JP6348361B2 - トナーバインダーおよびトナー組成物 - Google Patents
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Description
結晶性樹脂をトナー組成物中に添加することにより、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立を目指したトナー組成物が知られている(特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載のトナー組成物は、帯電安定性が劣るという課題があり、また、近年、低温定着性の更なる向上が要求されていることから、低温定着性が不十分である。
本発明のトナーバインダーは、非結晶性ポリエステル樹脂(A)と、結晶性部(b)のみで構成される結晶性ポリエステル樹脂(B)と、結晶性部(b)と非結晶性部(c)とで構成されるブロック樹脂(C)を含有する。
一方、本発明における非結晶性とは、樹脂のTmとTbとの比〔Tm/Tb〕が1.55より大きいことを意味する。
(Tm)、(Tb)は以下の方法で測定することができる。
<(Tm)の測定方法>
高化式フローテスター{例えば「CFT−500D」[(株)島津製作所製]}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、プランジャーの降下量の最大値の1/2に対応する温度をグラフから読み取り、この値(測定試料の半分が流出したときの温度)を(Tm)とする。
<(Tb)の測定方法>
示差走査熱量計{例えば「DSC210」[セイコーインスツル(株)製]}を用いて
測定する。
(Tb)の測定に供する(A)は、前処理として、130℃で溶融した後、130℃から70℃まで1.0℃/分の速度で降温し、次に70℃から10℃まで0.5℃/分の速度で降温する。ここで、一度DSCにより、昇温速度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して、「吸発熱量」と「温度」とのグラフを描き、このとき観測される20〜100℃にある吸熱ピークの最大値を示す温度を(Tb)’とする。複数ある場合は最も吸熱量が大きいピークの温度を(Tb)’とする。最後に試料を(Tb’−10)℃で6時間保管した後、(Tb’−15)℃で6時間保管する。
次いで、前記(A)を、DSCにより降温速度10℃/分で0℃まで冷却した後、昇温
速度20℃/分で昇温して吸発熱変化を測定して同様のグラフを描き、吸熱量の最大ピー
クに対応する温度を、融解熱の最大ピーク温度(Tb)とする。
カルボン酸成分(x)としては、ジカルボン酸(x1)、3価以上のポリカルボン酸(x2)、およびモノカルボン酸(x3)が挙げられる。
ジカルボン酸(x1)としては、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸(例えばフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、およびナフタレンジカルボン酸等);炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸(例えばコハク酸、アジピン酸、およびセバシン酸);炭素数6〜40の脂環式ジカルボン酸〔例えばダイマー酸(2量化リノール酸)〕;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸(例えば、ドデセニルコハク酸等のアルケニルコハク酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、およびメサコン酸);およびこれらのエステル形成性誘導体;等が挙げられる。
上記エステル形成性誘導体としては、酸無水物、アルキル(炭素数1〜24:メチル、エチル、ブチル、ステアリル等、好ましくは炭素数1〜4)エステル、および部分アルキル(上記と同様)エステル等が挙げられる。以下のエステル形成性誘導体についても同様である。
これらのうち好ましいものは、炭素数8〜36の芳香族ジカルボン酸;炭素数4〜36のアルカンジカルボン酸;炭素数4〜36のアルケンジカルボン酸および、これらのエステル形成性誘導体であり、さらに好ましくは、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、マレイン酸、フマル酸、および/またはそれらのエステル形成性誘導体である。
これらのうち好ましいものは、トリメリット酸、ピロメリット酸、およびこれらのエステル形成性誘導体である。
炭素数1〜30の脂肪族(脂環式を含む)モノカルボン酸(x31)としては、炭素数1〜30(好ましくは1〜24)のアルカンモノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、イソブタン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、セロチン酸、モニタン酸、およびメリシン酸等)、炭素数3〜30(好ましくは3〜24)のアルケンモノカルボン酸(アクリル酸、メタクリル酸、オレイン酸、およびリノール酸等)などが挙げられる。
また、(x)中のポリカルボン酸(x2)の量としては25モル%以下が好ましく、さらに好ましくは0.1〜20モル%、とくに好ましくは0.5〜18モル%である。
また、(x)中のモノカルボン酸(x3)の量としては20モル%以下が好ましく、さらに好ましくは0.1〜15モル%、とくに好ましくは0.5〜10モル%である。
ジオール(y1)としては、炭素数2〜10のアルキレングリコール(エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,9−ノナンジオール、および1,10−デカンジオール等);炭素数4〜10のアルキレンエーテルグリコール(ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール等);炭素数11〜36のアルキレングリコール(1,12−ドデカンジオール等);炭素数11〜36のアルキレンエーテルグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、およびポリテトラメチレンエーテルグリコール等);炭素数6〜36の脂環式ジオール(1,4−シクロヘキサンジメタノール、および水素添加ビスフェノールA等);上記脂環式ジオールの(ポリ)オキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜4(オキシエチレン、オキシプロピレン等)。以下のポリオキシアルキレン基も同じ)エーテル〔オキシアルキレン単位(以下AO単位と略記)の数1〜30〕;および2価フェノール〔単環2価フェノール(例えばハイドロキノン)、およびビスフェノール類(ビスフェノールA、ビスフェノールFおよびビスフェノールS等)〕のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30);等が挙げられる。
これら(y1)のうち、低温定着性と耐ホットオフセット性の両立の観点から、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、およびビスフェノール類のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)が好ましい。
これらのうち好ましいものは、3〜8価もしくはそれ以上の脂肪族多価アルコール、およびノボラック樹脂のポリオキシアルキレンエーテル(AO単位の数2〜30)である。
ポリオール成分(y)とポリカルボン酸成分(x)との反応比率は、水酸基とカルボキシル基の当量比[OH]/[COOH]として、好ましくは2/1〜1/2、さらに好ましくは1.5/1〜1/1.3、とくに好ましくは1.3/1〜1/1.2である。
このとき必要に応じてエステル化触媒を使用することができる。エステル化触媒の例には、スズ含有触媒(例えばジブチルスズオキシド)、三酸化アンチモン、チタン含有触媒[例えばチタンアルコキシド、シュウ酸チタン酸カリウム、テレフタル酸チタン、特開2006−243715号公報に記載の触媒〔チタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)、チタニウムモノヒドロキシトリス(トリエタノールアミネート)、およびそれらの分子内重縮合物等〕、および特開2007−11307号公報に記載の触媒(チタントリブトキシテレフタレート、チタントリイソプロポキシテレフタレート、およびチタンジイソプロポキシジテレフタレート等)]、ジルコニウム含有触媒(例えば酢酸ジルコニル)、および酢酸亜鉛等が挙げられる。これらの中で好ましくはチタン含有触媒である。
非結晶性線形ポリエステル樹脂(AL)の軟化点(Tm)は70〜120℃であり、73〜118℃が好ましく、更に好ましくは75〜115℃である。この範囲であると、トナーの低温定着性が良好となる。
また、非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH)の軟化点(Tm)は、115〜165℃が好ましく、さらに好ましくは118〜163℃、特に好ましくは120〜160℃である。この範囲であると、トナーの耐ホットオフセット性と低温定着性の両立が良好となる。
なお、非結晶性線形ポリエステル樹脂(AL)および非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH)の(Tm)は、上記の方法で測定される。
また、非結晶性線形ポリエステル樹脂(AL)および非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH)の水酸基価は、好ましくは0〜100(mgKOH/g、以下同じ)、さらに好ましくは0〜80、とくに好ましくは0〜50である。水酸基価が100以下であるとトナーとして用いた時の耐ホットオフセット性がより良好となる。
なお、試料に架橋にともなう溶剤不溶解分がある場合は、以下の方法で溶融混練後のものを試料として用いる。
混練装置 : 東洋精機(株)製 ラボプラストミル MODEL4M150
混練条件 : 130℃、70rpmにて30分
また、非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH)のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のMpは、トナーの耐久性と低温定着性の両立の観点から、2000〜20000が好ましく、さらに好ましくは3000〜18500、特に好ましくは4000〜17000である。
装置(一例) : 東ソー(株)製 HLC−8120
カラム(一例): TSK GEL GMH6 2本 〔東ソー(株)製〕
測定温度 : 40℃
試料溶液 : 0.25重量%のTHF(テトラヒドロフラン)溶液
溶液注入量 : 100μl
検出装置 : 屈折率検出器
基準物質 : 東ソー(株)製 標準ポリスチレン(TSKstandard POLYSTYRENE)12点(分子量 500 1050 2800 5970 910018100 37900 96400 190000 355000 1090000 2890000)
得られたクロマトグラム上最大のピーク高さを示す分子量をピークトップ分子量(Mp)と称する。また、分子量の測定は、ポリエステル樹脂をTHFに溶解し、不溶解分をグラスフィルターでろ別したものを試料溶液とする。
また、非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH)のガラス転移温度(Tg)は、定着性および耐久性等の観点から、35〜80℃が好ましく、さらに好ましくは40〜82℃、特に好ましくは45〜80℃である。
なお、上記および以下において、(Tg)は、セイコーインスツル(株)製DSC20、SSC/580を用いて、ASTM D3418−82に規定の方法(DSC法)で測定される。
(Tb+20)℃におけるG’が50Pa未満であると、低温定着時でもホットオフセットが起き、定着温度領域が狭くなる。また1×106Paを超えると低温側で定着可能な粘性になりにくく、低温での定着性が悪化する。
本発明において、動的粘弾性測定値(貯蔵弾性率G’、損失弾性率G”)は、Rheometric Scientific社製 動的粘弾性測定装置 RDS−2を用い周波数1Hz条件下で測定される。
測定試料は、測定装置の冶具にセットした後、(Tb+30)℃まで昇温して冶具に密着させてから、(Tb+30)℃から(Tb−30)℃まで0.5℃/分の速度で降温し、(Tb−30)℃で1時間静置し、次いで(Tb−10)℃まで0.5℃/分の速度で昇温し、さらに(Tb−10)℃で1時間静置し、十分に結晶化を進行させたのち、これを用いて測定を行う。測定温度範囲は30℃〜200℃で、この温度間のバインダー溶融粘弾性を測定することによって、温度−G’、温度−G”の曲線として得ることができる。
(条件1)を満たす結晶性ポリエステル樹脂(B)は、組成や分子量を調整すること等により得ることができる。例えば、分子量を低下させることにより、G’(Tb+20)の値は小さくなる。
〔X〕は、具体的には30〜100℃が好ましく、さらに好ましくは40〜80℃である。
溶融開始温度〔X〕は、次のようにして測定される値である。
<溶融開始温度>
フローテスター{たとえば、(株)島津製作所製、CFT−500D}を用いて、1gの測定試料を昇温速度6℃/分で加熱しながら、プランジャーにより1.96MPaの荷重を与え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出して、「プランジャー降下量(流れ値)」と「温度」とのグラフを描き、試料の熱膨張によるピストンのわずかな上昇が行われた後、再びピストンが明らかに下降し始める点の温度をグラフから読み取り、この値を溶融開始温度とする。
(条件2)|logG”(X+20)−logG”(X)|>2.0
[G”:損失弾性率[Pa]]
(条件2−2)|logG”(X+20)−logG”(X)|>2.5
(条件2−3)|logG”(X+15)−logG”(X)|>2.5
結晶性ポリエステル樹脂(B)の溶融開始温度〔X〕が上記範囲内であり、かつ(条件2)を満たすと、樹脂の低粘性化速度が速く、定着温度領域の低温側、高温側で同等の画質を得ることができる。また、溶融開始から定着可能粘性に至るまでが速く、優れた低温定着性を得るのに有利である。(条件2)は、どれだけ早く、少ない熱で定着できるかという、樹脂のシャープメルト性の指標であり、実験的に求めたものである。
溶融開始温度〔X〕の範囲、および(条件2)を満たす結晶性ポリエステル樹脂(B)は、(B)の構成成分中の結晶性成分の比率を調整すること等により得ることができる。例えば、結晶性成分の比率を大きくすると、(Tb)と〔X〕の温度差が小さくなる。
また、(B)としてはウレタンもしくはウレア変性された結晶性ポリエステル樹脂を用いることがより好ましい。
<鉛筆硬度>
JIS K5600−5−4に準じて、斜め45度に固定した鉛筆の真上から10gの荷重をかけ引っ掻き試験を行い、傷の付かない鉛筆の硬度を鉛筆硬度とする。
結晶性部(b)に用いられる樹脂は、結晶性を有するポリエステル樹脂であり、特に直鎖ポリエステル樹脂が好ましい。
本発明において、融点は(Tb)と同様、示差走査熱量計{たとえば、セイコーインスツル(株)製、DSC210}で測定される。
なお、ポリエステル樹脂としては、重縮合ポリエステル樹脂以外に、ラクトン開環重合物およびポリヒドロキシカルボン酸も同様に好ましい。
ジオール成分としては、脂肪族ジオールが好ましく、炭素数が2〜36の範囲であることが好ましい。また直鎖型脂肪族ジオールがより好ましい。
脂肪族ジオールが分岐型では、ポリエステル樹脂の結晶性が低下し、融点が降下するため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、及び、低温定着性が悪化してしまう場合がある。また、炭素数が36を超えると、実用上の材料の入手が困難な場合がある。
カルボキシル基を有するジオールとしては、ジアルキロールアルカン酸[C6〜24のもの、例えば2,2−ジメチロールプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロールブタン酸、2,2−ジメチロールヘプタン酸、2,2−ジメチロールオクタン酸など]が挙げられる。
スルホン酸基もしくはスルファミン酸基を有するジオールとしては、スルファミン酸ジオール[N,N−ビス(2−ヒドロキシアルキル)スルファミン酸(アルキル基のC1〜6)またはそのAO付加物(AOとしてはEOまたはPOなど、AOの付加モル数1〜6):例えばN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸およびN,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)スルファミン酸PO2モル付加物など];ビス(2−ヒドロキシエチル)スルフォネートなどが挙げられる。
これらの中和塩基を有するジオールの中和塩基としては、例えば前記炭素数3〜30の3級アミン(トリエチルアミンなど)および/またはアルカリ金属(ナトリウムなど)が挙げられる。
これらのうち好ましいものは、炭素数2〜12のアルキレングリコール、カルボキシル基を有するジオール、ビスフェノール類のAO付加物、およびこれらの併用である。
これらのうち好ましいものは、3〜8価またはそれ以上の多価脂肪族アルコールおよびノボラック樹脂のAO付加物であり、さらに好ましいものはノボラック樹脂のAO付加物である。
ジカルボン酸成分としては、種々のジカルボン酸が挙げられるが、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸が好ましく、脂肪族ジカルボン酸は直鎖型のカルボン酸がより好ましい。
なお、ジカルボン酸または3〜6価またはそれ以上のポリカルボン酸としては、上述のものの酸無水物または炭素数1〜4の低級アルキルエステル(メチルエステル、エチルエステル、イソプロピルエステルなど)を用いてもよい。
これらジカルボン酸の中では、脂肪族ジカルボン酸(特に直鎖型のカルボン酸)を単独で用いるのが特に好ましいが、脂肪族ジカルボン酸と共に芳香族ジカルボン酸(テレフタル酸、イソフタル酸、t−ブチルイソフタル酸、および、これらの低級アルキルエステル類が好ましい。)を共重合したものも同様に好ましい。芳香族ジカルボン酸の共重合量としては20モル%以下が好ましい。
ジカルボン酸成分としては、主には上記のカルボン酸が挙げられるが、この限りではない。これらのうち、結晶性や入手容易性を考慮すると、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、テレフタル酸、およびイソフタル酸が好ましい。
開始剤として、グリコールを用いると、末端にヒドロキシル基を有するラクトン開環重合物が得られる。例えば、上記ラクトン類とエチレングリコール、ジエチレングリコール等の前記ジオール成分を触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物等が一般的であり、0.1〜5000ppm程度の割合で添加して、100〜230℃で、好ましくは不活性雰囲気下に重合させることによって、ラクトン開環重合物を得ることができる。ラクトン開環重合物は、その末端を例えばカルボキシル基になるように変性したものであってもよい。ラクトン開環重合物は、結晶性の高い熱可塑性脂肪族ポリエステル樹脂である。ラクトン開環重合物は、市販品を用いてもよく、例えば、(株)ダイセル製のプラクセルシリーズの230、240、H1Pなど(いずれも、融点約60℃のポリカプロラクトン)が挙げられる。
開始剤として、グリコールを用いると、末端にヒドロキシル基を有するポリヒドロキシカルボン酸骨格が得られる。例えば、上記環状エステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール等の前記ジオール成分を触媒の存在下で反応させることにより得ることができる。触媒としては、有機スズ化合物、有機チタン化合物、有機ハロゲン化スズ化合物等が一般的であり、0.1〜5000ppm程度の割合で添加して、100〜230℃で、好ましくは不活性雰囲気下に重合させることによって、ポリヒドロキシカルボン酸を得ることができる。ポリヒドロキシカルボン酸は、その末端を例えばカルボキシル基になるように変性したものであってもよい。
ウレタンもしくはウレア変性することにより、トナーとして用いた時の耐ホットオフセット性がより良好となる。
ジイソシアネートとしては、炭素数(NCO基中の炭素を除く、以下同様)6〜20の芳香族ジイソシアネート、炭素数2〜18の脂肪族ジイソシアネート、炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネート、炭素数8〜15の芳香脂肪族ジイソシアネートおよびこれらのジイソシアネートの変性物(ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物など)およびこれらの2種以上の混合物が挙げられる。また、必要により、3価以上のポリイソシアネートを併用してもよい。
上記脂肪族ジイソシアネートの具体例(3価以上のポリイソシアネートを含む)としては、エチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ドデカメチレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,6−ジイソシアナトメチルカプロエート、ビス(2−イソシアナトエチル)フマレート、ビス(2−イソシアナトエチル)カーボネートなどが挙げられる。
上記脂環式ジイソシアネートの具体例としては、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート(水添MDI)、シクロヘキシレンジイソシアネート、メチルシクロヘキシレンジイソシアネート(水添TDI)、ビス(2−イソシアナトエチル)−4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボキシレート、2,5−および/または2,6−ノルボルナンジイソシアネートなどが挙げられる。
上記芳香脂肪族ジイソシアネートの具体例としては、m−および/またはp−キシリレンジイソシアネート(XDI)、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)などが挙げられる。
また、上記ジイソシアネートの変性物には、ウレタン基、カルボジイミド基、アロファネート基、ウレア基、ビューレット基、ウレトジオン基、ウレトイミン基、イソシアヌレート基、オキサゾリドン基含有変性物などが挙げられる。
具体的には、変性MDI(ウレタン変性MDI、カルボジイミド変性MDI、トリヒドロカルビルホスフェート変性MDIなど)、ウレタン変性TDIなどのジイソシアネートの変性物およびこれらの2種以上の混合物[たとえば変性MDIとウレタン変性TDI(イソシアネート含有プレポリマー)との併用]が含まれる。
これらのうちで好ましいものは6〜15の芳香族ジイソシアネート、炭素数4〜12の脂肪族ジイソシアネート、および炭素数4〜15の脂環式ジイソシアネートであり、とくに好ましいものはTDI、MDI、HDI、水添MDI、およびIPDIである。
ジアミン(必要により用いられる3価以上のポリアミンを含む)の例として、脂肪族ジアミン類(C2〜C18)としては、〔1〕脂肪族ジアミン{C2〜C6 アルキレンジアミン(エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミンなど);〔2〕これらのアルキル(C1〜C4)またはヒドロキシアルキル(C2〜C4)置換体〔ジアルキル(C1〜C3)アミノプロピルアミン、トリメチルヘキサメチレンジアミン、アミノエチルエタノールアミン、2,5−ジメチル−2,5−ヘキサメチレンジアミン、メチルイミノビスプロピルアミンなど〕;〔3〕脂環または複素環含有脂肪族ジアミン{脂環式ジアミン(C4〜C15)〔1,3−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、メンセンジアミン、4,4´−メチレンジシクロヘキサンジアミン(水添メチレンジアニリン)など〕、複素環式ジアミン(C4〜C15)〔3,9−ビス(3−アミノプロピル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなど〕;〔4〕芳香環含有脂肪族アミン類(C8〜C15)(キシリレンジアミン、テトラクロル−p−キシリレンジアミンなど)、等が挙げられる。
例えば、結晶性部(b)とジイソシアネートともに溶解可能な溶剤に溶解させ、反応温度80℃〜150℃で反応することにより、ウレタン変性されたポリエステル樹脂が得られる。
SP値が上記範囲では、非結晶性ポリエステル樹脂(A)と併用したときの耐久性が良好となる。また、SP値が12.5以下であると、耐ブロッキング性が良好となる。
なお、本発明におけるSP値は、Fedorsらが提案した下記の文献に記載の方法によって計算されるものである。
「POLYMER ENGINEERING AND SCIENCE,FEBRUARY,1974,Vol.14,No.2,ROBERT F.FEDORS.(147〜154頁)」
結晶性部(b)と非結晶性部(c)とで構成されるブロックポリマーは、それぞれの末端官能基の反応性を考慮して結合剤の使用、非使用を選択し、また使用の際は末端官能基にあった結合剤種を選択し、(b)と(c)を結合させ、ブロックポリマーとすることができる。
結合剤を使わない場合、必要により加熱減圧しつつ、(b)を形成する樹脂の末端官能基と(c)を形成する樹脂の末端官能基の反応を進める。特に酸とアルコールとの反応や酸とアミンとの反応の場合、片方の樹脂の酸価が高く、もう一方の樹脂の水酸基価やアミン価が高い場合、反応がスムーズに進行する。反応温度は180℃〜230℃で行うのが好ましい。
結合剤を使う場合は、種々の結合剤が使用できる。多価カルボン酸、多価アルコール、多価イソシアネート、多官能エポキシ、酸無水物等を用いて、脱水反応や、付加反応を行うことで得られる。
多価カルボン酸および酸無水物としては、前記ジカルボン酸成分と同様のものが挙げられる。多価アルコールとしては、前記ジオール成分と同様のものが挙げられる。多価イソシアネートとしては、前記ジイソシアネート成分と同様のものが挙げられる。多官能エポキシとしては、ビスフェノールA型および−F型エポキシ化合物、フェノールノボラック型エポキシ化合物、クレゾールノボラック型エポキシ化合物、水添ビスフェノールA型エポキシ化合物、ビスフェノールAまたは−FのAO付加体のジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAのAO付加体のジグリシジルエーテル、ジオール(エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等)の各ジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジおよび/またはトリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールトリおよび/またはテトラグリシジルエーテル、ソルビトールヘプタおよび/またはヘキサグリシジルエーテル、レゾルシンジグリシジルエーテル、ジシクロペンタジエン・フェノール付加型グリシジルエーテル、メチレンビス(2,7−ジヒドロキシナフタレン)テトラグリシジルエーテル、1,6−ジヒドロキシナフタレンジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
付加反応の例としては、結晶性部(b)、非結晶性部(c)とも末端に水酸基を有する樹脂であり、これらを結合剤(例えば多価イソシアネート)で結合する反応や、また結晶性部(b)、非結晶性部(c)の片方が末端に水酸基を有する樹脂で、もう一方が末端にイソシアネート基を有する樹脂の場合、結合剤を用いずにこれらを結合する反応が挙げられる。この場合、例えば、結晶性部(b)、非結晶性部(c)ともに溶解可能な溶剤に溶解させ、これに必要であるなら結合剤を投入し、反応温度80℃〜150℃で反応し、ブロックポリマーが得られる。
(c)のMwは、500〜50000が好ましく、さらに好ましくは750〜30000であり、特に好ましくは1000〜20000である。
(c)−(b)−(c) (2)
(b)−(c)−(b)−(c)−(b) (3)
(c)−(b)−(c)−(b)−(c) (4)
(b)−(c)−(b)−(c)−(b)−(c)−(b) (5)
(c)−(b)−(c)−(b)−(c)−(b)−(c) (6)
また、結晶性部(b)と非結晶性部(c)が1個ずつの(b)−(c)に比べて(C)の溶融後の弾性が良好であり、定着時にホットオフセットが発生しにくく定着温度領域がより広くなる。
なお、(C)が結晶性となり低温定着性を悪化させなくなることから、(C)の両末端が結晶性部(b)である方がより好ましい。
溶融混合する場合の混合装置としては、反応槽等のバッチ式混合装置、および連続式混合装置が挙げられる。適正な温度で短時間で均一に混合するためには、連続式混合装置が好ましい。連続混合装置としては、エクストルーダー、コンティニアスニーダー、3本ロール等が挙げられる。
海島構造は、例えば、(A)、(B)および(C)を、ラボプラストミルを使用し130℃で70rpmにて30分間溶融混合後、冷却した混合樹脂を切片化し、四酸化ルテニウムにより染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用し倍率5,000〜50,000倍で観察することにより確認できる。
この場合、観察される(B)の体積平均粒径は、好ましくは10nm〜3μmであり、さらに好ましくは50nm〜2.5μmであり、特に好ましくは100nm〜2μmである。
なお、非結晶性ポリエステル樹脂(A)が非結晶性線形ポリエステル樹脂(AL)または非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH)のいずれかのみしか含有しない場合は、非結晶性ポリエステル樹脂(A)と結晶性ポリエステル樹脂(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSP値(A−B)が1.0〜3.0(cal/cm3)1/2であることが好ましく、より好ましくは、1.1〜3.0、特に好ましくは1.2〜3.0である。この範囲のとき、結晶性ポリエステル樹脂(B)が非結晶性ポリエステル樹脂(A)中に均一に相分離した状態で分散するためポリエステル樹脂の耐ブロッキング性が良好となる。
着色剤の含有量は、本発明のトナーバインダー100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部、さらに好ましくは3〜10重量部である。なお、磁性粉を用いる場合は、好ましくは20〜150重量部、さらに好ましくは40〜120重量部である。
ポリオレフィンワックスとしては、オレフィン(例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセン、1−ドデセン、1−オクタデセンおよびこれらの混合物等)の(共)重合体[(共)重合により得られるものおよび熱減成型ポリオレフィンを含む]、オレフィンの(共)重合体の酸素および/またはオゾンによる酸化物、オレフィンの(共)重合体のマレイン酸変性物[例えばマレイン酸およびその誘導体(無水マレイン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノブチルおよびマレイン酸ジメチル等)変性物]、オレフィンと不飽和カルボン酸[(メタ)アクリル酸、イタコン酸および無水マレイン酸等]および/または不飽和カルボン酸アルキルエステル[(メタ)アクリル酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステルおよびマレイン酸アルキル(アルキルの炭素数1〜18)エステル等]等との共重合体、およびサゾールワックス(登録商標)等が挙げられる。
また、転相乳化法によりトナーを得る場合、流動化剤を除くトナーを構成する成分を有機溶剤に分散後、水を添加する等によりエマルジョン化し、次いで分離、分級して製造することができる。トナーの体積平均粒径は、3〜15μmが好ましい。
冷却管、撹拌機および窒素導入管の付いた反応槽(以下の製造例に用いる反応槽も同様。)中に、テレフタル酸400重量部(87.3モル部)、安息香酸32重量部(9.5モル部)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物558重量部(62.0モル部)、1,2−プロピレングリコール232重量部(下記回収分150重量部を差し引くと38.0モル部)、重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5重量部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に1時間反応させた。次いで、常圧下180℃で無水トリメリット酸17重量部(3.2モル部)を加え、常圧下で1時間反応させて取り出した。回収された1,2−プロピレングリコールは150重量部であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを非結晶性線形ポリエステル樹脂(AL−1)とする。
(AL−1)のMpは5000、(Tg)は62℃、(Tm)は106℃、酸価は10、水酸基価は28、SP値は11.6であった。
反応槽中に、テレフタル酸265重量部(91.4モル部)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物770重量部(100.0モル部)、重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート3重量部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に1時間反応させた。次いで、常圧下180℃で無水トリメリット酸29重量部(8.6モル部)を加え、常圧下で1時間反応させて取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを非結晶性線形ポリエステル樹脂(AL−2)とする。
(AL−2)のMpは3500、(Tg)は58℃、(Tm)は95℃、酸価は15、水酸基価は65、SP値は10.9であった。
反応槽中に、テレフタル酸415重量部(54.6モル部)、イソフタル酸275重量部(36.5モル部)、エチレングリコール345重量部(下記回収分235重量部を差し引くと40.0モル部)、ネオペンチルグリコール285重量部(60.0モル部)、重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート3重量部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸77重量部(8.9モル部)を加え、常圧下で1時間反応させた後、2.5〜5kPaの減圧下で反応させ軟化点145℃で取り出した。回収されたエチレングリコールは235重量部であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH−1)とする。
(AH−1)のMpは8500、(Tg)は57℃、(Tm)は140℃、酸価は24、水酸基価は3、SP値は11.5であった。
反応槽中に、テレフタル酸420重量部(61.3モル部)、イソフタル酸180重量部(25.8モル部)、エチレングリコール409重量部(下記回収分187部を差し引くと85.0モル部)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物220重量部(15.0モル部)、チタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート0.5重量部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水とエチレングリコールを留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に1時間反応させた。次いで、無水トリメリット酸106重量部(12.9モル部)を加え、常圧下で1時間反応させた後、2.5〜5kPaの減圧下で反応させ軟化点150℃で取り出した。回収されたエチレングリコールは187重量部であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化した。これを非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH−2)とする。
(AH−2)のMpは6000、(Tg)は60℃、(Tm)は150℃、酸価は1、水酸基価は40、SP値は12.0であった。
反応槽中に、1,6−ヘキサンジオール230重量部、ドデカンジカルボン酸475重量部、および縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)1重量部を入れ、170℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させ、さらに0.5〜2.5kPaの減圧下に反応させて取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、(結晶性部b1)を得た。
(結晶性部b1)の(Tb)は72℃、Mwは10000、水酸基価は27、SP値は9.6であった。
反応槽中に、1,4−ブタンジオール262重量部、セバシン酸530重量部、および縮合触媒としてチタニウムジヒドロキシビス(トリエタノールアミネート)2重量部を入れ、170℃で窒素気流下に、生成する水を留去しながら8時間反応させた。次いで220℃まで徐々に昇温しながら、窒素気流下に、生成する水を留去しながら4時間反応させ、さらに0.5〜2.5kPaの減圧下に反応させて取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、(結晶性部b2)を得た。
(結晶性部b2)の(Tb)は65℃、Mwは6000、水酸基価は47、SP値は9.9であった。
反応槽中に、製造例6で得られた(結晶性部b2)500重量部を入れ、80℃で加熱し溶融した。次いで、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート26重量部を投入し、80℃で6時間反応させて取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、(結晶性部b3)を得た。
(結晶性部b3)の(Tb)は67℃、Mwは13000、水酸基価は23、SP値は10.1であった。
反応槽中に、「プラクセル240」(ポリカプロラクトンジオール;(株)ダイセル製)500重量部を入れ、100℃で加熱し溶融した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート11重量部を投入し、100℃で5時間反応させて取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、(結晶性部b4)を得た。
(結晶性部b4)の(Tb)は62℃、Mwは18000、水酸基価は14、SP値は10.2であった。
反応槽中に、「HS2H−200S」(1,6−ヘキサンジオールとセバシン酸からなるポリエステルジオール;豊国製油(株)製)250重量部およびメチルエチルケトン250重量部を入れ、80℃で加熱し溶解した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート44重量部を投入し80℃で5時間反応させた後40℃まで冷却した。次いで、ヘキサメチレンジアミン10重量部を投入し40℃で2時間反応させた後、メチルエチルケトンを除去して取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して(結晶性部b5)を得た。
(結晶性部b5)の(Tb)は70℃、Mwは22000、水酸基価は9、SP値は9.8であった。
反応槽中に、イソフタル酸427重量部(100.0モル部)、ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物580重量部(62.0モル部)、1,2−プロピレングリコール232重量部(下記回収分150重量部を差し引くと38.0モル部)、重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート2.5重量部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に1時間反応させて取り出した。回収された1,2−プロピレングリコールは150重量部であった。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、(非結晶性部c1)を得た。
(非結晶性部c1)のMwは7000、(Tg)は58℃、水酸基価は32であった。
反応槽中に、テレフタル酸256重量部(91.7モル部)、アジピン酸20重量部(8.3モル部)、ビスフェノールAのプロピレンオキサイド2モル付加物781重量部(100.0モル部)、重合触媒としてチタニウムジイソプロポキシビストリエタノールアミネート3重量部を入れ、210℃で窒素気流下に生成する水を留去しながら5時間反応させた後、0.5〜2.5kPaの減圧下に1時間反応させて取り出した。得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、(非結晶性部c2)を得た。
(非結晶性部c2)のMwは3500、(Tg)は53℃、水酸基価は63であった。
製造例5で得られた(結晶性部b1)をそのまま使用し、結晶性ポリエステル樹脂(B−1)とした。(B−1)の物性値は表1に記載した。
製造例6で得られた(結晶性部b2)をそのまま使用し、結晶性ポリエステル樹脂(B−2)とした。(B−2)の物性値は表1に記載した。
製造例7で得られた(結晶性部b3)をそのまま使用し、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂(B−3)とした。(B−3)の物性値は表1に記載した。
製造例8で得られた(結晶性部b4)をそのまま使用し、ウレタン変性結晶性ポリエステル樹脂(B−4)とした。(B−4)の物性値は表1に記載した。
製造例9で得られた(結晶性部b5)をそのまま使用し、ウレタンウレア変性結晶性ポリエステル樹脂(B−5)とした。(B−5)の物性値は表1に記載した。
反応槽中に、(非結晶性部c1)120重量部およびメチルエチルケトン120重量部を入れ、80℃で加熱し溶解した。次いで、トリレンジイソシアネート12重量部を投入し80℃で5時間反応させた。別途、(結晶性部b1)284重量部をメチルエチルケトン284重量部に溶解させた溶液を作製し、この溶液を投入して、さらに80℃で5時間反応させた。メチルエチルケトンを除去して取り出し、得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、ブロック樹脂(C−1)を得た。
(C−1)中の(b1)の割合は、(C−1)の重量に基づき68重量%であり、(b1)−(c1)−(b1)で表される。
反応槽中に、(結晶性部b3)100重量部およびトルエン100重量部を入れ、80℃で加熱し溶解した。次いで、イソホロンジイソシアネート9重量部を投入し100℃で6時間反応させた。別途、(非結晶性部c1)143重量部をトルエン143重量部に溶解させた溶液を作製し、この溶液を投入して、さらに100℃で6時間反応させた。トルエンを除去して取り出し、得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、ブロック樹脂(C−2)を得た。
(C−2)中の(b3)の割合は、(C−2)の重量に基づき40重量%であり、(c1)−(b3)−(c1)で表される。
反応槽中に、(結晶性部b2)110重量部およびメチルエチルケトン110重量部を入れ、80℃で加熱し溶解した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート16重量部を投入し80℃で5時間反応させた。別途、(非結晶性部c2)123重量部をメチルエチルケトン123重量部に溶解させた溶液を作製し、この溶液を投入して、さらに80℃で5時間反応させた。メチルエチルケトンを除去して取り出し、得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、ブロック樹脂(C−3)を得た。
(C−3)中の(b2)の割合は、(C−3)の重量に基づき44重量%であり、(c2)−(b2)−(c2)−(b2)−(c2)で表される。
反応槽中に、(結晶性部b2)110重量部およびメチルエチルケトン110重量部を入れ、80℃で加熱し溶解した。次いで、ヘキサメチレンジイソシアネート16重量部を投入し80℃で5時間反応させた。別途、(非結晶性部c2)109重量部をメチルエチルケトン109重量部に溶解させた溶液を作製し、この溶液を投入して、さらに80℃で5時間反応させた。メチルエチルケトンを除去して取り出し、得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、ブロック樹脂(C−4)を得た。
(C−4)中の(b2)の割合は、(C−4)の重量に基づき47重量%であり、(c2)−(b2)−(c2)−(b2)−(c2)−(b2)−(c2)で表される。
反応槽中に、2,4−トリレンジイソシアネート29重量部およびメチルエチルケトン100重量部を入れ、撹拌して均一に溶解した。次いで、シクロヘキサンジメタノール21重量部を投入し、80℃で3時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(非結晶性部c3)のメチルエチルケトン溶液150重量部を得た。
別途、(結晶性部b1)137重量部をメチルエチルケトン137重量部に溶解させた溶液を作製し、この溶液を投入して、さらに80℃で5時間反応させた。メチルエチルケトンを除去して取り出し、得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、ブロック樹脂(C−5)を得た。
(C−5)中の(b1)の割合は、(C−5)の重量に基づき73重量%であり、(b1)−(c3)−(b1)で表される。
反応槽中に、イソホロンジイソシアネート38重量部およびトルエン100重量部を入れ、撹拌して均一に溶解した。次いで、1,2−プロピレングリコール12重量部を投入し、90℃で7時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン(非結晶性部c4)のトルエン溶液150重量部を得た。
別途、(結晶性部b1)107重量部をトルエン107重量部に溶解させた溶液を作製し、この溶液を投入して、さらに80℃で7時間反応させた。トルエンを除去して取り出し、得られた樹脂を室温まで冷却後、粉砕し粒子化して、ブロック樹脂(C−6)を得た。
(C−6)中の(b1)の割合は、(C−6)の重量に基づき68重量%であり、(b1)−(c4)−(b1)−(c4)−(b1)で表される。
前記製造例で得られた非結晶性ポリエステル樹脂(AL−1)、(AL−2)、(AH−1)、(AH−2)、結晶性ポリエステル樹脂(B−1)〜(B−4)、およびブロック樹脂(C−1)〜(C−6)を表2の配合比(重量部)に従い配合し、本発明のトナーバインダー、および比較のトナーバインダーを得て、下記の方法でトナー化した。
下記評価方法で評価した評価結果を表2に示す。
〔1〕低温定着性
市販複写機(AR5030;シャープ製)を用いて現像した未定着画像を、市販複写機(AR5030;シャープ製)の定着機を用いて評価した。定着画像をパットで擦った後の画像濃度の残存率が70%以上となる下限温度を最低定着温度(MFT)とした。最低定着温度が低いほど、低温定着性に優れることを意味する。
上記低温定着性と同様に定着評価し、定着画像へのホットオフセットの有無を目視評価した。定着ロール通過後ホットオフセットが発生しない上限温度をホットオフセット発生温度(HOT)とした。ホットオフセット発生温度が高いほど、耐ホットオフセット性に優れることを意味する。
HOT−MFTを定着温度幅(℃)として記載した。
トナー組成物を、50℃、85%R.H.の高温高湿環境下で、48時間調湿した。同環境下において該現像剤のブロッキング状態を目視し、さらに市販複写機(AR5030:シャープ製)でコピーした時の画質を観察し、以下の判定基準で保存安定性を評価した。
[判定基準]
◎:トナーのブロッキングがなく、3000枚複写後の画質も良好。
○:トナーのブロッキングはないが、3000枚複写後の画質に僅かに乱れが
観察される。
×:トナーのブロッキングが目視でき、3000枚までに画像が出なくなる。
トナー組成物0.5gとフェライトキャリア(パウダーテック社製、F−150)20gとを50mlのガラス瓶に入れ、これを23℃、50%R.H.で8時間以上調湿した後、ターブラーシェーカーミキサーにて50rpm×10および60分間摩擦撹拌し、それぞれの時間毎に帯電量を測定した。
測定にはブローオフ帯電量測定装置[京セラケミカル(株)製]を用いた。「摩擦時間60分の帯電量/摩擦時間10分の帯電量」を計算し、帯電安定性の指標とした。
[判定基準]
◎:0.8以上
○:0.6以上、0.8未満
×:0.6未満
それぞれの実施例および比較例において、表2の配合比(重量部)に従い、(A)、(B)および(C)を配合し、ラボプラストミル[東洋精機(株)製 MODEL4M150]を使用し、130℃で70rpmにて30分間溶融混合後、冷却した混合樹脂を切片化し、四酸化ルテニウムにより染色した後、透過型電子顕微鏡(TEM)[(株)日立製作所製 H−7100]を使用し倍率5,000倍で観察した。観察される(B)の体積平均粒径を指標とした。
[判定基準]
◎:1μm未満
○:1μm以上、3μm未満
△:3μm以上
×:海島構造が確認できない
Claims (11)
- 非結晶性ポリエステル樹脂(A)と、結晶性部(b)のみで構成される結晶性ポリエステル樹脂(B)と、結晶性部(b)と非結晶性部(c)とで構成されるブロック樹脂(C)からなるトナーバインダーであって、結晶性部(b)が炭素数4〜12の直鎖型脂肪族ジオール成分と炭素数6〜14の直鎖型脂肪族ジカルボン酸成分とから合成される重縮合ポリエステル樹脂又は炭素数5〜12のモノラクトンのラクトン開環重合物を結晶性部(b)の重量を基準として82〜100重量%含有し、結晶性部(b)の融解熱の最大ピーク温度(Tb)が50〜72℃であり、(A)、(B)および(C)の合計重量を100とした場合の(A)、(B)、(C)の重量比[(A):(B):(C)]が、(60〜90):(1〜30):(1〜10)であることを特徴とするトナーバインダー。
- 結晶性ポリエステル樹脂(B)が炭素数4〜6の直鎖型脂肪族ジオール成分と炭素数10〜14の直鎖型脂肪族ジカルボン酸成分とから合成される重縮合ポリエステル樹脂、前記重縮合ポリエステル樹脂とジイソシアネートとの反応物、ポリカプロラクトン又はポリカプロラクトンとジイソシアネートとの反応物を含有し、ジイソシアネートが4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート又はヘキサメチレンジイソシアネートであり、(B)の融解熱の最大ピーク温度(Tb)が50〜72℃、軟化点(Tm)と(Tb)の比〔Tm/Tb〕が0.8〜1.55、溶融開始温度〔X〕が(Tb±30)℃の温度範囲内であり、かつ(B)が以下の(条件1)、(条件2)を満たす請求項1に記載のトナーバインダー。
(条件1) 50≦G’(Tb+20)≦1×106
(条件2) |logG”(X+20)−logG”(X)|>2.0
{G’(Tb+20):(Tb+20)℃における(B)の貯蔵弾性率[Pa]、G”(X):X℃における(B)の損失弾性率[Pa]、G”(X+20):(X+20)℃における(B)の損失弾性率[Pa]} - ブロック樹脂(C)の結晶性部(b)と非結晶性部(c)とが、下記の一般式(1)〜(6)のいずれかで表される形式で線状に結合している請求項1または2に記載のトナーバインダー。
(b)−(c)−(b) (1)
(c)−(b)−(c) (2)
(b)−(c)−(b)−(c)−(b) (3)
(c)−(b)−(c)−(b)−(c) (4)
(b)−(c)−(b)−(c)−(b)−(c)−(b) (5)
(c)−(b)−(c)−(b)−(c)−(b)−(c) (6) - (A)が、非結晶性線形ポリエステル樹脂(AL)および非結晶性非線形ポリエステル樹脂(AH)を含有し、(AL)の軟化点が70〜120℃であり、(AH)の軟化点が115〜165℃であり、(AL)と(AH)の軟化点の差の絶対値が10〜80℃である請求項1〜3のいずれかに記載のトナーバインダー。
- (AL)のガラス転移点が30〜75℃であり、テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーのピークトップ分子量が1000〜10000であり、(AH)のガラス転移点が35〜80℃であり、テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーのピークトップ分子量が2000〜20000である請求項4に記載のトナーバインダー。
- (C)を構成する(b)の重量平均分子量が2000〜80000、(c)の重量平均分子量が500〜50000であり、(C)中の(b)の割合が、(C)の重量に基づき25重量%以上である請求項1〜5のいずれかに記載のトナーバインダー。
- (A)が海相であり、(B)が島相である海島構造を有する請求項1〜6のいずれかに記載のトナーバインダー。
- (AL)と結晶性ポリエステル樹脂(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSP値(AL−B)が1.0〜3.0(cal/cm3)1/2であり、かつ(AH)と(B)の溶解度パラメーターの差の絶対値ΔSP値(AH−B)が1.0〜3.0(cal/cm3)1/2である請求項4〜7のいずれかに記載のトナーバインダー。
- (B)の、テトラヒドロフラン可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる重量平均分子量が5000〜100000である請求項1〜8のいずれかに記載のトナーバインダー。
- (B)の鉛筆硬度が、3B〜6Hである請求項1〜9のいずれかに記載のトナーバインダー。
- 請求項1〜10のいずれかに記載のトナーバインダーと着色剤を含有するトナー組成物。
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