JP2019157331A - 液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 細径化および高密度化メッシュでの製織工程において堆積物が少なく、製織工程の通過性および製品収率が優れた液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法を提供する。【解決手段】 液晶ポリエステルを溶融紡糸して得た糸条に固相重合油剤を塗布して固相重合した後、該モノフィラメントを連続的に液体中に浸漬させ、次いで液体と気体の混合流体スプレーノズルで吹き付け洗浄することを特徴とする液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法。【選択図】 なし
Description
本発明は高強度、高弾性率であり、かつ工程通過性、製織性に優れ、特に細線径、高密度のメッシュ織物に好適に用いられる液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法に関するものである。
液晶ポリエステルは剛直な分子鎖からなるポリマーであり、溶融紡糸においてはその分子鎖を繊維軸方向に高度に配向させ、さらに熱処理(固相重合)を施すことにより溶融紡糸で得られる繊維の中では最も高い強度、弾性率が得られることが知られている。また液晶ポリエステルは固相重合により分子量が増加し、融点が上昇するため耐熱性、寸法安定性が向上することも知られている(例えば、非特許文献1参照)。このように液晶ポリエステル繊維においては固相重合を施すことにより高強度、高弾性率、優れた耐熱性、熱寸法安定性が発現する。ここで、固相重合反応は一般に融点近傍の高温下で行われており、このため糸同士の融着が起こりやすく、融着に起因した糸の物性低下およびフィブリル化を防ぐ目的で固相重合油剤を付与することが液晶ポリエステル繊維の製造において重要な技術ポイントである。
一方で、固相重合油剤は固相重合後に繊維表面に残存することで繊維の後加工工程である製織工程において、ガイドや筬、繊維自体に堆積し、スカムと呼ばれる屑が発生し、このスカムが製品に混入することで製品不良の原因、あるいは糸の開口運動を阻害することによる糸切れ原因となるため、固相重合後に固相重合油剤を洗浄除去することは液晶ポリエステル繊維の製造において重要であり、この固相重合油剤の洗浄除去に関しては、易洗浄性の固相重合油剤の選定と洗浄方法が重要な技術ポイントである。
近年、特にモノフィラメントからなるフィルター、スクリーン印刷用紗に対し性能向上のため、織密度の高密度化(高メッシュ化)、紗厚の低減、開口部(オープニング)の開口率向上の要望が強まり、これを達成するためにモノフィラメント繊度の細繊度化が要求されている。また高密度化に伴い、製織時に筬打ちでモノフィラメントが受ける負荷および筬打ち回数が大きくなり、繊維表面に残存する固相重合油剤によるスカムに起因して、製織糸切れや製品欠点(スカム)が多くなることから、これまで以上に洗浄を強化することが求められている。
固相重合油剤としては、ポリシロキサン系化合物を用いること(特許文献1)、リン酸系化合物と無機粒子を併用すること(特許文献2)や膨潤性層状粘土鉱物を用いること(特許文献3)で融着の回避に加えて固相重合後の繊維の洗浄性を両立させる技術が知られている。
固相重合油剤を洗浄除去する方法として、特許文献1では、固相重合油剤を溶解または分散できる液体に繊維を接触させて固相重合油剤を除去する方法、具体的には界面活性剤を添加した液体、液体に気泡あるいは超音波洗浄、液流の付与した液体内を走行させる方法が提案されている。
特許文献3では、固相重合した繊維を水中に浸漬して固相重合油剤を膨潤させた後、流水で洗浄する方法が提案されている。 特許文献2では、特許文献1のように液体内を走行させた後、液体により膨潤した固相重合油剤を吹き飛ばすために流体として空気または水を用い、さらに洗浄に用いた液体をすすぐ工程が提案されている。
技術情報協会編、「液晶ポリマーの改質と最新応用技術」(2006)(第235頁〜第256頁)
上記の従来技術の洗浄方法では、メッシュの細径化および高密度化での製織工程において、繊維表面に残存する固相重合後の固相重合油剤のスカムに起因する製品不良、糸切れが発生し、洗浄が不十分であることが明らかとなった。上記特許文献1のような、液体に接触させて溶解または分散させる方法は、除去効率を高めるために接触時間を長くする必要があるが、長くしすぎると、液体との抵抗により走行糸の張力が高くなり、また設備の大きさに限界があった。また上記特許文献3のような、パッケージの状態で水中に長時間浸漬する方法は、パッケージ内外層でのバラツキが生じやすく、生産性も悪い等が課題となっている。さらに上記特許文献2のような、固相重合油剤を吹き飛ばすために流体として気体または液体を単独で使用した場合には、十分な洗浄効果を得ることが難しく、気体または液体の圧力を高くしすぎると、走行糸に過度な力が加わり、糸切れやフィブリル化が起きてしまうという課題があった。つまり液晶ポリエステルモノフィラメントを用いたメッシュの細径化および高密度化に適した洗浄性の優れた製造技術は提案されておらず、その開発が望まれていた。
本発明の課題は製織工程における堆積物が少なく、製織工程の工程通過性および製品収率が優れる液晶ポリエステルモノフィラメントの製造の製造方法を提供することにある。
本発明者等は上記課題を解決するため、繊維表面の固相重合油剤の残存物を除去する方法として、液体に繊維を浸漬させて膨潤させることに加え、液体と気体の混合流体スプレーノズルを用いて細かい液体粒子を繊維表面の固相重合油剤の残存物に衝突させ、走行糸に過度な負荷を与えずに、効率的に固相重合油剤の残存物を除去できることを見出した。
すなわち、本発明の液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法は液晶ポリエステルを溶融紡糸して得た糸条に、固相重合油剤を塗布した後に固相重合し、次いで、液体中で糸条を走行させながら洗浄するに際して、その洗浄方法として液体と気体の混合流体スプレーノズルを用いる液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法である。
その際、洗浄スプレーは次の(1)〜(6)の態様を採用することが望ましい。
(1)液体と気体の混合流体スプレーノズルの孔径が1.0mm以上2.0mm以下
(2)液体と気体の混合流体スプレーノズルの個数が1個/糸条以上10個/糸条以下
(3)液体と気体の混合流体スプレーノズルの液体圧が0.05MPa以上1.00MPa以下
(4)液体と気体の混合流体スプレーノズルの気体圧が0.05MPa以上1.00MPa以下
(5)液体と気体の混合流体スプレーノズルの液体圧が気体圧の1.05倍以上1.50倍以下
(6)混合流体スプレーのノズルの噴射部の前後に糸条の走行位置を規制する溝幅0.2mm以上、2.0mm以下のガイドを設置
(1)液体と気体の混合流体スプレーノズルの孔径が1.0mm以上2.0mm以下
(2)液体と気体の混合流体スプレーノズルの個数が1個/糸条以上10個/糸条以下
(3)液体と気体の混合流体スプレーノズルの液体圧が0.05MPa以上1.00MPa以下
(4)液体と気体の混合流体スプレーノズルの気体圧が0.05MPa以上1.00MPa以下
(5)液体と気体の混合流体スプレーノズルの液体圧が気体圧の1.05倍以上1.50倍以下
(6)混合流体スプレーのノズルの噴射部の前後に糸条の走行位置を規制する溝幅0.2mm以上、2.0mm以下のガイドを設置
本発明方法により得られた液晶ポリエステルモノフィラメントは製織性が良好で、かつ品位に優れた織物を提供できる。
以下、本発明の液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法について詳細に説明する。
本発明に用いる液晶ポリエステルとは、溶融時に異方性溶融相、即ち液晶性を形成し得るポリエステルである。この特性は例えば、液晶ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察することにより確認できる。
本発明に用いる液晶ポリエステルとは、溶融時に異方性溶融相、即ち液晶性を形成し得るポリエステルである。この特性は例えば、液晶ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察することにより確認できる。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、例えば(1)芳香族オキシカルボン酸の重合物、(2)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、脂肪族ジオールの重合物、(3)(1)と(2)との共重合物などが挙げられるが、高強度、高弾性率、高耐熱のためには脂肪族ジオールを用いない全芳香族ポリエステルが好ましい。ここで芳香族オキシカルボン酸としては、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸など、または上記芳香族オキシカルボン酸のアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸など、または上記芳香族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。
さらに、芳香族ジオールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、ジオキシジフェニール、ナフタレンジオールなど、または上記芳香族ジオールのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられ、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、p−ヒドロキシ安息香酸成分と4,4’−ジヒドロキシビフェニル成分とハイドロキノン成分とテレフタル酸成分および/またはイソフタル酸成分とが共重合されたもの、p−ヒドロキシ安息香酸成分と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸成分とが共重合されたもの、p−ヒドロキシ安息香酸成分と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸成分とハイドロキノン成分とテレフタル酸成分とが共重合されたもの、などが紡糸性に優れ、高強度、高弾性率化が達成でき、固相重合後の高温熱処理を行うことで耐摩耗性が向上することから、好ましい例として挙げられる。
本発明では、特に下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)からなる液晶ポリエステルであることが好ましい。なお本発明において構造単位とはポリマーの主鎖における繰り返し構造を構成し得る単位を指す。
この組み合わせにより分子鎖は適切な結晶性と非直線性すなわち溶融紡糸可能な融点を有するようになる。したがってポリマーの融点と熱分解温度の間で設定される紡糸温度において良好な製糸性を有するようになり長手方向に均一な繊維が得られ、かつ適度な結晶性を有するため繊維の強度、弾性率を高めることができる。
さらに構造単位(II)、(III)のような嵩高くなく、直線性の高いジオールからなる成分を組み合わせることが重要であり、この成分を組み合わせることにより繊維中で分子鎖は秩序だった乱れの少ない構造を取ると共に、結晶性が過度に高まらず繊維軸垂直方向の相互作用も維持できる。これにより高い強度、弾性率が得られることに加えて、固相重合後に高温熱処理を施すことで特に優れた耐摩耗性も得られるのである。
また、上記した構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して40〜85モル%が好ましく、より好ましくは65〜80モル%、さらに好ましくは68〜75モル%である。このような範囲とすることで結晶性を適切な範囲とすることができ高い強度、弾性率が得られ、かつ融点も溶融紡糸可能な範囲となる。
構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して60〜90モル
%が好ましく、より好ましくは60〜80モル%、さらに好ましくは65〜75モル%である。このような範囲とすることで結晶性が過度に高まらず繊維軸垂直方向の相互作用も維持できるため、固相重合後に高温熱処理を施すことで耐摩耗性を高めることができる。
%が好ましく、より好ましくは60〜80モル%、さらに好ましくは65〜75モル%である。このような範囲とすることで結晶性が過度に高まらず繊維軸垂直方向の相互作用も維持できるため、固相重合後に高温熱処理を施すことで耐摩耗性を高めることができる。
構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して40〜95モル%が好ましく、より好ましくは50〜90モル%、さらに好ましくは60〜85モル%である。このような範囲とすることでポリマーの融点が適切な範囲となり、ポリマーの融点と熱分解温度の間で設定される紡糸温度において良好な紡糸性を有するため長手方向に均一な繊維が得られ、加えて、ポリマーの直線性が適度に乱れるため、固相重合後の高温熱処理によりフィブリル構造が乱れやすくなり繊維軸垂直方向の相互作用が高まり耐摩耗性を向上させることができる。
なお上記本発明で用いる液晶ポリエステルの各構造単位の好ましい範囲は以下のとおりである。下記構造単位(I)〜(V)の合計を100mol%とする。この範囲の中で組成を調整することで本発明の液晶ポリエステル繊維が好適に得られる。
構造単位(I)45〜65モル%
構造単位(II)12〜18モル%
構造単位(III)3〜10モル%
構造単位(IV)5〜20モル%
構造単位(V)2〜15モル%
さらに、構造単位(IV)と構造単位(V)の合計量と構造単位(II)と構造単位(III)の合計量は、実質的に等モルであることが好ましい。
なお、本発明で用いる液晶ポリエステルには、上記モノマー以外に、液晶性を損なわない程度の範囲で更に他のモノマーを共重合させても良い。
構造単位(I)45〜65モル%
構造単位(II)12〜18モル%
構造単位(III)3〜10モル%
構造単位(IV)5〜20モル%
構造単位(V)2〜15モル%
さらに、構造単位(IV)と構造単位(V)の合計量と構造単位(II)と構造単位(III)の合計量は、実質的に等モルであることが好ましい。
なお、本発明で用いる液晶ポリエステルには、上記モノマー以外に、液晶性を損なわない程度の範囲で更に他のモノマーを共重合させても良い。
また、本発明に用いる液晶ポリエステルには、本発明の効果を損なわない範囲で他のポリマーを添加・併用することができる。添加・併用とは、ポリマー同士を混合する場合や、2成分以上の複合紡糸において一方の成分、または複数の成分に他のポリマーを部分的に混合使用すること、あるいは全面的に使用することをいう。なお、ポリマーを添加・併用する場合、その融点は液晶ポリエステルの融点±30℃以内にすることが製糸性を損なわないために好ましい。なお、得られる繊維の強度、弾性率を向上させるため、またポリマー界面での剥がれによる毛羽発生や糸切れを抑制するためには、添加・併用する量は50重量%以下が好ましく、5重量%以下がより好ましく、実質的に他のポリマーを添加・併用しないことが最も好ましい。
本発明に用いられる液晶ポリエステルには、本発明の効果が損なわれない範囲で、各種金属酸化物、カオリン、シリカなどの無機物や、着色剤、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤、相溶化剤等の各種添加剤を少量含有しても良い。
本発明で用いる液晶ポリエステルのポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、分子量と記載)は3.0万以上が好ましい。分子量を3.0万以上とすることで紡糸温度において適切な粘度を持ち製糸性を高めることができる。分子量が高いほど得られる繊維の強度、伸度、弾性率は高まるが、分子量が高すぎると粘度が高くなり流動性が悪くなり、ついには流動しなくなるため分子量は25.0万未満が好ましく、20.0万未満がより好ましい。ここでいう、ポリスチレン換算の重量平均分子量は実施例に記載の方法で測定される値をいう。
本発明に用いる液晶ポリエステルの融点は、溶融紡糸可能な温度範囲を広くするため好ましくは200〜380℃であり、紡糸性を高めるためにより好ましいのは250〜360℃である。なお液晶ポリエステルポリマーの融点は実施例に記載の方法で測定される値をいう。
溶融紡糸において、液晶ポリエステルの溶融押出は公知の手法を用いることができるが、重合時に生成する秩序構造をなくすためにエクストルーダー型の押出機を用いることが好ましい。押し出されたポリマーは配管を経由しギアーポンプなど公知の計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、口金へと導かれる。このときポリマー配管から口金までの温度(紡糸温度)は流動性を高めるため液晶ポリエステルの融点以上とすることが好ましく、液晶ポリエステルの融点+10℃以上がより好ましい。ただし紡糸温度が過度に高いと液晶ポリエステルの粘度が増加し、流動性の悪化、製糸性の悪化を招くため500℃以下とすることが好ましく、400℃以下がより好ましい。なお、ポリマー配管から口金までの温度をそれぞれ独立して調整することも可能である。この場合、口金に近い部位の温度をその上流側の温度より高くすることで吐出が安定する。
口金孔より吐出されたポリマーは保温、冷却領域を通過させ固化させた後、一定速度で回転するローラー(ゴデットローラー)により引き取られる。保温領域は過度に長いと製糸性が悪くなるため口金面から200mmまでとすることが好ましく、100mmまでとすることがより好ましい。保温領域は加熱手段を用いて雰囲気温度を高めることも可能であり、その温度範囲は100℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上400℃以下がより好ましい。冷却は不活性ガス、空気、水蒸気等を用いることができるが、平行あるいは環状に噴き出す空気流を用いることが環境負荷を低くする点から好ましい。
引き取り速度は生産性、単糸繊度の低減のため50m/分以上が好ましく、500m/分以上がより好ましい。本発明で好ましい例として挙げた液晶ポリエステルは紡糸温度において好適な曳糸性を有することから引き取り速度を高速にでき、上限は特に制限されないが、曳糸性の点から2000m/分程度となる。
溶融紡糸においてはポリマーの冷却固化から巻き取りまでの間に油剤を付与することが繊維の取り扱い性を向上させる上で好ましい。油剤は公知のものを使用できるが、固相重合前の巻き返し工程において溶融紡糸で得られた繊維(以下、紡糸原糸と記載する)を解舒する際の解舒性を向上させる点で一般的な紡糸油剤や後述の固相重合油剤を用いることが好ましい。
巻き取りは公知の巻取機を用いパーン、チーズ、コーンなどの形態のパッケージとすることができるが、巻き取り時にパッケージ表面にローラーが接触しないパーン巻きとすることが繊維に摩擦力を与えずフィブリル化させない点で好ましい。
本発明においては、液晶ポリエステル繊維に固相重合油剤を塗布した後に固相重合を施すことが好ましい。本発明で言う固相重合油剤とは、その油剤を液晶ポリエステル繊維に付着させ固相重合させた際に繊維間の融着を抑制する油剤であり、公知のものが使用できるが、融着抑制および易洗浄性の観点から、無機粒子(A)とリン酸系化合物(B)の混合剤とすることが好ましい。なお、本発明においては、無機粒子(A)とリン酸系化合物(B)の混合剤のようにオイル分を含まない場合も、固相重合油剤として表記する。
本発明における無機粒子(A)とは、公知の無機粒子であり、例として鉱物、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、シリカやアルミナ等の金属酸化物、炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩化合物、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の硫酸塩化合物の他、カーボンブラック等が挙げられる。このような耐熱性の高い無機粒子を繊維上へ塗布することで単糸間の接触面積を減らし、固相重合時に発生する融着を回避することが可能となる。
無機粒子(A)は、塗布工程を考慮して取扱いが容易であり環境負荷低減の観点から水分散が容易であることが好ましく、かつ、固相重合条件下において不活性であることが望ましい。これらの観点からシリカやケイ酸塩を用いることが好ましい。ケイ酸塩の場合は特に層状構造を持つフィロケイ酸塩が好ましい。なおフィロケイ酸塩としては、カオリナイト、ハロイ石、蛇紋石、珪ニッケル鉱、スメクタイト族、葉ろう石、滑石、雲母などが挙げられるが、これらの中でも入手の容易性を考慮して滑石、雲母を用いることが最も好ましい。
また、本発明におけるリン酸系化合物(B)とは、下式下記化学式(1)〜(3)で示される化合物が使用できる。
ここで、R1,R2は炭化水素、M1はアルカリ金属、M2はアルカリ金属、水素、炭化水素、含酸素炭化水素のいずれかを指す。
なお、nは1以上の整数を表す。なお、nの上限は熱分解抑制の観点から好ましくは100以下、より好ましくは10以下である。
R1としては、固相重合時の熱分解による発生ガスを考慮し、環境負荷を低減する観点から構造中にフェニル基を含まないことが好ましく、アルキル基で構成されることがより好ましい。R1の炭素数としては、繊維表面への親和性の観点から2以上が好ましく、かつ、固相重合に伴う有機成分の分解による重量減量率を押さえ、固相重合時の分解により発生する炭化物が繊維表面へ残存することを防ぐ観点から20以下が好ましい。
また、R2としては、水への溶解性の観点から炭素数5以下の炭化水素が好ましく、より好ましいのは炭素数2または3である。
M1としては製造コストの観点からナトリウム、カリウムが好ましい。
無機粒子(A)およびリン酸系化合物(B)の付着量を適性化しつつ均一塗布するためにはリン酸系化合物(B)の希釈液に無機粒子(A)を添加した混合油剤を用いることが好ましく、希釈液としては安全性の観点から水を用いることが好ましい。なお、融着抑制の観点から希釈液中の無機粒子(A)の濃度は高いことが望ましく0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上であり、上限としては均一分散の観点から10重量%以下が好ましく、より好ましく5重量%以下である。また、リン酸系化合物(B)の濃度は無機粒子(A)の均一分散の観点からは高いことが望ましく、0.1重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上である。なお、リン酸系化合物(B)の濃度の上限としては特に制限はないが、混合油剤の粘度上昇による付着過多、粘度の温度依存性増大による付着斑を避ける目的で50重量%以下が好ましく、より好ましくは30重量%以下である。
また、繊維への無機粒子(A)とリン酸系化合物(B)の塗布方法としては、溶融紡糸から巻き取りまでの間に行っても良いが、付着効率を高めるためには溶融紡糸して巻き取った糸条を巻き返しながら該糸条に塗布する、あるいは溶融紡糸で少量を付着させ、巻き取った糸条を巻き返しながら追加塗布することが好ましい。
付着方法はガイド給油法でも良いが、モノフィラメントなど総繊度の細い繊維に均一に付着させるためには金属製あるいはセラミック製のキスロール(オイリングロール)による付着が好ましい。なお、繊維がカセ状、トウ状の場合は混合油剤へ浸漬することで塗布できる。
本発明においては、繊維への無機粒子(A)の付着率を(a)重量%、リン酸系化合物(B)の付着率を(b)重量%としたとき、無機粒子(A)の付着率(a)は0.01重量%以上とすることで無機粒子による融着抑制効果得られ、好ましい。付着率(a)の上限としては均一付着の観点から10重量%以下が好ましい。またリン酸系化合物(B)の付着率(b)は10重量%以上であることが好ましく、15重量%以上がより好ましく、さらに好ましくは20重量%以上である。なお、上限としては繊維長手方向の付着斑および取り扱いの観点から40重量%未満が好ましい。
なお、固相重合油剤の油分付着率(a+b)は10重量%を超える量となるが、10重量%を超えるような多量の油分を付着して固相重合を行うことで、固相重合時の繊維の融着に対する高い抑制効果が得られる。固相重合油剤の油分付着率(a+b)が多いほど、融着抑制効果は高まるため、油分付着率は15重量%を超えることが好ましく、20重量%を超えることがより好ましい。一方、上限としては長手方向の付着斑を抑制する観点から40重量%以下が好ましい。なお繊維への固相重合油剤の油分付着率(a+b)は固相重合油剤塗布後の繊維について実施例に記載した手法により求められる油分付着率の値を指す。ここでいう無機粒子(A)の付着率(a)および、リン酸系化合物(B)の付着率(b)とは、下式にて算出される値を指す。
(無機粒子(A)の付着率(a))=(a+b)×Ca÷(Ca+Cb)
(リン酸系化合物(B)の付着率(b))=(a+b)×Cb÷(Ca+Cb)
ここで、Caは固相重合油剤中の無機粒子(A)の濃度、Cbは固相重合油剤中のリン酸系化合物(B)の濃度を指す。
(リン酸系化合物(B)の付着率(b))=(a+b)×Cb÷(Ca+Cb)
ここで、Caは固相重合油剤中の無機粒子(A)の濃度、Cbは固相重合油剤中のリン酸系化合物(B)の濃度を指す。
また無機粒子(A)の付着率(a)重量%、リン酸系化合物(B)の付着率(b)重量%については、b/a≧1とすることが好ましい。リン酸系化合物(B)の付着率(b)を無機粒子(A)の付着率(a)以上とすることでリン酸系化合物(B)の固相重合時の縮合塩形成に由来した優れた洗浄性がより顕著に現れ、また無機粒子(A)と繊維間の固着や脱落を抑制する観点からも好ましい。
本発明においては、固相重合油剤を塗布した後に固相重合を行うが、これにより分子量が高まるとともに、強度、弾性率、伸度も高まる。固相重合はカセ状、トウ状(例えば金属網等に載せて行う)、あるいはローラー間で連続的に糸条として処理することも可能であるが、設備が簡素化でき、生産性も向上できる点から繊維を芯材に巻き取ったパッケージ状で行うことが好ましい。
固相重合は窒素等の不活性ガス雰囲気中や、空気のような酸素含有の活性ガス雰囲気中または減圧下で行うことが可能であるが、設備の簡素化および繊維あるいは芯材の酸化防止のため窒素雰囲気下で行うことが好ましい。この際、固相重合の雰囲気は露点が−40℃以下の低湿気体が好ましい。
固相重合温度は、固相重合に供する液晶ポリエステルモノフィラメントの吸熱ピーク温度をTm1(℃)とした場合、最高到達温度がTm1−60℃以上であることが好ましい。このような融点近傍の高温とすることで固相重合が速やかに進行し、繊維の強度を向上させることができる。なお、ここで言うTm1は一般には液晶ポリエステルモノフィラメントの融点であり、本発明においては実施例記載の測定方法により求められた値を指す。なお最高到達温度はTm1(℃)未満とすることが融着防止のために好ましい。また固相重合温度を時間に対し段階的にあるいは連続的に高めることは、融着を防ぐと共に固相重合の時間効率を高めることができ、より好ましい。この場合、固相重合の進行と共に液晶ポリエステルモノフィラメントの融点は上昇するため、固相重合温度は、固相重合前の液晶ポリエステルモノフィラメントのTm1+100℃程度まで高めることができる。ただしこの場合においても固相重合での最高到達温度は固相重合後の繊維のTm1−60(℃)以上Tm1(℃)未満とすることが固相重合速度を高めかつ融着を防止できる点から好ましい。
固相重合時間は、繊維の分子量すなわち強度、弾性率、伸度を十分に高くするためには最高到達温度で5時間以上とすることが好ましく、10時間以上がより好ましい。一方、強度、弾性率、伸度増加の効果は経過時間と共に飽和するため、生産性を高めるためには50時間以下とすることが好ましい。
本発明においては、固相重合した後の繊維を走行させつつ、固相重合油剤を除去するが、その方法として、液体に繊維を浸漬させて膨潤させた後、液体と気体の混合流体スプレーノズルを用いることを特徴とする。
固相重合後に繊維表面に残存している固相重合油剤は、繊維の後加工工程である製織工程において、ガイドや筬、繊維自体に堆積し、スカムと呼ばれる屑が発生し、このスカムが製品に混入することで製品不良の原因、あるいは糸の開口運動を阻害することによる糸切れ原因となるため、固相重合後に固相重合油剤を洗浄除去することは液晶ポリエステル繊維の製造において重要である。
特にモノフィラメントからなるフィルター、スクリーン印刷用紗に対し性能向上のため、織密度の高密度化(高メッシュ化)、紗厚の低減、開口部(オープニング)の開口率向上の要望が強まり、これを達成するためにモノフィラメント繊度の細繊度化が要求されている。また高密度化に伴い、製織時に筬打ちでモノフィラメントが受ける負荷および筬打ち回数が大きくなり、繊維表面に残存する固相重合油剤によるスカムに起因して、製織糸切れや製品欠点(スカム)が多くなることから、これまで以上に洗浄を強化することが求められている。
本発明の洗浄工程のパッケージ状の固相重合糸を解舒するが、その方法は固相重合で生じる軽微な融着を剥がす際のフィブリル化を抑制するためには固相重合パッケージを回転させながら、回転軸と垂直方向(繊維周回方向)に糸を解舒する、いわゆる横取りにより解舒することが好ましい。そのような解舒方法としては、モーター等を用いて回転数一定で積極駆動する方法、ダンサーローラーを用いて回転数を制御しながら調速解舒する方式、フリーロールに固相重合パッケージをかけて、調速ローラーにより繊維を引っ張りつつ解舒する方法が挙げられる。
本発明の洗浄方法は、まず固相重合した後の繊維を走行させつつ、固相重合油剤が溶解または分散できる液体中に浸漬させる。液体への浸漬方法は、キスロールを用いて液体と接触させるなどの方法でも良いが、液体で満たされた浴内に繊維を走行させる方法は使用する液体量を低減でき、液体の周囲への飛散を防ぎ、かつ液体との接触時間を長くできる点で好ましい。
浸漬による洗浄に用いる液体は、環境負荷を低減するために水とすることが好ましい。液体の温度は高い方が除去効率を高めることができ、30℃以上が好ましく、40℃以上がより好ましい。ただし温度が高すぎる場合には液体の蒸発が著しくなるため、液体の沸点−20℃以下が好ましく、沸点−30℃以下がより好ましい。
洗浄に用いる液体には、洗浄効率向上の観点から界面活性剤を添加することが好ましい。界面活性剤の添加量は除去効率を高め、かつ環境負荷を低下させるため0.01〜1重量%が好ましく、0.1〜0.5重量%がより好ましい。
さらに、洗浄効率を高めるため、浸漬による洗浄に用いる液体に振動または液流を付与することが好ましい。この場合、液体を超音波振動させるなどの手法もあるが、設備簡素化、省エネの観点から液流を付与することが好ましい。液流付与の方法は液浴内の撹拌、ノズルでの液流付与等の方法があるが、液浴を循環する際の供給をノズルで行うことで簡単に実施できることからノズルでの液流付与が好ましい。また繊維を液体中に浸す方法は、ガイド等を用いて繊維を浴内に導く方法でも良いが、ガイドとの接触抵抗による固相重合繊維のフィブリル化を抑制するため、浴の両端にスリットを設け、このスリットを通って繊維が浴内を通過できるようにし、かつ浴内には糸道ガイドを設けないことが好ましい。
次いで液体と気体の混合流体スプレーノズルを用いた洗浄を行う。液体と気体の混合流体スプレーノズルを用いることにより、細かい液体粒子を繊維表面の固相重合油剤の残存物に衝突させ、走行糸に過度な負荷を与えずに、効率的に固相重合油剤の残存物を除去できる。
さらに、混合流体スプレーノズルの前後にガイド等を用いて糸条の走行位置を規制することが好ましい。糸条の走行位置を規制することで、混合流体スプレーノズルの噴射圧力による繊維の振動を抑え、洗浄のムラを低減することができる。ノズルの噴射孔からの距離方向の振動を規制するよりも、ノズルの噴射方向および糸条の走行方向に対して垂直方向の振動を規制することが好ましい。また、ガイドは、糸条を規制するために、ノズルの噴射孔から50mm以下に設置することが好ましい。この場合、スリット型ガイドを用いる方法もあるが、設備簡素化、スリット溝幅調整の観点から、円筒形の棒型ガイドを隣接してスリット溝を形成して設置することが好ましい。溝幅は糸条が振動していなければ接触しないで通過できるように0.2mm以上が好ましい。より好ましくは0.5mm以上である。また、糸条の振動を抑制する効果を得るために、スプレーノズルの孔径と同等以下の2.0mm以下であることが好ましい。より好ましくは1.2mm以下であることが好ましい。
本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの孔径は0.5mm以上、2.0mm以下であることが好ましい。0.5mm以上とすることで走行糸に安定的に噴霧することができるため好ましい。加えて噴霧された噴霧範囲から走行糸が外れにくいため安定した洗浄が可能になるとともに、異物やミネラル分による詰まりが発生しにくくなる。一方、2.0mm以下であると使用する液体流量の効率も良好である。より好ましくは1.0mm以上、1.8mm以下である。
本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの個数は1個/糸条でも優れた洗浄効果が得られるが、固相重合油剤をより除去するためには2個/糸条以上とすることが好ましい。より好ましくは4個/糸条以上である。また個数は多くなるほど洗浄効果は得られるが、多すぎると使用する液体および気体の流量に対し効率が低下し、また設備も過大となるため、10個/糸条以下が好ましい。より好ましくは7個/糸条以下である。
本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの液体圧は0.05MPa以上、1.00MPa以下が好ましい。0.05MPa以上とすることで細かい液体粒子とすることができ、より好ましくは0.10MPa以上である。液体圧を高くし過ぎると使用する液体流量に対し効率が悪くなるため、1.00MPa以下が好ましい。また気体圧とのバランスによるが、液体圧が大きすぎると液体粒子の径が大きくなり、固相重合油剤の除去効率が下がる。より好ましくは0.5MPa以下である。
本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの気体圧は0.05MPa以上、1.00MPa以下が好ましい。0.05MPa以上とすることで細かい液体粒子とすることができ、より好ましくは0.10MPa以上である。気体圧を高くし過ぎると使用する液体流量に対し効率が悪くなるため、1.00MPa以下が好ましい。より好ましくは0.5MPa以下である。
本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの液体圧と気体圧のバランスは、液体圧が気体圧の1.05倍以上1.50倍以下が好ましい。1.05倍以上とすることで液体粒子の径が大きくなり、繊維への衝撃力が高まり、固相重合油剤の除去効率を上げることができ、より好ましくは1.10倍以上である。気体圧に対して液体圧を高くし過ぎると液体が粒子形態とならず、固重油剤の除去効率が下がるため、1.50倍以下が好ましい。より好ましくは、1.30倍以下である。
本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの液体は、環境負荷を低減するために水とすることが好ましい。また浸漬による洗浄に用いた液体が繊維表面に付着しているため、該成分をすすぐ目的においても水とすることが好ましい。また本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの気体は、コストおよび安全性の観点から空気であることが好ましい。
本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの1個あたりに使用する液体流量は、40mL/分・個以上、300mL/分・個以下とすることが好ましい。40mL/分・個以上とすることで優れた洗浄効果が得られ、より好ましくは50mL/分・個以上である。液体流量は多くなるほど、繊維表面に残存した固相重合油剤への衝突頻度が高くなり、洗浄効果は向上するが、一方で繊維表面に衝突しない量が増加し、無駄な消費量が増えてしまうため、300mL/分・個以下が好ましい。より好ましくは、150mL/分・個以下である。
本発明に用いる液体と気体の混合流体スプレーノズルの1個あたりに使用する気体流量は、15L/分・個以上、100L/分・個以下とすることが好ましい。15L/分・個以上とすることで優れた洗浄効果が得られ、より好ましくは20L/分・個以上である。使用する液体流量にもよるが、気体流量は多くなるほど、使用する液体流量に対し効率が悪くなり、無駄な消費量が増えてしまうために100L/分・個以下が好ましい。より好ましくは、70L/分・個以下である。
液体と気体の混合流体スプレーノズルの噴射孔と走行糸との距離は、0.1mm以上、30mm以下が好ましい。0.1mm以上であると、走行糸がノズルに接すめことがなく、繊維が擦過されないため、フィブリルや毛羽が発生しにくいため、好ましくない。30.0mm以下とすることで、洗浄効果を十分に発揮できるため好ましい。より好ましくは0.5mm以上、20.0mm以下である。 液体と気体の混合流体スプレーノズルによる洗浄後、繊維表面に残った液体を、気体を用いて吹き飛ばすことが好ましい。繊維表面に液体が残っている場合、この後の工程での汚れにつながることから、吹き飛ばしによる液体の除去が好ましい。
液体と気体の混合スプレーノズルによる洗浄直後の走行糸の走行張力は1.0cN以上、20.0cN以下とすることが好ましい。1.0cN以上とすることで走行状態があんていするため好ましい。20.0cNを超えると工程中のガイド等との擦過により、フィブリルや毛羽が発生しやすくなるため好ましくない。より好ましくは5.0cN以上、15.0cN以下である。
洗浄後の液晶ポリエステル繊維の固相重合油剤の付着量は、高次加工工程や製織工程での繊維の工程通過性向上や織物品位向上の観点から0.20重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.10重量%以下、最も好ましくは0.07重量%以下である。なお、洗浄後の固相重合油剤の付着量は、洗浄工程の直後で巻き取った繊維について実施例に記載の方法で測定される値をいう。
また洗浄後の液晶ポリエステル繊維の固相重合油剤の付着量の繊維長手方向のバラツキの指標となる、洗浄後の固相重合油剤の付着量の0.05重量%以下の割合は、製織工程におけるガイドや筬、繊維自体に堆積するスカムによる織物品位、糸切れの観点から、50%以上が好ましく。さらにメッシュの細径化および高密度化に適した液晶ポリエステル繊維とするため、70%以上がより好ましく、80%以上がさらに好ましい。洗浄後の固相重合油剤の付着量の長手方向のバラツキは、洗浄工程の直後で巻き取った繊維について実施例に記載の方法で測定される値をいう。
また、液晶ポリエステルモノフィラメントの使用目的により特に繊維の耐摩耗性向上が必要な場合は、洗浄後にTm1+10℃以上の温度で高温熱処理を施すことが好ましい。なお、ここで言うTm1は実施例記載の測定方法により求められた値を指す。Tm1は繊維の融点であるが、液晶ポリエステルモノフィラメントに融点+10℃以上もの高温で熱処理を施すことでTm1におけるピーク半値幅は15℃以上となり、繊維全体の結晶化度、結晶の完全性を低下させることで耐摩耗性が大きく向上する。
熱処理という点では液晶ポリエステルモノフィラメントの固相重合があるが、この場合の処理温度は繊維の融点以下としないと繊維が融着、溶断してしまう。固相重合の場合、処理に伴い繊維の融点が上昇するため、最終の固相重合温度は処理前の繊維の融点以上となることがあるが、その場合でも処理温度は処理されている繊維の融点、すなわち熱処理後の繊維の融点よりも低い。すなわち、ここでいう高温熱処理とは、固相重合を行うことではなく、固相重合によって形成された緻密な結晶部分と非晶部分の構造差を減少させること、つまり結晶化度、結晶の完全性を低下させることで耐摩耗性を高めるものである。したがって処理温度は熱処理によりTm1が変化しても、処理後の繊維のTm1+10℃以上とすることが好ましく、この点から処理温度は処理後の繊維のTm1+10℃以上とすることが好ましく、Tm1+40℃以上がより好ましく、Tm1+60℃以上とすることがさらに好ましく、Tm1+80℃以上とすることが特に好ましい。なお、処理温度の上限としては繊維が溶断する温度であり、張力、速度、単繊維繊度、処理長で異なるがTm1+300℃程度である。
また、別の熱処理として液晶ポリエステルモノフィラメントの熱延伸があるが、熱延伸は高温で繊維を緊張させるものであり、繊維構造は分子鎖の配向が高くなり、強度、弾性率は増加し、結晶化度、結晶の完全性は維持したまま、すなわちΔHm1は高いまま、Tm1のピーク半値幅は小さいままである。したがって耐摩耗性に劣る繊維構造となり、結晶化度を低下(ΔHm1減少)、結晶の完全性を低下(ピーク半値幅増加)させて耐摩耗性を向上させることを目的とする本発明の熱処理とは異なる。なお本発明で言う高温熱処理では結晶化度が低下するため、強度、弾性率は増加しない。
高温熱処理は、繊維を連続的に走行させながら行うことが繊維間の融着を防ぎ、処理の均一性を高められるため好ましい。このときフィブリルの発生を防ぎ、かつ均一な処理を行うため、非接触熱処理を行うことが好ましい。加熱手段としては雰囲気の加熱、レーザーや赤外線を用いた輻射加熱などがあるがブロックまたはプレートヒーターを用いたスリットヒーターによる加熱は雰囲気加熱、輻射加熱の両方の効果を併せ持ち、処理の安定性が高まるため好ましい。
処理時間は結晶化度、結晶の完全性を低下させるためには長い方が好ましく、0.01秒以上が好ましく、0.05秒以上がより好ましく、0.1秒以上がさらに好ましい。また処理時間の上限は、設備負荷を小さくするため、また処理時間が長いと分子鎖の配向が緩和し強度、弾性率が低下するため5.0秒以下が好ましく、3.0秒以下がより好ましく、2.0秒以下とすることがさらに好ましい。
処理速度は処理長にもよるが高速であるほど高温短時間処理が可能となり、耐摩耗向上効果が高まり、さらに生産性も向上するため100m/分以上が好ましく、200m/分以上がより好ましく、300m/分以上がさらに好ましい。処理速度の上限は繊維の走行安定性から1000m/分程度である。
処理長は加熱方法にもよるが、非接触加熱の場合には均一な処理を行うために100mm以上が好ましく、200mm以上がより好ましく、500mm以上がさらに好ましい。また処理長が過度に長いとヒーター内部での糸揺れにより処理ムラ、繊維の溶断が発生するため3000mm以下が好ましく、2000mm以下がより好ましく、1000mm以下がさらに好ましい。
なお、上記した洗浄および熱処理は、途中で一旦巻き取ることなく、連続した一工程内で行うことが好ましい。特に固相重合後の液晶ポリエステルモノフィラメントを巻き取る際には、ワインダーでの擦過等により繊維のフィブリル化が発生するため、洗浄を行った後、引き続いて熱処理を行い、耐摩耗性を高めることが好ましい。
また、洗浄や熱処理等の後の工程における工程通過性向上の観点から仕上げ油剤を塗布することが好ましい。仕上げ油剤としては、ポリエステル繊維用に一般に用いられる仕上げ油剤が好ましく適用できる。
仕上げ油剤の付着率としては、表面平滑性向上による耐摩耗性向上、工程通過性向上などのため繊維重量に対し0.1重量%以上が好ましい。油分は多いほどその効果は高まるため、0.3重量%以上がより好ましい。ただし油分が多すぎると繊維同士の接着力が高まり、工程通過性を阻害するほか、工程汚れを発生させるため、2.0重量%以下、1.5重量%以下が好ましい。ここでいう仕上げ油剤の付着率とは、仕上げ油剤付与後の繊維について実施例記載の方法にて求められる油分付着率の値から同繊維の残存固相重合油剤の付着率の値を差し引いた値をいう。
以下、本発明の液晶ポリエステルモノフィラメントについて実施例をもって具体的に説明する。実施例の測定値は、次の方法で測定した。
A.繊度
検尺機にて繊維を300mカセ取りし、その重量(g)を100/3倍し、1水準当たり10回の測定を行い、平均値を繊度(dtex)とした。
検尺機にて繊維を300mカセ取りし、その重量(g)を100/3倍し、1水準当たり10回の測定を行い、平均値を繊度(dtex)とした。
B.強度、伸度、弾性率
JIS L1013:1999記載の方法に準じて、試料長500mm、引張速度50mm/分の条件で、オリエンテック社製テンシロンUTM−100を用い1水準当たり20回の測定を繊維長手方向に連続して行い、平均値を強度(cN/dtex)、伸度(%)、弾性率(cN/dtex)とした。なお、弾性率とは初期引張抵抗度のことである。
JIS L1013:1999記載の方法に準じて、試料長500mm、引張速度50mm/分の条件で、オリエンテック社製テンシロンUTM−100を用い1水準当たり20回の測定を繊維長手方向に連続して行い、平均値を強度(cN/dtex)、伸度(%)、弾性率(cN/dtex)とした。なお、弾性率とは初期引張抵抗度のことである。
C.油分付着率
1.0±0.1gの繊維を採取し、60℃にて10分間乾燥させた後の重量を測定し(W0)、繊維重量に対し100倍以上の水にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを繊維重量に対し2.0重量%添加した溶液に繊維を浸漬させ、室温にて20分超音波洗浄し、洗浄後の繊維を水洗し、60℃にて10分間乾燥させた後の重量(W1)を測定し、次式により油分付着率を算出した。
(油分付着率(重量%))=(W0−W1)×100/W1 。
1.0±0.1gの繊維を採取し、60℃にて10分間乾燥させた後の重量を測定し(W0)、繊維重量に対し100倍以上の水にドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムを繊維重量に対し2.0重量%添加した溶液に繊維を浸漬させ、室温にて20分超音波洗浄し、洗浄後の繊維を水洗し、60℃にて10分間乾燥させた後の重量(W1)を測定し、次式により油分付着率を算出した。
(油分付着率(重量%))=(W0−W1)×100/W1 。
D.洗浄後の残存固相重合油剤の油分付着量の繊維長手方向のバラツキ
洗浄工程の直後で巻き取った繊維を、1水準当たり50回、1.0±0.1gずつ採取し、上記C項の方法で付着量を測定・算出した。50回の測定結果について、0.05重量%以下の割合(%)を算出し、洗浄後の油分付着量の長手方向のバラツキの指標とした。
洗浄工程の直後で巻き取った繊維を、1水準当たり50回、1.0±0.1gずつ採取し、上記C項の方法で付着量を測定・算出した。50回の測定結果について、0.05重量%以下の割合(%)を算出し、洗浄後の油分付着量の長手方向のバラツキの指標とした。
E.液晶ポリエステル繊維のTm1、Tm1におけるピーク半値幅、融解熱量ΔHm1、液晶ポリエステルポリマーの融点(Tm2)
TA instruments社製DSC2920により示差熱量測定を行い、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度をTm1(℃)とし、Tm1におけるピーク半値幅(℃)、融解熱量(ΔHm1)(J/g)を測定した。
なお、参考例に示した液晶ポリエステルポリマーについてはTm1の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で50℃まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークをTm2とし、Tm2をもってポリマーの融点とした。
TA instruments社製DSC2920により示差熱量測定を行い、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度をTm1(℃)とし、Tm1におけるピーク半値幅(℃)、融解熱量(ΔHm1)(J/g)を測定した。
なお、参考例に示した液晶ポリエステルポリマーについてはTm1の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で50℃まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークをTm2とし、Tm2をもってポリマーの融点とした。
F.ポリスチレン換算の重量平均分子量(分子量)
溶媒としてペンタフルオロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)の混合溶媒を用い、液晶ポリエステルの濃度が0.04〜0.08重量/体積%となるように溶解させGPC測定用試料とした。なお、室温24時間の放置でも不溶物がある場合は、さらに24時間静置し、上澄み液を試料とした。これを、Waters社製GPC測定装置を用いて測定し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。
カラム:ShodexK−806M 2本、K−802 1本
検出器:示差屈折率検出器RI
温度 :23±2℃
流速 :0.8mL/分
注入量:200μL 。
溶媒としてペンタフルオロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)の混合溶媒を用い、液晶ポリエステルの濃度が0.04〜0.08重量/体積%となるように溶解させGPC測定用試料とした。なお、室温24時間の放置でも不溶物がある場合は、さらに24時間静置し、上澄み液を試料とした。これを、Waters社製GPC測定装置を用いて測定し、ポリスチレン換算により重量平均分子量(Mw)を求めた。
カラム:ShodexK−806M 2本、K−802 1本
検出器:示差屈折率検出器RI
温度 :23±2℃
流速 :0.8mL/分
注入量:200μL 。
G.工程通過性、製織性、織物品位評価
レピア織機にて経糸に13dtexのポリエステルモノフィラメントを用い、織密度を経、緯ともに350本/インチ(2.54cm)とし、打ち込み速度を100回/分とし、緯糸を液晶ポリエステルモノフィラメントとして緯打ち込み試織を行った。このとき、幅180cm、長さ10mの試織において、緯糸の給糸口(セラミックガイド)へのスカムの堆積から工程通過性を評価し、糸切れによる停台回数から製織性を評価し、織物長さ10m当たりの織物上のスカムの混入個数から織物品位を評価した。工程通過性の判断基準を下記に示す。
<工程通過性>
◎:製織後も目視にてスカムの堆積が認められない:優良
○:製織後にスカムは認められるが繊維走行には支障なし:良好
×:製織中にスカムが認められ繊維走行張力が増加する:不良
<製織性(停台回数)>
上記記載の通り、製織中の糸切れによる停台した回数を評価し、製織性の指標とした。
<織物品位(スカム混入個数)>
上記の通り、製織後の織物長さ10m当たりの織物上のスカムの混入個数を評価し、織物品位の指標とした。
レピア織機にて経糸に13dtexのポリエステルモノフィラメントを用い、織密度を経、緯ともに350本/インチ(2.54cm)とし、打ち込み速度を100回/分とし、緯糸を液晶ポリエステルモノフィラメントとして緯打ち込み試織を行った。このとき、幅180cm、長さ10mの試織において、緯糸の給糸口(セラミックガイド)へのスカムの堆積から工程通過性を評価し、糸切れによる停台回数から製織性を評価し、織物長さ10m当たりの織物上のスカムの混入個数から織物品位を評価した。工程通過性の判断基準を下記に示す。
<工程通過性>
◎:製織後も目視にてスカムの堆積が認められない:優良
○:製織後にスカムは認められるが繊維走行には支障なし:良好
×:製織中にスカムが認められ繊維走行張力が増加する:不良
<製織性(停台回数)>
上記記載の通り、製織中の糸切れによる停台した回数を評価し、製織性の指標とした。
<織物品位(スカム混入個数)>
上記の通り、製織後の織物長さ10m当たりの織物上のスカムの混入個数を評価し、織物品位の指標とした。
実施例1
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸292重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1460重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、335℃まで4時間で昇温した。
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸292重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1460重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、335℃まで4時間で昇温した。
重合温度を335℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に40分間反応を続け、トルクが28kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
得られた液晶ポリエステルの組成、融点、分子量は表1に記載の通りである。
得られた液晶ポリエステルの組成、融点、分子量は表1に記載の通りである。
上記液晶ポリエステルを用い、160℃、12時間の真空乾燥を行った後、大阪精機工作株式会社製φ15mm単軸エクストルーダーにて330℃にて溶融させた後、紡糸温度340℃で配管内を通過させ、1口金1.7g/分となるようにギアーポンプで計量しつつ紡糸パックにポリマーを供給した。紡糸パックでは金属不織布フィルターを用いてポリマーを濾過し、L/Dが2.0の口金より4糸条のポリマーを吐出した。吐出したポリマーは40mmの保温領域を通過させた後、25℃、空気流の環状冷却風により糸条の外側から冷却し固化させ、その後、脂肪酸エステル化合物を主成分とする紡糸油剤を付与し全フィラメントを1000m/分の第1ゴデットロールに引き取った。これを同じ速度である第2ゴデットロールを介した後、ダンサーアームを介したスピンドルトラバース型のパーンワインダー(パッケージに接触するコンタクトロール無し)にてパーンの形状に巻き取った。紡糸ドラフトは25であり、巻取中、糸切れは発生せず製糸性は良好であった。なお、得られた繊維の繊度は4.3dtex、強度は7.2cN/dtex、伸度は1.5%、弾性率は589cN/dtexであった。
この紡糸繊維パッケージから神津製作所社製プレシジョンワインダーSSP−MVのカムボックス部(トラバース装置)にIAI製電動シリンダーRCP−SAC3をリンク機構を介して接続した巻取装置(タッチロール無し、ワインド数8.7、テーパー角45°)を用いて巻返しを行った。この際、キーエンス製変位センサIL−065でパッケージ外径を検出し、検出したパッケージ径に基づき、フリーレングスが一定となるように電動シリンダーを駆動させてカムボックス部を移動させた。紡糸繊維の解舒は、縦方向(繊維周回方向に対し垂直方向)に行い、オイリングローラー(梨地仕上げのステンレスロール)を用いてリン酸系化合物(B)として下記化学式(4)で示されるリン酸系化合物(B1)を10.0重量%含有する水溶液に無機粒子(A)として滑石であるタルクを1.0重量%分散させた固相重合用油剤の給油を行った。巻き返し後の繊維への固相重合油剤の油分付着率(a+b)は19.5重量%であった。
次に巻き返したパッケージの固相重合を行なった。固相重合は、密閉型オーブンを用い、室温から240℃までは約30分で昇温し、240℃にて3時間保持した後、4℃/時間で290℃まで昇温し、15時間保持する条件にて固相重合を行った。なお、雰囲気は除湿窒素を流量20NL/分にて供給し、庫内が加圧にならないように排気口より排気させた。
得られた固相重合後の繊維の繊度は4.1dtex、強度は24.3cN/dtex、伸度は2.6%、弾性率は1042cN/dtexであり、固相重合前の繊維と比べて強度、伸度、弾性率が向上しており、固相重合が進んでいることが確認できた。なお、得られた固相重合後の繊維のTm1は345℃、ΔHm1は8.0J/g、Tm1におけるピーク半値幅は6.6℃であった。
続いて、固相重合後のパッケージから繊維を解舒し、固相重合油剤除去のための洗浄を行なった。固相重合後のパッケージをフリーロールクリール(軸およびベアリングを有し、外層部は自由に回転できる。ブレーキおよび駆動源なし)にはめ、ここから糸を横方向(繊維周回方向)に引き出し、連続して、繊維を両端にスリットを設けた浴長150cm(接触長150cm)の浴槽(内部に繊維と接触するガイドなし)内に通し、固相重合油剤を洗浄除去した。洗浄液は非イオン・アニオン系の界面活性剤含有した50℃の温水を用いた。その後、スプレーイングシステムス社製二流体エアーアトマイジングノズルを用い、水と空気の混合流体スプレーノズルでの洗浄を行った。孔径は1.5mmのスプレーノズル2個を使用し、水圧0.20MPa、圧縮空気圧0.20MPa、スプレーノズル噴射口と走行糸との距離は15.0mmとした。使用される水量は100mL/分・個、使用される圧縮空気量は35L/分・個であった。洗浄後の繊維はベアリングローラーガイドを通した後、400m/分のセパレートローラー付きの第1ローラーに通した。なお、クリールはフリーロールであるため、このローラーにより繊維に張力を付与することで、固相重合パッケージからの解舒を行ない、繊維を走行させることになる。
ローラーを通過した繊維を510℃に加熱した長さ1mのスリットヒーター間を走行させ、高温非接触熱処理を行なった。スリットヒーター内にはガイド類を設けず、またヒーターと繊維も非接触としている。ヒーター通過後の繊維はセパレートローラー付きの第2ローラーに通した。第1ローラーと第2ローラーは同速度とした。第2ローラーを通過した繊維は、セラミック製のオイリングローラーにより脂肪酸エステル化合物を主体とする仕上げ油剤を付与し、ダンサーアームを介したスピンドルトラバース方式のパーンワインダーにて巻き取った。得られた繊維の物性は表2に示すとおり、強度18.2cN/dtex、伸度2.9%、弾性率739cN/dtex、洗浄後の残存固相重合油剤の付着量が0.03重量%、洗浄後の残存固相重合油剤の付着量の繊維長手方向のバラツキ(0.05重量%以下の割合)が75%であり、繊維表面に残存している固相重合油剤が少なく、良好な繊維であることが確認された。また製織評価の結果、緯糸の給糸口へのスカムの堆積がなく工程通過性が優良であり、糸切れによる停台がなく製織性も優良であり、織物に混入するスカムは2個と優良であった。
実施例2、3
スプレーノズルの孔径を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。孔径を1.2mmとした実施例2は、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.03重量%、0.05重量%以下が69%と良好であり、糸切れによる停台が1回、織物に混入するスカムが4個と製織評価も優良であった。孔径を2.8mmとした実施例3は、洗浄後の固相重合油剤の付着量および製織評価結果は良好であった。
スプレーノズルの孔径を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。孔径を1.2mmとした実施例2は、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.03重量%、0.05重量%以下が69%と良好であり、糸切れによる停台が1回、織物に混入するスカムが4個と製織評価も優良であった。孔径を2.8mmとした実施例3は、洗浄後の固相重合油剤の付着量および製織評価結果は良好であった。
実施例4,5
スプレーノズルの個数を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。個数を1個とした実施例4は、洗浄後の固相重合油剤の付着量および製織評価結果は良好であった。個数を5個とした実施例5は、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.01重量%、0.05重量%以下が88%と良好であり、糸切れによる停台が0回、織物に混入するスカムが0個と製織評価も優良であった。
スプレーノズルの個数を表2の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。個数を1個とした実施例4は、洗浄後の固相重合油剤の付着量および製織評価結果は良好であった。個数を5個とした実施例5は、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.01重量%、0.05重量%以下が88%と良好であり、糸切れによる停台が0回、織物に混入するスカムが0個と製織評価も優良であった。
比較例1
スプレーノズルを使用せず、液浴での洗浄のみとした以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表2に繊維物性を示したが、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.15重量%、0.05重量%以下が32%と繊維表面に残存している固相重合油剤が多いことが確認された。また製織評価の結果、緯糸の給糸口へのスカムの堆積があり工程通過性が不良であり、糸切れによる停台が8回で不良であった。さらに織物に混入するスカムは27個と不良であった。
スプレーノズルを使用せず、液浴での洗浄のみとした以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表2に繊維物性を示したが、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.15重量%、0.05重量%以下が32%と繊維表面に残存している固相重合油剤が多いことが確認された。また製織評価の結果、緯糸の給糸口へのスカムの堆積があり工程通過性が不良であり、糸切れによる停台が8回で不良であった。さらに織物に混入するスカムは27個と不良であった。
比較例2、3
スプレーノズルにて圧縮空気を使用せず、水のみを使用した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表3に繊維物性を示したが、それぞれ、水圧0.20MPaおよび0.40MPaとした比較例2および3は、洗浄後の固相重合油剤の付着量が高く、繊維表面に残存している固相重合油剤が多いことが確認された。また製織評価も不良であった。
スプレーノズルにて圧縮空気を使用せず、水のみを使用した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表3に繊維物性を示したが、それぞれ、水圧0.20MPaおよび0.40MPaとした比較例2および3は、洗浄後の固相重合油剤の付着量が高く、繊維表面に残存している固相重合油剤が多いことが確認された。また製織評価も不良であった。
比較例4
スプレーノズルにて水を使用せず、圧縮空気のみを使用した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表3に繊維物性を示したが、圧縮空気圧0.20MPaとした比較例4は、洗浄後の固相重合油剤の付着量が高く、繊維表面に残存している固相重合油剤が多いことが確認された。また製織評価も不良であった。
スプレーノズルにて水を使用せず、圧縮空気のみを使用した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表3に繊維物性を示したが、圧縮空気圧0.20MPaとした比較例4は、洗浄後の固相重合油剤の付着量が高く、繊維表面に残存している固相重合油剤が多いことが確認された。また製織評価も不良であった。
実施例6〜9
スプレーノズルの使用する水圧および圧縮空気圧を表3、4の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。水圧および圧縮空気圧を0.40MPaとした実施例6は、使用する水量および圧縮空気量が多くなったが、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.02重量%、0.05重量%以下が81%と良好であり、糸切れによる停台が0回、織物に混入するスカムが1個と製織評価も優良であった。水圧および圧縮空気圧をそれぞれ0.15MPa、0.10MPaとした実施例7、8は、洗浄後の固相重合油剤の付着量および製織評価結果が優良であった。水圧および圧縮空気圧を0.07MPaとした実施例9は、洗浄後の固相重合油剤の付着量および製織評価結果が良好であった。
スプレーノズルの使用する水圧および圧縮空気圧を表3、4の通りに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。水圧および圧縮空気圧を0.40MPaとした実施例6は、使用する水量および圧縮空気量が多くなったが、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.02重量%、0.05重量%以下が81%と良好であり、糸切れによる停台が0回、織物に混入するスカムが1個と製織評価も優良であった。水圧および圧縮空気圧をそれぞれ0.15MPa、0.10MPaとした実施例7、8は、洗浄後の固相重合油剤の付着量および製織評価結果が優良であった。水圧および圧縮空気圧を0.07MPaとした実施例9は、洗浄後の固相重合油剤の付着量および製織評価結果が良好であった。
実施例10
スプレーノズルの噴射口と走行糸との距離を5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。走行糸の糸揺れが若干大きくなったが、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.02重量%、0.05重量%以下が71%と良好であり、糸切れによる停台が1回、織物に混入するスカムが3個と製織評価も優良であった。
スプレーノズルの噴射口と走行糸との距離を5mmに変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。走行糸の糸揺れが若干大きくなったが、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.02重量%、0.05重量%以下が71%と良好であり、糸切れによる停台が1回、織物に混入するスカムが3個と製織評価も優良であった。
実施例11
紡糸の吐出量を2.7g/分に変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表4に記載の通り、得られた繊維の繊度は6.2dtexであった。洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.02重量%、0.05重量%以下が83%と良好であり、糸切れによる停台が0回、織物に混入するスカムが1個と製織評価も優良であった。
紡糸の吐出量を2.7g/分に変更した以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表4に記載の通り、得られた繊維の繊度は6.2dtexであった。洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.02重量%、0.05重量%以下が83%と良好であり、糸切れによる停台が0回、織物に混入するスカムが1個と製織評価も優良であった。
比較例5
洗浄工程において、液浴での洗浄を行わず、スプレーノズルでの洗浄のみとした以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表4に繊維物性を示したが、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.31重量%、0.05重量%以下が10%と繊維表面に残存している固相重合油剤が多いことが確認された。また製織評価の結果、緯糸の給糸口へのスカムの堆積があり工程通過性が不良であり、糸切れによる停台が13回で不良であった。さらに織物に混入するスカムは50個以上と不良であった。
洗浄工程において、液浴での洗浄を行わず、スプレーノズルでの洗浄のみとした以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。表4に繊維物性を示したが、洗浄後の固相重合油剤の付着量が0.31重量%、0.05重量%以下が10%と繊維表面に残存している固相重合油剤が多いことが確認された。また製織評価の結果、緯糸の給糸口へのスカムの堆積があり工程通過性が不良であり、糸切れによる停台が13回で不良であった。さらに織物に混入するスカムは50個以上と不良であった。
実施例12〜14
スプレーノズルの噴射部の前後に糸条の走行位置を規制するためのガイドを取り付けた以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。糸条が走行する溝幅を0.1mmとした実施例12は、固相重合油剤の付着量が0.07重量%、0.05重量%以下の割合が50%と不調傾向であった。また糸条を規制しているガイド部に白粉の堆積が見られ、工程通過性および製織性の悪化が見られた。溝幅0.8mmとした実施例13は、固相重合油剤の付着量が0.02重量%、0.05重量%以下の割合が84%と良好であった。溝幅2.0mmとした実施例14は、固相重合油剤の付着量が0.04重量%、0.05重量%以下の割合が73%と優良であった。
スプレーノズルの噴射部の前後に糸条の走行位置を規制するためのガイドを取り付けた以外は、実施例1と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。糸条が走行する溝幅を0.1mmとした実施例12は、固相重合油剤の付着量が0.07重量%、0.05重量%以下の割合が50%と不調傾向であった。また糸条を規制しているガイド部に白粉の堆積が見られ、工程通過性および製織性の悪化が見られた。溝幅0.8mmとした実施例13は、固相重合油剤の付着量が0.02重量%、0.05重量%以下の割合が84%と良好であった。溝幅2.0mmとした実施例14は、固相重合油剤の付着量が0.04重量%、0.05重量%以下の割合が73%と優良であった。
実施例15〜20
スプレーノズルの液体と気体の混合比を変更した以外は、実施例13と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。混合比を1.00倍より大きくした実施例15、16、17は、固相重合油剤の付着量が0.04重量%以下であり、0.05重量%以下の割合が70%以上を占めており、優良であった。混合比を1.00倍より小さくした実施例18、19、20は、工程通過性、織物品位に悪化が見られ、不良であった。
スプレーノズルの液体と気体の混合比を変更した以外は、実施例13と同様にして液晶ポリエステル繊維を得た。混合比を1.00倍より大きくした実施例15、16、17は、固相重合油剤の付着量が0.04重量%以下であり、0.05重量%以下の割合が70%以上を占めており、優良であった。混合比を1.00倍より小さくした実施例18、19、20は、工程通過性、織物品位に悪化が見られ、不良であった。
Claims (7)
- 液晶ポリエステルモノフィラメントに固相重合油剤を塗布して固相重合した後、該モノフィラメントを連続的に液体中に浸漬させ、次いで液体と気体の混合流体スプレーノズルで吹き付け洗浄することを特徴とする液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
- 混合流体スプレーのノズルの孔径が0.5mm以上2.0mm以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
- 混合流体スプレーのノズルの個数が2個/糸条以上、10個/糸条以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
- 混合流体スプレーのノズルの液体圧が0.05MPa以上、1.00MPa以下であり、気体圧が0.05MPa以上、1.00MPa以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
- 混合流体スプレーのノズルの液体圧が気体圧の1.05倍以上、1.50倍以下であることを特徴とする請求項4記載の液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
- 混合流体スプレーのノズルの噴射部の前後に糸条の走行位置を規制する溝幅0.2mm以上、2.0mm以下のガイドを設置されていることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステルモノフィラメントの製造方法。
- 固相重合油剤の残存量が0.1wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の液晶ポリエステルモノフィラメント繊維。
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