JP5115471B2 - 液晶性ポリエステル繊維及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、強度、弾性率及び耐摩耗性に優れた液晶性ポリエステル繊維及びその製造方法に関するものである。
液晶性ポリエステル繊維は、液晶性を示す結晶部分の分子間相互作用の強さに由来する高強度、高弾性率を有する高性能繊維であり、また化学的にも安定であることからさまざまな分野で用途が拡大している。特に液晶性ポリエステル繊維は、固相重合によって分子量を増大させることが可能であり、このため更に高強度、高弾性率の素材とすることができることも大きな特徴である。
また用途に関しては、スクリーン印刷用のメッシュ構成繊維としての用途が近年拡大しており、塑性変形のしにくさや高弾性率による印刷性の良さが注目されている。近年特に大開口率(オープニング)や細線径化が望まれており、液晶性ポリエステル繊維には大きな期待が寄せられている。
しかし液晶性ポリエステル繊維は、紡糸時に分子鎖が繊維軸方向に高度に配向した繊維構造を呈するため、繊維軸方向への引っ張り強度及び弾性率が非常に高くなる一方で、断面方向への凝集力が弱く、特に結晶化が進行した構造を持つ繊維は、擦過によって容易に摩耗が進行してしまう問題があった。この問題は、たとえば製織時の工程に存在する金属ガイドなどへ繊維が擦過されると、容易にフィブリル化してメッシュ欠点となる。また実使用時に摩擦されることでも繊維がフィブリル化してしまうため、製品寿命が短くなってしまう欠点があった。
液晶性ポリエステル繊維の耐摩耗性改善については、芯成分が液晶性ポリエステル、鞘成分がポリフェニレンスルフィドからなる芯鞘型複合繊維(特許文献1参照)や、島成分が液晶性ポリエステル、海成分が屈曲性熱可塑性ポリマーからなる海島型複合繊維が提案されている(特許文献2参照)。これらの技術では屈曲性ポリマーが繊維表面を形成することで耐摩耗性の向上は達成できるものの、液晶性ポリエステル以外の成分の分率が多いため繊維の強度が劣る、液晶性ポリエステルの高強度化に必要な繊維の固相重合において低融点の繊維表面が融着し、欠陥となりフィブリル化が起こるという問題があった。さらに特許文献1のような芯鞘複合紡糸においては、単成分紡糸に比べ芯鞘それぞれの吐出量が少なく、細繊度化のために吐出量をさらに低減させた際には、滞留時間の増加に伴うゲル化あるいは熱分解により溶融粘度が変化し、繊維長手方向に太細ムラや複合異常が生じ長手方向の均一性を損ねるという問題があった。また特許文献2のようなブレンド紡糸においても細繊度化のために吐出量を低減させると長手方向のブレンドムラの影響が顕在化し長手方向の均一性を損ねるという問題があった。
また液晶性ポリエステルと屈曲性熱可塑性樹脂からなる複合繊維を屈曲性熱可塑性樹脂の融点+20℃以上の温度で熱処理することで耐摩耗性を高める技術が提案されている(特許文献3、4参照)。しかしこの技術では屈曲性熱可塑性樹脂を非晶状態とすることで耐摩耗性を向上させているため、得られた繊維は耐熱性に劣ると言う問題があった。また複合紡糸であるため前述したように長手方向の均一性を損ねると言う問題もあった。
これらの問題は液晶性ポリエステルと他成分との複合という手段に起因しており、このことから液晶性ポリエステル単成分で高い耐摩耗性を達成し得る技術が望まれていた。
単成分糸の耐摩耗性向上に関し、釣り糸や漁網、草刈り機用などのポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレンモノフィラメントでは、延伸後のモノフィラメントに融点以上の熱を加え、表層の配向緩和を促進して耐摩耗性を改善する方法が提案されている(特許文献5〜9参照)。しかしながら、この技術はポリマーが屈曲性ポリマーであるため配向緩和に要する時間(緩和時間)が短いが故に達成できる技術であり、液晶性ポリエステルなど分子鎖が剛直な場合には緩和時間が長くなり、表層が緩和する時間のうちに内層も緩和し繊維が溶融してしまうという問題があった。さらに単繊維繊度が小さくなるほど熱処理の影響が繊維の中央部まで到達し、十分な強度と耐摩耗性の両立が難しいという問題があった。
また、液晶性ポリエステル繊維を融点よりも低い温度で加熱硬化(固相重合)させた後、硬化温度の50℃の範囲内にて10%〜400%延伸し強度および弾性率を増加させる技術が提案されている(特許文献10参照)。しかしながら、この技術は結晶性を維持できる温度で延伸を行うことで分子鎖の配向をさらに高め、強度および弾性率を増加させることを目的としており、結晶化度が高く分子鎖の配向が高い繊維構造のため耐摩耗性は向上できない。なお、この技術では延伸温度と延伸に供される液晶性ポリエステル繊維の融点との関係は実施例3、4に明示されているのみであるが、延伸温度は液晶性ポリエステル繊維の融点よりも低く、固相重合された液晶性ポリエステル繊維を融点以上に加熱する効果については何ら示唆されていない。
さらに、液晶性ポリエステル繊維の耐摩耗性の向上のため、ポリシロキサンおよび/またはフッ素系樹脂を繊維表面に付着させ、100℃〜300℃での乾燥または350℃以上での加熱焼成を行う方法が提案されている(特許文献11参照)。しかしながら、この技術では乾燥または焼成のために高温での処理を行っているが、これは付着させたポリシロキサンおよび/またはフッ素系樹脂を脱離しにくくするための処理であり、処理する液晶性ポリエステル繊維における融点との関係の記載はなく、構造変化により繊維自体の耐摩耗性を向上させる技術ではない。
液晶性ポリエステル繊維に対して、融点以上の温度で熱処理を施すことによって耐摩耗性を向上させる技術が特許文献12あるいは特許文献13に開示されている。これらの技術は、確かに液晶性ポリエステル繊維の耐摩耗性を向上させることが可能であるが、熱処理後の繊維が冷却する過程において、冷結晶化が進行して再び耐摩耗性が悪化し、工程通過性や耐久性に劣る懸念があった。
特開平1−229815号公報(第1頁) 特開2003−239137号公報(第1頁) 特開2007−119976号公報(第1頁) 特開2007−119977号公報(第1頁) 特開昭60−231815号公報(第1頁) 特開昭61−152810号公報(第1頁) 特開昭61−170310号公報(第1頁) 特開平5−148707号公報(第1頁) 特開平8−158151号公報(第1頁) 特開昭50−43223号公報(第2頁) 特開平11−269737号公報(第3頁) 特開2008−240230(第5頁) 特開2008−240228号公報(第1頁)
本発明の課題は、力学的特性を損なうことなく耐摩耗性を飛躍的に高めた液晶性ポリエステル繊維及びその製造方法によって解決できる。
本発明の課題は、CuKα線を線源とした広角X線回折測定において、赤道線方向の18〜22°に極大を持つピークの半値幅が3.5°以上であることを特徴とする液晶性ポリエステル繊維によって解決される。
またその製造方法は、液晶性ポリエステルからなる繊維を、試料量10mg、50℃から20℃/分の条件で示差走査熱量測定において観測される吸熱ピーク温度(Tm)+10℃以上の温度で熱処理し、次いで0.05秒以内に流体を用いて強制冷却を行った後に巻き取ることである。
本発明の液晶性ポリエステル繊維及びその製造方法によると、液晶性ポリエステルの持つ優れた力学的特性を保ちつつ、耐摩耗性にも優れた繊維を提供することができる。
以下、本発明の液晶性ポリエステル繊維について詳細に説明する。
本発明の液晶性ポリエステルとは、溶融時に異方性溶融相(液晶性)を形成し得るポリエステルである。この特性は例えば、液晶性ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察することにより確認できる。
本発明の液晶性ポリエステルの融点は、溶融紡糸可能な温度範囲を広くするため好ましくは200〜380℃であり、より好ましくは250〜350℃であり、さらに好ましくは280〜330℃である。なお液晶性ポリエステルの融点(Tm)は実施例記載の方法で測定される値を指す。
また本発明において用いられる液晶性ポリエステルには、その性質を大きく変化させない範囲で、他のポリマーや添加剤、充填剤を含むこともできる。ポリマーとしては、ポリエステル、ポリオレフィンやポリスチレンなどのビニル系重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリケトン、半芳香族ポリエステルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などのポリマーを添加しても良く、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリエステル99Mなどが好適な例として挙げられる。なおこれらのポリマーを添加する場合、その融点は液晶性ポリエステルの融点±30℃以内にすることが製糸性を損なわないために好ましい。
さらに本発明の効果を損なわない範囲内で、各種金属酸化物、カオリン、シリカなどの無機物や、着色剤、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤、相溶化剤等の各種添加剤を少量含有しても良い。
本発明の液晶性ポリエステル繊維は、広角X線回折における2θ=18〜22°に観測されるピークから算出される半値幅が、3.5°以上となることが重要である。半値幅は、結晶面間隔の乱れを表す指標であり、熱処理によって融解された結晶が乱れた構造をもつと半値幅が増大する。結晶面間隔が乱れた構造を持つと、繊維はフィブリル階層構造が不明瞭になって、フィブリル間の剥離が抑制されるため、耐摩耗性が向上する。半値幅は広ければ広いほど結晶面の間隔が乱れていることを示すため、繊維断面内の分子間力均一性が高く、フィブリル階層構造が不明瞭であることを示すため、4.0°以上であるとより好ましく、4.5°以上であれば最も好ましい。上限は特に限定されないが、本発明における好ましい製造方法によって達成可能な半値幅の範囲は、およそ7°である。
更に本発明の液晶性ポリエステル繊維は、広角X線回折における2θ=18〜22°に観測されるピーク位置を基準に、方位角方向へスキャン(βスキャン)したときに観察されるピークの半値幅Δβから下記式にて計算される結晶配向度πの値が、0.92以下であることが好適である。結晶配向度は、低いほど繊維中の結晶部が配向していないことを示し、またフィブリルの配向と相関が高いため、耐摩耗性の指標となる。このことから結晶配向度は低いほど好ましいが、低すぎると繊維軸方向に対する力学特性の低下を招くことがある。このためπは、0.92以下0.10以上であると好ましく、0.90以下0.15以上であるとより好ましく、0.85以下0.20以上であると最も好ましい。
π=(180−Δβ)/180
また本発明の液晶性ポリエステル繊維は、試料量10mg、50℃から20℃/分の条件で測定した示差走査熱量計における吸熱ピークの面積ΔHmが、3.0J/g以下であることが好ましい。吸熱ピークの面積は、液晶性ポリエステル繊維が製造工程で受けた熱や応力の履歴を反映した結晶の量を示している。結晶の量は、多いほどフィブリル階層構造が明瞭である傾向が見られ、また繊維の耐摩耗性が低下する。この原因は定かではないが、結晶化度の高い繊維は、秩序性の高い結晶部分と低い非晶部分の差が大きいため、繊維断面方向に対する分子間力が局所的に高い部分と低い部分が存在することになり、このため分子間力の低い部分から選択的に剥離が進行するものと考えられる。このように結晶の量が少ないほど、液晶性ポリエステル繊維の耐摩耗性が向上する傾向が見られるため、2.0J/g以下であるとより好ましく、装置の測定限界以下の変化として実質的に観測されないことが最も好ましい。
本発明の液晶性ポリエステル繊維は、引張強度が12.0cN/dTex以上であると好ましい。繊維の強度は、高いほど工程中や使用中における繊維の破断を防止することができる。このため引張強度は、高いほど好ましく、中でも13.0cN/dTex以上がより好ましく、14.0cN/dTex以上であると最も好ましい。引張強度の上限は、前記した理由から特に制限されないが、本発明において好適に実施される熱処理後の強制冷却によって、繊維中の結晶面間隔が十分に乱れた構造を取ると、耐摩耗性が向上する一方で引張強度は低下する。このため引張強度は、高くとも20.0cN/dTex程度である。
また本発明の液晶性ポリエステル繊維の弾性率は、600cN/dTex以上であると実使用において繊維が塑性変形を起こすことなく、特にスクリーン印刷用のメッシュにおける繰り返し使用での変形が起こりにくいため好ましい。特に弾性率は、スクリーン印刷の機売り返し使用による印刷精度保持のため高いほど好ましく、650cN/dTex以上であるとより好ましく、700cN/dTex以上であると最も好ましい。弾性率の上限は特に限定されないが、本発明の液晶性ポリエステル繊維が到達可能な弾性率は、1000cN/dTex程度である。なお本発明でいう弾性率とは、JISL1013:1999記載の初期引張抵抗度を指す。
本発明の液晶性ポリエステル繊維は、金属素材との擦過に対する強さの指標となる耐摩耗性Mが50秒以上となることが好ましく、60秒以上がより好ましく、70秒以上がさらに好ましく、80秒以上が特に好ましい。本発明で言う耐摩耗性Mとは実施例記載の手法により測定された値を指す。耐摩耗性Mが50秒以上であることで液晶性ポリエステル繊維の高次加工工程、特に製織工程での筬との擦過によるフィブリル化が抑制でき、工程通過性を大きく向上できる他、金属ガイド類へのフィブリルの堆積が減ずることから洗浄、交換周期を長くできる。
本発明の液晶性ポリエステル繊維は、幅広いフィラメント数とすることができる。フィラメント数の上限は特にないが、スクリーン印刷用のメッシュ織物とした場合の開口率を均一にするためには、フィラメント数50以下が好ましく、10以下がより好ましい。フィラメント数が1であるモノフィラメントは、開口率を極めて均一にできるため特に好適である。
本発明の液晶性ポリエステル繊維は、高強度・高弾性率、高耐熱の特徴を有しながら、耐摩耗性が改善されたものであり、一般産業用資材、土木・建築資材、スポーツ用途、防護衣、ゴム補強資材、電気材料(特に、テンションメンバーとして)、音響材料、一般衣料等の分野で広く用いられる。有効な用途としては、スクリーン紗、フィルター、ロープ、ネット、魚網、コンピューターリボン、プリント基板用基布、抄紙用のカンバス、エアーバッグ、飛行船、ドーム用等の基布、ライダースーツ、釣糸、各種ライン(ヨット、パラグライダー、気球、凧糸)、ブラインドコード、網戸用支持コード、自動車や航空機内各種コード、電気製品やロボットの力伝達コード等が挙げられ、特に有効な用途として工業資材用織物等に用いるモノフィラメントが挙げられ、中でも高強度、高弾性率、細繊度化の要求が強く、製織性向上、織物品位向上のため耐摩耗性を必要とするフィルター、スクリーン紗用モノフィラメントに最も好適である。
本発明に用いる液晶ポリエステルの重合方法は公知の製造方法に準じて製造でき、例えばp−ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸および4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物とテレフタル酸、イソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造することが好ましい。
このとき、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物の合計使用量とテレフタル酸およびイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸の合計使用量は、等モルとすることが好ましい。無水酢酸の使用量は、p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニルおよびハイドロキノンのフェノール性水酸基の合計は、1.20当量以下であることが好ましく、1.10当量以下であることがより好ましく、下限については1.00当量以上であることが好ましい。
得られたポリマーは、ストランド上に吐出して、回転式カッターを用いてペレット化すると、乾燥工程や輸送工程、押し出し工程における取り扱いが容易になるため好ましい態様である。
得られた液晶性ポリエステルペレットは、結晶化温度を超えない温度で真空乾燥を実施して、水分を500ppm以下に除去したのち、溶融紡糸に供される。ここで結晶化温度とは、試料量10mg、50℃から20℃/分の条件で示差走査熱量計測定を行い、昇温過程で見られる発熱ピークの温度である。
溶融紡糸の温度は、液晶性ポリエステルの融点+10℃以上の温度として、樹脂の流動性を確保しながら紡出され、その後冷却、給油されて巻き取られることが好ましい。
その後液晶性ポリエステル繊維は、繊維の力学的特性を高める目的のため固相重合を実施されることが好ましい。固相重合の温度は、室温からスタートして、固相重合後の繊維で観測される融点(Tm)−10℃以下の温度まで段階的に温度を上昇させながら行うと、繊維の力学特性を十分に高めることが可能であり、また融着を防止することが可能になるため、好ましい態様である。
固相重合時間は、繊維の力学的性質を向上させる目的のため長いほうが好ましいが、一方で生産性のためには時間が短いほうが好ましく、10〜50時間の範囲であれば、十分に力学特性を高めることができる。
本発明の液晶性ポリエステル繊維の製造方法において、液晶性ポリエステルからなる繊維を、試料量10mg、50℃から20℃/分の条件で示差走査熱量測定において観測される吸熱ピーク温度(Tm)+10℃以上の温度で熱処理することが重要である。なお、ここで言うTmは、実施例記載の測定方法により求められた値を指す。Tmは繊維の融点であるが、液晶性ポリエステル繊維に融点+10℃以上もの高温で熱処理を施すことで耐摩耗性は大きく向上し、単繊維繊度が小さい場合にその効果は顕著となる。一般的な結晶性高分子(例えばポリエチレンテレフタレートなど)の場合には、結晶融解が起こる温度を超えて熱処理を実施した場合には、無秩序状態となった分子鎖がバラバラに運動して流動するため、繊維の形態を保つことができない。
しかし本発明で好適に用いられる液晶性ポリエステルの場合は、結晶融解温度以上の状態でも分子配向を保つ液晶状態となり、このため完全な無秩序状態とはならず、このような高温での熱処理が可能である。熱処理温度は、高いほど熱効率が高まるためヒーター長を短くすることが可能になり、生産コストを低く抑えることができるため好適である。
一方熱処理温度の上限は特に限定されないが、繊維表面が酸化分解することや、あまりに高温であるとヒーターの汚れや糸切れが発生することがある。また高温になるとその維持に多量のエネルギーが必要になるほか、繊維が軟化しすぎて工程安定性が損なわれること、省エネルギーの観点からも生産性向上のためには、上限を500℃程度に設定することが好ましい。これらの観点から熱処理温度の範囲は、Tm+50℃以上500℃以下であると好ましく、Tm+80℃以上500℃以下であると更に好ましく、Tm+100℃以上500℃以下であると最も好ましい。
熱処理は、処理を均一に行うことや繊維間の融着を防ぐ目的から、繊維を連続的に走行させながら行う。
このときフィブリルの発生を防ぎ、かつ均一な処理を行うため、非接触熱処理を行うことが好ましい。加熱手段としては雰囲気の加熱、レーザーや赤外線を用いた輻射加熱などがあるがブロックまたはプレートヒーターを用いたスリットヒーターによる加熱は、雰囲気加熱、輻射加熱の両方の効果を併せ持ち、処理の安定性が高まるため好ましい。
処理時間は、短すぎると結晶融解が十分に進まず、フィブリル階層構造が不明瞭にならずに耐摩耗性の向上が達成されないため、0.01秒以上の処理時間となるように設定する。処理時間が長いと分子鎖の配向が緩和しすぎて強度、弾性率が低下するため、5.0秒以下が好ましく、より好ましくは2.0秒以下である。
処理速度は、高速であるほど生産性が高まるため10m/分以上で行う。ヒーター長や加熱方法によって処理速度は適宜変更されるが、熱処理時間が所望の範囲を超えないように設定することが好ましい。
更に引き続いて熱処理された繊維は、0.05秒以内に流体を用いて強制冷却を行った後に巻き取られることが重要である。液晶性ポリエステルの結晶融解が進んだ状態で強制冷却して構造を凍結することで、結晶面間隔を広げてフィブリル階層構造を不明瞭にし、繊維の耐摩耗性を飛躍的に向上させることができる。結晶性が低下した繊維は、一般的に力学的性質(強度、弾性率)が劣ると考えられるが、液晶性ポリエステルは非常に分子量が高いため結晶の秩序性が失われたとしても、液晶性を保つために分子配向はほとんど緩和せず、力学的な性質を保ちつつ断面内の結晶と非晶の構造差をなくし、つまりはフィブリル階層構造を不明瞭にすることで耐摩耗性を飛躍的に向上させることができる。
しかし熱処理後の冷却を、室温の積極的に流動させない空気雰囲気下で行った場合は、繊維が徐々に冷却されるため、その過程で再度結晶化が進行し(冷結晶化)、フィブリル階層構造が再び明瞭になって、耐摩耗性が悪化する。そこで結晶化していない繊維構造を得るためには、溶融状態(液晶状態)での繊維を急速にかつ強制的に冷却することで、その構造を凍結することが重要である。
ここで言う強制冷却とは、熱処理後の繊維に対して、強制的に流体を接触あるいは吹きかけることにより、室温空気を積極的には攪拌しない雰囲気において冷却されるよりも早く温度を下げることを言う。
強制冷却の方法は特に限定されないが、液晶性ポリエステル繊維は摩耗に弱いため、液体や気体を繊維に付与あるいは接触させる方法が、繊維の擦過抵抗を低く抑えることが可能であり、繊維の摩耗を抑制するため好ましい態様である。
流体の温度は、走行する繊維の温度を冷結晶化温度(Tc)以下まで効果的に下げることを目的としているため、冷結晶化温度に対して低温であることが重要であり、室温もしくはそれ以下の温度で冷却を行うことが好適である。
強制冷却を行うための装置は、特に限定されるものではないが、流体の吐出口の繊維走行方向に対する長さが10mm以下であると、限定された範囲に流体を接触あるいは吹きかけられ工程設計が容易であり、強制冷却の効果を得やすい。
付与方法は、ノズルによる直接接触方式や吹きかけ方式など、任意の方法を採用することができるが、特に流体が液体の場合には、給油ノズルを用いて液体を付与、接触させる方法が好ましい。また多数の錘に対して同時に強制冷却を行うために、矩形のノズルを用いることも好適である。
強制冷却に用いる流体は、気体であると繊維に余分な物質が付着しにくいため好ましい。気体の種類は特に限定されないが、空気や窒素ガスが好適に用いられる。窒素ガスは、強制冷却時に繊維表面の酸化劣化を防止することができるため好ましい。一方気体に空気を用いることで、安価にかつ安定して強制冷却を行うことができ、併せて窒息の懸念もないことから好ましい。気体には、安価かつ安全に作業が可能であることから、空気を選択することがより好ましい態様である。
気体の流量は、熱処理ヒーター中を走行する繊維の単位時間当たりの体積に対して500倍以上であることが好ましい。一般に気体の比熱は、液体や固体に比して小さいため、流量を十分に大きくすることで強制冷却の効果を発揮できる。また流量は、生産コストの増大にもつながるから少ないほど安価に繊維を製造することができるため好ましい。このことから気体の流量は、500倍以上10000倍以下であることが好ましく、1000倍以上5000倍以下であると更に好ましい。
強制冷却に用いる流体に液体を選択すると、気体に対して比熱が大きく、少ない量で効果的に冷却を行うことができるため好ましい。液体の種類は特に限定されないが、水やシリコーンオイルなどを用いることができる。中でも水は比熱が高く、安価で安定供給が可能であるため好ましい。
水には、発明の効果を損なわない範囲で油剤成分を含むことも好適である。油剤は公知のものを使用できるが、鉱物油、エステル、ポリエーテル、シリコーンなどの平滑剤、エーテル系化合物などの乳化剤、アニオン系、カチオン系、ノニオン系などの制電剤、合成エステル系ワックスなどの耐水性向上剤などの成分を配合した油剤が例示できる。
油剤成分は、水に対して50重量%以下含まれていれば、強制冷却の効果と油剤付与の効果の両方を得ることができ、油剤成分がエマルジョンであると、繊維に均一皮膜を形成しやすく、特に好適である。
また液体を付与した後に、空気や窒素などを用いて繊維を乾燥させると、その後の給油工程で油剤が繊維に均一付着することができるため好適である。具体的な例としては、エアノズルなどを用いて繊維に付着した液体を乾燥、除去することで、巻取前における追油の効率を高めることができる。
本発明で供給される液体の流量は、走行する繊維の単位時間当たりの体積に対して0.5倍以上であることが好ましい。0.5倍以上の流量で付与された液体は、繊維を効果的に強制冷却することが可能である。一方流量は、生産性の観点からも、工程通過性の観点からも少ないほうが好ましい。これらを両立する範囲として、0.5倍以上10倍以下がより好ましく、0.7倍以上5倍以下であると最も好ましい。
本発明の強制冷却を施した後に、工程油剤を追油することは望ましい実施形態である。熱処理においては、前述したように油分が付き過ぎていることは好ましくないため、熱処理に供する繊維には必要量下限程度の油分を付着させ、熱処理の後に次工程以降の工程通過性、さらには織機での製織性を向上させるための油分を付着させることが生産性向上のため好ましい。この工程油剤の追油は、本発明の強制冷却と同時に行うことも好ましい態様である。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、本発明の各種特性の評価は次の方法で行った。
(1)単繊維繊度および繊度変動率
検尺機にて繊維を10mカセ取りし、その重量(g)を1000倍し、1試料当たり10回の測定を行い、その平均値を繊度(dtex)とした。これをフィラメント数で除した商を単繊維繊度(dtex)とした。繊度変動率は、繊度の10回の平均値からの最大もしくは最小値の差の絶対値のうち、いずれか大きい方の値を用いて下式により算出した。
繊度変動率(%)=((|最大値もしくは最小値−平均値|/平均値)×100)
(2)強度、伸度、弾性率および強力変動率
JIS L1013:1999記載の方法に準じて、試料長100mm、引張速度50mm/分の条件で、オリエンテック社製テンシロンUCT−100を用い1試料当たり10回の測定を行い、平均値を強力(cN)、強度(cN/dtex)、伸度(%)、弾性率(cN/dtex)とした。強力変動率は強力の10回の平均値からの最大もしくは最小値の差の絶対値のうち、いずれか大きい方の値を用いて下式により算出した。
強力変動率(%)=((|最大値もしくは最小値−平均値|/平均値)×100)
(3)Tm、Tmにおけるピーク半値幅、ΔHm
TA instruments社製DSC2920により示差走査熱量測定を行い、試料量10mg、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度をTm(℃)とし、Tmにおけるピーク半値幅(℃)、融解熱量(ΔHm)(J/g)を測定した。
(4)広角X線回折ピーク半値幅(WAXD半値幅)
試料を長さ4cmに切り出し、その20mgを秤量して測定試料とした。X線発生装置に、理学電機株式会社製4036A2型を用い、X線源にNiフィルター使用のCuKα線、出力を40kV、20mAとしたものを用いた。ゴニオメーターとしては、理学電機株式会社製2155D型を用い、スリット2mmφ−1°−1°、検出器をシンチレーションカウンターとした。計数記録装置には、理学電機株式会社製RAD−C型を用いた。赤道線方向に5〜60°まで0.05°刻みで積算時間2秒にて透過法にてスキャンを実施し、得られたプロファイルのうち18〜22°の範囲に極大を持つピークにおける半分の強度におけるピークの幅を半値幅とした。
(5)広角X線回折結晶配向度
(4)で得られたピークの極大値における赤道線方向の角度を固定して、方位角方向(円周方向)に0.5°ステップ、積算時間2秒で90〜270°の範囲を透過法にてスキャンして得られるプロファイルから、極大値の半分の強度におけるピークの幅をΔβとした。得られたΔβから以下の式を用いて結晶配向度πを算出した。
π=(180−Δβ)/180
(6)耐摩耗性M
2.5g/dtexの荷重をかけた繊維を垂直に垂らし、繊維に対して垂直になるように直径3.8mmの硬質クロム梨地加工金属棒ガイド(湯浅糸道工業(株)製棒ガイド)を接触角2.7°で押し付け、ストローク長30mm、ストローク速度600回/分で繊維を繊維軸方向に擦過させ、棒ガイド上もしくは繊維表面上に白粉またはフィブリルの発生が確認されるまでの時間を測定し、7回の測定のうち最大値および最小値を除いた5回の平均値を求め耐摩耗性とした。
(7)製織性(停台回数)、織物品位(フィブリル個数)
レピア織機にて経糸に13dtexのポリエステルモノフィラメントを用い、織密度を経、緯とも100本/インチ(2.54cm)として緯糸を本発明の実施例で得られた液晶性ポリエステル繊維として緯打ち込み試織を行った。この時、幅180cm、長さ10mの試織における給糸口へのフィブリルの堆積による停台回数から製織性を評価し、1回以下を良好(○)、2回以上を不良(×)とした。また織物のフィブリル混入個数から織物品位を評価し、長さ10mあたり2個以下を良好(○)、3個以上を不良(×)とした。
参考例1
撹拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸860重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル320重量部、ハイドロキノン91重量部、テレフタル酸296重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1433重量部(フェノール性水酸基合計の1.08当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で撹拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、330℃まで4時間で昇温した。
重合温度を330℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
得られた液晶性ポリエステルは、融点320℃、分子量8.9万及びせん断速度100sec−1における溶融粘度は15Pa・sであった。
実施例1
参考例1の液晶性ポリエステルを用い、160℃、12時間の真空乾燥を行った後、大阪精機工作株式会社製φ15mm単軸エクストルーダーにて(ヒーター温度290〜340℃)溶融押し出しし、ギアポンプで計量しつつ紡糸パックにポリマーを供給した。このときのエクストルーダー出から紡糸パックまでの紡糸温度は345℃とした。紡糸パックでは金属不織布フィルター(渡辺義一製作所社製WLF−10)を用いてポリマーを濾過し、孔径0.13mm、ランド長0.26mmの孔を5個有する口金より吐出量3.0g
/分(単孔あたり0.6g/分)でポリマーを吐出した。
吐出したポリマーは40mmの保温領域を通過させた後、環状冷却風により糸条の外側から冷却し固化させ、その後、ポリジメチルシロキサンを主成分とする油剤を付与し5フィラメントともに1200m/分の第1ゴデットロールに引き取った。このときの紡糸ドラフトは32である。これを同じ速度である第2ゴデットロールを介した後、5フィラメント中の4本はサクションガンにて吸引し、残り1本をダンサーアームを介しパーンワインダー(巻取パッケージに接触するコンタクトロール無し)を用いてパーンの形状に巻き取った。約100分の巻取時間中、糸切れは発生せず製糸性は良好であった。なお油分付着量は1.0重量%であった。
この紡糸繊維パッケージから繊維を縦方向(繊維周回方向に対し垂直方向)に解舒し、調速ローラーを介さず、速度を一定とした巻取機(神津製作所社製ET−68S調速巻取機)にて巻き返しを行った。なお、巻き返しの心材にはステンレス製の穴あきボビンにケブラーフェルト(目付280g/m、厚み1.5mm)を巻いたものを用い、巻き返し時の張力は0.05cN/dtexとし、巻き量は2万mとした。さらにパッケージ形態はテーパー角20°のテーパーエンド巻きとし、テーパー幅調整機構の改造によりトラバース幅を常に揺動させるようにした。このようにして巻き上がったパッケージの巻密度は0.08g/cmであった。
これを密閉型オーブンにて、室温から240℃までは約30分で昇温し、240℃にて3時間保持した後、4℃/時間で295℃まで昇温し、さらに295℃で15時間保持する条件にて固相重合を行った。なお雰囲気は除湿窒素を流量25NL/分にて供給し、庫内が加圧にならないよう排気口より排気させた。
こうして得られた固相重合パッケージをインバーターモーターにより回転できる送り出し装置に取り付け、繊維を横方向(繊維周回方向)に給糸速度約100m/分で送り出しつつ巻取機(神津製作所社製ET型調速巻取機)にて巻き取った。得られた液晶性ポリエステル繊維の物性を表2に示す。なお、この液晶性ポリエステル繊維のΔnをコンペンセーター法にて測定したところ、0.345であり高い配向を有していた。また繊維の物性値は、繊度5.0dTex、繊度変動率は4.0%、強度26.4cN/dTex、強力変動率5.0%、伸度2.5%、弾性率1010cN/dTexであった。また融解熱量ΔHmを測定したところ、8.6J/gであった。
この繊維を縦方向(繊維周回方向に対し垂直方向)に解舒しつつ、スリット幅5.6mm、長さ1000mmのスリットヒーターを用い、ヒーターと接触させずに繊維を走行させながら、485℃にて熱処理を行った後、ヒーター出口から10mmの位置で、ノズル直径1mmφのセラミック製給油ガイドより、脂肪酸エステルを主体とする油剤成分を1重量%含む水エマルジョンを0.1cc/minの流量で繊維の下側から供給、接触させて、強制冷却した。その後巻取ローラーを介した後に、巻取機(神津製作所社製ET型調速巻取機)にて巻き取った。
得られた繊維の主な製造条件と物性値を表1に示す。得られた繊維は、良好な力学特性を示した。またΔnは0.345であり、熱処理前と変わらない値を示していた。更に広角X線回折における解析結果から、半値幅は5.1°であり、結晶面間隔が非常に乱れた構造を持っており、また結晶配向度πは、0.82であり、十分に結晶配向が乱れた構造を呈しているため、耐摩耗性に優れていた。また製織テストを行った結果、停台もなく、フィブリルのない優れた工程通過性を示した。
実施例2〜4
強制冷却位置を表1の通り変更して強制冷却までの時間を変化させた以外は、実施例1と同様の方法で液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維の物性値を表1に併せて示す。結晶面間隔が十分に乱れており、また結晶配向度も低く、耐摩耗性に優れた液晶性ポリエステル繊維が得られ、また製織も問題なく行うことができた。
比較例1
強制冷却位置を200mmとし、強制冷却までの時間を0.06秒とした以外は、実施例1と同様の方法で液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維の物性値を表1に示すが、繊維の結晶面間隔の乱れが小さく、結晶配向度も高かったため、耐摩耗性が悪く、製織テストにおいては停台回数も多く、またフィブリルの散見されるものであった。
Figure 0005115471
実施例5、6
流体の吐出量を変化させて、その流量が繊維の単位時間当たりの体積に対する割合を変化させた以外は、実施例1と同様の方法で液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維の耐摩耗性及び力学特性は良好であり、製織テストにおいても良好な工程通過性を示した。
Figure 0005115471
実施例7
熱処理温度を440℃とした以外は、実施例1と同様の方法で液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維の耐摩耗性及び力学特性は良好であり、また製織テストも問題ない工程通過性を示した。
比較例2
熱処理温度を300℃とした以外は、実施例1と同様の方法で液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維の力学特性は良好であったが、結晶面間隔の乱れが小さく、耐摩耗性に劣り、製織テストでの工程通過性に劣るものであった。
Figure 0005115471
実施例8、9
強制冷却に用いる流体をそれぞれ空気と窒素とし、ノズルに直径6mmφのエアノズルを用い、吐出量を120cc/minとした以外は、実施例1と同様に液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維は、良好な力学特性と優れた耐摩耗性を有しており、製織テストにおいても優れた工程通過性を示した。
Figure 0005115471
実施例10〜12
流体に空気を用い、流体の吐出量を表5に示す条件にそれぞれ変更した以外は、実施例12と同様に液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維は、良好な力学特性と耐摩耗性を示し、製織テストにおいても良好な工程通過性を示した。
Figure 0005115471
実施例13
流体に空気を用い、熱処理温度を440℃にそれぞれ変更した以外は、実施例8と同様に液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維は、良好な力学特性と繊維構造、耐摩耗性を併せ持ち、製織テストにおいても問題ない工程通過性を示した。
比較例3
流体に空気を用い、熱処理温度を300℃にそれぞれ変更した以外は、実施例8と同様に液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維は、良好な力学特性を示したが、結晶面間隔の乱れが不十分であり、耐摩耗性が悪く、また製織テストにおける工程通過性も悪かった。
Figure 0005115471
実施例14〜16
強制冷却までの位置を表7の条件にそれぞれ変更した以外は、実施例8と同様に液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維は、良好な力学特性と繊維構造、耐摩耗性を示し、製織テストにおいても良好な工程通過性を示した。
比較例4
強制冷却位置を200mmとし、強制冷却までの時間を0.06秒とした以外は、実施例8と同様に液晶性ポリエステル繊維を得た。得られた繊維は、良好な力学特性を示したものの、結晶面間隔の乱れが不十分であり、耐摩耗性に劣り、製織テストにおいては工程通過性が悪かった。
比較例5
強制冷却を行わず、熱処理温度を520℃、ヒーター長500mm、処理速度500m/分、熱処理時間0.06秒とした以外は、実施例1と同様の方法で液晶性ポリエステル繊維を得た。熱処理工程での温度が高すぎ、ヒーター中での糸揺れが激しく、安定したサンプリングを行うことができなかった。得られた少量サンプルは、優れた耐摩耗性を示したものの、製織評価に供するだけの試料を得ることができなかった。
Figure 0005115471
本発明の液晶性ポリエステル繊維は、液晶性ポリエステルの持つ高い力学的強度、弾性率などの特性を保ちつつ、従来の欠点であった耐摩耗性を大幅に向上できる。製造工程における工程通過性を向上させ、実使用における摩耗劣化の少ない製品を供給できる。

Claims (6)

  1. CuKα線を線源とした広角X線回折測定において、赤道線方向の18〜22°に極大を持つピークの半値幅が3.5°以上であることを特徴とする液晶性ポリエステル繊維。
  2. 試料量10mg、50℃から20℃/分の条件で示差走査熱量測定において観測される吸熱ピークの面積ΔHmが、3.0J/g以下であることを特徴とする請求項1記載の液晶性ポリエステル繊維。
  3. 液晶性ポリエステルからなる繊維を、試料量10mg、50℃から20℃/分の条件で示差走査熱量測定において観測される吸熱ピーク温度(Tm)+10℃以上の温度で熱処理し、次いで0.05秒以内に流体を用いて強制冷却を行った後に巻き取ることを特徴とする液晶性ポリエステル繊維の製造方法。
  4. 熱処理時間が0.01秒以上5.0秒以下であり、かつ強制冷却に用いる流体の温度が、繊維の冷結晶化温度より100℃以上低いことを特徴とする請求項3記載の液晶性ポリエステル繊維の製造方法。
  5. 強制冷却に用いる流体が気体であり、その流量が繊維の単位時間当たりの体積に対して500倍以上であることを特徴とする請求項3または4記載の液晶性ポリエステル繊維の製造方法。
  6. 強制冷却に用いる流体が液体であり、その流量が繊維の単位時間当たりの体積に対して0.5倍以上であることを特徴とする請求項3または4記載の液晶性ポリエステル繊維の製造方法。
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