JPWO2019065727A1 - チップ型ヒューズ - Google Patents

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Abstract

本発明は、絶縁性材料から成る本体部と、本体部の内部に配置され、かつ本体部から露出した両端部を有するヒューズ導体と、本体部の両端部を各々被覆し、かつヒューズ導体の両端部に各々接続された一対の外部電極とを含むチップ型ヒューズであって、本体部の内部に空洞部が存在し、ヒューズ導体が、空洞部の壁面に沿って形成されている溶断部を有する、チップ型ヒューズを提供する。

Description

本発明は、チップ型ヒューズに関する。
チップ型ヒューズは、ヒューズ機能を有するチップ部品(または角型表面実装部品)である。チップ型ヒューズは、絶縁性の本体部と、本体部の表面または内部に形成されたヒューズ導体と、本体部の両端部を各々被覆し、かつヒューズ導体の両端部に各々接続された一対の外部電極とを含み得る。
従来、ヒューズ導体が本体部の内部に形成されたチップ型ヒューズにおいて、ヒューズ導体の溶断部(発熱部)から本体部への放熱を抑制して、溶断特性を向上させるため、本体部に空間を設け、ヒューズ導体の溶断部を空間内に懸架して(浮かせて)配置することが知られている(特許文献1〜2参照)。
また、従来、ヒューズ機能を併せ持つインダクタンス素子として、積層体の層間に内部導体を形成してなる一体焼結型のインダクタンス素子において、内部導体に溶断部を一体に設けるとともに、溶断部の周囲の積層体に空洞部を設けることも知られている(特許文献3参照)。
特開2007−280919号公報 特開2007−287504号公報 特開平1−287905号公報
上述した従来のチップ型ヒューズは、本体部を絶縁性樹脂製の底部と蓋部とから構成し、まず、予め凹部を各々プレス形成した底部および蓋部を準備し、次に、底部の凹部にヒューズ導体を懸架して配置し、その上に蓋部を重ね合わせて、空間部を形成するように底部と蓋部の凹部同士を対向させ、これらの間を接着剤で接合することにより製造され得る(特許文献1〜2)。しかしながら、かかる製造方法では、絶縁性樹脂への凹部の加工精度、および底部と蓋部との重ね合わせ精度に限界がある。また、かかる従来のチップ型ヒューズにおいて、そのまま小型化しようとすると、外部電極から溶断部までの距離が縮小されて短くなり、放熱し易くなって(よって、溶断し難くなって)、溶断特性が低下し得る。
また、上述した従来のヒューズ機能を併せ持つインダクタンス素子は、まず、1枚のグリーンシート(フェライトグリーンシート)の略中央上面に有機ペーストを矩形形状に塗布して乾燥させ、これにより有機ペーストが付着したグリーンシート上に内部導体(導電ペースト)を、その溶断部が有機ペースト上に位置するように印刷形成し、更にその上に新たな有機ペーストを(先の有機ペーストと重なるように)矩形形状に塗布して乾燥させ、これにより有機ペースト、溶断部を有する内部導体および有機ペーストが順に付着したグリーンシートの上下に新たなグリーンシートを適宜積層し、一体的に焼結することによって、溶断部の上下の有機ペーストを燃焼気化させ、溶断部の周囲に空洞部を形成することにより製造され得る(特許文献3)。しかしながら、かかる製造方法では、有機ペーストが付着したグリーンシート上に内部導体を、有機ペーストを跨いで重ね塗り印刷しているため、内部導体(特に、比較的細い溶断部)を高精細に印刷するのは困難であり、印刷にじみや印刷ばらつきが発生し得る。この難点は、アルミナまたはジルコニア等の微粉を混合して成る有機ペーストを用いる場合も同様である。更に、かかる製造方法では、焼結時に、溶断部の上下の有機ペーストを気化させ、下側の有機ペーストの気化により内部導体(導電ペースト)の溶断部を浮かせながら、内部導体を焼結させているため、溶断部をより微細に形成することは困難である。
よって、従来のチップ型ヒューズや、従来のヒューズ機能を併せ持つインダクタ素子では、優れた溶断特性を有しつつ、より小型のチップ型ヒューズを提供することが困難であり、チップサイズの小型化の最新の要請に十分応えられなくなってきている。実際、チップ型ヒューズは1005サイズ(1.0mm×0.5mm)までしか上市されておらず、より小さいサイズ、例えば0603サイズ(0.6mm×0.3mm)のチップ型ヒューズは上市されていないのが現状である。
本発明の目的は、優れた溶断特性を有しつつ、より小型化が可能である新規なチップ型ヒューズを提供することにある。
本発明の1つの要旨によれば、絶縁性材料から成る本体部と、本体部の内部に配置され、かつ本体部から露出した両端部を有するヒューズ導体と、本体部の両端部を各々被覆し、かつヒューズ導体の両端部に各々接続された一対の外部電極とを含むチップ型ヒューズであって、本体部の内部に空洞部が存在し、ヒューズ導体が、空洞部の壁面に沿って形成されている溶断部を有する、チップ型ヒューズが提供される。
かかる本発明のチップ型ヒューズは、ヒューズ導体の溶断部が、空洞部の壁面に沿って形成されているので、ヒューズ導体の溶断部を空洞部に対して部分的に露出させつつ、その非露出部においては本体部で支持することができる。ヒューズ導体の溶断部が空洞部に対して露出していることにより、ヒューズ導体の溶断部から本体部への放熱を抑制することができ、かつ、ヒューズ導体の溶断部が本体部で支持されていることにより、かかる溶断部を微細かつ高精細に安定して形成することができ、従って、本発明によれば、優れた溶断特性を有しつつ、より小型化が可能である新規なチップ型ヒューズが提供される。
本発明の1つの態様において、空洞部は、互いに対して反対側に凸状に湾曲した対向する2つの壁面を有し得、ヒューズ導体の溶断部は、該2つの壁面のいずれか一方に沿って形成され得る。
本発明の1つの態様において、本体部およびヒューズ導体は、焼結体を構成し得る。
本発明の1つの態様において、溶断部は、ミアンダ形状を有し得る。
本発明の1つの態様において、本体部のうち、少なくとも溶断部と接する部分が、0.05W・m−1・K−1以上10.00W・m−1・K−1以下の熱伝導率を有する第1絶縁性材料から成り得る。
本発明の1つの態様において、本体部が、0.05W・m−1・K−1以上10.00W・m−1・K−1以下の熱伝導率を有する第1絶縁性材料から成る層であって、ヒューズ導体および空洞部を内部に有する層と、第1絶縁性材料より高い強度を有する第2絶縁性材料から成る少なくとも1つの層とを含み得る。かかる態様において、第1絶縁性材料から成る層は、第2絶縁性材料から成る2つの層の間に配置されていてよい。
本発明の1つの態様において、絶縁性材料は、非磁性材料であり得る。
本発明の1つの態様において、チップ型ヒューズは、0.55mm以上0.65mm以下の長さおよび0.25mm以上0.35mm以下の幅を有し得る。
本発明によれば、優れた溶断特性を有しつつ、より小型化が可能である新規なチップ型ヒューズが提供される。
本発明の1つの実施形態におけるチップ型ヒューズの概略断面図である。 図1のA−A線におけるチップ型ヒューズの概略断面図である。 図1のB−B線に沿って仮想的に切断して見たチップ型ヒューズの概略上面図である。 図3に対応する図であって、チップ型ヒューズにおけるヒューズ導体の溶断部の1つの改変例を示す図である。 図3に対応する図であって、チップ型ヒューズにおけるヒューズ導体の溶断部のもう1つの改変例を示す図である。 図3に対応する図であって、チップ型ヒューズにおけるヒューズ導体の溶断部のもう1つの改変例を示す図である。 本発明の図1に示す実施形態における1つの例示的なチップ型ヒューズの概略断面図である。 図8のA−A線におけるチップ型ヒューズの概略断面図である。 本発明の図1に示す実施形態におけるチップ型ヒューズの製造方法を説明する図である。 本発明の図7に示す例示的なチップ型ヒューズの製造方法を説明する図である。 本発明の図7に示す例示的なチップ型ヒューズの1つの使用態様を説明する図である。 本発明の図7に示す例示的なチップ型ヒューズのもう1つの使用態様を説明する図である。 本発明の実施例にてヒューズ導体を形成するために印刷した銀ペーストのパターンを模式的に示す図であり、(a)は、印刷した銀ペーストのパターンの全体像を例示的に示す上面図であり、(b)〜(d)は、それぞれ実施例1〜3において印刷した銀ペーストの溶断部に対応する部分およびその近傍(例示的には(a)中にて点線で囲んだ領域H)の拡大模式図である。 本発明の実施例1〜3にて作製したチップ型ヒューズの試料の評価結果を示すグラフである。
以下、本発明の1つの実施形態におけるチップ型ヒューズおよびその製造方法について図面を参照しながら詳述するが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではない。
図1に示すように、本実施形態のチップ型ヒューズ10は、絶縁性材料から成る本体部1と、本体部1の内部に配置され、かつ本体部1から露出した両端部を有するヒューズ導体3と、本体部1の両端部を各々被覆し、かつヒューズ導体3の両端部に各々接続された一対の外部電極9a、9bとを含む。図1〜2に示すように、本体部1の内部には空洞部2が存在し、ヒューズ導体3は、空洞部2の壁面に沿って形成されている溶断部3aを有する。換言すれば、空洞部2が、ヒューズ導体3の溶断部3aの直上に位置している。
本発明において、用語「ヒューズ導体」は、ヒューズを構成するための導体(電気導電性物質から成る部材)を意味し、本発明においては本体部の内部に配置されていることから「内部導体」としても理解され得る。また、用語「溶断部」は、本発明のチップ型ヒューズが、ヒューズとして機能するときに、発熱して溶断することを意図した部分を意味し、ヒューズ導体のうち、幅が比較的狭い部分であり得る。
本実施形態によれば、空洞部2が、ヒューズ導体3の溶断部3aの直上に位置するので、ヒューズ導体3の溶断部3aを空洞部2に対して部分的に露出させつつ、溶断部3aの非露出部においては本体部1と接触させ(本体部1の内壁面と密着し)、本体部1で支持することができる。これにより、ばらつきの小さい安定した溶断特性を得ることができる。なお、図示する態様では、溶断部3aの上面および側面が空洞部2に対して露出しており、溶断部3aの下面が本体部1で支持されているが、本実施形態はこれに限定されず、溶断部3aの上面および側面の一部が空洞部2に対して露出していても、溶断部3aの上面のみが空洞部2に対して露出していても、これら3つの状態のうち任意の2つ以上の状態が溶断部3aの線路方向に沿って混在していてもよい。
ヒューズ導体3の溶断部3aが空洞部2に対して露出していることにより、ヒューズ導体3に電流が流れたときに、ヒューズ導体3の溶断部3aから本体部1に(更には外部電極9aおよび/または9bに)熱が伝導して逃げること(放熱)を、空洞部2(空気または他のガス、例えば消失材に由来するガスが存在し得、あるいは真空であってもよい)の断熱効果により抑制することができる。これにより、溶断部3aに効果的に熱をこもらせることができ、溶断し易くなるため、溶断部3aの線路長を長く設定する必要がない(よって、外部電極から溶断部までの距離を長くとる必要がない)。更に、ヒューズ導体3の溶断部3aが本体部1で支持されていることにより、後述するように、印刷工法を利用してチップ型ヒューズを製造することができるため、溶断部3aを微細かつ高精細に安定して形成することができる。これらの結果、より小型のチップサイズ、例えば0603サイズ(0.6mm×0.3mm)であっても、優れた溶断特性を得ることができる。例えば、空洞部の中心位置(図1〜2中、模式的に黒点にて示す)は、チップの長さL方向において本体部1の外壁面から250μm以上350μm以下の距離aにて存在し得、チップの幅W方向において本体部1の外壁面から100μm以上200μm以下の距離bまたはc(実装方向に応じて決まり得る)にて存在し得る。なお、空洞部の中心位置は、体積中心により規定され得る。
より詳細には、本実施形態のチップ型ヒューズ10において、空洞部2は、互いに対して反対側に凸状に湾曲した対向する2つの壁面を有し、ヒューズ導体3の溶断部3aは、これら2つの壁面のいずれか一方に沿って形成されている。かかる2つの壁面は、明確に境界を有していても、有していなくてもよく、図示する態様では、上側壁面および下側壁面であり得、溶断部3aが下側壁面のみに沿って形成されている。これにより、溶断部3aは(図示する態様では下向きに)凸状に湾曲して形成され得る。空洞部2において、空間距離が大きいほど、高い断熱効果ひいては放熱抑制効果が得られるため、一方の壁面に対して反対側に凸状に湾曲した壁面の略中央領域に、ヒューズ導体3の溶断部3aを配置することが好ましく、これにより、溶断部3aを選択的に溶断させることができる。
概略的には、図1〜2に示すように、空洞部2は楕円断面を有し得、溶断部3aはアーチ状に形成され得るが、本実施形態はかかる形状に限定されない。空洞部2が、角のない楕円断面を有することにより、チップ型ヒューズの製造過程および/またはその後の使用の間に本体部1に応力が加わっても、効果的に分散させることができ、角(エッジ部)を起点として本体部1にクラックや割れが発生することを抑制または防止できる。
本実施形態において、本体部1およびヒューズ導体3は、一体的に焼結された焼結体を構成していてよく、より詳細には積層体の焼結体であってよい(図中、積層方向をZで示す)。また、本実施形態において、空洞部2は、焼成時に消失材が気化することにより形成されたものであってよい。
空洞部2の寸法および/または体積(容積)は特に限定されない。空洞部2の高さtは、本体部1の内壁面のうち溶断部3aが存在する側の面から、これに対向する壁面までの最大距離(積層方向に平行な断面における本体部1の対向する内壁面間の最大距離)によって規定され、低格電流値やチップサイズ等に応じて適宜選択され得るが、例えば10μm以上50μm以下であり得る。空洞部2の長さxは、高さt方向に対して垂直な面内における最大距離によって規定され、溶断部3aの形状等に応じて適宜選択され得るが、例えば100μm以上500μm以下であり得る。空洞部2の幅yは、高さt方向および長さx方向に対して垂直な最大距離によって規定され、溶断部3aの形状等に応じて適宜選択され得るが、例えば50μm以上200μm以下であり得る。空洞部2の体積は、5×10(μm)以上5×10(μm)以下であり得る。
空洞部2に対して露出した本体部1の内壁面は、より平滑であるほうが、ヒューズ導体3の溶断部3aから空洞部2を通じて本体部1へ熱が伝導して逃げることを抑制でき、溶断し易くなるため好ましい(凹凸が大きいと、表面積が大きくなり、熱が伝わり易くなって、溶断し難くなる)。空洞部2が、焼成時に消失材が気化することにより形成されたものである場合、空洞部2に対して露出した本体部1の内壁面を平滑にすることができる。かかる本体部1の内壁面の表面粗さRaは、例えば0.05μm以上0.5μm以下であり得る(ここで、Raは、算術平均粗さである)。
チップ型ヒューズ10において、空洞部2は1つまたはそれ以上存在していてよく、1つの空洞部2において、溶断部3aは1つまたはそれ以上存在していてよい。
ヒューズ導体3の溶断部は、所望される溶断特性および/または定格電流に応じて任意の様々な厚さおよび形状を有し得る。ヒューズ導体の溶断部の厚さおよび形状(特に線幅および線路長)は、溶断特性および定格電流に影響するため重要である。
溶断特性を制御するためには、ヒューズ導体の溶断部を所望の形状に形成することが求められる。例えば、図3に示すように、溶断部3aは、線幅が実質的に一定で、線路が直線方向に延在した形状(直線タイプ)を有していてよい。しかしながら、本実施形態はこれに限定されず、例えば、図4に示すように、線幅が次第に減少および増加しつつ、線路が直線方向に延在した形状(中央部を絞ったタイプ)を有する溶断部3bを適用してもよい。あるいは、ミアンダ形状を有する溶断部を適用してもよい。より詳細には、例えば、図5に示すように、線幅が実質的に一定で、線路が蛇行しつつ長さ方向に延在したミアンダ形状を有する溶断部3cを適用してもよい。また例えば、図6に示すように、線幅が実質的に一定で、線路が蛇行しつつ幅方向に延在したミアンダ形状を有する溶断部3dを適用してもよい。
これら溶断部3a〜3dの寸法は、溶断させる電流値等に応じて適宜選択され得るが、厚さは、例えば1μm以上10μm以下であり、線幅は、例えば10μm以上50μm以下であり、線路長は、例えば100μm以上1000μm以下であり得る(いずれも焼成後)。
ヒューズ導体3は、任意の適切な導電性材料から成り、例えば銀、銅、ニッケル、錫、アルミニウムなどの金属や、それらの合金などから構成され得る。後述するように、印刷工法を利用してチップ型ヒューズを製造する場合には、ヒューズ導体3は、導電ペーストを使用して形成され得る。導電ペーストは、特に限定されないが、銀ペースト、銅ペーストなどを使用してよい。
本体部1は、任意の適切な絶縁性材料から成り、例えばガラス材料、石英、アルミナ、フォルステライト、フェライトおよびそれらの2種以上の混合物などから構成され得る。後述するように、印刷工法を利用してチップ型ヒューズを製造する場合には、本体部1は、絶縁性材料のグリーンシートを使用して形成され得る。
本体部1のうち、少なくとも溶断部3aと接する部分、好ましくは溶断部3aを有するヒューズ導体3および空洞部2と接する部分を、0.05W・m−1・K−1以上10.00W・m−1・K−1以下の熱伝導率を有する第1絶縁性材料から構成し得る。このような第1絶縁性材料は熱伝導率が低く、ヒューズ導体3に電流が流れたときに、ヒューズ導体3の溶断部3aから本体部1に(更には外部電極9aおよび/または9bに)熱が伝導して逃げること(放熱)を直接的に抑制することができる。これにより、溶断部3aに効果的に熱をこもらせることができ、より一層溶断し易くなり、優れた溶断特性を安定して得ることができ、チップサイズのより一層の小型化を図ることができる。本発明において、絶縁性材料の熱伝導率は、JIS R 1611(ファインセラミックスのフラッシュ法による熱拡散率・比熱容量・熱伝導率の測定方法)により規定され得る。
かかる第1絶縁性材料としては、例えばガラス材料(フィラーを含んでいても、いなくてもよい)が挙げられる。
本体部1は、その全体が第1絶縁性材料から成っていてもよい。この場合、本体部1は、第1絶縁性材料から成る複数の層の積層体の焼結体であってよい。
しかしながら、本体部1は、少なくとも溶断部3aと接する部分、好ましくは溶断部3aを有するヒューズ導体3および空洞部2と接する部分であって、第1絶縁性材料から成る部分と、第1絶縁性材料より高い強度(機械強度、例えば抗折強度)を有する第2絶縁性材料から成る他の部分とを含むものであることが好ましい。熱伝導率が低い絶縁性材料は、ガラス材料等をはじめとして強度が低い(脆い)ことが多い。逆に、強度の高い絶縁性材料は熱伝導率が高いことが多い。そこで、少なくとも溶断部3aと接する部分、好ましくは溶断部3aを有するヒューズ導体3および空洞部2と接する部分を熱伝導率の高い第1絶縁性材料で構成し、他の部分、例えば第1絶縁性材料から成る部分の上、下、左、右のいずれかまたはそれらの2つ以上の部分を、第1絶縁性材料より高い強度を有する第2絶縁性材料から構成することにより、放熱抑制と強度の両立が可能となる。本発明において、絶縁性材料の強度は、JIS R 1601(ファインセラミックスの室温曲げ強さ試験方法)により規定され得る。
かかる第2絶縁性材料としては、例えばアルミナ、フォルステライト、フェライトが挙げられる。第1絶縁性材料としてガラス材料を使用する場合、ガラス材料との同時焼成が容易であるので、第2絶縁性材料としてフェライトを使用することが好ましい。
本体部1が積層体の焼結体である場合、本体部1は、第1絶縁性材料から成る層であって、ヒューズ導体および空洞部を内部に有する層(低熱伝導率層)と、第1絶縁性材料より高い強度を有する第2絶縁性材料から成る少なくとも1つの層(補強層)とを含むものであってよい。第2絶縁性材料から成る層(補強層)がチップ型ヒューズの長さL方向に亘って延在することにより、特に抗折強度を向上させることができる。
例えば、図7〜8に示すように、第1絶縁性材料から成る層5(ヒューズ導体3および空洞部2を内部に有する)(低熱伝導率層)が、第2絶縁性材料から成る2つの層7(補強層)の間に配置されていてよい。第1絶縁性材料から成る層5の厚さは、例えば50μm以上200μm以下であり得、第2絶縁性材料から成る層7の厚さは、例えば50μm以上125μm以下であり得る。しかしながら、図示する例に限定されず、第1絶縁性材料から成る層5の上および下のいずれか一方にのみ第2絶縁性材料から成る層7が配置されていてもよい。
チップ型ヒューズの用途に応じて、チップ型ヒューズにインダクタンスが必要でない場合や、チップ型ヒューズにインピーダンスを持たせないようにする場合などには、本体部1は、絶縁性かつ非磁性材料から成り得る。チップ型ヒューズが実装される電気・電子回路によっては、チップ型ヒューズの実装による回路上のインピーダンスによって、他の部品への電流および/または信号の流れが阻害ないし抑制されることを回避したい場合があり、非磁性材料を使用することで、かかるインピーダンスを極力小さくすることができる。絶縁性かつ非磁性材料としては、ガラス材料、石英、アルミナ、フォルステライト、非磁性フェライトなどが挙げられる。非磁性の第1絶縁性材料としては、例えばガラス材料(フィラーを含んでいても、いなくてもよい)が挙げられる。非磁性の第2絶縁性材料としては、例えば非磁性フェライト材料が挙げられる。
ガラス材料は、任意の適切な組成を有するガラス材料を使用してよいが、例えば、
0.5〜5重量%のKO、
0〜5重量%のAl
10〜25重量%のB
70〜85重量%のSiO
を含む(但し、合計で100重量%を超えない)ガラス材料が好ましい。ガラス材料は、所定のガラス組成になるように酸化物や炭酸塩の出発原料を秤量し、これらを混合して白金るつぼに入れ、1500〜1600℃の温度で溶融させ、これを急冷した後、粉砕することにより作製されたガラス粉末を使用して得られたものであってよく、かかるガラス粉末をそのまま使用してもよいが、かかるガラス粉末に、例えば石英、アルミナなどのフィラーをガラス粉末に対して10〜50重量%の範囲で添加して得られたものであってよい。
非磁性フェライト材料は、任意の適切な組成を有する非磁性フェライト材料を使用してよいが、例えば、
FeをFeに換算して40〜49.5mol%で含み、
CuをCuOに換算して6〜12mol%で含み、
残部がZnOである非磁性フェライト材料が好ましい。非磁性フェライト材料は、必要に応じてMn、Sn、Co、Bi、Si等の添加物を1種または任意の2種以上の組み合わせで含んでいてよく、および/または、微量な不可避不純物を含んでいてもよい。非磁性フェライト材料は、所定の比率になるように原料を秤量し、必要に応じて添加物を添加して、湿式で混合粉砕した後、乾燥し、これにより得られた乾燥物を700〜800℃の温度で仮焼し、これを粉砕することにより作製されたものであってよい。
外部電極9a、9bは、任意の適切な導電性材料から成り、例えば金属導体に1層またはそれ以上のメッキを施したものであり得る。
次に、本実施形態のチップ型ヒューズ10の製造方法について説明する。
図9を参照して、まず、上述したような絶縁性材料(好ましくは第1絶縁性材料)のグリーンシート1’を準備する(図9(a))。絶縁性材料のグリーンシート1’は、絶縁性材料の粉末を、バインダ樹脂および有機溶剤を含む有機ビヒクルと混合/混練し、シート状に成形することにより得てよいが、これに限定されるものではない。
この絶縁性材料のグリーンシート1’の平坦な表面に、導体ペースト3’を所定のパターンで印刷する(図9(b))。導体ペーストは、市販で入手可能な、導体として銀を粉末の形態で含む一般的な銀ペーストを使用できるが、これに限定されない。印刷方法は、スクリーン印刷を好適に使用できる。印刷パターンは、最終的に形成されるべきヒューズ導体3(溶断部3aを有する)の形状に対応させる。
次に、導体ペースト3’を印刷した絶縁性材料のグリーンシート1’の上に、消失材4を印刷する(図9(c))。消失材4は、焼成時に気化により空洞部2を形成し得る材料(気化するため、最終的に得られるチップ型ヒューズにおいて存在せず、よって「消失」している)であり、ペースト状または液状の材料であり得る。消失材4としては、熱分解により燃焼気化し易い材料を使用でき、例えば有機ペースト、より詳細にはアクリル系樹脂などの樹脂材料をペーストの形態としたものを使用し得る。印刷方法は、スクリーン印刷を好適に使用できる。消失材4が印刷される領域は、先に印刷した導体ペースト3’のうち、溶断部3aに対応する部分を覆うものであればよく、最終的に形成されるべき空洞部2の寸法に応じて決定され得る。なお、消失材4は、導体ペースト3’を印刷した絶縁性材料のグリーンシート1’の上に、印刷以外の方法、例えば塗布(例えばディスペンスなど)により適用してもよい。
上記により得られた導体ペースト3’および消失材4が印刷された絶縁性材料のグリーンシート1’の上下に、新たな絶縁性材料のグリーンシート1’を所望の厚さが得られるように所定枚数積層し(図中、積層方向をZで示す)、圧着し、所定の寸法に切断して、積層体を得る(図9(d))。この積層体は、複数個をマトリクス状に一度に作製した後に、ダイシング等により個々に切断して(素子分離して)個片化したものであってよいが、予め個々に作製したものであってもよい。
積層体の形成方法としては、シート積層工法を利用できるが、これに限定されない。
上記により得られた積層体を焼成して、導体ペースト3’に由来するヒューズ導体3と、絶縁性材料のグリーンシート1’に由来する本体部1とが一体的に焼結された焼結体10’が得られる(図9(e))。焼成温度および焼成時間は、絶縁性材料のグリーンシート1’に使用する絶縁性材料の粉末および導体ペースト3’に使用する導体の粉末を焼結させ得る温度および時間であればよい。
この焼成時に、消失材4は徐々に気化(例えば熱分解により燃焼気化)し、発生したガスが、体積膨張により、焼成途中にある周囲の絶縁性材料および導体を押して次第に空間拡張し、やがて消失材4の全てが気化して「消失」し、空洞部2が形成されるとともに、空洞部2に対して露出したヒューズ導体3の部分(溶断部3aを含む)が、空洞部2の壁面に沿って形成される(図9(e)参照)。
より詳細には、この焼成過程において、ガスは、体積膨張により、焼成途中にある周囲の絶縁性材料および導体を等方的に押し得るため、形成される空洞部は、対向する2つの壁面が互いに対して反対側に凸状に湾曲し、好ましくは楕円断面を有し得、溶断部3aは一方の壁面に沿って(図示する態様では下向きに)凸状に湾曲して形成され、好ましくはアーチ状に形成され得る。このようにして形成された空洞部2に対して露出した本体部1の内壁面(および空洞部2に対して露出したヒューズ導体3の上面および側面)は、平滑になり得る。
必要に応じて、上記で得られた焼結体10’をバレル研磨に付して角部を丸めると共にヒューズ導体3の両端部を本体部1から十分に露出させてよい。
その後、外部電極9a、9bを、焼結体10’の両端部を各々被覆し、ヒューズ導体3の両端部に各々接続されるように形成する。これにより、チップ型ヒューズ10(図1〜3参照)が製造される。
本実施形態によれば、絶縁性材料のグリーンシート1’の平坦な表面に導体ペースト3’を直接印刷しているので(図9b)、微細なパターンであっても、(印刷にじみや印刷ばらつきを実質的に発生させることなく)高精細に印刷することができる。溶断部3aの厚さおよび形状は、導体ペースト3’の印刷パターンおよび/または印刷条件を変更することにより容易に変更できるので、これにより種々の溶断特性を得ることができる。
また、本実施形態によれば、チップ型積層セラミックコンデンサ(MLCC)等で量産実績があり、低コストで量産可能なスクリーン印刷およびシート積層工法を利用することができ、スクリーン印刷は導体ペースト3’の印刷と消失材4の印刷の2回でよいため、製造コストを安価に抑えることができる。本実施形態のチップ型ヒューズの製造方法は、溶断部3aを加工形成するために、レーザー、フォトリソグラフィ、スパッタリングなどの高額な装置を要しない。
また、本実施形態においては、ヒューズ導体3に電流が流れたときに、ヒューズ導体3の溶断部3aから本体部1への放熱を、空洞部2の断熱効果により抑制して、溶断部3aの発熱を促進できるので、発熱を促進するための他の方策、例えば、溶断部3aの直流抵抗を大きくするための導体酸化や、溶断部3aの樹脂層による被覆などを要しない。
図7〜8を参照して上述した本実施形態の1つの例示的なチップ型ヒューズ11は、以下のようにして製造できる。なお、特に説明のない限り、上記と同様の説明が当て嵌まり得る。
図10を参照して、まず、上述したような第1絶縁性材料のグリーンシート5’を準備し(図10(a))、その平坦な表面に導体ペースト3’を所定のパターンで印刷する(図10(b))。次に、導体ペースト3’を印刷した第1絶縁性材料のグリーンシート5’の上に、消失材4を印刷する(図10(c))。これにより得られた導体ペースト3’および消失材4が印刷された第1絶縁性材料のグリーンシート5’の上下に、新たな第1絶縁性材料のグリーンシート5’を、およびその外側に第2絶縁性材料のグリーンシート7’(図示する態様では上下両側としているが、上および下のいずれか一方であってもよい)を、それぞれ所望の厚さが得られるように所定枚数積層し(図中、積層方向をZで示す)、圧着し、所定の寸法に切断して、積層体を得る(図10(d))。これにより得られた積層体を焼成して、導体ペースト3’に由来するヒューズ導体3と、第1絶縁性材料のグリーンシート5’に由来する第1絶縁性材料から成る層5および第2絶縁性材料のグリーンシート7’に由来する第1絶縁性材料から成る層7から構成される本体部1とが一体的に焼結された焼結体11’が得られる(図10(e))。その後、外部電極9a、9bを、焼結体11’の両端部を各々被覆し、ヒューズ導体3の両端部に各々接続されるように形成する。これにより、チップ型ヒューズ11(図7〜8参照)が製造される。
次に、本実施形態のチップ型ヒューズ10(特に説明のない限り、図7〜8に示すチップ型ヒューズ11を包含し得る)の使用態様について説明する。
本実施形態のチップ型ヒューズ10は、任意の適切な方法で電気・電子回路に組み込まれ得る。より詳細には、チップ型ヒューズ10は、回路基板などの被実装体の表面に形成された一対のパッド(またはランド)の上に、外部電極9a、9bが位置するように配置され、それらの間を各々はんだ材料で接合することにより電気回路に組み込まれ、これにより、チップ型ヒューズ10が被実装体に実装された実装構造体が得られる。
電気回路に組み込まれたチップ型ヒューズ10に電流が流れるとジュール熱により発熱し、溶断特性に応じて、例えば流れる電流が過大になる(定格電流を超える)と、溶断部3aにて溶断し、ヒューズとして機能する。このとき、溶断部3aを構成している導体は、空洞部2が存在していることにより、溶断すると同時に熱収縮し易く、溶断後の導体間距離を大きく確保できる。この結果、溶断後に過大な電圧が印加されてもショートせずに絶縁性を維持でき、高い耐電圧(破壊電圧)を示すことができる。また、発熱により本体部1の絶縁性材料(好ましくは第1絶縁性材料)が軟化し得、これにより、溶断した導体物質を本体部1の絶縁性材料でトラップすることができ、導電物質の飛散を防止することができる。
本実施形態のチップ型ヒューズ10は、優れた溶断特性を有しつつ、より小型化が可能であり、例えば0.55mm以上0.65mm以下の長さLおよび0.25mm以上0.35mm以下の幅Wを有するもの、例えば0603サイズ(0.6mm×0.3mm)のチップ型ヒューズを実現することができる。
チップ型ヒューズ10の積層方向Zは、チップ型ヒューズ10の幅W方向および高さT方向のいずれに一致していてもよいが、実装時において、被実装体のたわみ方向に対して、積層方向Zが垂直であるほうが、平行であるよりも機械強度(たわみ強度)が向上するので好ましい。被実装体が回路基板である場合、被実装体のたわみ方向は、被実装体の表面に対して垂直な方向であり得、よって、被実装体の表面に対して、積層方向Zが平行であるほうが、垂直であるよりも、機械強度(たわみ強度)が向上するので好ましい。
かかる積層方向Zと実装方向の関係の選択による機械強度の向上効果は、図7〜8を参照して上述した本実施形態の1つの例示的なチップ型ヒューズ11において顕著である。図11に示すように、チップ型ヒューズ11は、その積層方向Zが、被実装体の表面20に対して実質的に平行になるようにして配置され、外部電極9a、9bがパッド21a、21bにはんだ材料(図示せず)により接合されて、実装構造体30を構成し得る。また、チップ型ヒューズ11は、その積層方向Zが、被実装体の表面20に対して実質的に垂直になるようにして配置され、同様にして接合されて、実装構造体30を構成し得る。被実装体が回路基板である場合、被実装体の表面20に対して、積層方向Zが平行である(図11参照)ほうが、垂直である(図12参照)よりも、機械強度(たわみ強度)が向上するので好ましい。
1.チップ型ヒューズの製造
以下のようにしてチップ型ヒューズを製造した。
(1−1)ガラス材料のグリーンシートの作製
O、B、SiOをそれぞれKO 2重量%、B 20重量%、SiO 78重量%となるように秤量し、これらを混合して白金るつぼに入れ、1500〜1600℃の温度で溶融させ、これを急冷した後、粉砕することによりガラス粉末を作製した。ガラス粉末 65重量%に対して、フィラーとしてアルミナを5重量%、石英を30重量%含有させ、これに溶剤、バインダおよび可塑剤を加え、十分に混合した後、ドクターブレード法などによりガラス材料のグリーンシートを作製した。
(1−2)非磁性フェライト材料のグリーンシートの作製
Feを48.5mol%、ZnOを43.5mol%、CuOを8.0mol%となるように秤量し、湿式で混合粉砕した後、乾燥し、これにより得られた乾燥物を700〜800℃の温度で仮焼し、これを粉砕することにより、非磁性フェライト粉末を作製した。これに溶剤、バインダおよび可塑剤を加え、十分に混合した後、ドクターブレード法などにより非磁性フェライト材料のグリーンシートを作製した。
(1−3)チップ型ヒューズの作製
上記のようにして作製したガラス材料のグリーンシートおよび非磁性フェライト材料のグリーンシートをそれぞれ矩形(多数個取り可能な寸法)に打ち抜き、まずガラス材料のグリーンシート上に銀ペーストを、例えば図13(a)に模式的に示すように多数個取りに対応したパターンでスクリーン印刷して、銀ペーストのパターンを形成した。この銀ペーストのパターンは、ヒューズ導体を形成するためのパターンであり、このうち溶断部に対応する部分を、ミアンダ形状(図13(b)、実施例1)または直線形状(図13(c)〜(d)、それぞれ実施例2〜3)とした(なお、図13(a)は溶断部を直線形状とした場合を例示的に示し、また、図13(a)に示す個数は例示に過ぎず、これに限定されない)。各パターンは、溶断部においてそれぞれ以下の寸法(焼成後)であった。
Figure 2019065727
次に、このパターンの上に消失材を多数個取りに対応したパターンでスクリーン印刷した。消失材として、アクリル系樹脂のペーストを使用した。
上記のように銀ペーストのパターンおよび消失材のパターンを印刷したガラス材料のグリーンシートを、上記のようにして作製した所定枚数の新たなガラス材料のグリーンシート(印刷されていない)で挟み、更にそれを所定枚数の非磁性フェライト材料のグリーンシートで挟み、圧着してブロックを作製した。このブロックをダイサー等で切断し、個片化した。個片化した後、素子を焼成炉に入れ、900℃程度で2時間焼成した。得られた焼結体をバレル研磨して、角部を丸めた。
その後、この焼結体の両端部に銀ペーストを塗布し、800℃程度の温度で焼き付けを行い、下地電極を形成した。その後、下地電極の上に、電解めっきでNi被膜およびSn皮膜を順次形成し、外部電極を形成した。
以上により、チップ型ヒューズの試料(実施例1〜3)が製造された。得られた試料のサイズは、実施例1〜3とも、長さL=0.6mm、幅W=0.3mm、高さT=0.3mmであった。
また、空洞部の高さ寸法を、次のようにして求めた。作製した試料を垂直になるように立てて、試料の周りを樹脂で固めた。このときLT側面が露出するようにした。研磨機で試料のW方向に研磨を行い、空洞部の略中央部の深さで研磨を終了した。空洞部をSEMで撮影し、写真から空洞部の高さが最も高い位置での距離を測定し、3個の試料での測定値の平均を空洞部の高さ寸法とした。測定した結果は、実施例1〜3とも、ほぼ30μmであった。
また、上記のSEM写真から、中央のガラス層および上下の非磁性フェライト層の厚みを測定したところ、ガラス層の厚さは100μmであり、非磁性フェライト層の厚みは上下とも100μmであった。
2.チップ型ヒューズの評価
作製した実施例1〜3の試料について、溶断特性を評価した。溶断特性は直流電源により外部電極間に所定値の電流を流し、その電流をオシロスコープで観察し、電流を流してから、溶断により電流が流れなくなるまでの時間(溶断時間)を求めた。電流値を変えて、それぞれの電流値に対する溶断時間を求めた。結果を図14に示す。図14から理解されるように、ヒューズ導体の溶断部の厚さおよび断面積(線幅および厚さ)を変えることで、溶断する電流値が変わった。このことから、ヒューズ導体の溶断部の断面積(線幅および厚さ)を選択することで溶断する電流値を設計できることが理解される。
次に、溶断した試料について、一対の外部電極間に直流電圧を印加し、直流破壊電圧を測定した。実施例1〜3の各々につき試料10個(合計30個)について測定したところ、いずれの試料も1000V以上の破壊電圧を示した。
本発明のチップ型ヒューズは、例えば、過電圧、過電流および/または過熱などから電子・電気機器等を保護するなどの目的で、電気・電子機器の回路に組み込まれて、幅広く様々な分野において利用され得る。
1 本体部
1’ 絶縁性材料のグリーンシート
2 空洞部
3 ヒューズ導体
3a、3b、3c、3d 溶断部
3’ 導体ペースト
4 消失材ペースト
5 第1絶縁性材料層(低熱伝導率層)
5’ 第1絶縁性材料のグリーンシート
7 第2絶縁性材料層(補強層)
7’ 第2絶縁性材料のグリーンシート
9a、9b 外部電極
10、11 チップ型ヒューズ
10’、11’ 焼結体
20 被実装体の表面
21a、21b パッド
30、31 実装構造体
x 空洞部の長さ
y 空洞部の幅
t 空洞部の高さ
Z 積層方向
L 長さ
W 幅
T 高さ

Claims (9)

  1. 絶縁性材料から成る本体部と、該本体部の内部に配置され、かつ該本体部から露出した両端部を有するヒューズ導体と、該本体部の両端部を各々被覆し、かつ該ヒューズ導体の両端部に各々電気的に接続された一対の外部電極とを含むチップ型ヒューズであって、前記本体部の内部に空洞部が存在し、前記ヒューズ導体が、前記空洞部の壁面に沿って形成されている溶断部を有する、チップ型ヒューズ。
  2. 前記空洞部が、互いに対して反対側に凸状に湾曲した対向する2つの壁面を有し、前記ヒューズ導体の溶断部が、該2つの壁面のいずれか一方に沿って形成されている、請求項1に記載のチップ型ヒューズ。
  3. 前記本体部および前記ヒューズ導体が、焼結体を構成している、請求項1または2に記載のチップ型ヒューズ。
  4. 前記溶断部が、ミアンダ形状を有する、請求項1〜3のいずれかに記載のチップ型ヒューズ。
  5. 前記本体部のうち、少なくとも前記溶断部と接する部分が、0.05W・m−1・K−1以上10.00W・m−1・K−1以下の熱伝導率を有する第1絶縁性材料から成る、請求項1〜4のいずれかに記載のチップ型ヒューズ。
  6. 前記本体部が、0.05W・m−1・K−1以上10.00W・m−1・K−1以下の熱伝導率を有する第1絶縁性材料から成る層であって、前記ヒューズ導体および前記空洞部を内部に有する層と、前記第1絶縁性材料より高い強度を有する第2絶縁性材料から成る少なくとも1つの層とを含む、請求項5に記載のチップ型ヒューズ。
  7. 前記第1絶縁性材料から成る層が、前記第2絶縁性材料から成る2つの層の間に配置されている、請求項6に記載のチップ型ヒューズ。
  8. 前記絶縁性材料が、非磁性材料である、請求項1〜7のいずれかに記載のチップ型ヒューズ。
  9. チップ型ヒューズが、0.55mm以上0.65mm以下の長さおよび0.25mm以上0.35mm以下の幅を有する、請求項1〜8のいずれかに記載のチップ型ヒューズ。
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