JPWO2017057474A1 - 静電潜像現像用トナー - Google Patents

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Abstract

静電潜像現像用トナーが、トナーコアと、トナーコアの表面に形成されたシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。シェル層は、複数の第1ドメイン(R1)と、少なくとも複数の第1ドメイン(R1)の間に介在する第2ドメイン(R2)とを有する。複数の第1ドメイン(R1)はそれぞれ、実質的に第1熱可塑性樹脂から構成される。第2ドメイン(R2)は、実質的に第2熱可塑性樹脂から構成される。第2熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する。第1熱可塑性樹脂は、水酸基、アミノ基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基を有する特定繰返し単位を1種以上含む。第1熱可塑性樹脂に含まれる全ての繰返し単位のうち、特定繰返し単位の割合は、0.5mol%以上50mol%以下である。

Description

本発明は、静電潜像現像用トナーに関し、特にカプセルトナーに関する。
カプセルトナーに含まれるトナー粒子は、コアと、コアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを備える。特許文献1に記載されるトナーでは、シェル層(薄膜)がメラミン樹脂を含有する。特許文献2に記載されるトナーでは、シェル層(シェル領域)が架橋ポリエステル樹脂を60質量%以上の割合で含有する。
特開2004−138985号公報 特開2008−89909号公報
メラミン樹脂の合成には、一般に、ホルムアルデヒドが使用される。このため、特許文献1に記載されるトナーを加熱すると、トナーからホルムアルデヒドが遊離し易い。トナーからの遊離ホルムアルデヒドが多くなると、環境負荷が大きくなり、廃液の処理にかかるコストが大きくなる傾向がある。また、シェル層の原料としてイソシアネートを使用する場合にも、ホルムアルデヒドを使用する場合と同様の課題が生じると考えられる。
一方、特許文献2に記載されるトナーでは、シェル層の原料としてホルムアルデヒド及びイソシアネートのいずれも使用しないと考えられる。しかし、特許文献2に記載されるトナーでは、耐熱保存性及び低温定着性の両立が困難である。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、トナーからの遊離ホルムアルデヒド及び遊離イソシアネートを低減しながら、耐熱保存性及び低温定着性の両方に優れる静電潜像現像用トナーを提供することを目的とする。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む。前記シェル層は、複数の第1ドメインと、少なくとも前記複数の第1ドメインの間に介在する第2ドメインとを有する。前記複数の第1ドメインはそれぞれ、実質的に第1熱可塑性樹脂から構成される。前記第2ドメインは、実質的に第2熱可塑性樹脂から構成される。前記第2熱可塑性樹脂は、前記第1熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する。前記第1熱可塑性樹脂は、水酸基、アミノ基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基を有する特定繰返し単位を1種以上含む。前記第1熱可塑性樹脂に含まれる全ての繰返し単位のうち、前記特定繰返し単位の割合は、0.5mol%以上50mol%以下である。
本発明によれば、トナーからの遊離ホルムアルデヒド及び遊離イソシアネートを低減しながら、耐熱保存性及び低温定着性の両方に優れる静電潜像現像用トナーを提供することが可能になる。
本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。 図1に示されるトナー母粒子の表面の一部を拡大して示す図である。 樹脂膜の表面から突出する樹脂粒子を有するトナー母粒子を示す図である。 樹脂膜の表面から突出する樹脂粒子を有しないトナー母粒子を示す図である。 本発明の実施形態に係る静電潜像現像用トナーの製造方法を説明するための図である。
本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、粉体(より具体的には、トナーコア、トナー母粒子、外添剤、又はトナー等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、相当数の粒子について測定した値の個数平均である。また、粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)である。
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、周知の帯電列などで確認できる。
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。
本実施形態に係るトナーは、例えば正帯電性トナーとして、静電潜像の現像に好適に用いることができる。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。トナーは、1成分現像剤として使用してもよい。また、混合装置(例えば、ボールミル)を用いてトナーとキャリアとを混合して2成分現像剤を調製してもよい。高画質の画像を形成するためには、キャリアとしてフェライトキャリア(フェライト粒子の粉体)を使用することが好ましい。また、長期にわたって高画質の画像を形成するためには、キャリアコアと、キャリアコアを被覆する樹脂層とを備える磁性キャリア粒子を使用することが好ましい。キャリア粒子に磁性を付与するためには、磁性材料(例えば、フェライトのような強磁性物質)でキャリアコアを形成してもよいし、磁性粒子を分散させた樹脂でキャリアコアを形成してもよい。また、キャリアコアを被覆する樹脂層中に磁性粒子を分散させてもよい。高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましく、8質量部以上12質量部以下であることがより好ましい。なお、2成分現像剤に含まれる正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子は、コア(以下、トナーコアと記載する)と、トナーコアの表面に形成されたシェル層(カプセル層)とを備える。シェル層は、トナーコアの表面を覆っている。シェル層は、トナーコアの表面全体を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。シェル層の表面(又は、シェル層で覆われていないトナーコアの表面領域)に外添剤が付着していてもよい。また、トナーコアの表面に複数のシェル層が積層されてもよい。なお、必要がなければ外添剤を割愛してもよい。以下、外添剤が付着する前のトナー粒子を、トナー母粒子と記載する。また、シェル層を形成するための材料を、シェル材料と記載する。
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
まず、電子写真装置の像形成部(帯電装置及び露光装置)が、画像データに基づいて感光体(例えば、感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。続けて、電子写真装置の現像装置(詳しくは、トナーを含む現像剤がセットされた現像装置)が、トナーを感光体に供給して、感光体に形成された静電潜像を現像する。トナーは、感光体に供給される前に、現像装置内のキャリア又はブレードとの摩擦により帯電する。例えば、正帯電性トナーは正に帯電する。現像工程では、現像スリーブ(例えば、現像装置内の現像ローラーの表層部)上のトナー(詳しくは、帯電したトナー)が感光体に供給され、供給されたトナーが感光体の静電潜像に付着することで、感光体上にトナー像が形成される。消費されたトナーは、補給用トナーを収容するトナーコンテナから現像装置へ補給される。
続く転写工程では、電子写真装置の転写装置が、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、電子写真装置の定着装置(定着方式:加熱ローラー及び加圧ローラーによるニップ定着)がトナーを加熱及び加圧して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。なお、転写方式は、感光体上のトナー像を、中間転写体を介さず、記録媒体に直接転写する直接転写方式であってもよい。また、定着方式は、ベルト定着方式であってもよい。
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する静電潜像現像用トナーである。なお、本願明細書中では、物質の性質を、水との親和性(親水性)の度合に応じて3つに区分して、水との親和性が強い方(すなわち、疎水性が弱い方)から、水溶性、非水溶性、疎水性と記載する。水溶性を有する物質は、水に溶解する。非水溶性を有する物質は、水に溶解しないが単独で水中に分散し得る。疎水性を有する物質は、水に溶解せず単独で水中に分散しない。物質が水に溶解するか否かは、例えば、その物質を水に入れて光の散乱に基づいて物質が溶けたか否かを確認する方法、又はその物質を水に入れてから所定時間後に濾過して物質がゲル化したか否かを確認する方法によって確認できる。疎水性の強さ(又は親水性の強さ)は、水滴の接触角(水の濡れ易さ)によっても確認できる。水滴の接触角が大きいほど疎水性が強い。
(トナーの基本構成)
シェル層は、複数の第1ドメインと、少なくとも複数の第1ドメインの間に介在する第2ドメインとを有する。複数の第1ドメインはそれぞれ、実質的に第1熱可塑性樹脂から構成される。第2ドメインは、実質的に第2熱可塑性樹脂から構成される。第2熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する。第1熱可塑性樹脂は、水酸基、アミノ基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基を有する繰返し単位(以下、特定繰返し単位と記載する)を1種以上含む。第1熱可塑性樹脂に含まれる全ての繰返し単位のうち、特定繰返し単位の割合は、0.5mol%以上50mol%以下である。
式(1)に、水酸基(−OH)を有する繰返し単位の一例(アクリル酸4−ヒドロキシブチルに由来する繰返し単位)を示す。式(2)に、アミノ基(−NR2)を有する繰返し単位の一例(メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルに由来する繰返し単位)を示す。式(3)に、アミド基(−CO−NR2)を有する繰返し単位の一例(N,N−ジメチルアクリルアミドに由来する繰返し単位)を示す。式(4)に、水酸基、アミノ基、及びアミド基のいずれも有しない繰返し単位の一例(アクリル酸ブチルに由来する繰返し単位)を示す。式(1)〜式(4)において、nは、各々独立して、繰返し単位の繰返し数(モル数)を示す。
Figure 2017057474
Figure 2017057474
Figure 2017057474
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例えば、式(1)〜式(4)で示される4つの繰返し単位のみで第1熱可塑性樹脂が構成される場合、式(1)〜式(3)で示される3つの繰返し単位のモル数の合計を、全ての繰返し単位(4つの繰返し単位)のモル数の合計で除した値が、特定繰返し単位の割合に相当する。百分率(mol%)で表記する場合には、算出された値を100倍すればよい。
以下、図1、図2、図3A、及び図3Bを参照して、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子(詳しくは、トナー母粒子)の構成の一例について説明する。なお、図1は、本実施形態に係るトナーに含まれるトナー粒子(特に、トナー母粒子)の断面構造の一例を示す図である。図2は、図1に示されるトナー母粒子の表面を拡大して示す図である。図3A及び図3Bはそれぞれ、図1中のトナーコア11とシェル層12との境界部を拡大して示す図である。図2、図3A、及び図3Bの各々において、ハッチングで示される領域は、第2ドメインR2に相当する。
図1に示されるトナー母粒子10は、トナーコア11と、トナーコア11の表面に形成されたシェル層12とを備える。シェル層12は、実質的に樹脂から構成される。シェル層12は、トナーコア11の表面を覆っている。シェル層12は、トナーコア11の表面全体を覆っていてもよいし、トナーコア11の表面を部分的に覆っていてもよい。
また、シェル層12は、図2に示すように、複数の第1ドメインR1と、第2ドメインR2とを有する。第2ドメインR2は、複数の第1ドメインR1の間に介在する。複数の第1ドメインR1はそれぞれ粒子状の形態を有する。第2ドメインR2は膜状の形態を有する。第2ドメインR2の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。図2の例では、第1ドメインR1の少なくとも1つと、第2ドメインR2の少なくとも一部とがそれぞれ、シェル層12の表面に露出している。第1ドメインR1は、シェル層12の表面に散在している。また、シェル層12は、第1ドメインR1及び第2ドメインR2の海島構造(海:第2ドメインR2、島:第1ドメインR1)を有する。第2ドメインR2は海状に分布し、複数の第1ドメインR1は島状に分布している。第1ドメインR1は、第2ドメインR2に囲まれている。
第1ドメインR1は、実質的に第1熱可塑性樹脂から構成される粒子である。第1熱可塑性樹脂は、水素結合による物理架橋構造を有する非水溶性熱可塑性樹脂であることが好ましい。第2ドメインR2は、実質的に第2熱可塑性樹脂から構成される膜である。第2熱可塑性樹脂は、第1熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する。第2熱可塑性樹脂は、水素結合による物理架橋構造を有しない疎水性熱可塑性樹脂であることが好ましい。図3Aに示すように、第1ドメインR1が第2ドメインR2の表面から突出していてもよい。また、図3Bに示すように、第1ドメインR1が第2ドメインR2中に分散していてもよい。図3A及び図3Bのいずれの例でも、複数の第1ドメインR1はそれぞれ、第2ドメインR2に接している。また、第1ドメインR1同士は、第2ドメインR2によって分断される。
前述の基本構成を有するトナーは、耐熱保存性及び低温定着性の両方に優れる傾向がある。上記基本構成に規定されるシェル層は、複数の第1ドメインと、第2ドメインとが明確に分かれた構造を有する。第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂は、特定繰返し単位を含むため、水素結合を形成し得る。第1熱可塑性樹脂は、水素結合によって物理架橋し易い。このため、第1ドメインは、第2ドメインよりも塑性変形しにくい傾向がある。前述の基本構成を有するトナーを用いて画像を形成する場合、例えば定着工程においてトナー粒子に圧力を加えることで、シェル層を容易に破壊することができる。この理由は、外力によって第1ドメインがトナーコアに埋まり込むためであると考えられる。また、前述の基本構成を有するトナーでは、常温でシェル層が破壊されにくい。この理由は、複数の第1ドメインの間に介在する第2ドメインが、常温で安定した高い強度を有するためであると考えられる。また、前述の基本構成を有するトナーでは、トナー粒子が加熱されて第2ドメインが軟化しても、トナー粒子同士が凝集しにくい。この理由は、第1ドメインが、複数のトナー粒子の間でスペーサーとして機能するためであると考えられる。物理架橋構造を有する第1ドメインは、加熱されても軟化しにくいと考えられる。
また、複数のトナー粒子の間で第1ドメインがスペーサーとして機能することで、トナーの流動性を向上させることができると考えられる。前述の基本構成を有するトナーでは、外添剤の量を減らしても(又は、外添剤を使用しなくても)、十分なトナーの流動性を確保し易くなる。また、複数の第1ドメインの間に第2ドメインが介在することで、第1ドメインがトナー粒子から脱離しにくくなる。
前述の基本構成を有するトナーでは、第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂が、0.5mol%以上50mol%以下の割合で特定繰返し単位(水酸基、アミノ基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基を有する繰返し単位)を1種以上含む。こうした第1熱可塑性樹脂は、ホルムアルデヒド又はイソシアネートを使用せずに合成することができる。特定繰返し単位は、強い親水性を有する傾向がある。しかし、特定繰返し単位の割合が50mol%以下であれば、他の繰返し単位の選定により、樹脂を水に溶けない程度まで容易に疎水化できる。また、特定繰返し単位の割合が0.5mol%以上であれば、第1ドメイン中に十分な物理架橋構造を確保し易い。
また、上記基本構成は、トナーの帯電性を向上させるために有益である。第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂は、第2ドメインを構成する第2熱可塑性樹脂よりも親水性(水との親和性)が強い。前述の基本構成を有するトナーでは、各第1ドメインが第2ドメインで被覆されたり第1ドメイン同士が第2ドメインで分断されたりすることで、トナー粒子の表面に水分が吸着しにくくなる。このため、前述の基本構成を有するトナーは帯電安定性に優れる(詳しくは、帯電減衰しにくい)傾向がある。
トナーの帯電安定性を向上するためには、複数の第1ドメインがそれぞれ粒子状の形態を有し、第2ドメインが膜状の形態を有することが特に好ましい。詳しくは、シェル層が第1ドメイン及び第2ドメインの海島構造(海:第2ドメイン、島:第1ドメイン)を有することが特に好ましい(例えば、図2、図3A、及び図3B参照)。
前述の基本構成において、シェル層が第1ドメイン及び第2ドメインの海島構造(海:第2ドメイン、島:第1ドメイン)を有する場合には、第1ドメインの個数平均1次粒子径が20nm以上70nm以下であり、第2ドメインの厚さが10nm以上60nm以下であることが好ましい。個数平均1次粒子径の測定方法は、後述する実施例で示す方法又はその代替方法である。第2ドメインの厚さは、市販の画像解析ソフトウェア(例えば、三谷商事株式会社製「WinROOF」)を用いてトナー粒子の断面のTEM撮影像を解析することによって計測できる。1つのトナー粒子において第2ドメインの厚さが均一でない場合には、均等に離間した4箇所(詳しくは、トナー粒子の断面の略中心で直交する2本の直線を引き、それら2本の直線が第2ドメインと交差する4箇所)の各々で第2ドメインの厚さを測定し、得られた4つの測定値の算術平均を、そのトナー粒子の評価値(第2ドメインの厚さ)とする。なお、TEM撮影像においてトナーコアと第2ドメインとの境界が不明瞭である場合には、TEMと電子エネルギー損失分光法(EELS)とを組み合わせて、TEM撮影像中で、第2ドメインに含まれる特徴的な元素のマッピングを行うことで、トナーコアと第2ドメインとの境界を明確にすることができる。
前述の基本構成において、シェル層が第1ドメイン及び第2ドメインの海島構造(海:第2ドメイン、島:第1ドメイン)を有する場合には、第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)が、第2ドメインを構成する第2熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)よりも高く、第1熱可塑性樹脂のガラス転移点(Tg)が75℃以上120℃以下であることがより好ましい。Tgの測定方法は、後述する実施例で示す方法又はその代替方法である。
また、前述の基本構成で規定される熱可塑性樹脂(第1熱可塑性樹脂及び第2熱可塑性樹脂)は、ホルムアルデヒドを使用しなくても容易に合成できる。
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成で規定されるトナー粒子(以下、本実施形態のトナー粒子と記載する)を複数含む。本実施形態のトナー粒子を複数含むトナーは、遊離ホルムアルデヒド及び遊離イソシアネートが少なくて、耐熱保存性及び低温定着性の両方に優れると考えられる(後述する表1〜表3を参照)。なお、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナーが、80個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことが好ましく、90個数%以上の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがより好ましく、100個数%の割合で本実施形態のトナー粒子を含むことがさらに好ましい。
トナーからの遊離ホルムアルデヒド及び遊離イソシアネートを低減するためには、シェル層を構成する全ての樹脂のうち、ホルムアルデヒド又はイソシアネートに基づく重合反応によって生成される熱硬化性樹脂(以下、特定熱硬化性樹脂と記載する)の割合が、5質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることがより好ましく、0質量%である(シェル層が特定熱硬化性樹脂を全く含有しない)ことがさらに好ましい。特定熱硬化性樹脂(より具体的には、メラミン樹脂、尿素樹脂、グリオキザール樹脂、又はウレタン樹脂等)の合成では、ホルムアルデヒド又はイソシアネートを使用する。このため、特定熱硬化性樹脂からはホルムアルデヒド又はイソシアネートが遊離し易いと考えられる。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、シェル層が、トナーコアの表面積のうち、50%以上99%以下の面積を覆っていることが好ましく、70%以上95%以下の面積を覆っていることがより好ましい。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、トナーの体積中位径(D50)が1μm以上10μm未満であることが好ましい。なお、体積中位径(D50)の測定方法は、後述する実施例で示す方法又はその代替方法である。
次に、トナーコア(結着樹脂及び内添剤)、シェル層、及び外添剤について、順に説明する。トナーの用途に応じて必要のない成分(例えば、内添剤又は外添剤)を割愛してもよい。
<好適な熱可塑性樹脂>
トナー粒子(特に、トナーコア又はシェル層)を構成する熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂を好適に使用できる。また、これら各樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も、トナー粒子を構成する熱可塑性樹脂として好適に使用できる。
スチレン−アクリル酸系樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である。スチレン−アクリル酸系樹脂を合成するためには、例えば以下に示すような、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーを好適に使用できる。カルボキシル基を有するアクリル酸系モノマーを用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂にカルボキシル基を導入できる。また、水酸基を有するモノマー(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、又は(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル等)を用いることで、スチレン−アクリル酸系樹脂に水酸基を導入できる。アクリル酸系モノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル酸系樹脂の酸価を調整できる。また、水酸基を有するモノマーの使用量を調整することで、得られるスチレン−アクリル酸系樹脂の水酸基価を調整できる。
スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、ビニルトルエン、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、又はp−エチルスチレンが挙げられる。
アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸iso−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、又は(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの好適な例としては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、又は(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチルが挙げられる。
ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコールと1種以上の多価カルボン酸とを縮重合させることで得られる。ポリエステル樹脂を合成するためのアルコールとしては、例えば以下に示すような、2価アルコール(より具体的には、ジオール類又はビスフェノール類等)又は3価以上のアルコールを好適に使用できる。ポリエステル樹脂を合成するためのカルボン酸としては、例えば以下に示すような、2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸を好適に使用できる。また、ポリエステル樹脂を合成する際に、アルコールの使用量とカルボン酸の使用量とをそれぞれ変更することで、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価を調整することができる。ポリエステル樹脂の分子量を上げると、ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価は低下する傾向がある。
ジオール類の好適な例としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
ビスフェノール類の好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
2価カルボン酸の好適な例としては、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、マロン酸、コハク酸、アルキルコハク酸(より具体的には、n−ブチルコハク酸、イソブチルコハク酸、n−オクチルコハク酸、n−ドデシルコハク酸、又はイソドデシルコハク酸等)、又はアルケニルコハク酸(より具体的には、n−ブテニルコハク酸、イソブテニルコハク酸、n−オクテニルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸、又はイソドデセニルコハク酸等)が挙げられる。
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
なお、上記2価又は3価以上のカルボン酸は、エステル形成性の誘導体(より具体的には、酸ハライド、酸無水物、又は低級アルキルエステル等)に変形して用いてもよい。ここで、「低級アルキル」とは、炭素数1以上6以下のアルキル基を意味する。
[トナーコア]
トナーコアは、結着樹脂を含有する。また、トナーコアは、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉)を含有してもよい。
(結着樹脂)
トナーコアでは、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナーコア全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。例えば、結着樹脂がエステル基、水酸基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナーコアはアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基又はアミド基を有する場合には、トナーコアはカチオン性になる傾向が強くなる。結着樹脂が強いアニオン性を有するためには、結着樹脂の水酸基価(測定方法:JIS(日本工業規格)K0070−1992)及び酸価(測定方法:JIS(日本工業規格)K0070−1992)がそれぞれ10mgKOH/g以上であることが好ましく、20mgKOH/g以上であることがより好ましい。
結着樹脂としては、エステル基、水酸基、エーテル基、酸基、及びメチル基からなる群より選択される1種以上の基を有する樹脂が好ましく、水酸基及び/又はカルボキシル基を有する樹脂がより好ましい。このような官能基を有する結着樹脂は、シェル材料と強く結合し易い。こうした結着樹脂を含有するトナーコアは、シェル層と強固に結合し易くなる。また、結着樹脂としては、活性水素を含む官能基を分子中に有する樹脂も好ましい。
高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂のガラス転移点(Tg)が、20℃以上55℃以下であることが好ましい。また、高速定着時におけるトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂の軟化点(Tm)が100℃以下であることが好ましい。なお、Tg及びTmの各々の測定方法は、後述する実施例と同じ方法又はその代替方法である。樹脂の成分(モノマー)の種類又は量を変更することで、樹脂のTg及び/又はTmを調整することができる。複数種の樹脂を組み合わせることによっても、結着樹脂のTg及び/又はTmを調整することができる。
トナーコアの結着樹脂としては、熱可塑性樹脂(より具体的には、前述の「好適な熱可塑性樹脂」等)が好ましい。トナーコア中の着色剤の分散性、トナーの帯電性、及び記録媒体に対するトナーの定着性を向上させるためには、結着樹脂としてスチレン−アクリル酸系樹脂又はポリエステル樹脂を用いることが特に好ましい。
トナーコアの結着樹脂としてスチレン−アクリル酸系樹脂を使用する場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、スチレン−アクリル酸系樹脂の数平均分子量(Mn)が2000以上3000以下であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は10以上20以下であることが好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
トナーコアの結着樹脂としてポリエステル樹脂を使用する場合、トナーコアの強度及びトナーの定着性を向上させるためには、ポリエステル樹脂の数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂の分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)は9以上21以下であることが好ましい。ポリエステル樹脂のMnとMwの測定には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いることができる。
(着色剤)
トナーコアは、着色剤を含有してもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。トナーを用いて高画質の画像を形成するためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、3質量部以上10質量部以下であることがより好ましい。
トナーコアは、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
トナーコアは、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
(離型剤)
トナーコアは、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーコアのアニオン性を強めるためには、アニオン性を有するワックスを用いてトナーコアを作製することが好ましい。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましく、5質量部以上20質量部以下であることがより好ましい。
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
結着樹脂と離型剤との相溶性を改善するために、相溶化剤をトナーコアに添加してもよい。
(電荷制御剤)
トナーコアは、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり特性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり特性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
トナーコアに負帯電性の電荷制御剤(より具体的には、有機金属錯体又はキレート化合物等)を含有させることで、トナーコアのアニオン性を強めることができる。また、トナーコアに正帯電性の電荷制御剤(より具体的には、ピリジン、ニグロシン、又は4級アンモニウム塩等)を含有させることで、トナーコアのカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナーコアに電荷制御剤を含有させる必要はない。
(磁性粉)
トナーコアは、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれら金属の1種以上を含む合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
磁性粉からの金属イオン(例えば、鉄イオン)の溶出を抑制するためには、磁性粉を表面処理することが好ましい。酸性条件下でトナーコアの表面にシェル層を形成する場合に、トナーコアの表面に金属イオンが溶出すると、トナーコア同士が固着し易くなる。磁性粉からの金属イオンの溶出を抑制することで、トナーコア同士の固着を抑制することができると考えられる。
[シェル層]
本実施形態に係るトナーは、前述の基本構成を有する。シェル層は、第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂と、第2ドメインを構成する第2熱可塑性樹脂とを含有する。第2熱可塑性樹脂としては、例えば、前述の「好適な熱可塑性樹脂」が好ましい。均質なシェル層を形成するためには、第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂と、第2ドメインを構成する第2熱可塑性樹脂とがそれぞれ、アクリル酸系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位を含むことが好ましい。ビニル基(CH2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物は、通常、炭素二重結合「C=C」により付加重合することで、高分子(樹脂)中に繰返し単位として組み込まれる。
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂が、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル(より具体的には、アクリル酸4−ヒドロキシブチル等)に由来する繰返し単位と、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステル(より具体的には、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル等)に由来する繰返し単位と、アルキルアクリルアミド(より具体的には、N,N−ジメチルアクリルアミド等)に由来する繰返し単位とからなる群より選択される1種以上の繰返し単位を含むことが好ましい。また、トナーコアからのシェル層の脱離を抑制するためには、第1ドメインを構成する第1熱可塑性樹脂が、特定繰返し単位に加えて、アクリル酸系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位をさらに含むことが特に好ましい。第1熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステルと、アルキルアクリルアミドとからなる群より選択される1種以上のアクリル酸系モノマーを含む2種以上のアクリル酸系モノマー(例えば、3種類のアクリル酸系モノマー:アクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、及びアルキルアクリルアミド)の重合体であることが特に好ましい。
トナーコアからのシェル層の脱離を抑制するためには、第2ドメインを構成する第2熱可塑性樹脂が、アクリル酸系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位を含むことが好ましい。また、トナーの帯電安定性を向上させるためには、第2ドメインを構成する第2熱可塑性樹脂が、1種以上のスチレン系モノマー(例えば、スチレン)と1種以上のアクリル酸系モノマー(例えば、アクリル酸エステル)との共重合体であることが特に好ましい。スチレン−アクリル酸系樹脂は、ポリエステル樹脂と比べて、疎水性が強く、正帯電し易い傾向がある。
[外添剤]
トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。外添剤は、例えばトナーの流動性又は取扱性を向上させるために使用される。トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の量は、トナー母粒子100質量部に対して、0.5質量部以上10質量部以下であることが好ましい。また、トナーの流動性又は取扱性を向上させるためには、外添剤の粒子径は0.01μm以上1.0μm以下であることが好ましい。
外添剤としては、シリカ粒子、又は金属酸化物(より具体的には、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、又はチタン酸バリウム等)の粒子を好適に使用できる。1種類の外添剤を単独で使用してもよいし、複数種の外添剤を併用してもよい。
[トナーの製造方法]
以下、前述の基本構成を有するトナーを製造する方法の一例について説明する。まず、トナーコアを準備する。続けて、液中にトナーコアとシェル材料とを入れる。均質なシェル層を形成するためには、シェル材料を含む液を攪拌するなどして、シェル材料を液に溶解又は分散させることが好ましい。続けて、液中でシェル材料を反応させて、トナーコアの表面にシェル層(硬化した樹脂)を形成する。シェル層形成時におけるトナーコア成分(特に、結着樹脂及び離型剤)の溶解又は溶出を抑制するためには、水性媒体中でシェル層を形成することが好ましい。水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。
以下、より具体的な例に基づいて、本実施形態に係るトナーの製造方法についてさらに説明する。
(トナーコアの準備)
好適なトナーコアを容易に得るためには、凝集法又は粉砕法によりトナーコアを製造することが好ましく、粉砕法によりトナーコアを製造することがより好ましい。
以下、粉砕法の一例について説明する。まず、結着樹脂と、内添剤(例えば、着色剤、離型剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)とを混合する。続けて、得られた混合物を溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕し、得られた粉砕物を分級する。その結果、所望の粒子径を有するトナーコアが得られる。
以下、凝集法の一例について説明する。まず、結着樹脂、離型剤、及び着色剤の各々の微粒子を含む水性媒体中で、これらの粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。その結果、トナーコアの分散液が得られる。その後、トナーコアの分散液から、不要な物質(界面活性剤等)を除去することで、トナーコアが得られる。
(シェル層の形成)
トナーコアとシェル材料とが入れられる上記水性媒体として、例えばイオン交換水を準備する。続けて、水性媒体のpHを所定のpH(例えば、約7)に調整する。続けて、pHが調整された水性媒体(例えば、中性のイオン交換水)に、トナーコアと、第1熱可塑性樹脂のサスペンション(例えば、水素結合による物理架橋構造を有する非水溶性熱可塑性樹脂粒子を複数含む液)と、第2熱可塑性樹脂のサスペンション(例えば、水素結合による物理架橋構造を有しない疎水性熱可塑性樹脂粒子を複数含む液)とを添加する。また、必要に応じて、熱硬化性樹脂を合成するための材料を、水性媒体中に添加してもよい。
上記トナーコア及びシェル材料は、室温の水性媒体に添加してもよいし、所定の温度に調整(保温)された水性媒体に添加してもよい。シェル材料の適切な添加量は、トナーコアの比表面積に基づいて算出できる。また、上記シェル材料等に加えて、重合促進剤を水性媒体中に添加してもよい。
図4に示すように、第1熱可塑性樹脂粒子12aと第2熱可塑性樹脂粒子12bとは、液中でトナーコア11の表面に付着する。トナーコアの表面に均一にシェル材料を付着させるためには、シェル材料を含む液中にトナーコアを高度に分散させることが好ましい。液中にトナーコアを高度に分散させるために、液中に界面活性剤を含ませてもよいし、強力な攪拌装置(例えば、プライミクス株式会社製「ハイビスディスパーミックス」)を用いて液を攪拌してもよい。トナーコアがアニオン性を有する場合には、同一極性を有するアニオン界面活性剤を使用することで、トナーコアの凝集を抑制できる。界面活性剤としては、例えば、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、リン酸エステル塩、又は石鹸を使用できる。
続けて、上記シェル材料等を含む液を攪拌しながら液の温度を所定の速度(例えば、0.1℃/分以上3℃/分以下から選ばれる速度)で所定の保持温度(例えば、45℃以上85℃以下から選ばれる温度)まで上昇させる。さらに、液を攪拌しながら液の温度を上記保持温度に所定の時間(例えば、30分間以上4時間以下から選ばれる時間)保つ。上記保持温度と、第1熱可塑性樹脂のTgと第2熱可塑性樹脂のTgとを調整することで、第1熱可塑性樹脂粒子及び/又は第2熱可塑性樹脂粒子を、粒子のまま残すことも、溶解させて(又は、変形させて)膜状の形態で硬化させることも可能である。詳しくは、液温を「樹脂粒子のTg−5℃」以上の温度に十分長い時間保つことで、樹脂粒子が溶けて(又は、変形して)膜化する傾向がある。例えば、樹脂粒子のTgが50℃である場合には、液温を45℃以上に保つことで、樹脂粒子を膜化させることができる。また、液温を樹脂粒子のTgよりも十分高い温度に保つことで、いったん樹脂粒子を完全に溶かして、粒状感のない膜を形成することもできる。例えば、第1熱可塑性樹脂粒子及び第2熱可塑性樹脂粒子のうち、第2熱可塑性樹脂粒子のみを溶解させる場合には、溶けた第2熱可塑性樹脂同士が接近して一体化し、膜を形成すると考えられる。一方、第1熱可塑性樹脂粒子が溶解も変形もしない場合には、第1熱可塑性樹脂粒子は粒子のまま存在すると考えられる。上記のようにして、複数の第1熱可塑性樹脂粒子と、これら粒子間に介在する第2熱可塑性樹脂の膜とを備えるシェル層を、トナーコアの表面に形成することができる。また、第1熱可塑性樹脂粒子及び第2熱可塑性樹脂粒子のいずれも膜化しないことで、複数の第1熱可塑性樹脂粒子と複数の第2熱可塑性樹脂粒子とを備えるシェル層を、トナーコアの表面に形成することもできる。こうしたシェル層では、第2熱可塑性樹脂粒子が第1熱可塑性樹脂粒子間に介在することになる。また、第1熱可塑性樹脂粒子及び第2熱可塑性樹脂粒子の両方を膜化させてもよい。特定繰返し単位を含む第1熱可塑性樹脂粒子は、その樹脂中に形成される水素結合の解離温度を超えるまでは、大きな変形をしないと考えられる。
上記保持温度、及びその温度での保持時間の少なくとも一方を変更することで、トナー母粒子の円形度を調整することができる。トナーコア成分の溶出又はトナーコアの変形を抑制するためには、上記保持温度は、トナーコアのガラス転移点(Tg)未満であることが好ましい。しかし、上記保持温度をトナーコアのガラス転移点(Tg)以上にして、あえてトナーコアを変形させてもよい。上記保持温度を高くすると、トナーコアの変形が促進され、トナー母粒子の形状が真球に近づく傾向がある。トナー母粒子が所望の形状になるように上記保持温度を調整することが望ましい。また、高温でシェル材料を反応させると、シェル層が硬くなり易い。上記保持温度に基づいて、シェル層の分子量を制御することもできる。
上記のようにしてシェル層を形成した後、トナー母粒子の分散液を、例えば常温(約25℃)まで冷却する。続けて、例えばブフナー漏斗を用いて、トナー母粒子の分散液をろ過する。これにより、トナー母粒子が液から分離(固液分離)され、ウェットケーキ状のトナー母粒子が得られる。続けて、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子を洗浄する。続けて、洗浄されたトナー母粒子を乾燥する。その後、必要に応じて、混合機(例えば、日本コークス工業株式会社製のFMミキサー)を用いてトナー母粒子と外添剤とを混合して、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させてもよい。なお、乾燥工程でスプレードライヤーを用いる場合には、外添剤(例えば、シリカ粒子)の分散液をトナー母粒子に噴霧することで、乾燥工程と外添工程とを同時に行うことができる。こうして、トナー粒子を多数含むトナーが製造される。
なお、上記トナーの製造方法の内容及び順序はそれぞれ、要求されるトナーの構成又は特性等に応じて任意に変更することができる。例えば、液中で材料(例えば、シェル材料)を反応させる場合、液に材料を添加した後、所定の時間、液中で材料を反応させてもよいし、長時間かけて液に材料を添加して、液に材料を添加しながら液中で材料を反応させてもよい。また、シェル材料は、一度に液に添加されてもよいし、複数回に分けて液に添加されてもよい。また、外添工程の後で、トナーを篩別してもよい。また、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。また、液のpHを調整しなくても、シェル層を形成するための反応が良好に進行する場合には、pH調整工程を割愛してもよい。また、外添剤が不要であれば、外添工程を割愛してもよい。トナー母粒子の表面に外添剤を付着させない(外添工程を割愛する)場合には、トナー母粒子がトナー粒子に相当する。樹脂を合成する場合、樹脂を合成するための材料としては、モノマーを使用してもよいし、プレポリマーを使用してもよい。また、所定の化合物を得るために、原料として、その化合物の塩、エステル、水和物、又は無水物を使用してもよい。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に形成することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーTA−1〜TA−4、TB−1〜TB−7、TC−1〜TC−4、TD−1、及びTD−2(それぞれ静電潜像現像用の正帯電性トナー)を示す。また、表1に示されるトナーの製造に用いられるシェル材料(サスペンションA−1〜A−3及びB−1〜B−6、並びに水溶液C−1及びC−2)を、表2に示す。なお、表2中の「割合」は、特定繰返し単位の割合(単位:mol%)を示す。特定繰返し単位の割合に関しては、計算値を表2に記載しているが、GC/MS法によって測定しても概ね同じ値が得られた。
Figure 2017057474
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以下、トナーTA−1〜TD−2の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。なお、誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。また、個数平均1次粒子径の測定値は、何ら規定していなければ、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子を撮影して測定した値である。また、体積中位径(D50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いて測定した値である。また、Tg(ガラス転移点)及びTm(軟化点)の測定方法はそれぞれ、何ら規定していなければ、次に示すとおりである。
<Tgの測定方法>
示差走査熱量計(セイコーインスツル株式会社製「DSC−6220」)を用いて、試料(例えば、樹脂)の吸熱曲線を求めた。続けて、得られた吸熱曲線から試料のTg(ガラス転移点)を読み取った。得られた吸熱曲線中の比熱の変化点(ベースラインの外挿線と立ち下がりラインの外挿線との交点)の温度が、試料のTg(ガラス転移点)に相当する。
<Tmの測定方法>
高化式フローテスター(株式会社島津製作所製「CFT−500D」)に試料(例えば、樹脂)をセットし、ダイス細孔径1mm、プランジャー荷重20kg/cm2、昇温速度6℃/分の条件で、1cm3の試料を溶融流出させて、試料のS字カーブ(横軸:温度、縦軸:ストローク)を求めた。続けて、得られたS字カーブから試料のTm(軟化点)を読み取った。得られたS字カーブにおいて、ストロークの最大値をS1とし、低温側のベースラインのストローク値をS2とすると、S字カーブ中のストロークの値が「(S1+S2)/2」となる温度が、試料のTm(軟化点)に相当する。
[トナーTA−1の製造方法]
(トナーコアの作製)
低粘度ポリエステル樹脂(Tg=38℃、Tm=65℃)750gと、中粘度ポリエステル樹脂(Tg=53℃、Tm=84℃)100gと、高粘度ポリエステル樹脂(Tg=71℃、Tm=120℃)150gと、カルナバワックス(株式会社加藤洋行製「カルナウバワックス1号」)55gと、着色剤(DIC株式会社製「KET BLUE 111」、フタロシアニンブルー)40gとを、FMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて回転速度2400rpmで混合した。
続けて、得られた混合物を、二軸押出機(株式会社池貝製「PCM−30」)を用いて、投入量(材料供給速度)5kg/時、軸回転速度160rpm、設定温度範囲(シリンダー温度)100℃以上130℃以下の条件で溶融混練した。その後、得られた溶融混練物を冷却した。続けて、冷却された溶融混練物を、粉砕機(ホソカワミクロン株式会社製「ロートプレックス(登録商標)16/8型」)を用いて粗粉砕した。続けて、得られた粗粉砕物を、ジェットミル(日本ニューマチック工業株式会社製「超音波ジェットミルI型」)を用いて微粉砕した。続けて、得られた微粉砕物を、分級機(日鉄鉱業株式会社製「エルボージェットEJ−LABO型」)を用いて分級した。その結果、体積中位径(D50)6μmのトナーコアが得られた。
(シェル材料SAの調製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に30℃のイオン交換水815mLとカチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン(登録商標)24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド25質量%水溶液)75mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた後、その温度(80℃)に保った。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第1の液及び第2の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第1の液は、スチレン68mLとアクリル酸ブチル12mLとの混合液であった。第2の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、固形分濃度8質量%の割合で樹脂微粒子(詳しくは、水素結合による物理架橋構造を有しない疎水性熱可塑性樹脂から実質的に構成される粒子)を含むサスペンション(以下、サスペンションA−1と記載する)が得られた。得られたサスペンションA−1に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は31nmであり、Tgは71℃であった。
(シェル材料SBの調製)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に30℃のイオン交換水790mLとカチオン界面活性剤(花王株式会社製「コータミン24P」、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド25質量%水溶液)30mLとを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を80℃に昇温させた後、その温度(80℃)に保った。続けて、80℃のフラスコ内容物に2種類の液(第3の液及び第4の液)をそれぞれ5時間かけて滴下した。第3の液は、メタクリル酸メチル120mLと、アクリル酸ブチル20mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル10mLとの混合液であった。第4の液は、過硫酸カリウム0.5gをイオン交換水30mLに溶かした溶液であった。続けて、フラスコ内の温度を80℃にさらに2時間保って、フラスコ内容物を重合させた。その結果、固形分濃度15質量%の割合で樹脂微粒子(詳しくは、水素結合による物理架橋構造を有する非水溶性熱可塑性樹脂から実質的に構成される粒子)を含むサスペンション(以下、サスペンションB−1と記載する)が得られた。得られたサスペンションB−1に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は50nmであり、Tgは96℃であった。サスペンションB−1に含まれる樹脂(樹脂微粒子)における特定繰返し単位(水酸基を有する繰返し単位)の割合は5mol%であった。
(シェル層形成工程)
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内にイオン交換水300mLを入れた。その後、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、水酸化ナトリウム又は希塩酸を用いて、フラスコ内容物のpHを7に調整した。続けて、フラスコ内に、シェル材料SA(前述の手順で調製したサスペンションA−1)20mLと、シェル材料SB(前述の手順で調製したサスペンションB−1)10mLとを添加し、フラスコ内容物を十分攪拌した。疎水性樹脂粒子及び非水溶性樹脂粒子をそれぞれ水性媒体中に分散させて、シェル材料の分散液を得た。
続けて、フラスコ内にトナーコア(前述の手順で作製したトナーコア)300gを添加し、フラスコ内容物を回転速度200rpmで1時間攪拌した。その後、フラスコ内にイオン交換水300mLを添加した。続けて、フラスコ内容物を回転速度100rpmで攪拌しながら、フラスコ内の温度を1℃/分の速度で70℃まで上げた。続けて、温度70℃、回転速度100rpmの条件でフラスコ内容物を2時間攪拌した。続けて、フラスコ内容物をその温度が常温(約25℃)になるまで冷却して、トナー母粒子を含む分散液を得た。
(洗浄工程)
上記のようにして得られたトナー母粒子の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状のトナー母粒子を得た。その後、得られたウェットケーキ状のトナー母粒子をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを5回繰り返して、トナー母粒子を洗浄した。
(乾燥工程)
続けて、得られたトナー母粒子を、濃度50質量%のエタノール水溶液に分散させた。これにより、トナー母粒子のスラリーが得られた。続けて、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m3/分の条件で、スラリー中のトナー母粒子を乾燥させた。その結果、トナー母粒子の粉体が得られた。
(外添工程)
続けて、得られたトナー母粒子を外添処理した。詳しくは、トナー母粒子100質量部と乾式シリカ微粒子(日本アエロジル株式会社製「REA90」)1.0質量部とを、容量10LのFMミキサー(日本コークス工業株式会社製)を用いて5分間混合することにより、トナー母粒子の表面に外添剤(シリカ粒子)を付着させた。その後、得られたトナーを、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナーTA−1が得られた。
[トナーTA−2の製造方法]
トナーTA−2の製造方法は、シェル材料SAとして、20mLのサスペンションA−1の代わりに20mLのサスペンションA−2を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
(サスペンションA−2の調製方法)
サスペンションA−2の調製方法は、カチオン界面活性剤(コータミン24P)の使用量を75mLから25mLに変更した以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。サスペンションA−2に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は98nmであり、Tgは68℃であった。
[トナーTA−3の製造方法]
トナーTA−3の製造方法は、シェル材料SAとして、20mLのサスペンションA−1の代わりに20mLのサスペンションA−3を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
(サスペンションA−3の調製方法)
サスペンションA−3の調製方法は、スチレンの使用量を68mLから80mLに変更し、アクリル酸ブチルを使用しなかった以外は、サスペンションA−1の調製方法と同じであった。サスペンションA−3に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は27nmであり、Tgは104℃であった。
[トナーTA−4の製造方法]
トナーTA−4の製造方法は、シェル材料SAとして、20mLのサスペンションA−1の代わりに10mLのポリスチレンスルホン酸ナトリウム水溶液C−1(東ソー株式会社製「ポリナス(登録商標)PS−50」、固形分濃度20質量%)を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
[トナーTB−1の製造方法]
トナーTB−1の製造方法は、シェル材料SBとして、10mLのサスペンションB−1の代わりに10mLのサスペンションB−2を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
(サスペンションB−2の調製方法)
サスペンションB−2の調製方法は、第3の液として、メタクリル酸メチル120mLと、アクリル酸ブチル20mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル10mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル90mLと、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル60mLとの混合液を用いた以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。サスペンションB−2に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は35nmであり、Tgは77℃であった。サスペンションB−2に含まれる樹脂(樹脂微粒子)における特定繰返し単位(アミノ基を有する繰返し単位)の割合は30mol%であった。
[トナーTB−2の製造方法]
トナーTB−2の製造方法は、シェル材料SBとして、10mLのサスペンションB−1の代わりに10mLのサスペンションB−3を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
(サスペンションB−3の調製方法)
サスペンションB−3の調製方法は、第3の液として、メタクリル酸メチル120mLと、アクリル酸ブチル20mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル10mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル125mLと、アクリル酸ブチル23mLと、N,N−ジメチルアクリルアミド2mLとの混合液を用いた以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。サスペンションB−3に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は58nmであり、Tgは105℃であった。サスペンションB−3に含まれる樹脂(樹脂微粒子)における特定繰返し単位(アミド基を有する繰返し単位)の割合は1.5mol%であった。
[トナーTB−3の製造方法]
トナーTB−3の製造方法は、シェル材料SBとして、10mLのサスペンションB−1の代わりに10mLのサスペンションB−4を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
(サスペンションB−4の調製方法)
サスペンションB−4の調製方法は、第3の液として、メタクリル酸メチル120mLと、アクリル酸ブチル20mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル10mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル125mLと、アクリル酸ブチル25mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル0.1mLとの混合液を用いた以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。サスペンションB−4に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は65nmであり、Tgは97℃であった。サスペンションB−4に含まれる樹脂(樹脂微粒子)における特定繰返し単位(水酸基を有する繰返し単位)の割合は0.1mol%であった。
[トナーTB−4の製造方法]
トナーTB−4の製造方法は、シェル材料SBとして、10mLのサスペンションB−1の代わりに10mLのサスペンションB−5を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
(サスペンションB−5の調製方法)
サスペンションB−5の調製方法は、第3の液として、メタクリル酸メチル120mLと、アクリル酸ブチル20mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル10mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル129mLと、アクリル酸ブチル20mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル0.8mLとの混合液を用いた以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。サスペンションB−5に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は61nmであり、Tgは102℃であった。サスペンションB−5に含まれる樹脂(樹脂微粒子)における特定繰返し単位(水酸基を有する繰返し単位)の割合は0.5mol%であった。
[トナーTB−5の製造方法]
トナーTB−5の製造方法は、シェル材料SBとして、10mLのサスペンションB−1の代わりに10mLのサスペンションB−6を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
(サスペンションB−6の調製方法)
サスペンションB−6の調製方法は、第3の液として、メタクリル酸メチル120mLと、アクリル酸ブチル20mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル10mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル75mLと、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル75mLとの混合液を用いた以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。サスペンションB−6に含まれる樹脂微粒子に関して、個数平均1次粒子径は26nmであり、Tgは71℃であった。サスペンションB−6に含まれる樹脂(樹脂微粒子)における特定繰返し単位(水酸基を有する繰返し単位)の割合は50mol%であった。
[トナーTB−6の製造方法]
トナーTB−6の製造方法は、シェル材料SBとして、10mLのサスペンションB−1の代わりに10mLのサスペンションA−2を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
[トナーTB−7の製造方法]
トナーTB−7の製造方法は、シェル材料SBとして、10mLのサスペンションB−1の代わりに10mLのアクリル酸系樹脂水溶液C−2を用いた以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
(アクリル酸系樹脂水溶液C−2の調製方法)
アクリル酸系樹脂水溶液C−2の調製方法は、第3の液として、メタクリル酸メチル120mLと、アクリル酸ブチル20mLと、アクリル酸4−ヒドロキシブチル10mLとの混合液の代わりに、メタクリル酸メチル60mLと、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル90mLとの混合液を用いた以外は、サスペンションB−1の調製方法と同じであった。アクリル酸系樹脂水溶液C−2に含まれる樹脂のTgは94℃であった。アクリル酸系樹脂水溶液C−2に含まれる樹脂における特定繰返し単位(水酸基を有する繰返し単位)の割合は60mol%であった。
[トナーTC−1〜TC−4の製造方法]
トナーTC−1〜TC−4の各々の製造方法は、シェル層形成工程において、シェル材料SA(サスペンションA−1)及びシェル材料SB(サスペンションB−1)の各々の添加量を、表1に示すように変更した以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
[トナーTD−1の製造方法]
トナーTD−1の製造方法は、シェル材料SB(サスペンションB−1)を使用しなかった以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
[トナーTD−2の製造方法]
トナーTD−2の製造方法は、シェル材料SA(サスペンションA−1)を使用しなかった以外は、トナーTA−1の製造方法と同じであった。
[評価方法]
各試料(トナーTA−1〜TD−2)の評価方法は、以下の通りである。
(耐熱保存性)
試料(トナー)2gを容量20mLのポリエチレン製容器に入れて、その容器を、60℃に設定された恒温器内に3時間静置した。その後、恒温器から取り出したトナーを冷却して、評価用トナーを得た。
続けて、得られた評価用トナーを質量既知の100メッシュ(目開き150μm)の篩に載せた。そして、評価用トナーを含む篩の質量を測定し、篩別前のトナーの質量を求めた。続けて、パウダーテスター(ホソカワミクロン株式会社製)に上記篩をセットし、パウダーテスターのマニュアルに従い、レオスタッド目盛り5の条件で30秒間、篩を振動させ、評価用トナーを篩別した。そして、篩別後に、トナーを含む篩の質量を測定することで、篩上に残留したトナーの質量を求めた。篩別前のトナーの質量と、篩別後のトナーの質量(篩別後に篩上に残留したトナーの質量)とから、次の式に基づいて凝集率(単位:質量%)を求めた。
凝集率=100×篩別後のトナーの質量/篩別前のトナーの質量
凝集率が50質量%以下であれば○(良い)と評価し、凝集率が50質量%超であれば×(良くない)と評価した。
(低温定着性)
現像剤用キャリア(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製の「TASKalfa5550ci」用キャリア)100質量部と、試料(トナー)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。
上述のようにして調製した2成分現像剤を用いて画像を形成して、低温定着性を評価した。評価機としては、Roller−Roller方式の加熱加圧型の定着装置を有するカラープリンター(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「FS−C5250DN」を改造して定着温度を変更可能にした評価機)を用いた。上述のようにして調製した2成分現像剤を評価機の現像装置に投入し、試料(補給用トナー)を評価機のトナーコンテナに投入した。
試料(トナー)の低温定着性を評価する場合には、上記評価機を用いて、温度23℃かつ湿度60%RHの環境下、線速200mm/秒、トナー載り量1.0mg/cm2の条件で、90g/m2の紙(A4サイズの普通紙)に、大きさ25mm×25mmのソリッド画像を形成した。続けて、画像が形成された紙を評価機の定着装置に通した。定着温度の設定範囲は100℃以上200℃以下であった。詳しくは、定着装置の定着温度を100℃から徐々に上昇させて、ソリッド画像(トナー像)を紙に定着できる最低温度(最低定着温度)を測定した。
最低定着温度の測定においてソリッド画像(トナー像)を定着させることができたか否かは、以下に示すような折擦り試験で確認した。画像が形成された面が内側となるように紙を折り曲げ、布帛で覆った1kgの分銅を用いて、折り目上を5往復摩擦した。続けて、紙を広げ、紙の折り曲げ部(ソリッド画像が形成された部分)を観察した。そして、折り曲げ部のトナー剥がれの長さ(剥がれ長)を測定した。剥がれ長が1mm未満となる定着温度のうちの最低温度を、最低定着温度とした。
最低定着温度が150℃以下であれば○(良い)と評価し、最低定着温度が150℃を超えれば×(良くない)と評価した。
[評価結果]
トナーTA−1〜TD−2の各々についての評価結果(耐熱保存性:凝集率、低温定着性:最低定着温度)を、表3に示す。
Figure 2017057474
トナーTA−1〜TA−3、TB−1、TB−2、TB−4、TB−5、及びTC−1〜TC−4(実施例1〜11に係るトナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、表1及び表2に示されるように、実施例1〜11に係るトナーではそれぞれ、シェル層が、複数の第1ドメインと、複数の第1ドメインの間に介在する第2ドメインとを有していた。複数の第1ドメインはそれぞれ、実質的に第1熱可塑性樹脂(詳しくは、水素結合による物理架橋構造を有する非水溶性熱可塑性樹脂)から構成されていた。第2ドメインは、実質的に第2熱可塑性樹脂(詳しくは、水素結合による物理架橋構造を有しない疎水性熱可塑性樹脂)から構成されていた。また、第1熱可塑性樹脂が特定繰返し単位(水酸基、アミノ基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基を有する繰返し単位)を含んでいた。また、第1熱可塑性樹脂に含まれる全ての繰返し単位のうち、特定繰返し単位の割合は0.5mol%以上50mol%以下であった(表2参照)。
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いてトナー粒子の表面を観察したところ、シェル材料SAに含まれる樹脂粒子と、シェル材料SBに含まれる樹脂粒子とは、シェル層形成工程を経て、表1中の「形態」に示されるような形態になっていた。トナーTA−1〜TA−2、TB−1、TB−2、TB−4、及びTC−1〜TC−4ではそれぞれ、複数の第1ドメインが島状に分布し、第2ドメインが海状に分布する海島構造を、シェル層が有していた。詳しくは、第1ドメインの少なくとも1つと、第2ドメインの少なくとも一部とがそれぞれ、シェル層の表面に露出していた。複数の第1ドメインはそれぞれ、実質的に第1熱可塑性樹脂から構成される粒子であった(表1中の「形態」参照)。第2ドメインは、実質的に第2熱可塑性樹脂から構成される膜であった(表1中の「形態」参照)。シェル層形成工程においては、シェル材料SAに含まれる樹脂粒子の膜化により、シェル材料SA(トナーTA−1では、サスペンションA−1)に含まれる樹脂粒子の粒子径(表2参照)の約2分の1の厚さの第2ドメインが形成された。第1ドメインの個数平均1次粒子径は、シェル材料SB(トナーTA−1では、サスペンションB−1)に含まれる樹脂粒子の粒子径(表2参照)と同じであった。トナーTA−1〜TA−2、TB−1、TB−2、TB−4、及びTC−1〜TC−4ではそれぞれ、第1ドメインの個数平均1次粒子径が20nm以上70nm以下であり、第2ドメインの厚さが10nm以上60nm以下であった。
表3に示されるように、実施例1〜11に係るトナーはそれぞれ、耐熱保存性と低温定着性との両方に優れていた。また、実施例1〜11に係るトナーではそれぞれ、遊離ホルムアルデヒドの量及び遊離イソシアネートの量がそれぞれ少なかった。
本発明に係る静電潜像現像用トナーは、例えば複写機、プリンター、又は複合機において画像を形成するために用いることができる。

Claims (10)

  1. コアと、前記コアの表面に形成されたシェル層とを備えるトナー粒子を、複数含む静電潜像現像用トナーであって、
    前記シェル層は、複数の第1ドメインと、少なくとも前記複数の第1ドメインの間に介在する第2ドメインとを有し、
    前記複数の第1ドメインはそれぞれ、第1熱可塑性樹脂から実質的に構成され、
    前記第2ドメインは、前記第1熱可塑性樹脂よりも強い疎水性を有する第2熱可塑性樹脂から実質的に構成され、
    前記第1熱可塑性樹脂は、水酸基、アミノ基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基を有する特定繰返し単位を1種以上含み、
    前記第1熱可塑性樹脂に含まれる全ての繰返し単位のうち、前記特定繰返し単位の割合は、0.5mol%以上50mol%以下である、静電潜像現像用トナー。
  2. 前記シェル層は、前記複数の第1ドメインが島状に分布し、前記第2ドメインが海状に分布する海島構造を有し、
    前記複数の第1ドメインはそれぞれ、前記第1熱可塑性樹脂から実質的に構成される粒子であり、
    前記第2ドメインは、前記第2熱可塑性樹脂から実質的に構成される膜である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  3. 前記複数の第1ドメインの個数平均1次粒子径は20nm以上70nm以下であり、前記第2ドメインの厚さは10nm以上60nm以下である、請求項2に記載の静電潜像現像用トナー。
  4. 前記第1熱可塑性樹脂のガラス転移点は、前記第2熱可塑性樹脂のガラス転移点よりも高く、かつ、前記第1熱可塑性樹脂のガラス転移点は75℃以上120℃以下である、請求項3に記載の静電潜像現像用トナー。
  5. 前記シェル層を構成する全ての樹脂のうち、ホルムアルデヒド又はイソシアネートに基づく重合反応によって生成される熱硬化性樹脂の割合が、5質量%以下である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  6. 前記第1熱可塑性樹脂は、前記特定繰返し単位として、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルに由来する繰返し単位と、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステルに由来する繰返し単位と、アルキルアクリルアミドに由来する繰返し単位とからなる群より選択される1種以上の繰返し単位を含む、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  7. 前記第1熱可塑性樹脂及び前記第2熱可塑性樹脂はそれぞれ、アクリル酸系モノマーに由来する1種以上の繰返し単位を含む、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
  8. 前記第1熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルと、(メタ)アクリル酸アルキルアミノアルキルエステルと、アルキルアクリルアミドとからなる群より選択される1種以上のアクリル酸系モノマーを含む2種以上のアクリル酸系モノマーの重合体である、請求項7に記載の静電潜像現像用トナー。
  9. 前記第2熱可塑性樹脂は、1種以上のスチレン系モノマーと1種以上のアクリル酸系モノマーとの共重合体である、請求項7に記載の静電潜像現像用トナー。
  10. 前記第1熱可塑性樹脂は、水素結合による物理架橋構造を有する非水溶性熱可塑性樹脂であり、
    前記第2熱可塑性樹脂は、水素結合による物理架橋構造を有しない疎水性熱可塑性樹脂である、請求項1に記載の静電潜像現像用トナー。
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