JPWO2015115259A1 - 液晶ポリエステル繊維およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

高強度、高弾性率、高耐摩耗性であり、工程通過性に優れ、かつ高温での熱変形が小さい液晶ポリエステル繊維およびその製造方法を提供する。示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク(Tm1)におけるピーク半値幅が15℃以上であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が25.0万以上200.0万以下であり、損失正接(tanδ)のピーク温度が100℃以上、200℃以下であり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.060以上、0.090以下であることを特徴とする液晶ポリエステル繊維、およびその液晶ポリエステル繊維からなるメッシュ織物、ならびに溶融紡糸して得られた液晶性ポリエステル繊維を固相重合し、その後、示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+50℃以上の温度で0.1%以上3.0%未満のストレッチ率で加熱処理することを特徴とする溶融液晶性ポリエステル繊維の製造方法によって達成できる。

Description

本発明は高強度、高弾性率、高耐摩耗性であり、工程通過性に優れ、かつ高温での熱変形が小さい液晶ポリエステル繊維およびその製造方法に関するものである。
液晶ポリエステルは剛直な分子鎖からなるポリマーであり、溶融紡糸においてはその分子鎖を繊維軸方向に高度に配向させ、さらに熱処理(固相重合)を施すことにより溶融紡糸で得られる繊維の中では最も高い強度、弾性率が得られることが知られている。また液晶ポリエステルは固相重合により分子量が増加し、融点が上昇するため耐熱性、寸法安定性が向上することも知られている(例えば、非特許文献1の第235頁〜第256頁を参照。)。このように液晶ポリエステル繊維においては固相重合を施すことにより高強度、高弾性率、優れた耐熱性、熱寸法安定性が発現する。
その一方で、液晶ポリエステル繊維は剛直な分子鎖が繊維軸方向へ高配向しており緻密な結晶が生成されるため、繊維軸垂直方向への相互作用が低く、耐摩耗性に劣るため、高次加工工程、製織工程での摩擦によりフィブリルが発生しやすいという欠点も持つ。近年、モノフィラメントからなるフィルター、スクリーン印刷用紗等のメッシュ織物に対しては、性能向上のため織密度の高密度化(高メッシュ化)、開口部(オープニング)の大面積化の要望が強まっている。これを達成するために単繊維繊度の細繊度化、高強度、高弾性率化が強く要求されており、液晶ポリエステル繊維は高強度、高弾性率であるため期待が集まっている。同時に高性能化のためフィブリル等の欠点減少も強く要求されており、液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性、工程通過性改善が望まれている。
さらに、メッシュ織物を製品として用いる場合、高温での熱変形が小さいことも要求される。例えば、シワを除去するような高温、高荷重での処理において熱変形が大きいと、オープニングの不均一を生じ、スクリーン印刷用途やフィルター用途において性能を損なう。この観点から、液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性改善と高温での熱変形抑制の両立が要求されている。
液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性改善については、液晶ポリエステル繊維を、示差熱量測定において50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+10℃以上の温度、すなわち融点+10℃以上で熱処理する技術が提案されている(特許文献1の第18頁〜第19頁を参照。)。この技術では耐摩耗性の改善と言う点では効果が見られるが、高温での熱変形抑制の両立と言う点では不十分であった。特許文献1では固相重合後の繊維の高温熱処理により耐摩耗性を改善しているが、耐摩耗性を大幅に改善するほど高温での熱変形は大きくなるのである。このため特許文献1の技術のみでは耐摩耗性の改善と高温での熱変形抑制の両立は困難である。
なお、特許文献1には固相重合後の液晶ポリエステル繊維の高温熱処理に関し、延伸倍率の変更の記載があり、リラックス率2%からストレッチ率10%までの記載があるが(第20頁)、走行安定性に関する記載があるのみであり、高温での熱変形抑制に関する示唆は見られない。また熱処理の走行安定性に関し、熱処理後のガイド設置による効果についても示唆は見られない。
また固相重合後の液晶ポリエステル繊維の高温熱処理に関し、10%以上の熱延伸、すなわち10%以上のストレッチを施す技術も開示されている(特許文献2の第2頁を参照。)。しかし特許文献2に記載のストレッチの目的は、耐摩耗性の改善と、延伸により繊維を細くするためであり、高温での熱変形抑制に関する示唆は見られない。
さらに固相重合前の液晶ポリエステル繊維の熱延伸に関し、1.005未満の延伸を施す技術も開示されている(特許文献3の第15頁を参照。)。この技術は固相重合前の液晶ポリエステル繊維にガラス転移温度+50℃以下と、比較的低温で延伸を施すものであり、融点+50℃以上もの高温で熱処理することによる耐摩耗性向上効果や、高温での熱変形抑制に関する示唆は見られない。なお、特許文献3には動的粘弾性測定によるtanδ測定の記載があるが、これは樹脂のTg(ガラス転移温度)を求めるものであり、tanδと高温での熱変形抑制の関係については記載が見られない。
液晶ポリエステル繊維の固相重合(熱処理)に関し、Tmよりも80℃以上低い温度で熱処理した後、引き続きTm−60〜Tm+20℃で熱処理する技術が開示されている(特許文献4の第2頁を参照。)。この技術は固相重合の温度条件を段階的に上げることで振動減衰特性を向上させるものであり、融点+50℃以上もの高温で熱処理することによる耐摩耗性向上効果や、高温での熱変形抑制に関する示唆は見られない。なお、特許文献4にはtanδ測定の記載があるが、これは固相重合した液晶ポリエステル繊維の振動減衰特性を表す指標であり、固相重合した後に、融点+50℃以上もの高温で熱処理を行って得られる液晶ポリエステル繊維に関するtanδと高温での熱変形抑制の関係については記載が見られない。
特開2008−240230号公報 特開2010−189819号公報 特開2006−89903号公報 特開平4−289218号公報
技術情報協会編、「液晶ポリマーの改質と最新応用技術」(2006)
本発明の課題は、高強度、高弾性率、高耐摩耗性であり、かつ工程通過性に優れ、高温での熱変形が小さい液晶ポリエステル繊維およびその製造方法を提供することにある。
前記した本発明の課題は以下の手段により達成される。
(1)示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク(Tm1)におけるピーク半値幅が15℃以上であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が25.0万以上200.0万以下であり、損失正接(tanδ)のピーク温度が100℃以上、200℃以下であり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.060以上、0.090以下であることを特徴とする液晶ポリエステル繊維。
(2)前記(1)項記載の液晶ポリエステル繊維からなるメッシュ織物。
(3)溶融紡糸して得られた液晶性ポリエステル繊維を固相重合し、その後、示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+50℃以上の温度で0.1%以上3.0%未満のストレッチ率で加熱処理することを特徴とする溶融液晶性ポリエステル繊維の製造方法。
本発明の液晶ポリエステル繊維は、耐摩耗性、工程通過性に優れるため、メッシュ織物等の製品を生産する際の製織性を高めることができ、欠点の少ない製品を得ることができる。また高温での熱変形が小さいため、製品とした後の高温処理における寸法変化が小さく、性能変化が小さい。また本発明の製造方法により、本発明の液晶ポリエステル繊維を効率良く製造できる。
以下、本発明の液晶ポリエステル繊維について詳細に説明する。
本発明で用いられる液晶ポリエステルとは、溶融時に異方性溶融相(液晶性)を形成し得るポリエステルである。この特性は例えば、液晶ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察することにより確認できる。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、例えばa.芳香族オキシカルボン酸成分の重合物、b.芳香族ジカルボン酸成分と芳香族ジオール成分、脂肪族ジオール成分の重合物、c.aとbとの共重合物などが挙げられるが、高強度、高弾性率、高耐熱のためには脂肪族ジオール成分を用いない全芳香族ポリエステルが好ましい。ここで芳香族オキシカルボン酸成分としては、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸などの芳香族オキシカルボン酸、または上記芳香族オキシカルボン酸のアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸成分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、または上記芳香族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。さらに、芳香族ジオール成分としては、ハイドロキノン、レゾルシン、ジオキシジフェニール、ナフタレンジオールなどの芳香族ジオール、または上記芳香族ジオールのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられ、脂肪族ジオール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族ジオールが挙げられる。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、p−ヒドロキシ安息香酸成分と4,4’−ジヒドロキシビフェニル成分とハイドロキノン成分とテレフタル酸成分および/またはイソフタル酸成分とが共重合されたもの、p−ヒドロキシ安息香酸成分と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸成分とが共重合されたもの、p−ヒドロキシ安息香酸成分と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸成分とハイドロキノン成分とテレフタル酸成分とが共重合されたもの、などが紡糸性に優れ、高強度、高弾性率化が達成でき、固相重合後の高温熱処理を行うことで耐摩耗性が向上することから、好ましい例として挙げられる。
本発明では、特に下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)からなる液晶ポリエステルであることが好ましい。なお本発明において構造単位とはポリマーの主鎖における繰り返し構造を構成し得る単位を指す。
Figure 2015115259
この組み合わせにより分子鎖は適切な結晶性と非直線性すなわち溶融紡糸可能な融点を有するようになる。したがってポリマーの融点と熱分解温度の間で設定される紡糸温度において良好な製糸性を有するようになり長手方向に均一な繊維が得られ、かつ適度な結晶性を有するため繊維の強度、弾性率を高めることができる。
さらに構造単位(II)、(III)のような嵩高くなく、直線性の高いジオールからなる成分を組み合わせることが重要であり、この成分を組み合わせることにより繊維中で分子鎖は秩序だった乱れの少ない構造を取ると共に、結晶性が過度に高まらず繊維軸垂直方向の相互作用も維持できる。これにより高い強度、弾性率が得られることに加えて、固相重合後に高温熱処理を施すことで特に優れた耐摩耗性も得られるのである。
また、上記した構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して40〜85モル%が好ましく、より好ましくは65〜80モル%、さらに好ましくは68〜75モル%である。このような範囲とすることで結晶性を適切な範囲とすることができ高い強度、弾性率が得られ、かつ融点も溶融紡糸可能な範囲となる。
構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して60〜90モル%が好ましく、より好ましくは60〜80モル%、さらに好ましくは65〜75モル%である。このような範囲とすることで結晶性が過度に高まらず繊維軸垂直方向の相互作用も維持できるため、固相重合後に高温熱処理を施すことで耐摩耗性を高めることができる。
構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して40〜95モル%が好ましく、より好ましくは50〜90モル%、さらに好ましくは60〜85モル%である。このような範囲とすることでポリマーの融点が適切な範囲となり、ポリマーの融点と熱分解温度の間で設定される紡糸温度において良好な紡糸性を有するため長手方向に均一な繊維が得られる他、ポリマーの直線性が適度に乱れるため、固相重合後の高温熱処理によりフィブリル構造が乱れやすくなり繊維軸垂直方向の相互作用が高まり耐摩耗性を向上させることができる。
本発明に用いる液晶ポリエステルの各構造単位の好ましい範囲は以下のとおりである。この範囲の中で上記した条件を満たすよう組成を調整することで本発明の液晶ポリエステル繊維が好適に得られる。
構造単位(I)45〜65モル%
構造単位(II)12〜18モル%
構造単位(III)3〜10モル%
構造単位(IV)5〜20モル%
構造単位(V)2〜15モル%
なお本発明で用いる液晶ポリエステルには上記構造単位以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸(1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)などの脂環式ジカルボン酸、クロロハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオールおよびp−アミノフェノールなどを本発明の効果を損なわない5モル%程度以下の範囲で共重合させても良い。
また本発明の効果を損なわない5重量%程度以下の範囲で、ポリエステル、ポリオレフィンやポリスチレンなどのビニル系重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリケトン、半芳香族ポリエステルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などのポリマーを添加しても良く、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリエステル99Mなどが好適な例として挙げられる。なおこれらのポリマーを添加する場合、その融点は液晶ポリエステルの融点±30℃以内にすることが製糸性を損なわないために好ましい。
さらに本発明の効果を損なわない範囲内で、各種金属酸化物、カオリン、シリカなどの無機物や、着色剤、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤、相溶化剤等の各種添加剤を少量含有しても良い。
本発明の繊維のポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、分子量と記載する)は25.0万以上200.0万以下である。25.0万以上の高い分子量を有することで高い強度、弾性率、伸度を有する。分子量は高いほど強度、弾性率、伸度が向上するため、30.0万以上が好ましく、35.0万以上がより好ましい。分子量の上限は特に限定されないが、本発明で達し得る上限としては200.0万程度であり、100.0万で十分高い効果が得られる。なお本発明で言う分子量とは実施例記載の方法により求められた値とする。
本発明の繊維は、示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク(Tm1)におけるピーク半値幅が15℃以上である。この測定法におけるTm1は繊維の融点を表し、ピーク形状はその面積が広いほど、即ち融解熱量ΔHm1が大きいほど結晶化度が高く、またその半値幅が狭いほど結晶の完全性は高いと言える。液晶ポリエステルは溶融紡糸した後、固相重合を施すことでTm1が上昇、ΔHm1が増加、半値幅は減少し、結晶化度、結晶の完全性が高くなることで繊維の強度、伸度、弾性率が増加、耐熱性が向上する。一方で耐摩耗性が悪化するが、これは結晶の完全性が高まることにより、結晶部と非晶部の構造差が顕著となるため、その界面で破壊が起こるためと考えられる。そこで本発明の繊維では固相重合した繊維の特徴である高いTm1、高い強度、伸度、弾性率を維持したまま、ピーク半値幅を、固相重合していない液晶ポリエステル繊維のような15℃以上という値に増加させることで、結晶性を低下させて破壊の起点となる結晶/非晶の構造差を減少させ、フィブリル構造を乱し、繊維全体を柔軟化させることで耐摩耗性を高めることができるのである。Tm1におけるピーク半値幅は、高い方が耐摩耗性は高いため、好ましくは20℃以上である。なお、上限は特に制限されないが、工業的に達し得る上限は80℃程度であり、50℃で十分高い効果が得られる。
なお、本発明の液晶ポリエステル繊維においては、吸熱ピークは1つであるが、固相重合が不十分な場合など繊維構造によっては2つ以上のピークが観測されることがある。この場合のピーク半値幅はそれぞれのピークの半値幅を合計した値とする。
本発明の繊維の融点(Tm1)は290℃以上が好ましく、300℃以上がより好ましく、310℃以上がさらに好ましい。このような高い融点を有することで繊維としての耐熱性が優れる。繊維の高融点化を達成するためには、高融点の液晶ポリエステルポリマーを製糸するなどの方法があるが、特に高い強度、弾性率を有し、さらに長手方向の均一性に優れる繊維を得るためには溶融紡糸した繊維を固相重合することが好ましい。なお、融点の上限は特に限定されないが、本発明で達しえる上限としては400℃程度である。
また融解熱量ΔHm1の値は、液晶ポリエステルの構成単位の組成により変化するが、6.0J/g以下であることが好ましい。△Hm1が6.0J/g以下に低下することで結晶化度は低下し、フィブリル構造が乱れ、繊維全体が柔軟化し、かつ破壊の起点となる結晶/非晶の構造差が減少することで耐摩耗性が向上する。△Hm1は低いほど耐摩耗性は向上するため5.0J/g以下がより好ましい。なおΔHm1の下限は特に限定されないが、高い強度、弾性率を得るためには0.2J/g以上が好ましい。
分子量が25.0万以上と高いにも関わらず、ΔHm1が6.0J/g以下と低いことは驚くべきことである。分子量が25.0万以上の液晶ポリエステルは融点を超えても粘度が著しく高く流動せず溶融紡糸が困難であり、このような高分子量の液晶ポリエステル繊維は低分子量の液晶ポリエステルを溶融紡糸し、この繊維を固相重合することで得られる。液晶ポリエステル繊維を固相重合すると分子量が増加し強度、伸度、弾性率、耐熱性は向上し、同時に結晶化度も高まりΔHm1が増加する。結晶化度が高まると強度、伸度、弾性率、耐熱性はさらに向上するが、結晶部と非晶部の構造差が顕著となり、その界面が破壊されやすくなり耐摩耗性は低下してしまう。これに対し本発明では固相重合した繊維の1つの特徴である高い分子量を持つことで高い強度、伸度、弾性率、耐熱性を保持すると共に、固相重合をしていない液晶ポリエステル繊維のような低い結晶化度すなわち低いΔHm1を有することで耐摩耗性を向上できるのである。本発明では実質的に液晶ポリエステルのみからなる繊維を、構造変化すなわち結晶化度を低下させることにより耐摩耗性向上を達成した点で技術的進歩がある。
また本発明の繊維のTm2は組成により変化するが、耐熱性を高めるためには300℃以上が好ましい。Tm2の上限は特に制限されないが、本発明で到達し得る上限としては400℃程度である。
ΔHm2は過度に大きいとポリマーそのものの結晶性が高くなり、耐摩耗性の向上が難しくなるため5.0J/g以下が好ましく、2.0J/g以下がより好ましい。なお、本発明の液晶ポリエステル繊維においては上記した測定条件における冷却後の再昇温時の吸熱ピークは1つであるが、2つ以上のピークが観測されることがある。この場合のΔHm2はそれぞれのピークのΔHm2を合計した値とする。
本発明の繊維は、損失正接(tanδ)のピーク温度が100℃以上、200℃以下であり、好ましくは120℃以上、180℃以下、ピーク値が0.060以上、0.090以下である。なお、本発明で言う、tanδのピーク温度、ピーク値は実施例記載の方法で求められる値である。
tanδは損失弾性率と貯蔵弾性率の比であり、この値が高い場合には与えたエネルギーに対する熱散逸の比が高いことを意味する。合成繊維においてはtanδの温度依存性にピークが現れ、ピーク温度は非晶部の運動性が高まり始める温度としてガラス転移温度と同様の意義を持ち、ピーク値は非晶部そのものの量と同様の意義を持つと考えられる。
本発明の液晶ポリエステル繊維は、固相重合後に高温熱処理を施すことで、結晶性が低い状態となっているため、非晶部が主であり、tanδに明確なピークを持つ。このときのピーク値は非晶部の量に相当するため、ピーク値が高いほど非晶部が多く、熱変形しやすくなる。すなわち、熱変形を抑制するにはtanδのピーク温度が高く、ピーク値が低い方が好ましい。一方、本発明の繊維の特徴の一つである、高い耐摩耗性を達成するためには、ポリマーの結晶性を低くする方が好ましいことから、ピーク値が高い方が好ましい。この相反する特性を両立するためには、tanδの値を適切な範囲とすることが必要なのである。
本発明の繊維のtanδピーク値は0.090以下である。ピーク値が0.090以下であることで、高温での熱変形を抑制することができる。ピーク値が小さいほど熱変形は抑制できるため、0.085以下がより好ましい。ピーク値は過度に低いと、結晶性が高く、耐摩耗性を悪化させることから、0.060以上であり、0.065以上がより好ましい。
またtanδのピーク温度は非晶部の運動性が急激に増加する温度であり、ピーク温度を超えると、ピーク値にもよるが熱変形しやすくなる。このためピーク温度は高い方が好ましい。本発明の繊維においては、ピーク温度は100℃以上であり、好ましくは130℃以上である。上限は特にないが、本発明で達しえるのは200℃程度である。
このようなtanδのピーク温度、ピーク値を得るための製造方法には特に制限はないが、後述するような、固相重合後の熱処理において、特にストレッチ率の適正化が有効である。
本発明の繊維の強度はメッシュ織物の強度を高めるため12.0cN/dtex以上が好ましく、14.0cN/dtex以上がより好ましく、15.0cN/dtex以上がさらに好ましい。強度の上限は特に限定されないが、本発明で達し得る上限としては30.0cN/dtex程度である。
本発明の繊維の強力変動率は10%以下が好ましく、5%以下がより好ましい。なお本発明で言う強力とはJIS L1013:2010記載の引張強さの測定における切断時の強さを指し、強力変動率とは実施例記載の手法により測定された値を指す。強力変動率が10%以下であることで長手方向の均一性が高まり、繊維の強力(強度と繊度の積)変動も小さくなるため、繊維製品の欠陥が減少する他、低強度部分に起因する高次加工工程での糸切れも抑制できる。
また弾性率は織物の弾性率を高めるため500cN/dtex以上が好ましく、600cN/dtex以上がより好ましく、700cN/dtex以上がさらに好ましい。弾性率の上限は特に限定されないが、本発明で達しえる上限としては弾性率1200cN/dtex程度である。
本発明の繊維の伸度は1.0%以上が好ましく2.0%以上がより好ましい。伸度が1.0%以上あることで繊維の衝撃吸収性が高まり、高次加工工程での工程通過性、取り扱い性に優れる他、衝撃吸収性が高まるため耐摩耗性も高まる。なお、伸度の上限は特に限定されないが、本発明で達しえる上限としては10.0%程度である。本発明の繊維においては分子量が25.0万以上であることで高い伸度が得られる。
本発明でいう、強度、伸度、弾性率は実施例記載の方法で求める値である。
強度、弾性率が高いことにより印刷用スクリーン紗、フィルター用メッシュ等の用途に好適に使用できる他、細繊度でも高い強力を発現させ得るため繊維材料の軽量化、薄物化が達成でき、製織など高次加工工程での糸切れも抑制できる。本発明の繊維においては分子量が25.0万以上であることで高い強度、弾性率が得られる。
本発明の繊維の単繊維繊度は18.0dtex以下が好ましい。単繊維繊度を18.0dtex以下と細くすることで、繊維状態で固相重合した際に分子量が増加しやすく、強度、伸度、弾性率が向上する。さらに繊維のしなやかさが向上し繊維の加工性が向上する、表面積が増加するため接着剤などの薬液との密着性が高まると言った特性を有することに加え、モノフィラメントからなる紗とする場合は厚みを薄くできる、織密度を高くできる、オープニング(開口部の面積)を広くできるという利点を持つ。単繊維繊度はより好ましくは15.0dtex以下、さらに好ましくは10.0dtex以下である。なお、単繊維繊度の下限は特に限定されないが、本発明で達しえる下限としては1.0dtex程度である。
本発明の繊維の複屈折率(△n)は0.250以上0.450以下が好ましい。△nがこの範囲であれば繊維軸方向の分子配向は十分に高く、高い強度、弾性率が得られる。
本発明の繊維の耐摩耗性Cは60秒以上が好ましく、90秒以上がより好ましく、180秒以上がさらに好ましい。本発明で言う耐摩耗性Cとは実施例記載の手法により測定された値を指す。耐摩耗性Cが60秒以上であることで液晶ポリエステル繊維の高次加工工程でのフィブリル化が抑制でき、フィブリル堆積による工程通過性や製織性の悪化、堆積したフィブリルが織り込まれることによる開口部の目詰まりが抑制できる他、ガイド類へのフィブリルの堆積が減ずることから洗浄、交換周期を長くできる。
本発明の繊維の高温での熱変形率は1.0%以下が好ましい。熱変形率が1.0%以下であることで、製品とした後の高温処理後でも性能が変化しない。熱変形率は低いほど好ましいため、0.7%以下がより好ましい。熱変形率の下限は特に限定されないが、本発明で達しえる下限としては0.2%程度である。
本発明の繊維のフィラメント数は、繊維製品の薄物化、軽量化のためにはフィラメント数50以下が好ましく、20以下がより好ましい。特にフィラメント数が1であるモノフィラメントは細繊度、高強度、高弾性率、単繊維繊度の均一性が強く望まれる分野であるため本発明の繊維は特に好適に用いることができる。
本発明の繊維の糸長は4万m以上が好ましい。4万m以上あることで製織等の製品製造において、糸つなぎによる欠点を最小化できる。糸長は長い方が好ましいが、本発明で達しえる上限は1000万m程度である。このように糸長が長い繊維を得るには、後述するような、固相重合後の熱処理において、特にストレッチ率の適正化および熱処理後の糸道のガイド規制による走行性の安定化が有効である。
本発明はまた、上記液晶ポリエステル繊維からなるメッシュ織物も提供する。本発明の液晶ポリエステル繊維は、耐摩耗性、工程通過性に優れるため、メッシュ織物等の製品を生産する際の製織性を高めることができ、欠点の少ない製品を得ることができる。また高温での熱変形が小さいため、製品とした後の高温処理における寸法変化が小さく、性能変化が小さい。
本発明の液晶ポリエステル繊維は高強度、高弾性率、耐摩耗性であり、かつ工程通過性に優れ、高温での熱変形が小さいものであり、一般産業用資材、土木・建築資材、スポーツ用途、防護衣、ゴム補強資材、電気材料(特に、テンションメンバーとして)、音響材料、一般衣料等の分野で広く用いられる。有効な用途としては、スクリーン紗、フィルター、ロープ、ネット、魚網、コンピューターリボン、プリント基板用基布、抄紙用のカンバス、エアーバッグ、飛行船、ドーム用等の基布、ライダースーツ、釣糸、各種ライン(ヨット、パラグライダー、気球、凧糸)、ブラインドコード、網戸用支持コード、自動車や航空機内各種コード、電気製品やロボットの力伝達コード等が挙げられ、特に有効な用途として工業資材用織物等に用いるモノフィラメントが挙げられ、中でも高強度、高弾性率、細繊度化の要求が強く、製織性向上、織物品位向上のため耐摩耗性を必要とし、かつ高温での寸法安定性が要求される印刷用スクリーン紗用、フィルター用モノフィラメントに最も好適である。
次に、本発明の液晶ポリエステル繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明に用いる液晶ポリエステルの組成ならびに好適な組成比は、繊維の項に記載したとおりである。
本発明に用いる液晶ポリエステルの融点は、溶融紡糸可能な温度範囲を広くするため好ましくは200〜380℃であり、紡糸性を高めるためにより好ましいのは250〜360℃である。なお液晶ポリエステルポリマーの融点は実施例記載の方法で測定される値(Tm2)を指す。
本発明に用いる液晶ポリエステルのポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、分子量と記載)は3万以上が好ましい。分子量を3万以上とすることで紡糸温度において適切な粘度を持ち製糸性を高めることができる。分子量が高いほど得られる繊維の強度、伸度、弾性率は高まるが、分子量が高すぎると粘度が高くなり流動性が悪くなり、ついには流動しなくなるため分子量は25万以下が好ましく、20万以下がより好ましい。ここでいう、ポリスチレン換算の重量平均分子量は実施例記載の方法で測定される値をいう。
本発明に用いる液晶ポリエステルは溶融紡糸に供する前に乾燥することが水分混入による発泡を抑え、製糸性を高めるうえで好ましい。また真空乾燥を行うことで、液晶ポリエステルに残存するモノマーも除去できるため、製糸性をさらに高めることができ、より好ましい。乾燥条件としては100〜200℃にて、8〜24時間の真空乾燥が通常用いられる。
溶融紡糸において、液晶ポリエステルの溶融押出は公知の手法を用いることができるが、重合時に生成する秩序構造をなくすためにエクストルーダー型の押出機を用いることが好ましい。押し出されたポリマーは配管を経由しギアーポンプなど公知の計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、口金へと導かれる。このときポリマー配管から口金までの温度(紡糸温度)は流動性を高めるため液晶ポリエステルの融点以上とすることが好ましく、液晶ポリエステルの融点+10℃以上がより好ましい。ただし紡糸温度が過度に高いと液晶ポリエステルの粘度が増加し、流動性の悪化、製糸性の悪化を招くため、500℃以下とすることが好ましく、400℃以下がより好ましい。なお、ポリマー配管から口金までの温度をそれぞれ独立して調整することも可能である。この場合、口金に近い部位の温度をその上流側の温度より高くすることで吐出が安定する。
吐出においては口金孔の孔径を小さくするとともに、ランド長(口金孔の孔径と同一の直管部の長さ)を長くすることが製糸性を高め、繊度の均一性を高める点で好ましい。ただし孔径が過度に小さいと孔の詰まりが発生しやすくなるため、孔径は直径0.05mm以上0.50mm以下が好ましく、0.10mm以上0.30mm以下がより好ましい。ランド長は過度に長いと圧力損失が高くなるため、ランド長Lを孔径Dで除した商で定義されるL/Dは1.0以上3.0以下が好ましく、2.0以上2.5以下がより好ましい。
また均一性を維持するために1つの口金の孔数は50孔以下が好ましく、20孔以下がより好ましい。なお、口金孔の直上に位置する導入孔はストレート孔とすることが圧力損失を高めない点で好ましい。導入孔と口金孔の接続部分はテーパーとすることが異常滞留を抑制する上で好ましい。
口金孔より吐出されたポリマーは保温、冷却領域を通過させ固化させた後、一定速度で回転するローラー(ゴデットローラー)により引き取られる。保温領域は過度に長いと製糸性が悪くなるため口金面から200mmまでとすることが好ましく、100mmまでとすることがより好ましい。保温領域は加熱手段を用いて雰囲気温度を高めることも可能であり、その温度範囲は100℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上400℃以下がより好ましい。冷却は不活性ガス、空気、水蒸気等を用いることができるが、平行あるいは環状に噴き出す室温(20〜30℃)の空気流を用いることが環境およびエネルギー負荷を低くする点から好ましい。
引き取り速度(紡糸速度)は生産性向上、単糸細繊度化のため50m/分以上が好ましく、500m/分以上がより好ましい。本発明で好ましい例として挙げた液晶ポリエステルは紡糸温度において好適な曳糸性を有することから引き取り速度を高速にでき、上限は特に制限されないが、曳糸性の点から2000m/分程度となる。
引き取り速度を吐出線速度で除した商で定義される紡糸ドラフトは1以上500以下とすることが好ましく、製糸性を高め、繊度の均一性を高める点で10以上100以下とすることがより好ましい。
溶融紡糸においてはポリマーの冷却固化から巻き取りまでの間に油剤を付与することが繊維の取り扱い性を向上させる上で好ましい。油剤は公知のものを使用できるが、固相重合前巻き返しにおいて溶融紡糸で得られた繊維(以下、紡糸原糸と記載する)を解舒する際の解舒性を向上させる点で、一般的な紡糸油剤や後述の無機粒子(A)およびリン酸系化合物(B)の混合油剤を用いることが好ましい。
巻き取りは公知の巻取機を用いパーン、チーズ、コーンなどの形態のパッケージとすることができるが、巻き取り時にパッケージ表面にローラーが接触しないパーン巻きとすることが繊維に摩擦力を与えずフィブリル化させない点で好ましい。
溶融紡糸して得られる繊維の単繊維繊度は18.0dtex以下が好ましい。ここでいう単繊維繊度とは実施例記載の手法により求める値である。単繊維繊度を18.0dtex以下と細くすることで、繊維状態で固相重合した際に、繊維を構成する高分子の分子量が増加しやすく、強度、伸度、弾性率が向上する。さらに表面積が増加するため後述する融着防止剤である無機粒子(A)およびリン酸系化合物(B)の付着量を多くできると言った特性を有する。単繊維繊度はより好ましくは10.0dtex以下、さらに好ましくは7.0dtex以下である。なお、単繊維繊度の下限は特に限定されないが、本方法により達し得る下限としては1.0dtex程度である。
溶融紡糸して得られる繊維の強度は、次工程である固相重合前の巻き返し工程での糸切れを防ぎ、工程通過性を高めるため3.0cN/dtex以上が好ましく、5.0cN/dtex以上がより好ましい。強度の上限は、本発明においては10cN/dtex程度である。
溶融紡糸して得られる繊維の伸度は、次工程である固相重合前の巻き返し工程での糸切れを防ぎ、工程通過性を高めるため0.5%以上が好ましく、1.0%以上がより好ましい。伸度の上限は、本発明においては5.0%程度である。
溶融紡糸して得られる繊維の弾性率は、次工程である固相重合前の巻き返し工程での糸切れを防ぎ、工程通過性を高めるため300cN/dtex以上が好ましく、500cN/dtex以上がより好ましい。弾性率の上限は、本発明においては800cN/dtex程度である。
本発明でいう、強度、伸度、弾性率は実施例記載の方法で求める値である。
溶融紡糸して得られる繊維の分子量は3万以上が好ましい。分子量を3万以上とすることで高い強度、伸度、弾性率が得られ、工程通過性に優れる。また分子量が高すぎると固相重合が進みにくくなり、到達できる分子量を高くできないため、分子量は25万以下が好ましく、20万以下がより好ましい。ここでいう、ポリスチレン換算の重量平均分子量は実施例記載の方法で測定される値をいう。なお、本発明においては溶融紡糸において分子量の変化は小さい。
溶融紡糸繊維は、次に固相重合に供されるが、固相重合前に融着防止用の油剤を付与する。融着防止剤の付与は、溶融紡糸から巻き取りまでの間に行っても良いが、付着効率を高めるためには溶融紡糸して巻き取った糸条を巻き返しながら該糸条に塗布する、あるいは溶融紡糸で少量を付着させ、巻き取った糸条を巻き返しながら追加塗布することが好ましい。
付着方法はガイド給油法でも良いが、モノフィラメントなど総繊度の細い繊維に均一に付着させるためには金属製あるいはセラミック製のキスロール(オイリングロール)による付着が好ましい。なお、繊維がカセ状、トウ状の場合は混合油剤へ浸漬することで塗布できる。
融着防止剤としては、無機粒子(A)およびリン酸系化合物(B)の混合物を用いることが好ましい。無機粒子(A)およびリン酸系化合物(B)を塗布することで固相重合時に繊維間で発生する融着を抑制する効果に加え、該成分が固相重合工程において熱変性することで、後工程での工程通過性に優れ、さらに製品にする際の後加工性に優れる。なお、融着防止剤として無機粒子(A)およびリン酸系化合物(B)を用いる場合、オイル分を使用しないが、本発明では、このようなオイル分を含まない融着防止剤についても、便宜上「固相重合用油剤」、「混合油剤」、または単に「油剤」として表記する。
本発明における無機粒子(A)とは、公知の無機粒子であり、例として鉱物、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、シリカやアルミナ等の金属酸化物、炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩化合物、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の硫酸塩化合物の他、カーボンブラック等が挙げられる。このような耐熱性の高い無機粒子を繊維上へ塗布することで単糸間の接触面積を減らし、固相重合時に発生する融着を回避することが可能となる。
無機粒子(A)は、塗布工程を考慮して取扱いが容易であり環境負荷低減の観点から水分散が容易であることが好ましく、かつ、固相重合条件下において不活性であることが望ましい。これら観点からシリカやケイ酸塩鉱物を用いることが好ましい。ケイ酸塩鉱物の場合は特に層状構造を持つフィロケイ酸塩が好ましい。なおフィロケイ酸塩とは、カオリナイト、ハロイ石、蛇紋石、珪ニッケル鉱、スメクタイト族、葉ろう石、滑石、雲母などが挙げられるが、これらの中でも入手の容易性を考慮して滑石、雲母を用いることが最も好ましい。
また、本発明におけるリン酸系化合物(B)とは、下式下記化学式(1)〜(3)で示される化合物が使用できる。
Figure 2015115259
ここで、R1,R2は炭化水素、M1はアルカリ金属、M2はアルカリ金属、水素、炭化水素、含酸素炭化水素のいずれかを指す。なお、nは1以上の整数を表す。nの上限は熱分解抑制の観点から好ましくは100以下、より好ましくは10以下である。
R1としては、固相重合時の熱分解による発生ガスを考慮し、環境負荷を低減する観点から構造中にフェニル基を含まないことが好ましく、アルキル基で構成されることがより好ましい。R1の炭素数としては、繊維表面への親和性の観点から2以上が好ましく、かつ、固相重合に伴う有機成分の分解による重量減量率を押さえ、固相重合時の分解により発生する炭化物が繊維表面へ残存することを防ぐ観点から20以下が好ましい。
また、R2としては、水への溶解性の観点から炭素数5以下の炭化水素が好ましく、より好ましいのは炭素数2または3である。
M1としては、製造コストの観点からナトリウム、カリウムが好ましい。
リン酸系化合物(B)を無機粒子(A)と併用することで、無機粒子(A)の分散性を高め、繊維への均一塗布を可能とし、優れた融着抑制効果を発現するだけでなく、無機粒子(A)が繊維表面に固着することを抑制できるので、洗浄後の繊維への無機粒子(A)の残存量が減り、その後の加工工程における付着物を抑制する効果が発現する。
加えて、リン酸系化合物(B)は固相重合条件下において脱水反応およびリン酸系化合物(B)に含まれる有機成分が分解することでリン酸塩の縮合塩が形成され、この縮合塩形成に由来して固相重合後の洗浄工程において水により容易に繊維から除去することが可能である。なお、リン酸系化合物(B)を単独塗布した場合、縮合塩の潮解性により通常の繊維の保管条件においても繊維表面でリン酸塩が吸湿、潮解し粘性を帯びるため洗浄性が低下する。すなわち、無機粒子(A)とリン酸系化合物(B)を併用することにより初めて優れた洗浄性が発現するのである。この優れた洗浄性が発現するメカニズムとしては、無機粒子(A)を併用することにより、無機粒子(A)が吸湿性を持つため、リン酸系化合物(B)の縮合塩が自然に吸湿し潮解することを防ぎ、水中を通過する際にのみリン酸系化合物(B)の縮合塩が吸水することで膨張し、無機粒子(A)と共に繊維表面から層状にはがれ落ちるためと推測している。
無機粒子(A)およびリン酸系化合物(B)の付着量を適性化しつつ均一塗布するためにはリン酸系化合物(B)の希釈液に無機粒子(A)を添加した混合油剤を用いることが好ましく、希釈液としては安全性の観点から水を用いることが好ましい。なお、融着抑制の観点から希釈液中の無機粒子(A)の濃度は高いことが望ましく、0.01重量%以上が好ましく、より好ましくは0.1重量%以上であり、上限としては均一分散の観点から10重量%以下が好ましく、より好ましく5重量%以下である。また、リン酸系化合物(B)の濃度は無機粒子(A)の均一分散の観点からは高いことが望ましく、0.1重量%以上が好ましく、より好ましくは1.0重量%以上である。なお、リン酸系化合物(B)の濃度の上限としては特に制限はないが、混合油剤の粘度上昇による付着過多、粘度の温度依存性増大による付着斑を避ける目的で50重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下である。
なお、繊維への無機粒子(A)の付着率を(a)重量%、リン酸系化合物(B)の付着率を(b)重量%としたとき、以下の条件を満たすことが好ましい。
条件1. 30≧a+b≧2.0
条件2. a≧0.05
条件3. b/a≧1
上記条件1において、固相重合用油剤の油分付着率(a+b)が多いほど融着は抑制できるため、2.0重量%以上が好ましい一方で、多すぎると繊維がべたつきハンドリングが悪化するため30重量%以下が好ましい。より好ましくは4.0重量%以上20重量%以下である。なお繊維への固相重合用油剤の油分付着率(a+b)は固相重合用油剤塗布後の繊維について実施例に記載した手法により求められる油分付着率の値を指す。
条件2において、無機粒子(A)の付着率(a)は0.05重量%以上とすることで無機粒子による融着抑制効果が顕著となる。付着率(a)の上限としては均一付着の観点から5重量%以下が目安である。
条件3において、リン酸系化合物(B)の付着率(b)を無機粒子(A)の付着率(a)以上とすることでリン酸系化合物(B)の固相重合時の縮合塩形成に由来した優れた洗浄性がより顕著に現れ、また無機粒子(A)と繊維間の固着を抑制する観点からも好ましい。
なお、ここでいう無機粒子(A)の付着率(a)および、リン酸系化合物(B)の付着率(b)とは、下式にて算出される値を指す。
(無機粒子(A)の付着率(a))=(a+b)×Ca÷(Ca+Cb)
(リン酸系化合物(B)の付着率(b))=(a+b)×Cb÷(Ca+Cb)
ここで、Caは固相重合用油剤中の無機粒子(A)の濃度、Cbは固相重合用油剤中のリン酸系化合物(B)の濃度を指す。
次に溶融紡糸した液晶ポリエステル繊維を固相重合する。固相重合を行うことで分子量が高まり、強度、弾性率、伸度が高まる。固相重合はカセ状、トウ状(例えば金属網等にのせて行う)、あるいはローラー間で連続的に糸条として処理することも可能であるが、設備が簡素化でき、生産性も向上できる点から繊維を芯材に巻き取ったパッケージ状で行うことが好ましい。
パッケージ状で固相重合を行う場合、融着防止のためには固相重合を行う際の繊維パッケージの巻密度が重要であり、巻き崩れを防ぐために巻き密度を0.01g/cc以上とすることが好ましい。また、融着を回避するためには巻き密度を1.0g/cc以下とすることが好ましく、0.8g/cc以下とすることがより好ましい。ここで巻密度とは、パッケージ外寸法と心材となるボビンの寸法から求められるパッケージの占有体積Vf(cc)と繊維の重量Wf(g)からWf/Vfにより計算される値である。また巻密度が過度に小さいとパッケージが巻き崩れるため0.1g/cc以上とすることが好ましい。なお占有体積Vfはパッケージの外形寸法を実測するか、写真を撮影し写真上で外形寸法を測定し、パッケージが回転対称であることを仮定し計算することで求められる値であり、Wfは繊度と巻取長から計算される値、もしくは巻取前後での重量差により実測される値である。
このような巻密度が小さいパッケージは、溶融紡糸における巻き取りで形成した場合には、設備生産性、生産効率化が向上するために望ましく、一方、溶融紡糸で巻き取ったパッケージを巻き返して形成した場合には、巻き張力を小さくすることができ、巻密度をより小さくできるため好ましい。巻き返しにおいては巻き張力を小さくするほど巻き密度は小さくできるので、巻き張力は0.50cN/dtex以下が好ましく、0.30cN/dtex以下がより好ましい。なお下限は特に定められるものではないが、本発明で到達し得る下限は0.01cN/dtex程度である。
巻き密度を低くするためには巻き返し速度を500m/分以下とすることが好ましく、400m/分以下とすることがより好ましい。一方、巻き返し速度は生産性のためには高い方が有利であり、50m/分以上、特に100m/分以上とすることが好ましい。
また低張力でも安定したパッケージを形成するためには巻き形態は両端にテーパーがついたテーパーエンド巻き取りとすることが好ましい。この際、テーパー角は70°以下が好ましく、60°以下がより好ましい。またテーパー角が小さい場合、繊維パッケージを大きくすることができず長尺の繊維が必要な場合には1°以上が好ましく、5°以上がより好ましい。なお本発明で言うテーパー角とは以下の式で定義される。
Figure 2015115259
ここで、θ:テーパー角(°)、d:巻厚(mm)、l:最内層のストローク(mm)、l:最外層のストローク(mm)である。
さらにパッケージ形成にはワインド数も重要である。ワインド数とはトラバースが半往復する間にスピンドルが回転する回数であり、トラバース半往復の時間(分)とスピンドル回転数(rpm)の積で定義され、ワインド数が大きいことは綾角が小さいことを示す。ワインド数は小さい方が繊維間の接触面積が小さく融着回避には有利であるが、ワインド数が高いほど端面での綾落ち、パッケージの膨らみが軽減でき、パッケージ形状が良好となる。これらの点からワインド数は2以上20以下が好ましく、5以上15以下がより好ましい。
繊維パッケージを形成するために用いられるボビンは円筒形状のものであればいかなるものでも良く、繊維パッケージとして巻き取る際に巻取機に取り付けこれを回転させることで繊維を巻き取り、パッケージを形成する。固相重合に際しては繊維パッケージをボビンと一体で処理することもできるが、繊維パッケージからボビンのみを抜き取って処理することもできる。ボビンに巻いたまま処理する場合、該ボビンは固相重合温度に耐える必要があり、アルミや真鍮、鉄、ステンレスなどの金属製であることが好ましい。またこの場合、ボビンには多数の穴の空いていることが、重合反応副生物を速やかに除去でき固相重合を効率的に行えるため好ましい。また繊維パッケージからボビンを抜き取って処理する場合には、ボビン外層に外皮を装着しておくことが好ましい。また、いずれの場合にもボビンの外層にはクッション材を巻き付け、その上に液晶ポリエステル溶融紡糸繊維を巻き取っていくことが、パッケージ最内層の繊維とボビン外層との融着を防ぐ点で好ましい。クッション材の材質は、有機繊維または金属繊維からなるフェルトが好ましく、厚みは0.1mm以上、20mm以下が好ましい。前述の外皮を該クッション材で代用することもできる。
繊維パッケージの糸長(巻き量)としては1万m以上1000万m以下が好ましい範囲である。
固相重合は窒素等の不活性ガス雰囲気中や、空気のような酸素含有の活性ガス雰囲気中または減圧下で行うことが可能であるが、設備の簡素化および繊維あるいは芯材の酸化防止のため窒素雰囲気下で行うことが好ましい。この際、固相重合の雰囲気は露点が−40℃以下の低湿気体が好ましい。
固相重合温度は、固相重合に供する液晶ポリエステル繊維の吸熱ピーク温度をTm1(℃)とした場合、最高到達温度がTm1−60℃以上であることが好ましい。このような融点近傍の高温とすることで固相重合が速やかに進行し、繊維の強度を向上させることができる。なお、ここで言うTm1は液晶ポリエステル繊維の融点であり、本発明においては実施例記載の測定方法により求められた値を指す。なお最高到達温度はTm1(℃)未満とすることが融着防止のために好ましい。また固相重合温度を時間に対し段階的にあるいは連続的に高めることは、融着を防ぐと共に固相重合の時間効率を高めることができ、より好ましい。この場合、固相重合の進行と共に液晶ポリエステル繊維の融点は上昇するため、固相重合温度は、固相重合前の液晶ポリエステル繊維のTm1+100℃程度まで高めることができる。ただしこの場合においても固相重合での最高到達温度は固相重合後の繊維のTm1−60(℃)以上Tm1(℃)未満とすることが固相重合速度を高めかつ融着を防止できる点から好ましい。
固相重合時間は、繊維の分子量すなわち強度、弾性率、伸度を十分に高くするためには最高到達温度で5時間以上とすることが好ましく、10時間以上がより好ましい。一方、強度、弾性率、伸度増加の効果は経過時間と共に飽和するため、生産性を高めるためには50時間以下とすることが好ましい。
本発明においては、高次加工における工程通過性、製品の外観上の欠点抑制の観点から、固相重合した繊維を洗浄することが好ましい。洗浄を行い融着防止用の固相重合用油剤を除去することで、後の工程、たとえば製織工程での固相重合用油剤のガイド等への堆積による工程通過性の悪化、堆積物の製品への混入による欠点生成などを抑制することが可能となる。
洗浄方法としては、繊維表面を布や紙で拭き取る方法も挙げられるが、固相重合糸に力学的な負荷を与えるとフィブリル化するため、固相重合用油剤が溶解あるいは分散できる液体に繊維を浸す方法が好ましい。液体への浸漬に加えて流体を用いて吹き飛ばす方法は、液体により膨潤した固相重合用油剤が効率的に除去できるためより好ましい。
洗浄に用いる液体は、環境負荷を低減するために水とすることが好ましい。液体の温度は高い方が除去効率を高めることができ、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。ただし温度が高すぎる場合には液体の蒸発が著しくなるため、液体の沸点−20℃以下が好ましく、沸点−30℃以下がより好ましい。
洗浄に用いる液体には、洗浄効率向上の観点から界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の添加量は除去効率を高め、かつ環境負荷を低下させるため0.01〜1重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。
さらに、洗浄効率を高めるため、洗浄に用いる液体に振動または液流を付与することが好ましい。この場合、液体を超音波振動させるなどの手法もあるが、設備簡素化、省エネの観点から液流を付与することが好ましい。液流付与の方法は液浴内の撹拌、ノズルでの液流付与等の方法があるが、液浴を循環する際の供給をノズルで行うことで簡単に実施できることからノズルでの液流付与が好ましい。
洗浄は単位時間当たりの処理量を増加させるため、繊維をカセ状、トウ状、あるいはパッケージの状態で液体に浸しても良いが、繊維長手方向の均一な除去を行うために、繊維を連続的に走行させつつ液体に浸すことが好ましい。繊維を連続的に液体に浸す方法は、ガイド等を用いて繊維を浴内に導く方法でも良いが、ガイドとの接触抵抗による固相重合繊維のフィブリル化を抑制するため、浴の両端にスリットを設け、このスリットを通って繊維が浴内を通過できるようにし、かつ浴内には糸道ガイドを設けないことが好ましい。
なお、パッケージ状の固相重合糸を連続的に走行させる場合、繊維を解舒するが、固相重合で生じる軽微な融着を剥がす際のフィブリル化を抑制するためには固相重合パッケージを回転させながら、回転軸と垂直方向(繊維周回方向)に糸を解舒する、いわゆる横取りにより解舒することが好ましい。
そのような解舒方法としては、モーター等を用いて回転数一定で積極駆動する方法、ダンサーローラーを用いて回転数を制御しながら調速解舒する方式、フリーロールに固相重合パッケージをかけて、調速ローラーにより繊維を引っ張りつつ解舒する方法が挙げられる。また、液晶ポリエステル繊維をパッケージの状態で液体に浸し、そのまま解舒する方法も、油分を効率的に除去することが可能であるため、好ましい態様である。
なお、流体を用いて吹き飛ばす場合に用いる流体は、空気または水であることが好ましい。特に流体に空気を用いる場合は、液晶ポリエステル繊維表面を乾燥させる効果も期待することが可能になるため、その後の工程中で汚れが堆積することを防止し、すなわち収率の改善が見込まれることから、好ましい態様である。
次に固相重合した繊維に融点+50℃以上の温度で熱処理を施す。なお、ここで言う融点とは実施例記載の測定方法により求められるTm1を指す。以後、繊維の融点をTm1と記載する。液晶ポリエステル繊維にTm1+50℃以上もの高温で熱処理を施すことで耐摩耗性は大きく向上する。なお単繊維繊度が小さい場合にその効果は顕著となる。
液晶ポリエステルのように剛直な分子鎖は緩和時間が長く、表層が緩和する時間のうちに内層も緩和し繊維が溶融してしまう。このため、液晶ポリエステル繊維に適した耐摩耗性向上技術を検討したところ、液晶ポリエステルの場合、分子鎖を緩和させるのではなく加熱により繊維全体の結晶化度、結晶の完全性を低下させることで耐摩耗性を向上できることを見出した。
さらに結晶性を低下させるためには繊維を融点以上に加熱する必要があるが、熱可塑性合成繊維においてはこのような高温では、特に単繊維繊度が小さい場合には強度、弾性率が低下し、さらには熱変形、溶融(溶断)してしまう。液晶ポリエステルでもこのような挙動は見られるが、本発明者らは液晶ポリエステルの融点とは、結晶から液晶に転移する温度であることに着目し、固相重合した液晶ポリエステル繊維においては分子量増加により緩和時間は非常に長くなっているため液晶の分子運動性が低く、融点以上の高温で熱処理しても短時間であれば、分子鎖の配向を高いレベルで維持したまま結晶化度を低下させることができ、強度、弾性率の低下が小さいことを見出した。これらのことから特に単糸繊度が小さい液晶ポリエステル繊維に対し、Tm1+50℃以上の高温熱処理を短時間行うことで、液晶ポリエステル繊維の強度、弾性率、耐熱性を大きく損なうことなく耐摩耗性を向上できることを見出したのである。
高温熱処理温度は繊維の結晶化度の低下、結晶の完全性の低下のために固相重合した繊維のTm1+60℃以上とすることがより好ましく、Tm1+80℃以上とすることがさらに好ましく、Tm1+130℃以上とすることが最も好ましい。処理温度は過度に高いと処理後の繊維の高温での熱変形が大きくなるため、Tm1+200℃以下が好ましく、Tm1+180℃以下がより好ましい。
なお、従来でも液晶ポリエステル繊維の熱処理を行う例はあるが、液晶ポリエステルは融点以下の温度でも応力により熱変形(流動)するため融点以下で行うことが一般的である。熱処理という点では液晶ポリエステル繊維の固相重合があるが、この場合でも処理温度は繊維の融点以下としないと繊維が融着、溶断してしまう。固相重合の場合、処理に伴い繊維の融点が上昇するため、最終の固相重合温度は処理前の繊維の融点以上となることがあるが、その場合でも処理温度は処理されている繊維の融点、すなわち熱処理後の繊維の融点よりも低い。
本発明における高温熱処理は固相重合を行うことではなく、固相重合によって形成された緻密な結晶部分と非晶部分の構造差を減少させること、つまり結晶化度、結晶の完全性を低下させ、非晶化させることで耐摩耗性を高めるものである。したがって処理温度は熱処理により融点が変化しても、変化後の繊維のTm1+50℃以上とすることが好ましく、この点から処理温度は処理後の繊維のTm1+50℃以上とすることが好ましく、Tm1+60℃以上がより好ましく、Tm1+80℃以上とすることがさらに好ましく、Tm1+130℃以上とすることが最も好ましい。
また、別の熱処理として液晶ポリエステル繊維の熱延伸があるが、熱延伸は高温で繊維を緊張させるものであり、繊維構造は分子鎖の配向が高くなり、強度、弾性率は増加し、結晶化度、結晶の完全性は維持したまま、すなわちΔHm1は高いまま、融点のピーク半値幅は小さいままである。したがって耐摩耗性に劣る繊維構造となり、結晶化度を低下(ΔHm1減少)、結晶の完全性を低下(ピーク半値幅増加)させて耐摩耗性を向上させることを目的とする本発明の熱処理とは異なる。なお本発明で言う高温熱処理では結晶化度が低下するため、強度、弾性率は増加しない。
高温熱処理は、繊維を連続的に走行させながら行うことが繊維間の融着を防ぎ、処理の均一性を高められるため好ましい。このときフィブリルの発生を防ぎ、かつ均一な処理を行うため、非接触熱処理を行うことが好ましい。加熱手段としては雰囲気の加熱、レーザーや赤外線を用いた輻射加熱などがあるがブロックまたはプレートヒーターを用いたスリットヒーターによる加熱は雰囲気加熱、輻射加熱の両方の効果を併せ持ち、処理の安定性が高まるため好ましい。
本発明においては、高温熱処理でのストレッチ率を0.1%以上、3.0%未満とする。本発明におけるストレッチ率とは、熱処理前の糸速度(V0)と熱処理後の糸速度(V1)を用いて以下の式で表される。なお熱処理前および後の糸速度は、それぞれ熱処理前および後で糸速度を規制するローラーの表面速度と同義である。
(ストレッチ率(%))=(V1−V0)×100/V0
従来技術においても、高温熱処理でのストレッチ、リラックスについての記載はあったが、これは走行安定性の向上、または耐摩耗性の改善、さらにはより高いストレッチを施して、繊維を細くすることが目的であった。しかし本発明の目的である耐摩耗性の改善と高温での熱変形抑制の両立という点で見た場合、特に高温での熱変形抑制に関し、熱処理でのストレッチが影響することが新たに分かった。この理由は十分明らかではないが、以下のように推定する。
上述したように高温熱処理は融点+50℃以上となる高温で行われる。この温度では、液晶ポリエステル繊維の結晶部分は融解し、配向した非晶(液晶)状態となっている。従来技術の思想では、このような高温での熱緩和により非晶の配向を乱すことがねらいであった。
新たに分かった点は、固相重合した液晶ポリエステル繊維には、相互作用が強い拘束点のようなものが存在している可能性である。このような点の存在により、熱緩和だけで非晶の配向を十分に乱すことが難しく、十分に乱すために熱処理温度を高めると、熱緩和の程度が大きくなり、非晶の配向が大きく乱れ、このため高温での熱変形が大きくなってしまう。すなわち、熱処理温度の調整のみでは高い耐摩耗性と高温での熱変形抑制を両立することは困難である。
そこで、適度なストレッチが重要となる。高温熱処理下で配向した非晶(液晶)状態となっている液晶ポリエステルを繊維軸長手方向にわずかに変形させることで、拘束点を破壊すると同時に、流動変形の作用により配向緩和を抑制することができるのである。この効果により液晶ポリエステル同士の相互作用を低減させ、かつ配向の乱れを適切な範囲とすることができ、高い耐摩耗性と熱変形抑制が両立できるのである。
この考えに基づけば、温度をより高くし、より高いストレッチを施すことが有効に考えられる。しかし、ストレッチの効果は拘束点の破壊であり、ストレッチの効果は0%から3%程度の間で最も大きく発現し、それよりも大きくしても効果は飽和する。一方、高いストレッチ率を施すためには伸長変形に対する抵抗、すなわち伸長粘度を低下させる必要があり、熱処理温度を高める必要がある。このような場合においては、ストレッチの効果よりも熱処理温度を高めた効果の方が上回り、熱変形の抑制が達成できないのである。
本発明の技術は、これまで高温熱処理の温度のみで制御していた液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性向上を、適度なストレッチにより、相互作用低下と配向の乱れをある程度独立して制御できるようした点に特徴がある。この特徴により高い耐摩耗性と、熱変形の抑制を両立できるのである。
本発明において、ストレッチ率は0.1%以上である。0.1%以上とすることで、耐摩耗性向上の効果が得られる。ストレッチ率は高い方が耐摩耗性は向上するため、0.5%以上が好ましく、0.6%以上がより好ましい。一方、ストレッチ率が過度に高いと非晶配向の乱れが大きくなりすぎ、高温での熱変形が大きくなるため、ストレッチ率は3.0%未満であり、2.5%以下が好ましい。
処理速度(糸速度)は処理長にもよるが高速であるほど高温短時間処理が可能となり、耐摩耗向上効果が高まり、さらに生産性も向上するため100m/分以上が好ましく、200m/分以上がより好ましく、300m/分以上がさらに好ましい。処理速度の上限は繊維の走行安定性から1000m/分程度である。
処理長(ヒーター長)は加熱方法にもよるが、非接触加熱の場合には均一な処理を行うために100mm以上が好ましく、500mm以上がさらに好ましい。また処理長が過度に長いとヒーター内部での糸揺れにより処理ムラ、繊維の溶断が発生するため3000mm以下が好ましく、2000mm以下がより好ましい。
本発明においては、高温熱処理を行った後、引き続き繊維の加熱領域から1cm以上、50cm以下の範囲内で糸道ガイドを用いて糸道規制を行った後、巻き取ることが好ましい。
本発明においては適切なストレッチを熱処理中に付与することで繊維をわずかに引き伸ばすことから、延伸点の変動は、繊維の長手方向のむら、さらには糸切れにつながることがロングラン評価を通じて分かった。延伸点の変動の原因は、高温熱処理が融点+50℃以上もの高温であるため、熱処理での張力が小さく、糸ゆれが生じるためと考えられる。ストレッチ率が0%の場合は延伸そのものが起こらないため糸ゆれが生じても糸切れは発生しにくいが、本発明においてはストレッチを付与するため、糸ゆれの影響が顕在化するのである。
そのため、糸ゆれを軽減させるためのガイドを用いた規制が有効なのである。高温熱処理を施す前の液晶ポリエステル繊維は擦過によりフィブリル化が発生する可能性があるが、熱処理後であれば耐摩耗性が高まっているため、低張力で擦過させてもフィブリル化が起こらない。
糸道ガイドの設置位置は加熱領域から1cm以上、50cm以下の範囲内が好ましい。繊維は加熱領域を出た後に冷却(空冷)されるため、加熱領域を出た後でもわずかに変形しつつ、冷却される。この領域が最も糸ゆれの影響が大きいため、冷却領域となる1cm以上、50cm以下の範囲内が有効であり、1cm以上、20cm以下がより好ましい。
ガイドの設置本数は1本以上が好ましい。本数が多いと擦過の回数が増え、フィブリル化する可能性が高まるため、本数は3本以下が好ましい。なお、複数本のガイドを繊維が走行する方向に対し並べ、その間に繊維を走らせる方法も有効である。この場合、設置位置とは複数本のガイドのうち最もヒーターに近い側の位置を指す。
ガイドの材質はセラミック、金属等一般的なものを使用できるが、液晶ポリエステル繊維に対するダメージを軽減するために金属表面をハードクロムメッキしたものが好ましい。また表面粗度は摩擦係数を適正な範囲に保ち、繊維にダメージを与えないために、JIS B0601:2001記載の方法で測定されるRzjisで2〜8の範囲が好ましく、2〜4がより好ましい。
繊維とガイドとの接触にあたっては、繊維へのダメージを軽減するためにガイド前後での走行張力比を過度に高めないことが好ましく、ガイドよりも巻き取り側に近い領域での走行張力(T2)と加熱領域に近い側の走行張力(T1)の比であるT2/T1が1.0以上2.0以下であることが好ましい。
最後に高温熱処理での繊維構造変化について処理前後での繊維特性の違いから述べる。
この熱処理は、液晶ポリエステル繊維の融点(結晶−液晶転移温度)以上の高温で短時間の熱処理を施すものであり、結晶化度は低下するが配向緩和はわずかである。このことは熱処理によりΔHm1は減少、Tm1における半値幅は増加するが、Δnはほとんど変化しないという構造変化に示されている。また処理時間が短いため分子量は変化しない。結晶化度の低下は力学特性の大幅な低下を引き起こすことが一般的であり、本発明の熱処理においても強度、弾性率は増加することはなく低下するものの、本発明の方法では高い分子量と配向を維持するために、高いレベルで強度、弾性率を維持し、かつ高い融点(Tm1)、耐熱性を維持するのである。またtanδに関しては、高温熱処理によりtanδのピーク温度は高温化し、ピーク値は上昇する。熱処理により結晶性が低下することでピーク値が上昇し、耐摩耗性が向上する。ピーク温度については、結晶融解により非晶のピークが増加した結果、ピーク温度が高温化する。すなわち、高温熱処理を施していない状態では、ピーク温度が低く、結晶性が高いことから耐摩耗性が低いのである。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
A.熱特性(Tm1、Tm2、Tm1ピーク半値幅、ΔHm1、ΔHm2)
TA instruments社製DSC2920により示差熱量測定を行い、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度をTm1(℃)とし、Tm1での融解熱量をΔHm1(J/g)とした。Tm1の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で50℃まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度をTm2とし、Tm2での融解熱量をΔHm2(J/g)とした。繊維、樹脂とも同様の測定を行い、樹脂ではTm2を融点とした。
B.ポリスチレン換算の重量平均分子量(分子量)
溶媒としてペンタフルオロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)の混合溶媒を用い、液晶ポリエステルの濃度が0.04〜0.08重量/体積%となるように溶解させGPC測定用試料とした。なお、室温24時間の放置でも不溶物がある場合は、さらに24時間静置し、上澄み液を試料とした。これを、Waters社製GPC測定装置を用いて測定し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。
カラム:ShodexK−806M 2本、K−802 1本
検出器:示差屈折率検出器RI
温度 :23±2℃
流速 :0.8mL/分
注入量:200μL
C.総繊度、単繊維繊度
検尺機にて繊維を100mカセ取りし、その重量(g)を100倍し、1水準当たり3回の測定を行い、平均値を総繊度(dtex)とした。これをフィラメント数で除した商を単繊維繊度(dtex)とした。
D.強度、伸度、弾性率、強力変動率
JIS L1013:2010記載の方法に準じて、試料長100mm、引張速度50mm/分の条件で、オリエンテック社製テンシロンUCT−100を用い1水準当たり10回の測定を行い、平均値を強力(cN)、強度(cN/dtex)、伸度(%)、弾性率(cN/dtex)とした。なお、弾性率とは初期引張抵抗度のことである。強力変動率は強力の10回の平均値からの最大もしくは最小値の差の絶対値のうち、いずれか大きい方の値を用いて下式により算出した。
強力変動率(%)=((|最大値もしくは最小値−平均値|/平均値)×100)
E.複屈折率(△n)
偏光顕微鏡(OLYMPUS社製BH−2)を用いコンペンセーター法により試料1水準当たり5回の測定を行い、平均値として求めた。
F.損失正接(tanδ)
オリエンテック社製バイブロンDDV−II−EPを用い、周波数110Hz、初期荷重0.13cN/dtex、昇温速度3℃/分の条件で60℃から210℃までの動的粘弾性測定を行い、損失正接(tanδ)のピーク温度、ピーク値を求めた。明確なピークが見られない場合は昇温測定におけるtanδ最大値をピーク値、そのときの温度をピーク温度とした(すなわち、明確なピークが見られない場合は60℃もしくは210℃がピーク温度となる)。ピークが複数見られる場合は、最大値を取るものをピーク値とみなした。またピークトップの値が一定温度続く場合は、その温度の平均値をピーク温度とみなした。
G.繊維重量に対する油分付着率
100mg以上の繊維を採取し、60℃にて10分間乾燥させた後の重量を測定し(W0)、繊維重量に対し100倍以上の水にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを繊維重量に対し2.0重量%添加した溶液に繊維を浸漬させ、室温にて20分超音波洗浄し、洗浄後の繊維を水洗し、60℃にて10分間乾燥させた後の重量を測定し(W1)、次式により油分付着率を算出した。
(付着率(重量%))=(W0−W1)×100/W1
H.耐摩耗性C
1.23cN/dtexの荷重をかけた繊維を垂直に垂らし、繊維に対して垂直になるように直径4mmのセラミック棒ガイド(湯浅糸道工業(株)社製、材質YM−99C)を接触角2.7°で押し付け、ストローク長30mm、ストローク速度600回/分でガイドを繊維軸方向に擦過させ、30秒おきに実体顕微鏡観察を行い、棒ガイド上もしくは繊維表面上に白粉またはフィブリルの発生が確認されるまでの時間を測定し、7回の測定のうち最大値および最小値を除いた5回の平均値を求め耐摩耗性Cとした。なお360秒の擦過後でも白粉またはフィブリルの発生が見られなかった場合は360秒とした。
I.高温での熱変形率(乾熱寸法変化率)
JIS L1013:2010記載の方法に準じて、乾熱のかせ寸法変化率を測定し、高温での熱変形率とした。このとき、かせ長測定時の荷重を3.0cN/dtexとし、処理温度を150℃、処理時間を5分とし、乾熱処理時の荷重も同様とした。熱変形率は以下の式で求めた。
(熱変形率(%))=(L1−L0)×100/L0
L0:乾熱処理前のカセ長(cm)
L1:乾熱処理後のカセ長(cm)
J.熱処理工程での糸切れ
熱処理工程における糸切れ回数と処理した繊維長から、下記式により100万mあたりの糸切れ回数を算出した。なお処理した繊維長は実施例1〜8、比較例1〜6では固相重合パッケージ1本分、実施例9〜11、参考例3では500万m分である。
(糸切れ(回/100万m))=(糸切れ回数(回))×100/(処理した繊維長(万m))
L.製糸性
溶融紡糸工程において50万mの巻取を行った際の糸切れ回数を計測し、以下の基準に基づいて製糸性を判定した。糸切れ回数が少ないほど製糸性が良好であり、工業的観点からは糸切れ回数が2回以下であることが好ましい。
◎:0回
○:1〜2回
△:3〜4回
×:5回以上
(参考例1)
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸292重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1460重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、335℃まで4時間で昇温した。
重合温度を335℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に40分間反応を続け、トルクが28kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
得られた液晶ポリエステルの組成、融点、分子量は表1に記載の通りである。
(参考例2)
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部および無水酢酸946重量部(フェノ−ル性水酸基合計の1.03モル当量)を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、325℃まで4時間で昇温した。
重合温度を325℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、所定トルクに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
得られた液晶ポリエステルの組成、融点、分子量は表1に記載の通りである。
Figure 2015115259
(実施例1)
参考例1の液晶ポリエステルを用い、160℃、12時間の真空乾燥を行った後、大阪精機工作株式会社製φ15mm単軸エクストルーダーにて溶融押し出しし、ギアーポンプで計量しつつ紡糸パックにポリマーを供給した。紡糸パックでは金属不織布フィルターを用いてポリマーを濾過し、表2記載の条件にてポリマーを吐出した。なお口金孔の直上に位置する導入孔はストレート孔とし、導入孔と口金孔の接続部分はテーパーとしたものを用いた。吐出したポリマーは40mmの保温領域を通過させた後、25℃、空気流の環状冷却風により糸条の外側から冷却し固化させ、その後、脂肪酸エステル化合物を主成分とする紡糸油剤を付与し、全フィラメントを表2記載の紡糸速度で第1ゴデットロールに引き取った。これを同じ速度である第2ゴデットロールを介した後、全フィラメント中の1本以外はサクションガンにて吸引し、残りのフィラメント数1の繊維はダンサーアームを介しパーンワインダー(神津製作所社製EFT型テークアップワインダー、巻取パッケージに接触するコンタクトロール無し)にてパーンの形状に巻き取った。50万mの巻取中、糸切れは発生せず製糸性は良好であった。得られた紡糸繊維物性を表2に示す。なお、得られた紡糸原糸のtanδ測定では、明確なピークは見られず、温度上昇に伴い、単調に増加する挙動であった。したがって本発明で定義するピーク温度は210℃となり、ピーク値は0.067であった。
Figure 2015115259
この紡糸繊維パッケージから神津製作所社製SSP−MV型リワインダー(接触長200mm、ワインド数8.7、テーパー角45°)を用いて巻き返しを行った。紡糸繊維の解舒は、縦方向(繊維周回方向に対し垂直方向)に行い、調速ローラーは用いず、オイリングローラー(梨地仕上げのステンレスロール)を用いて固相重合用油剤の給油を行った。固相重合用油剤には、リン酸系化合物(B)として下記化学式(4)で示されるリン酸系化合物(B)を6.0重量%含有する水溶液に、無機粒子(A)としてタルク、SG−2000(日本タルク株式会社製)を1.0重量%分散させたものを用いた。
Figure 2015115259
巻き返しの芯材にはステンレス製の穴あきボビンにケブラーフェルト(目付280g/m、厚み1.5mm)を巻いたものを用い、面圧は100gfとした。巻き返し後の繊維への固相重合用油剤の油分付着率、ならびに巻き返し条件を表3に示す。
次に巻き返したパッケージからステンレスの穴あきボビンを外し、ケブラーフェルトに繊維を巻き取ったパッケージの状態として固相重合を行なった。固相重合は、密閉型オーブンを用い、室温から240℃までは約30分で昇温し、240℃にて3時間保持した後、4℃/時間で表3に示す最高到達温度まで昇温し、表3に示す保持時間の間保持し、固相重合を行った。なお、雰囲気は除湿窒素を流量20NL/分にて供給し、庫内が過度に加圧にならないよう排気口より排気させた。得られた固相重合後繊維物性を表3に示す。なお、固相重合後繊維の耐摩耗性Cは30秒であり、耐摩耗性に劣るものであった。
Figure 2015115259
最後に、固相重合後のパッケージから繊維を解舒し、連続して高温非接触熱処理を行なった。固相重合後のパッケージをフリーロールクリール(軸およびベアリングを有し、外層部は自由に回転できる。ブレーキおよび駆動源なし。)にはめ、ここから糸を横方向(繊維周回方向)に引き出し、連続して、繊維を両端にスリットを設けた浴長150cm(接触長150cm)の浴槽(内部に繊維と接触するガイドなし)内に通し、油剤を洗浄除去した。洗浄液は非イオン・アニオン系の界面活性剤(三洋化成社製グランアップUS−30)を0.2wt%含有した50℃の温水とし、外部タンクにてこれを温調し、ポンプにて水槽に供給した。水槽への供給に際しては、水槽内に5cm間隔で穴を開けたパイプを通し、このパイプに供給することで水槽内に液流を与えるようにした。なおスリットおよび液面調整用の穴からあふれた洗浄液は回収し、外部タンクに戻す機構を設けている。
洗浄後の繊維は引き続き、両端にスリットを設けた浴長23cm(接触長23cm)の浴槽(内部に繊維と接触するガイドなし)内に通し、50℃の温水ですすいだ。すすぎ後の繊維はベアリングローラーガイドを通し、空気流を当てて水を吹き飛ばして除去した後に、200m/分のセパレートローラー付きの第1ローラーに通した。なお、クリールはフリーロールであるため、このローラーにより繊維に張力を付与することで、固相重合パッケージからの解舒を行い、繊維を走行させることになる。
ローラーを通過した繊維を加熱したスリットヒーター間を走行させ、表4に示した条件で高温非接触熱処理を行なった。スリットヒーター内にはガイド類を設けず、またヒーターと繊維も非接触としている。ヒーター通過後の繊維はセパレートローラー付きの第2ローラーに通した。なお、熱処理前の糸速度は第1ローラーの表面速度、熱処理後の糸速度は第2ローラーの表面速度を表している。第2ローラーを通過した繊維は、セラミック製のオイリングローラーにより脂肪酸エステル化合物を主体とする仕上げ油剤を付与し、EFT型ボビントラバースワインダー(神津製作所社製)にてパーンの形状に巻き取った。高温熱処理後の繊維物性を表4に示す。なお、この液晶ポリエステル繊維の△nは0.35であり高い配向を有していた。
実施例1で得られた繊維は高い耐摩耗性と低い熱変形率を両立できており、高次加工での工程通過性改善、欠点の減少、さらには加工における高温での熱変形抑制も期待できることが分かる。
Figure 2015115259
(比較例1〜4、実施例2、3)
ここでは高温熱処理でのストレッチ率の影響について評価を行った。
実施例1で得られた固相重合糸を用いて、熱処理温度、ストレッチ率を表4の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で高温熱処理を行った。
ストレッチ率を5.0%とした比較例2では、熱処理直後から糸切れが発生し、4万mの処理を行う間に2回の糸切れが発生し、3万m以上のサンプルが得られなかったため試験を中止した。
得られた繊維の物性を表4に示す。ストレッチ率が0.1%以上、3.0%未満であれば糸切れも少なく、得られた繊維では優れた耐摩耗性と低い熱変形率を両立できていることが分かる。
ストレッチ率が低い比較例1では熱処理の糸切れ回数がやや多く、tanδピーク値が高く、熱変形率が大きくなっている。また、ストレッチ率が5.0%の比較例3では、糸切れ抑制のため温度を高くしたことからtanδピーク値が上昇し、熱変形率が大きくなっている。ストレッチ率のみが高い比較例4ではtanδピーク値が小さく、熱変形率は小さいものの、耐摩耗性が劣位となっている。
(実施例4、5)
ここでは単糸繊度の影響について評価を行った。
吐出量、紡糸速度を表2の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行った。単糸繊度が小さい実施例5では糸切れが1度生じたが、紡糸性は問題なかった。得られた繊維物性を表2に示す。
次に巻き条件(量、張力、密度)を表3の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で巻き返し、固相重合を行った。得られた固相重合後繊維物性を表3に示す。
次に熱処理温度を表4の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で、高温熱処理を行った。単糸繊度が小さい実施例5では10万mの処理中に糸切れが1度生じたが、工程通過性には概ね問題なかった。
得られた繊維の物性を表4に示す。単糸繊度が異なっていても、熱処理温度を調節し、かつストレッチ率が0.1%以上、3.0%未満であれば、得られた繊維では優れた耐摩耗性と低い熱変形率を両立できていることが分かる。
(実施例6)
ここでは熱処理速度の影響について評価を行った。
実施例1で得られた固相重合糸を用いて、熱処理温度、処理速度を表4の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で高温熱処理を行った。
得られた繊維の物性を表4に示す。処理速度が異なっていても、熱処理温度を調節し、かつストレッチ率が0.1%以上、3.0%未満であれば糸切れは少なく、得られた繊維では優れた耐摩耗性と低い熱変形率を両立できていることが分かる。
(実施例7)
ここではフィラメント数の影響について評価を行った。
吐出量、口金ホール数、紡糸速度を表2の通りに変え、吐出したフィラメントを収束させてマルチフィラメントとして巻き取った以外は実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行った。糸切れが1度生じたが、紡糸性は問題なかった。得られた繊維物性を表2に示す。
次に巻き量を表3の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で巻き返し、固相重合を行った。得られた固相重合後繊維物性を表3に示す。
次に熱処理温度、ストレッチ率を表4の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で、高温熱処理を行った。10万mの処理中に糸切れが1度生じたが、工程通過性には概ね問題なかった。
得られた繊維の物性を表4に示す。マルチフィラメントであっても、熱処理温度を調節し、かつストレッチ率が0.1%以上、3.0%未満であれば、得られた繊維では優れた耐摩耗性と低い熱変形率を両立できていることが分かる。
(実施例8)
ここではポリマー組成の影響について評価を行った。
参考例2で得られたポリマーを用い、口金孔径、ランド長、吐出量、紡糸速度を表2の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行った。糸切れが1度生じたが、紡糸性は問題なかった。得られた繊維物性を表2に示す。
次に巻き量を表3の通りに変えた以外は実施例1と同様の方法で巻き返し、固相重合を行った。得られた固相重合後繊維物性を表3に示す。
次に実施例1と同様の方法で、高温熱処理を行った。10万mの処理中に糸切れが1度生じたが、工程通過性には概ね問題なかった。
得られた繊維の物性を表4に示す。組成が異なっていても、熱処理温度を調節し、かつストレッチ率が0.1%以上、3.0%未満であれば、得られた繊維では良好な耐摩耗性と低い熱変形率を両立できていることが分かる。
(比較例5、6)
ここでは高温熱処理の効果について評価を行った。
実施例1および実施例8で得られた固相重合糸を用いて、ヒーターを昇温せず、温度を常温とし、ヒーター前後のローラーを共に200m/分として走行させた以外は実施例1、実施例8の熱処理と同様の方法で繊維を走行させ、繊維を巻き取った。すなわち、固相重合した繊維から、解舒、洗浄を行い、熱処理をせずに巻きなおした形である。
得られた繊維の物性を表4に示す。熱変形率はそれぞれ低いものの、高温熱処理を施していないため、耐摩耗性が低いことが分かる。比較例5ではtanδピーク値が低く、比較例6ではピーク温度が低く、このような場合には良好な耐摩耗性と低い熱変形率を両立できないことが分かる。
(実施例9、参考例3)
ここでは加熱領域を出た後のガイド設置の影響に関しロングラン評価を行った。すなわち高温熱処理に供した固相重合糸を500万mとして、主に糸切れに注目して評価を行った。
実施例1で得られた固相重合糸を用いて、表5に記載したように熱処理ヒーターを出た位置に直径3.8mmの硬質クロムメッキ梨地加工金属棒ガイド(湯浅糸道工業(株)製棒ガイド、Rzjis=2〜4)を2本設置した以外は実施例1と同様の方法で高温熱処理を行った。なお処理長は固相重合糸10本分の500万mとした(実施例9)。またガイドを設置せず、実施例1と同様の条件で500万mの高温熱処理を行った(参考例3)。参考例3と実施例1の違いは処理長の違いのみである。
得られた繊維の物性を表5に示す。実施例9は参考例3に対し糸切れ回数が少なく、走行安定性に優れることが分かる。得られた物性では強力変動率が小さくなっておりばらつきが小さくなっていることが分かる。また強度、伸度、弾性率が参考例3に対しわずかに高く、安定した処理を行うことでばらつきが小さくなったことの効果と推測される。このように加熱領域を出た後にガイドを設置して糸道を規制することで糸切れを抑制できることが分かる。
Figure 2015115259
(実施例10、11)
ここでは加熱領域を出た後のガイド設置位置の影響に関しロングラン評価を行った。
ストレッチ率、ガイド設置位置を表5の通りに変えた以外は実施例9と同様の方法で高温熱処理を行った。なお実施例10、11と実施例3とではストレッチ率は同一であり、ガイド設置および処理長が異なる。
得られた繊維の物性を表5に示す。実施例10ではガイド設置位置と加熱領域(ヒーター)が近いためT1の測定ができなかった。実施例10では実施例3に比べ、処理長が長いにも関わらず糸切れが低減できることが分かる。実施例11でも同様に実施例3に比べ糸切れ回数が低減していることが分かる。このようにガイド設置位置が加熱領域から1cm以上、50cm以下の範囲内とすることで糸切れを抑制できることがわかる。

Claims (5)

  1. 示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク(Tm1)におけるピーク半値幅が15℃以上であり、ポリスチレン換算の重量平均分子量が25.0万以上200.0万以下であり、損失正接(tanδ)のピーク温度が100℃以上、200℃以下であり、損失正接(tanδ)のピーク値が0.060以上、0.090以下であることを特徴とする液晶ポリエステル繊維。
  2. 繊維の強力変動率が10%以下であることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステル繊維。
  3. 請求項1または2記載の液晶ポリエステル繊維からなるメッシュ織物。
  4. 溶融紡糸して得られた液晶性ポリエステル繊維を固相重合し、その後、示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+50℃以上の温度で0.1%以上3.0%未満のストレッチ率で加熱処理することを特徴とする溶融液晶性ポリエステル繊維の製造方法。
  5. 加熱処理した後、引き続き、加熱領域出口部から1cm以上、50cm以下の範囲内で糸道ガイドによる糸道規制を行って巻き取ることを特徴とする請求項4記載の溶融液晶性ポリエステル繊維の製造方法。
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