JP2008240228A - 液晶ポリエステル繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 液晶ポリエステル繊維の製造に際し、高強度、高弾性率、優れた耐熱性という固相重合した液晶ポリエステル繊維からなる織物の特徴を損ねることなく、耐摩耗性を向上させた液晶ポリエステル繊維を提供し、特に優れた特性を持つ単繊維繊度が小さい、さらにモノフィラメントである液晶ポリエステル繊維を提供する。
【解決手段】 液晶ポリエステル繊維を、示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+10℃以上の温度で熱処理することを特徴とする液晶ポリエステル繊維の製造方法。
【選択図】なし

Description

本発明は、強度、弾性率、耐熱性と耐摩耗性に優れた液晶ポリエステル繊維の製造方法に関するものであり、単繊維繊度が小さく、特にモノフィラメントである液晶ポリエステル繊維の製造方法に関するものである。
液晶ポリエステルは剛直な分子鎖からなるポリマーであり、溶融紡糸においてはその分子鎖を繊維軸方向に高度に配向させ、さらに高温下で熱処理することにより固相重合するため、溶融紡糸で得られる繊維の中では最も高い強度、弾性率が得られる(非特許文献1参照)。液晶ポリエステル繊維はさらに低吸湿特性を有するため、水産資材用のロープやネット類などに用途を持っていた。また近年では、スクリーン印刷用の紗織物、セールクロス、各種電気製品のコード補強材、防護手袋、プラスチックの補強材、光ファイバーのテンションメンバー、膜体の基布などの比較的繊度の低い液晶ポリエステルの需要が伸びている。
しかし、液晶ポリエステル繊維は剛直な分子鎖が繊維軸方向へ高度に配向しているため、繊維軸垂直方向に弱く、フィブリル化しやすく耐摩耗性に劣るという欠点も持つ。また、液晶ポリエステル繊維は繊維軸方向に高度に配向し緻密な結晶を生じるが、その結晶部分と非晶部分の構造差が大きく相互作用が低いため、外力が与えられることにより結晶部分と非晶部分との間でズレが生じ、その構造欠陥を破壊の開始点としてフィブリル化が進行する。このため繊維の高次加工工程での毛羽発生による工程通過性悪化、毛羽混入による製品の品位・性能低下が発生することから、液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性向上が求められている。中でもフィルター、スクリーン印刷用紗においては、高性能化のために開口部の欠点減少が要求されている。開口部の欠点は、製織工程での摩擦により繊維が削られフィブリル化し、そのフィブリルが開口部を塞ぐことに起因しているため、液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性向上が強く求められている。
この耐摩耗性を改善するために、芯成分が液晶ポリエステル、鞘成分がポリフェニレンスルフィドからなる芯鞘型複合繊維(特許文献1参照)や、島成分が液晶ポリエステル、海成分が屈曲性熱可塑性ポリマーからなる海島型複合繊維が提案されている(特許文献2参照)。これらの技術では屈曲性ポリマーが繊維表面を形成することで耐摩耗性の向上は達成できるものの、液晶ポリエステル以外の成分の分率が多いため繊維の強度が劣る、液晶ポリエステルの高強度化に必要な繊維の固相重合において低融点の繊維表面が融着しやすくなるという問題があった。
この問題は液晶ポリエステルと他成分との複合という手段に起因しており、このことから液晶ポリエステル単独でも耐摩耗性を向上し得る技術が望まれていた。
ところで、釣り糸や漁網、草刈り機用などのポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリプロピレンモノフィラメントでは、延伸後のモノフィラメントに融点以上の熱を加え、表層の配向緩和を促進して耐摩耗性を改善する方法が提案されている(特許文献3〜7参照)。しかしながら、この技術はポリマーが屈曲性ポリマーであるため配向緩和に要する時間(緩和時間)が短いが故に達成できる技術であり、液晶ポリエステルなど分子鎖が剛直な場合には緩和時間が長くなり、表層が緩和する時間のうちに内層も緩和し繊維が溶融してしまうという問題があった。さらに単繊維繊度が小さくなるほど熱処理の影響が繊維の中央部まで到達し、十分な強度と耐摩耗性の両立が難しいという問題があった。
また、液晶ポリエステル繊維を融点よりも低い温度で加熱硬化(固相重合)させた後、該繊維を220〜500℃の温度、通常、硬化温度の50℃の範囲内にて10%〜400%延伸し強度および弾性率を増加させる技術が提案されている(特許文献8参照)。しかしながら、この技術は結晶化度を維持できる温度で延伸を行うことで分子鎖の配向をさらに高め、強度および弾性率を増加させることを目的としており、結晶化度が高く分子鎖の配向が高い繊維構造のため耐摩耗性は向上できない。
一方、液晶ポリエステル繊維の耐摩耗性の向上のため、ポリシロキサンおよび/またはフッ素系樹脂を繊維表面に付着させ、100℃〜300℃での乾燥または350℃以上での加熱焼成を行う方法が提案されている(特許文献9参照)。しかしながら、この技術では、乾燥または焼成のために高温での処理を行っているが、これは付着させたポリシロキサンおよび/またはフッ素系樹脂を脱離しにくくするための処理であり、また処理する液晶ポリエステル繊維における融点の記載はなく、繊維自体の構造を変化させて耐摩耗性を向上させる方法ではない。
技術情報協会編、「液晶ポリマーの改質と最新応用技術」(2006)(第235頁〜第256頁) 特開平1−229815号公報(第1頁) 特開2003−239137号公報(第1頁) 特開昭60−231815号公報(第1頁) 特開昭61−152810号公報(第1頁) 特開昭61−170310号公報(第1頁) 特開平5−148707号公報(第1頁) 特開平8−158151号公報(第1頁) 特開昭50−43223号公報(第2頁) 特開平11−269737号公報(第3頁)
本発明の課題は高強度、高弾性率、優れた耐熱性という固相重合した液晶ポリエステル繊維からなる織物の特徴を損ねることなく、耐摩耗性を向上させることであり、特に単繊維繊度が小さい、さらにモノフィラメントである液晶ポリエステル繊維の製造方法に関するものである。
本発明者等は、固相重合した液晶ポリエステル繊維に特定条件の熱処理を施すことにより繊維配向を維持したまま結晶化度を低下させ、フィブリル化の開始点となる緻密な結晶部分と非晶部分の構造差を減少させることで上記した課題を解決できることを見出した。
すなわち上記課題は、液晶ポリエステル繊維を、示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+10℃以上の温度で熱処理することを特徴とする液晶ポリエステル繊維の製造方法により解決できる。
本発明によって、高強度、高弾性率、優れた耐熱性という固相重合した液晶ポリエステル繊維の特徴を有したまま耐摩耗性を有する液晶ポリエステル繊維を効率よく製造することができる。このようにして得られた液晶ポリエステル繊維は、スクリーン印刷用の紗織物、セールクロス、各種電気製品のコード補強材、防護手袋、プラスチックの補強材、光ファイバーのテンションメンバー、膜体の基布などに好適である。特にスクリーン紗用モノフィラメントとして用いる場合には、製織工程での摩耗やスクリーン印刷時のスキージとの摩耗が生じるため、本発明により製造される耐摩耗性に優れた液晶ポリエステルをより好適に用いることが出来る。
以下、本発明の液晶ポリエステル繊維の製造方法について詳細に説明する。
本発明で用いられる液晶ポリエステルとは、加熱して溶融した際に光学的異方性(液晶性)を示すポリマーを指す。この特性は例えば、液晶ポリエステルからなる試料をホットステージにのせ、窒素雰囲気下で昇温加熱し、試料の透過光を偏光下で観察することにより確認できる。
本発明に用いる液晶ポリエステルとしては、例えばa.芳香族オキシカルボン酸の重合物、b.芳香族ジカルボン酸と芳香族ジオール、脂肪族ジオールの重合物、c.aとbとの共重合物などが挙げられる。ここで、芳香族オキシカルボン酸としては、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸など、または上記芳香族オキシカルボン酸のアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。また、芳香族ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ジフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸など、または上記芳香族ジカルボン酸のアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられる。さらに、芳香族ジオールとしては、ハイドロキノン、レゾルシン、ジオキシジフェニール、ナフタレンジオールなど、または上記芳香族ジオールのアルキル、アルコキシ、ハロゲン置換体などが挙げられ、脂肪族ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
本発明に用いる液晶ポリエステルの好ましい例としては、p−ヒドロキシ安息香酸成分と4,4’−ジヒドロキシビフェニル成分とハイドロキノン成分とテレフタル酸成分および/またはイソフタル酸成分とが共重合されたもの、p−ヒドロキシ安息香酸成分と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸成分とが共重合されたもの、p−ヒドロキシ安息香酸成分と6−ヒドロキシ2−ナフトエ酸成分とハイドロキノン成分とテレフタル酸成分とが共重合されたもの、などが挙げられる。
本発明では特に、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)からなる液晶ポリエステルであることが好ましい。なお、本発明において構造単位とはポリマーの主鎖における繰り返し構造を構成し得る単位を指す。
Figure 2008240228
この組み合わせにより分子鎖は適切な結晶性と非直線性すなわち溶融紡糸可能な融点を有するようになる。したがってポリマーの融点と熱分解温度の間で設定される紡糸温度において良好な製糸性を有するようになり長手方向に均一な繊維が得られ、かつ適度な結晶性を有するため繊維の強度、弾性率を高めることができる。さらに本発明においては、構造単位(II)、(III)のような嵩高くなく、直線性の高いジオールからなる成分を組み合わせることが重要である。この成分を組み合わせることにより繊維中で分子鎖は秩序だった乱れの少ない構造を取ると共に、結晶性が過度に高まらず繊維軸垂直方向の相互作用も維持できる。これにより高い強度、弾性率に加えて優れた耐摩耗性も得られるのである。
また、上記した構造単位(I)は構造単位(I)、(II)および(III)の合計に対して40〜85モル%が好ましく、より好ましくは65〜80モル%、さらに好ましくは68〜75モル%である。このような範囲とすることで結晶性を適切な範囲とすることができ高い強度、弾性率が得られ、かつ融点も溶融紡糸可能な範囲となる。
構造単位(II)は構造単位(II)および(III)の合計に対して60〜90モル%であることが好ましく、より好ましくは60〜80モル%、さらに好ましくは65〜75モル%である。このような範囲とすることで結晶性が過度に高まらず繊維軸垂直方向の相互作用も維持できるため耐摩耗性を高めることができる。
構造単位(IV)は構造単位(IV)および(V)の合計に対して40〜95モル%であることが好ましく、より好ましくは50〜90モル%、さらに好ましくは60〜85モル%である。このような範囲とすることでポリマーの融点が適切な範囲となり、ポリマーの融点と熱分解温度の間で設定される紡糸温度において良好な製糸性を有するようになり単繊維繊度が細く、長手方向に均一な繊維が得られる。
本発明に用いる液晶ポリエステルの各構造単位の好ましい範囲は以下のとおりである。この範囲の中で上記した条件を満たすよう組成を調整することで本発明の液晶ポリエステル繊維が好適に得られる。
構造単位(I)45〜65モル%
構造単位(II)12〜18モル%
構造単位(III)3〜10モル%
構造単位(IV)5〜20モル%
構造単位(V)2〜15モル%
本発明に用いる液晶ポリエステルポリマーの融点は、溶融紡糸可能な温度範囲を広くするため好ましくは260〜380℃であり、より好ましくは280〜350℃であり、さらに好ましくは300〜340℃である。
なお本発明で用いる液晶ポリエステルには構造単位(I)〜(V)以外に3,3’−ジフェニルジカルボン酸、2,2’−ジフェニルジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジカルボン酸、クロロハイドロキノン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン等の芳香族ジオールおよびp−アミノフェノールなどを本発明の効果を損なわない5mol%程度以下の範囲で共重合させても良い。
また本発明で用いる液晶ポリエステルには、本発明の効果を損なわない5重量%程度以下の範囲で他のポリマーを添加、併用することができる。添加、併用とはポリマー同士を混合する場合や、2成分以上の複合紡糸において一方の成分ないしは複数の成分に他のポリマーを部分的に混合使用すること、あるいは全面的に使用することをいう。他のポリマーとしては、ポリエステル、ポリオレフィンやポリスチレンなどのビニル系重合体、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンオキシド、ポリスルホン、芳香族ポリケトン、脂肪族ポリケトン、半芳香族ポリエステルアミド、ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂などのポリマーを添加しても良く、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン46、ナイロン6T、ナイロン9T、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、ポリエステル99Mなどが好適な例として挙げられる。なおこれらのポリマーを添加する場合、その融点は液晶ポリエステルの融点±30℃以内にすることが製糸性を損なわないために好ましい。
さらに本発明の効果を損なわない範囲内で、各種金属酸化物、カオリン、シリカなどの無機物や、着色剤、艶消剤、難燃剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、結晶核剤、蛍光増白剤、末端基封止剤、相溶化剤等の各種添加剤を少量含有しても良い。
本発明で用いる液晶ポリエステルポリマーの溶融粘度は1〜100Pa・sが好ましく、紡糸性を高めるためには10〜30Pa・sがより好ましい。なお、この溶融粘度は、融点(Tm)+10℃の条件で、ずり速度1,000(1/s)の条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
溶融紡糸において、液晶ポリエステルの溶融押出は公知の手法を用いることができるが、重合時に生成する秩序構造をなくすためにエクストルーダー型の押出機を用いることが好ましい。押し出されたポリマーは配管を経由しギアーポンプなど公知の計量装置により計量され、異物除去のフィルターを通過した後、口金へと導かれる。このときポリマー配管から口金までの温度(紡糸温度)は液晶ポリエステルの融点以上、熱分解温度以下とすることが好ましく、液晶ポリエステルの融点+10℃以上、400℃以下とすることがより好ましく、液晶ポリエステルの融点+20℃以上、370℃以下とすることがさらに好ましい。なお、ポリマー配管から口金までの温度をそれぞれ独立して調整することも可能である。この場合、口金に近い部位の温度をその上流側の温度より高くすることで吐出が安定する。
また単繊維繊度を小さくするためには、吐出時の安定性、細化挙動の安定性を高める必要があり、工業的な溶融紡糸ではエネルギーコストの低減、生産性向上のため1つの口金に多数の口金孔を穿孔するため、それぞれの孔の吐出、細化を安定させる必要がある。これを達成するためには口金孔の孔径を小さくするとともに、ランド長(口金孔の孔径と同一の直管部の長さ)を長くすることが重要である。ただし孔径が過度に小さいと孔の詰まりが発生しやすくなるため直径0.05mm以上、0.25mm以下が好ましく、0.10mm以上、0.20mm以下がさらに好ましい。ランド長は過度に長いと圧力損失が高くなるため、ランド長を孔径で除した商で定義されるL/Dが1.0以上、3.0以下が好ましく1.5以上、2.5以下がより好ましい。また均一性を維持するために1つの口金の孔数は50孔以下が好ましく、20孔以下がより好ましい。
口金孔より吐出されたポリマーは保温、冷却領域を通過させ固化させた後、一定速度で回転するローラー(ゴデットローラー)により引き取られる。保温領域は過度に長いと製糸性が悪くなるため口金面から200mmまでとすることが好ましく、100mmまでとすることがより好ましい。保温領域は加熱手段を用いて雰囲気温度を高めることも可能であり、その温度範囲は100℃以上、500℃以下が好ましく、200℃以上、400℃以下がより好ましい。冷却は不活性ガス、空気、水蒸気等を用いることができるが、平行あるいは環状の空気流を用いることが環境負荷を低くする点から好ましい。
引き取り速度は生産性、単糸繊度の低減のため50m/分以上が好ましく、300m/分以上がより好ましく、500m/分以上がさらに好ましい。上限は特に制限されないが、液晶ポリエステルの曳糸性の点から2000m/分程度となる。
引き取り速度を吐出線速度で除した商で定義される紡糸ドラフトは分子配向を高め、また単糸繊度を小さくするため1以上、500以下とすることが好ましく、5以上、200以下とすることがより好ましく、12以上、100以下とすることがさらに好ましい。
溶融紡糸においてはポリマーの冷却固化から巻き取りまでの間に油剤を付与することが繊維の取り扱い性を向上させる上で好ましい。油剤は公知のものを使用できるが、高温での固相重合に耐え得るポリシロキサン系のシリコーンオイルなどを主体とした油剤を用いることがより好ましい。
次に、溶融紡糸で得られた繊維は固相重合されることが好ましい。固相重合とは、溶融紡糸繊維の吸熱ピークをTm1(℃)とした場合、最高到達温度がTm1−60(℃)以上となるような温度で処理し、これにより繊維の固相重合が速やかに進行し、繊維の強度を向上させることができる。なお、ここで言うTm1は実施例記載の測定方法により求められた値を指す。また固相重合温度の上限は融着を防ぐため融点以下とし、固相重合の進行と共に液晶ポリエステル繊維の融点は上昇するため、固相重合温度を時間に対し段階的にあるいは連続的に高めることは、融着を防ぐと共に固相重合の時間効率を高めることができ、より好ましい。固相重合時間は、固相重合温度にもよるが、繊維の強度、弾性率、融点を十分に高くするためには最高到達温度で5時間以上とすることが好ましく、10時間以上とすることがより好ましい。上限は特に制限されないが繊維の強度、弾性率、融点増加の効果は経過時間と共に飽和するため50時間程度で十分である。
このような固相重合に際して、その設備生産性、生産効率性の観点から、液晶ポリエステル溶融紡糸繊維を、巻き密度が0.01g/cc以上、0.30g/cc未満の繊維パッケージとしてボビン上に形成し、これを固相重合することが好ましい。また取扱いの可能な総繊度1dtex以上、融着による悪影響の大きい総繊度500dtex以下の繊維を用いることが好ましい。
なお固相重合時の融着を防ぐため、繊維表面に塩やタルク、スメクタイトなどの無機物質、シリコーンオイルなどの耐熱性の高い油分を付着させることは好ましい実施形態である。これら成分の付着は溶融紡糸から巻き取りまでの間に行っても良いが、付着効率を高めるためには巻き返しの際に行う、あるいは溶融紡糸で少量を付着させ、巻き返しの際にさらに追加することが好ましい。
固相重合は窒素等の不活性ガス雰囲気中や、空気のような酸素含有の活性ガス雰囲気中または減圧下で行うことが可能であるが、設備の簡素化および繊維あるいは付着物の酸化防止のため窒素雰囲気下で行うことが好ましい。この際、固相重合の雰囲気は露点が−40℃以下の低湿気体が好ましい。
本発明においては、このようにして得られた液晶ポリエステル繊維に、該繊維の示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+10℃以上の温度で熱処理を施す。なお、ここで言うTm1は実施例記載の測定方法により求められた値を指す。Tm1は繊維の融点であるが、液晶ポリエステル繊維に融点+10℃以上もの高温で熱処理を施すことで、単繊維繊度が小さい場合でも耐摩耗性は大きく向上する。
背景技術にも上げたように液晶ポリエステルのように剛直な分子鎖は緩和時間が長く、表層が緩和する時間のうちに内層も緩和し繊維が溶融してしまう。このため、液晶ポリエステル繊維に適した耐摩耗性向上技術を検討したところ、液晶ポリエステルの場合、分子鎖を緩和させるのではなく加熱により繊維全体の結晶性を低下させることで耐摩耗性を向上できることを見出した。
さらに結晶性を低下させるためには繊維を融点以上に加熱する必要があるが、熱可塑性合成繊維においてはこのような高温では、特に単繊維繊度が小さい場合には強度、弾性率が低下し、さらには熱変形、溶融してしまう。液晶ポリエステルでもこのような挙動は見られるが、本発明者らは固相重合した液晶ポリエステル繊維では分子量増加により緩和時間は非常に長くなっているため分子運動性が低く、融点以上の高温で熱処理しても短時間であれば、分子鎖の配向を維持したまま結晶化度を低下させることができ、強度、弾性率の低下が小さいことを見出した。
これらのことから特に単糸繊度が小さい液晶ポリエステル繊維に対し、熱処理条件を検討したところTm1+10℃以上の熱処理を短時間行うことで、液晶ポリエステル繊維の強度、弾性率、耐熱性を大きく損なうことなく耐摩耗性を向上できることを見出したのである。
熱処理温度はTm1+10℃以上とすることで繊維の耐摩耗性が向上する。熱処理温度が高いほど結晶化度が低下し耐摩耗性は向上するため、処理温度はTm1+40℃以上が好ましく、Tm1+60℃以上がより好ましく、Tm1+80℃以上がさらに好ましい。処理温度の上限は繊維が溶断する温度であり、張力、速度、単繊維繊度、処理長で異なるがTm1+300℃程度である。
なお、従来でも液晶ポリエステル繊維の熱処理を行う例はあるが、液晶ポリエステルは融点以下の温度でも応力により熱変形(流動)するため融点以下で行うことが一般的である。熱処理という点では液晶ポリエステル繊維の固相重合があるが、この場合でも処理温度は繊維の融点以下としないと繊維が融着、溶断してしまう。固相重合の場合、処理に伴い繊維の融点が上昇するため、最終の固相重合温度は処理前の繊維の融点以上となることがあるが、その場合でも処理温度は処理されている繊維の融点、すなわち熱処理後の繊維の融点よりも低い。
本発明における熱処理は固相重合を行うことではなく、固相重合によって形成された緻密な結晶部分と非晶部分の構造差を減少させること、つまり結晶化度を低下させることで耐摩耗性を高めるものである。したがって熱処理温度は熱処理によりTm1が変化しても、変化後の繊維のTm1+10℃以上とすることが好ましく、この点から熱処理温度は処理後の繊維のTm1+10℃以上とすることが好ましく、Tm1+40℃以上がより好ましく、Tm1+60℃以上がさらに好ましく、Tm1+80℃以上が特に好ましい。
また、別の熱処理として液晶ポリエステル繊維の熱延伸があるが、熱延伸は高温で繊維を緊張させるものであり、繊維構造は分子鎖の配向が高くなり、結晶化度は維持したまま、すなわちΔHm1は高いままである。したがって耐摩耗性に劣る繊維構造となり、結晶化度を低下(ΔHm1減少)させて耐摩耗性を向上させることを目的とする本発明の熱処理とは異なる。
加熱方法は雰囲気を加熱し熱伝達により繊維を加熱する方法、レーザーや赤外線を用いて輻射加熱する方法などがあるがブロックまたはプレートヒーターを用いたスリットヒーターによる加熱は雰囲気加熱、輻射加熱の両方の効果を併せ持ち、処理の安定性が高めるため好ましい。
熱処理は繊維を連続的に走行させながら行うことが繊維間の融着を防ぎ、処理の均一性を高められるため好ましい。このときフィブリルの発生を防ぎ、かつ均一な処理を行うためには非接触熱処理を行うことが好ましい。パッケージ状で固相重合した液晶ポリエステル繊維を用いる場合には、パッケージから繊維を解舒しつつ連続処理しても良く、その際には解舒による固相重合パッケージの崩れを防ぎ、さらに軽微な融着を剥がす際のフィブリル化を抑制するために固相重合パッケージを回転させながら、回転軸と垂直方向(繊維周回方向)に糸を解舒する、いわゆる横取りにより解舒することが好ましく、さらに固相重合パッケージの回転は自由回転ではなく積極駆動により回転させることが好ましい。なお熱処理は解舒した繊維を一旦巻き取った後、再度解舒しつつ行っても良い。
処理時間は短すぎると耐摩耗性が向上しないため0.01秒以上が好ましく、0.1秒以上がより好ましい。処理時間が長いと分子鎖の配向が緩和し強度、弾性率が低下するため、5.0秒以下が好ましく、より好ましくは2.0秒以下である。
連続処理する際の繊維は張力が高いと熱による溶断が発生しやすく、また過度の張力がかかった状態で熱処理を行う場合、結晶化度の低下が小さく耐摩耗性の向上効果が低くなるため、できるだけ低張力にすることが好ましい。この点において熱延伸とは明らかに異なる。しかしながら、張力が低すぎると繊維の走行が不安定となり処理が不均一になることから、0.001cN/dtex以上1.0cN/dtex以下が好ましく、0.01cN/dtex以上0.5cN/dtex以下がより好ましく、0.1cN/dtex以上0.3cN/dtex以下がさらに好ましい。
また連続で熱処理する場合、適宜ストレッチおよびリラックスを加えても良い。リラックスする場合、張力が低すぎると繊維の走行が不安定となり処理が不均一になることから、リラックス率は2%以下が好ましい。また、張力が高いと熱による溶断が発生しやすく、また過度の張力がかかった状態で熱処理を行う場合、結晶化度の低下が小さく耐摩耗性の向上効果が低くなるため、ストレッチ率は熱処理温度にもよるが、30%未満が好ましい。より好ましくは10%未満、さらに好ましくは5%未満、特に好ましくは3%未満である。
処理速度は処理長にもよるが高速であるほど高温短時間処理が可能となり、耐摩耗向上効果が高まるため10m/分以上が好ましく、より好ましくは50m/分以上、さらに好ましくは100m/分以上である。処理速度の上限は繊維の走行安定性から1000m/分程度である。
処理長は加熱方法にもよるが、ブロック、プレートヒーターを用いた非接触加熱の場合には均一な処理を行うために10mm以上が好ましく、100mm以上がより好ましく、500mm以上がさらに好ましい。また処理長が過度に長いとヒーター内部での糸揺れにより処理ムラ、繊維の溶断が発生するため3000mm以下が好ましく、2000mm以下がより好ましく、1000mm以下がさらに好ましい。
熱処理に供する液晶ポリエステル繊維は、Tm1が300℃以上400℃以下が好ましく、320℃以上350℃以下がより好ましい。このような高い融点を有することで熱処理温度を高めても安定な処理が可能となり生産性が向上できる。またTm1における融解熱量△Hm1は6.0J/g以上が好ましく、7.0J/g以上がより好ましい。さらにTm1おけるピーク半値幅は15℃未満が好ましい。ΔHm1が大きいほど結晶化度が高く、またTm1おけるピーク半値幅が小さいほど結晶の完全性が高く強度、弾性率が高いため熱処理後の繊維においても高い強度、弾性率を維持することができる。
さらに熱処理に供する液晶ポリエステル繊維は単繊維繊度が18.0dtex以下であることが好ましい。単繊維繊度を18.0dtex以下と細くすることで、繊維のしなやかさが向上し繊維の加工性が向上する、表面積が増加するため接着剤などの薬液との密着性が高まると言う繊維としての長所を有することに加え、モノフィラメントからなる紗とする場合は厚みを薄くできる、織密度を高くできるという利点を持つ。単繊維繊度はより好ましくは10.0dtex以下、さらに好ましくは7.0dtex以下である。なおフィラメント数については、フィラメント間の処理の均一性を高めるために50以下が好ましく、20以下がより好ましい。特にフィラメント数が1であるモノフィラメントは均一な処理が可能となり本発明が特に好適に用いることができる。
熱処理に供する液晶ポリエステル繊維の強度は14.0cN/dtex以上が好ましく、18.0cN/dtex以上がより好ましく、20.0cN/dtex以上がさらに好ましい。また弾性率は600cN/dtexが好ましく、700cN/dtex以上がより好ましく、800cN/dtex以上がさらに好ましい。なおここで言う強度とはJISL1013:1999記載の引張強さを指し、弾性率とは初期引張抵抗度のことを指す。強度、弾性率が高いことにより熱処理後の繊維においても高い強度、弾性率を維持することができる。
また熱処理に供する液晶ポリエステル繊維の繊度変動率は30%以下が好ましく、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下である。また強力変動率は20%以下が好ましく、15%以下がより好ましい。なおここで言う強力とはJISL1013:1999記載の引張強さの測定における切断時の強さを指し、繊度変動率、強力変動率とは実施例記載の手法により測定された値を指す。繊度変動率、強力変動率が小さい繊維を用いることで処理ムラ、溶断が軽減され、処理温度を高めることができる。
本発明で得られる液晶ポリエステル繊維は、その強度は12.0cN/dtex以上となることが好ましく、14.0cN/dtex以上がより好ましく、16.0cN/dtex以上がさらに好ましく、18.0cN/dtex以上が特に好ましい。なお本発明で言う強度とはJISL1013:1999記載の引張強さを指す。また弾性率は500cN/dtex以上となることが好ましく、600cN/dtex以上がより好ましく、700cN/dtex以上がさらに好ましい。なお本発明で言う弾性率とはJISL1013:1999記載の初期引張抵抗度を指す。強度、弾性率の上限は特に限定されないが、本発明で達し得る上限としては強度30.0cN/dtex程度、弾性率1200cN/dtex程度である。熱処理後においても高強度、高弾性率であることで工程中での断糸などによるトラブルが軽減される。
また本発明で得られる液晶ポリエステル繊維は、繊度変動率が30%以下となることが好ましく、20%以下がより好ましく、10%以下がさらに好ましい。また強力変動率は20%以下となることが好ましく、15%以下がより好ましい。なおここで言う強力とはJISL1013:1999記載の引張強さの測定における切断時の強さを指し、繊度変動率、強力変動率とは実施例記載の手法により測定された値を指す。繊度変動率、強力変動率が小さい繊維が得られることで高次工程での工程通過性が高まる。
また本発明で得られる液晶ポリエステル繊維は、伸度が2.0%以上となることが好ましい。伸度が2.0%以上あることで繊維の衝撃吸収性が高まり、高次加工工程での工程通過性、取扱性に優れる。繊維の複屈折率(△n)は0.250以上0.450以下となることが好ましく、0.300以上0.400以下がより好ましい。△nがこの範囲であれば繊維軸方向の分子配向は十分に高く、高い強度、弾性率が得られる。
さらに本発明で得られる繊維は、セラミック素材との擦過に対する強さの指標となる耐摩耗性Cが6回以上となることが好ましく、10回以上がより好ましく、15回以上がさらに好ましく、20回以上が特に好ましく、30回以上が最も好ましい。本発明で言う耐摩耗性Cとは実施例記載の手法により測定された値を指す。耐摩耗性が6回以上であることで液晶ポリエステル繊維の高次加工工程でのフィブリル化が抑制でき、工程通過性が向上できる他、ガイド類へのフィブリルの堆積が減ずることから洗浄、交換周期を長くできる。
さらに本発明で得られる繊維は、金属素材との擦過に対する強さの指標となる耐摩耗性Mが10秒以上となることが好ましく、15秒以上がより好ましく、20秒以上がさらに好ましく、30秒以上が特に好ましい。本発明で言う耐摩耗性Mとは実施例記載の手法により測定された値を指す。耐摩耗性が10秒以上であることで液晶ポリエステル繊維の高次加工工程、特に製織工程での筬との擦過によるフィブリル化が抑制でき、工程通過性が向上できる他、ガイド類へのフィブリルの堆積が減ずることから洗浄、交換周期を長くできる。
また本発明で得られる液晶ポリエステル繊維は、Tm1が290℃以上となることが好ましく、300℃以上がより好ましく、310℃以上がさらに好ましい。熱処理後においても高い融点を有することで走行安定性が高まり生産性が向上できる。またTm1における融解熱量△Hm1は1.0J/g以上となることが好ましく、2.0J/g以上がより好ましい。さらにTm1おけるピーク半値幅は15℃以上が好ましい。ΔHm1が1.0J/g以上であり、Tm1おけるピーク半値幅が15℃以上と大きいことから結晶性を維持しながら結晶の完全性を低下させることで強度、弾性率を保ったまま耐摩耗性を高めることができ、熱処理および高次工程での工程通過性を高めることができる。またΔHm1の上限は6.0J/g以下となることが好ましく、5.0J/g以下がより好ましく、4.0J/g以下がさらに好ましい。ΔHm1が6.0J/g以下となるように結晶化度を低下させることで耐摩耗性を高めることができ、熱処理および高次工程での工程通過性を高めることができる。
また本発明で得られる液晶ポリエステル繊維は、熱処理前後で強度、弾性率を増加させないことが好ましい。強度、弾性率を増加させない場合、結晶化度が増加せず、または剛直な分子鎖が繊維軸方向へさらに配向せず、繊維軸垂直方向に強く、フィブリル化しにくく耐摩耗性に優れる繊維構造となる傾向にある。
さらに本発明で得られる液晶ポリエステル繊維は、熱処理に供する前の繊維のΔHm1と熱処理により得られた繊維のΔHm1より計算された融解熱量低下率が30%以上であることが好ましく、35%以上がより好ましく、40%以上がさらに好ましく、50%以上が特に好ましい。なおここで言う融解熱量低下率とは実施例記載の手法により測定された値を指す。
本発明で得られる液晶ポリエステル繊維は高強度・高弾性率の特徴を保持しながら、従来の液晶ポリエステル繊維に比べ耐摩耗性が改善されたものであり、一般産業用資材、土木・建築資材、スポーツ用途、防護衣、ゴム補強資材、電気材料(特に、テンションメンバーとして)、音響材料、一般衣料等の分野で広く用いられる。有効な用途としては、スクリーン紗、コンピューターリボン、プリント基板用基布、抄紙用のカンバス、エアーバッグ、飛行船、ドーム用等の基布、ライダースーツ、釣糸、各種ライン(ヨット、パラグライダー、気球、凧糸)、ブラインドコード、網戸用支持コード、自動車や航空機内各種コード、電気製品やロボットの力伝達コード等が挙げられ、特に有効な用途として工業資材用織物等に用いるモノフィラメントが挙げられる。
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれにより何ら限定されるものではない。なお、本発明の各種特性の評価は次の方法で行った。
(1)単繊維繊度および繊度変動率
検尺機にて繊維を10mカセ取りし、その重量(g)を1000倍し、1水準当たり10回の測定を行い平均値を繊度(dtex)とした。これをフィラメント数で除した商を単繊維繊度(dtex)とした。繊度変動率は繊度の10回の平均値からの最大もしくは最小値の差の絶対値のうち、いずれか大きい方の値を用いて下式により算出した。
繊度変動率(%)=((|最大値もしくは最小値−平均値|/平均値)×100)
(2)強度、伸度、弾性率および強力変動率
JIS L1013:1999記載の方法に準じて、試料長100mm、引張速度50mm/分の条件で、オリエンテック社製テンシロンUCT−100を用い1水準当たり10回の測定を行い、平均値を強力(cN)、強度(cN/dtex)、伸度(%)、弾性率(cN/dtex)とした。強力変動率は強力の10回の平均値からの最大もしくは最小値の差の絶対値のうち、いずれか大きい方の値を用いて下式により算出した。
強力変動率(%)=((|最大値もしくは最小値−平均値|/平均値)×100)
(3)Tm1、Tm1におけるピーク半値幅、ΔHm1
TA instruments社製DSC2920により示差熱量測定を行い、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークの温度をTm1(℃)とし、Tm1におけるピーク半値幅(℃)、融解熱量(ΔHm1)(J/g)を測定した。融解熱量低下率は熱処理に供する前の繊維のΔHm1と熱処理により得られた繊維のΔHm1を用いて下式により算出した。
融解熱量低下率(%)=
((熱処理前後の繊維のΔHm1の差/熱処理前の繊維のΔHm1)×100)
なお、参考例に示した液晶ポリエステルポリマーについてはTm1の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持した後、20℃/分の降温条件で50℃まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピークをTm2とし、Tm2をもってポリマーの融点とした。
(4)耐摩耗性C
直径4mmのセラミック棒ガイド(湯浅糸道工業(株)製棒ガイド:材質YM−99C、硬度1800)に接触角90°でかけた繊維の両端をストローク装置(東洋精機製作所社製糸摩擦抱合力試験機)に把持し、棒ガイドに棒ガイドに0.88cN/dtexの応力を付与しつつ(繊維に0.62cN/dtexの応力がかかる方向に付与する)、ストローク長30mm、ストローク速度100回/分で繊維を擦過させ、ストローク回数1回毎に停止して、棒ガイド上の白粉または繊維表面のフィブリルの発生が確認されたストローク回数を測定し、5回の測定の平均値として求めた。なお耐摩耗性評価はマルチフィラメントでも同様の試験法で行った。
(5)耐摩耗性M
2.5g/dtexの荷重をかけた繊維を垂直に垂らし、繊維に対して垂直になるように直径3.8mmの硬質クロム梨地加工金属棒ガイド(湯浅糸道工業(株)製棒ガイド)を接触角2.7°で押し付け、ストローク長30mm、ストローク速度600回/分で繊維を繊維軸方向に擦過させ、棒ガイド上もしくは繊維表面上に白粉またはフィブリルの発生が確認されるまでの時間を測定し、7回の測定のうち最大値および最小値を除いた5回の平均値を求め耐摩耗性とした。なお耐摩耗性評価はマルチフィラメントでも同様の試験法で行った。
(6)複屈折率(△n)
偏光顕微鏡(OLYMPUS社製BH−2)を用いコンペンセーター法により試料1水準当たり5回の測定を行い、平均値として求めた。
(7)走行張力、走行応力
東レ・エンジニアリング社製テンションメーター(MODEL TTM−101)を用いて測定した。また、極低張力用には上記テンションメーターを改造したフルスケール5g、精度0.01g測定可能な張力計を用いた。計測した走行張力は単位を換算し、処理後繊維の繊度で除してcN/dtexの単位として走行応力とした。
(8)走行安定性
熱処理装置入口、出口での繊維の走行状態を目視で判定し、糸揺れが小さい場合を○、糸揺れが大きい場合を△、糸切れおよび繊維の溶断が発生した場合を×とした。
参考例1
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸870重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル327重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸292重量部、イソフタル酸157重量部および無水酢酸1433重量部(フェノール性水酸基合計の1.08当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、330℃まで4時間で昇温した。
重合温度を330℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例2
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器に p−ヒドロキシ安息香酸907重量部と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸457重量部及び無水酢酸946重量部(フェノール性水酸基合計の1.03モル当量)を攪拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、325℃まで4時間で昇温した。
重合温度を325℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例3
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸808重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル411重量部、ハイドロキノン104重量部、テレフタル酸314重量部、イソフタル酸209重量部および無水酢酸1364重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、300℃まで4時間で昇温した。
重合温度を300℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例4
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸323重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル436重量部、ハイドロキノン109重量部、テレフタル酸359重量部、イソフタル酸194重量部および無水酢酸1011重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、325℃まで4時間で昇温した。
重合温度を325℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例5
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸895重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル168重量部、ハイドロキノン40重量部、テレフタル酸135重量部、イソフタル酸75重量部および無水酢酸1011重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、365℃まで4時間で昇温した。
重合温度を365℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例6
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸671重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル235重量部、ハイドロキノン89重量部、テレフタル酸224重量部、イソフタル酸120重量部および無水酢酸1011重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、340℃まで4時間で昇温した。
重合温度を340℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例7
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸671重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル335重量部、ハイドロキノン30重量部、テレフタル酸224重量部、イソフタル酸120重量部および無水酢酸1011重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、305℃まで4時間で昇温した。
重合温度を305℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例8
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸671重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル268重量部、ハイドロキノン69重量部、テレフタル酸314重量部、イソフタル酸30重量部および無水酢酸1011重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、355℃まで4時間で昇温した。
重合温度を355℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例9
攪拌翼、留出管を備えた5Lの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸671重量部、4,4’−ジヒドロキシビフェニル268重量部、ハイドロキノン69重量部、テレフタル酸150重量部、イソフタル酸194重量部および無水酢酸1011重量部(フェノール性水酸基合計の1.10当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら室温から145℃まで30分で昇温した後、145℃で2時間反応させた。その後、310℃まで4時間で昇温した。
重合温度を310℃に保持し、1.5時間で133Paに減圧し、更に20分間反応を続け、トルクが15kgcmに到達したところで重縮合を完了させた。次に反応容器内を0.1MPaに加圧し、直径10mmの円形吐出口を1ケ持つ口金を経由してポリマーをストランド状物に吐出し、カッターによりペレタイズした。
参考例1〜9で得られた液晶性ポリエステルの特性を表1に示す。なお、溶融粘度は高化式フローテスターを用い、温度を融点+10℃、剪断速度を1000/sとして測定した
Figure 2008240228
実施例1
参考例1の液晶ポリエステルを用い、160℃、12時間の真空乾燥を行った後、大阪精機工作株式会社製φ15mm単軸エクストルーダーにて(ヒーター温度290〜340℃)溶融押し出しし、ギアーポンプで計量しつつ紡糸パックにポリマーを供給した。このときのエクストルーダー出から紡糸パックまでの紡糸温度は345℃とした。紡糸パックでは金属不織布フィルター(渡辺義一製作所社製WLF−10)を用いてポリマーを濾過し、孔径0.13mm、ランド長0.26mmの孔を5個有する口金より吐出量3.0g/分(単孔あたり0.6g/分)でポリマーを吐出した。
吐出したポリマーは40mmの保温領域を通過させた後、環状冷却風により糸条の外側から冷却し固化させ、その後、ポリジメチルシロキサンを主成分とする油剤を付与し5フィラメントともに1200m/分の第1ゴデットロールに引き取った。このときの紡糸ドラフトは32である。これを同じ速度である第2ゴデットロールを介した後、5フィラメント中の4本はサクションガンにて吸引し、残り1本をダンサーアームを介しパーンワインダー(巻取パッケージに接触するコンタクトロール無し)を用いてパーンの形状に巻き取った。約100分の巻取時間中、糸切れは発生せず製糸性は良好であった。なお油分付着量は1.0重量%であった。
この紡糸繊維パッケージから繊維を縦方向(繊維周回方向に対し垂直方向)に解舒し、調速ローラーを介さず、速度を一定とした巻取機(神津製作所社製ET−68S調速巻取機)にて巻き返しを行った。なお、巻き返しの心材にはステンレス製の穴あきボビンにケブラーフェルト(目付280g/m、厚み1.5mm)を巻いたものを用い、巻き返し時の張力は0.05cN/dtexとし、巻き量は2万mとした。さらにパッケージ形態はテーパー角20°のテーパーエンド巻きとし、テーパー幅調整機構の改造によりトラバース幅を常に揺動させるようにした。このようにして巻き上がったパッケージの巻密度は0.08g/cmであった。
これを密閉型オーブンを用い、室温から240℃までは約30分で昇温し、240℃にて3時間保持した後、4℃/時間で295℃まで昇温し、さらに295℃で15時間保持する条件にて固相重合を行った。なお雰囲気は除湿窒素を流量25NL/分にて供給し、庫内が加圧にならないよう排気口より排気させた。
こうして得られた固相重合パッケージをインバーターモーターにより回転できる送り出し装置に取り付け、繊維を横方向(繊維周回方向)に給糸速度約100m/分で送り出しつつ巻取機(神津製作所社製ET型調速巻取機)にて巻き取った。得られた液晶ポリエステル繊維の物性を表2に示す。なお、この液晶ポリエステル繊維の△nは0.35であり高い配向を有していた。
この繊維を縦方向(繊維周回方向に対し垂直方向)に解舒しつつ、スリット幅5.6mmのスリットヒーターを用い、ヒーターと非接触として走行させながら熱処理を行った後、巻取機(神津製作所社製ET型調速巻取機)にて巻き取った。
処理温度、処理速度の条件および得られた液晶ポリエステル繊維の物性を表3に示すが、繊維のTm1+10℃以上の条件で高温熱処理を施すことで高い強度、弾性率、耐熱性(高融点)と優れた耐摩耗性を有する液晶ポリエステル繊維が得られることが分かる。なお、この得られた熱処理後の液晶ポリエステル繊維の△nは0.35であり、熱処理前と変わらない高い配向を有していた。
実施例2〜7、比較例1
実施例1で得られた固相重合後の繊維を用い、処理温度、処理速度を表3に示す条件としたこと以外は実施例1と同様の方法で熱処理を行った。走行張力が低い場合(実施例3)、処理温度が高い場合(実施例4、6)、処理長が長い場合(実施例7)では糸揺れが大きくなったものの糸切れ、溶断は発生せず走行は安定していた。得られた繊維物性を表3に合わせて示す。処理温度が繊維のTm1以下である比較例1では処理前の繊維に比べて耐摩耗性が向上していないが、Tm1+10℃以上の条件で高温熱処理を施した実施例4〜8では高い強度、弾性率、耐熱性(高融点)と優れた耐摩耗性を有する液晶ポリエステル繊維が得られることが分かる。
実施例8、9
実施例1で得られた固相重合後の繊維を用い、処理温度、処理速度を表3に示す条件とし、スリットヒーター前後で1.03倍、1.07倍のストレッチをかけたこと以外は実施例1と同様の方法で熱処理を行った。1.07倍のストレッチをかけた実施例9では糸揺れが大きくなったものの糸切れ、溶断は発生せず走行は安定していた。得られた繊維物性を表3に記載しているが、熱処理時に倍率をかけても、Tm1+10℃以上の条件で高温熱処理を施すことで高い強度、弾性率、耐熱性(高融点)と優れた耐摩耗性を有する液晶ポリエステル繊維が得られることが分かる。また、実施例8は、実施例8よりもストレッチ率の高く、走行張力の大きい実施例9の繊維に比べて融解熱量低下率が大きく、耐摩耗性の向上の効果も大きい。
実施例10〜12
吐出量、口金孔径、ランド長、紡糸速度を表2に示した条件とすること以外は実施例1と同様の方法で溶融紡糸を行った。これを実施例1と同様の方法で巻き返し、固相重合および解舒を行った。さらに熱処理温度を表3に示した条件とすること以外は実施例1と同様の方法で熱処理を行った。糸揺れは小さく走行は安定していた。
得られた繊維物性も表3に記載しているが、異なる単繊維繊度の繊維であってもTm1+10℃以上の条件で高温熱処理を施すことで高い強度、弾性率、耐熱性(高融点)と優れた耐摩耗性を有する液晶ポリエステル繊維が得られることが分かる。
実施例13,14
吐出量、口金孔数を表2に示す条件としたこと以外は実施例1と同様の条件で溶融紡糸を行い、10フィラメントをまとめて巻き取り、紡糸繊維を得た(実施例13)。また吐出量、口金孔数を表2に示す条件としたこと以外は実施例1と同様の条件で溶融紡糸を行い、36フィラメントをまとめて巻き取り、紡糸繊維を得た(実施例14)。これを実施例1と同様の方法で巻き返し、固相重合、解舒を行った。さらに熱処理温度、処理長、処理速度を表4に記載した条件とすること以外は実施例1と同様の方法で熱処理を行い液晶ポリエステル繊維を得た。繊維物性を表4に示すがマルチフィラメントであってもTm1+10℃以上の条件で高温熱処理を施すことで高い強度、弾性率、耐熱性(高融点)と優れた耐摩耗性を有する液晶ポリエステル繊維が得られることが分かる。
実施例15〜23
参考例2〜9の液晶ポリエステルを用い、紡糸温度を表2に示す条件とすること以外は実施例11と同様の方法で溶融紡糸、巻き返しを行った。固相重合の温度および時間は室温から220℃までは約30分で昇温し、220℃にて3時間保持した後、4℃/時間で表2記載の最終温度まで昇温し、さらに最終温度で15時間保持する条件とした。
その後、処理温度を表4記載の条件とすること以外は実施例1と同様の手法で解舒、熱処理を行った。参考例8および9の液晶ポリエステルを用いた実施例22、23では糸揺れが大きくなったものの糸切れ、溶断は発生せず走行は安定していた。得られた繊維物性を表4に示す。参考例2〜9の液晶ポリエステルを用いてもTm1+10℃以上の条件で高温熱処理を施すことで高い強度、弾性率、耐熱性(高融点)と優れた耐摩耗性を有する液晶ポリエステル繊維が得られることが分かる。
Figure 2008240228
Figure 2008240228
Figure 2008240228

Claims (6)

  1. 液晶ポリエステル繊維を、示差熱量測定において、50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+10℃以上の温度で熱処理することを特徴とする液晶ポリエステル繊維の製造方法。
  2. 熱処理時間が0.01秒以上5.0秒以下であることを特徴とする請求項1記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
  3. 液晶ポリエステル繊維の単繊維繊度が18.0dtex以下であることを特徴とする請求項1または2記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
  4. 熱処理温度が、熱処理後の繊維の示差熱量測定において50℃から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)+10℃以上であることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
  5. 液晶ポリエステル繊維がモノフィラメントであることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
  6. 液晶ポリエステルが下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)からなることを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の液晶ポリエステル繊維の製造方法。
    Figure 2008240228
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