JP2013133576A - 液晶ポリエステルマルチフィラメント - Google Patents
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Abstract
【課題】長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産が可能な強度、弾性率に優れた液晶ポリエステルマルチフィラメントを提供する。
【解決手段】繊維全体の重量を100重量%としたときに金属石鹸を0.01〜1重量%含む液晶ポリエステルで構成されることを特徴とする液晶ポリエステルマルチフィラメント、単繊維繊度が0.1〜100dtexの範囲であることを特徴とする前記液晶ポリエステルマルチフィラメントおよび単繊維数が30〜1000本の範囲であることを特徴とする前記液晶ポリエステルマルチフィラメント。
【選択図】なし
【解決手段】繊維全体の重量を100重量%としたときに金属石鹸を0.01〜1重量%含む液晶ポリエステルで構成されることを特徴とする液晶ポリエステルマルチフィラメント、単繊維繊度が0.1〜100dtexの範囲であることを特徴とする前記液晶ポリエステルマルチフィラメントおよび単繊維数が30〜1000本の範囲であることを特徴とする前記液晶ポリエステルマルチフィラメント。
【選択図】なし
Description
本発明は液晶ポリエステルマルチフィラメントに関する。詳しくは、金属石鹸を含有することで強度、弾性率に優れた液晶ポリエステルマルチフィラメントを長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産を可能にするものである。
液晶ポリエステルは剛直な分子鎖からなるポリマーであり、溶融紡糸においてはその分子鎖を繊維軸方向に高度に配向させ、さらに熱処理(固相重合)を施すことにより溶融紡糸で得られる繊維の中では最も高い強度、弾性率が得られることが知られている。また液晶ポリエステルは固相重合により分子量が増加し、融点が上昇するため耐熱性、寸法安定性が向上することも知られている(例えば、非特許文献1参照)。このように液晶ポリエステル繊維においては固相重合を施すことにより高強度、高弾性率、優れた耐熱性、寸法安定性が発現する。
前記特徴に加え液晶ポリエステル繊維は高い耐薬品性や低吸湿特性を有するため、コントロールケーブル、テンションメンバー(光ファイバー、電線、ヘッドコーンなど)、各種電気製品のコード補強材、ヒーター線芯糸、セールクロス、ロープ、防護手袋、プラスチックの補強材、ザイル、陸上ネット(安全ネット、ゴルフ練習場のネット他)、命綱、釣糸、漁網、延縄、スリングなどに使用されており、また、フィルター用メッシュ織物、スクリーン印刷用の紗織物向けの単繊維繊度の細繊度化、高強度化された液晶ポリエステルの需要が伸びている。
また、特許文献1では、繊維長手方向の均一性を高め、高次加工性に優れる液晶ポリエステル繊維の製造方法が記載されている。
技術情報協会編、「液晶ポリマーの改質と最新応用技術(2006) (第235頁〜第256頁)
溶融状態で繊維軸方向に高度に配向するかかる液晶ポリエステルは、溶融状態で剪断を加えると容易に流動し、低粘度化する特徴を有している。樹脂の成型においては、この点が薄肉成型性に優れているという特徴になっている。しかしながら、繊維製造においては、液晶ポリエステルを溶融状態で紡糸口金から吐出する際、低粘度特性により圧力が口金孔に一様に加わらず、得られる紡糸後の繊維は口金孔が多いほど繊度バラツキが生じ均一性に欠け、さらには吐出時の圧力不足から細糸化したものが毛羽となり、液晶ポリエステル繊維としての十分な強度発現性および製品品位が得難いという欠点を有している。たとえば特許文献1の実施例1および6に開示されているとおり、同一の製造条件で紡糸した液晶ポリエステルモノフィラメントと液晶ポリエステルマルチフィラメントでは紡糸後の繊維強度に差が生じ、さらに熱処理(固相重合)を施すことで強度発現性に大きな差が生じる。
上記の通り、従来の技術では液晶ポリエステルモノフィラメントレベルの強度発現性を達成した液晶ポリエステルマルチフィラメントは得られておらず、さらに上記の通り毛羽発生が課題であり、長期かつ量的安定生産ができないという問題を抱えているのが現状である。
本発明は液晶ポリエステルマルチフィラメントに好適であって、前記従来技術の有する問題を解決し、長期間の生産において毛羽が少ない状態を維持しながら量的生産が可能な強度、弾性率に優れた液晶ポリエステルマルチフィラメントを提供することを課題とする。
上記目的課題を達成するために本発明によれば、繊維全体の重量を100重量%としたときに金属石鹸を0.01〜1重量%含む液晶ポリエステルで構成されることを特徴とする液晶ポリエステルマルチフィラメントが提供される。なお、本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントにおいては、単繊維繊度が0.1〜100dtexの範囲であること、単繊維数が30〜1000本の範囲であること、がいずれも好ましい条件として挙げられる。
本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントは、金属石鹸を特定量含有する液晶ポリエステルを溶融紡糸することでマルチフィラメントの単繊維間に生じる差を抑制し、高強度、高弾性率、優れた耐熱性、寸法安定性を有し、かつ耐薬品性や低吸湿特性に優れ、さらに毛羽が少なく高次工程通過性に優れているため、従来の技術と比較し、長期量的生産性が得られ、特に太繊度が必要とされるロープ、魚網、スリング用途などに対して好適に使用することができる。
以下、本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントについて詳細に説明する。
本発明で用いられる液晶ポリエステルとは、加熱溶融時に異方性溶融相(液晶性)を形成し得るポリエステルである。この特性は例えば、液晶ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察することにより確認できる。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、例えばa.芳香族オキシカルボン酸の重合物、b.芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、脂肪族ジオールの重合物、c.aとbとの共重合物などを用いることができるが、高強度、高弾性率、高耐熱のためには脂肪族ジオールを用いない全芳香族ポリエステルとすることが好ましい。ここで芳香族オキシカルボン酸としては、ヒドロキシ安息香酸および/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体、ヒドロキシナフトエ酸および/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。また芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸および/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体、3,3’−ジフェニルジカルボン酸および/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体、2,2’−ジフェニルジカルボン酸および/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。さらに、芳香族ジオールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、ジオキシジフェニールおよび/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体、ナフタレンジオール、クロロハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノンおよび/またはそのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられ、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
なお本発明で用いる液晶ポリエステルには上記構造単位以外にアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸(1,4−シクロヘキサンジカルボン酸)などの脂環式ジカルボン酸などを液晶性が損なわれない程度の範囲で共重合させても良い。
本発明に用いる前記モノマー等を重合した液晶ポリエステルの好ましい例としては、(A)p−ヒドロキシ安息香酸成分と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸成分が共重合された液晶ポリエステル、(B)p−ヒドロキシ安息香酸成分と4,4’−ジヒドロキシビフェニル成分とイソフタル酸成分および/またはテレフタル酸成分が共重合された液晶ポリエステル等が挙げられ、特に好ましくは(C)p−ヒドロキシ安息香酸成分と4,4’−ジヒドロキシビフェニル成分とイソフタル酸成分とテレフタル酸成分とハイドロキノン成分が共重合された液晶ポリエステルが挙げられる。
上記(A)〜(C)の組み合わせにより、分子鎖の対称性が低下することで液晶ポリエステルの融点が分解点以下に低下し、溶融紡糸が可能な融点を有するようになる。したがって、ポリマーの融点と熱分解温度の間で設定される紡糸温度において良好な製糸性を有するようになり長手方向に均一な繊維が得られ、かつ適度な結晶性を有するため繊維の強度、弾性率を高めることができる。
また液晶性を損なわない程度の範囲で、ポリエステル、ポリオレフィンやポリスチレンなどのビニル系重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリケトン、半芳香族ポリエステルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などのポリマーを添加・併用しても良く、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリエステル99Mなどが好適な例として挙げられる。ここでいう添加・併用とは、ポリマー同士を混合する場合や、2成分以上の複合紡糸において一方の成分、乃至は複数の成分に他のポリマーを部分的に混合使用すること、あるいは全面的に使用することをいう。なおこれらのポリマーを添加・併用する場合、その融点は液晶ポリエステルの融点±30℃以内にすることが製糸性を損なわないために好ましい。
さらに本発明の効果を損なわない範囲内で、各種金属酸化物、カオリン、シリカなどの無機物や、着色剤、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤、相溶化剤等の各種添加剤を少量含有しても良い。
本発明における液晶ポリエステルマルチフィラメントの最大かつ重要な特徴は、繊維全体の重量を100重量%としたときに金属石鹸を0.01〜1重量%含むことであり、より好ましくは0.01〜0.5重量%、さらに好ましくは0.01〜0.1重量%である。本発明の如き金属石鹸の含有範囲を満足する場合には、液晶ポリエステルの加熱溶融時の剪断による低粘度化を阻害する分子となり抑制し、吐出時の圧力不足を改善し液晶ポリエステルマルチフィラメントの単繊維間の差を低減することを見出した。さらに、液晶ポリエステルと重合反応を起こさない金属石鹸の性質と本発明の如き金属石鹸の含有範囲により、紡糸後の繊維は強度低下が起こらず、液晶ポリエステルモノフィラメントを紡糸した際の如き強度を液晶ポリエステルマルチフィラメントで発現させることが可能であることを見出したのである。なお、金属石鹸の含有量が0.01重量%未満の場合は、阻害する分子としての効果が不十分で低粘度化による圧力不足が起こり、液晶ポリエステルマルチフィラメントの単繊維間の差が生じ、液晶モノフィラメントを紡糸した際の如き強度、弾性率が得られず、逆に1重量%を超える場合は、添加量が多いことで阻害する分子が過剰となり、液晶ポリエステルモノフィラメントを紡糸した際の如き強度が発現しないという問題を有している。なお、金属石鹸を添加する方法としては、本発明で規定する要件を充足する限り、特に制限はなく、一括混練法、逐次添加法、マスターペレット法のいずれの添加法を用いてもかまわないが、粉体のまま扱い、紡糸工程で直接、溶融部前で連続的に添加する逐次添加法を取ることが好ましい。
本発明に用いる金属石鹸は、炭素数が7以下の短鎖脂肪酸、8〜10の中鎖脂肪酸、12以上の長鎖脂肪酸の何れかの脂肪酸とアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属などの金属塩から構成されるものである。なお、本発明の効果を奏する限り脂肪酸の炭素数に特に限定はないが、炭素数が12〜20の範囲の場合、常温で粉末状となり易く添加時の取り扱い性に優れるため好ましい。前記脂肪酸の一例としてはステアリン酸、ラウリン酸、リシノール酸、オクチル酸などが挙げられる。また、前記金属塩の一例としては、バリウム、リチウム、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、アルミニウム、クロム、モリブデン、マンガン、鉄、コバルト、タンスグステン、鉛などが挙げられる。なお、本発明の効果を奏する限り、金属石鹸に特に限定はないが比較的融点が高く、常温で粉末状であるステアリン酸リチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸カルシウムを用いることが好ましい。
本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントの単繊維繊度は、0.1〜100dtexであることが好ましく、1〜50dtexであることがより好ましい。単繊維繊度が0.1〜100dtexの範囲である場合、繊維のしなやかさ向上により繊維の加工性が向上し、表面積が増加するため接着剤等の薬液との密着性が高まるといった特性を有する。
また、本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントの単繊維数は、30〜1000本の範囲であることが好ましく、30〜500本であることがより好ましく、30〜300本であることがさらに好ましい。このように単繊維数が比較的大きい場合には、一般に単繊維強度にバラツキが生じやすいので、結果としてマルチフィラメントの強度が低下しやすいが、本発明による強度の向上効果が特に顕著である。また、単繊維が30〜1000本の範囲を満足する場合には単繊維の均一性を維持できるためメッシュシートとした場合の開口率が均一にできるだけでなく、口金設計時には圧力損失を高めず異常滞留を抑制し、流線を安定させることができ、30〜300本の範囲を満足する場合には繊維長手方向の均一性が高まり、繊維の強力(強度と繊度の積)変動も小さくなるため、繊維製品の欠陥が減少する他、低強度部分に起因する高次加工工程での糸切れも抑制できる。
また総繊度としては、10〜3500dtexであることが好ましく、特に400〜3500dtexであることが好ましい。
このように総繊度が比較的大きい場合には、一般に単繊維強度にバラツキが生じやすいため、結果としてマルチフィラメントの強度が低下しやすいが、本発明による強度の向上効果は特に顕著である。
本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントは、単繊維間の強度バラツキが小さいが、単繊維強度変動値として、0.01〜2.0の範囲とすることが可能であり、好ましい態様においては0.01〜1.5とすることも可能である。さらに好ましい態様においては0.01〜1.0とすることも可能である。このように単繊維間の強度バラツキが小さくなることで、得られるマルチフィラメントの強度も向上させることができるのである。単繊維強度変動値が、0.01〜2.0の範囲を満足する場合には単繊維間の強度バラツキが極めて小さいため繊維長手方向の強度発現性が均一であり、高次加工工程の走行張力変動が抑制され糸切れが抑制できる。なお、本発明でいう単繊維強度変動値とは、実施例記載の手法により測定された値を指す。
本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントの強度は5.0cN/dtex以上であることが好ましく、10.0cN/dtex以上がより好ましく、15.0cN/dtex以上がさらに好ましい。強度の上限は特に限定されないが本発明で達し得る上限としては30.0cN/dtex程度である。なお本発明で言う強度とはJIS L1013(2010)記載の引張強さを指す。
また弾性率は400cN/dtex以上が好ましく、500cN/dtex以上がより好ましい。弾性率の上限は特に限定されないが、本発明で達し得る上限としては弾性率1200cN/dtex程度である。なお本発明で言う弾性率とはJIS L1013(2010)記載の初期引張抵抗度を指す。
強度、弾性率が高いことによりロープ、テンションメンバー等の補強用繊維、フィルター用メッシュ織物、スクリーン印刷用メッシュなどの用途に好適に使用できるほか、細繊度でも高い強力を発現させ得るため繊維材料の軽量化が達成でき、製織など高次加工工程での糸切れも抑制できる。
本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントの伸度は、1.0%以上であることが好ましく、2.0%以上がより好ましい。伸度が1.0%以上あることで繊維の衝撃吸収性が高まり、高次加工工程での工程通過性、取扱い性に優れる他、衝撃吸収性が高まるため耐摩耗性も高まる。なお、伸度の上限は特に限定されないが、本発明で達し得る上限としては10.0%程度である。本発明でいう伸度はJIS L1013(2010)記載の伸び率を指す。
次に、本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントの製造方法について一例を説明するが、製造方法はこれに限定されるものではなく公知の製造方法を採用することができる。
本発明に用いる液晶ポリエステルの製造方法は公知の製造方法に準じて製造でき、例えばp−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸などのヒドロキシカルボン酸およびハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ化合物、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルを製造する方法が好適に用いられる。さらにハイドロキノン等の芳香族ジヒドロキシ化合物の合計使用量とナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸の合計使用量は、実質的に等モルである。無水酢酸の使用量は、p−ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ハイドロキノン等のフェノール性水酸基の合計の1.12当量以下であることが好ましく、1.10当量以下であることがより好ましく、下限については1.0当量以上であることが好ましい。
本発明で用いる液晶ポリエステルを脱酢酸重縮合反応により製造する際には、液晶ポリエステルが溶融する温度で減圧下反応させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。例えば、所定量のヒドロキシカルボン酸および芳香族ジヒドロキシ化合物、芳香族ジカルボン酸、無水酢酸を攪拌翼、留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱し水酸基をアセチル化させた後、液晶性樹脂の溶融温度まで昇温し、減圧により重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。アセチル化させる条件は、通常130〜300℃の範囲、好ましくは135〜200℃の範囲で通常1〜6時間、好ましくは140〜180℃の範囲で2〜4時間反応させる。重縮合させる温度は、液晶ポリエステルの溶融温度、例えば、250〜350℃の範囲であり、好ましくは液晶ポリエステルポリマーの融点(Tm0)+10℃以上の温度である。重縮合させるときの減圧度は通常13.3〜2660Paであり、好ましくは1330Pa以下、より好ましくは665Pa以下である。なお、アセチル化と重縮合は同一の反応容器で連続して行っても良いが、アセチル化と重縮合を異なる反応容器で行っても良い。
得られたポリマーは、それが溶融する温度で反応容器内を例えば、およそ0.1±0.05MPaに加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口よりストランド状に吐出することができる。溶融重合法は均一なポリマーを製造するために有利な方法であり、ガス発生量がより少ない優れたポリマーを得ることができるため好ましい。
本発明に用いる液晶ポリエステルを製造する際に、固相重合法により重縮合反応を完了させることも可能である。例えば、液晶ポリエステルポリマーまたはオリゴマーを粉砕機で粉砕し、窒素気流下または減圧下、液晶ポリエステルポリマーの融点(Tm0)−5℃ 〜 融点(Tm0)−50℃(例えば、200〜300℃)の範囲で1〜50時間加熱し、所望の重合度まで重縮合し、反応を完了させる方法が挙げられる。
ただし紡糸においては、固相重合法により製造した液晶性樹脂をそのまま用いると、固相重合によって生じた高結晶化部分が未溶融で残り、紡糸パック圧の上昇や糸中の異物の原因となる可能性があるため、一度二軸押出機などで混練して(リペレタイズ)、高結晶化部分を完全に溶融することが好ましい。
上記液晶ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を必要に応じて使用することもできる。
本発明に用いる液晶ポリエステルポリマーの融点(Tm0)は、200〜400℃の範囲が好ましく、より好ましくは250〜380℃、さらに好ましくは280〜350℃である。このような高い融点を有することで繊維として耐熱性が優れる。繊維の高融点化を達成するためには、高融点の液晶ポリエステルポリマーを製糸するなどの方法があるが、特に高い強度、弾性率を有し、さらに長手方向の均一性に優れる繊維を得るためには溶融紡糸した繊維を固相重合することが好ましい。なお、融点(Tm0)は実施例記載の方法で測定される値を指す。
本発明に用いる液晶ポリエステルポリマーの溶融粘度は0.5〜200Pa・sが好ましく、より好ましくは1〜100Pa・sであり、さらに製糸安定性の向上の観点から5〜50Pa・sであることが紡糸速度を高めるうえでより好ましい。なお、本発明でいう溶融粘度は、融点(Tm0)+10℃の条件、および剪断速度1000(1/s)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
本発明に用いる液晶ポリエステルのポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、分子量と記載)は3.0万以上が好ましく、5.0万以上がより好ましい。分子量を3.0万以上とすることで紡糸温度において適切な粘度を持ち製糸性を高めることができ、分子量が高いほど得られる繊維の強度、伸度、弾性率は高まる。また分子量が高すぎると粘度が高くなり流動性が悪くなり、ついには流動しなくなるため分子量は25.0万未満が好ましい。なお、分子量は実施例記載の方法で測定される値を指す。
溶融紡糸において、液晶ポリエステルの溶融押出は公知の手法を用いることができるが、重合時に生成する秩序構造をなくすためにエクストルーダー型の押出機を用いることが好ましい。
本発明に用いる金属石鹸を押出機に連続的に供給する方法としては、一定速度、一定量で安定的に供給できる装置を用いることが好ましく、テーブルフィーダーによる供給方法、計量升が連続的に回転することで粉体を添加する容積計量式による供給方法、スクリューフィーダーによる供給方法など、本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントが得られる限りにおいて何れの方法でもよく、特に限定しないが粉体のフィーダーでの詰まりを抑制して、繊維中に均一に分散させるにはテーブルフィーダーによる供給方法や、重量を制御する重量計量式による供給方法とするのが好ましい。これは、量の変動も少なく、一定速度で安定的に供給できるためである。
押し出されたポリマーは配管を経由しギアポンプなど公知の計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、口金へと導かれる。このときポリマー配管から口金までの温度(紡糸温度)は液晶ポリエステルポリマーの融点以上、500℃以下とすることが好ましく、液晶ポリエステルポリマーの融点(Tm0)+10℃以上、400℃以下とすることがより好ましく、液晶ポリエステルポリマーの融点(Tm0)+20℃以上、370℃以下とすることがさらに好ましい。なお、ポリマー配管から口金までの温度をそれぞれ独立して調整することも可能である。この場合、口金に近い部位の温度をその上流側の温度より高くすることで吐出が安定する。
本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントを得るには、口金孔の孔径を小さくするとともに、ランド長(口金孔の孔径と同一の直管部の長さ)を長くすることが好ましい。ただし孔径が過度に小さいと孔の詰まりが発生し易くなるため直径0.03mm以上0.30mm以下が好ましく、0.05mm以上0.25mm以下がより好ましく、0.08mm以上0.20mm以下がさらに好ましい。ランド長は過度に長いと圧力損失が高くなるため、ランド長を孔径で除した商で定義されるL/Dは0.5以上3.0以下が好ましく0.8以上2.5以下がより好ましく、1.0以上2.2以下がさらに好ましい。また均一性を維持するために1つの口金の孔数は1000孔以下が好ましく、500孔以下がより好ましい。なお、口金孔の直上に位置する導入孔は直径が口金孔径の5倍以上のストレート孔とすることが圧力損失を高めない点で好ましい。導入孔と口金孔の接続部分はテーパーとすることが異常滞留を抑制する上で好ましいが、テーパー部分の長さはランド長の2倍以下とすることが圧力損失を高めず、流線を安定させる上で好ましい。また口金孔数は、本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントの単繊維数と同数である。
口金孔より吐出されたポリマーは保温、冷却領域を通過させ固化させた後、一定速度で回転するロール(ゴデットロール)により引き取られる。保温領域は、吐出されたポリマーの随伴気流によりポリマーが急激に冷却され品位悪化を発生させるため口金面を基準に0〜200mmとすることが好ましく、過度に長いと製糸性が悪くなるため口金面から400mmまでとすることが好ましい。保温領域は加熱手段を用いて雰囲気温度を高めることも可能であり、その温度範囲は100℃以上500℃以下が好ましく、200℃以上400℃以下がより好ましい。冷却は不活性ガス、空気、水蒸気等を用いることができるが、平行あるいは環状に噴き出す空気流を用いることが環境負荷を低くする点から好ましい。
引き取り速度は生産性、単糸繊度の低減のため300m/min以上が好ましく、500m/min以上がより好ましく、800m/min以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが曳糸性の点から3000m/min程度となる。
引き取り速度を吐出線速度で除した商で定義される紡糸ドラフトは1以上500以下とすることが好ましく、5以上100以下とすることがより好ましく、10以上50以下とすることがさらに好ましい。
溶融紡糸においてはポリマーの冷却固化から巻き取りまでの間に油剤を付与することが繊維の取り扱い性および高次工程通過性を向上させる上で好ましい。油剤は公知のものを使用できるが、高温での固相重合に耐え得るフッ素化合物を添加したポリシロキサン系(ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなど)のシリコーンオイルなどを主体とした油剤を用いることがより好ましい。
巻き取りは公知の巻き取り機を用いパーン、ドラム、コーンなどの形態のパッケージとすることができるが、生産性の観点から巻量を多く確保することができるドラム巻パッケージとすることが好ましい。ここでいうドラム巻パッケージとは、内層から外層まで略一定の巻幅Wで該マルチフィラメントを巻取りボビンに巻いたものである。ドラム巻パッケージのサイズは特に規定されるものではないが、パッケージ毎の巻量をできるだけ多く確保するラージパッケージ化の観点から、巻幅が200mm以上のものが好ましく、解舒性、ハンドリング性の観点から350mm以下のものが好ましい。
次に、溶融紡糸で得られた繊維は固相重合されることが好ましい。固相重合はパッケージ状、カセ状、トウ状(例えば、金属網等にのせて行う)、あるいはローラー間で連続的に糸条として処理することも可能であるが、設備が簡素化でき、生産性も向上できる点からパッケージ状で行うことが好ましい。
パッケージ状で固相重合を行う場合、単繊維繊度を細くした際には融着し易いので、これを防止するためには固相重合を行う際の繊維パッケージの巻密度が0.50g/cm3以上の繊維パッケージとしてボビン上に形成し、これを固相重合することが好ましい。ここで巻密度とは、パッケージ外形寸法と心材となるボビンの寸法から求められるパッケージの占有体積Vf(cm3)と繊維の重量Wf(g)からWf/Vfにより計算される値である。なお占有体積Vfは図1のパッケージの外形寸法A〜Dを実測し下式より計算することで求められる値であり、Wfは巻取前後での重量差により実測される値である。
図1は、本発明の巻取パッケージの外形寸法を示す図であり、パッケージにおいて最大径を有する部分の軸方向長さ(巻き終わりのトラバース幅)をA、糸条が巻かれたテーパー開始位置の軸方向長さ(巻き始めのトラバース幅)をB、ボビンの直径をC、パッケージの最大直径をDとする。なお、図2に示されるようなスクエアエンド状パッケージやドラム状パッケージなど、パッケージ端部にテーパー部が存在しない場合、B=Aとして計算すればよい。巻密度は過度に小さいとパッケージにおける張力が不足するため繊維間の接点面積が大きくなり融着が増大するだけでなく、パッケージが巻き崩れるため0.50g/cm3以上とすることが好ましい。また上限は特に制限されないが、巻密度が過度に大きいとパッケージの内層における繊維間の密着力が大きくなり接点での融着が増大するため、1.50g/cm3以下とすることが好ましい。
Vf:占有体積(cm3)
A〜D:図1のパッケージの外形寸法
A〜D:図1のパッケージの外形寸法
このような巻密度のパッケージは、生産効率が良く、工程の簡略化が可能であるため直接紡糸延伸法で形成することが好ましいが、溶融紡糸後一旦巻き取ったパッケージを巻き返して形成しても良い。パッケージ形状を整え巻密度制御するためには通常用いられるコンタクトロール等を用いず、繊維パッケージ表面を非接触の状態で巻き取ることや、溶融紡出した原糸を調速ロールを介さず直接、速度制御された巻取機で巻き取ることも有効である。これらの場合、パッケージ形状を整えるためには、巻取速度を3000m/分以下、特に2000m/分以下とすることが好ましい。
また融着を回避し安定したパッケージを形成するためにはワインド比、綾角を制御することが好ましい。ここで言うワインド比とは前述の通り、スピンドル回転数Nsp[rpm]とトラバース周波数Ntr[cpm]との比Nsp/Ntrで表され、綾角とは図2の1で指示する角度である。
図2は、本発明の巻取パッケージ形成時の綾角を示す図であり、パッケージ22表面に巻き取られた糸条とパッケージ22の回転方向とによって規定される角度を綾角21とし、パッケージ表面の回転速度とトラバース速度によって決定される。
本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントを得るためには、ワインド比を2以上15以下にすることが好ましく、より好ましくは3以上10以下である。また、綾角を3度以上20度以下にすることが好ましく、より好ましくは4.5度以上10度以下である。
該繊維パッケージを形成するために用いられるボビンは円筒形状のものであればいかなるものでも良く、繊維パッケージとして巻き取る際に巻取機に取り付けこれを回転させることで繊維を巻き取り、パッケージを形成する。固相重合に際しては繊維パッケージをボビンと一体で処理することもできるが、繊維パッケージからボビンのみを抜き取って処理することもできる。ボビンに巻いたまま処理する場合、該ボビンは固相重合温度に耐える必要があり、アルミや真鍮、鉄、ステンレスなどの金属製であることが好ましい。またこの場合、ボビンには多数の穴の空いていることが固相重合を効率的に行えるため好ましい。また繊維パッケージからボビンを抜き取って処理する場合には、ボビン外層に外皮を装着しておくことが好ましい。また、いずれの場合にもボビンの外層にはクッション材を巻き付け、その上に液晶ポリエステル溶融紡糸繊維を巻き取っていくことが好ましい。クッション材の材質は、アラミド繊維などの有機繊維または金属繊維からなるフェルトが好ましく、厚みは0.1mm以上、20mm以下が好ましい。前述の外皮を該クッション材で代用することもできる。
該繊維パッケージの繊維重量は巻き密度が本発明の範囲内となるものであればいかなる重量でも良いが、生産性を考慮すると0.01kg以上、11kg以下が好ましい範囲である。なお、糸長としては1万m以上200万m以下が好ましい範囲である。
固相重合時の融着を防ぐため、繊維表面に油分を付着させることは好ましい実施形態である。これら成分の付着は溶融紡糸から巻き取りまでの間に行っても良いが、付着効率を高めるためには巻き返しの際に行う、あるいは溶融紡糸で少量を付着させ、巻き返しの際にさらに追加することが好ましい。
油分付着方法はガイド給油でも良いが、総繊度の細い繊維に均一に付着させるためには金属製あるいはセラミック製のキスロール(オイリングロール)による付着が好ましい。油分の成分としては固相重合での高温熱処理で揮発させないため耐熱性が高い方が良く、公知の無機粒子、フッ素系化合物、シロキサン系化合物(ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサンなど)およびこれらの混合物などが好ましい。本発明における公知の無機粒子とは、例として鉱物、水酸化マグネシウム等の金属水酸化物、シリカやアルミナ等の金属酸化物、炭酸カルシウムや炭酸バリウム等の炭酸塩化物、硫酸カルシウムや硫酸バリウム等の硫酸塩化合物の他、カーボンブラック等が挙げられる。
また、これらの成分は固体付着、油分の直接塗布でも構わないが付着量を適正化しつつ均一塗布するためにはエマルジョン塗布が好ましく、安全性の点から水エマルジョンが特に好ましい。したがって成分としては水溶性あるいは水エマルジョンを形成しやすいことが望ましく、中でもシロキサン系化合物の水エマルジョンを主体とし、これにシリカやケイ酸塩を添加した混合油剤が固相重合条件下において不活性であり、固相重合での融着防止効果に加え、易滑性にも効果を示すため好ましい。ケイ酸塩を用いる場合は、特に層状構造を持つフィロケイ酸塩が好ましい。なおフィロケイ酸塩としては、カオリナイト、ハロイ石、蛇文石、珪ニッケル鉱、スメクタイト族、葉ろう石、滑石、雲母などが挙げられるが、これらの中でも入手の容易性を考慮して滑石、雲母を用いることが最も好ましい。
繊維への油分の付着量は融着抑制のためには多い方が好ましく、繊維全体を100重量%としたときに0.5重量%以上が好ましく、1.0重量%以上がより好ましい。一方、多すぎると繊維がべたつきハンドリングを悪化させる他、後工程で工程通過性を悪化させるため10.0重量%以下が好ましく、8.0重量%以下がより好ましく、6.0重量%以下が特に好ましい。なお繊維への油分付着量は実施例に記載した方法により求められる値を指す。
固相重合は窒素等の不活性ガス雰囲気中や、空気のような酸素含有の活性ガス雰囲気中または減圧下で行うことが可能であるが、設備の簡素化および繊維あるいは付着物の酸化防止のため窒素雰囲気下で行うことが好ましい。この際、固相重合の雰囲気は露点が−40℃以下の低湿気体が好ましい。
固相重合温度は、固相重合に供する液晶ポリエステル繊維の融点(Tm1)に対し、最高到達温度が液晶ポリエステル繊維の融点(Tm1)−80℃以上であることが好ましい。このような融点近傍の高温とすることで固相重合が速やかに進行し、繊維の強度を向上させることができる。また最高到達温度はTm1未満とすることが融着防止のために好ましい。また固相重合の進行と共に液晶ポリエステル繊維の融点は上昇するため、固相重合温度を固相重合の進行状態に応じて固相重合に供する液晶ポリエステルフィラメントの融点(Tm1)+100℃程度まで高めることができる。なお固相重合温度を時間に対し段階的にあるいは連続的に高めることは、融着を防ぐと共に固相重合の時間効率を高めることができ、より好ましい。
固相重合時間は、繊維の強度、弾性率、融点を十分に高くするために最高到達温度で5時間以上とすることが好ましく、10時間以上がより好ましい。上限は特に制限されないが強度、弾性率、融点増加の効果は経過時間と共に飽和するため100時間程度で十分であり、生産性を高めるためには短時間が好ましく、50時間程度で十分である。
固相重合後のパッケージは運搬効率を高めるために固相重合後のパッケージを再度巻き返して巻き密度を高めることが好ましい。このとき、繊維を固相重合パッケージから解舒する際には解舒による固相重合パッケージの崩れを防ぎ、さらに軽微な融着を剥がす際のフィブリル化を抑制するために固相重合パッケージを回転させながら、回転軸と垂直方向(繊維周回方向)に糸を解舒する、いわゆる横取りにより解舒することが好ましく、さらに固相重合パッケージの回転は自由回転ではなく積極駆動により回転させることがパッケージからの糸離れ張力を低減させフィブリル化をより抑制できる点で好ましい。
ここで、液晶ポリエステルマルチフィラメントパッケージを形成するためには、パーン、ドラム、コーンなどの形態のパッケージとすることができるが、生産性の観点から巻量を多く確保することができるドラム巻取とすることが好ましい。
かくして得られた本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントは、フィラメントが一様に高強度・高弾性率、高耐熱の特徴を有しており、一般産業用資材、土木・建築資材、スポーツ用途、防護衣、ゴム補強資材、電気材料(特に、テンションメンバーとして)、音響材料、一般衣料等の分野で広く用いられる。有効な用途としては、ロープ、ネット、魚網、コンピューターリボン、プリント基板用基布、抄紙用のカンバス、スクリーン紗、フィルター、エアーバッグ、飛行船、ドーム用等の基布、ライダースーツ、釣糸、各種ライン(ヨット、パラグライダー、気球、凧糸)、ブラインドコード、網戸用支持コード、自動車や航空機内各種コード、電気製品やロボットの力伝達コード等が挙げられる。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明する。なお、明細書本文および実施例に用いた特性の定義および各物性の測定、算出法は次の通りである。
[ポリスチレン換算の重量平均分子量(分子量)]
溶媒としてペンタフルオロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)の混合溶媒を用い、溶媒中の液晶ポリエステルの濃度が0.06±0.02重量/体積%となるように溶解させGPC測定用試料とした。なお、室温24時間の放置でも不溶物がある場合は、さらに24時間静置し、上澄み液を試料とした。これを、Waters社製GPC測定装置を用いて測定し、ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。同様の操作を2回行い、2回の平均値を重量平均分子量(Mw)とした。
カラム:ShodexK−806M 2本、K−802 1本
検出器:示差屈折率検出器RI(2414型)
温度 :23±2℃
流速 :0.8mL/分
注入量:200μL
溶媒としてペンタフルオロフェノール/クロロホルム=35/65(重量比)の混合溶媒を用い、溶媒中の液晶ポリエステルの濃度が0.06±0.02重量/体積%となるように溶解させGPC測定用試料とした。なお、室温24時間の放置でも不溶物がある場合は、さらに24時間静置し、上澄み液を試料とした。これを、Waters社製GPC測定装置を用いて測定し、ポリスチレン換算により重量平均分子量を求めた。同様の操作を2回行い、2回の平均値を重量平均分子量(Mw)とした。
カラム:ShodexK−806M 2本、K−802 1本
検出器:示差屈折率検出器RI(2414型)
温度 :23±2℃
流速 :0.8mL/分
注入量:200μL
[融点(Tm0、Tm1)]
TA instruments社製DSC2920により示差熱量測定を行い、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度を液晶ポリエステルマルチフィラメントの融点とし、同じ装置を用いて、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に出現する吸熱ピークの観測後、吸熱ピーク+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で50℃まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度を液晶ポリエステルポリマーの融点とした。それぞれ同様の操作を2回行い、2回の平均値を液晶ポリエステルマルチフィラメントの融点Tm1(℃)、液晶ポリエステルポリマーの融点Tm0(℃)とした。
TA instruments社製DSC2920により示差熱量測定を行い、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度を液晶ポリエステルマルチフィラメントの融点とし、同じ装置を用いて、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に出現する吸熱ピークの観測後、吸熱ピーク+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で50℃まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度を液晶ポリエステルポリマーの融点とした。それぞれ同様の操作を2回行い、2回の平均値を液晶ポリエステルマルチフィラメントの融点Tm1(℃)、液晶ポリエステルポリマーの融点Tm0(℃)とした。
[総繊度・単繊維繊度]
JIS L1013(2010)8.3.1a)A法に基づき、中山電気産業(株)社製検尺機を用いて繊維を100mカセ取りし、その重量(g)を100倍して1水準当たり2回の測定を行い、平均値を得られた液晶ポリエステルマルチフィラメントの総繊度(dtex)とした。これを単繊維数で除した商を単繊維繊度(dtex)とした。
JIS L1013(2010)8.3.1a)A法に基づき、中山電気産業(株)社製検尺機を用いて繊維を100mカセ取りし、その重量(g)を100倍して1水準当たり2回の測定を行い、平均値を得られた液晶ポリエステルマルチフィラメントの総繊度(dtex)とした。これを単繊維数で除した商を単繊維繊度(dtex)とした。
[強度・伸度・弾性率]
試料を気温20℃、湿度65%の温調室において、オリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L1013(2010)8.5.1標準試験時に示される定速伸長条件、即ち、試料長250mm、つまり、掴み間隔250mm、引張速度300mm/分、雰囲気温度20℃、湿度65%RHで測定した。1水準当たり、試験回数は10回で測定し、平均値を強度(cN/dtex)、伸度(%)、弾性率(cN/dtex)とした。なお、伸度は荷重−伸長曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
試料を気温20℃、湿度65%の温調室において、オリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L1013(2010)8.5.1標準試験時に示される定速伸長条件、即ち、試料長250mm、つまり、掴み間隔250mm、引張速度300mm/分、雰囲気温度20℃、湿度65%RHで測定した。1水準当たり、試験回数は10回で測定し、平均値を強度(cN/dtex)、伸度(%)、弾性率(cN/dtex)とした。なお、伸度は荷重−伸長曲線における最大強力を示した点の伸びから求めた。
[単繊維強度変動値]
液晶ポリエステルマルチフィラメントから任意に単繊維50本(単繊維数が50本未満の場合は全ての単繊維)を取り出し、JIS L1013(2010)8.3.1a)A法に基づき、中山電気産業(株)社製検尺機にてそれぞれの繊維を10mカセ取りし、その重量(g)を1000倍して単繊維繊度(dtex)を算出した。その後、試料を気温20℃、湿度65%の温調室において、オリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L1013(2010)8.5.1標準試験時に示される定速伸長条件、即ち、試料長250mm、つまり、掴み間隔250mm、引張速度300mm/分、雰囲気温度20℃、湿度65%RHで測定し、それぞれの強度(cN/dtex)を用いて下式より単繊維強度変動値を算出した。
液晶ポリエステルマルチフィラメントから任意に単繊維50本(単繊維数が50本未満の場合は全ての単繊維)を取り出し、JIS L1013(2010)8.3.1a)A法に基づき、中山電気産業(株)社製検尺機にてそれぞれの繊維を10mカセ取りし、その重量(g)を1000倍して単繊維繊度(dtex)を算出した。その後、試料を気温20℃、湿度65%の温調室において、オリエンテック(株)社製“テンシロン”(TENSILON)UCT−100でJIS L1013(2010)8.5.1標準試験時に示される定速伸長条件、即ち、試料長250mm、つまり、掴み間隔250mm、引張速度300mm/分、雰囲気温度20℃、湿度65%RHで測定し、それぞれの強度(cN/dtex)を用いて下式より単繊維強度変動値を算出した。
xi:個々値(cN/dtex)
xave:個々値(cN/dtex)の和を総単繊維数で除した商(cN/dtex)
n:測定に用いた単繊維の数
xave:個々値(cN/dtex)の和を総単繊維数で除した商(cN/dtex)
n:測定に用いた単繊維の数
[工程通過性]
生産開始後ガイド、ロール類の交換を行わず、連続製糸によって得られた24時間後と240時間後の液晶ポリエステルマルチフィラメントについて、500m/分の速度で解舒しつつ、大広(株)製光感知式毛羽検知装置で糸条に含まれる毛羽(単糸破断)を検知し、糸条の長さ10万m当たりの毛羽数から以下の基準により評価した。
毛羽数(個/10万m)
◎ : 0〜1
○ : 1〜5
△ : 5〜50
× : 50以上。
生産開始後ガイド、ロール類の交換を行わず、連続製糸によって得られた24時間後と240時間後の液晶ポリエステルマルチフィラメントについて、500m/分の速度で解舒しつつ、大広(株)製光感知式毛羽検知装置で糸条に含まれる毛羽(単糸破断)を検知し、糸条の長さ10万m当たりの毛羽数から以下の基準により評価した。
毛羽数(個/10万m)
◎ : 0〜1
○ : 1〜5
△ : 5〜50
× : 50以上。
[実施例1]
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327重量部、イソフタル酸157重量部、テレフタル酸292重量部、ハイドロキノン89重量部および無水酢酸1433重量部(フェノール性水酸基合計の1.08当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、330℃まで4時間で昇温した。
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327重量部、イソフタル酸157重量部、テレフタル酸292重量部、ハイドロキノン89重量部および無水酢酸1433重量部(フェノール性水酸基合計の1.08当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、330℃まで4時間で昇温した。
重合温度を330℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、所定トルク(15kgcm)に到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
この液晶ポリエステルはp−ヒドロキシ安息香酸単位が全体の54mol%、4,4’−ジヒドロキシビフェニル単位が16mol%、イソフタル酸単位が8mol%、テレフタル酸単位が15mol%、ハイドロキノン単位が7mol%からなり、融点は318℃であり、高化式フローテスターを用いて温度328℃、剪断速度1000/秒で測定した溶融粘度が16Pa・秒であった。また、重合平均分子量は91000であった。
上記方法で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、乾燥後の液晶ポリエステルと金属石鹸としてステアリン酸リチウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.05重量%となるようにテーブルフィーダーで混合し、単軸エクストルーダー型押出機(ヒーター温度:供給部290℃、圧縮部340℃、計量部340℃)にて溶融押し出しし、ギアポンプで計量しつつ紡糸パックにポリマーを供給した。このときのエクストルーダー出から紡糸パックまでの紡糸温度は340℃とした。紡糸パックでは15ミクロンカットのフィルターを用いてポリマーを濾過し、孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を72個有する口金より吐出量264g/分(単孔あたり3.67g/分)でポリマーを吐出した。
吐出したポリマーは130mmの保温領域(ヒーター温度320℃)を通過させた後、環状冷却風により糸条の外側から冷却し固化させ(40℃の冷風を速度30m/分で吹き付ける)、72フィラメントともに油剤ロールにて油剤(ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製「SH200−350cSt」)が5.0重量%の水エマルジョン)を付与し、糸条を収束させて1200m/分の第1ゴデットロール(以下、1FR)に引き取った後、連続して巻取機にて穴あきボビンに巻取り、液晶ポリエステルマルチフィラメントパッケージ(ドラム巻パッケージ)を得た。この際、巻取速度は1FRと等速の1200m/分、パッケージ形態はワインド比8.7、綾角7度、巻き密度0.70g/cm3、巻量3.0kgとした。
ここで得られた固相重合前の繊維物性値を表1に記載した。
ここで得られた紡糸繊維パッケージを密閉型オーブンを用いて、室温から240℃までは約2時間で昇温し、240℃にて3時間保持した後、4℃/時間で295℃まで昇温し、更に295℃で15時間保持する条件にて固相重合を行った。なお雰囲気は除湿窒素を流量50NL/分にて供給し、炉内が加圧にならないよう排気口より排気させた。
次いで得られた固相重合後の液晶ポリエステルマルチフィラメントパッケージを巻取機(神津製作所社製:ET型調速巻取機)にて巻き返しドラム形状に巻き取った。この時の繊維物性値を表1に記載した。
[実施例2]
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと、孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を48個有する口金より吐出量55.0g/分(単孔あたり1.15g/分)でポリマーを吐出したこと以外は実施例1と同様に行った。
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと、孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を48個有する口金より吐出量55.0g/分(単孔あたり1.15g/分)でポリマーを吐出したこと以外は実施例1と同様に行った。
[実施例3]
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に、p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸946重量部(フェノ−ル性水酸基合計の1.03モル当量)を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、325℃まで4時間で昇温した。
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に、p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸946重量部(フェノ−ル性水酸基合計の1.03モル当量)を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、325℃まで4時間で昇温した。
重合温度を325℃に保持し、1.5時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に20分間反応を続け、所定トルクに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
この液晶ポリエステルは、p−ヒドロキシ安息香酸単位が全体の73mol%、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸単位が27mol%からなり、融点は283℃であり、高化式フローテスターを用い、温度293℃、剪断速度1000/秒で測定した溶融粘度が32Pa・秒であった。また、分子量は230000であった。
上記方法で得た液晶ポリエステルを用い、紡糸温度を315℃とすること、金属石鹸としてステアリン酸リチウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.01重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと、孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を72個有する口金より吐出量55.0g/分(単孔あたり0.76g/分)でポリマーを吐出したこと以外は実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行った。
ここで得られた紡糸繊維を密閉型オーブンを用いて、室温から240℃までは約2時間で昇温し、240℃にて3時間保持した後、4℃/時間で265℃まで昇温し、更に265℃で15時間保持する条件にて固相重合を行った。なお雰囲気は除湿窒素を流量50NL/分にて供給し、炉内が加圧にならないよう排気口より排気させた。
次いで得られた液晶ポリエステルマルチフィラメントパッケージを実施例1と同様の方法で巻き取った。
[実施例4]
金属石鹸としてステアリン酸リチウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.05重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと、孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を144個有する口金より吐出量120.0g/分(単孔あたり0.76g/分)でポリマーを吐出したこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
金属石鹸としてステアリン酸リチウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.05重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと、孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を144個有する口金より吐出量120.0g/分(単孔あたり0.76g/分)でポリマーを吐出したこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
[実施例5]
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.5重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと、孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を288個有する口金より吐出量360.0g/分(単孔あたり0.76g/分)でポリマーを吐出したこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.5重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと、孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を288個有する口金より吐出量360.0g/分(単孔あたり0.76g/分)でポリマーを吐出したこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
[実施例6]
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.1重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.1重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
[実施例7]
金属石鹸としてステアリン酸亜鉛(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例4と同様の方法で行った。
金属石鹸としてステアリン酸亜鉛(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例4と同様の方法で行った。
[実施例8]
金属石鹸としてリシノール酸バリウム(日東化成工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例4と同様の方法で行った。
金属石鹸としてリシノール酸バリウム(日東化成工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例4と同様の方法で行った。
[実施例9]
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.1重量%となるように液晶ポリエステルに添加し単軸エクストルーダー型押出機にて、表1の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに0.1重量%となるように液晶ポリエステルに添加し単軸エクストルーダー型押出機にて、表1の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
[比較例1]
実施例1で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、金属石鹸を添加することなく単軸エクストルーダー型押出機にて、表2の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
実施例1で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、金属石鹸を添加することなく単軸エクストルーダー型押出機にて、表2の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
[比較例2〜3]
実施例1で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、金属石鹸を添加することなく単軸エクストルーダー型押出機にて、表2の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
実施例1で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、金属石鹸を添加することなく単軸エクストルーダー型押出機にて、表2の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
[比較例4]
実施例3で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、金属石鹸を添加することなく単軸エクストルーダー型押出機にて、表2の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
実施例3で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、金属石鹸を添加することなく単軸エクストルーダー型押出機にて、表2の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
[比較例5]
実施例3で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、金属石鹸を添加することなく単軸エクストルーダー型押出機にて、表2の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
実施例3で得た液晶ポリエステルを用い、130℃、15時間の真空乾燥を行った後、金属石鹸を添加することなく単軸エクストルーダー型押出機にて、表2の総繊度、単繊維数となる条件で溶融押し出ししたこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
[比較例6]
金属石鹸としてステアリン酸リチウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1.3重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
金属石鹸としてステアリン酸リチウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1.3重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例1と同様の方法で行った。
[比較例7]
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1.9重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
金属石鹸としてステアリン酸バリウム(勝田化工業社製)を繊維全体の重量を100重量%としたときに1.9重量%となるように液晶ポリエステルに添加したこと以外は実施例3と同様の方法で行った。
[参考例1]
孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を1個有する口金より吐出量3.67g/分でポリマーを吐出したこと、パッケージ形態を巻量250gとし、液晶ポリエステルモノフィラメントとしたこと以外は実施例1と同様に行った。
孔径0.13mmφ、ランド長0.26mmの孔を1個有する口金より吐出量3.67g/分でポリマーを吐出したこと、パッケージ形態を巻量250gとし、液晶ポリエステルモノフィラメントとしたこと以外は実施例1と同様に行った。
[参考例2]
金属石鹸を添加していないこと以外は参考例1と同様に行った。
金属石鹸を添加していないこと以外は参考例1と同様に行った。
[実施例1〜9、比較例1〜7、参考例1〜2]
実施例1〜9、比較例1〜7および参考例1〜2で得られた液晶ポリエステルマルチフィラメントおよび液晶ポリエステルモノフィラメントを用いて、分子量、融点、総繊度、単繊維繊度、強度、伸度、弾性率、単繊維強度変動値、工程通過性を評価した結果を表1および2に示す。
実施例1〜9、比較例1〜7および参考例1〜2で得られた液晶ポリエステルマルチフィラメントおよび液晶ポリエステルモノフィラメントを用いて、分子量、融点、総繊度、単繊維繊度、強度、伸度、弾性率、単繊維強度変動値、工程通過性を評価した結果を表1および2に示す。
表1〜2の結果から明らかなように、本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントではない比較例1〜5は、単繊維が有する強度、弾性率に差があるため、マルチフィラメントでは参考例1の液晶ポリエステルモノフィラメントの如き強度、弾性率を十分に発現する前に破断してしまうという問題がある。さらに、細糸化したものが毛羽となり、工程通過性に劣るという問題がある。また、比較例6〜7は、金属石鹸の添加量が多いことで、そもそも参考例1の液晶ポリエステルモノフィラメントの如き強度が得られないという問題がある。
これに対し、本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントは、マルチフィラメントを構成する単繊維は強度、弾性率が一様であるため、モノフィラメントの如き強度、弾性率を発現し、さらに細糸化の問題がないため毛羽に起因する問題が改善され高次加工の工程通過性に優れている。
なお、参考例1と比較例1〜5より、総繊度が比較的大きい場合、また単繊維数が大きくなると、液晶ポリエステルマルチフィラメントの強度低下が大きくなるが、実施例に示されるとおり、金属石鹸の添加によりその強度が向上し、総繊度が比較的大きい場合、また、単繊維数が比較的い大きい場合に本発明によるその向上効果は特に顕著である。
本発明の液晶ポリエステルマルチフィラメントは、一般産業用資材、土木・建築資材、スポーツ用途、防護衣、ゴム補強資材、電気材料(特に、テンションメンバーとして)、音響材料、一般衣料等の分野で広く用いられ、有効な用途としては、ロープ、ネット、魚網、コンピューターリボン、プリント基板用基布、抄紙用のカンバス、スクリーン紗、フィルター、エアーバッグ、飛行船、ドーム用等の基布、ライダースーツ、釣糸、各種ライン(ヨット、パラグライダー、気球、凧糸)、ブラインドコード、網戸用支持コード、自動車や航空機内各種コード、電気製品やロボットの力伝達コード等が挙げられ、特に有効な用途として工業資材用織物等に用いるモノフィラメントが挙げられ、中でも高強度、高弾性率、太繊度化の要求が強いロープ、魚網、スリングにおいて寄与するところが大きい。
A.巻き終わりのトラバース幅(cm)
B.巻き始めのトラバース幅(cm)
C.ボビンの直径(cm)
D.パッケージの直径(cm)
21.綾角
22.パッケージ
B.巻き始めのトラバース幅(cm)
C.ボビンの直径(cm)
D.パッケージの直径(cm)
21.綾角
22.パッケージ
Claims (3)
- 繊維全体の重量を100重量%としたときに金属石鹸を0.01〜1重量%含む液晶ポリエステルで構成されることを特徴とする液晶ポリエステルマルチフィラメント。
- 単繊維繊度が0.1〜100dtexの範囲であることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステルマルチフィラメント。
- 単繊維数が30〜1000本の範囲であることを特徴とする請求項2記載の液晶ポリエステルマルチフィラメント。
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- 2011-12-27 JP JP2011285997A patent/JP2013133576A/ja active Pending
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