ませる形でAlを含む合金を投入した。また、出鋼開始から3〜4分後に取鍋内に副原料(酸化物)を追加投入することで、表2に示す「最終スラグ厚みt」とした。
試験No.10から試験No.13までは取鍋内に入れ置きする副原料の組成を好適な範囲に調整した条件であり、Δ[N]は17ppm以下となり、優れた吸窒抑制効果があったと判断した。
試験No.3,5,9および試験No.14から試験No.16までは、入れ置きした副原料の予熱温度を変化させた条件である。試験No.5と試験No.7を比較すると、副原料の予熱温度が高い試験No.5の方が吸窒抑制効果が大きく、副原料予熱温度を高くすることで、優れた吸窒抑制効果が得られることが分かる。このことは、試験No.11と試験No.14を比較しても明らかであり、試験No.14は副原料組成を本開示の好適な範囲に制御することに加え、副原料予熱温度を800℃以上とすることで、顕著な吸窒抑制効果が得られている。試験No.15、16も同様である。
試験No.18は、取鍋内に受鋼と共に副原料を投入した実施例である。Δ[N]は20ppmであり、比較例よりも低く、吸窒抑制効果が認められた。
Claims (5)
- 溶鋼炉から出鋼された溶鋼を取鍋に受鋼する工程と、
前記取鍋に受鋼した前記溶鋼を前記取鍋から排出して鋳造する工程と、を含み、
前記溶鋼炉から出鋼された前記溶鋼を前記取鍋に受鋼する際、下記(1)式によって算出されるスラグ厚みTが0.02m以上を満たす量Wの酸化物からなる副原料を、前記溶鋼の受鋼開始前に前記取鍋内の底部に入れ置きし又は受鋼開始と共に前記取鍋内に投入し、前記溶鋼炉から出鋼された前記溶鋼を前記取鍋に受鋼する、鋼の製造方法。
T=(W/ρ)/((π・D2)/4) (1)
T:スラグ厚み(m)
D:取鍋直径(m)
ρ:溶融酸化物密度(=3000kg/m3)
W:副原料の量(kg) - 前記副原料の組成が、
CaO/Al2O3:0.8〜4.0 (2)
5%≦SiO2≦10% (3)
MgO≦10% (4)
CaO+Al2O3+SiO2+MgO≧90% (5)
を満たしている、請求項1に記載の鋼の製造方法。
ただし、(2)〜(5)式中の分子記号は当該分子の含有量(質量%)を意味する。 - 前記副原料の量Wが、前記(1)式によって算出される前記スラグ厚みTが0.1m以下を満たす量である、請求項1又は請求項2に記載の鋼の製造方法。
- 前記溶鋼の受鋼開始前に、前記量Wの前記副原料を前記取鍋内の底部に入れ置きしておく、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の鋼の製造方法。
- 前記取鍋内に入れ置きした前記副原料を予熱し、前記副原料の温度が800℃以上の状態で前記溶鋼を前記取鍋に受鋼する、請求項4に記載の鋼の製造方法。
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