JPWO2018131549A1 - 抗菌性材料及びその応用 - Google Patents
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Abstract
Description
ここで雑菌は精肉、鮮魚及び加工食品の各本体よりもドリップでより多く増殖するとされている(例えば非特許文献1参照)。
そのため、ドリップ中の雑菌増殖を抑制することは包装体内部の雰囲気を清浄に保ち、ひいては被包装物であるカット野菜、精肉、鮮魚本体及び加工食品の鮮度を保つこととなる。
更に近年、キャベツ、レタス等を2mm〜50mm程度にカットして、100ppm〜200ppmの次亜塩素酸水溶液に5分〜30分浸し、一般細菌を殺菌した後にフィルムで包装することで得られるカット野菜包装が、スーパーマーケット等で販売されたり、チェーンレストランで調理の手間を省くために利用されたりしている。
特許文献1にはラウリルジエタノールアミン及び/又はミリスチルジエタノ−ルアミンを抗菌剤として用いたフィルムが開示されている。
特許文献2にはモノグリセリン脂肪酸エステル等を抗菌剤として用いたキノコ類の包装用フィルムが開示されている。
特許文献3には、プロタミンを抗菌剤として用いた抗菌性物材及びその加工品が開示されている。
特許文献4には、(A)ε−ポリリジン及び/またはその塩、(B)pH緩衝能を有する電解質、及び(C)アミノ酸が配合された抗菌剤組成物が開示されている。
〔特許文献2〕特開2003−176384号公報
〔特許文献3〕特開平8−231327号公報
〔特許文献4〕特開2004−67586号公報
一方、抗菌性を高めるためにプロタミンを抗菌性材料に多く含有させると、フィルムがべたつき易くフィルムの操作性(例えばフィルムを物品の梱包に用いた場合の梱包時の操作性)が確保され難くなるといった問題もある。
このように抗菌性材料は知られているものの、操作性を確保しつつ、比較的安全に物品の表面を清浄に保ち、物品が食品の場合はその鮮度を保持できる抗菌性材料については更に開発が進められている。
本開示の第二の形態は、抗菌性を維持しつつ、基材の性質を有する抗菌性材料及び鮮度保持用材料を提供することを目的とする。更に、本開示の第二の形態は、抗菌性と基材の性質との両立が可能なコート液を提供することを目的とする。
本開示の第三の形態は、表面部の平滑性、特に微小領域の平滑性(例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像面積100mm2、50倍の倍率で表面部を観察した場合の平滑性)に優れる抗菌性材料及び鮮度保持用材料を提供することを目的とする。更に、本開示の第三の形態は、平滑性に優れる表面部を形成可能なコート液を提供することを目的とする。
<1> グアニジンに由来する構造を有する分子Aを含む表面部を備え、前記表面部における前記分子Aの量が0.2mg/m2〜300mg/m2である、抗菌性材料。
<2> 前記表面部の、1.2mm2の面積中に存在する円相当径50μm以上の表面欠陥が10個以下である、<1>に記載の抗菌性材料。
<3> 前記分子Aの量が0.2mg/m2〜200mg/m2である、<1>又は<2>に記載の抗菌性材料。
<4> 前記分子Aの量が0.6mg/m2〜150mg/m2である、<1>〜<3>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<5> 前記分子Aの量が0.9mg/m2〜50mg/m2である、<1>〜<4>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<6> 前記表面部の固形分中における前記分子Aの含有量が80質量%以上である、<1>〜<5>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<7> 前記分子Aは、重量平均分子量が300以上5,000以下である、<1>〜<6>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<8> 前記分子Aの量が1.0mg/m2〜5.0mg/m2である、<1>〜<7>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<9> 前記分子Aが、重量平均分子量が300以上3,000以下のグアニジンに由来する構造を有する分子A1と、重量平均分子量が3,000を超え5,000以下のグアニジンに由来する構造を有する分子A2と、を含む、<1>〜<8>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<10> 前記グアニジンに由来する構造が、下記式(G−1)により表される構造である、<1>〜<9>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<11> 前記分子Aがアルギニンに由来する構造を有するアミノ酸である、<1>〜<10>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<12> 分子Aにおける、前記グアニジンに由来する構造に含まれる塩基性基の当量が、50g/eq〜500g/eqである、<1>〜<11>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<13> 前記分子Aが、プロタミンの分解物である、<1>〜<12>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<14> 前記表面部が前記分子Aを0.1質量%超10.0質量%以下含有する、<1>〜<13>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<15> 前記表面部は、脂肪酸エステル、脂肪酸及び多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を更に含有する、<1>〜<14>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<16> 前記脂肪酸エステルは、ジグリセリン脂肪酸エステル及びグリセリン脂肪酸エステルの少なくとも一方であり、前記多価アルコールはポリエチレングリコールである、<15>に記載の抗菌性材料。
<17> 前記表面部における前記添加剤の含有率は、前記分子Aに対して20質量%〜500質量%である、<15>又は<16>に記載の抗菌性材料。
<18> 前記表面部は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を更に含有する、<1>〜<17>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<19> 前記表面部は、メタノールに対する不溶分を前記分子Aに対して5質量%以下含む、<1>〜<18>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<20> 前記分子Aの量が2mg/m2以上である<1>〜<19>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<21> 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置され、グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部と、を備え、前記表面部が海部と島部とを有する海島構造を有する、抗菌性材料。
<22> 走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される前記島部の円相当径が0.1μm〜1000μmである、<21>に記載の抗菌性材料。
<23> 走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される前記島部の個数が1個/mm2以上である、<21>又は<22>に記載の抗菌性材料。
<24> 前記表面部が結晶性化合物(但し、成分Aの塩を除く)を含み、前記結晶性化合物の濃度は前記島部よりも前記海部の方が低い、<21>〜<23>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<25> 前記結晶性化合物の結晶化熱量が0.1J/g以上である、<24>に記載の抗菌性材料。
<26> 前記結晶性化合物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び硫酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、<24>又は<25>に記載の抗菌性材料。
<27> 前記表面部の固形分中における前記成分Aの含有量が70質量%以上である、<21>〜<26>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<28> 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置され、グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部と、を備え、前記表面部において、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される円相当径が100μm超1000μm以下である島部の個数が10個/100mm2以下、かつ走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される円相当径が1μm〜100μmである島部の個数が10個/mm2以下である、抗菌性材料。
<29> 走査型電子顕微鏡(SEM)により撮像面積100mm2、50倍の倍率で前記表面部を観察したとき、円相当径が100μm超1000μm以下である島部の個数が10個/100mm2以下、かつ円相当径が1μm〜100μmである前記島部の個数が10個/mm2以下である、<28>に記載の抗菌性材料。
<30> 前記表面部の固形分中における前記成分Aの含有量が80質量%以上であり、前記表面部の固形分中における結晶化熱量が0.1kJ/mol以上の結晶性化合物の含有量が1質量%以下である、<28>又は<29>に記載の抗菌性材料。
<31> 基材を更に備え、前記表面部は前記基材の少なくとも一方の面に配置された、<1>〜<20>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<32> 前記基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を含む高分子フィルムである、<21>〜<31>のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
<33> 前記基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を含む容器形状の成形体である、<31>又は<32>に記載の抗菌性材料。
<34> 前記基材が、ポリエチレンテレフタレートを含む容器形状の成形体である、<33>に記載の抗菌性材料。
<35> <1>〜<34>のいずれか1項に記載の抗菌性材料を備える、鮮度保持用材料。
<36> 物品の梱包に用いられる、<35>に記載の鮮度保持用材料。
<37> 前記表面部が、前記物品との対向面である、<36>に記載の鮮度保持用材料。
<38> <1>〜<34>のいずれか1項に記載の抗菌性材料を含み、平均厚さが10μm〜120μmである抗菌性フィルム。
<39> 前記表面部と前記表面部以外の層を少なくとも備え、前記表面部の融点が、前記表面部以外の層の融点よりも5℃以上低い<38>に記載の抗菌性フィルム。
<40> <38>又は<39>に記載の抗菌性フィルムを含む鮮度保持用包装体。
<41> 物品の梱包に用いられる<40>に記載の鮮度保持用包装体。
<42> 前記表面部が、前記物品との対向面を有する<41>に記載の鮮度保持用包装体。
<43> グアニジンに由来する構造を有する分子Aと、脂肪酸エステル、脂肪酸及び多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤と、を少なくとも含有する抗菌性組成物。
<44> 前記添加剤はジグリセリン脂肪酸エステルであり、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を更に含有する<43>に記載の抗菌性組成物。
<45> グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aと、結晶性化合物と、溶媒とを含む、コート液。
<46> 前記溶媒の沸点が50℃以上である、<45>に記載のコート液。
<47> 前記結晶性化合物の結晶化熱量が0.1J/g以上である、<45>又は<46>に記載のコート液。
<48> 前記結晶性化合物が、塩化ナトリウム、塩化カリウム、及び硫酸ナトリウムからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、<45>〜<47>のいずれか1つに記載のコート液。
<49> 前記結晶性化合物に対する前記成分Aの質量比(成分A/結晶性化合物)が0.1〜100である、<45>〜<48>のいずれか1項に記載のコート液。
<50> グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aと、溶媒とを含み、結晶化熱量が0.1kJ/mol以上の結晶性化合物の含有量が固形分に対して1質量%以下である、コート液。
<51> 前記溶媒の沸点が50℃以上である、<50>に記載のコート液。
<53> 前記表面部の、1.2mm2の面積中に存在する円相当径50μm以上の表面欠陥が10個以下である、<52>に記載の抗菌性材料の製造方法。
<54> 前記分子Aの量が0.2mg/m2〜200mg/m2である、<52>又は<53>に記載の抗菌性材料の製造方法。
<55> 前記塗布液は、更に、20℃での比誘電率が4〜55であり、かつ沸点が30℃〜300℃の範囲を満たす少なくとも1種の溶媒と、水と、を含む、又は、前記溶媒を含みかつ水を含まない、<52>〜<54>のいずれか1項に記載の抗菌性材料の製造方法。
<56> 前記溶媒が、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールであり、前記塗布液中における前記溶媒と前記水との質量比(溶媒/水)が、100/0〜30/70であり、前記塗布液中における前記分子Aの含有量が、塗布液全質量に対して0.01質量%〜15質量%である、<55>に記載の抗菌性材料の製造方法。
<57> 前記塗布液中における前記溶媒と前記水との質量比(溶媒/水)が、85/15〜50/50である、<55>又は<56>に記載の抗菌性材料の製造方法。
<58> 少なくとも前記表面部を温度50℃〜120℃で乾燥させる工程を含む、<52>〜<57>のいずれか1項に記載の抗菌性材料の製造方法。
<59> 前記乾燥させる工程は、前記表面部に、風速40m/分〜400m/分、温度50℃〜120℃の温風を吹き付ける工程である、<58>に記載の抗菌性材料の製造方法。
<60> 前記塗布液を塗布する前の前記基材に対して表面処理を行う工程を更に含む、<52>〜<59>のいずれか1項に記載の抗菌性材料の製造方法。
<61> 前記表面部の固形分中における前記分子Aの含有量が80質量%以上である、<52>〜<60>のいずれか1項に記載の抗菌性材料の製造方法。
<62> 前記分子Aは、重量平均分子量が300以上5,000以下である、<52>〜<61>のいずれか1項に記載の抗菌性材料の製造方法。
<63> 前記分子Aが、プロタミンの分解物である、<52>〜<62>のいずれか1項に記載の抗菌性材料の製造方法。
<64> 前記分子Aの量が0.2mg/m2〜5mg/m2である、<52>〜<63>のいずれか1項に記載の抗菌性材料の製造方法。
<65> グアニジンに由来する構造を有する分子Aと、脂肪酸エステル、脂肪酸及び多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを、水、有機溶剤又は水と有機溶剤の混合液に混合し、溶解又は分散させた後に乾燥する抗菌性組成物の製造方法。
<66> グアニジンに由来する構造を有する分子Aと、ジグリセリン脂肪酸エステルとを、水、有機溶剤又は水と有機溶剤の混合液に混合し、溶解又は分散させ、次いで、前記分子Aと前記ジグリセリン脂肪酸エステルとの混合物を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子に付着させた後に乾燥する抗菌性組成物の製造方法。
<67> 水と有機溶剤との含有比率(水/有機溶剤)が体積比で100/0〜90/10である液体にグアニジンに由来する構造を有する分子Aを溶解させ、前記分子Aを溶解させた溶液にジグリセリン脂肪酸エステルを溶解又は分散させ、次いで、前記分子Aと前記ジグリセリン脂肪酸エステルとの混合物を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子に付着させることにより、前記分子A及び前記ジグリセリン脂肪酸エステルと前記高分子との含有比率(分子A及びジグリセリン脂肪酸エステル/高分子)が質量比で1/99〜20/80のペレットを作製した後に、前記ペレットを乾燥する抗菌性組成物の製造方法。
本開示の第二の形態は、抗菌性を維持しつつ、基材の性質を有する抗菌性材料及び鮮度保持用材料を提供することを目的とする。更に、本開示の第二の形態は、抗菌性と基材の性質との両立が可能なコート液を提供することができる。
本開示の第三の形態は、表面部の平滑性、特に微小領域の平滑性(例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)で撮像面積100mm2、50倍の倍率で表面部を観察した場合の平滑性)に優れる抗菌性材料及び鮮度保持用材料を提供することを目的とする。更に、本開示の第三の形態は、平滑性に優れる表面部を形成可能なコート液を提供することができる。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
また、本明細書において、「フィルム」は、一般的に「フィルム」と呼ばれているもの(例えば厚さ100μm以下のもの)だけでなく、一般的に「シート」と呼ばれているもの(例えば厚さ100μm以上のもの)をも包含する概念である。
また、「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
〔抗菌性材料〕
本実施形態の抗菌性材料は、グアニジンに由来する構造を有する分子A(以下、単に「分子A」とも称する)を含む表面部と、を備え、前記表面部における分子Aの量が0.2mg/m2〜300mg/m2である。分子Aとしては、例えば、プロタミン及びその分解物が挙げられる。
また、本実施形態の抗菌性材料は、基材を更に備え、表面部は基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に配置されていることが好ましく、表面部が基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に配置された積層体の形態であってもよい。
「表面部における分子Aの量(以下、「分子Aの表面量」とも称する)が、0.2mg/m2〜300mg/m2である」とは、面積1m2あたりの量に換算した場合の分子Aの表面量が0.2mg〜300mgであることを意味する。したがって、必ずしも表面の面積が1m2以上であることに限定されない。
分子Aの表面量を0.2mg/m2以上とすることで、抗菌剤としての機能が発現されやすくなる。
分子Aの表面量を300mg/m2以下とすることで、べたつきが抑制される。これにより、操作性が向上する。
したがって、本実施形態によれば、抗菌性が高くかつ操作性が良好な抗菌性材料が得られる。
このような本実施形態の抗菌性材料を、例えば、物品の梱包に用いる、容器形状等への成形に用いる、又は容器形状等の成形体として用いることにより、物品(梱包される物品又は成形体に収納される物品)及び成形体が清浄に保たれ、特に物品が食品の場合はその食品の鮮度が保持される。また、分子Aは、比較的安全な抗菌剤であるとされているため安全性も確保されると期待される。
例えば、生鮮食品が梱包されたパッケージでは、パッケージ内面に生鮮食品から出たドリップが付着しやすい。野菜の場合は、断面から溶出されるドリップに加えて、呼吸に伴う蒸散によって生じた水分の凝集による結露が発生する。鮮魚、精肉の場合は、断面から溶出されるドリップの割合が大きいが、特に冷凍状態から解凍したときには冷凍時に水分膨張による細胞壁の破壊が起きるので上記ドリップの量は多くなる。
このドリップは多くの栄養を含むので菌が増殖しやすい。すなわち、ドリップはパッケージ内部で最も腐敗しやすいと考えられる。
したがって、本実施形態の抗菌性材料によれば、前述のような生鮮食品を梱包するパッケージに用いた場合にも、パッケージ内面で接触しているドリップ中の菌の増殖を抑制する効果を有する。
カビの発生を抑制する観点からは、分子Aの表面量は、0.5mg/m2〜30mg/m2であることが好ましく、より好ましくは1.0mg/m2〜20mg/m2である。
また、分子Aの表面量は、2mg/m2以上であってもよい。
−表面洗浄法−
抗菌性材料の分子Aを含む表面部(例えば塗布膜の表面)を、水などで抽出した後、その抽出液を公知のLC(液体クロマトグラフィー)を用いて分析することで、抽出液中に含まれる分子Aを定量することができる。この定量値から抗菌性材料の「分子Aの表面量」(mg/m2)を算出することができる。
−全反射減衰法による赤外分光法(ATR−IR法)−
抗菌性材料の一部を切り出し、測定用サンプルを準備する。測定用サンプルについて、ATR−IR法により、分子Aに由来するピーク強度を測定する。
分子Aの表面量と、上記ピーク強度とは相関があるため、上述の蛍光X線分析と同様に、塗布液の濃度、量等を変えて基材上に様々な分子Aの濃度の塗布膜を形成したときの、上記ピーク強度を予め測定しておくことで、そのピーク強度から、分子Aの表面量(mg/m2)を算出することができる。
ここで、表面欠陥とは、周囲に対し分子Aが付与されていない部分(抜け部分)、他の表面に比べて分子Aの付与量が極めて少ない部分、及び、分子A成分が凝集した部分のことをいう。例えば、基材上に分子Aを含む塗布液を塗布することで抗菌性材料を作製する場合には、基材上で塗布液がはじかれることで生じるはじき跡の部分(塗布膜の抜け部分)、及び、分子A成分が凝集することで形成される凸部(分子A成分の凝集物)のことを言う。この場合の表面欠陥のことを「塗布欠陥」ともいう。
「1.2mm2の面積中に存在する円相当径50μm以上の表面欠陥(以下、単に「表面欠陥」とも称する)が10個以下である」とは、表面に存在する表面欠陥の数が比較的少ないことの指標となる。
すなわち、上記表面欠陥が10個以下である抗菌性材料とは、表面における分子A分布のムラが低減された抗菌性材料であると言える。これにより、分子Aが持つ抗菌性が表面全体にわたって発現されやすくなり、結果、抗菌性材料の抗菌性がより高められると考えられる。
まず抗菌性材料の任意の3箇所を切り出し、測定用サンプル(20mm×20mm)を3つ準備する。測定用サンプルの中心部分に相当する1.2mm2の領域を、光学顕微鏡(倍率20倍)にて観察し、観察された表面欠陥の画像を画像解析装置(オリンパス株式会社製)に取り込む。次に画像解析によって表面欠陥ごとの面積を測定し、この面積値から表面欠陥ごとの円相当径を求め、これらの中から円相当径50μm以上の表面欠陥の数を測定する。
測定用サンプルごとに測定された円相当径50μm以上の表面欠陥の数を合計し、その合計値を3で割ることで平均値を求め、これを表面欠陥の数とする。
本実施形態の抗菌性材料は、分子Aを含む表面部を備える。
なお、本実施形態の抗菌性材料が後述する抗菌性不織布の場合の表面部とは、抗菌性不織布の表面から0.3μm以内の領域をいう。
表面部は、物品との対向面を有することが好ましく、物品が食品である場合、食品との接触面を有することがより好ましい。
表面部は単層であっても複数層(多層)であってもよい。
分子Aは、グアニジンに由来する構造を有しており、重量平均分子量が300以上5,000以下であってもよい。本実施形態の抗菌性材料は、重量平均分子量が300以上5,000以下でありグアニジンに由来する構造を有する分子Aを含む表面部を備え、前記表面部における前記分子Aの量が0.2mg/m2〜300mg/m2であることが好ましい。これにより、大腸菌、サルモネラ菌、及びセレウス菌の少なくとも一種の菌に対する抗菌性が高く、操作性が良好な抗菌性材料が得られる。更に、大腸菌、サルモネラ菌、及びセレウス菌以外の他の細菌(例えば、枯草菌、黄色ブドウ球菌、カンジダ菌、酵母類、乳酸菌、黒麹カビ、青カビ、リステリア、緑膿菌等)に対する抗菌性にも優れた抗菌性材料が得られやすいと考えられる。
分子Aの分子量及び分子量分布の測定は、GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)法を用いて以下の条件で行う。
装置 :ビルドアップGPCシステム(東ソー株式会社)(デガッサー/SD−8022、ポンプ/DP−8020、オートサンプラー/AS−8021、カラムヒーター/CO−8020、示差屈折計/RI−8020)
移動相:0.1M NaNO3水溶液
カラム:TSKgel G3000PWXL−CP(7.8mmID×30cm) 2本(東ソー株式会社)
流速 :1.0mL/分
試料 :移動相溶剤を用いて4mg/mL濃度の試料溶液を作成し、100μL注入
検出器:RI(示差屈折計)、polarity=(+)
カラム温度 :40℃
分子量校正: 標準ポリエチレンオキサイド(PEO)(アジレント・テクノロジー株式会社)
また、分子Aは、重量平均分子量が300以上3,000以下のグアニジンに由来する構造を有する分子A1と、重量平均分子量が3,000を超え5,000以下のグアニジンに由来する構造を有する分子A2と、を含んでいてもよい。
前記表面部における分子A1と分子A2の含有量の比としては、分子A1の含有量を100質量部とした場合に、分子A2を1質量部〜1000質量部含有することが好ましく、10質量部〜500質量部含有することがより好ましい。
分子Aが分子A1と分子A2とを含むことは、上記GPC法により得られるHPLCチャートにおいてそれぞれの分子量範囲にピークが存在することにより確認される。
前記グアニジンに由来する構造としては、特に限定されないが、下記式(G−1)により表される構造であることが好ましい。
本実施形態に係る抗菌性材料は、分子Aに含まれるグアニジンに由来する構造が塩基として働くことにより大腸菌、サルモネラ菌、及びセレウス菌の少なくとも一種の菌に対する抗菌性を有すると推測される。
従って、式(G−1)に含まれるR1〜R4は、式(G−1)により表される構造が塩基として働く限り、どのような置換基であってもよいが、抗菌性の観点から、それぞれ独立に水素原子又はアルキル基であることが好ましく、いずれもが水素原子であることがより好ましい。上記アルキル基としては、炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
分子Aは、アミノ酸であることが好ましく、アルギニンに由来する構造を有するアミノ酸であることがより好ましく、アルギニンに由来する構成単位を含むペプチドであることが更に好ましい。上記アルギニンは、公知の置換基を有するアルギニンであってもよいが、無置換のアルギニンであることが好ましい。
上記アルギニンに由来する構造、及び、上記アルギニンに由来する構成単位には、グアニジンに由来する構造が含まれる。
本開示において、アミノ酸とは、1分子内にアミノ基(−NH2)とカルボキシ基(‐COOH)とを有する化合物をいう。
本開示において、ペプチドとは、2個〜100個のアミノ酸分子がペプチド結合により連結してなる化合物をいう。
分子Aにおける、前記グアニジンに由来する構造に含まれる塩基性基の当量は、50g/eq〜500g/eqであることが好ましく、80g/eq〜350g/eqであることがより好ましく、100g/eq〜250g/eqであることが更に好ましい。
前記グアニジンに由来する構造に含まれる塩基性基とは、前記グアニジンに由来する構造に含まれる基であって、ACD pKa DB ver.12.0 により計算される共役酸のpKaが11〜14である官能基をいう。
分子Aにおける、前記グアニジンに由来する構造に含まれる塩基性基の当量とは、1モル量の前記塩基性基に対する分子Aの質量をいう。
前記塩基性基の当量は、分子Aの構造解析を行うことにより算出される。
分子Aは、プロタミン又はプロタミンの分解物であってもよい。プロタミンの分解物は、プロタミンの加水分解物であってもよい。
プロタミンは安全性に優れた抗菌材であることが知られているため、分子Aがプロタミン又はプロタミンの分解物であれば、安全性に優れた抗菌性材料が得られやすいと考えられる。
タンパク質分解酵素を用いたプロタミンの分解方法としては、例えば下記の方法が挙げられる。
プロタミンに脱イオン水を加え、水酸化ナトリウム又は塩酸を加えてpHを酵素の至適pHに調整する。酵素の至適温度に加温した後、酵素を添加して、撹拌しながら酵素反応を行う。反応終了後、反応液を80〜100℃に加温して5〜60分間加熱失活させpHを中性域となるように調整後、反応液を凍結乾燥し、プロタミン分解物を得ることができる。
プロタミンの重量平均分子量(Mw)は、熱成形加工時のダイスからの揮発を抑える等の観点から、500以上が好ましく、1000以上がより好ましく、4000以上が更に好ましく、5000を超えることが特に好ましく、8000を超えることがより一層好ましい。上限は、操作性を向上させる観点、熱成形加工時における金属への付着及び焦げ付きを抑える観点等から、10万以下が好ましく、5万以下がより好ましく、1.5万以下が更に好ましい。
酵素により加水分解する場合には、基質に対して、酵素0.001〜10%を添加し、溶液を使用される酵素の至適pHとして加水分解する。
本実施形態に係る分子Aは、上述のようにプロタミンの分解により製造してもよいし、その他の製造方法により製造してもよい。
その他の製造方法としては、一般的な有機化学的液相又は固相法による合成方法等が挙げられる。分子Aがペプチドである場合には、公知のペプチド合成法や遺伝子工学手法により製造されてもよい。
本開示において、固形分とは、表面部に含まれる揮発性成分を除く成分の合計量をいう。表面部に含まれる揮発性成分としては、例えば、後述する分子Aを含有する塗布液に含まれる溶媒、水等が挙げられる。
なお、抗菌性を高める観点から、上記表面部(分子Aを含有する塗布液を乾燥することで形成した層)には、結着成分(添着成分)を実質的に含まないことが好ましい。実質的に含まないとは、表面部の固形分中における結着成分の含有量が好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下を意味する。
表面部は、本発明の目的を損なわない範囲内において、分子A以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキサイド、モノ若しくはジグリセライド、ポリビニルアルコール(PVA)等の水溶性樹脂;分子A以外の抗菌剤;及び防曇剤;等が挙げられる。
その他の成分は、1種類単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
表面部は、防曇性をより高める点から、更に防曇剤を含んでいてもよい。
防曇剤としては、特に限定されず、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系の防曇剤が挙げられ、例えば、ノニオン系、カチオン系、アニオン系、両性系の界面活性剤が挙げられる。防曇剤は、中でもノニオン系及びカチオン系の防曇剤が好ましく、ノニオン系の防曇剤がより好ましい。
市販品の例としては、理研ビタミン株式会社製のリケマールA(シュガーエステル)、ポエム DL−100(ジグリセリンモノラウレート)、ポエム DO−100V(ジグリセリンモノオレート)等が挙げられる。
表面部において分子Aの含有量が0.1質量%超であることにより、表面部の抗菌効果が良好に発現される。
また、表面部において分子Aの含有量が10質量%以下であることにより、分子Aの使用量が少量に抑えられるとともに、べたつきが抑制され、操作性に優れる傾向にある。更に、表面部において分子Aの含有量が10質量%以下であることにより、表面部が後述する高分子を含む場合に、高分子と比較して低分子体である分子Aと、高分子との相溶性に優れ、高分子の性質が損なわれることなく好適に発揮され、例えば、表面部をシール層として用いる際、表面に存在する分子Aの欠落が抑制されるためシール強度に優れる傾向にある。
表面部の占める割合が5%以上であることにより、抗菌性を十分かつ安定に発現でき、かつ、表面部をシール層として用いる場合、シール強度に優れる傾向にある。また、表面部の占める割合が50%以下であることにより、分子Aの使用量を削減することができる。
抗菌性材料の表面部の一部を切り出し測定用サンプルを準備する。測定用サンプルについて、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製:ZSX PrimusII)を用いて、表面部中の分子AのN原子に基づくX線強度(kcps)、表面部中の分子Aの塩(例えば、プロタミン塩酸塩)に由来の塩素原子に基づくX線強度(kcps)等を測定する。
上記X線強度と、表面部中の分子Aの含有量とは相関があるため、表面部を構成する材料(高分子、分子A等)の配合比を変えて表面部を作製したときの上記X線強度を予め測定しておくことで、そのX線強度から、表面部中における分子A含有量(質量%)を算出することができる。
以下に、蛍光X線分析の測定条件の一例を示す。
仕様 X線管:エンドウィンド型Rhターゲット4kW
1次X線フィルタ:4種(Al、Ti、Cu、Zr)
スペクトル:N−KA
ターゲット:Rh
印加電圧、電流:30kV、100mA
分光結晶:RX45
速度(deg/min):80〜350
時間(sec):0.5〜5
ピーク(deg):33.694
走査角度(deg):26.694〜40.694
ステップ(deg):0.05〜0.20
本実施形態の抗菌性材料における表面部は、脂肪酸エステル、脂肪酸及び多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を更に含有することが好ましい。これにより、抗菌性材料における抗菌性を更に向上させることができ、かつ分子Aの金属への付着及び分子Aの焦げ付きを抑制することができる。
添加剤である脂肪酸エステルとしては、脂肪酸と、アルコールとが脱水縮合して得られるエステルであればよく、脂肪酸と、多価アルコールとが脱水縮合して得られるモノエステルであることが好ましく、脂肪酸と、グリセリン(モノグリセリン)又はジグリセリンとが脱水縮合して得られるモノエステルであることがより好ましい。
一般式(II)中のRの好ましい構成は、一般式(I)中のRと同様である。
添加剤である脂肪酸としては、1価のカルボン酸であり、炭素原子が8個〜22個であることが好ましく、12個〜18個であることがより好ましく、16個又は18個であることが更に好ましい。添加剤である脂肪酸の具体例としては、前述の脂肪酸エステルの合成に用いる脂肪酸と同様である。
添加剤である多価アルコールとしては、ヒドロキシル基を2つ以上有するアルコールであり、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等の脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水添ビスフェノールA等の脂環式ジオールなどの2価のアルコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの3価以上のアルコールが挙げられる。
本実施形態の抗菌性材料における表面部は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とも称する)及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を更に含有することが好ましい。これらの高分子は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、表面部が含有し得る高分子の好ましい構成としては、後述する基材が含有し得る高分子と同様である。
表面部は、メタノールに対する不溶分を分子Aに対して、3質量%以下含むことがより好ましく、1質量%以下含むことが更に好ましい。なお、抗菌性材料の原料として用いる分子Aの溶液にメタノールに対する不溶分が含まれている場合、遠心分離等によりメタノールに対する不溶分を除去してもよい。
本実施形態の抗菌性材料は、基材を備えていてもよい。基材は高分子を含有することが好ましい。基材は、単層であっても複数層であってもよい。また、表面部と基材との間に中間層があってもよい。
高分子としては特に制限はないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート(以下、「PET」とも称する)、エチレンプロピレン共重合体等のポリオレフィン、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、セロハン、レーヨン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミド、ポリアクリル、ポリスルホン、ポリエーテル、ポリウレタン、セルロース、トリアセチルセルロース、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルホン、ナイロンが挙げられる。これらの高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
ポリエチレンとしては、例えば、従来公知の手法で製造されている、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレンを使用することができる。
ポリプロピレンとしては、例えば、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレンが挙げられる。アイソタクティックポリプロピレンは、ホモポリプロピレンであっても、プロピレン・炭素数2〜20のα−オレフィン(但し、プロピレンを除く)ランダム共重合体であっても、プロピレンブロック共重合体であってもよい。
ポリメチルペンテンとしては、例えば、4−メチル−1−ペンテンの単独重合体;4−メチル−1−ペンテンから導かれる構成単位と、炭素原子数2〜20のα−オレフィン(但し、4−メチル−1−ペンテンを除く。)から導かれる構成単位と、を有する共重合体;が挙げられる。
ポリエチレンテレフタレート(PET)としては、テレフタル酸又はそのエステル誘導体を含む芳香族ジカルボン酸と、エチレングリコールを含むジオールとから得られるポリエチレンテレフタレートが挙げられる。
PETとしては、容器形状等への成形性の観点から、非晶性ポリエチレンテレフタレート(A−PET)が好ましい。
ポリスチレンとしては、例えば、スチレン系単量体(例えば、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、イソプロピルスチレン、ジメチルスチレン、パラメチルスチレン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン)の単独重合体;スチレン系単量体と、スチレン系単量体と共重合可能な単量体との共重合体(以下、「変性ポリスチレン」とも称する);が挙げられる。
スチレン系単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、ビニル単量体(例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、無水マレイン酸、ブタジエン)が挙げられる。
変性ポリスチレンとしては、例えば、アクリロニトリル−スチレン共重合体(AS)、メタクリル酸メチル−スチレン共重合体、アクリロニトリルーメタクリル酸メチル−スチレン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル−アクリルゴム−スチレン共重合体(AAS)、アクリロニトリル−エチレンプロピレンジエンゴム−スチレン共重合体(AES)が挙げられる。
基材は、本発明の目的を損なわない範囲内において、高分子以外のその他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、例えば、分散剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、スリップ剤、核剤、ブロッキング防止剤、帯電防止剤、防曇剤、顔料、染料、その他の抗菌剤が挙げられる。
その他の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
その他の成分の含有量は、抗菌性材料の総量100質量%に対し、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましく、5質量%以下であることが更に好ましい。
その他の抗菌剤としては、天然物由来の抗菌剤、合成系抗菌剤が挙げられる。
天然物由来の抗菌剤としては、例えば、ヒノキ科からの抽出物(ヒノキチオールなど)、キトサン、ワサビエキス、ワサビ、イソチオシアン酸アリル、ゲラニオール、柿渋、ヒバ精油、カテキン、木酢液、シソの葉、ニンニク、ショウガビワ種が挙げられる。
合成系抗菌剤としては、例えば、イミダゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、フェノール系化合物が挙げられる。
また、本実施形態の抗菌性材料において、基材は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を含む容器形状の成形体であることも好ましい。
基材が容器形状の成形体である場合、基材はポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことがより好ましい。
本実施形態の抗菌性材料の好ましい形態として、具体的には、基材として高分子フィルム(以下、「基材フィルム」とも称する)を用いた抗菌性フィルム、基材として成形体を用いた抗菌性成形体、基材として不織布を用いた抗菌性不織布が挙げられる。
抗菌性フィルムとしては、例えば、包装用フィルム、包装用ラミネートフィルム、成形用フィルムが挙げられる。なお、抗菌性フィルムは、無延伸フィルム、一軸又は二軸延伸フィルムであってもよく、単層であっても、複数層(多層)で構成されていてもよい。
基材フィルム(基材)に含まれる高分子としては、前述で例示した高分子が挙げられるが、中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子が好ましい。
抗菌性フィルムが成形用フィルムである場合には、基材フィルムは、容器形状等への成形性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)を含むことが好ましい。
これらの高分子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
なお、抗菌性フィルムが複数層の場合、抗菌性フィルムの平均厚さ(以下、単に「厚さ」とも称する)は、複数層全体の厚さである。また、抗菌性フィルムが表面部と表面部以外の層を備える場合、複数層全体に対する表面部の厚さは、5%〜50%であることが好ましく、10%〜40%であることがより好ましく、15%〜30%であることが更に好ましい。
基材フィルムAの厚さの比率は、抗菌性フィルム全体の厚さに対して、好ましくは10%〜80%、より好ましくは20%〜50%である。
シール層の厚さは、好ましくは10μm〜100μm、より好ましくは20μm〜80μm、更に好ましくは25μm〜70μmである。
上記態様の場合、シール層の上に分子Aを含む表面部が配置されるため、かかる表面部が、物品(好ましくは生鮮食品)との対向面となることが好ましい。
特に、成形用フィルムが真空成形用フィルムである場合、真空成形用フィルムの厚さは、好ましくは50μm〜800μm、より好ましくは100μm〜700μm、更に好ましくは200μm〜600μmである。この場合、真空成形用フィルムの基材フィルムとしては、後述する(2)の態様の基材フィルム(PETを含むフィルム(好ましくはPETフィルム))が好ましい。
上記態様の場合、分子Aを含む表面部が、容器成形後に容器の内面となることが好ましい。すなわち、分子Aの表面量が0.2mg/m2〜300mg/m2である表面部が、物品(好ましくは生鮮食品)との対向面となることが好ましい。
(1)基材フィルムがポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を含み、基材フィルム側にPETを含むフィルム(好ましくはPETフィルム)を貼り合わせた態様。
上記(1)の態様では、PETを含むフィルム(好ましくはPETフィルム)を貼り合わせたことにより、容器形状等への成形性に特に優れる。
(2)基材フィルムがPETを含む(好ましくはPETフィルムである)態様。
上記(2)の態様の基材フィルムでは、容器形状等への成形性に特に優れ、中でも真空(圧空)成形による容器形状への成形性に優れる。
なお、上記(2)の態様の基材フィルムを備える成形用フィルムは、基材フィルムとしてのPETを含むフィルム(好ましくはPETフィルム)に、分子Aを含有する塗布液を直接塗布することで得られる。
(3)基材フィルムが、分子Aを含む表面部の側から順に、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリメチルペンテンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を含むフィルムと、PETを含むフィルム(好ましくはPETフィルム)とが積層された多層フィルムである態様。
上記(3)の態様の基材フィルムでは、容器形状等への成形性に特に優れる。
ここで、「表面部の融点が、表面部以外の層の融点よりも5℃以上低い」とは、基材が複数層ある場合には、各層の融点と、表面部の融点との融点差のうち、少なくとも1つの融点差が5℃以上であることを意味する。例えば抗菌性フィルムが、表面部/中間層/基材の3層構造である場合、「(基材の融点)−(表面部の融点)」、及び、「(中間層の融点)−(表面部の融点)」をそれぞれ算出し、少なくとも一方の融点差が5℃以上であればよい。
なお、各層の融点と、表面部の融点との融点差がいずれも5℃以上であることが好ましい。
表面部の融点が、表面部以外の層の融点よりも5℃以上低いと、表面部を例えばシール層として用いて、抗菌性フィルム単体で製袋する場合に、シールバーによって熱をかけられる表面部以外の層よりもシール層(表面部)の方が早く融解しやすくなる。これにより、ヒートシールの際に、表面部以外の層が溶けにくいため表面部以外の層がフィルム引き取りの張力で伸びること、及び、表面部以外の層がシールバーに付着することが抑制され、ヒートシール(熱融着)を良好に行うことができると考えられる。
したがって、「表面部の融点が、表面部以外の層の融点よりも5℃以上低い」との要件を満たす抗菌性フィルムは、ヒートシール性、特に自動製袋機でのヒートシール性(自動製袋機適性)に優れている。
ここでいう自動製袋機とは、縦型ピロー包装機、横型ピロー包装機、三方シール包装機、四方シール包装機等をいう。
なお、[表面部以外の層の融点−表面部の融点]の上限値に特に制限はなく、例えば30℃以下であってもよく、20℃以下であってもよい。
なお、同一系の樹脂ラインアップで得られる樹脂の最高の融点がポリエチレンの場合は125℃〜130℃程度、ポリプロピレンの場合は155℃〜160℃程度である。
表面部及び表面部以外の層の原料(5mg)を用いて、これを測定用サンプルとする。そして、JIS K 7121(1987)に準拠し、示差走査熱量計(DSC)を用い、毎分10℃の加熱速度で200℃まで昇温して10分間保持し、その後0℃まで毎分10℃の冷却速度で冷却して、再度毎分10℃の加熱速度で200℃まで昇温する際の融解曲線を測定し、2回目の昇温で発現した融解ピークのうち、最も大きいピーク強度を表面部及び表面部以外の層の融点とする。
鮮度保持ラミネートフィルムは、本実施形態の抗菌性フィルムと、他のプラスチックフィルムとを貼り合わせて得られる。例えば、本実施形態の抗菌性フィルムと、例えばナイロン、PETフィルムとを組み合わせることにより融点差を更に広げて自動製袋機適性を向上させることができる。また他のプラスチックフィルムに印刷を施し、印刷層を抗菌性フィルムとの接着面に持ってくることで裏印刷として印刷を美麗にかつ印刷用インキの食品への移行、食品接触面への裏移りを抑えることができる。
抗菌性成形体としては特に制限はないが、例えば、容器形状の成形体や、ロボッドや自動車などの部品形状の成形体が挙げられる。
抗菌性成形体としては、基材が成形体(容器形状の成形体、部品形状の成形体等)であることが好ましい。
成形体(基材)に含まれる高分子としては、前述で例示した高分子が挙げられるが、中でもポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子が好ましく、ポリエチレンテレフタレートがより好ましい。
例えば、容器形状の成形体は、前述の成形用フィルムを容器形状の成形体に成形することにより得ることができる。容器形状の成形体を成形するための成形用フィルムとしては、上記(2)の態様の基材フィルムを備える成形用フィルムが好ましい。
また、容器形状の成形体は、成形用フィルムの基材フィルムを容器形状に成形した後に、分子Aを含有する塗布液を容器形状に成形した基材フィルム(成形体)の上に塗布することによっても得ることができる。なお、抗菌性成形体の基材は市販品であってもよい。
抗菌性不織布としては特に制限はないが、例えば、ドリップシートとして用いられる抗菌性不織布(ドリップシート用不織布)、マスク、エアフィルター等として用いられる抗菌性不織布が挙げられる。なお、抗菌性不織布は、単層であっても、複数層(多層)で構成されていてもよい。
不織布に含まれる高分子としては、前述で例示した高分子と同様のものが挙げられる。
抗菌性不織布がドリップシート用不織布の場合、ドリップシート用不織布の厚さは、好ましくは50μm〜800μm、より好ましくは100μm〜700μm、更に好ましくは200μm〜600μmである。
上記態様の場合、例えば生鮮食品が梱包されたパッケージでは、生鮮食品から出たドリップがパッケージ中を移動しやすいため、パッケージのいずれの内面も生鮮食品との対向面となり得る。このため、分子Aを含む表面部は、ドリップシート用不織布のいずれの面に形成されていてもよい。
本実施形態の抗菌性材料は、例えば、テープ、粘着テープ、マスキングテープ、マスキングフィルム、仮着性フィルム、プラスチック封筒、イージーオープン包装袋、自動包装フィルム、ショッピングバック、スタンディングバック、透明包装箱、建材、貼合用フィルム、農業用フィルム、鮮度保持用材料(食品包装資材、野菜包装資材、果物包装資材、精肉包装資材、魚介類等の水産物包装資材、加工食品包装資材などの包装資材;草花包装資材;食品、野菜(カット野菜等)、果物、精肉、水産物、加工食品などの容器;そば、ラーメン、弁当等の容器)、電子部品包装資材、機械部品包装資材、穀物包装資材、医療用フィルム、医療用テープ、細胞培養用パック等として幅広く利用される。
特に抗菌性材料が抗菌性不織布の場合、フィルター(空調、自動車、家電等)、食品用トレーマット、マスク、座席用シートカバー、テーブルクロス、カーペット等にも利用することができる。
本実施形態の鮮度保持用材料は、本実施形態の抗菌性材料を備える。
すなわち、本実施形態の鮮度保持用材料は、本実施形態の抗菌性材料(例えば、抗菌性フィルム、抗菌性成形体、抗菌性不織布)を用いて得られる鮮度保持用材料である。これにより、抗菌性が高くかつ操作性が良好な鮮度保持用材料が得られる。
上記実施形態の鮮度保持用材料は、物品の梱包に用いられることが好ましい。
特に本実施形態の鮮度保持用材料は、抗菌性が高い抗菌性材料を備えるため、例えば生鮮食品(野菜、果物、精肉、鮮魚、加工食品等)、草花及び加工製品の鮮度を保持するための包装資材(例えば包装袋)、容器として好適に用いることができる。
包装資材としての包装袋は、例えば抗菌性材料(例えば抗菌性フィルム)の抗菌作用を有する面(分子Aを含む表面部)同士が対向するように、上記抗菌性材料を折り曲げ、又は抗菌性材料を少なくとも2つ以上重ね合わせた後、公知の方法により所定の部分を熱融着(ヒートシール)することで得ることができる。
これにより、物品の表面が清浄に保たれ、特に物品が食品の場合はその鮮度が保持される。
本実施形態の鮮度保持用包装体は、本実施形態の抗菌性フィルムを備える。
すなわち、本実施形態の鮮度保持用包装体は、本実施形態の抗菌性フィルムを用いて得られる包装体である。これにより、抗菌性が高く、かつべたつきが抑制された鮮度保持用包装体が得られる。
鮮度保持用包装体としては特に制限はないが、例えば、包装袋、包装容器が挙げられる。
特に本実施形態の鮮度保持用包装体は、抗菌性が高い抗菌性フィルムを備えるため、例えば生鮮食品(野菜、果物、精肉、鮮魚、加工食品等)、草花及び加工製品の鮮度を保持するための包装体(例えば包装袋、包装容器)として好適に用いることができる。
本実施形態の鮮度保持用包装体は、前述の抗菌性フィルムを用いて公知の方法により、例えば包装袋、容器形状に成形することで製造することができる。
鮮度保持用包装体が包装袋の場合、例えば、抗菌性フィルムの抗菌作用を有する面(つまり層(A))同士が対向するように上記抗菌性フィルムを折り曲げ、又は抗菌性フィルムを少なくとも2つ以上重ね合わせた後、公知の方法により所定の部分を熱融着(ヒートシール)することで得ることができる。
鮮度保持用包装体が包装容器の場合、例えば、抗菌性フィルムを公知の方法により容器形状に成形することで包装容器を得ることができる。
また、容器形状の成形体(市販品を含む)の内側の表面に抗菌性フィルムを接着剤等で貼り合わせた後に真空成形法又は圧空成形法で成形することで包装容器を得ることもできる。
本実施形態の抗菌性組成物は、分子Aと、脂肪酸エステル、脂肪酸及び多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤と、を少なくとも含有する。これにより、抗菌性に優れる抗菌性組成物が提供される。
また、本実施形態の抗菌性組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を更に含有していてもよい。また、抗菌性組成物が前述の高分子を含む場合、分子Aの含有量が全量に対して0.1質量%超10.0質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましく、0.4質量%以上3.0質量%以下であることが更に好ましく、0.7質量%以上2.0質量%以下であることが特に好ましい。
なお、抗菌性組成物に含有される各成分は、前述の抗菌性材料と同様であるため、その説明を省略する。
本実施形態の抗菌性組成物の製造方法1は、分子Aと、脂肪酸エステル、脂肪酸及び多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤とを、水、有機溶剤又は水と有機溶剤の混合液に混合し、溶解又は分散させた後に乾燥する方法である。
更に、上記のように乾燥して得られた混合物をポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子(例えば、ペレット状のベース樹脂)に溶媒等を用いて付着させ、分子A、添加剤及び高分子を含有する抗菌性組成物を製造してもよい。
乾燥温度及び乾燥時間としては特に限定されず、例えば、30℃〜50℃程度で1時間〜10時間乾燥させればよい。
また、本実施形態の抗菌性組成物の製造方法2は、分子Aと、ジグリセリン脂肪酸エステルとを、水、有機溶剤又は水と有機溶剤の混合液に混合し、溶解又は分散させ、次いで、前記分子Aと前記ジグリセリン脂肪酸エステルとの混合物を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子に付着させた後に乾燥する方法であってもよい。
また、本実施形態の抗菌性組成物の製造方法3は、水と有機溶剤との含有比率(水/有機溶剤)が体積比で100/0〜90/10である液体に分子Aを溶解させ、前記分子Aを溶解させた溶液にジグリセリン脂肪酸エステルを溶解又は分散させ、次いで、前記分子Aと前記ジグリセリン脂肪酸エステルとの混合物を、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子に付着させることにより、前記分子A及び前記ジグリセリン脂肪酸エステルと前記高分子との含有比率(分子A及びジグリセリン脂肪酸エステル/高分子)が質量比で1/99〜20/80のペレットを作製した後に、前記ペレットを乾燥する方法であってもよい。
前述の液体は、水(水/有機溶剤が体積比で100/0)であってもよい。
また、作製されるペレットは、分子A及びジグリセリン脂肪酸エステルと高分子との含有比率(分子A及びジグリセリン脂肪酸エステル/高分子)が質量比で2/98〜20/80であってもよく、5/95〜20/80であってもよい。
本実施形態の抗菌性組成物の製造方法2及び3において、有機溶剤としては、特に限定されず、メタノール、エタノール等のアルコールが挙げられる。
乾燥温度及び乾燥時間としては特に限定されず、例えば、40℃〜100℃程度で1日〜10日乾燥させればよい。
また、押出機内におけるスクリュの焼き付きを好適に抑制する点から、ジグリセリン脂肪酸エステルとしては、前述の一般式(I)で表される化合物が好ましく、一般式(I)で表され、かつ一般式(I)中のRがCH3(CH2)14−又はCH3(CH2)16−である化合物がより好ましく、CH3(CH2)14−である化合物が更に好ましい。
例えば、本実施形態の抗菌性材料の製造方法1は、分子Aを含有する塗布液を基材の上に塗布することにより、分子Aの量が0.2mg/m2〜300mg/m2である表面部を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」とも称する)を含む。
これにより、抗菌性が高くかつ操作性が良好な抗菌性材料を製造することができる。
塗布膜形成工程において、分子Aの量は、0.2mg/m2〜200mg/m2であることが好ましく、0.6mg/m2〜150mg/m2であることがより好ましく、0.9mg/m2〜50mg/m2であることが更に好ましく、0.9mg/m2〜30mg/m2であることが特に好ましい。また、分子Aの量は、0.2mg/m2〜5.0mg/m2であってもよい。
カビの発生を抑制する観点からは、分子Aの表面量は、0.5mg/m2〜30mg/m2であることが好ましく、より好ましくは1.0mg/m2〜20mg/m2である。
基材の上への塗布液の塗布は、上記分子Aの量となるように調整して行うことが好ましい。
また、上記表面欠陥は、表面における分子A分布のムラが少ない点で、8個以下であることがより好ましく、6個以下であることが更に好ましく、5個以下であることが特に好ましい。
また、上記表面欠陥が10個以下となるように基材上に上記塗布液を塗布する方法としては、例えば、塗布液を塗布する前の基材に対して表面処理を行った後に、塗布液を基材上に塗布する方法;基材を例えば80℃〜120℃で予め加熱した後に、塗布液を基材上に塗布する方法が挙げられる。
なお、フィルムは、無延伸フィルム、一軸又は二軸延伸フィルム、インフレーションフィルムであってもよく、単層であっても、複数層(多層)で構成されていてもよい。
基材の形態が成形体(例えば容器形状の成形体)の場合、基材としてのフィルム(基材フィルム)を公知の方法で成形することにより基材としての成形体を製造することができる。
基材の形態が不織布の場合、例えば、1種又は2種以上の上記高分子を含む繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法等の公知の方法により基材としての不織布を製造することができる。
上記基材(フィルム、成形体、不織布)は、いずれも市販品を用いてもよい。
ここで、水を含まないとは、溶媒及び水の全質量に対する水の含有量が0質量%だけでなく、実質含まない場合を包含する。具体的に、実質含まないとは、溶媒及び水の全質量に対する水の含有量が1質量%未満であることを意味する。
塗布液中に含まれる溶媒の比誘電率(20℃)、沸点、及び蒸発潜熱の好ましい範囲は以下の通りである。
溶媒の比誘電率(20℃)は、塗布液中での分子Aの溶解性を向上させる観点から、好ましくは4〜55、より好ましくは10〜50、更に好ましくは15〜48である。
溶媒の沸点は、室温での揮発を抑制する観点から、好ましくは30℃以上、より好ましくは35℃以上、更に好ましくは40℃以上である。
溶媒の沸点の上限値は、塗布液の塗布性及び塗布膜の乾燥時間を確保する観点から、好ましくは300℃、より好ましくは200℃、更に好ましくは150℃である。
したがって、溶媒の沸点は、好ましくは30℃以上300℃以下、より好ましくは35℃以上200℃以下、更に好ましくは40℃以上150℃以下である。
また、塗布膜の乾燥時間を短くするために、溶媒の揮発性の向上を志向する場合には、溶媒の沸点は、好ましくは30℃以上90℃以下、より好ましくは35℃以上85℃以下、更に好ましくは40℃以上80℃以下である。
すなわち、塗布液は、更に、20℃での比誘電率が4〜55であり、かつ沸点が30℃〜300℃の範囲を満たす少なくとも1種の溶媒と、水と、を含む、又は、溶媒を含みかつ水を含まないことが好ましい。
中でも、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールが好ましい。
また、溶媒及び水の全質量に対する水の含有量が1質量%を超える場合、塗布液中に分子Aを溶解しやすくなる。また、基材を加熱処理(好ましくは温度50℃〜120℃で加熱処理)する際に、水が残りにくくなり、基材上への塗布液の塗布性が向上する。
また、塗布液に含まれる溶媒として、例えばメタノール100質量%の溶媒を用いる場合、塗布液中に分子Aの約5質量%が不溶分として乳白色に分散することがある(時間が経てば沈降する)。この場合、その不溶分を濾過等で除去した後の塗布液を用いることが好ましい。
なお、抗菌性を高める観点から、塗布膜には、結着成分(添着成分)を実質含まないことが好ましい。実質含まないとは、塗布膜の固形分中における結着成分の含有量が好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下を意味する。
本実施形態の抗菌性材料の製造方法は、少なくとも表面部(塗布膜)を温度50℃〜120℃で乾燥させる工程(以下、「乾燥工程」とも称する)を含むことが好ましい。
乾燥工程における塗布膜の乾燥温度としては、50℃〜80℃がより好ましく、50℃〜60℃が更に好ましい。
なお、乾燥時間、乾燥雰囲気、乾燥が行なわれる圧力は、塗布液の組成、塗布量等に応じて適宜選択することができる。
塗布膜に熱を加える方法は、炉、ホットプレート、真空加熱器等を用いる方法であれば特に制限されない。
塗布膜に温風を吹き付ける方法は、気体を加熱できる装置を用いる方法であれば特に制限されない。
塗布膜に温風を吹き付ける方法の場合、温風の温度の好ましい範囲は、上記乾燥温度の好ましい範囲と同様である。
温風の風速は、風速40m/分〜400m/分が好ましく、風速50m/分〜350m/分がより好ましく、風速60m/分〜300m/分が更に好ましい。
すなわち、乾燥工程は、表面部(塗布膜)に、風速40m/分〜400m/分、温度50℃〜120℃の温風を吹き付ける工程であることが好ましい。これにより、塗布面での塗布液のはじきの発生が抑制されやすく、表面における分子A分布のムラが低減された塗布膜が得られやすくなる。
本実施形態の抗菌性材料の製造方法は、塗布液を塗布する前の基材に対して表面処理を行う工程(以下、「表面処理工程」とも称する)を更に含むことが好ましい。なお、表面処理は、基材の表面全体に対して行ってもよいし、基材の少なくとも一部に対して行ってもよい。
基材に対する表面処理方法としては特に制限はないが、コロナ処理、イトロ処理、オゾン処理、紫外線処理、薬品処理、高周波処理、グロー放電処理、プラズマ処理、レーザー処理などの表面活性化処理が挙げられる。中でも、表面における分子Aの塗れ性を上げることで分布のムラを低減し、かつ分子Aの脱落を抑制する観点から、コロナ処理が好ましい。
塗布液を塗布する前の基材に対して表面処理を行うことにより、基材上への塗布液の塗布性が向上し、表面部(塗布膜)の、1.2mm2の面積中に存在する円相当径50μm以上の表面欠陥が10個以下の抗菌性材料が得られやすくなる。
特に基材がフィルム又は容器形状の真空成形体に加工する前のシートである場合には、コロナ処理により塗布面(フィルム上又は容器形状の真空成形体に加工する前のシート上)での塗布液のはじきの発生がより抑制され、表面における分子A分布のムラがより低減されやすく、かつ分子Aの脱落を抑制することができる。これにより、抗菌性が高められた抗菌性材料が得られやすくなる。また、塗布液のはじきの発生が抑制されるため、塗布膜の膜厚ムラも低減され、極端に厚い部分がなくなる。この結果、乾燥時間も短縮されやすい。
例えば、抗菌性材料の製造方法2としては、抗菌性材料が単層フィルムで構成される場合、例えば抗菌性材料を構成する材料(例えば、分子A、添加剤、高分子等)を押出機により押出成形する方法;抗菌性材料が多層フィルムで構成される場合、例えば抗菌性材料を構成する各層の材料(例えば、分子A、添加剤、高分子等)を多層押出機により共押出しする方法;が挙げられる。
また、押出機により押出成形される上記材料等は、単体で使用するよりも、予めマスターバッチとして、抗菌性材料を構成するベース樹脂(高分子)でペレット化することが好ましい。ペレット化する方法としては、例えばペレット形状のベース樹脂(高分子)に、溶媒等を用いて分子A、添加剤等を付着させる方法が挙げられる。
なお、表面部に、コロナ処理、イトロ処理、オゾン処理、プラズマ処理などの表面処理を行ってもよい。
〔抗菌性材料〕
本実施形態の抗菌性材料は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置され、グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部と、を備え、前記表面部が海部と島部とを有する海島構造を有する。これにより、表面部中の成分Aに起因する機能である抗菌性と、基材の性質との両立が可能となる。
なお、前述の第一実施形態と共通する事項については、その説明を省略する。
なお、海部の成分Aの量及び島部の成分Aの量の大小は、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)を用いて成分Aを構成する元素の元素マッピングから判断することができる。
なお、海部と島部との界面(島部の周縁部)において、成分Aの量が他の領域よりも多い場合、当該界面を除外したときの海部の成分Aの量が、島部の成分Aの量よりも多いことが好ましい。
本実施形態の抗菌性材料は、基材の少なくとも一方の面に配置され、分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部を備える。
抗菌性材料は、抗菌剤である分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部を備える。
ポリリジン及びキトサンは、それぞれ塩であってもよい。塩としては、例えば、塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機塩及び酢酸塩、プロピオン酸塩、グルコン酸塩等の有機塩が挙げられる。
これらのポリリジンは、用途に応じて選択することが好ましい。ポリリジンは1種単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。またポリリジンは市販品であってもよい。
キトサンは1種単独で用いてもよく、2種を併用してもよい。またキトサンは市販品であってもよい。
「成分Aの表面量」は、例えば、前述の表面洗浄法により抗菌性材料から測定することができる。
なお、表面部に2種以上の成分Aが含まれている場合、「成分Aの表面量」はこれらの表面量の合計を指す。
なお、島部、海部及び島部と海部との界面における成分Aの表面量の大小は、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)を用いて成分Aを構成する元素の元素マッピングから判断することができる。
本実施形態の抗菌性材料は、結晶性化合物を含むことが好ましい。結晶性化合物は、その濃度が島部よりも海部の方が低いことが好ましい。島部及び海部における結晶性化合物の濃度の大小は、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)を用いて判断することができる。
本実施形態の抗菌性材料は、基材を備える。基材は前述の高分子を含有することが好ましい。また、基材は、何らかの性質、例えば、ヒートシール性を有するものが好ましい。
本実施形態のコート液は、分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分Aと、結晶性化合物と、溶媒とを含む。成分A及び結晶性化合物の好ましい構成については、前述の通りである。
溶媒の沸点は、コート液の塗布性及び塗布膜の乾燥時間を確保する点から、好ましくは300℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは150℃以下である。
中でも、水、並びに、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルプロパノール、及びグリセリンからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコールが好ましい。
本実施形態の抗菌性材料の製造方法は、前述のコート液を基材の上に塗布することにより、塗布膜を形成する工程(以下、「塗布膜形成工程」とも称する)と、塗布膜を乾燥させる工程(以下、「乾燥工程」とも称する)を含む。
なお、塗布膜形成工程における好ましい条件は、前述の抗菌性材料の製造方法1における塗布膜形成工程にて、塗布液をコート液と読み替え、かつ分子Aを成分Aと読み替えたものである。
また、乾燥工程により塗布膜を乾燥させることにより、塗布膜中の溶媒が揮発される。このとき、基材に塗布されたコート液に結晶性化合物が含まれている場合、溶媒の揮発により結晶性化合物の結晶が析出し、結晶性化合物の結晶化により熱量が発生する。そして、発生した熱量により、基材に塗布された成分Aが結晶性化合物の濃度が高い島部の周縁に押しやられ、島部よりも海部の結晶性化合物の濃度を小さい海島構造を形成しやすくなる。なお、乾燥工程における好ましい条件は、前述の抗菌性材料の製造方法1における乾燥工程と同様である。
本実施形態の抗菌性材料の製造方法は、コート液を塗布する前の基材に対して表面処理を行う工程(以下、「表面処理工程」とも称する)を更に含むことが好ましい。
なお、表面処理工程における好ましい条件は、前述の抗菌性材料の製造方法1における表面処理工程と同様である。
〔抗菌性材料〕
本実施形態の抗菌性材料は、基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置され、グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部と、を備え、前記表面部において、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される円相当径が100μm超1000μm以下である島部の個数が10個/100mm2以下、かつ走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される円相当径が1μm〜100μmである島部の個数が10個/mm2以下である。これにより、表面部の平滑性に優れる抗菌性材料が得られる。
島部の成分Aの量及び島部以外の成分Aの量の大小は、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)を用いて成分Aを構成する元素の元素マッピングから判断することができる。
例えば、円相当径が100μm超1000μm以下である島部の個数が10個/100mm2以下、かつ円相当径が3μm〜100μmである島部の個数が10個/mm2以下であってもよく、円相当径が100μm超500μm以下である島部の個数が10個/100mm2以下、かつ円相当径が5μm〜100μmである島部の個数が10個/mm2以下であってもよく、円相当径が100μm超300μm以下である島部の個数が10個/100mm2以下、かつ円相当径が10μm〜100μmである島部の個数が10個/mm2以下であってもよく、円相当径が10μm〜100μmである島部の個数が10個/mm2以下であってもよく、円相当径が10μm〜50μmである島部の個数が10個/mm2以下であってもよい。
本実施形態の抗菌性材料は、基材の少なくとも一方の面に配置され、分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部を備える。
成分Aの好ましい条件は、前述の第二実施形態の成分Aと同様である。
本実施形態の抗菌性材料は、表面部の固形分中における結晶化熱量が0.1kJ/mol以上の結晶性化合物の含有率が1質量%以下であることが好ましい。
結晶性化合物の好ましい条件は、前述の第二実施形態の結晶性化合物と同様である。
表面部における結晶性化合物の含有率は、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)を用いて測定することができる。
また、結晶性化合物の含有率が0質量%とは、実質的に結晶性化合物が表面部に含まれていないことを意味し、不可避的に結晶性化合物が表面部に含まれる構成は許容される。
なお、抗菌性を高める点から、表面部(成分Aを含むコート液を乾燥することで形成した層)には、結着成分(添着成分)を実質含まないことが好ましい。実質含まないとは、表面部の固形分中における結着成分の含有量が好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下を意味する。
本実施形態の抗菌性材料は、基材を備える。基材は前述の高分子を含有することが好ましい。また、基材は、何らかの性質、例えば、ヒートシール性を有するものが好ましい。
本実施形態のコート液は、分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群より選ばれる少なくとも1種の成分Aと、溶媒とを含み、結晶化熱量が0.1kJ/mol以上の結晶性化合物の含有量が固形分に対して1質量%以下である。成分A及び結晶性化合物の好ましい構成については、第二実施形態のコート液と同様である。
以下の実施例及び比較例では、抗菌剤として表1に示す2種のプロタミンA及びBを用いた。なお、プロタミンA及びBの重量平均分子量は、既述の方法で測定した。
(単層延伸ポリプロピレン系フィルムの製造)
プロピレン単独重合体(融点(Tm):160℃、MFR:3g/10分(株式会社プライムポリマー社製 商品名:F300SP))を準備した。二軸延伸機を用いて、プロピレン単独重合体に対し、縦5倍、横10倍の二軸延伸を施すことにより、単層延伸ポリプロピレン系フィルム(以下、「単層OPPフィルム」とも称する)を製造した。なお、単層OPPフィルムの延伸温度は、縦延伸:100℃、横延伸:180℃、ヒートセット温度は180℃、セット時間は10秒であった。
単層OPPフィルムの厚さは30μmであった。
更に、単層OPPフィルムの一方の表面に濡れ調(濡れ指数)38dynとなるようにコロナ処理を行った。濡れ指数の測定は、JIS K6768(1999)に準じて和光純薬工業株式会社製の濡れ張力試験用混合液(NO.38.0)が塗れるか塗れないかにより確認した。
表1に示すプロタミンAをエタノール90質量部及び水10質量部の混合液(和光純薬工業株式会社製 低級アルコール)に溶解し、表2に示すプロタミン含有量(質量%)の塗布液を調製した。単層OPPフィルムのコロナ処理面に、コートバーを用いてハンドコート(コート法)にて、塗布液を塗布速度0.3(mL/(m2・sec))で塗布して塗布膜を形成した。次に、塗布膜に、風速40m/分、120℃の温風を20秒吹き付けて塗布液を乾燥させた。これにより、単層OPPフィルム上に塗布膜を形成した。
なお、コートバーには、プロタミンの塗布量が計算上0.5mg/m2となるように予め調整した量の塗布液を載せた。すなわち、表2中の「プロタミン塗布量(mg/m2)」は、表面部におけるプロタミンの量、つまりプロタミンの表面量とみなすことができる。
以上のようにして、単層OPPフィルムと、単層OPPフィルム上に配置された表面部とを備える鮮度保持用フィルム(抗菌性材料)を得た。得られた鮮度保持用フィルムを用いて以下の評価を行った。
上記で得た抗菌性材料から任意の3箇所を切り出し、測定用サンプル(20mm×20mm)を3つ準備した。これらの測定用サンプルを用いて既述の方法により1.2mm2の面積中に存在する円相当径50μm以上の表面欠陥の数を求めた。また、同様の方法により円相当径20μm以上50μm未満の表面欠陥の数も求めた。求められた表面欠陥の数をもとに以下の評価基準に従ってランク付けした。結果を表2に示す。
A:円相当径20μm以上50μm未満の表面欠陥の数が0個、かつ円相当径50μm以上の表面欠陥の数が0個
B:円相当径20μm以上50μm未満の表面欠陥の数が1個以上10個以下、かつ円相当径50μm以上の表面欠陥の数が1個以上10個以下
C:円相当径50μm以上の表面欠陥の数が11個以上
(抗菌性評価1)
<評価サンプルの作製>
実施例1−1で得た鮮度保持用フィルムについて、JIS Z2801(2012)に準拠して、大腸菌(Escherichia coli)を用いて抗菌試験(抗菌性評価)を行った。鮮度保持用フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによるふき取りは行わなかった。
1/500普通ブイヨン培地に、初期菌数として1.1E+5[CFU(colony forming unit)/g]に相当する規定数量の大腸菌(Escherichia coli、菌株名;NBRC−3972)の菌液を添加して、大腸菌を含むブイヨン培地(試験菌液)を調製した。
試験菌液を4cm角の鮮度保持用フィルムの表面に滴下し、別途準備したポリエチレンフィルムを試験菌液の上にかぶせた後、35℃で24時間培養を行い、評価サンプルを作製した。
精製水1000mLに対してカゼインペプトン17.0g、大豆ペプトン3.0g、塩化ナトリウム5.0g、りん酸水素二カリウム2.5g、グルコース2.5g及びレシチン1.0gを加え、混合溶解した後、非イオン界面活性剤7.0gを加えて溶解させた。pH6.8〜pH7.2(25℃)になるように水酸化ナトリウム溶液又は塩酸溶液でpH調整し、高圧蒸気殺菌した。
回収した洗浄液を、普通寒天培地上に塗抹し、35℃で24時間培養して、普通寒天培地上に形成された大腸菌のコロニーの数(以下、「評価サンプルのコロニーの数」とも称する)をカウントした。
すなわち、顕微鏡下で大腸菌の菌数をカウントすることは困難なため、普通寒天培地上に形成された大腸菌のコロニーの数を目視によりカウントして、試験フィルム1枚あたりのコロニーの数を、大腸菌の生菌数(単位[CFU/枚])とした。
また、別途、表面(表面部)にプロタミンを含有しない2枚のポリエチレンフィルムを準備し、この2枚のポリエチレンフィルムの間に、1.2E+7[CFU/枚]相当の上記大腸菌を含む試験菌液(以下、「コントロール菌数」とも称する)を接種し、35℃で24時間培養を行い、コントロール(control)サンプル(比較サンプル)を作製した。上記評価サンプルと同様の条件で洗浄を行い、普通寒天培地上に塗抹し、35℃で24時間培養して、普通寒天培地上に形成された大腸菌のコロニーの数(以下、「コントロールのコロニーの数」とも称する)をカウントした。
測定は3回ずつ行い、3回の平均値を評価に用いた。評価基準は以下の通りである。結果を表2に示す。
なお、評価基準の「実験結果/control」とは、「評価サンプルのコロニーの数/コントロールのコロニーの数」を意味する。また、AE+Xとは、A×10のX乗を表しており、1.1E+5とは、1.1×105を意味している。
A:評価サンプルコロニーの数が10CFU未満であり、事実上不検出である。
B:「実験結果/control」の値が1/1000以下である。
C:「実験結果/control」の値が1/1000を超えて1/100以下である。
D:「実験結果/control」の値が1/100よりも大きい。
抗菌性評価2において、初期菌数を抗菌性評価1で用いた菌数に対して1000倍の菌数(1.1E+8[CFU/枚])に調製し、コントロールの菌数を抗菌性評価1で用いた菌数を100倍の菌数(1.2E+9[CFU/枚])に調製して用いた以外は、抗菌性評価1と同様の方法で評価サンプル及びコントロールサンプルを作製した後、それぞれの評価を行った。結果を表2に示す。
株式会社安田精機製作所製のスリップテスターNo.162SLDを用いて、鮮度保持用フィルムの非コロナ面同士を重ねあわせて、傾斜角法から静止摩擦係数を求め、スリップ性を評価した。傾斜角は、tanθで示した。なお、測定は3回行い、その平均値を評価に用いた。表2に、傾斜角(tanθ)の平均値を示す。
傾斜角は、スリップ性の指標となる。傾斜角が小さいほど、フィルム間のべたつきが小さく、滑り性が高いことを示す。すなわち、傾斜角が小さいほど、鮮度保持用フィルムの操作性が良好であることを示す。
プロタミン塗布量、プロタミン種、及び塗布液中のプロタミン含有量を表2及び表3に示すように変更したこと以外は実施例1−1と同様の操作を行った。なお、抗菌性評価1及び抗菌性評価2における初期菌数及びコントロール菌数は表2及び表3に示す通りである。結果を表2及び表3に示す。
また、実施例1−1〜1−16は、プロタミンの表面量が300mg/m2を超える比較例1−2及び1−4に比べ、べたつきが抑制されていた。
これにより、実施例1−1〜1−16の鮮度保持用フィルムは、抗菌性が高くかつ操作性が良好であることがわかった。
また、実施例1−1〜1−16の鮮度保持用フィルムは、表面における円相当径50μm以上の表面欠陥の数が、いずれも10個/1.2mm2以下であった。
次に、実施例1−4の鮮度保持用フィルムを用いて大腸菌以外の菌(枯草菌(菌株名;NBRC−3134)、黄色ブドウ球菌(菌株名;NBRC−12732)及びサルモネラ菌(菌株名;NBRC−3313))に対する抗菌性評価を行った。評価は、菌種を変更した以外は実施例1−1の抗菌性評価1と同様の方法で評価を行った。上記評価を抗菌性評価3とする。結果を表4に示す。
(多層延伸ポリプロピレン系フィルムの製造)
以下の材料を準備した。
(1)コア層用材料
プロピレン単独重合体(融点(Tm):158℃、MFR:3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))の表面に対し、アミン系防曇剤が10mg/m2ブリードするように配合することによりコア層用材料を得た。
(2)シール層用材料
プロピレン単独重合体(融点(Tm):135℃、MFR:3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))によりシール層用材料を得た。
多層OPPフィルム(シール層/コア層/シール層)の厚さは30μmであり、その厚さ比は5/90/5であった。更に、多層OPPフィルムの一方の表面(シール層)に濡れ調(濡れ指数)38dynとなるようにコロナ処理を行った。
コロナ処理後の単層OPPフィルムを、コロナ処理後の多層OPPフィルムに変更した(塗布液は多層OPPフィルムのコロナ処理面に塗布した)こと、及び、プロタミンAをプロタミンBに変更したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。なお、抗菌性評価1及び抗菌性評価2における初期菌数及びコントロール菌数は表5に示す通りである。結果を表5に示す。
プロタミン塗布量、プロタミン種及び塗布液中のプロタミン含有量を表5に示すように変更したこと以外は実施例2−1と同様の操作を行った。結果を表5に示す。
また、実施例2−1〜2−8は、プロタミンの表面量が300mg/m2を超える比較例2−2と比べ、べたつきが抑制されていた。
これにより、実施例2−1〜2−8の鮮度保持用フィルムは、抗菌性が高くかつ操作性が良好であることがわかった。
また、実施例2−1〜2−8の鮮度保持用フィルムは、表面における円相当径50μm以上の表面欠陥の数が、いずれも10個/1.2mm2以下であった。
更に実施例2−1〜2−8の鮮度保持用フィルムは、コア層に防曇剤を含有することから防曇性にも優れていた。
(多層無延伸ポリエチレン系フィルムの製造)
以下の材料を準備した。
(1)コア層用材料
直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、密度:0.94g/mL、MFR:4.0g/10分、融点:127℃)によりコア層用材料を得た。
(2)オモテ面基材用材料
直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、密度:0.94g/mL、MFR:4.0g/10分、融点:127℃)に対し、シリカ(富士シリシア化学株式会社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm))及びエルカ酸アミド(BASF社製、商品名:ATMERSA1753)を、含有量がそれぞれ1000ppmになるように混合することによりオモテ面シール層用材料を得た。
(2)ウラ面シール層用材料
直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、密度:0.92g/mL、MFR:4.0g/10分、融点:127℃)に対し、シリカ(富士シリシア化学株式会社製、商品名:サイリシア730(平均粒径3μm))及びエルカ酸アミド(BASF社製、商品名:ATMERSA1753)を、含有量がそれぞれ1000ppmになるように混合することによりウラ面シール層用材料を得た。
なお、多層PEフィルム(オモテ面基材/コア層/ウラ面シール層)の厚さは50μmであり、その厚さ比は1/3/1であった。更に、多層PEフィルムのウラ面シール層の表面に濡れ調(濡れ指数)38dynとなるようにコロナ処理を行った。
コロナ処理後の単層OPPフィルムを、コロナ処理後の多層PEフィルムに変更した(塗布液は多層無延伸ポリエチレン系フィルムのコロナ処理面、即ちウラ面シール層に塗布した)こと、及び、プロタミンAをプロタミンBに変更したこと以外は、実施例1−1と同様の操作を行った。なお、抗菌性評価1及び抗菌性評価2における初期菌数及びコントロール菌数は表6に示す通りである。結果を表6に示す。
プロタミン塗布量、プロタミン種、及び塗布液中のプロタミン含有量を表6に示すように変更したこと以外は実施例3−1と同様の操作を行った。結果を表6に示す。
また、実施例3−1〜3−8は、プロタミンの表面量が300mg/m2を超える比較例3−2と比べ、べたつきが抑制されていた。
これにより、実施例3−1〜3−8の鮮度保持用フィルムは、抗菌性が高くかつ操作性が良好であることがわかった。
また、実施例3−1〜3−8の鮮度保持用フィルムは、表面における円相当径50μm以上の表面欠陥の数が、いずれも10個/1.2mm2以下であった。
また、得られた鮮度保持用フィルムについて、実施例1−1と同様の方法により表面欠陥の数を求め、求められた表面欠陥の数をもとに前述と同様の評価基準に従ってランク付けした。結果を表7、8に示す。
なお、図1及び図2中の(A1)等の符号は表7及び表8中の(A1)等の符号に対応する。
プロタミンは表1に示すプロタミンAを用いた。表7及び表8に示すように、基材表面におけるコロナ処理の有無、塗布液中の溶媒の質量比(メタノール/水)、塗布液中のプロタミン含有量、プロタミン塗布量、塗布膜の乾燥温度及び乾燥時間、並びに、塗布液の塗布方法(スプレー法、コート法)を変更したこと以外は実施例1−1と同様にして鮮度保持用フィルムを得た。
なお、スプレー法による塗布液の塗布は、市販のスプレー(ダイヤスプレースイング500mL)を用いて行った。具体的には、上記スプレーに、プロタミン含有量が2質量%となるように調製した塗布液を充填し、基材上にスプレーを1回の噴霧することにより塗布膜を形成した。
なお、1回の噴霧での塗布重量を測定したところ、10mL/m2であった。塗布液中のプロタミン含有量は2質量%であるため、1回の噴霧でのプロタミン塗布量は200mg/m2と算出される。
これにより、実施例4−2、4−3、4−8及び4−9の鮮度保持用フィルムは、メタノールを含まない塗布液を用いて得られた実施例4−1、4−4、4−7及び4−10の鮮度保持用フィルムに比べて、加工性に優れており、摩耗による欠落が小さく、抗菌性がより高いフィルムであることが示唆された。
実施例1−6で得られた鮮度保持用フィルム及び比較例1−1で得られた鮮度保持用フィルム並びに無包装のマンゴーについて鮮度保持試験を行い、鮮度保持フィルムについて抗菌性の評価を行った。
次いで、得られた2種の包装体並びに無包装のマンゴーを、温度23℃及び相対湿度50%に保持された部屋に貯蔵した。貯蔵に際しては、包装体又は無包装のマンゴー(以下、「包装体等」ともいう。)の上に物が載ったり、包装体等にファンの風が直撃したりしないように、包装体等を静置した。
炭疽病の発病度=(1×N1+3×N2+6×N3)/(N×6)
N:調査した果実数
N1:下記の指標1の個数
N2:下記の指標2の個数
N3:下記の指標3の個数
<指標>
0:発生無し又は2mm未満
1:病斑直径2mm〜5mm
2:病斑直径5mm〜10mm
3:病斑直径10mm以上
実施例1−6で得られた鮮度保持用フィルム及び比較例1−1で得られた鮮度保持用フィルムを用いてサクランボの鮮度保持試験(N=2)を行い、鮮度保持フィルムについて抗菌性の評価を行った。
マンゴーの鮮度保持試験と同様にして、包装体A及び包装体Bをそれぞれ作製した。作製した包装体に、サクランボ250gをそれぞれ詰めた後、ヒートシールしていない1辺を、10mm幅でヒートシールして密閉し、サクランボが包装された包装体を得た。
次いで、得られた包装体を、温度23℃及び相対湿度50%に保持された部屋に貯蔵した。貯蔵に際しては、包装体の上に物が載ったり、包装体にファンの風が直撃したりしないように、包装体を静置した。
図4に示されるように、プロタミンが塗布された実施例1−6の鮮度保持用フィルム包装されたサクランボは、プロタミンが塗布されていない比較例1−1の鮮度保持用フィルムに包装されたにサクランボと比較して、カビの発生が抑制されていた(有意差(P<0.05)。
−重合体組成物の調製−
十分に窒素置換された2000mLの重合容器に、833mLの乾燥ヘキサン、1−ブテン100gとトリイソブチルアルミニウム(1.0ミリモル)とを常温で仕込んだ後、重合容器内温を70℃に昇温し、プロピレンで系内の圧力を0.55MPaとになるように加圧した後に、エチレンで系内圧力を0.76MPaに調整した。
次いで、ジフェニルメチレン(3−tert−ブチル−5−エチルシクロペンタジエニル)(2,7−ジ−tert−ブチルフルオレニル)ジルコニウムジクロライド0.001ミリモルとアルミニウム換算で0.3ミリモルのメチルアルミノキサン(東ソー・ファインケム株式会社製)とを接触させたトルエン溶液を重合容器内に添加し、温度70℃、系内圧力を0.76MPaにエチレンで保ちながら25分間重合し、20mLのメタノールを添加し重合を停止した。
脱圧後、2Lのメタノール中で重合溶液から高分子を析出し、真空下130℃、12時間乾燥した。
得られた高分子は137.7gであり、エチレン含有量14モル%及びブテン含有量19モル%からなるプロピレン・ブテン・エチレン共重合体(以下、「重合体A」ともいう。)である。また、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn)は2.0であり、トリアドタクティシティ(mm分率)は90%であった。
得られた重合体Aについて、示差走査熱量計(DSC)にて融解熱量を測定したところ、明確な融解ピークは確認できなかった。また、メルトフローレート(MFR)は、7g/10分であった。
装置 :ビルドアップGPCシステム(東ソー株式会社製)(デガッサー/SD−8022、ポンプ/DP−8020、オートサンプラー/AS−8021、カラムヒーター/CO−8020、示差屈折計/RI−8020)
移動相:0.1M NaNO3水溶液
カラム:TSKgel G3000PWXL−CP(7.8mmID×30cm) 2本(東ソー株式会社製)
流速 :1.0mL/分
試料 :移動相溶剤を用いて4mg/mL濃度の試料溶液を作成し、100μL注入
検出器:RI(示差屈折計)、polarity=(+)
温度 :40℃
分子量校正:標準ポリエチレンオキサイド(PEO)(アジレント・テクノロジー株式会社製)
MFRの測定は、JIS K7210(1999年)に準拠した方法により、230℃、荷重2160gにて行った。
なお、ランダムポリプロピレン(重合体B)は、融点140℃、MFR7g/10分、プロピレン含量96.3モル%、エチレン含量2.2モル%、ブテン含量1.5モル%である。
上記で得られたペレット100質量部、ハイワックスNP0555A(低分子量ポリプロピレンワックス、三井化学株式会社製)10質量部及びマレイン酸カリウム3質量部を混合した高分子を、2軸スクリュー押出機(製品名;PCM−30、圧縮比(L/D);40、池貝鉄工株式会社製)にホッパーより3000g/時間の速度で供給し、同押出機のベント部に設けた供給口より水酸化カリウムの20%水溶液を90g/時間の割合で連続的に供給し、加熱温度210℃で連続的に押出した。押出された高分子を同押出機口に設置したジャケット付きスタティックミキサーで110℃まで冷却し、更に80℃の水中に投入して塗工液aを得た。
得られた塗工液aは、収率:99%、固形分濃度:10%、pH:11であり、マイクロトラック(Nanotrac Wave2型番、マイクロトラック・ベル株式会社製)で測定した平均一次粒径は0.5μmであった。
基材として、表面をコロナ処理されたA4サイズの二軸延伸ポリプロピレンフィルム(以下、「OPPフィルム」ともいう。)を用意し、基材の処理面側に、バーコーターを用いて塗工液aを2mL塗工し、基材上に表面層を形成した。
その後、表面層に、風速40m/分、120℃の温風を20秒吹き付けて塗工液aを乾燥させることにより、OPPフィルムとOPPフィルム上に配置された表面層とを備えたヒートシール材を作製した。
作製したヒートシール材の表面層の平均厚みをSEM測定したところ、1.38μmであった。ヒートシール材の外観を目視で確認したところ透明であった。
表1に示すプロタミンAと、リケマールA(防曇剤;シュガーエステル、理研ビタミン株式会社)と、をメタノール(和光純薬工業株式会社、和光一級)80質量部及び水20質量部の混合液に溶解し、下記表9に示す量(質量比)のプロタミン及びリケマールを含有する塗布液bを調製した。
上記のようにして作製したヒートシール材の表面層に、コートバーを用いてハンドコート(コート法)にて、塗布液bを塗布速度0.3〔mL/(m2・秒)〕で塗布した。次いで、塗布面に風速40m/分、120℃の温風を20秒間吹き付けて塗布液bを乾燥させた。このようにして、表面層にプロタミン及び防曇剤が付与された鮮度保持用フィルム(抗菌性材料)を作製した。
25℃の水50mLを収容した円筒形のポリプロピレン製容器(高さ80mm×直径55mm)を用意し、この容器の開口を閉塞するように、鮮度保持用フィルムを防曇性を評価する側(表面層側)の表面を容器側に向けて載置し、容器を密閉した。密閉後、5℃の冷蔵庫中に2時間放置した後、評価を行った。なお、評価は、評価ランクが「3」以上である場合、防曇性が良好であると判断することができる。評価結果を表9に示す。
<評価基準>
5:水滴の広がりが良好であり、容器の開口部に位置する円形のフィルム全面(直径55mm)に亘って均一に濡れている。
4:水滴の広がりが良好であるが、僅かに水滴が観測される。
3:直径が5mm程度の水滴が付着しているが、高い透明性が保たれている。
2:直径が2mm〜3mmの水滴が全面に付着しているが、透明性が保たれている。
1:直径が2mm未満の細かい水滴が全面に付着しており、不透明である。
表10に示すプロタミンA、50部に対し、脱イオン水80部を加え、水酸化ナトリウムを加えてpH8.0に調整した。65℃に加温した後、サーモライシン(ナカライテスク株式会社製, バシラス・サーモプロテオティカス(Bacillus thermoproteolyticus)由来)0.0015部を添加して、2時間撹拌しながら酵素反応を行った。反応終了後、反応液を95℃に加温して30分間加熱失活させpHを8.5に調整した。その後、反応液を凍結乾燥し、分子Aであるプロタミン分解物を得た。
プロタミンAの重量平均分子量(Mw)は5,800、プロタミンBのMwは5,800であり、プロタミン分解物のMwは800、1,900、3,200、6,300のものが含まれていた。プロタミン分解物の全質量に対し、Mwが800のプロタミン分解物は25質量%、Mwが1,900のプロタミン分解物は25質量%、Mwが3,200のプロタミン分解物は20質量%、Mwが6,300のプロタミン分解物は30質量%含まれていた。重量平均分子量は、既述の方法により測定した。
<多層延伸ポリプロピレン系フィルムの製造>
以下の材料を準備した。
(1)コア層用材料
プロピレン単独重合体(融点(Tm):158℃、MFR:3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))の表面に対し、アミン系防曇剤が10mg/m2ブリードするように配合することによりコア層用材料を得た。
(2)シール層用材料
プロピレン単独重合体(融点(Tm):135℃、MFR:3g/10分(株式会社プライムポリマー社製))によりシール層用材料を得た。
多層OPPフィルム(シール層/コア層/シール層)の厚さは30μmであり、その厚さ比は5/90/5であった。更に、多層OPPフィルムの一方の表面(シール層)に濡れ調(濡れ指数)38dyn/cmとなるようにコロナ処理を行った。濡れ指数の測定は、前述の実施例1−1と同様の方法により確認した。
上述の方法により製造した分子Aであるプロタミン分解物を、抗菌剤として、エタノール90質量部及び水10質量部の混合液(和光純薬工業株式会社製 低級アルコール)に溶解し、表11に示す分子Aの含有量(質量%)の塗布液を調製した。多層OPPフィルムのコロナ処理面に、前述の実施例1−1と同様の方法により、塗布膜を形成した。
なお、コートバーには、分子Aの塗布量が計算上0.5mg/m2となるように予め調整した量の塗布液を載せた。すなわち、表11中の「分子Aの塗布量(mg/m2)」は、表面部における分子Aの量、つまり分子Aの表面量とみなすことができる。同様に、後述する表12中の「プロタミンの塗布量(mg/m2)」は、表面部におけるプロタミンの量、つまりプロタミンの表面量とみなすことができる。
以上のようにして、多層OPPフィルムと、多層OPPフィルム上に配置された表面部とを備える鮮度保持用フィルム(抗菌性材料)を得た。得られた鮮度保持用フィルムを用いて以下の評価を行った。
(表面欠陥の数)
前述と同様の方法で表面欠陥の数を求めた。結果を表11に示す。
−抗菌性評価1〜2−
実施例1−Aで得た鮮度保持用フィルムについて、JIS Z2801(2012)に準拠して、大腸菌(Escherichia coli)を用いて抗菌試験(抗菌性評価)を行った。なお、鮮度保持用フィルムの表面の状態を保つためにアルコールによるふき取りは行わなかった。
1/500普通ブイヨン培地に大腸菌(Escherichia coli)を規定数量(上記抗菌試験で0.4mL用いたブイヨン)入れて、この大腸菌を含むブイヨン(試験菌液)を4cm角の鮮度保持用フィルムの表面の上に滴下し、試験菌液の上に別途準備したポリエチレンフィルムをかぶせた。これを評価サンプルとした。
35℃で24時間経過した後に評価サンプルの表面を洗浄し、その試験菌液(普通ブイヨン培地)を含む洗浄液を回収し、それを、普通寒天培地を用いて培養して大腸菌のコロニーの数をカウントした。
すなわち、顕微鏡下で大腸菌の個数をカウントすることは困難なため、コロニーの数を、目視によりカウントし、その1グラム(g)あたりのコロニーの数を生菌数CFU(colony forming unit)(単位[個/g])とした。
また、別途、表面(表面部)に抗菌剤を含有しない2枚のポリエチレンフィルムを準備し、この2枚のポリエチレンフィルムの間に上記大腸菌を挟み込んだものをコントロール(Control)とした(比較サンプル)。
評価は、抗菌性評価1及び抗菌性評価2を行った。抗菌性評価1では、初期菌数を1.1E+5[個/g]、コントロール菌数を1.2E+7[個/g]とした。抗菌性評価2では、初期菌数を抗菌性評価1に対して1,000倍、コントロール菌数を100倍にして抗菌性評価1と同様の方法で評価を行った。各評価において測定は3回ずつ行い、その平均値を評価に用いた。評価基準は前述と同様である。結果を表11に示す。
前述と同様にしてスリップ性を測定した。結果を表11に示す。
分子A(プロタミンB)の塗布量、抗菌剤の種類、及び塗布液中の分子A(プロタミンB)の含有量を表11及び表12に示すように変更したこと以外は実施例1−Aと同様の操作を行った。なお、抗菌性評価1及び抗菌性評価2における初期菌数及びコントロール菌数は表11及び表12に示す通りである。結果を表11及び表12に示す。
特に実施例3−A〜実施例8−Aにおいては、初期菌数を抗菌性評価1の1,000倍にしても大腸菌に対する抗菌性が良好であった。
また、上記実施例1−A〜実施例8−Aは、分子Aの表面量が300mgを超える比較例2−Aに比べ、スリップ性が小さく、操作性に優れていた。
これにより、実施例1−A〜実施例8−Aの鮮度保持用フィルムは、抗菌性が高く、操作性が良好であることがわかった。
また、実施例1−A〜実施例8−Aの鮮度保持用フィルムは、表面における円相当径50μm以上の表面欠陥の数が、いずれも10個/1.2mm2以下であった。
更に、表11及び表12に示すように、実施例1−A〜実施例4−Aと、実施例1−A’〜実施例4−A’の比較から、分子Aを用いた場合には、プロタミンを用いた場合と比較して、抗菌剤の表面量が少量である場合においても、大腸菌に対する抗菌性に優れていることが分かった。
次に、抗菌剤として上述のプロタミン分解物を用いて、大腸菌、サルモネラ菌、及び、セレウス菌に対する抗菌性評価を行った。
上記3種の菌種に対する抗菌性は、最小発育阻止濃度(MIC)として評価した。
最小発育阻止濃度とは、特定の細菌の増殖を阻止するための抗菌剤の必要最小量(μg/mL)を意味する。最小発育阻止濃度が小さいほど、その抗菌剤の抗菌効果が強いことになり、最小発育阻止濃度が大きいほど、ある一定基準の抗菌効果を満たすために多量に添加する必要があることを示す。
最小発育阻止濃度は、「日本薬局方第十五改正(平成18年)」中、一般試験法における、「微生物限度試験法」により求められる。微生物限度試験法としては、メンブランフィルター法、カンテン平板混釈法、カンテン平板表面塗抹法、液体培地段階希釈法があるが、本発明における最小発育阻止濃度としては、液体培地段階希釈法により得られた値を用いた。
液体培地としては、Mueller Hinton Brothを用いた。プロタミン分解物は6,400μg/mLになるように滅菌した蒸留水に溶解し、液体培地で倍々に希釈して3,200μg/mLから6.25μg/mLまでの2倍ごとの濃度となるように調製した。調製したプロタミン分解物を各濃度で含む液体培地(10mL)に、各菌が1×104個含まれるMueller Hinton Broth培地(0.1mL)をそれぞれ添加し、35℃で24時間培養後、目視により白濁しなくなる濃度としてMICを判定した。
評価結果を表13に示す。表13中の数値は、最小発育阻止濃度(MIC)の値(μg/mL)である。
<脱塩プロタミン>
塩を11.2%含む前述のプロタミン塩酸塩(プロタミンA)の2質量%水溶液について、下記条件で限外ろ過を実施した後、水を留去し、減圧乾燥を行い、脱塩プロタミン(塩酸塩、NaCl濃度0%)を得た。
限外ろ過器:ゲンゴロウMD(テクノオフィス・カネコ製)
ろ過膜: 膜面積100cm2×2枚。総面積200cm2。分画分子量1Kダルトン
性質:蒸留モノグリセライド、食品添加物
メーカー:理研ビタミン株式会社
品名:リケマールS−100
融点:63−68℃
モノエルテル含有量:95%以上
性質:蒸留ジグリセリン脂肪酸エステル、食品添加物(乳化剤)
メーカー:理研ビタミン株式会社
品名:ポエムDS−100A
酸価:3↓
ヨウ素価:2↓
ケン化価:115−130
性質:蒸留グリセリン脂肪酸エステル、食品添加物(乳化剤)
メーカー:理研ビタミン株式会社
品名: ポエムDP−95RF
融点:ピークは明確でないがおおよそ0℃−40℃程度
モノエルテル含有量:80%以上、HLB=8.0
メーカー:日油株式会社
品名:NAA(登録商標)−173k
融点:69.9℃
沸点:376℃(分解)
比重:約0.9
メーカー:株式会社ADEKA
品名:PEG6000
平均分子量:8300
(シート成形)
直鎖状低密度ポリエチレン(三井化学株式会社製、密度:0.92g/cm3、MFR(メルトフローレート):4.0g/10分、融点:128℃)に対し、エタノールを3mL/5kgの割合で振りかけた上で、プロタミンAの含有量が表14に示す量になるようにプロタミンAを上記直鎖状低密度ポリエチレンに付着させ、混合物(抗菌性組成物)を得た。
次いで、混合物80gを株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルにて200℃、120rpm、5分混練し、更に混練して得た樹脂塊をポリイミドシートに挟んだ上で金枠に入れて株式会社東洋精機製作所製ラボプレスを用いて200℃で5分予熱、5分加熱(加圧)して1mm厚のシート(抗菌性フィルム)を成形した。
プロタミンAとジグリセリンモノステアレートは予め60℃に加熱した水/メタノール=20/80混合液(体積比)に溶解した上でシャーレに移し、オーブンにて40℃で6時間程度乾燥して混合物(質量比は1:1)を得た。
次いで、実施例1−Bと同様に、プロタミンAとジグリセリンモノステアレートの含有量が表14に示す量になるようにプロタミンAとジグリセリンモノステアレートを上記直鎖状低密度ポリエチレンに付着させ、混合物(抗菌性組成物)を得た。そして、実施例1−Bと同様にして1mm厚のシート(抗菌性フィルム)を成形した。
プロタミンAの含有量が表14に示す量になるようにプロタミンAを上記直鎖状低密度ポリエチレンに付着させ、混合物(抗菌性組成物)を得た以外は実施例1−Bと同様にして1mm厚のシート(抗菌性フィルム)を成形した。
上記直鎖状低密度ポリエチレン80gを株式会社東洋精機製作所製ラボプラストミルにて200℃、120rpm、5分混練し、更に混練して得た樹脂塊をポリイミドシートに挟んだ上で金枠に入れて株式会社東洋精機製作所製ラボプレスを用いて200℃で5分予熱、5分加熱(加圧)して1mm厚のシートを成形した。
プロタミンAの含有量が表14に示す量になるようにプロタミンAを上記直鎖状低密度ポリエチレンに付着させ、混合物(抗菌性組成物)を得た以外は実施例1−Bと同様にして1mm厚のシート(抗菌性フィルム)を成形した。
各実施例及び比較例にて得たシートについて、実施例1−Aにおける抗菌性評価1と同様の方法により、
測定は3回行った。表14に測定1回目〜3回目の結果と、その平均値を示す。但し、測定値のバラツキが10倍以上の場合には、JIS規格上平均値は計算できない。評価基準は前述と同様である。
シートを重ね合わせた後に、テスター産業株式会社製TP−701−BHEATSEALTESTERを用いて、所定の温度(140℃)で、シール面圧:1kg/cm2、時間:1.0秒の条件下で10mmシールバーを用いて、厚さ15μmのPETフィルムに挟んで熱融着(ヒートシール)した。尚、加熱は上側のみとした。次いで、ヒートシールしたシートから幅:15mmの試験片を切出し、引張り試験機(株式会社オリエンテック製テンシロン万能試験機RTC-1225)を用いて300mm/分の引張り速度で剥離し、その最大強度をヒートシール強度とした。
各実施例及び比較例にて得たシートについて、以下のようにしてべたつき評価をおこなった。
まず、各実施例及び比較例にて得たシートを10cm×5cmのサイズに2つ切出し、切出したシートを重ね合わせた。重ね合わせたシートの中央部5cm×5cm角に100gの荷重を20℃で1時間載せた後にその荷重を外し、上位置のシートを保持し、10分間その状態を維持したときに、下位置のフィルムが落ちた場合をA(べたつき評価良好)とし、下位置のフィルムが落ちなかった場合をB(べたつき評価不良)とした。
また、実施例1−B〜3−B及び比較例1−B、2−Bについて、蛍光X線分析を行った。蛍光X線分析は各実施例及び各比較例にて得られたシートの一部を切り出して測定用サンプルを準備した。測定用サンプルについて、蛍光X線分析装置(株式会社リガク製:ZSX PrimusII)を用いて、シート中の塩素原子(プロタミン塩酸塩由来の塩素原子)に基づくX線強度(kcps)を測定して行った。詳細な測定条件は、前述の通りである。
結果を表14及び図6に示す。なお、図6中、ジグリセリンモノステアレートを含まないデータ(実施例1−B、3−B及び比較例1−B、2−B)については、C16DGなしと表記し、ジグリセリンモノステアレートを含むデータ(実施例2−B)については、C16DGありと表記している。
なお、表14中、実施例1−B〜実施例3−Bは、表面部におけるプロタミンの量が0.2mg/m2〜300mg/m2を満たしていた。
一方、比較例1−B、2−Bでは、抗菌性が不十分であり、比較例3−Bでは、べたつきがあった。また、比較例3−Bでは、ヒートシール強度が著しく低く、実際の商品での使用ができないレベルであった。
実施例4−B〜15−BはプロタミンAに、ステアリン酸、ポリエチレングリコール、モノグリセリンモノステアレート及びジグリセリンモノステアレートをそれぞれ以下の表15及び表16の配合量(質量%)となるように予め60℃に加熱した水/メタノール=10/80混合液(体積比)に溶解し、抗菌性組成物を調製した。
プロタミンAを予め60℃に加熱した水/メタノール=10/80混合液(体積比)に溶解し、抗菌性組成物を調製した。
実施例4−B〜15−B及び比較例4−Bにて得られた抗菌性組成物を用いて、金属へのプロタミンAの付着性及びプロタミンAの焦げ付き性評価を行った。
まず、実施例4−B〜15−B及び比較例4−Bにて得られた抗菌性組成物をプロタミンA量が200mg/m2となるように200μm厚みのSUS板に塗布した。次いで、株式会社東洋精機製作所製ラボプレスにてSUS板を200℃で10分加熱し、評価を行った。
評価基準は下記のとおりである。
結果を表15及び表16に示す。
A:膜の硬化がなく、混合物として金属(SUS板)表面に存在するので布等で拭き取ることで金属が露出し、仮に押出機内であればスクリュ、シリンダーへの焦げ付きを起こすことなく成形できると推定される状態である。
B:膜の硬化がなく、混合物として金属(SUS板)表面に存在するので布等で拭き取ることで金属が露出するが、Aに比べるとやや拭き取りに負荷がかかる。仮に押出機内であればスクリュ、シリンダーへの焦げ付きを起こすことなく成形できると推定される状態である。
C:膜の硬化がなく、混合物として金属(SUS板)表面に存在するので布等で拭き取ることで金属が露出するが、更にBに比べるとやや拭き取りに負荷がかかる。仮に押出機内であればスクリュ、シリンダーへの焦げ付きを起こすことなく成形できると推定される状態である。
D:膜が硬化し、また金属(SUS板)に融着したため爪で引っ掻いてもはがれない状態であり、仮に押出機内であればスクリュ、シリンダーへの焦げ付きを起こすと推定される状態である。
また、実施例4−B、7−B、10−B、13−Bでは、ステアリン酸、ポリエチレングリコールに比べるとモノグリセリンモノステアレート、ジグリセリンモノステアレートの方が加熱下での流動性が小さいため、25%配合量での効果が大きい傾向にあった。
一方、比較例4−Bでは、金属(SUS)への付着、焦げ付きが発生しており、仮に押出機内であればスクリュ、シリンダーへの焦げ付きを起こすと推測された。
前述のプロタミンAを湯煎により90℃に加熱した熱湯に添加し、5分間溶解させて10質量%のプロタミンA溶液とし、前述のジグリセリンモノパルミテートを質量比にてプロタミンA/ジグリセリンモノパルミテート=1/3となるようにプロタミンA溶液に混合した。そして、混合液を水分濃度が50質量%となるまで加熱した。
水分濃度が50質量%となった後、混合液を室温まで冷却したところ、高粘性の溶液が得られた。
前述の高粘性の溶液について、水分濃度が25質量%となるまで真空乾燥機を用いて70℃、0atmの条件にて乾燥させた。次いで、乾燥後の高粘性の溶液にポリエチレン(株式会社プライムポリマー製、品名:SP2040、MFR:4.0g/10分、融点:107℃)を添加し、プロタミンA/ジグリセリンモノパルミテート/ポリエチレン=2.5/7.5/90(質量比)となる混合物を準備し、160℃にて二軸押出成形してペレットを作製した。なお、ポリエチレンはその半分を粉末にして前述の高粘性の溶液を膨潤しやすくした。
前述のペレットを、プロタミンA濃度が0.5質量%となるようにポリエチレン((株式会社プライムポリマー製、品名:SP2040、MFR:4.0g/10分、融点:107℃)と混練し、混練物及び単軸押出機(40mmφ、L/D=27)を用いて200℃、20rpm(5kg/h)の条件にて30分間押出を行い、スクリュの焼き付き加減を評価した。
その結果、スクリュ圧縮部分及びミキシング部分においてスクリュの焼き付きが生じておらず、本実施例では、スクリュの焼き付きを抑制することができた。
表17に示す比率(質量比)にて前述のプロタミンA又は前述の脱塩プロタミン、前述のジグリセリンモノパルミテート及びポリエチレンを用いて、表17に示す成形温度にて実施例16−Bと同様にペレットを作製した。なお、ポリエチレンはその半分を粉末にして前述の高粘性の溶液を膨潤しやすくした。
実施例17−B〜実施例22−Bにて用いたポリエチレンは以下の通りである。
メーカー:株式会社プライムポリマー
品名:SP1022
MFR:2.0g/10分
融点:98℃
<ポリエチレン2>
メーカー:株式会社プライムポリマー
品名:SP1071C
MFR:10g/10分
融点:98℃
更に、実施例17−B〜21−Bでは、前述のプロタミンAを用い、実施例22−Bでは、前述の脱塩プロタミンを用いた。
比較例5−Bでは、ポリエチレン1のみを用いて表17に示す成形温度にて実施例16−Bと同様にペレットを作製した。
実施例17−B〜22−B及び比較例5−Bにて作製した前述のペレットを、ポリエチレン(実施例17−B〜19−B、22−B、比較例5−Bではポリエチレン1、実施例20−B、21−Bではポリエチレン1及びポリエチレン2の1:1(質量比)混合物)と混練し、プロタミンA濃度が表14に示す数値である混練物とした。次いで、混練物及び単軸押出機(50mmφ、L/D=27)を用い、以下の条件にて30分間押出を行い、スクリュの焼き付き加減を評価した。
スクリュ回転数:60rpm
ダイス:70mmφ
ライン速度:11.5m/min
フィルム厚み:50μm
折り径:280mm
温度条件(℃):C−1/C−2/AD/D1/D2=155/160/150/150/150
その結果、ジグリセリンモノパルミテートを用いた実施例17−B〜22−Bでは、スクリュ圧縮部分及びミキシング部分においてスクリュの焼き付きが生じておらず、スクリュの焼き付きを抑制することができた(表17中、評価A)。
一方、ジグリセリンモノパルミテートを用いていない比較例5−Bでは、スクリュ圧縮部分及びミキシング部分においてスクリュの焼き付きが生じ、スクリュの焼き付きを抑制することができなかった(表17中、評価B)。
前述の各実施例及び比較例と同様にして、実施例17−B〜22−B及び比較例5−Bのヒートシール評価及び抗菌性評価を行った。
結果を表17に示す。
以下の実施例及び比較例では、プロタミンとして以下の方法で作成したプロタミンA’〜D’を用いた。
・プロタミンA’:プロタミン硫酸塩・サケ由来(和光純薬工業株式会社製、硫酸ナトリウム1%以下)25gを600mLの純水に溶解し、溶液を陰イオン交換樹脂(住友化学株式会社製Duolite A−162)で処理し、遊離プロタミン水溶液を得た。この水溶液に1N塩酸をゆっくりと加え中和し、水を減圧留去後、乾燥してプロタミン塩酸塩20gを得た(純度98%以上、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの塩1%以下、重量平均分子量5800)。
・プロタミンB’:プロタミン硫酸塩・サケ由来(和光純薬工業株式会社製)の替わりに、プロタミン硫酸塩・ニシン由来(シグマ・アルドリッチ社製、硫酸ナトリウム1%以下)を原料に用い、プロタミンA’と同様の方法でプロタミン塩酸塩を調製した(純度98%以上、硫酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどの塩1%以下、重量平均分子量5800)。
・プロタミンC’:プロタミンA’を用い、特開2008−133253号公報の実施例1記載の方法により酵素分解処理したプロタミン分解物(塩酸塩)を調製した。プロタミン分解物は、重量平均分子量800、1900、3200、6300の4種のピークがあり、それぞれの比率は、25%、25%、20%、30%であった。
・プロタミンD’:プロタミンA’ 3.3gをメタノール1kgに加え、室温で1時間撹拌した。ろ過精度0.5μmのカートリッジフィルターを用いてろ過した後、メタノールを減圧留去し乾燥することにより、メタノール不溶分を除いたプロタミン塩酸塩2.8gを得た。
プロピレン単独重合体(融点(Tm):160℃、MFR:3g/10分(株式会社プライムポリマー製 商品名:F300SP))を準備した。二軸延伸機を用いて、プロピレン単独重合体に対し、縦5倍、横10倍の二軸延伸を施すことにより、単層延伸ポリプロピレン系フィルム(以下、「単層OPPフィルム」とも称する)を製造した。なお、単層OPPフィルムの延伸温度は、縦延伸:100℃、横延伸:180℃、ヒートセット温度は180℃、セット時間は10秒であった。
単層OPPフィルムの厚さは30μmであった。
更に、単層OPPフィルムの一方の表面に濡れ調(濡れ指数)38dynとなるようにコロナ処理を行った。濡れ指数の測定は、JISK6768に準じて和光純薬工業株式会社製の濡れ張力試験用混合液(NO.38.0)が塗れるか塗れないかにより確認した。
前述のプロタミンA’ 9質量部、NaCl 1質量部、メタノール2400質量部及び水600質量部を含むコート液を準備した。
基材である単層OPPフィルムのコロナ処理面に、コートバーを用いてハンドコート(コート法)にて、コート液を塗布速度0.3(mL/(m2・sec))で塗布して塗布膜を形成した。次に、塗布膜に、風速40m/分、120℃の温風を20秒吹き付けてコート液を乾燥させた。これにより、単層OPPフィルム上に表面層を形成した。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、15mg/m2であった。
以上のようにして、単層OPPフィルムと、単層OPPフィルム上に配置された表面部とを備える抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察、走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS)を用いた分析及びヒートシール評価を行った。
上記で得た抗菌性材料の表面部を走査型電子顕微鏡(SEM、S−3700N;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、加速電圧5kV、前処理白金スパッタ)により観察した。結果を図7に示す。
また、SEM観察では、不定形の島状構造(島部)が多く見られ、島部の円相当径が0.1μm〜1000μmである島部は約12個/mm2であった。
島状構造は、周囲に対して少し盛り上がっていることが観察された。
上記で得た抗菌性材料の表面部を走査型電子顕微鏡/エネルギー分散型X線分析装置(SEM−EDS、S−4800;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、XFlash(登録商標)5060FQ;ブルカー・エイエックスエス株式会社製、加速電圧6kV、前処理カーボン蒸着)を用いて分析した。結果を図12及び図13に示す。
図12及び図13に示すように、炭素として島部にて表面部下のポリプロピレンの炭素が検知された。
また、窒素は、全体的に薄く分布していることが確認された。
酸素は、島部周縁部に濃く、全体的に薄く分布していることが確認された。酸素は、セミμm〜数μmの球状の分布も確認され、これは、基材のスリップ剤(SiO2)に由来すると推測される。
ナトリウムは、島部内部に濃く、全体に薄く分布していた。
塩素は、島部周縁部(主にプロタミン塩酸塩由来)及び島部内部(主に塩化ナトリウム由来)に濃く、全体的に薄く分布していた。
ケイ素はセミμm〜数μmの球状の分布が確認され、これは、基材のスリップ剤(SiO2)に由来すると推測される。
この結果から、島部は塩化ナトリウムの微結晶が析出したものであり、それに伴い海島構造が形成されたものと推測される。島部内部には塩化ナトリウムの微結晶と、薄いプロタミン塗膜が形成され、更に、島部周縁部にプロタミンが押しやられ土手状の形状が形成されていると推測される。
抗菌性材料を、短冊状に切断したものを2枚試験片として準備する。次に、準備した2枚の試験片を、表面部同士が対向するように重ね合わせた後、ヒートシール試験機(熱傾斜ヒートシールテスター TP−701−G、テスター産業株式会社製)を用いて、温度(ヒートシール温度)140℃、下部温度100℃、シール幅5mm、シール圧力0.1MPa、及びシール時間1秒の条件で、熱融着(ヒートシール)した。
次に、試験機から、熱融着したフィルムを取り出し、幅15mmに切断した。この幅15mmの熱融着したフィルムを、シール強度試験機(フォースゲージFPG、日本電産ランポ株式会社製)を用いて、引張速度30mm/min、及び温度23℃の条件で、熱融着したフィルムのヒートシール面に対して180°の方向に引っ張り、剥離させた。
そして、剥離後の表面部を走査型電子顕微鏡(SEM、加速電圧5kV、前処理白金スパッタ)により観察した。結果を図11に示す。
図11に示すように、島部(塗膜欠陥)を中心にシール部が観察され、シールに寄与しなかった島部も観察された。この結果から、実施例1−Cの抗菌性材料は、基材の性質であるヒートシール性を奏することが確認された。また、島部の密度が大きいほど、島部同士が貼り合わされる確率が高くなり、シール性が向上することが推測される。
プロタミンA’の替わりにプロタミンB’を使用し、プロタミンB’ 9質量部、NaCl 1質量部、メタノール2400質量部及び水600質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1−Cと同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図8に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、10mg/m2であった。
SEM観察では、不定形の島状構造(島部)が多く見られ、島部の円相当径が0.1μm〜1000μmである島部は約14個/mm2であった。
島状構造は、周囲に対して少し盛り上がっていることが観察された。
また、実施例1−Cと同様にヒートシール性の評価を行った。その結果、実施例1−Cと同様、実施例2−Cの抗菌性材料は、基材の性質であるヒートシール性を奏することが確認された。
プロタミンA’の替わりにプロタミンC’を使用し、プロタミンC’ 9質量部、NaCl 1質量部、メタノール2400質量部及び水600質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1−Cと同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図9に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、10mg/m2であった。
SEM観察では、大きさ及び形状にややばらつきのある島部が観察された。
島状構造は、周囲に対して少し盛り上がっていることが観察された。
また、実施例1−Cと同様にヒートシール性の評価を行った。その結果、実施例1−Cと同様、実施例3−Cの抗菌性材料は、基材の性質であるヒートシール性を奏することが確認された。
プロタミンA’の替わりにプロタミンD’を使用し、プロタミンD’ 9質量部、NaCl 1質量部、メタノール3000質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1と同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図10に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、10mg/m2であった。
SEM観察では、不定形の島状構造(島部)が多く見られ、島部の円相当径が0.1μm〜1000μmである島部は約14個/mm2であった。
島状構造は、周囲に対して少し盛り上がっていることが観察された。
また、実施例1−Cと同様にヒートシール性の評価を行った。その結果、実施例1−Cと同様、実施例4−Cの抗菌性材料は、基材の性質であるヒートシール性を奏することが確認された。
プロタミンA’の替わりにプロタミンD’を使用し、プロタミンD’ 10質量部、メタノール3000質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1−Cと同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図14に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、10mg/m2であった。
SEM観察では、島部の円相当径が0.1μm〜1000μmである島部は観察されなかった。
SEM観察では、粒状物が1mm程度の帯状、かつまだらに分布していた。
また、実施例1と同様にヒートシール性の評価を行った。結果を図15に示す。
図15に示すように、島部(塗膜欠陥)がないため、シール部がほとんど確認されなかった。この結果から、比較例1−Cの抗菌性材料は、基材の性質であるヒートシール性を奏することが確認されなかった。
以下の実施例及び比較例では、プロタミンとして前述と同様の方法で作製したプロタミンA’〜D’を用いた。
前述と同様の方法で単層延伸ポリプロピレン系フィルム(以下、「単層OPPフィルム」とも称する)を製造し、単層OPPフィルムの一方の表面にコロナ処理を行った。
前述のプロタミンD’ 10質量部及びメタノール3000質量部を含むコート液を準備した。
基材である単層OPPフィルムのコロナ処理面に、コートバーを用いてハンドコート(コート法)にて、コート液を塗布速度0.3(mL/(m2・sec))で塗布して塗布膜を形成した。次に、塗布膜に、風速40m/分、120℃の温風を20秒吹き付けてコート液を乾燥させた。これにより、単層OPPフィルム上に表面層を形成した。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、10mg/m2であった。
以上のようにして、単層OPPフィルムと、単層OPPフィルム上に配置された表面部とを備える抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察及びヒートシール評価を行った。
上記で得た抗菌性材料の表面部を走査型電子顕微鏡(SEM、S−3700N;株式会社日立ハイテクノロジーズ製、加速電圧5kV、前処理白金スパッタ)により観察した。結果を図16に示す。
また、SEM観察では、島部の円相当径が1μm〜1000μmである島部は観察されなかった。
成分AとしてプロタミンA’の替わりにポリリジンを使用した。ポリリジンとしては、ガードキープGK−900G(JNC株式会社製)をフラスコに入れて減圧蒸留し、得られた粘稠液体に、室温でイソプロパノールを加え一晩撹拌し、析出した白色粉末を減圧濾過したのち、イソプロパノールで3回洗浄、減圧乾燥(80℃、4kPa、24時間)により得られたポリリジンの白色粉末を用いた。
前述のようにして得られたポリリジン5質量部及びメタノール3000質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1と同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図17に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するポリリジン塗布量は、5mg/m2であった。
SEM観察では、島部の円相当径が1μm〜1000μmである島部は観察されなかった。
成分AとしてプロタミンD’の替わりにプロタミンA’を使用し、プロタミンA’ 9質量部、NaCl 1質量部、メタノール2400質量部及び水600質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1−Dと同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図18に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、15mg/m2であった。
SEM観察では、不定形の島状構造(島部)が多く見られ、島部の円相当径が1μm〜100μmである島部は約12個/mm2であり、島部の円相当径が100μm超1000μm以下である島部は0個/100mm2であった。
成分AとしてプロタミンD’の替わりにプロタミンB’を使用し、プロタミンB’ 9質量部、NaCl 1質量部、メタノール2400質量部及び水600質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1と同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図19に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、10mg/m2であった。
SEM観察では、不定形の島状構造(島部)が多く見られ、島部の円相当径が1μm〜100μmである島部は約14個/mm2であり、島部の円相当径が100μm超1000μm以下である島部は0個/100mm2であった。
成分AとしてプロタミンD’の替わりにプロタミンC’を使用し、プロタミンC’ 9質量部、NaCl 1質量部、メタノール2400質量部及び水600質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1−Dと同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図20に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、10mg/m2であった。
SEM観察では、不定形の島状構造(島部)が多く見られ、島部の円相当径が1μm〜100μmである島部は約16個/mm2であり、島部の円相当径が100μm超1000μm以下である島部は0個/100mm2であった。
成分AとしてプロタミンD’を使用し、プロタミンD’ 9質量部、NaCl 1質量部、及びメタノール3000質量部を含むコート液を準備した。そして、実施例1−Dと同様の条件にて単層OPPフィルム上に表面層を形成し、抗菌性材料を得た。得られた抗菌性材料を用いて表面SEM観察を行った。結果を図21に示す。
なお、単層OPPフィルムに対するプロタミン塗布量は、10mg/m2であった。
SEM観察では、不定形の島状構造(島部)が多く見られ、島部の円相当径が1μm〜100μmである島部は約14個/mm2であり、島部の円相当径が100μm超1000μm以下である島部は0個/100mm2であった。
一方、比較例1−D〜4−Dでは、島部が多く観察され、表面部の平滑性は不十分であった。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
Claims (22)
- グアニジンに由来する構造を有する分子Aを含む表面部を備え、前記表面部における前記分子Aの量が0.2mg/m2〜300mg/m2である、抗菌性材料。
- 前記表面部の、1.2mm2の面積中に存在する円相当径50μm以上の表面欠陥が10個以下である、請求項1に記載の抗菌性材料。
- 前記分子Aの量が0.2mg/m2〜200mg/m2である、請求項1又は請求項2に記載の抗菌性材料。
- 前記分子Aの量が0.9mg/m2〜50mg/m2である、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 前記表面部の固形分中における前記分子Aの含有量が80質量%以上である、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 前記分子Aは、重量平均分子量が300以上5,000以下である、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 前記分子Aが、重量平均分子量が300以上3,000以下のグアニジンに由来する構造を有する分子A1と、重量平均分子量が3,000を超え5,000以下のグアニジンに由来する構造を有する分子A2と、を含む、請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 前記グアニジンに由来する構造が、下記式(G−1)により表される構造である、請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
式(G−1)中、R1〜R4はそれぞれ独立に、水素原子又は置換基を表し、波線部は他の構造との結合部位を表す。 - 分子Aにおける、前記グアニジンに由来する構造に含まれる塩基性基の当量が、50g/eq〜500g/eqである、請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 前記表面部が前記分子Aを0.1質量%超10.0質量%以下含有する、請求項1〜請求項9のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 前記表面部は、脂肪酸エステル、脂肪酸及び多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤を更に含有する、請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置され、グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部と、を備え、
前記表面部が海部と島部とを有する海島構造を有する、抗菌性材料。 - 走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される前記島部の円相当径が0.1μm〜1000μmである、請求項12に記載の抗菌性材料。
- 走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される前記島部の個数が1個/mm2以上である、請求項12又は請求項13に記載の抗菌性材料。
- 前記表面部が結晶性化合物(但し、成分Aの塩を除く)を含み、前記結晶性化合物の濃度は前記島部よりも前記海部の方が低い、請求項12〜請求項14のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 基材と、前記基材の少なくとも一方の面に配置され、グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aを含む表面部と、を備え、
前記表面部において、走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される円相当径が100μm超1000μm以下である島部の個数が10個/100mm2以下、かつ走査型電子顕微鏡(SEM)による観測により検出される円相当径が1μm〜100μmである島部の個数が10個/mm2以下である、抗菌性材料。 - 基材を更に備え、
前記表面部は前記基材の少なくとも一方の面の少なくとも一部に配置された、請求項1〜請求項11のいずれか1項に記載の抗菌性材料。 - 前記基材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、及びポリエチレンテレフタレートからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を含む高分子フィルムである、請求項12〜請求項17のいずれか1項に記載の抗菌性材料。
- 請求項1〜請求項18のいずれか1項に記載の抗菌性材料を備え、
物品の梱包に用いられ、かつ前記表面部が前記物品との対向面である、鮮度保持用材料。 - グアニジンに由来する構造を有する分子Aと、脂肪酸エステル、脂肪酸及び多価アルコールからなる群より選ばれる少なくとも1種の添加剤と、を少なくとも含有する抗菌性組成物。
- 前記添加剤はジグリセリン脂肪酸エステルであり、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート及びポリスチレンからなる群から選ばれる少なくとも1種の高分子を更に含有する請求項20に記載の抗菌性組成物。 - グアニジンに由来する構造を有する分子A、ポリリジン及びキトサンからなる群から選ばれる少なくとも1種の成分Aと、結晶性化合物と、溶媒とを含む、コート液。
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