JPWO2015041321A1 - 3相ブラシレスモータの駆動装置 - Google Patents

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Abstract

本発明は、3相ブラシレスモータをセンサレスで駆動する駆動装置において、ブラシレスモータの初期位置の検出を行え、位置決め処理を行うことなくモータ駆動を開始させることができるようにする。3相のうち通電する2つの相を選択する6通りの通電モードを順次切り替えることでブラシレスモータを駆動する装置において、駆動開始前に、6通りの通電モードでの通電をモータが回転しないようにして順次行って開放相の起電圧をそれぞれで取得し、起電圧の差を通電モードの所定の組み合わせ毎に求め、求めた起電圧差のうちの最大値に基づきブラシレスモータの初期位置が6つに区分された領域のいずれに該当するかを推定する。

Description

本発明は、3相ブラシレスモータの駆動装置に関し、詳しくは、3相ブラシレスモータの初期位置を検出する技術に関する。
特許文献1には、3相ブラシレスモータの3相のうち通電する2つの相を選択する6通りの通電モードを切り替えることで3相ブラシレスモータを駆動する駆動装置において、非通電相の端子電圧と基準電圧との比較結果に応じて前記通電モードを順次切り替えるようにしたセンサレス制御が開示されている。
特開2009−189176号公報
ところで、センサレス制御でブラシレスモータを駆動する場合、駆動を開始するときに磁極位置(モータの初期位置)を把握して通電モードを決定する必要があり、例えば、駆動を開始する前に任意の相に通電を行って磁極位置を所定位置に固定する位置決め処理を行う場合があった。
しかし、位置決め処理では、所定の初期位置までモータを回転させて停止させるため、モータのイナーシャが大きいと位置決め処理が終了するまで(モータが停止するまで)の時間が長くなり、モータ駆動要求に対する実際の駆動開始が遅れるという問題があった。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、ブラシレスモータの初期位置の検出(推定)を行え、位置決め処理を行うことなくモータ駆動を開始させることができる、3相ブラシレスモータの駆動装置を提供することを目的とする。
そのため、本願発明では、ブラシレスモータの3相のうちの任意の1相と他の2相との間で、前記1相の電流が正及び負となるよう通電し、前記1相の電流が正となるときの開放相の起電圧と前記1相の電流が負となるときの開放相の起電圧との差に基づいて前記ブラシレスモータの初期位置を検出するようにした。
上記発明によると、前記起電圧差のレベルは磁極位置に応じて変化するため、前記起電圧差に基づきブラシレスモータが停止している位置(初期位置)を推定することが可能であり、位置決め処理を行うことなくモータ駆動を応答良く開始させることが可能になる。
本発明の第1実施形態における油圧ポンプシステムの構成を示すブロック図である。 本発明の第1実施形態におけるモータ制御装置及びブラシレスモータの構成を示す回路図である。 本発明の第1実施形態における制御ユニットの機能ブロック図である。 本発明の第1実施形態における各通電モードの切り替え角度及び各通電モードにおける通電相、通電方向を示すタイムチャートである。 本発明の第1実施形態における電動オイルポンプ(ブラシレスモータ)の駆動制御のメインルーチンを示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態における初期位置の推定処理を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態における初期位置の推定処理を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態における初期位置の推定処理を示すフローチャートである。 本発明の第1実施形態におけるパルス誘起電圧の差を求める通電モードの組み合わせパターンを示す図である。 本発明の第1実施形態における初期位置の検出処理の特性を説明するための図である。 本発明の第1実施形態における初期位置と駆動開始時の通電モードでの励磁角度との相関を例示する図である。 本発明の第1実施形態における初期位置と駆動開始時の通電モードでの励磁角度との相関を例示する図である。 本発明の第1実施形態における初期位置と駆動開始時の通電モードの切り替え処理を例示する図である。 本発明の第1実施形態における起電圧検出のための最低デューティ比での通電を実施するためのパルスシフト制御を説明するためのタイムチャートである。 本発明の第1実施形態におけるパルスシフト制御で平均デューティを下げたときの起電圧差の特性を説明するための図である。 本発明の第1実施形態におけるモータ回転による磁束の変化と通電による磁束の飽和方向とを示す図である。 本発明の第1実施形態におけるモータ角度毎の磁気飽和電圧を示す図である。 本発明の第1実施形態におけるパルスシフト制御で平均デューティを上げたときの起電圧差の特性を説明するための図である。 本発明の第2実施形態におけるブラシレスモータの構成を示す図である。 本発明の第2実施形態における初期位置の検出処理の特性を説明するための図である。 本発明の第2実施形態における初期位置の推定処理を示すフローチャートである。 本発明の第2実施形態における初期位置の推定処理を示すフローチャートである。 本発明の第3実施形態における初期位置の検出処理の特性を説明するための図である。 本発明の第3実施形態における初期位置の推定処理を示すフローチャートである。 本発明の第4実施形態における起電圧差の特性を説明するための図である。 本発明の第4実施形態における初期位置の検出処理の特性を説明するための図である。
以下に本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本発明に係るブラシレスモータの駆動装置の一例として、自動車用の自動変速機の油圧ポンプシステムを構成するブラシレスモータに適用した例を示す。
図1に示す油圧ポンプシステムは、変速機構(TM)7やアクチュエータ8にオイルを供給するオイルポンプとして、図外のエンジン(内燃機関)の出力により駆動される機械式オイルポンプ6と、ブラシレスモータ2で駆動される電動オイルポンプ1とを備えている。
そして、電動オイルポンプ1は、例えば、エンジンがアイドルストップによって停止したとき(つまり、機械式オイルポンプ6が停止するとき)に作動されて変速機構7やアクチュエータ8に対するオイルの供給を行い、アイドルストップ中における油圧の低下を抑制する。
電動オイルポンプ1を駆動するブラシレスモータ(3相同期電動機)2は、駆動装置としてのモータ制御装置(MCU)3によって制御される。
モータ制御装置3は、AT制御装置(ATCU)4からの指令に基づいてブラシレスモータ2を駆動制御する。
電動オイルポンプ1は、オイルパン10のオイルを変速機構7やアクチュエータ8にオイル配管5を介して供給する。
エンジン運転中は、エンジンで駆動される機械式オイルポンプ6が作動し、機械式オイルポンプ6から変速機構7やアクチェータ8にオイルが供給され、このとき、ブラシレスモータ2はオフ状態(停止状態)であって、逆止弁11によって電動オイルポンプ1に向かうオイルの流れは遮断される。
一方、エンジンがアイドルストップによって一時的に停止すると、機械式オイルポンプ6が停止しオイル配管9内の油圧が低下するので、AT制御装置4は、エンジンがアイドルストップによって停止するときに、モータ起動の指令をモータ制御装置3に送信する。
モータ起動指令を受けたモータ制御装置3は、ブラシレスモータ2を起動させて電動オイルポンプ1を回転させ、電動オイルポンプ1によるオイルの圧送を開始させる。
そして、機械式オイルポンプ6の吐出圧が低下する一方で電動オイルポンプ1の吐出圧が設定圧を越えると逆止弁11が開弁し、オイル配管5、電動オイルポンプ1、逆止弁11、変速機構7、アクチェータ8、オイルパン10の経路を通ってオイルが循環するようになる。
なお、上記の自動車用自動変速機の油圧ポンプシステムは、ブラシレスモータを適用するシステムの一例であり、ブラシレスモータをアクチュエータとして用いる種々のシステムに本願発明に係る駆動装置を適用することができる。
例えば、ブラシレスモータは、ハイブリッド車両などにおいてエンジンの冷却水の循環に用いる電動ウォータポンプを駆動するブラシレスモータとすることができ、ブラシレスモータが駆動する機器をオイルポンプに限定するものではなく、また、ブラシレスモータを自動車に搭載されるモータに限定するものではない。
図2は、ブラシレスモータ2及びモータ制御装置3の一例を示す回路図である。
ブラシレスモータ2を駆動する駆動装置であるモータ制御装置3は、モータ駆動回路212と、制御ユニット213とを備え、制御ユニット213はAT制御装置4との間で通信を行う。制御ユニット213は、A/D変換器213a、マイクロプロセッサ(CPU,MPUなど)を備えたマイクロコンピュータ(マイコン)213bなどを含んで構成される。
ブラシレスモータ2は、3相DCブラシレスモータであり、スター結線されるU相、V相及びW相の3相巻線215u、215v、215wを、図示省略した円筒状の固定子に備え、該固定子の中央部に形成した空間に永久磁石回転子(ロータ)216を回転可能に備える。
モータ駆動回路212は、逆並列のダイオード218a〜218fを含んでなるスイッチング素子217a〜217fを3相ブリッジ接続した回路と、電源回路219とを有する。スイッチング素子217a〜217fは例えばFETで構成される。
スイッチング素子217a〜217fの制御端子(ゲート端子)は、制御ユニット213に接続され、制御ユニット213は、スイッチング素子217a〜217fのオン、オフをパルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)によって制御することで、ブラシレスモータ2に印加する電圧を制御する。
PWM制御においては、三角波に設定されるPWMタイマの値と、指令デューティ比(指令パルス幅)に応じて設定されるPWMタイマ設定値とを比較することで、各スイッチング素子217a〜217fをオン、オフさせるタイミングを検出する。
制御ユニット213によるブラシレスモータ2の駆動制御は、回転子の位置情報を検出するセンサを用いないセンサレスで行われ、更に、制御ユニット213は、センサレス駆動方式をモータ回転速度に応じて正弦波駆動方式と矩形波駆動方式とに切り替える。
正弦波駆動方式は、各相に正弦波電圧を加えてブラシレスモータ2を駆動する方式である。この正弦波駆動方式では、回転子が回転することによって発生する誘起電圧(速度起電圧)から回転子の位置情報を得る一方、速度起電圧による回転子位置の検出周期の間で、モータ回転速度に基づき回転子位置を推定し、推定した回転子位置とPWMデューティとから3相出力設定値を算出し、相間電圧の差で電流の向きと強さとを制御して3相交流電流を各相に流す。
また、矩形波駆動方式は、3相のうちでパルス電圧を印加する2相の選択パターン(通電モード)を所定の回転子位置毎に順次切り替えることでブラシレスモータ2を駆動する方式である。
この矩形波駆動方式では、通電相に対するパルス状の電圧印加によって非通電相に誘起される電圧(変圧器起電圧、パルス誘起電圧)から回転子の位置情報を得て、通電モードの切り替えタイミングである角度位置を検出する。
ここで、正弦波駆動方式において位置検出のために検出する速度起電圧は、モータ回転速度の低下に伴って出力レベルが低下するため、低回転域では位置検出の精度が低下する。一方、矩形波駆動方式において位置検出のために検出するパルス誘起電圧は、モータ停止状態を含む低回転域においても検出可能であり、低回転域でも位置検出の精度を維持できる。
そこで、制御ユニット213は、正弦波駆動方式で位置情報を十分な精度で検出できる高回転領域、つまり、設定値よりもモータ回転速度が高い領域では、正弦波駆動方式でブラシレスモータ2を制御する。
また、制御ユニット213は、正弦波駆動方式では十分な精度で位置情報を検出できない低回転領域では、矩形波駆動方式でブラシレスモータ2を制御する。なお、正弦波駆動方式では十分な精度で位置情報を検出できない低回転領域には、設定値よりもモータ回転速度が低い領域、及び、モータ起動時が含まれる。
更に、制御ユニット213は、ブラシレスモータ2のPWM制御において、例えば、モータ回転速度の検出値と目標モータ回転速度との偏差に応じてPWM制御のデューティ比を決定して、実際のモータ回転速度を目標モータ回転速度に近づける。
以下では、制御ユニット213が実施する、矩形波駆動方式でのブラシレスモータ2の駆動制御を詳述する。
図3は、制御ユニット213の機能ブロック図である。
制御ユニット213は、PWM発生部251、ゲート信号切替部252、通電モード決定部253、比較部254、電圧閾値切替部255、電圧閾値学習部256、非通電相電圧選択部257を備えている。
PWM発生部251は、印加電圧指令(指令電圧)に基づき、パルス幅変調されたPWM波を生成する。
通電モード決定部253は、モータ駆動回路212の通電モードを決定するモード指令信号を出力するデバイスであり、比較部254が出力するモード切替トリガ信号をトリガとして通電モードを6通りに切り替える。
通電モードとは、ブラシレスモータ2のU相、V相、W相の3相のうちでパルス電圧を印加する2相の選択パターンを示し、U相からV相に向けて電流を流す第1通電モードM1、U相からW相に向けて電流を流す第2通電モードM2、V相からW相に向けて電流を流す第3通電モードM3、V相からU相に向けて電流を流す第4通電モードM4、W相からU相に向けて電流を流す第5通電モードM5、W相からV相に向けて電流を流す第6通電モードM6の6種類の通電モードからなる。
そして、通電モード決定部253は、比較部254が出力するモード切替トリガ信号に応じて、第1通電モードM1〜第6通電モードM6のいずれか1つを指令するモード指令信号を出力する。
ゲート信号切替部252は、モータ駆動回路212の各スイッチング素子217a〜217fがどのような動作でスイッチングするかを、通電モード決定部253の出力であるモード指令信号に基づいて決定し、該決定に従い6つのゲートパルス信号をモータ駆動回路212に出力する。
電圧閾値切替部255は、通電モードの切り替えタイミングの検出に用いる電圧閾値を、通電モードに応じて順次切り替えて出力し、閾値の切り替えタイミングは、通電モード決定部253の出力であるモード指令信号に基づき決定される。
非通電相電圧選択部257は、モード指令信号に従い、ブラシレスモータ2の3相端子電圧Vu,Vv,Vwの中から非通電相の電圧の検出値を選択し、比較部254及び電圧閾値学習部256に出力する。
尚、非通電相の端子電圧は、厳密にはグランドGND−端子間の電圧であるが、本実施形態では、中性点の電圧を検出し、この中性点の電圧とグランドGND−端子間電圧との差を求めて端子電圧Vu,Vv,Vwとする。
尚、中性点の電圧は、グランドGND−電源電圧間を1/2倍したものでもよい。
比較部254は、電圧閾値切替部255が出力する閾値と、非通電相電圧選択部257が出力する非通電相の電圧検出値(パルス誘起電圧の検出値)とを比較することで、通電モードの切り替えタイミング、換言すれば、通電モードを切り替える回転子位置(磁極位置)になったか否かを検出し、切り替えタイミングを検出したときに通電モード決定部253に向けてモード切替トリガを出力する。
また、電圧閾値学習部256は、通電モードの切り替えタイミングの判定に用いる閾値を更新して記憶するデバイスである。
非通電相(開放相)のパルス誘起電圧は、ブラシレスモータ2の製造ばらつき、電圧検出回路の検出ばらつきなどによって変動するため、閾値として固定値を用いると通電モードの切り替えタイミングを誤って判定する可能性がある。
そこで、電圧閾値学習部256は、通電モードの切り替えを行う所定磁極位置でのパルス誘起電圧を検出し、当該検出結果に基づいて電圧閾値切替部255が記憶する閾値を修正する閾値の学習処理を実施する。
通電モードは、前述のように6通りの通電モードM1〜M6からなり、矩形波駆動方式では、これらの通電モードM1〜M6を電気角60deg間隔で設定される切り替え角度位置で順次切り替え、3相のうちパルス電圧(パルス状の電圧)を印加する2相を順次切り替えることでブラシレスモータ2を駆動する。
制御ユニット213は、図4に示すように、U相のコイルの角度位置を回転子(磁極)の基準位置(角度=0deg)としたときに、回転子の角度位置(磁極位置)が30degであるときに第3通電モードM3から第4通電モードM4への切り替えを行い、回転子角度位置が90degであるときに第4通電モードM4から第5通電モードM5への切り替えを行い、回転子角度位置が150degであるときに第5通電モードM5から第6通電モードM6への切り替えを行い、回転子角度位置が210degであるときに第6通電モードM6から第1通電モードM1への切り替えを行い、回転子角度位置が270degであるときに第1通電モードM1から第2通電モードM2への切り替えを行い、回転子角度位置が330degであるときに第2通電モードM2から第3通電モードM3への切り替えを行う。
制御ユニット213の電圧閾値切替部255は、通電モードの切り替えを行う回転子の角度位置での非通電相の電圧(パルス誘起電圧)を閾値として更新可能に記憶していて、そのときの通電モードに応じた閾値を出力する。
比較部254は、非通電相の電圧が閾値に達したときに次の通電モードへの切り替えを実施する角度を検出したことを示す信号を出力し、係る信号に基づき通電モード決定部253は通電モードの切り替えを実行する。
図5のフローチャートは、制御ユニット213によるブラシレスモータ2(電動オイルポンプ1)の制御のメインルーチンを示す。制御ユニット213は、図5のフローチャートに示すメインルーチンを所定時間毎の割り込みで実行する。
ステップS501で、制御ユニット213は、ブラシレスモータ2(電動オイルポンプ1)の駆動条件が成立しているか否かを判断する。
例えば、ブラシレスモータ2の電源電圧が所定電圧を超えている、各種の診断処理でブラシレスモータ2やモータ駆動回路212について異常が検出されていない、ブラシレスモータ2の電源リレーがオンになっている、電動オイルポンプ1の駆動要求がある、などを、ブラシレスモータ2の駆動条件に含めることができる。
なお、図1に示した油圧ポンプシステムの場合、電動オイルポンプ1の駆動条件の成立/非成立は、AT制御装置(ATCU)4が判断する構成とすることができ、また、AT制御装置(ATCU)4から各種の情報を取得したモータ制御装置3(制御ユニット213)が判断することもできる。
また、ブラシレスモータ2が、エンジンの冷却水の循環に用いる電動ウォータポンプを駆動するモータである場合、例えば、エンジン油温が設定温度を超えた場合やエンジンが始動された場合などに、モータ制御装置3(制御ユニット213)が電動ウォータポンプの駆動要求の成立を判断することができる。
制御ユニット213は、ステップS501で駆動条件の成立を判断すると、ステップS502へ進み、ブラシレスモータ2の初期位置(駆動開始時点での磁極位置)の推定処理を実施する条件が成立しているか否かを判断する。
例えば、ブラシレスモータ2が慣性回転している途中で駆動指令が生じた場合、推定処理の開始から完了までの間に初期位置の推定に影響を与えるほどにブラシレスモータ2が回転してしまうことがないように、推定処理は、ブラシレスモータ2の回転速度が所定速度(以下であること、換言すれば、回転子が回転することによって発生する誘起電圧(速度起電圧)が所定電圧以下であることを条件とする。
つまり、上記の所定速度は、初期位置の推定誤差を許容範囲内とすることができるモータ回転速度の上限値であり、前記所定電圧は、上限回転速度のときに発生する誘起電圧(速度起電圧)である。
ここで、所定速度は、所定速度≧0rpmとすることができ、モータ停止状態若しくは推定処理に要する時間での磁極位置の変化が十分に小さい低速回転状態で、初期位置の推定処理を実施する。
制御ユニット213は、ステップS502において初期位置の推定処理を実施する条件が成立していないと判断した場合、つまり、モータ回転速度が所定速度を超えている場合にはステップS502の処理を繰り返し、実施条件の成立を判断すると(モータ回転速度≦所定速度が成立すると)ステップS503へ進む。
なお、制御ユニット213は、ステップS502において初期位置の推定処理を実施する条件が成立していないと判断した場合、初期位置の推定が不能であると判断し、ブラシレスモータ2を所定位置まで回転させて固定する位置決め処理を実施することができる。
ステップS503で、制御ユニット213は、ブラシレスモータ2の初期位置を推定する処理を実施し、当該推定処理で推定した初期位置に応じて駆動を開始するときの通電モードを決定し、当該決定に基づいてブラシレスモータ2の駆動を開始する。
そして、ブラシレスモータ2が回転し始めると、制御ユニット213は、ステップS504へ進み、前述したセンサレス制御、つまり、低速域では矩形波駆動方式、高速域では正弦波駆動方式でブラシレスモータ2を駆動する。
図6〜図8のフローチャートに示したルーチンは、図5のフローチャートのステップS503における初期位置推定及び駆動開始処理の詳細を示す。
初期位置推定処理の概略を説明すると、ブラシレスモータ2を回転させないようにして各通電モードでの通電を順次行い、各通電モードで非通電相(開放相)に誘起される電圧(パルス誘起電圧)を取得する。
そして、所定の組み合わせで通電モード間でのパルス誘起電圧の差を求め、当該差のレベルを相互に比較することで、ブラシレスモータ2の初期位置を検出する。
まず、制御ユニット213は、ステップS601で、PWMデューティを初期位置推定用のデューティに設定して第1通電モードM1での通電を開始させ、次のステップS602で通電開始からの時間が所定時間に達したか否かを判断する。
前記所定時間は、通電モード切り替え後の還流する電流(以下、単に還流という)の影響を考慮した時間であり、還流の影響が十分に小さくなってからステップS603の電圧取得処理が実施されるようにする。
また、初期位置推定用のデューティは、モータの回転トルク、後述するパルス誘起電圧差(起電圧差)、電圧のA/D変換時間などを考慮した値であり、初期位置推定のための通電でブラシレスモータ2の角度が変化することを抑制しつつ、初期位置の推定感度を確保でき、更に、非通電相のパルス誘起電圧の検出を行えるデューティとして設定される。
制御ユニット213は、ステップS602で通電開始からの時間が所定時間に達したと判断すると、ステップS603へ進み、第1通電モードM1における非通電相(開放相)であるW相に誘起される起電圧(パルス誘起電圧)のデータVph1を取得する。
制御ユニット213は、上記のステップS601〜ステップS603と同様な処理を、他の通電モードについても実施し、それぞれの通電モードにおいて非通電相に誘起されるパルス誘起電圧のデータVphを取得する。つまり、制御ユニット213は、所定時間毎に通電モードを切り替え、通電モード毎に非通電相のパルス誘起電圧のデータVphを取得する。
制御ユニット213は、ステップS604〜ステップS606で第2通電モードM2にて通電を行って非通電相であるV相に誘起されるパルス誘起電圧のデータVph2を取得し、ステップS607〜ステップS609で第3通電モードM3にて通電を行って非通電相であるU相に誘起されるパルス誘起電圧のデータVph3を取得し、ステップS610〜ステップS612で、第4通電モードM4にて通電を行って非通電相であるW相に誘起されるパルス誘起電圧のデータVph4を取得し、ステップS613〜ステップS615で、第5通電モードM5にて通電を行って非通電相であるV相に誘起されるパルス誘起電圧のデータVph5を取得し、ステップS616〜ステップS618で、第6通電モードM6にて通電を行って非通電相であるU相に誘起されるパルス誘起電圧のデータVph6を取得する。
なお、図6のフローチャートに示した通電モードの切り替え処理では、モータ起動後のセンサレス制御における切り替え順と同じ順で、初期位置推定のための通電モードの切り替えを行わせるが、通電モードの切り替え順として初期位置推定専用の切り替え順を設定することができる。即ち、初期位置推定では、ブラシレスモータ2の回転させないようにすることが要求されるため、係る要求に応じて回転トルクが発生し難い順で通電モードを切り替える設定とすることができる。
第3通電モードM3ではV相からW相に向けて電流を流し、第6通電モードM6ではW相からV相に向けて電流を流すため、コイル励磁磁束の角度は相互に逆向きの関係となる。同様に、第4通電モードM4と第1通電モードM1とでコイル励磁磁束の角度が相互に逆向きとなり、第5通電モードM5と第2通電モードM2とでコイル励磁磁束の角度が相互に逆向きとなる。
更に、第6通電モードM6でのコイル励磁磁束の角度と、第4通電モードM4でのコイル励磁磁束の角度とは120deg異なり、同様に、第1通電モードM1でのコイル励磁磁束の角度と、第5通電モードM5でのコイル励磁磁束の角度とは120deg異なり、第6通電モードM6と第4通電モードM4との間、第1通電モードM1と第5通電モードM5との間で通電モードを切り替えた場合の発生トルクは小さくなる。
そこで、初期位置の推定処理において、例えば、第3通電モードM3→第6通電モードM6→第4通電モードM4→第1通電モードM1→第5通電モードM5→第2通電モードM2の順で通電モードの切り替えを行わせることができる。
制御ユニット213は、上記のようにして各通電モードにおいて非通電相に誘起されるパルス誘起電圧のデータVph1〜Vph6を取得すると、次にステップS619へ進み、通電モード間におけるパルス誘起電圧の差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330を、以下のようにして演算する。
Sa30=Vph1−Vph3
Sa90=Vph4−Vph2
Sa150=Vph3−Vph5
Sa210=Vph6−Vph4
Sa270=Vph5−Vph1
Sa330=Vph2−Vph6
上記のように、差Sa30は、第1通電モードM1でのパルス誘起電圧Vph1と第3通電モードM3でのパルス誘起電圧Vph3との差であり、図9(A)に示すように、第1通電モードM1ではU相からV相に向けて電流を流し、第3通電モードM3では、V相からW相に向けて電流を流す。
つまり、ブラシレスモータ2の3相のうちのV相と他のU相、W相との間でV相の電流が正及び負となるよう通電し、V相の電流が正となるときの非通電相のパルス誘起電圧とV相の電流が負となるときの非通電相のパルス誘起電圧との差を求めている。
例えば、中性点に向かう方向を正方向とし、中性点から流れ出る方向を負方向とすれば、V相の電流が正となるときの非通電相のパルス誘起電圧は、第1通電モードM1での非通電相であるW相に誘起される電圧Vph1であり、V相の電流が負となるときの非通電相のパルス誘起電圧は、第3通電モードM3での非通電相であるU相に誘起される電圧Vph3となる。
同様に、第4通電モードM4と第2通電モードM2との組み合わせでは、図9(B)に示すようにU相と他のV相、W相との間でU相の電流が正及び負となるよう通電されることになり、第3通電モードM3と第5通電モードM5との組み合わせでは、図9(C)に示すようにW相と他のV相、U相との間でW相の電流が正及び負となるよう通電されることになる。
また、第6通電モードM6と第4通電モードM4との組み合わせでは、図9(D)に示すようにV相と他のU相、W相との間でV相の電流が正及び負となるよう通電されることになり、第5通電モードM5と第1通電モードM1との組み合わせでは、図9(E)に示すようにU相と他のV相、W相との間でU相の電流が正及び負となるよう通電されることになり、第2通電モードM2と第6通電モードM6との組み合わせでは、図9(F)に示すようにW相と他のV相、U相との間でW相の電流が正及び負となるよう通電されることになる。
そして、ステップS619で、制御ユニット213は、上記のような通電モードの組み合わせ毎にパルス誘起電圧の差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330を求める。
図10(A)は、初期位置(モータ停止位置)によるパルス誘起電圧の変化を通電モード毎に示す図である。
この図10(A)に示す例において、例えばモータ角度30degでは、通電モード毎のパルス誘起電圧Vphのうち、第1通電モードM1でのパルス誘起電圧Vph1が最大となり、第3通電モードでのパルス誘起電圧Vph3が最小となり、他の通電モードでのパルス誘起電圧Vphは、第1通電モードM1でのパルス誘起電圧Vph1と第3通電モードでのパルス誘起電圧Vph1との中間値となる。
このため、図10(B)に示すように、モータ角度30degの場合は、第1通電モードM1でのパルス誘起電圧Vph1から第3通電モードM3でのパルス誘起電圧Vph3を減算した結果である差Sa30が、他の組み合わせで求められるパルス誘起電圧Vphの差よりも大きくなり、モータ角度30degでは、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちで差Sa30が最大値となる。
同様に、モータ角度90degでは、第4通電モードM4でのパルス誘起電圧Vph4から第2通電モードM2でのパルス誘起電圧Vph2を減算した結果である差Sa90が最大値となり、モータ角度150degでは、第3通電モードM3でのパルス誘起電圧Vph3から第5通電モードM5でのパルス誘起電圧Vph5を減算した結果である差Sa150が最大値となり、モータ角度210degでは、第6通電モードM6でのパルス誘起電圧Vph6から第4通電モードM4でのパルス誘起電圧Vph4を減算した結果である差Sa210が最大値となり、モータ角度270degでは、第5通電モードM5でのパルス誘起電圧Vph5から第1通電モードM1でのパルス誘起電圧Vph1を減算した結果である差Sa270が最大値となり、モータ角度330degでは、第2通電モードM2でのパルス誘起電圧Vph2から第6通電モードM6でのパルス誘起電圧Vph6を減算した結果である差Sa330が最大値となる。
つまり、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちでの最大値がモータ角度60deg毎に入れ替わり、例えば、差Sa30は、モータ角度30degを中心とする略60degの角度範囲(モータ角度0degから60degの範囲)で最大値となる。
従って、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちのいずれが最大値であるかによって、ブラシレスモータ2の初期位置が60deg毎の6領域のいずれに該当しているかを検出することができる。また、60deg毎の6領域における各中心モータ角度である30deg、90deg、150deg、210deg、270deg、330degは、コギングトルクによってモータが停止されようとする位置とも一致しており、この点からも、これらの各モータ角度を中心とする角度領域を初期位置として推定することが好ましい。
尚、例えば、モータ角度30degでは、前述のように、通電モード毎のパルス誘起電圧Vphのうち、第1通電モードM1でのパルス誘起電圧Vph1が最大となり、第3通電モードでのパルス誘起電圧Vph3が最小となるから、パルス誘起電圧Vph1〜Vph6のうちパルス誘起電圧Vph1が最大値となった場合、又は、パルス誘起電圧Vph3が最小値となった場合に、モータ角度30degを中心とする略60degの角度範囲内にブラシレスモータ2が位置していると推定することが可能である。
しかし、係る構成とした場合、パルス誘起電圧Vph1〜Vph6が相互に近い値となることで、最大誘起電圧又は最小誘起電圧の検出誤りを生じ、以って、初期位置の誤検出する可能性がある。
そこで、各角度領域において最大値になることが見込まれる通電モードでのパルス誘起電圧Vphと最小値となることが見込まれる通電モードでのパルス誘起電圧Vphとの組み合わせを設定し、これらの差分を求めることで、パルス誘起電圧Vphに基づく初期位置推定の分解能を上げるようにしている。
制御ユニット213は、ステップS619で差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330を演算すると、ステップS620へ進み、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちでの最大値を求める。
そして、制御ユニット213は、次のステップS621で、差Sa30が最大値として検出されたか否かを判断し、差Sa30が最大値であった場合にはステップS622へ進んで、ブラシレスモータ2の初期位置が0deg〜60degの範囲内であると判断し、更に、係る初期位置の判定結果に基づきブラシレスモータ2の駆動を開始するときの通電モードとして第3通電モードM3を選択する。
一方、制御ユニット213は、ステップS621で差Sa30が最大値ではないと判断すると、ステップS623へ進み、差Sa90が最大値として検出されたか否かを判断し、差Sa90が最大値であった場合にはステップS624へ進んで、ブラシレスモータ2の初期位置が60deg〜120degの範囲内であると判断し、更に、係る初期位置の判定結果に基づきブラシレスモータ2の駆動を開始するときの通電モードとして第4通電モードM4を選択する。
また、制御ユニット213は、ステップS623で差Sa90が最大値ではないと判断すると、ステップS625へ進み、差Sa150が最大値として検出されたか否かを判断し、差Sa150が最大値であった場合にはステップS626へ進んで、ブラシレスモータ2の初期位置が120deg〜180degの範囲内であると判断し、更に、係る初期位置の判定結果に基づきブラシレスモータ2の駆動を開始するときの通電モードとして第5通電モードM5を選択する。
また、制御ユニット213は、ステップS625で差Sa150が最大値ではないと判断すると、ステップS627へ進み、差Sa210が最大値として検出されたか否かを判断し、差Sa210が最大値であった場合にはステップS628へ進んで、ブラシレスモータ2の初期位置が180deg〜240degの範囲内であると判断し、更に、係る初期位置の判定結果に基づきブラシレスモータ2の駆動を開始するときの通電モードとして第6通電モードM6を選択する。
更に、制御ユニット213は、ステップS627で差Sa210が最大値ではないと判断すると、ステップS629へ進み、差Sa270が最大値として検出されたか否かを判断し、差Sa270が最大値であった場合にはステップS630へ進んで、ブラシレスモータ2の初期位置が240deg〜300degの範囲内であると判断し、更に、係る初期位置の判定結果に基づきブラシレスモータ2の駆動を開始するときの通電モードとして第1通電モードM1を選択する。
一方、制御ユニット213は、ステップS629で差Sa270が最大値ではないと判断すると、ステップS631へ進んで、ブラシレスモータ2の初期位置が300deg〜360degの範囲内であると判断し、更に、係る初期位置の判定結果に基づきブラシレスモータ2の駆動を開始するときの通電モードとして第2通電モードM2を選択する。
なお、制御ユニット213は、ステップS620で差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちの複数が最大値を示すことを検出した場合に、初期位置の推定が不能であると判断し、初期位置推定に基づきモータ駆動を開始する処理から、ブラシレスモータ2の位置決め処理を行ってからモータ駆動を開始する処理に移行することができる。
以上のように、制御ユニット213は、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちでの最大値がどの通電モードの組み合わせで算出されたものであるかに基づき、ブラシレスモータ2の初期位置が、0deg〜60deg、60deg〜120deg、120deg〜180deg、180deg〜240deg、240deg〜300deg、300deg〜360degの6つ角度区画のいずれに該当しているかを検出する。
そして、ブラシレスモータ2の初期位置(停止位置)が検出されれば、その初期位置から駆動を開始するのに最適な通電モードが決まることになる。
ここで、ブラシレスモータ2を既知の角度にまで回転させて固定する位置決め処理を行う場合、モータイナーシャが大きいとブラシレスモータ2が所定位置に固定される(収束する)までに時間を要し、ブラシレスモータ2の駆動開始が遅れることになる。これに対し、上記の初期位置の検出(推定)処理では、ブラシレスモータ2を停止位置から回転させないようにして各通電モードでの通電を行わせ、係る通電で検出された非通電相のパルス誘起電圧に基づき初期位置(停止位置)を推定するので、モータイナーシャの影響を受けることなくブラシレスモータ2の駆動を応答良く開始させることができる。
そして、ブラシレスモータ2の駆動を応答良く開始させることができれば、オイルポンプを駆動するブラシレスモータ2の場合、例えば動力伝達系を構成するクラッチなどの摩擦係合要素に供給する油圧を応答良く立ち上げて発進性能などを改善でき、また、摩擦係合要素やギヤなどに潤滑や冷却用の油を応答良く供給して潤滑,冷却性能を改善できる。
制御ユニット213は、ステップS601〜ステップS631で、初期位置の検出し、初期位置に応じて駆動開始時の通電モードを決定すると、ステップS632へ進み、決定した駆動開始時の通電モードに応じてブラシレスモータ2への電圧印加を開始する。
そして、次のステップS633で、制御ユニット213は、電圧印加を開始してからの経過時間が所定時間に達したか否かを判断する。
ステップS633の所定時間は、電圧印加の開始からブラシレスモータ2が回転し始めるまでの遅れ時間に基づき設定される。つまり、電圧印加を開始してからの経過時間が所定時間に達している場合には、ブラシレスモータ2が回転し始めているものと推定できるように、前記所定時間を設定する。
制御ユニット213は、電圧印加を開始してからの経過時間が所定時間に達したことを検出すると、ステップS634へ進み、通電モードを、駆動を開始したときの通電モードからセンサレス制御における順番に従って次の通電モードに切り替える。
センサレス制御における通電モードの切り替え順は、第1通電モードM1→第2通電モードM2→第3通電モードM3→第4通電モードM4→第5通電モードM5→第6通電モードM6に設定されるから、制御ユニット213は、例えば、初期位置が0deg〜60degであって第3通電モードM3で駆動を開始した場合、ステップS634へ進んだときに第3通電モードM3から第4通電モードM4に切り替える。
ステップS634で通電モードを切り替えた後は、非通電相の電圧と閾値との比較に基づき通電モードの切り替えタイミングを検出し通電モードを順次切り替えていく矩形波駆動方式によってブラシレスモータ2を駆動し、モータ回転速度が高くなれば正弦波駆動方式に切り替える。
制御ユニット213は、ステップS632〜ステップS634で、初期位置に応じた通電モードに従って電圧印加を開始してから所定時間が経過してから通電モードの切り替えを行うことで、分解能60degで検出される初期位置に基づき、ブラシレスモータ2の駆動を開始させることができる。
例えば、図11に示したように、差Sa30が最大値であってブラシレスモータ2の初期位置が0deg〜60degの範囲内であることが検出され、駆動開始時の通電モードを第3通電モードM3(励磁角度90deg)に設定したときに、実際の初期位置が60degであった場合を仮定する。
このとき、駆動開始時の通電モードから次の通電モードへの切り替えを非通電相の電圧(パルス誘起電圧)と閾値との比較に基づき行わせるようにした場合、第3通電モードM3から第4通電モードM4への切り替えを行う角度は30degであるのに、実際のモータ角度はこの30degを過ぎた60degであるから、通電モードの切り替え条件が成立せず、第3通電モードM3から次の第4通電モードM4への切り替えが行われなくなってしまう。
一方、図12に示したように、ブラシレスモータ2の初期位置が0deg〜60degの範囲内であることが検出されたときに、駆動開始時の通電モードを第4通電モードM4(励磁角度150deg)に設定すれば、実際の初期位置が60degであったとしても、第4通電モードM4から第5通電モードM5への切り替え角度は90degであるから、60degの初期位置から90degまでブラシレスモータ2が回転すれば、非通電相の電圧(パルス誘起電圧)と閾値との比較に基づく切り替え条件が成立し、第4通電モードM4から第5通電モードM5への切り替えが行われる。
しかし、実際の初期位置が0degであったとすると、励磁角度が150degである第4通電モードM4で駆動を開始すると、発生する回転トルクが小さいため、負荷が大きい場合にはブラシレスモータ2が回転しない可能性がある。
これに対し、図13に示すように、ブラシレスモータ2の初期位置が0deg〜60degの範囲内であることが検出されたときに、駆動開始時の通電モードを第3通電モードM3(励磁角度90deg)に設定し、係る第3通電モードM3での電圧印加を所定時間だけ行ってブラシレスモータ2が回転し始めてから第4通電モードM4に切り替えるようにすれば、実際の初期位置や負荷に因らずにブラシレスモータ2の駆動を開始させることができる。
即ち、ブラシレスモータ2の初期位置が0deg〜60degの範囲内であると検出されたときに実際の初期位置が60degであったとしても、第3通電モードM3から次の第4通電モードM4への切り替えを電圧印加開始からの時間で制御するので、第3通電モードM3から第4通電モードM4への切り替えを実施することができる。
また、ブラシレスモータ2の初期位置が0deg〜60degの範囲内であると検出されたときに実際の初期位置が0degであったとしても、第3通電モードM3(励磁角度90deg)で電圧印加を開始すれば、十分な回転トルクを発生させることができる。
また、第4通電モードM4から第5通電モードM5への切り替えは90degの角度位置で行われるが、実際の初期位置が60degであったとしても係る初期位置から回転し始めて第4通電モードM4に切り替えてから90degの角度位置に到達することになるので、第4通電モードM4から第5通電モードM5への切り替えを、非通電相のパルス誘起電圧と閾値との比較に基づいて行わせることができる。
初期位置が0deg〜60deg以外であった場合も、上記の0deg〜60degである場合と同様にして、ブラシレスモータ2の駆動を開始させることができることは明らかである。
ここで、上記のセンサレス制御における通電モードの切り替えは、基本的には非通電相(開放相)の起電圧の切り替え前の通電モードに対応したレベルから切り替え後の通電モードに対応したレベルへの変化を検出して行う。具体的には、開放相の起電圧と閾値電圧を入力する比較部254の出力がL(H)レベルからH(L)レベルに反転したことを検出して行う(出力パルスのエッジの検出)。これは、起電圧が切り替え後の通電モードに対応したレベルであることを検出したときに通電モードを切り替える方式(出力パルスのレベル検出)では、通電モードの切り替え直後に生じる還流により、起電圧が次の切り替え後の通電モードに対応したレベルの条件を満たしてしまい、還流中に通電モードが切り替わることを回避するためである。
しかし、初期位置が推定されたときの、実際の初期位置における起電圧が既に切り替え後の通電モードに対応するレベルであった場合は、切り替えに応じたレベルの変化がないため(比較部254の出力パルスのレベルが一定)通電モードが切り替わらない。
例えば、初期位置推定後、ブラシレスモータ2の初期位置が0deg〜60degの範囲内であると検出されたときに、実際の初期位置が30degを超えていた場合、第3通電モードM3から第4通電モードM4への切り替えが行われないこととなる。
そこで、初期位置推定後の1回目の通電モードの切り替えに限り、起電圧のレベルが切り替え後の通電モードに対応したレベルであることを検出して通電モードを切り替えるレベル検出による切り替えを行い、2回目以降の通電モードの切り替えは、起電圧の切り替え前の通電モードに対応したレベルから切り替え後の通電モードに対応したレベルへの変化を検出するエッジ検出方式により行う。
ところで、上記の初期位置の推定処理では、ブラシレスモータ2の回転トルクを発生させない範囲のデューティ比で電圧印加を行わせるが、非通電相に誘起される起電圧の検出においては、リンギング期間を避け、また、A/D変換時間を確保するために、最低のデューティ比(最低パルス幅)以上での電圧印加が要求される。
このため、初期位置の推定処理における設定デューティ比(つまり、回転トルクを発生させないデューティ比)が、起電圧検出のために要求される最低デューティ比を下回ると、初期位置の推定に用いる非通電相(開放相)の起電圧の検出精度が低下したり、検出不能になったりする。
一方、起電圧検出のために要求される最低デューティ比が、回転トルクを発生させないデューティ比の上限を上回っていると、最低デューティ比でブラシレスモータ2を駆動すると、初期位置の推定に用いる非通電相(開放相)の起電圧を十分な精度で検出できるものの、初期位置の推定処理中にブラシレスモータ2が回転してしまって初期位置の推定に誤りを生じることになる。
そこで、パルス誘起電圧の検出における最低デューティ比が回転トルクを発生させないデューティ比の上限を上回る場合には、PWM周期の1周期で、最低デューティ比相当のパルス幅でそのときの通電モードに対応する相及び方向に電流を流す処理と、回転トルクを発生させないデューティ比の上限を最低デューティ比が上回る分のパルス幅以上でそのときの通電モードに対応する相に逆方向に電流を流す処理とを実施し、PWM1周期の平均としては、回転トルクを発生させないデューティ比の上限以下のデューティ比で電圧印加を行わせるようにすることができる。
これにより、初期位置の推定処理における電圧印加でブラシレスモータ2が回転してしまうことを抑制しつつ、初期位置の推定処理に用いる非通電相の起電圧の検出を十分な精度で行わせることができる。
図14(A)のタイムチャートは、V相からW相に向けて電流を流す第3通電モードM3において最低デューティ比で電圧印加を行う場合のPWM制御の一例を示す。
図14(A)において、PWMタイマ(PWM生成三角波キャリア)とV相用のタイマ設定値Vvとを比較することで、V相上段のスイッチング素子217cを駆動するためのパルス信号が生成され、Vv≧PWMタイマであるときにV相上段のスイッチング素子217cがオンされる。
なお、V相下段のスイッチング素子217dを、V相上段のスイッチング素子217cのPWM波と逆位相のPWM波で駆動する相補駆動方式が採用され、V相上段のスイッチング素子217cがオンであるときにはV相下段のスイッチング素子217dはオフになる。
また、PWMタイマ(PWM生成三角波キャリア)とW相用のタイマ設定値Vwとを比較することで、W相下段のスイッチング素子217fを駆動するためのパルス信号が生成され、Vw<PWMタイマであるときにW相下段のスイッチング素子217fがオンされる。
なお、W相上段のスイッチング素子217eを、W相下段のスイッチング素子217fのPWM波と逆位相のPWM波で駆動する相補駆動方式が採用され、W相下段のスイッチング素子217fがオンであるときにはW相上段のスイッチング素子217eはオフになる。
上記PWM制御においては、V相上段のスイッチング素子217cがオンで、かつ、W相下段のスイッチング素子217fがオンであるときに、第3通電モードM3に対応してV相からW相に向けて電流が流れるので、最低デューティ比で電圧印加を行う場合には、V相上段のスイッチング素子217cがオンでかつW相下段のスイッチング素子217fがオンとなる時間が最低デューティ比相当の時間となるように、タイマ設定値Vv、Vwを設定する。
そして、制御ユニット213は、V相からW相に向けて電流を流し始めた当初の電圧リンギング期間が経過してから、非通電相であるU相の電圧をA/D変換して取得する。
図14(A)に示した例では、第3通電モードM3でV相からW相に向けて電流を流すので、V相上段のスイッチング素子217cがオフでかつW相下段のスイッチング素子217fがオフとなる期間はないが、V相上段のスイッチング素子217cをオフしかつW相下段のスイッチング素子217fをオフすれば、相補駆動制御によりV相下段のスイッチング素子217dがオンしかつW相上段のスイッチング素子217eがオンし、第3通電モードM3での電流方向と逆にW相からV相に向けて電流が流れることになる。
上記の特性を利用し、図14(B)に示す例では、非通電相の起電圧の検出に要求される最低デューティ比でV相からW相に向けて電流を流す処理と、回転トルクを発生させないデューティ比の上限よりも最低デューティ比が高い分のデューティ比でW相からV相に向けて電流を流す処理とをPWM1周期内で実施し、最低デューティ比で制御するときに非通電相の起電圧を検出させる。
図14(B)に示すPWM制御では、タイマ設定値Vv、VwをPWMタイマの谷タイミングにおいて最低デューティ比での駆動に対応する値に設定する一方、PWMタイマの山タイミングでは、回転トルクを発生させないデューティ比の上限よりも最低デューティ比が高い分のデューティ比でW相からV相に向けて電流を流すためのタイマ設定値Vv、Vwの変更を行う。
つまり、PWM周期の1周期での出力を2回に分け、1回目で非通電相の起電圧検出に必要なデューティ(正方向トルク比)を出力し、2回目で所望のトルクとなるように補正するデューティ(負方向トルク)を出力し、2回の平均が所望トルク(所望のオンデューティ比)となるようにする。
なお、本実施形態では、図14(B)に示したPWM制御をパルスシフト制御と称するものとする。
上記のパルスシフト制御では、PWM1周期で最低デューティ比以上のデューティ比での制御と同じデューティ比で逆方向に電流を流す制御とを行うことで、平均デューティ比として0%を実現することが可能である。
しかし、図10に示す特性とは異なるブラシレスモータ2では、平均デューティ比を小さくすると、例えば、図15(A)、(B)に示すように、モータ角度30degで差Sa30と差Sa210とが相互に近い値になり、モータ角度150degで差Sa150と差Sa330とが相互に近い値になり、モータ角度270degで差Sa90と差Sa270とが相互に近い値になって、最大値の判定に基づく初期位置の推定が誤ってなされてしまう可能性がある。
従って、パルスシフト制御を実施する場合には、6つの角度領域毎に差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちの1つだけが他に比べて所定以上に大きくなるような平均デューティ比を下限値としてパルスシフト制御を実施する。
ここで、平均デューティ比を上げると、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330の間での偏差が拡大する理由を以下に概説する。
V相からW相に向けて電流を流す場合を例とすると、通電していない状態でモータを回転させると、N極磁束がV相及びW相に与える磁束は、図16に示すように角度位置に応じて変化する。
そして、V相からW相に向けて電流を流すと、通電による磁束の変化が追加されることになるが、磁気飽和が発生するため、通電による磁束の変化分はV相とW相とで角度による差が図17に示すように生じ、この差が非通電相の磁束変化(磁気飽和電圧)として現れる。
この磁気飽和電圧のピーク値Aは、モータに流れる電流の大きさで決まるから、平均デューティ比を小さくして平均として正方向に流れる電流が小さくなると、ピーク値が小さくなり、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330の間での偏差が小さくなり、平均デューティを高くすることで、図18に示すように、6つの角度領域毎に差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちの1つが最大値を示すような特性を得ることができる。
上記のように、平均デューティ比が低いと、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330の間での偏差が小さくなり、最大値の抽出に基づく初期位置の検出が不能になるので、制御ユニット213は、図7のフローチャートのステップS620で差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330の中の最大値を検出するときに、1つだけが明確に大きいか否かを判断して、1つだけが明確に大きい状態でない場合、つまり、初期位置の推定精度が十分でないと判断される場合には、平均デューティ比を上げて再度各通電モードでの通電(初期位置推定処理)をやり直したり、初期位置の推定が不能であるとしてブラシレスモータ2を既知の位置まで回転させる位置決め処理を実施させたりすることができる。
なお、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330の中の1つだけ明確に大きいか否かは、最大値を示す差のデータが複数存在しないこと、最大値と2番目に大きな値との差が所定以上であることなどから判断することができる。
また、最大値として採用する差Saの値の範囲(最大値の下限値)を設定し、係る範囲含まれる最大値を検出できなかった場合(最大値として検出された値が下限値を下回る場合)には、平均デューティ比を上げて再度各通電モードでの通電(初期位置推定処理)をやり直したり、初期位置の推定が不能であるとしてブラシレスモータ2を既知の位置まで回転させる位置決め処理を実施させたりすることができる。
ブラシレスモータ2の温度によって同じ角度位置での差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330の大きさが変化するので、ブラシレスモータ2の温度の検出値又は推定値に基づいて、最大値として採用する差Saの値の範囲(最大値の下限値)を変更することができる。
以上の第1実施形態では、ブラシレスモータ2を、U相、V相及びW相の3相巻線215u、215v、215wがスター結線される3相DCブラシレスモータとしたものにおいて説明したが、以下に説明する第2実施形態では、これに代えて、図19に示すU’相、V’相及びW’相がΔ結線される3相DCブラシレスモータ20としたものについて説明する。
このブラシレスモータ20においても、コギングトルクによりモータが停止されようとする位置(以下、基準停止位置という)は、第1実施形態と同様にU相を基準(0deg)として30deg、90deg、150deg、210deg、270deg、330degであるので、通電モード間におけるパルス誘起電圧の差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330を求める。
しかし、本第2実施形態においては、例えば、図20に示すように、各停止位置において差Sa30〜Sa330のうちいずれが最大値であるかを見ると、複数の差Saが相互に近い値となって、どちらの差Saが最大値であるか判別しにくい。このように、最大値による判定では感度が低く初期位置の推定が困難となり、初期位置の推定が誤ってなされてしまう可能性がある。
すなわち、各初期位置(基準停止位置)で差Sa30〜Sa330の最大値が感度の高い第1実施形態とは異なり、各基準停止位置における差Sa30〜Sa330の最大値が明確でなく、初期位置の推定のためには最大値は判定感度が低すぎて使用できない。
一方、各基準停止位置における差Sa30〜Sa330の最小値は判定感度が高く明確に求められる。従って、本第2実施形態では、最小値を用いて初期位置を推定する。
つまり、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちでの最小値がモータ角度60deg毎に入れ替わり、例えば、差Sa150は、モータ角度90degを中心とする略60degの角度範囲(モータ角度60degから120degの範囲)で最小値となる。
このように、本第2実施形態においては、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちのいずれかが最小値であるかによって、ブラシレスモータ20の初期位置が60deg毎の6領域のいずれに該当しているかを検出する。
制御ユニット213は、図6のフローチャートのステップS619で差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330を演算すると、図21のフローチャートに示すステップS720へ進み、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちで最小値を求める。
その後の制御ユニット213の処理(図21及び図22のフローチャートのステップS721〜ステップS734)は、最小値に基づく判定により初期位置を検出すること以外は、上記の第1実施形態のステップS621〜ステップS634と同様であり、ここでの説明は省略する。
このように、ブラシレスモータ20に適用した第2実施形態においては、ブラシレスモータ20の初期位置(モータ停止位置)に対し、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちで最大値が明確でなく、初期位置推定のための最大値の感度が低い場合に、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうちでいずれが最小値に該当するか否かによってブラシレスモータ20の初期位置(モータ停止位置)を検出することができる。
以上示した第1及び第2実施形態においては、ブラシレスモータの初期位置が60deg毎の6領域のいずれかに該当しているか、すなわち、分解能60degで検出される初期位置に基づき、ブラシレスモータの駆動を開始させる構成とした。
しかし、いずれの実施形態のステップS632〜S634及びステップS732〜S734においても、例えば、初期位置が0deg〜60degの範囲内にあることが検出された場合に、第3通電モードM3から第4通電モードM4に切り替えるために、第3通電モードM3での電圧印加を開始してから該第3通電モードで回転を開始させた後、所定時間を経過させてセンサレス制御に移行させていた。
これは、上述したように、分解能60degで初期位置が0deg〜60degの範囲内にあることが検出されても、実際のモータ角度が0deg又は60degであった場合に、十分な回転トルクが発生しなかったり、通電モードの切り替え条件が成立しなかったりすることを回避するためである。
そこで、第3実施形態では、ブラシレスモータ20の初期位置の検出精度をさらに向上させるために、ステップS719で演算した6個の差(起電圧差)Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうち、30deg毎に領域を分けた12個の各モータ角度範囲における各差Saの中の最大値と最小値との差(起電圧差の差分)を以下のように演算する。
Sa30-60=Sa30−Sa90
Sa60-90=Sa30−Sa150
Sa90-120=Sa90−Sa150
Sa120-150=Sa90−Sa210
Sa150-180=Sa150−Sa210
Sa180-210=Sa150−Sa270
Sa210-240=Sa210−Sa270
Sa240-270=Sa210−Sa330
Sa270-300=Sa270−Sa330
Sa300-330=Sa270−Sa30
Sa330-360=Sa330−Sa30
Sa0-30=Sa330−Sa90
Sa30-60は、図23(A)におけるモータ角度30deg〜60degの範囲内で、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330のうち最大値を示す差Sa30と最小値を示す差Sa90との差である。同様に、Sa60-90は、モータ角度60deg〜90degの範囲内で最大値を示す差Sa30と最小値を示す差Sa150との差であり、Sa90-120は、モータ角度90deg〜120degの範囲内で最大値を示す差Sa90と最小値を示す差Sa150との差であり、Sa120-150は、モータ角度120deg〜150degの範囲内で最大値を示す差Sa90と最小値を示す差Sa210との差であり、Sa150-180は、モータ角度150deg〜180degの範囲内で最大値を示す差Sa150と最小値を示す差Sa210との差であり、Sa180-210は、モータ角度180deg〜210degの範囲内で最大値を示す差Sa150と最小値を示す差Sa270との差であり、Sa210-240は、モータ角度210deg〜240degの範囲内で最大値を示す差Sa210と最小値を示す差Sa270との差であり、Sa240-270は、モータ角度240deg〜270degの範囲内で最大値を示す差Sa210と最小値を示す差Sa330との差であり、Sa270-300は、モータ角度270deg〜300degの範囲内で最大値を示す差Sa270と最小値を示す差Sa330との差であり、Sa300-330は、モータ角度300deg〜330degの範囲内で最大値を示す差Sa270と最小値を示す差Sa30との差であり、Sa330-360は、モータ角度330deg〜360degの範囲内で最大値を示す差Sa330と最小値を示す差Sa30との差であり、Sa0-30は、モータ角度0deg〜30degの範囲内で最大値を示す差Sa330と最小値を示す差Sa90との差である。
すなわち、差Sa30-60、Sa60-90、Sa90-120、Sa120-150、Sa150-180、Sa180-210、Sa210-240、Sa240-270、Sa270-300、Sa300-330、Sa330-360、Sa0-30は、図23(A)に示すモータ角度30deg毎の12個の範囲において、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330の最大値と最小値の電圧差を演算したものである。
そして、図23(B)に示すように、差Sa30-60、Sa60-90、Sa90-120、Sa120-150、Sa150-180、Sa180-210、Sa210-240、Sa240-270、Sa270-300、Sa300-330、Sa330-360、Sa0-30は、それぞれモータ角度30deg〜60deg、60deg〜90deg、90deg〜120deg、120deg〜150deg、150deg〜180deg、180deg〜210deg、210deg〜240deg、240deg〜270deg、270deg〜300deg、300deg〜330deg、330deg〜360deg、0deg〜30deg(360deg〜390deg)の範囲で最大値を有する。
制御ユニット213は、図24のフローチャートのステップS801でパルス誘起電圧の差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330から更に上記の差分Sa30-60、Sa60-90、Sa90-120、Sa120-150、Sa150-180、Sa180-210、Sa210-240、Sa240-270、Sa270-300、Sa300-330、Sa330-360、Sa0-30を求める。
次いで、図7のステップS620〜631と同様に、ステップS802で差Sa30-60、Sa60-90、Sa90-120、Sa120-150、Sa150-180、Sa180-210、Sa210-240、Sa240-270、Sa270-300、Sa300-330、Sa330-360、Sa0-30の最大値を確認し、ステップS803で上記の12個の差のうちでいずれが最大値として検出されるか否かによって初期位置を検出する。
従って、本第3実施形態では、モータ角度30deg毎に初期位置検出のための電圧差の感度を高めることにより初期位置を検出することができるので、ブラシレスモータ20の初期位置の検出精度が向上する。例えば、Sa0-30=Sa330−Sa90が最大値として検出されたときは、初期位置は0〜30degの範囲にあると検出して第3通電モードM3で起動し、Sa30-60=Sa30−Sa90が最大値として検出されたときは、初期位置は30〜60degの範囲にあると検出して、第4通電モードM4で起動することができる。
すなわち、分解能30degで初期位置を検出した後、該初期位置に基づく通電モードで直ちにブラシレスモータを起動させてセンサレス制御に移行させることができ、応答性がより向上する。
なお、上記では、第2実施形態に適用したブラシレスモータ20における通電モード毎の差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330を更に組み合わせて求めた差分Sa30-60、Sa60-90、Sa90-120、Sa120-150、Sa150-180、Sa180-210、Sa210-240、Sa240-270、Sa270-300、Sa300-330、Sa330-360、Sa0-30に基づいて、分解能30degで初期位置を検出したが、第1実施形態に適用したブラシレスモータ2においても同様に分解能30degで初期位置を検出することができ、応答性がより向上する。
一方、特に磁気飽和の度合いが大きいブラシレスモータ20(Δ結線)では、図25に示すように、各基準停止位置で最小値近傍に2つの差Sa同士が接近し、どちらの差Saが最小値であるか判別しにくい。このように、最小値による判定では感度が低く初期位置の推定が困難となる。
図26(A)は、初期位置(モータ停止位置)によるパルス誘起電圧の変化を通電モード毎に示す図である。
この図26(A)に示す例において、例えば、第6通電モードM6では、モータ角度90degと、モータ角度240degとにおけるパルス誘起電圧の最大値に差がでる。他の通電モードにおいても同様にピークに差がでるが、これは、平均デューティを高くすることで発生する磁気飽和の度合いが大きいためである。
そこで、第4実施形態では、通電モード毎の起電圧差(差Sa)を、隣り合う通電モードを組み合わせることにより以下のように演算し、各差Saに基づいて初期位置を検出する。
Sa30’=Vph2−Vph3
Sa90’=Vph1−Vph2
Sa150’=Vph4−Vph5
Sa210’=Vph3−Vph4
Sa270’=Vph6−Vph1
Sa330’=Vph5−Vph6
図26(B)に示すように、6つの角度領域毎に差Sa30’、差Sa90’、差Sa150’、差Sa210’、差Sa270’、差Sa330’のうち2つが最大値又は最小値を明確に示すような特性を得ることができる。例えば、差Sa30’が最大値(最小値)と判定されたときは、初期位置を0〜60degの角度領域にあると検出できる。
このように、磁気飽和の度合いが大きいブラシレスモータ20(Δ結線)では、隣り合う通電モードの起電圧差を用いて判定感度の高い最大値又は最小値に基づき、ブラシレスモータ20の初期位置を精度よく検出することができる。
上記実施形態で説明した各技術的思想は、矛盾が生じない限りにおいて、適宜組み合わせて使用することができる。
また、好ましい実施形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
例えば、差Sa30、Sa90、Sa150、Sa210、Sa270、Sa330との相互比較を省略し、各通電モードでそれぞれに取得した非通電相のパルス誘起電圧の最大値と最小値の差が所定以上であるときに、パルス誘起電圧が最大値となった通電モードと、最小値となった通電モードとの組み合わせに基づいて初期位置を推定させることができる。
また、例えば、初期位置の推定のために通電モードを所定時間毎に切り替えるときに、取得したパルス誘起電圧が所定以上にあることを検出したときに、以降の通電モードの切り替えをキャンセルし、所定以上のパルス誘起電圧を取得したときの通電モードに基づき初期位置を推定させることができる。
1…電動オイルポンプ、2…ブラシレスモータ(スター結線)、3…モータ制御装置、20…ブラシレスモータ(Δ結線)、212…モータ駆動回路、213…制御ユニット、213a…A/D変換器、213b…マイコン、215u,215v,215w…巻線、216…永久磁石回転子、217a〜217f…スイッチング素子

Claims (15)

  1. ブラシレスモータの3相のうちの任意の1相と他の2相との間で、前記1相の電流が正及び負となるよう通電し、前記1相の電流が正となるときの開放相の起電圧と前記1相の電流が負となるときの開放相の起電圧との差に基づいて前記ブラシレスモータの初期位置を検出する、3相ブラシレスモータの駆動装置。
  2. 前記起電圧差を求めた複数の組み合わせの間における前記起電圧差の偏差に基づいて前記ブラシレスモータの初期位置を検出する、請求項1記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  3. 前記3相のうち通電する2つの相を選択する6通りの通電モードを順次切り替えることで前記ブラシレスモータを駆動する構成であって、
    前記6通りの通電モードでの通電を順次行って開放相の起電圧をそれぞれで検出し、前記起電圧差を前記通電モードの6種類の組み合わせ毎に求め、6つの前記起電圧差に基づいて前記ブラシレスモータの初期位置が6つに区分された領域のいずれに該当するかを検出する、請求項2記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  4. 前記6つの起電圧差の12種類の組み合わせ毎に起電圧差相互の12個の差分を求め、前記12個の差分を比較して前記ブラシレスモータの初期位置が12個に区分された領域のいずれに該当するかを検出する、請求項3記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  5. 前記ブラシレスモータの回転トルクが発生しない時間内で前記開放相の起電圧を取得する、請求項3記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  6. 前記3相のうち通電する2つの相を選択する6通りの通電モードを順次切り替えることで前記ブラシレスモータを駆動する構成であって、
    前記ブラシレスモータの初期位置に応じて前記ブラシレスモータの駆動を開始するときの通電モードを選択し、当該通電モードで所定時間だけ通電した後に次の通電モードに切り替えて前記ブラシレスモータを起動する、請求項3記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  7. 前記6種類の組み合わせ毎に求めた起電圧差の最大値に基づき、前記ブラシレスモータの初期位置を検出する、請求項3記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  8. 前記6種類の組み合わせ毎に求めた起電圧差の最小値に基づき、前記ブラシレスモータの初期位置を検出する、請求項3記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  9. 前記起電圧差を求める複数の組み合わせの間における前記起電圧差の偏差が所定値を超えるように、前記初期位置の検出のための通電におけるデューティ比を設定する、請求項3記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  10. 前記ブラシレスモータの初期位置に応じた通電モードでモータ起動後、1回目の通電モードの切り替えは、前記開放相の起電圧のレベルが切り替え後の通電モードに対応するレベルであると判定されたときに実行し、2回目以降の通電モードの切り替えは、前記開放相の起電圧のレベルが切り替え前の通電モードに対応するレベルから切り替え後の通電モードに対応するレベルへ変化したことを判定したときに実行する、請求項3記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  11. 前記起電圧差に基づく初期位置の検出を、前記ブラシレスモータの回転速度が停止状態を含む所定低速度域であることを条件に実施する、請求項1記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  12. 前記3相ブラシレスモータの駆動を開始する前に、前記3相ブラシレスモータを回転させることなく各通電モードにて所定時間だけ電圧を印加して非通電相の起電圧を取得し、所得した起電圧に基づいて前記3相ブラシレスモータの初期位置を検出する、請求項3記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  13. 所定範囲内である前記起電圧差に基づき前記ブラシレスモータの初期位置を検出する、請求項1記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  14. 前記所定範囲を前記ブラシレスモータの温度に応じて変更する、請求項13記載の3相ブラシレスモータの駆動装置。
  15. ブラシレスモータの3相のうちの任意の1相と他の2相との間で、前記1相の電流が正及び負となるよう通電し、前記1相の電流が正となるときの開放相の起電圧と前記1相の電流が負となるときの開放相の起電圧との差に基づいて前記ブラシレスモータの初期位置を検出する、3相ブラシレスモータの初期位置検出方法。

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