JP2009040245A - 航空機用空気入りタイヤ - Google Patents
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Abstract
【課題】軽量性および耐久性の向上を実現した航空機用空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】クラウン部13から両サイドウォール部12を経て両ビード部11に延び、該ビード部11に係留された、略ラジアル方向に配列したコード層よりなるカーカスプライ2を備える航空機用空気入りタイヤである。2カーカスプライが、1対のビードコア1のまわりにタイヤの内側から外側へ巻き返したトロイダル状をなす少なくとも1層の内側カーカスプライ2Aと、該内側カーカスプライ2Aをその巻き返しも含め外包みしてビードコア1の少なくとも直下まで巻き込んだ少なくとも1層の外側カーカスプライ2Bと、からなり、カーカスプライ2のコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上含み、ディップ処理済みコードとしての最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexの範囲内であり、カーカスプライに緯糸が配置されていない。
【選択図】図1
【解決手段】クラウン部13から両サイドウォール部12を経て両ビード部11に延び、該ビード部11に係留された、略ラジアル方向に配列したコード層よりなるカーカスプライ2を備える航空機用空気入りタイヤである。2カーカスプライが、1対のビードコア1のまわりにタイヤの内側から外側へ巻き返したトロイダル状をなす少なくとも1層の内側カーカスプライ2Aと、該内側カーカスプライ2Aをその巻き返しも含め外包みしてビードコア1の少なくとも直下まで巻き込んだ少なくとも1層の外側カーカスプライ2Bと、からなり、カーカスプライ2のコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上含み、ディップ処理済みコードとしての最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexの範囲内であり、カーカスプライに緯糸が配置されていない。
【選択図】図1
Description
本発明は航空機用空気入りタイヤ(以下、単に「タイヤ」とも称する)に関し、詳しくは、カーカスコードの改良に係る航空機用空気入りタイヤに関する。
タイヤは、一般に、一対のビード部内に埋設されたビードコア相互間にわたりトロイド状に延びる複数のプライからなるカーカスと、そのクラウン部ラジアル方向外側に配置されたベルトおよびトレッドとを備えている。
このうちタイヤの骨格をなすカーカスプライに用いる補強コードとしては、従来より、レーヨンやナイロン、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)等)など種々のものが検討され、使用されてきている。
また、タイヤの中でも、特に航空機用空気入りタイヤは、10気圧を超える非常に高い規定内圧が公的規格により定められている上、高度な信頼性要求を満たすために、タイヤ強度メンバーは規定内圧の4倍もの耐圧性を有することが必要とされる。このため、航空機用空気入りタイヤのカーカスは、有機繊維からなるプライを多数枚積層することで前記耐圧性能を満足させている。しかし、一方で、航空機メーカーからは厳しいタイヤ重量低減の要求が課せられており、タイヤ性能と軽量化との両立がタイヤ設計上の重要な課題となっている。また、航空機用空気入りタイヤはその負担する荷重が大きいため、使用状態でのタイヤのたわみが非常に大きく設定されている。すなわち、走行時のタイヤカーカス部の変形量が大きいため、繰り返しの屈曲に耐えうる素材、構造の採用が必須となっている。
上記のような点から、従来、航空機用空気入りタイヤのカーカスプライには、主に脂肪族ポリアミドからなる、通称ナイロン繊維が使用されていた。かかるナイロン繊維は、耐疲労性および熱収縮性に優れ、カーカスプライ素材として信頼性の高い素材である。しかし、破断強力が比較的小さく、上記した耐圧性を付与するためには多数枚のカーカスプライを配する必要があることから、さらなるタイヤ軽量化を目指す上での妨げとなっていた。
一方、最近では、上記従来の有機繊維材料に代わる材料として、一酸化炭素とエチレン、プロペンなどのオレフィンをパラジウムやニッケルを触媒として重合させて得られる、一酸化炭素とオレフィンが実質完全に交互共重合した脂肪族ポリケトンを繊維化して、これをコード材料として用いることについても検討が行われている。ポリケトン繊維は、従来のポリオレフィン繊維に比べて融点が高く、また高強度および高弾性率を有することが知られており、この優れた物性を活かして産業資材用途、特にタイヤやベルト、ホース等のゴム補強材料として展開が期待されている。
ここで、ポリケトンを含む繊維材料をゴム補強材として使用する場合、通常は、繊維を撚糸後、接着剤を付与してコード状とし、あるいは、すだれ織物状としてゴム材料中に埋設している。かかるポリケトン繊維を用いた補強材に関して、例えば、特許文献1には、経糸と緯糸とから構成されたすだれ織物において、経糸を構成する繊維の50質量%以上をポリケトン繊維として、経糸と緯糸との繊維−繊維間静止摩擦係数(μs)を0.2以上としたすだれ織物が開示されている。
特開2003−49339号公報
ナイロン繊維対比高弾圧かつ高破断強力を有するポリケトン繊維を航空機用空気入りタイヤのカーカスプライに適用することで、上述したタイヤ設計上の様々な課題については解消することが可能となるものと考えられる。しかしながら、ポリケトン繊維を用いてすだれ織物とした従来の補強コードないし補強材をタイヤに適用しても、必ずしも十分な性能の向上が望めないのが現状である。
そこで、本発明の目的は、ポリケトン繊維を補強材としてカーカスプライに適用することによりそのポリケトン繊維の特性を十分に活かし、軽量性および耐久性の向上を実現した航空機用空気入りタイヤを提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ポリケトン繊維を用いたすだれ織物には以下のような問題があること突き止めた。
(イ)高強度および高弾性率を有するポリケトン繊維自体、およびそれを用いたポリケトン繊維からなるコードは熱収縮応力が高く、すだれ織物に製織後の熱収縮によってすだれ織物が歪んで平坦性が損なわれる。
(ロ)高強度および高弾性率を有するポリケトン繊維およびポリケトン繊維からなるコードは、すだれ織物としてゴム引きされたあとタイヤ製造時の加熱により、ポリケトン繊維の収縮に起因するカーカスコード配列の乱れが生じ、タイヤのユニフォミティを悪化させる。
(イ)高強度および高弾性率を有するポリケトン繊維自体、およびそれを用いたポリケトン繊維からなるコードは熱収縮応力が高く、すだれ織物に製織後の熱収縮によってすだれ織物が歪んで平坦性が損なわれる。
(ロ)高強度および高弾性率を有するポリケトン繊維およびポリケトン繊維からなるコードは、すだれ織物としてゴム引きされたあとタイヤ製造時の加熱により、ポリケトン繊維の収縮に起因するカーカスコード配列の乱れが生じ、タイヤのユニフォミティを悪化させる。
したがって、高耐久性を要求される航空機用空気入りタイヤに上記ポリケトン繊維を用いた従来のゴム補強材を適用しても、タイヤ耐久性の向上が十分ではないことが分かった。
かかる観点から、本発明者はさらに検討した結果、ポリケトン繊維ないしポリケトン繊維からなるコードを経糸としたカーカスプライの緯糸をなくすことで、タイヤ製造時のポリケトン繊維の収縮に起因するカーカスコード配列の乱れを低減でき、結果としてタイヤ耐久性を向上させうることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の航空機用空気入りタイヤは、クラウン部から両サイドウォール部を経て両ビード部に延び、該ビード部に係留された、略ラジアル方向に配列したコード層よりなるカーカスプライを備える航空機用空気入りタイヤにおいて、
前記カーカスプライが、1対のビードコアのまわりにタイヤの内側から外側へ巻き返したトロイダル状をなす少なくとも1層の内側カーカスプライと、該内側カーカスプライをその巻き返しも含め外包みしてビードコアの少なくとも直下まで巻き込んだ少なくとも1層の外側カーカスプライと、からなり、
前記カーカスプライのコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上含み、ディップ処理済みコードとしての最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexの範囲内であり、
前記カーカスプライに緯糸が配置されていないことを特徴とするものである。
前記カーカスプライが、1対のビードコアのまわりにタイヤの内側から外側へ巻き返したトロイダル状をなす少なくとも1層の内側カーカスプライと、該内側カーカスプライをその巻き返しも含め外包みしてビードコアの少なくとも直下まで巻き込んだ少なくとも1層の外側カーカスプライと、からなり、
前記カーカスプライのコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上含み、ディップ処理済みコードとしての最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexの範囲内であり、
前記カーカスプライに緯糸が配置されていないことを特徴とするものである。
本発明の航空機用空気入りタイヤにおいては、前記カーカスプライを形成する繊維コードに含まれるポリケトン繊維として、引っ張り強度は、好ましくは10cN/dtex以上、弾性率は、好ましくは200cN/dtex以上、さらに150℃×30分乾熱処理時熱収縮率は、好ましくは1%〜5%の範囲である。また、前記カーカスプライのコードの繊度は、好ましくは3000dtex〜17000dtexであり、また、前記カーカスプライのコードの1dtex当たり19.8mNの荷重付加時の伸び率は、好ましくは5.0%未満である。
ここで、コードの最大熱収縮応力とは、一般的なディップ処理を施した加硫前のカーカスプライコードの、25cmの長さ固定サンプルを5℃/分の昇温スピードで加熱して、177℃時にコードに発生する最大応力(単位:cN/dtex)である。また、乾熱処理時熱収縮率とは、オーブン中で150℃、30分の乾熱処理を行ない、熱処理前後の繊維長を、1/30(cN/dtex)の荷重をかけて計測して下式により求められる値である。
乾熱処理時熱収縮率(%)={(Lb−La)/Lb}×100
但し、Lbは熱処理前の繊維長、Laは熱処理後の繊維長である。また、ポリケトン繊維における引張強度および引張弾性率は、JIS−L−1013に準じて測定することにより得られる値であり、引張弾性率は伸度0.1%における荷重と伸度0.2%における荷重から算出した初期弾性率の値である。
乾熱処理時熱収縮率(%)={(Lb−La)/Lb}×100
但し、Lbは熱処理前の繊維長、Laは熱処理後の繊維長である。また、ポリケトン繊維における引張強度および引張弾性率は、JIS−L−1013に準じて測定することにより得られる値であり、引張弾性率は伸度0.1%における荷重と伸度0.2%における荷重から算出した初期弾性率の値である。
本発明によれば、上記構成としたことにより、補強材に起因するカーカスプライ性状の悪化を防止しつつ、軽量性および耐久性を向上した航空機用空気入りタイヤを実現することが可能となった。
以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1に、本発明の一好適例の航空機用空気入りタイヤの構造を簡略図解した右半断面図を示す。図示する航空機用空気入りタイヤ10は、一対のビード部11内に埋設されたビードコア1相互間にわたりトロイド状に延びる複数のカーカスプライ2と、カーカスプライ2の外周とトレッドゴム3との間に配置された複数層のベルト層よりなるベルト4とを備えている。
図1に、本発明の一好適例の航空機用空気入りタイヤの構造を簡略図解した右半断面図を示す。図示する航空機用空気入りタイヤ10は、一対のビード部11内に埋設されたビードコア1相互間にわたりトロイド状に延びる複数のカーカスプライ2と、カーカスプライ2の外周とトレッドゴム3との間に配置された複数層のベルト層よりなるベルト4とを備えている。
図示する例では、カーカスプライ2は、ビードコア1の周りにタイヤ内側から外側に巻返されてなる折返し部2Aを有する複数のターンアッププライと、その折返し部2Aの外側に沿って一対のビードトウ(図中では片側のみを示す)相互間にわたって延びる1枚のダウンプライ2Bとを有するアップダウン構成になる。本発明においては、カーカスプライ2に緯糸が配置されていないことが肝要である。これにより、タイヤ製造時のポリケトン繊維の収縮に起因するカーカスプライコード配列の乱れを低減でき、結果としてタイヤの耐久性を向上させることができる。緯糸が配置されていないカーカスプライを用いたタイヤの製造技術は既に知られており、例えば、テキスタイルコードの緯糸処理装置(特開平5−269890号公報)等でゴム引き前に緯糸を除去したり、1本または複数本の接着処理済コードにコーティングゴムをインシュレーションしたコード・ゴム複合材料をタイヤ成型機上で並べたりすることで、カーカスプライに緯糸がないタイヤを製造することができる。
また、ベルト4は、複数枚のベルト層からなり、その枚数は特に限られるものではない。ベルト層は、通常、タイヤ赤道面に対して傾斜して延びるコードのゴム引き層、好ましくは、スチールコードのゴム引き層からなり、複数枚のベルト層は、該ベルト層を構成する各コードが互いに赤道面を挟んで交差するように積層されてベルト4を構成する。あるいはまた、タイヤ周方向に螺旋巻きしてなるスパイラルベルトを2〜8枚、タイヤ周方向に対し5〜10°で、ジグザグ周方向に設けるエンドレスベルトを2〜8枚、波型に設ける保護層を1〜2枚にて配置してもよい。かかるベルトの材質としては、例えば、アラミドやナイロンなどの有機繊維を用いることができ、そのコード打ち込み数としては、通常3〜10本/10mmとすることができる。
航空機用空気入りタイヤ10は、本発明に係るカーカスプライ2により本発明の所期の効果を得ることができるものであり、それ以外のタイヤ構造、各構成部材の材質等については、特に制限されるものではない。例えば、図示するように、本発明のタイヤは、一対のビード部11と、それに連なる一対のサイドウォール部12と、両サイドウォール部12間にトロイド状をなして連なるトレッド部13とを備えており、トレッド部13の表面には適宜トレッドパターンが形成されている。また、最内層にはインナーライナー(図示せず)が形成されている。さらに、カーカスプライのコード打ち込み数は通常25〜40本/5cmであり、アップダウン構成とする場合のアッププライは通常1〜3枚、ダウンプライは1〜5枚である。
本発明においては、カーカスプライコードとして、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上、好ましくは70質量%以上、より好ましくは100質量%含むことが必要である。50質量%未満であると、タイヤとしての強度、耐熱性、ゴムとの接着性のいずれかの性能が不十分となり、本発明の所期の効果が得られない。
また、本発明に用いるカーカスプライコードは、ディップ処理済みコードとしての最大熱収縮応力が、0.1〜1.8cN/dtex、好ましくは0.4〜1.6cN/dtex、より好ましくは0.6〜1.4cN/dtexの範囲にあることが必要である。最大熱収縮応力が0.1cN/dtex未満であると、タイヤ製造時の加熱による引き揃え効率が著しく低下し、タイヤとしての強度が不十分となる。一方、最大熱収縮応力が1.8cN/dtexを超えると、タイヤ製造時の加熱によりコードが著しく収縮するため、出来上がりのタイヤ形状が悪化する懸念がある。
カーカスプライコードに含まれるポリケトン繊維として、引っ張り強度が、好ましくは10cN/dtex以上、より好ましくは15cN/dtex以上である。引っ張り強度が10cN/dtex未満の場合、タイヤとしての強度が不十分となる。
また、カーカスプライコードに含まれるポリケトン繊維として、弾性率が、好ましくは200cN/dtex以上、より好ましくは250cN/dtex以上である。弾性率が200cN/dtex未満の場合、タイヤとしての形状保持性が不十分となる。
さらに、カーカスプライコードに含まれるポリケトン繊維として、150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が1%〜5%の範囲に、好ましくは2%〜4%の範囲にあることが望ましい。150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が1%未満の場合には、タイヤ製造時の加熱による引き揃え効率が著しく低下し、タイヤとしての強度が不十分となる。一方、150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が5%を超える場合には、タイヤ製造時の加熱によりコードが著しく収縮するため、出来上がりのタイヤ形状が悪化する懸念がある。
さらにまた、カーカスプライコードは、好ましくは繊度3000〜17000dtex、より好ましくは6000〜12000dtexである。コードの繊度が3000dtex未満であると航空機用空気入りラジアルタイヤとして必要なカーカス強度が維持できなくなる。一方、コードの繊度が17000dtexを超えると、カーカス強度を確保するのは容易になるが、コード径が大きくなりすぎるため、カーカス端からのセパレーションを抑制するのが難しくなる。
さらにまた、カーカスプライコードは、コード1dtex当たり19.8mNの荷重付加時の伸び率が、好ましくは5.0%未満、より好ましくは3.5%未満である。コード1dtex当たり19.8mNの荷重付加時の伸び率が5.0%以上の場合、タイヤ走行時の径成長が大きくなり、故障を誘発する懸念がある。
次に、本発明に使用し得る、ポリケトン繊維(以下「PK繊維」と略記する)を少なくとも50質量%以上含むカーカスプライコードについて詳述する。
本発明に使用し得るPK繊維以外の繊維は、ナイロン、エステル、レーヨン、ポリノジック、リヨセル、ビニロン等を挙げることができる。
また、上記コードは、さらに、下記式(I)、
(式中、Tは撚り数(回/100mm)、Dはコードの総繊度(dtex)、ρはコードに使用される繊維素材の密度(g/cm3)である)で定義される撚り係数αが0.25〜1.25の範囲であることが好ましい。PK繊維コードの撚り係数αが0.25未満では、熱収縮応力が十分に確保できず、一方、1.25を超えると、弾性率が十分に確保できず、補強能が小さくなる。
(式中、Tは撚り数(回/100mm)、Dはコードの総繊度(dtex)、ρはコードに使用される繊維素材の密度(g/cm3)である)で定義される撚り係数αが0.25〜1.25の範囲であることが好ましい。PK繊維コードの撚り係数αが0.25未満では、熱収縮応力が十分に確保できず、一方、1.25を超えると、弾性率が十分に確保できず、補強能が小さくなる。
上記PK繊維の原料のポリケトンとしては、下記一般式(II)、
(式中、Aは不飽和結合によって重合された不飽和化合物由来の部分であり、各繰り返し単位において同一であっても異なっていてもよい)で表される繰り返し単位から実質的になるものが好適であり、その中でも、繰り返し単位の97モル%以上が1−オキソトリメチレン[−CH2−CH2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが更に好ましく、100モル%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。
(式中、Aは不飽和結合によって重合された不飽和化合物由来の部分であり、各繰り返し単位において同一であっても異なっていてもよい)で表される繰り返し単位から実質的になるものが好適であり、その中でも、繰り返し単位の97モル%以上が1−オキソトリメチレン[−CH2−CH2−CO−]であるポリケトンが好ましく、99モル%以上が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが更に好ましく、100モル%が1−オキソトリメチレンであるポリケトンが最も好ましい。
かかるポリケトンは、部分的にケトン基同士、不飽和化合物由来の部分同士が結合していてもよいが、不飽和化合物由来の部分とケトン基とが交互に配列している部分の割合が90質量%以上であることが好ましく、97質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが最も好ましい。
また、上記式(II)において、Aを形成する不飽和化合物としては、エチレンが最も好ましいが、プロピレン、ブテン、ペンテン、シクロペンテン、ヘキセン、シクロヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、スチレン、アセチレン、アレン等のエチレン以外の不飽和炭化水素や、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ビニルアセテート、アクリルアミド、ヒドロキシエチルメタクリレート、ウンデセン酸、ウンデセノール、6−クロロヘキセン、N−ビニルピロリドン、スルニルホスホン酸のジエチルエステル、スチレンスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、ビニルピロリドンおよび塩化ビニル等の不飽和結合を含む化合物等であってもよい。
さらに、上記ポリケトンの重合度としては、下記式(III)、
(上記式中、tおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよび該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間であり、cは、上記希釈溶液100mL中の溶質の質量(g)である)で定義される極限粘度[η]が、1〜20dL/gの範囲内にあることが好ましく、3〜8dL/gの範囲内にあることがより一層好ましい。極限粘度が1dL/g未満では、分子量が小さ過ぎて、高強度のポリケトン繊維コードを得ることが難しくなる上、紡糸時、乾燥時および延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発することがあり、一方、極限粘度が20dL/gを超えると、ポリマーの合成に時間およびコストがかかる上、ポリマーを均一に溶解させることが難しくなり、紡糸性および物性に悪影響が出ることがある。
(上記式中、tおよびTは、純度98%以上のヘキサフルオロイソプロパノールおよび該ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解したポリケトンの希釈溶液の25℃での粘度管の流過時間であり、cは、上記希釈溶液100mL中の溶質の質量(g)である)で定義される極限粘度[η]が、1〜20dL/gの範囲内にあることが好ましく、3〜8dL/gの範囲内にあることがより一層好ましい。極限粘度が1dL/g未満では、分子量が小さ過ぎて、高強度のポリケトン繊維コードを得ることが難しくなる上、紡糸時、乾燥時および延伸時に毛羽や糸切れ等の工程上のトラブルが多発することがあり、一方、極限粘度が20dL/gを超えると、ポリマーの合成に時間およびコストがかかる上、ポリマーを均一に溶解させることが難しくなり、紡糸性および物性に悪影響が出ることがある。
さらにまた、PK繊維は、結晶化度が50〜90%、結晶配向度が95%以上の結晶構造を有することが好ましい。結晶化度が50%未満の場合、繊維の構造形成が不十分であって十分な強度が得られないばかりか加熱時の収縮特性や寸法安定性も不安定となるおそれがある。このため、結晶化度としては50〜90%が好ましく、より好ましくは60〜85%である。
上記ポリケトンの繊維化方法としては、(1)未延伸糸の紡糸を行った後、多段熱延伸を行い、該多段熱延伸の最終延伸工程で特定の温度および倍率で延伸する方法や、(2)未延伸糸の紡糸を行った後、熱延伸を行い、該熱延伸終了後の繊維に高い張力をかけたまま急冷却する方法が好ましい。上記(1)または(2)の方法でポリケトンの繊維化を行うことで、上記ポリケトン繊維コードの作製に好適な所望のフィラメントを得ることができる。
ここで、上記ポリケトンの未延伸糸の紡糸方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、特開平2−112413号、特開平4−228613号、特表平4−505344号に記載されているようなヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾール等の有機溶剤を用いる湿式紡糸法、国際公開第99/18143号、国際公開第00/09611号、特開2001−164422号、特開2004−218189号、特開2004−285221号に記載されているような亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液を用いる湿式紡糸法が挙げられ、これらの中でも、上記塩の水溶液を用いる湿式紡糸法が好ましい。
例えば、有機溶剤を用いる湿式紡糸法では、ポリケトンポリマーをヘキサフルオロイソプロパノールやm−クレゾール等に0.25〜20質量%の濃度で溶解させ、紡糸ノズルより押し出して繊維化し、次いでトルエン、エタノール、イソプロパノール、n−ヘキサン、イソオクタン、アセトン、メチルエチルケトン等の非溶剤浴中で溶剤を除去、洗浄してポリケトンの未延伸糸を得ることができる。
一方、水溶液を用いる湿式紡糸法では、例えば、亜鉛塩、カルシウム塩、チオシアン酸塩、鉄塩等の水溶液に、ポリケトンポリマーを2〜30質量%の濃度で溶解させ、50〜130℃で紡糸ノズルから凝固浴に押し出してゲル紡糸を行い、さらに脱塩、乾燥等してポリケトンの未延伸を得ることができる。ここで、ポリケトンポリマーを溶解させる水溶液には、ハロゲン化亜鉛と、ハロゲン化アルカリ金属塩またはハロゲン化アルカリ土類金属塩とを混合して用いることが好ましく、凝固浴には、水、金属塩の水溶液、アセトン、メタノール等の有機溶媒等を用いることができる。
また、得られた未延伸糸の延伸法としては、未延伸糸を該未延伸糸のガラス転移温度よりも高い温度に加熱して引き伸ばす熱延伸法が好ましく、さらに、かかる未延伸糸の延伸は、上記(2)の方法では一段で行ってもよいが、多段で行うことが好ましい。熱延伸の方法としては、特に制限はなく、例えば、加熱ロール上や加熱プレート上に糸を走行させる方法等を採用することができる。ここで、熱延伸温度は、110℃〜(ポリケトンの融点)の範囲内が好ましく、総延伸倍率は、好適には10倍以上とする。
上記(1)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、上記多段熱延伸の最終延伸工程における温度は、110℃〜(最終延伸工程の一段前の延伸工程の延伸温度−3℃)の範囲が好ましく、また、多段熱延伸の最終延伸工程における延伸倍率は、1.01〜1.5倍の範囲が好ましい。一方、上記(2)の方法でポリケトンの繊維化を行う場合、熱延伸終了後の繊維にかける張力は、0.5〜4cN/dtexの範囲が好ましく、また、急冷却における冷却速度は、30℃/秒以上であることが好ましく、更に、急冷却における冷却終了温度は、50℃以下であることが好ましい。熱延伸されたポリケトン繊維の急冷却方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を採用することができ、具体的には、ロールを用いた冷却方法が好ましい。なお、こうして得られるポリケトン繊維は、弾性歪みの残留は大きいため、通常、緩和熱処理を施し、熱延伸後の繊維長よりも繊維長を短くすることが好ましい。ここで、緩和熱処理の温度は、50〜100℃の範囲が好ましく、また、緩和倍率は、0.980〜0.999倍の範囲が好ましい。
また、PK繊維コードの高い熱収縮特性を最も効果的に活用するには、加工時の処理温度や使用時の成型品の温度が、最大熱収縮応力を示す温度(最大熱収縮温度)と近い温度であることが望ましい。具体的には、必要に応じて行われる接着剤処理におけるRFL処理温度や加硫温度等の加工温度が100〜250℃であること、また、繰り返し使用や高速回転によってタイヤ材料が発熱した際の温度は100〜200℃にもなることなどから、最大熱収縮温度は、好ましくは100〜250℃の範囲内、より好ましくは150〜240℃範囲内である。
本発明に係るカーカスプライコードを被覆するコーティングゴムは、種々の形状からなることができる。代表的には、被膜、シート等である。また、コーティングゴムは、既知のゴム組成物を適宜採用することができ、特に制限されるべきものではない。
本発明のタイヤは、ラジアルカーカスとして上述のカーカスプライを適用し、常法により製造することができる。なお、本発明のタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明する。
(PK繊維の調製例)
常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.3のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、ポリマー濃度8重量%のドープを得た。
(PK繊維の調製例)
常法により調製したエチレンと一酸化炭素が完全交互共重合した極限粘度5.3のポリケトンポリマーを、塩化亜鉛65重量%/塩化ナトリウム10重量%含有する水溶液に添加し、80℃で2時間攪拌溶解し、ポリマー濃度8重量%のドープを得た。
このドープを80℃に加温し、20μm焼結フィルターでろ過した後に、80℃に保温した紡口径0.10mmφ、50ホールの紡口より10mmのエアーギャップを通した後に5重量%の塩化亜鉛を含有する18℃の水中に吐出量2.5cc/分の速度で押出し、速度3.2m/分で引きながら凝固糸条とした。
引き続き凝固糸条を濃度2重量%、温度25℃の硫酸水溶液で洗浄し、さらに30℃の水で洗浄した後に、速度3.2m/分で凝固糸を巻取った。
この凝固糸にIRGANOX1098(Ciba Specialty Chemicals社製)、IRGANOX1076(Ciba Specialty Chemicals社製)をそれぞれ0.05重量%ずつ(対ポリケトンポリマー)含浸せしめた後に、該凝固糸を240℃以上にて乾燥後、仕上剤を付与して未延伸糸を得た。なお、この乾燥温度を適宜コントロールすることで熱収縮率の調整が可能である。
この凝固糸にIRGANOX1098(Ciba Specialty Chemicals社製)、IRGANOX1076(Ciba Specialty Chemicals社製)をそれぞれ0.05重量%ずつ(対ポリケトンポリマー)含浸せしめた後に、該凝固糸を240℃以上にて乾燥後、仕上剤を付与して未延伸糸を得た。なお、この乾燥温度を適宜コントロールすることで熱収縮率の調整が可能である。
仕上剤は以下の組成のものを用いた。
オレイン酸ラウリルエステル/ビスオキシエチルビスフェノールA/ポリエーテル(プロピレンオキシド/エチレンオキシド=35/65:分子量20000)/ポリエチレンオキシド10モル付加オレイルエーテル/ポリエチレンオキシド10モル付加ひまし油エーテル/ステアリルスルホン酸ナトリウム/ジオクチルリン酸ナトリウム=30/30/10/5/23/1/1(重量%比)。
オレイン酸ラウリルエステル/ビスオキシエチルビスフェノールA/ポリエーテル(プロピレンオキシド/エチレンオキシド=35/65:分子量20000)/ポリエチレンオキシド10モル付加オレイルエーテル/ポリエチレンオキシド10モル付加ひまし油エーテル/ステアリルスルホン酸ナトリウム/ジオクチルリン酸ナトリウム=30/30/10/5/23/1/1(重量%比)。
得られた未延伸糸を1段目を240℃で、引き続き258℃で2段目、268℃で3段目、272℃で4段目の延伸を行った後に、引き続き5段目に200℃で1.08倍(延伸張力1.8cN/dtex)の5段延伸を行い、巻取機にて巻取った。未延伸糸から5段延伸糸までの全延伸倍率は17.1倍であった。この繊維原糸は強度15.6cN/dtex、伸度4.2%、弾性率347cN/dtexと高物性を有していた。また、150℃×30分乾熱処理時熱収縮率は1.9%であった。このようして得られたPK繊維を下記の条件下でコードとして使用した。
下記表1に示す条件に従い、各繊維コードをコーティングゴムにより被覆し、インシュレーションして得られる材料を必要幅に裁断して、タイヤ成型機上においてタイヤ断面各位置でほぼ並行になるよう配設して各カーカスプライを形成し、サイズ46×17R20 30PRの航空機用空気入りタイヤを作製した。
<プライ形状>
各供試タイヤにつきプライ性状を評価して、ビード周辺部のプライコード打ち込みが正常であるものを良、プライコードの抜けや重なりがあったものを不良とした。
各供試タイヤにつきプライ性状を評価して、ビード周辺部のプライコード打ち込みが正常であるものを良、プライコードの抜けや重なりがあったものを不良とした。
<タイヤ重量>
各供試タイヤの重量を測定して、その結果を、従来例1のタイヤを100とした指数にて示した。数値が小なるほど軽量であることを示し、好ましい。
各供試タイヤの重量を測定して、その結果を、従来例1のタイヤを100とした指数にて示した。数値が小なるほど軽量であることを示し、好ましい。
<ドラム耐久性>
各供試タイヤについて、ドラム試験機上にて、規定内圧、規定荷重にて、タクシー試験(10分走行、110分冷却)を繰り返し実施した際に、タイヤ故障が発生するまでの試験回数を比較した。その結果を、従来例1のタイヤを100とした指数にて示した。数値が大なるほど耐久性に優れることを示し、好ましい。
各供試タイヤについて、ドラム試験機上にて、規定内圧、規定荷重にて、タクシー試験(10分走行、110分冷却)を繰り返し実施した際に、タイヤ故障が発生するまでの試験回数を比較した。その結果を、従来例1のタイヤを100とした指数にて示した。数値が大なるほど耐久性に優れることを示し、好ましい。
前記表1に示す結果より、緯糸を使用しないポリケトン繊維のカーカスプライを適用することにより、実施例のタイヤは従来例および比較例のタイヤに比べ、タイヤ重量およびドラム耐久性のすべてにわたって良好な性能を有することが分かる。
1 ビードコア
2 カーカス
3 トレッドゴム
4 ベルト
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 クラウン部
2 カーカス
3 トレッドゴム
4 ベルト
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 クラウン部
Claims (6)
- クラウン部から両サイドウォール部を経て両ビード部に延び、該ビード部に係留された、略ラジアル方向に配列したコード層よりなるカーカスプライを備える航空機用空気入りタイヤにおいて、
前記カーカスプライが、1対のビードコアのまわりにタイヤの内側から外側へ巻き返したトロイダル状をなす少なくとも1層の内側カーカスプライと、該内側カーカスプライをその巻き返しも含め外包みしてビードコアの少なくとも直下まで巻き込んだ少なくとも1層の外側カーカスプライと、からなり、
前記カーカスプライのコードが、ポリケトン繊維を少なくとも50質量%以上含み、ディップ処理済みコードとしての最大熱収縮応力が0.1〜1.8cN/dtexの範囲内であり、
前記カーカスプライに緯糸が配置されていないことを特徴とする航空機用空気入りタイヤ。 - 前記カーカスプライを形成する繊維コードに含まれるポリケトン繊維として、引っ張り強度が10cN/dtex以上である請求項1記載の航空機用空気入りタイヤ。
- 前記カーカスプライを形成する繊維コードに含まれるポリケトン繊維として、弾性率が200cN/dtex以上である請求項1または2記載の航空機用空気入りタイヤ。
- 前記カーカスプライを形成する繊維コードに含まれるポリケトン繊維として、150℃×30分乾熱処理時熱収縮率が1%〜5%の範囲にある請求項1〜3のうちいずれか一項記載の航空機用空気入りタイヤ。
- 前記カーカスプライのコードの繊度が3000dtex〜17000dtexである請求項1〜4のうちいずれか一項記載の航空機用空気入りタイヤ。
- 前記カーカスプライのコードの1dtex当たり19.8mNの荷重付加時の伸び率が5.0%未満である請求項1〜5のうちいずれか一項記載の航空機用空気入りタイヤ。
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WO2018181211A1 (ja) * | 2017-03-31 | 2018-10-04 | 旭化成株式会社 | 有機繊維からなる合撚糸コード |
-
2007
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TWI694186B (zh) * | 2017-03-31 | 2020-05-21 | 日商旭化成股份有限公司 | 有機纖維合撚紗線、纖維強化複合材料、及有機纖維合撚紗線之製造方法 |
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