JP2019147681A - 高強度高耐久性ラウンドスリング - Google Patents

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千絵子 川俣
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義嗣 船津
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Abstract

【課題】高強度かつ高い耐久性を両立させた繊維からなるラウンドスリングを提供する。【解決手段】単糸の直径が25μm以上40μm以下、強度20cN/dtex以上の合成繊維からなるかせを芯体としたラウンドスリング。【選択図】なし

Description

本発明は高強度で耐久性に優れるラウンドスリングに関するものである。
重量物の取り扱いを繰返し行うために、例えば、港湾で搬送される貨物の荷積みや荷下ろしには従来ワイヤーロープが使用されていた。しかしながら、ワイヤーロープは鋼線で構成されるため、そのものの重量が重く作業者の負担が大きく作業性が悪いといった課題があった。また、磨耗で切れて突き出した鋼線により作業者が負傷する懸念があった。このため、近年の合成繊維の高強度化に伴い、より軽量でしなやかな繊維製のスリングがワイヤーロープの代わりとして使われるケースが増えている。
繊維製のスリングにおいては、芯となる繊維の強度と使用本数によってスリングの耐荷重が決まる。吊荷の中でも、特に重量が重い吊荷向けのスリングを作成するためには、合成繊維の中でも特に強度が20cN/dtexを超える高強度繊維が好適に用いられる。高強度繊維の例としては、芳香族ポリアミド繊維、パラフェニレンビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、芳香族ポリエステル繊維などが挙げられる。
これら高強度繊維からなるスリングはワイヤーロープに比べて重量が約1/2と軽量であることに加え、ワイヤーロープに匹敵する耐荷重を有し、作業者の作業性と安全性の向上に貢献している。一方で、高強度繊維はその高度な分子鎖の配列に由来して、折り曲げにより繊維が座屈し、著しい強力低下が起きるという特徴も有する。このため、吊荷の縁が角張っている場合には、繰返しの使用時に著しい強力低下が起きるといった課題を有していた。このため、高強度繊維からなるスリングは吊荷の種類によっては適用が困難であり、その使用は限定的であった。
上記課題に対して、スリングと吊り荷の間に保護パッドを用いる手法が使われている。しかし、この方法では手作業により保護パッドを適切な位置に配置する必要があり、単位時間あたりの平均吊り上げ回数が大幅に低下してしまうといった欠点があった。また、適切な位置に配置されなかった場合や使用中に保護パッドがずれた場合は繊維が大きく損傷する懸念があった。このため、港湾での貨物の荷積みおよび荷下ろしなど繰返し行う作業には向かず、車両や建造物の吊り上げなど繰返し使用を伴わない吊り上げ用途に使用が限定されていた。
また、超高分子量ポリエチレンからなる保護カバーを使用し、繊維スリングの耐久性を向上する技術も公知である(特許文献1および2参照)。
特表2009−520659号公報(第2、8頁) 特表2011−518964号公報(第2頁)
しかしながら、該保護カバーは主に吊り上げ時の保護カバー生地の耐磨耗を改善する技術であり、芯体自体の耐久性を向上する技術ではなかった。このため、芯体の合成繊維の座屈を避けるためには、芯体の曲率半径を大きくする目的で保護カバーの厚みを厚くする必要があり、実施例においても4.8mmと分厚い織物を使用している。このような保護カバーを使用したスリングは直径が太くなるために、金型の吊り上げなどボルトにスリングを通す作業ではボルトの規格にあわず適用が困難となるほか、作業性が低下するといったデメリットがあった。
このように繊維スリングは作業者の安全確保および作業性向上の観点から、ワイヤーロープスリング代替として有望であるものの、従来技術の範囲ではその用途は限定的であった。このため、保護パッドや保護カバーによらない、高強度かつ高い耐久性を両立する繊維スリングの開発が望まれていた。
本発明の課題は、高強度かつ高い耐久性を両立する繊維スリングを提供することにある。
本願発明者らは上記課題に対し、特定の直径を有する高強度繊維を用いることで、高強度と優れた耐久性を両立する繊維スリングが得られることを見出し、本発明を得るに至った。すなわち前記した本発明の課題は以下の手段により達成される。
単糸の直径が25μm以上40μm以下、強度20cN/dtex以上の合成繊維からなるかせを芯体としたラウンドスリング。

本発明のラウンドスリングは高い強度と耐久性を両立する。このため、荷役作業に用いられるワイヤーロープ代替として好適に用いることができる。
以下、本発明のラウンドスリング(以下、スリングと略す)について詳細に説明する。
本発明におけるスリングは、単糸の直径が25μm以上40μm以下、強度20cN/dtex以上の合成繊維からなるかせを芯体として用いることを特徴とする。
本発明の合成繊維とは、多数のフィラメントで構成されるマルチフィラメントを指す。
本発明における単糸とは、合成繊維を構成するフィラメント1本のことであり、スリングを構成する繊維を分繊した際の最小の単位を示す。なお、ラウンドスリングの用語で撚糸前のマルチフィラメントを単糸と呼ぶことがあるが(JIS B 8811(2015)9.1項)、本願でいう単糸とは、このマルチフィラメントをさらに1本1本に分繊したものを指す。
最大使用荷重(Working Load Limits、WLL)が大きい高強力スリングを得る手法としては、芯体の合成繊維の周回数を増やす方法と合成繊維そのものの強度を上げる方法がある。芯体の周回数を増やす場合は、出来上がるスリングの直径が太くなるため作業性の低下が免れない。各種合成繊維の中でも、高強度繊維と呼ばれる強度20cN/dte以上の高強度繊維を用いることで芯体の周回数を減らし、より細いスリングを作成することが可能となる。なお、合成繊維における強度の上限としては40cN/dtex程度である。
合成繊維の伸度は吊り上げ時の衝撃を吸収すると共に、スリングの変形を防ぐ観点から2%以上、5%以下が好ましい。
合成繊維の弾性率は吊り上げ時のスリングの変形量を抑え、ずれによる吊荷の落下を防止する観点で800cN/dtex以上、より好ましくは900cN/dtex以上が好ましい。
上述の単糸直径および強度を発現する繊維であればポリマー種は特に限定されないが、中でも高い強度を示す繊維として、芳香族ポリアミド繊維、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール繊維、超高分子量ポリエチレン繊維、液晶ポリエステル繊維などが挙げられる。
中でも、表面布との摩擦による溶断や糸切れを抑制し、雨天時や水辺での作業における水濡れによる強度低下を防ぎ、高い耐久性を維持する観点から、液晶ポリエステル繊維を用いることが好ましい。
液晶ポリエステル繊維とは液晶ポリエステルを溶融紡糸することで得られたフィラメント状の繊維を指す。液晶ポリエステルとしては、例えば(i)芳香族オキシカルボン酸の重合物、(ii)芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオールまたは脂肪族ジオールから選択されたジオールとの重合物、および(iii)前記の(i)と前記の(ii)の共重合物等が挙げられ、中でも芳香族のみで構成された重合物が好ましい。芳香族のみで構成された重合物は、繊維にした際に優れた強度および弾性率を発現する。
ここで、芳香族オキシカルボン酸としては、例としてヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸等、またはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体等が挙げられる。
また、芳香族ジカルボン酸としては、例としてテレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸等、またはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体等が挙げられる。
更に、芳香族ジオールとしては、例としてヒドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール等、またはこれらのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体等が挙げられ、脂肪族ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。
本発明に用いる液晶ポリエステルの特に好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸成分と4,4´−ジヒドロキシビフェニル成分とイソフタル酸成分とテレフタル酸成分とヒドロキノン成分が共重合された液晶ポリエステルが挙げられる。
上記に示すような組み合わせの液晶ポリエステルは分子鎖の直線性が高く、その繊維は高い弾性率を発現する。このため、得られるスリングは荷揚げの際の伸びが抑制され、積み荷の位置ずれや傾き抑制できるため、作業の安全性が高まる。
上述のような20cN/dtex以上の高強度繊維においては、繊維を構成する分子鎖は液晶のように繊維軸方向に並んだ構造をとる。このような構造に由来して繊維の高い引っ張り強度と曲げ剛性が発現する。一方で、繊維断面方向への圧縮には弱く、高強度繊維を曲げると座屈が起きやすく、座屈による強度低下が免れない。
本発明者らは鋭意検討の末、高強度繊維の中でも上述の特定範囲の単糸直径のものを使用することで繊維スリングの耐久性を著しく改善し得ることを見出した。
一般に、合成繊維の単糸直径が細くなると繊維の曲げモーメントが小さくなる。マルチフィラメントの総繊度を一定として単糸直径を変化させた場合、直径が細くなるにつれて繊維はしなやかに曲がるようになる。単糸直径を40μm以下とすることで、スリングで荷物を吊る際の繊維の座屈を防ぎ、高い耐久性を発現することが可能となる。
一方で、単糸の直径を細くしすぎた場合も、耐久性が低下することが明らかになった。その原因は推定になるが、芯体を構成する単糸の強力が低くなるため吊り上げ時の吊荷との摩擦により単糸の糸切れが頻発し、結果として芯体全体の強力(耐荷重)の低下が発生すると推定される。単糸強度が同一の場合、単糸の強力は単糸の直径に比例する。単糸の直径を25μm以上とすることで単糸の切れが抑制でき、耐久性が向上する。
このように、単糸の直径を25μm以上、40μm以下と特定の範囲とすることで、座屈と単糸切れを抑制し、スリングの耐久性を上げることが可能となる。同様の観点で、単糸の直径は、より好ましくは30μm以上、35μm以下である。
本発明のスリングを構成する芯体は合成繊維からなる撚糸をループ状に周回したかせからなる。なお、撚糸を構成する合成繊維の合糸本数Nや、周回数、かせの長さは対象とする吊荷によって任意に選択が可能である。
撚糸の総繊度Dは実施例記載の手法で求められる値である。スリングの引張時の応力集中による撚糸の破断を回避する目的で十分な強力を得るために、総繊度Dは10000dtex以上が好ましい。また、総繊度Dが大きすぎる場合は撚糸の断面における中心部と外周部での繊維の担う応力に分布が発生する。撚糸の断面における応力分布を均一とし、スリングの高い原糸強力保持率と耐久性を発現する観点から、撚糸の総繊度は30000dtex以下が好ましい。
撚糸のより方向はSより、Zよりのいずれかが好ましい。一般に、SよりとZよりの撚糸を組み合わせた共撚りとすることで、かせの捻れを防ぐ手法が取られることがある。しかしながら、本願のように高強度繊維を用いる場合、共撚りとした際には、より係数が低い場合はよりが不均一となる傾向にある。また、均一なよりとするためにより係数を上げた場合は引張方向に対する繊維軸の傾きが過大となる。結果として、いずれの場合も原糸強力保持率の低下や撚糸の断面内での応力分布の発生により耐久性が低下するのである。
単糸への応力集中を抑制し、耐荷重および耐久性を高める観点から、スリングの引張方向への繊維の配向を乱さない程度にゆるく撚糸した糸を用いることが好ましく、より係数Kが10〜40となる範囲とすることが好ましい。なお、より係数Kは実施例記載の手法で求められる値である。より係数Kを10以上とすることで単糸への応力集中による糸切れが抑制でき耐荷重および耐久性が良好となる。また、40以下とすることで引張方向に対する繊維軸の傾きが過大となることを抑制し耐荷重が高まる。また、繰返しの使用における芯体のねじれが抑制でき、耐久性が高まる。同様の理由から、より係数Kは15〜35とすることが最も好ましい。
単糸間あるいは表面布との摩擦を低減し、構成する単糸に均一に荷重をかけ耐久性を向上する観点で、繊維には油剤がついていることが好ましい。油剤種は摩擦低減の観点からシリコーン系油剤が好ましい。耐熱の観点からはジメチルシリコーンあるいはフェニルメチルシリコーンが好ましい。また使用時の帯電、放電による事故を防ぐ観点から静電性のある成分を併用することも好ましい。静電成分としては、例えばリン酸エステル系界面活性剤などが挙げられる。
芯体を覆う表面布の素材は限定されないが、耐候性と染色性の観点からポリエステルまたはナイロンが好ましい。表面布は破れの早期発見を目的に異なる色あるいは素材からなる二重構造にしてもよい。
表面布の厚みはスリングの取扱い性の観点から3mm以下とすることが好ましく、より好ましくは2mm以下である。
実施例記載の方法で求められるスリングの原糸強力保持率は、合成繊維の引きそろえ状態を反映した値である。引きそろえが良好なスリングほど高い値を示し、応力の分散が良好であり耐久性も優れる。このため、スリングの原糸強力保持率は好ましくは65%以上、より好ましくは70%以上である。
本発明のスリングは高強度、高弾性率かつ耐久性に優れる。特に角のある吊荷の昇降にも用いることができ、ワイヤーロープ代替として好適に用いられる。
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。なお実施例中の各特性値は次の方法で求めた。
(1)単糸の直径
スリングを構成するかせより撚糸を取り出し、さらに撚糸を構成するマルチフィラメントを取り出した。このマルチフィラメントの全てのフィラメント1本1本について株式会社日立ハイテクノロジーズ社製SU1510型走査電子顕微鏡で繊維が5本以上観察できる倍率で画像を撮影し、画像処理ソフト(WINROOF)を用いて単繊維の直径を2次元的に測定した。μm単位で計測した値を少数点2位以下で四捨五入してフィラメントを構成する全ての単糸の直径を求めた。液晶ポリエステル紡糸繊維のフィラメント数が100以下の場合は、フィラメント数×n≧100を満たす最低のn回、同様の測定を繰り返し行う。得られた単繊維の直径の平均の値を求め、少数点第2位を四捨五入して少数点第1位までの値を求めた。
(2)合成繊維の総繊度D、強度S、伸度、弾性率
スリングを構成するかせより撚糸を取り出し、さらに撚糸を構成するマルチフィラメントを取り出し、検尺機にて繊維を10mカセ取りし、その重量(g)を1000倍し、1水準当たり10回の測定を行い、平均値を合成繊維の総繊度D(dtex)とした。JIS L 1013(2010)8.5.1標準時試験に示される定速伸長条件で測定した。オリエンテック社製テンシロンUCT−100を用い、掴み間隔は25cm、引張り速度は50mm/分で測定を行った。1水準当たり10回の測定を行い、破断時の平均荷重(cN)と上述の繊度の値から合成繊維の強度S(cN/dtex)、破断時の平均伸びから伸度(%)。弾性率(cN/dtex)は引張試験における応力と伸びのグラフでの最大の傾きから算出し、10回の平均値を採用した。
(3)撚糸の合糸本数N、総繊度D、より方向、より係数K
スリングを構成するかせより撚糸を取り出し、この撚糸を構成するマルチフィラメントの本数を数え、合糸本数Nを得た。
上記(2)項記載の合成繊維の総繊度D(dtex)と合糸本数N(本)から下式にて撚糸の総繊度D(dtex)を得た。
D=D×N
更に、撚糸のより方向(Z、S)を目視にて確認の上、撚糸100cmを検撚器にかけて解撚方向に糸を回転させて撚りの数を計測し、N=5の平均値から撚り数T(ターン/m)を求め、下式にてより係数Kを求めた。
K=T÷(100÷D^0.5) 。
(4)スリングの強力F、理論強力Fcalc、原糸強力保持率
JIS B 8811(2015)10.4に基づき、未使用のスリングを用いて引張試験を行い、N=3の破断荷重の平均値を求めスリングの強力F(kN)とした。
スリングの理論強力Fcalc(kN)は(2)項記載の合成繊維の強度S(cN/dex)および(3)項記載の撚糸の総繊度D(dtex)から、下式により算出した。
calc=S×D×(かせの周回回数)×2×10^−5
スリングの原糸強力保持率(%)は上記のスリングの強力F(kN)、理論強力Fcalc(kN)から、下式により算出した。
スリングの原糸強力保持率(%)=F÷Fcalc×100 。
(5)スリングの耐久性評価
<残存強力F’>
ストレート吊りの最大使用荷重WLL(t)の3倍の荷重(コーナーR5)を、吊り角度60°でバスケット吊りとし、巻き上げ速度7.2m/分にて、上昇、停止、下降、停止(各ステップ3秒)を1サイクルとし、繰返しの吊り上げによる耐久試験を行った。2000回の繰返し吊り上げ試験と3000回の繰返し吊り上げ試験を各N=2で実施した。
試験後のスリングについて、JIS B 8811(2015)10.4に基づき、スリング破断時の荷重を測定し、それぞれN=2の平均値を残存強力F’(kN)とした。
欧州規格NEN EN1492−2に記載および規定されている最小安全係数7に基づき、以下の二つの式を満たす場合は耐久性良好と判定した。
2000’≧WLL×9.8×7
3000’≧WLL×9.8×7
ここで、F’2000とは2000回の繰返し吊り上げ試験後の残存強力、F’3000とは3000回の繰返し吊り上げ試験後の残存強力を示す。
<強力保持率R>
各国における安全係数の違い(欧州では7、米国では5、アジアでは6が用いられている)および各スリングメーカーにおける安全係数の差異(メーカの独自規格)を考慮し、以下の評価を行った。すなわち、最大使用荷重WLLが同じスリングにおいても設計時の安全係数によって破断強力が異なることを考慮し、上述の繰返し吊り上げ試験前のスリングの強力F(kN)とスリングの残存強力F’(kN)の値から下式により耐久試験後の強力保持率R(%)を算出し、耐久性の指標とした。
耐久試験後の強力保持率R(%)=F’÷F×100
R≧70:良好、70>R≧63:可、60>R:不良
なお、実施例表中記載のR2000とは2000回の繰返し吊り上げ試験後の強力保持率、R3000とは3000回の繰返し吊り上げ試験後の強力保持率を示す。
参考例1
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸292重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1433重量部(フェノール性水酸基合計の1.08当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、330℃まで4時間で昇温した。
重合温度を330℃に保持し、1.5時間で1.0mmHg(133Pa)に減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を1.0kg/cm2(0.1MPa)に加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズし液晶ポリエステルを得た。
得られた液晶ポリエステルを用い、160℃、12時間の真空乾燥を行った後、二軸エクストルーダーに供給、溶融押し出しギアーポンプで計量しつつ紡糸パックに供給した。この時のエクストルーダー出から紡糸パックまでの紡糸温度は345℃とした。紡糸パックでは金属不織布フィルターを用いてポリマーを濾過し、孔径0.13μm、ランド長0.26mm、表1記載の孔数を有する口金より表1記載の吐出量でポリマーを吐出した。吐出したポリマーは40mmの保温領域を通過させた後、環状冷却風により糸条の外側から冷却し固化させ、その後、ポリジメチルシロキサン(東レ・ダウコーニング社製「SH200−350cSt」)が5.0重量%の水エマルジョンを塗布し、全フィラメントを600m/分の第1ゴデットロールに引き取った。これを同じ速度である第2ゴデットロールを介した後、ダンサーアームを介しパーンワインダー(神津製作所社製EFT型テークアップワインダー、巻取パッケージに接触するコンタクトロール無し)にてパーンの形状に巻き取った。
この紡糸繊維パッケージから繊維を縦方向(繊維周回方向に対し垂直方向)に解舒し、速度を一定とした巻取機((株)神津製作所製SSP−WV8P型プレシジョンワインダー)にて400m/分で巻き返しを行った。なお、巻き返しの芯材にはステンレス製のボビンを用い、巻き返し時の張力は0.005cN/dtex、巻き密度を0.50g/cmとし、巻量は4.0kgとした。更にパッケージ形状はテーパー角65°のテーパーエンド巻きとした。
次に巻き返したパッケージの固相重合を行なった。固相重合は、密閉型オーブンを用い、室温から240℃までは約30分で昇温し、240℃にて3時間保持した後、4℃/時間で290℃まで昇温し、20時間保持する条件にて固相重合を行った。なお、雰囲気は除湿窒素を流量20NL/分にて供給し、庫内が加圧にならないように排気口より排気させた。
得られた固相重合後の液晶ポリエステル繊維の物性は表1に記載のとおりで、固相重合により発現する高い強度、弾性率を有していた。
参考例2〜7
吐出量および口金孔数を表1記載の値に変更した以外は参考例1と同様にして固相重合後の液晶ポリエステル繊維を得た。得られた固相重合後の液晶ポリエステル繊維の物性は表1に記載のとおりで、固相重合により発現する高い強度、弾性率を有していた。
Figure 2019147681
実施例1
合成繊維として表2に記載の液晶ポリエステル繊維を用いて、表2記載の合糸本数Nの合糸を行い、より係数20となるようZ撚りをかけた。得られた撚糸を3mの周長を持つ枠に20回周回させ、末端部をテープ止めしたかせ状の芯体を得た。この芯体の全長に足るナイロン製の長布(目付け620g/m、厚み1.0mm)を表面布として用いた。長布を幅方向に半分に折ったところに芯体を挟み、縁を合せてナイロン糸で縫製し筒状とし、ストレート吊の最大使用荷重WLLが1tのラウンドスリングを得た。
得られたラウンドスリングを構成する合成繊維の単糸の直径、総繊度D、強度S、伸度、弾性率および、撚糸の総繊度D、スリングの強力F、理論強力Fcalc、原糸強力保持率、2000回および3000回の耐久試験後の残存強力F’2000およびF’3000、強力保持率R2000およびR3000、は表2に記載のとおりであった。
2000回および3000回の繰返し試験後の残存強力F’2000およびF’3000は68.6(WLL×9.8×7)kN以上であり耐久性に優れ、依然、使用に耐え得るものであった。また、繰返し試験後の強力保持率R2000、R3000は高く、耐久性良好の結果であった。
実施例2〜5
合成繊維として表2に記載の液晶ポリエステル繊維を用い表2記載の合糸本数Nとした以外は実施例1と同様にしてストレート吊の最大使用荷重が1tのラウンドスリングを得た。
得られたラウンドスリングを構成する合成繊維の単糸の直径、総繊度D、強度S、伸度、弾性率および、撚糸の総繊度D、スリングの強力F、理論強力Fcalc、原糸強力保持率、2000回および3000回の耐久試験後の残存強力F’2000およびF’3000、強力保持率R2000およびR3000、は表2に記載のとおりであった。
2000回および3000回の繰返し試験後の残存強力F’2000およびF’3000は68.6(WLL×9.8×7)kN以上であり耐久性に優れ、依然、使用に耐え得るものであった。また、繰返し試験後の強力保持率R2000、R3000は高く、耐久性良好もしくは可の結果であった。
比較例1、2
撚糸のより係数を変更した以外は実施例1と同様にしてストレート吊の最大使用荷重が1tのラウンドスリングを得た。
得られたラウンドスリングを構成する合成繊維の単糸の直径、総繊度D、強度S、伸度、弾性率および、撚糸の総繊度D、スリングの強力F、理論強力Fcalc、原糸強力保持率、2000回および3000回の耐久試験後の残存強力F’2000およびF’3000、強力保持率R2000およびR3000、は表2に記載のとおりであった。
2000回および3000回の繰返し試験後の残存強力F’2000およびF’3000は68.6(WLL×9.8×7)kN未満であり、耐久性に劣り、継続使用不可であった。また、繰返し試験後の強力保持率R2000、R3000も低く、耐久性不良の結果であった。
Figure 2019147681
実施例6〜9
撚糸のより係数を変更した以外は実施例1と同様にしてストレート吊の最大使用荷重が1tのラウンドスリングを得た。
得られたラウンドスリングを構成する合成繊維の単糸の直径、総繊度D、強度S、伸度、弾性率および、撚糸の総繊度D、スリングの強力F、理論強力Fcalc、原糸強力保持率、2000回および3000回の耐久試験後の残存強力F’2000およびF’3000、強力保持率R2000およびR3000、は表3に記載のとおりであった。
2000回および3000回の繰返し試験後の残存強力F’2000およびF’3000は68.6(WLL×9.8×7)kN以上であり耐久性に優れ、依然、使用に耐え得るものであった。また、繰返し試験後の強力保持率R2000、R3000は高く、耐久性良好もしくは可の結果であった。
実施例10
撚糸のより方向を変更した以外は実施例1と同様にしてストレート吊の最大使用荷重が1tのラウンドスリングを得た。
得られたラウンドスリングを構成する合成繊維の単糸の直径、総繊度D、強度S、伸度、弾性率および、撚糸の総繊度D、スリングの強力F、理論強力Fcalc、原糸強力保持率、2000回および3000回の耐久試験後の残存強力F’2000およびF’3000、強力保持率R2000およびR3000、は表3に記載のとおりであった。
2000回および3000回の繰返し試験後の残存強力F’2000およびF’3000は68.6(WLL×9.8×7)kN以上であり耐久性に優れ、依然、使用に耐え得るものであった。また、繰返し試験後の強力保持率R2000、R3000は高く、耐久性は良好の結果であった。
Figure 2019147681

Claims (2)

  1. 単糸の直径が25μm以上40μm以下、強度20cN/dtex以上の合成繊維からなるかせを芯体とした高強度高耐久性ラウンドスリング。
  2. 合成繊維が液晶ポリエステル繊維である請求項1に記載の高強度高耐久性ラウンドスリング。
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