JP6375822B2 - 溶銑の脱珪処理方法 - Google Patents

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Description

本発明は、溶銑の脱珪処理を効率的に行う技術に関する。
高炉から出銑された溶銑は、炭素を4〜5%(本明細書において化学組成または濃度に関する「%」は特に断りがない限り「質量%」を意味する)含有しており、次工程である製鋼工程において酸素を吹き込むことにより脱炭されて鋼となる。この時、反応容器内に生石灰やドロマイト等の精錬剤(「媒溶材」、「フラックス」などとも称される)を添加することにより溶銑中のりんも除去される。除去されたりん等の元素は酸化物として、精錬剤ともにスラグを形成する。
このような脱りん反応には、所定のスラグ中CaO/SiO値(以下、この値を「塩基度」と称する)が必要であることが知られる。溶銑中Si濃度が高いとSiの優先酸化によりSiOが形成され、必然的にCaOを含有する精錬剤の使用量が増加するため精錬コストの悪化につながる。また、精錬剤使用量の増加に伴い、スラグ量が増加してしまうため、スラグ処理コストも同時に悪化する。
このため、一般的に、脱りん・脱炭工程の前に脱珪処理を行う方法が採用されている。この脱珪処理は、溶銑中のSiを酸化することにより行われる。Siを酸化するためには気体酸素が用いられることもあるが、通常は酸化鉄等の固体脱珪材が使用される。固体脱珪材は、高炉から出銑された溶銑樋、溶銑の搬送容器(例えば混銑車)、あるいは脱珪処理容器(例えば取鍋)など様々な段階で添加され、添加方法も、単なる上置、吹込み、溶銑が落下する部分への添加等が適宜選択される。
脱珪反応により生成したSiOと脱珪材中の酸化鉄等からなる脱珪スラグが溶銑上に存在しており、この脱珪スラグと溶銑の接触面において、溶銑中炭素とスラグ中の酸化鉄の反応によりCOガスが生成する。脱珪スラグはSiOを主体とした高粘性のスラグであるため、生成したCOガスはスラグ中を短時間で通過することが容易でなく、スラグ中に気泡として捕捉されてしまい、スラグ体積が増加してしまう。この現象はスラグフォーミングと呼ばれる。
搬送容器から、取鍋型でかつ溶銑保持時のフリーボード(溶銑浴面から脱珪処理容器の装入口までの距離)が1500mm以下の脱珪処理容器に払い出す際に固体脱珪材を添加する場合、スラグフォーミングが激しくなると、溶銑の払い出しを中断せざるを得なくなるので、溶銑払い出し時間の増加に伴う能率悪化や、脱珪スラグの容器外への溢出や飛散、また、そのフォーミングした脱珪スラグ中もしくは脱珪スラグ上に脱珪材が捕捉されることで、フォーミングが助長されたり、脱珪効率が低下してしまうという問題があった。
このようなスラグフォーミングの発生を抑制するために、従来より種々の方法が開示されており、例えば、特許文献1に開示されるようなコークス粉を添加して破泡を促進させる方法や、特許文献2に開示されるような金属Alを添加して脱珪スラグ中酸化鉄を還元する方法、さらには、特許文献3に開示される容器への受銑初期に脱珪材を投入した後、生成するSiO量に応じて生石灰等の塩基性酸化物を添加して、生成する脱珪スラグの塩基度を所定の値に調整する方法等がある。
しかし、特許文献1,2に開示される方法は、いずれも、スラグフォーミング抑制のために添加するコークス粉や金属Alの効果はスラグフォーミングを抑制するのみであり、脱Si反応には効果がなく、脱Si反応を低下させてしまう悪影響を及ぼすおそれがある。また,特許文献3に開示される方法は、脱珪スラグの塩基度を調整するために生石灰等を使用しなければならず、結局、精錬コストの悪化とスラグ量の増加を招いてしまうという問題がある。
一方で、特許文献4,5には、高炉から出銑した溶銑の搬送容器から脱珪処理容器に払い出す際の溶銑流に対して2〜4mmに調整した脱珪材を吹き付けるか、もしくは上方から添加した上で、払出し完了後にバブリングおよびインジェクション脱硫を行うことにより脱珪効率を向上する方法が開示されている。
特開平05−287346号公報 特開平11−61234号公報 特開2003−147425号公報 特開平11−269526号公報 特開平11−269525号公報
特許文献4,5により開示される方法によれば、脱珪材と溶銑との反応を促進させ、払出し速度にマッチした酸素供給を行うことができることから、脱珪効率が向上できるとされている。しかし、特許文献4,5には、溶銑払出し速度と脱珪材投入速度の適切な関係や払出し中のフォーミング抑制に関する記載がない。また、吹き付けを行うために粉体を取り扱う設備が必要となり、設備費が嵩む。
それに対して、吹き付けを行わない場合は、最も安価に脱珪設備を導入できるものの、搬送容器および脱珪処理容器中の溶銑量や払出し速度によって脱珪材が溶銑流に巻き込まれず、スラグフォーミングが助長され、脱珪効率が著しく低下するという課題がある。
これに加えて、特許文献4,5に開示される方法では、ガスバブリングとインジェクション脱硫によって未反応脱珪材の反応を促進させる。しかし、ガスバブリングを行うには、加圧ラインおよび粉体供給ライン等が必要となり、高額な設備になり、加えて、ガスバブリングに用いる耐火物のランスは消耗品であるためにランニングコストも嵩む。また、インジェクション設備が必要であるが、機械式撹拌法による脱硫がインジェクション法と並び一般的となっている昨今では、インジェクション脱硫設備を保有しない場合も多く、この場合には設備投資が多額となるという課題もある。
本発明の目的は、このような脱珪処理に際して見られる課題に鑑みてなされたものであり、スラグフォーミング抑制を安定的に行い、かつ、安価に脱珪材反応効率を向上させることができる溶銑の脱珪処理方法を提供することである。
上記の目的を達成するために、本発明に係る溶銑の脱珪方法は、以下の構成を採用する。
(1)高炉から出銑した溶銑を、搬送容器から脱珪処理容器に払い出す際の溶銑流に対して脱珪材を添加する溶銑の脱珪処理方法において、前記脱珪材として平均粒径5mm以上10mm以下の焼結鉱を10kg/溶銑t以下の範囲で使用し、かつ、前記脱珪剤の添加速度と払出し速度を、下記(1)式を満足する範囲とすることを特徴とする溶銑の脱珪処理方法。
ただし、V:脱珪材中酸素体積(Nl/kg)、v:脱珪材添加速度(kg/min)、u:溶銑払出し速度(t/min)、[Si]:脱珪前溶銑中Si濃度(質量%)(ただし、[Si]≧0.20%)であり、脱珪材中酸素体積とは,脱珪材中に含まれるFeOおよびFeが分解した際に発生するOガスの標準状態での体積を、脱珪材単位質量当たりで表す。
(2)脱珪材の添加を、溶銑払出し開始時から、払出しに要する時間の70%経過時までの間に行いつつ、かつ、払出し完了後にバブリング処理を実施しない1項に記載の溶銑の脱珪処理方法。
本発明において、「平均粒径」とはレーザー回折・散乱法等によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味し、「添加速度」とは、脱珪容器内への脱珪材の添加質量を、脱珪材の添加開始から添加終了までの時間で除することにより求められる値を意味し、「払出し速度」とは、脱珪容器内への溶銑の払出し質量を、溶銑の払出し開始から払出し終了までの時間で除することにより求められる値を意味する。
さらに、本明細書において「脱珪反応効率」とは、脱珪材中酸素体積に占める、脱珪に使用された酸素体積の割合を百分率で表示した指標である。
本発明により、高炉から出銑された溶銑の搬送容器から脱珪処理容器に溶銑を払い出す際にその溶銑流へ焼結鉱を添加する溶銑の脱珪処理方法において、焼結鉱の粒径を調整し、かつ焼結鉱投入速度を調整することにより、スラグフォーミング抑制を安定的に行い、脱珪材反応効率を向上させることができる。
本発明において、さらに、脱珪反応効率を高めたい場合には、上記した本発明の特徴を活かしつつ、焼結鉱の添加を溶銑払出し開始時から、払出し全期間に占める70%経過時までに焼結鉱の投入を完了させ、かつ溶銑払出し後のバブリング処理を省略することによって、バブリングに要する時間を含む脱珪処理の所要時間を短縮することができる。
図1は、本発明の実施状況の概要を模式的に示す説明図である。 図2は、溶銑払い出し開始直後から脱珪材である焼結鉱の投入を開始した場合における、溶銑払出し時間に占める焼結鉱の投入継続時間と払出しの中断時間または脱珪反応効率との関係を示すグラフである。 図3は、焼結鉱投入速度と溶銑払出し時間に対するフォーミングの有無を示すグラフである。 図4は、払出し後のガスバブリング有無および焼結鉱粒径と脱珪反応効率との関係を示すグラフである。
添付図面を参照しながら本発明を説明する。
図1は、本発明の実施状況の概要を模式的に示す説明図である。
図1に示すように、本発明に係る溶銑の脱珪処理方法は、高炉(図示しない)から搬送容器1に出銑した溶銑4を、搬送容器1から脱珪処理容器2に払い出す際に、添加装置3から溶銑流5に対して脱珪材である焼結鉱6を添加することにより、行う。添加された脱珪材6が溶銑流5に巻き込まれながら溶銑とともに脱珪処理容器2に落下、もしくは溶銑上に落下することによって溶銑中で攪拌され、脱珪処理が行われる。
以下に、溶銑成分の焼結鉱6による酸化反応を説明する。
溶銑払出し温度範囲である1300〜1500℃では、焼結鉱中のFeとFeOは、溶銑中SiやCと反応する。それぞれの反応は式(2)〜(5)で表され、焼結鉱と溶銑中Cが反応すると、式(4),(5)によりCOガスが生成する。式中の(s)は固体状態であることを示す慣用表記であり、(l)は液体状態であることを示す慣用表記であり、さらに、[X]は、当該元素Xが鉄中成分であることを示す慣用表記である。
2Fe2O3(s)+[Si] =SiO2(l) +4FeO(l) ・・・・・(2)
2FeO(s)+[Si]=SiO2(l) +2Fe(l) ・・・・・(3)
Fe2O3(s)+[C]=CO(g)+2FeO(l) ・・・・・(4)
FeO(s)+[C]=CO(g)+Fe(l) ・・・・・(5)
脱珪反応は、脱珪処理容器内で焼結鉱が溶銑と直接接触すること、もしくは脱珪スラグ中に溶解した状態の酸化鉄分と溶銑が接触することにより進行する。焼結鉱が溶銑流に巻き込まれ、溶銑と直接接触して反応が進行する場合、溶銑とよく撹拌された状態で反応が起こる。
溶銑中にSiが十分存在すれば、式(2),(3)の脱珪反応が優先して起こるため、式(4),(5)の脱炭反応が殆ど起こらずCOガスが発生しないため、スラグフォーミングは起こらない。
しかし、脱珪スラグが生じた後に焼結鉱がその上に落下すると、スラグ中に焼結鉱が溶融するか、もしくはスラグ上に焼結鉱が固体のまま降り積もる状態となる。脱珪スラグ中に焼結鉱が溶解することにより生じるスラグ中のFeOは、溶銑と反応して式(2)の脱珪反応を進行させるが、その反応は溶銑上に浮かんでいるスラグと溶銑の界面近傍でのみ進行するため、局所的に溶銑中Si濃度が低下し、溶銑中Cとスラグ中FeOが反応する。これにより、脱珪反応効率は低下し、COガスが多量に生じるため、スラグフォーミングが助長される。
これは、溶銑と焼結鉱が直接接触した場合でも、その接触時間が短く焼結鉱が溶銑上まで浮上してしまえば、同様にスラグフォーミングを生じる。また、脱珪スラグ中に焼結鉱が溶解せずにスラグ上に降り積もった場合には、スラグフォーミングは起きないものの、焼結鉱が溶銑中Siと未反応のままとなるので、脱珪反応効率が大幅に悪化してしまうと推定される。
脱珪することが望ましい程度の十分なSiが存在する溶銑に対して、焼結鉱を接触させ続ければ、式(2),(3)の脱珪反応が優先して起こり、式(4),(5)の脱炭反応は殆ど起こらない。すなわち、脱珪反応効率が良く、スラグフォーミングが生じない、という好ましい状態が得られる。そのために、焼結鉱と溶銑の接触に関して、一定の時間を確保して、かつ、局所的な焼結鉱の添加を回避すること、さらに、脱珪に必要な量以上の焼結鉱を添加しないために、溶銑に対する焼結鉱の比率の上限を設けることも効果がある。
脱珪材として焼結鉱を用いる。焼結鉱は、成分の変動が少なく、自溶性であるために溶銑中Siと反応し易い。また、高炉による溶銑製造の主原料であるので、調達が比較的容易である利点もある。焼結鉱の成分は、CaO:5〜30%,FeOとFeの合計:70〜95%であり、かつ、脱珪材中酸素体積は140〜190Nl/kgである。
焼結鉱は、溶銑と速やかに脱珪反応を起こすため、払出し初期に全量投入すると脱珪処理容器中の溶銑中Si濃度が低くなり過ぎることにより脱炭反応が優先して進行し、スラグフォーミングが起こる。逆に、処理末期に添加すると、反応時間が短いために脱珪効率が低くなり、かつスラグフォーミングが起きた場合に脱珪処理容器からスラグが溢れる可能性があるため、払出しおよび脱珪処理の中断が必要になり、脱珪処理時間が長くなってしまう。また、その際の脱珪反応効率も70%までに完了したほうが十分な反応時間を確保できるため、脱珪反応効率は高いことが分かる。
はじめに、スラグフォーミングによるノロ溢れの防止への脱珪材添加期間の影響を説明する。
図2は、溶銑払い出し開始直後から脱珪材である焼結鉱の投入を開始した場合における、溶銑払出し時間に占める焼結鉱の投入継続時間と払出しの中断時間または脱珪反応効率との関係を示すグラフである。
図2のグラフに示すように、脱珪材の投入を払出し時間の70%以前で完了すると、スラグフォーミングに起因した溶銑払出しおよび脱珪処理の中断を行う必要がなく、脱珪反応効率も高いことが分かる。
この理由は、脱珪材の投入を継続しながら溶銑払出しを行うと、脱珪処理容器内の溶銑および脱珪スラグの体積が次第に増加するので、溶銑払出し時間の後期、具体的には、溶銑払出し時間の70%を超える期間まで脱珪材の投入を継続してしまうと、焼結鉱が脱珪反応を生ずる時間が短くなるために脱珪反応効率が悪化することに加えて、スラグフォーミングが生じた際に脱珪処理容器からスラグもしくは溶銑が溢れるおそれがあり、図2の上のグラフに示すように、溶銑払出しおよび脱珪処理の中断が大きくなってゆくためである。
次に、溶銑払出し速度と焼結鉱の投入速度を説明する。
図3は、焼結鉱投入速度と溶銑払出し時間に対するフォーミングの有無を示すグラフである。
図3のグラフに示すように、上述の脱珪材投入期間内において溶銑払出し速度と脱珪材投入速度を変化させると、焼結鉱投入速度が1000kg/min以下であり、かつ、脱珪処理容器中の溶銑中Si濃度0.20%以上を確保すれば、スラグフォーミングが発生しないことが分かる。特に、焼結鉱中の酸素含有量等から式(1)を満たすのが好ましい。
ただし、(1)式において、Vは脱珪材中酸素体積(Nl/kg)であり、vは脱珪材添加速度(kg/min)であり、uは溶銑払出し速度(t/min)であり、[Si]は脱珪前溶銑中Si濃度(質量%)(ただし,[Si]≧0.20%)である。脱珪材中酸素体積とは、脱珪材中に含まれるFeOおよびFeが分解した際に発生するOガスの標準状態での体積を、脱珪材単位質量当たりで表す。
最後に、脱珪処理時に添加する焼結鉱の粒径を説明する。
溶銑を搬送容器から脱珪処理容器へ払い出す際に、払い出し開始直後から脱珪材の添加を開始し、上記の条件を満たした上で焼結鉱の平均粒径を変化させて脱珪処理を行った結果、焼結鉱の粒径が小さ過ぎるとスラグフォーミングが発生する上、脱珪反応効率は低くなり、焼結鉱の平均粒径の増加に伴って脱珪反応効率が向上し、ある所定の平均粒径を境に脱珪反応効率が低下する。すなわち、焼結鉱の平均粒径により脱珪効果が変化し、また、脱珪反応効率が最大となる焼結鉱の平均粒径の最適範囲が存在する。焼結鉱の平均粒径の最適範囲は5〜10mmである。
焼結鉱の平均粒径が5mm未満であると、脱珪スラグ上に浮遊して溶銑との反応に寄与できない割合が増えたり、焼結鉱が生成した脱珪スラグに捕捉されるために溶銑と脱珪スラグの界面付近において、局所的に式(2),(3)のみならず、式(4),(5)の反応を併発してスラグフォーミングが発生するためである。一方、焼結鉱の平均粒径が10mm超であると、溶銑との反応界面積が小さくなる。
従来の技術では、脱珪材として焼結鉱を使用する場合の平均粒径は4〜5mm以下であることが多かった。これは、すでに述べたように、焼結鉱と溶銑の反応を早く進めること、および、通常は高炉に装入されない細かい粒径である焼結鉱を有効利用できることという観点から使用されてきたと考えられる。
この結果を従来の技術と同様にガスバブリングを実施した結果と比較すると、ガスバブリング実施時と遜色ない脱珪反応効率が得られる。
本発明を、実施例を参照しながらより具体的に説明する。
高炉から搬送容器である混銑車に出銑された溶銑280〜330tを脱珪処理容器である取鍋に払出す際に、溶銑流に対して焼結鉱を添加して脱珪処理を実施した。溶銑の成分は、[C]:4.2〜4.8%,[Si]:0.40〜0.50%であり、払出し後温度は1380〜1430℃であった。
実施例で使用した焼結鉱は表1に示した成分のものを用いた。脱珪材中酸素体積は161(Nl/kg)である。したがって、本実施例において、脱珪材添加速度の上限は994(kg/min)である。焼結鉱の平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
表2に脱珪処理条件および処理の結果をまとめて示す。
従来例1〜5は、払出し後にガスバブリングを実施する操業条件の従来例であって、焼結鉱の添加期間は0〜32%であり、焼結鉱の添加速度が本発明の範囲外である1200kg/minと速く、脱珪処理中の容器内溶銑中Si濃度は0.07〜0.12%であるものの、全ての従来例1〜5においてスラグフォーミングが発生した。焼結鉱の平均粒径は2〜4mmでは80%以上の高い脱珪反応効率が得られているが、それ以外の範囲では70%以下となっている。
比較例1,2は、それぞれ、焼結鉱の平均粒径を、本発明の範囲外である3mm,15mmとした例である。脱珪反応効率は60%以下と低位であり、スラグフォーミングも発生した。平均粒径が大きい焼結鉱は、反応時間が長いため、焼結鉱の大部分が脱珪反応に寄与する前にスラグ中に浮上し、脱珪スラグに取り込まれる。スラグに取り込まれた焼結鉱は、スラグ/溶銑界面でのみ脱珪反応を起こすため、局所的にSi濃度の低くなった溶銑が脱炭反応を起こし、フォーミングが発生し易くなるためである。
比較例3,4は、焼結鉱の平均粒径を6mmとしたものの、焼結鉱の添加速度が本発明の範囲を逸脱した例である。比較例3は、溶銑払出し速度uが小さい(溶銑払出し時間が長い)ため、式(1)の右辺が小さくなったにも関わらず、焼結鉱の添加速度を式(1)右辺の値以上に大きくした例であり、比較例4は焼結鉱の添加速度を1200kg/分とした例であり、式(1)の右辺の値よりは小さいものの、16000/V(=994)よりも大きく本発明の範囲を外れたものである。比較例3,4は、そのどちらも、脱珪反応効率は低位であり、スラグフォーミングも発生した。
比較例5は、焼結鉱の平均粒径を6mmに調整し、焼結鉱の添加速度を500kg/分、かつ、式(1)の右辺の値以下とした上で、焼結鉱の添加量が11.2kg/溶銑tと本発明の範囲を外れた例である。比較例5では、溶銑に対する焼結鉱の比率の上限を超えたため、脱珪処理末期にスラグフォーミングが発生した。また、脱珪反応効率は73%と比較例1〜4と比較すると高位となったものの、従来例2,3と比較すると低位であった。
これに対し、本発明例のNo.1−1〜1−3は、いずれも、焼結鉱の平均粒径を5〜10mmに調整し、焼結鉱の添加速度は500kg/分、かつ、式(1)右辺の値以下とした上で、払出し完了後にガスバブリングを実施した例である。いずれの本発明例のNo.1−1〜1−3もスラグフォーミングは発生せず、脱珪反応効率は80%以上であった。
本発明例No.1−4は、本発明例のNo.1−1〜1−3と同条件で、ガスバブリングを実施しなかった例であるが、同様にスラグフォーミングは発生せず、バブリングを実施していないにもかかわらず、脱珪反応効率は73%と比較例1のいずれの結果と比較しても高位であった。
さらに、本発明例のNo.2−1〜2−3は、本発明例No.1−1〜1−3の条件に加え、バブリングを実施せず、かつ、焼結鉱の添加期間を払出し時間に占める70%までに完了した例である。脱珪反応効率は、全て80%以上となり、バブリングを実施した従来例とほぼ同等の脱珪反応効率が得られ、かつ、スラグフォーミングも発生しないという良好な結果が得られた。
これらの結果から、高炉から出銑した溶銑を、搬送容器から脱珪処理容器に払い出す際の溶銑流に対して脱珪材を添加することにより溶銑を脱珪処理する際に、脱珪材の平均粒径と焼結鉱の添加速度を本発明で規定する所定の範囲に制御することにより、スラグフォーミングが安定的に抑制でき、脱珪反応効率も向上すること、さらには、焼結鉱の添加後にガスバブリングによる撹拌を実施しなくても脱珪材反応効率の向上が可能となることが、いずれも確認された。
1 搬送容器
2 脱珪処理容器
3 添加装置
4 溶銑
5 溶銑流
6 焼結鉱

Claims (2)

  1. 高炉から出銑した溶銑を、搬送容器から脱珪処理容器に払い出す際の溶銑流に対して脱珪を添加する溶銑の脱珪処理方法において、前記脱珪として平均粒径5mm以上10mm以下の焼結鉱を10kg/溶銑ton以下の範囲で使用し、かつ、前記脱珪剤の添加速度と払出し速度を、下記(1)式を満足する範囲とすることを特徴とする溶銑の脱珪処理方法。
    ただし、V:脱珪中酸素体積(Nl/kg)、v:脱珪添加速度(kg/min)、u:溶銑払出し速度(ton/min)、[Si]:脱珪前溶銑中Si濃度(質量%)(ただし、[Si]≧0.20%)であり、脱珪中酸素体積とは,脱珪中に含まれるFeOおよびFeが分解した際に発生するOガスの標準状態での体積を、脱珪単位質量当たりで表す。
  2. 脱珪の添加を、溶銑払出し開始時から、払出しに要する時間の70%経過時までの間に行いつつ、かつ、払出し完了後にバブリング処理を実施しない請求項1に記載の溶銑の脱珪処理方法。
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