JPWO2015025959A1 - 蛍光特性を示すポリペプチド、およびその利用 - Google Patents

蛍光特性を示すポリペプチド、およびその利用 Download PDF

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Abstract

本願発明に係るポリペプチドの一態様は、蛍光特性を示し、(1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有する、(2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換などしたアミノ酸配列を有する、(3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有する、または、(4)(1)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を有する。

Description

本発明は、蛍光特性を示すポリペプチドとその利用とに関する。
蛍光タンパク質は、細胞、組織、または生物個体などを可視化するツールとして、欠かせないものとなっている。例えば、特許文献1には、緑色蛍光を発する蛍光タンパク質が記載されている。赤色蛍光を発する蛍光タンパクについても様々な改変タンパク質が報告されている(特許文献2、非特許文献1−3)。
米国特許5491084(1996年2月13日) 米国特許7166444(2007年1月23日)
Shaner NC, Campbell RE, Steinbach PA, Giepmans BN, Palmer AE, Tsien RY. Nature Biotechnolgy. 2004; 22(12):p1567-72. Epub 2004 Nov 21. S Ekaterina M Merzlyak, Joachim Goedhart, Dmitry Shcherbo, Mariya E Bulina, Aleksandr S Shcheglov, Arkady F Fradkov, Anna Gaintzeva, Konstantin A Lukyanov, Sergey Lukyanov, Theodorus W J Gadella & Dmitriy M Chudakov. Nature Methods. 2007; 4, p555 - 557 Simone Kredel, Franz Oswald, Karin Nienhaus, Karen Deuschle, Carlheinz Rocker, Michael Wolff, Ralf Heilker, G. Ulrich Nienhaus, and Jorg Wiedenmann. PLoS ONE. 2009; 4(2): e4391.
近年、蛍光タンパク質を用いて細胞またはタンパク質をラベルする需要が急速に高まっている。当該需要の高まりにともなって、蛍光タンパク質に求められる特性も多様化している。そのため、これまで報告がなされた蛍光タンパク質とは異なる新規な蛍光タンパク質が求められている。
本発明は、コイボコモンサンゴ(Montipora monasteriata)由来の蛍光タンパク質の改変体であって蛍光タンパク質として利用する上で有用な性質を示す蛍光タンパク質を提供することを目的とする。
上記の課題を解決するために、本願発明は以下の何れかの一態様を包含する。
<1> 以下の(1)〜(4)の何れかに示す、蛍光特性を有するポリペプチド。(1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、(3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド、(4)上記(1)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド。
<2> 以下の(1)〜(4)の何れかに記載のポリヌクレオチド。(1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有し、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有し、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(4)上記(1)に記載のポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
<3> (a)発現宿主内で機能的な発現制御領域;および、(b)<2>に記載のポリヌクレオチド;を含む、発現カセット。
<4>上記<2>に記載のポリヌクレオチドまたは<3>に記載の発現カセットを含むベクター。
<5>上記<2>に記載のポリヌクレオチド、<3>に記載の発現カセットまたは<4>に記載のベクターを含む形質転換体。
<6>上記<1>に記載のポリペプチドと他のポリペプチドとからなる融合ポリペプチド。
<7>蛍光観察の方法であって、<1>に記載のポリペプチド、あるいは<6>に記載の融合ポリペプチドを細胞において産生させる産生工程と、当該ポリペプチドまたは融合ポリペプチドに由来する蛍光を観察する観察工程とを含む、方法。
<8>細胞において1以上の目的遺伝子の発現および/または局在性に対する1以上の試験物質の作用を評価する方法であって、i)第一の目的遺伝子と融合されていてもよい上記<2>に記載のポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、第一の発現制御配列の制御下におかれるように当該発現制御配列と作動可能に連結された第一の核酸分子を、細胞内に導入する導入工程、ii)導入工程を経た上記細胞を上記試験物質の存在下および不在下で培養する培養工程、iii)上記細胞における蛍光発光を検出する蛍光検出工程、およびiv)試験物質の存在下および不在下で得られた、上記細胞における蛍光発光を比較して、上記目的遺伝子の発現および/または局在性に対する試験物質の作用を評価する評価工程、を含む、方法。
<9>上記<2>に記載のポリヌクレオチドの全体または一部を細胞中に含む形質転換体を作製する方法であって、<2>に記載のポリヌクレオチド、<3>に記載の発現カセットまたは<4>に記載のベクターを細胞に導入する工程を含む、方法。
<10>上記<9>に記載の方法で得られた形質転換体またはその子孫。
<11>上記<2>に記載のポリヌクレオチドの全体または一部を細胞中に含む非ヒトトランスジェニック生物を作製する方法であって、<2>に記載のポリヌクレオチド、<3>に記載の発現カセットまたは<4>に記載のベクターを、ドナー細胞から採取した受精卵に導入する工程を含む、方法。
<12>上記<11>に記載の方法で得られた非ヒトトランスジェニック生物またはその子孫。
<13>上記<12>に記載の非ヒトトランスジェニック生物またはその子孫より細胞を採取し、該細胞に初期化因子を導入して多能性幹細胞を作製する方法。
<14>上記<1>に記載のポリペプチド、<2>に記載のポリヌクレオチド、<3>に記載の発現カセット、<4>に記載のベクター、<5>に記載の形質転換体、あるいは<6>に記載の融合ポリペプチドを含む、キット。
本発明は、細胞に導入した際の蛍光安定性および早い蛍光発光の特性を有する蛍光ポリペプチドを提供する。本発明の蛍光ポリペプチドによれば、分子生物学などの多くの生物学分野で有用な蛍光ポリペプチドを利用することができるという効果を奏する。
本発明の実施例における、1−29および1−41タンパク質の蛍光特性を示す図である。 本発明の実施例における、単量体化した改変体の大腸菌における発現および蛍光特性を示した図である。 本発明の実施例における、単量体化した3つの改変体の蛍光特性を示した図である。3つの改変体の吸収スペクトルを示す。 本発明の実施例における、単量体化した3つの改変体における蛍光強度のpH感受性を示した図である。 本発明の実施例における、単量体化した3つの改変体の蛍光の安定性を示した図である。 図5Aに対応し、本発明の実施例における、単量体化した3つの改変体の蛍光の安定性を示したグラフである。 本発明の実施例における、2つの改変体の蛍光波長のシフトを示した図である。 本発明の他の実施例にかかるタンパク質であるmAzaleaの蛍光特性を示した図である。 本発明の他の実施例にかかるタンパク質であるmAzaleaのpH感受性を示した図である。 本発明の他の実施例にかかるタンパク質であるmAzaleaの蛍光の安定性を、mRuby2、mCherryおよびTagRFP−Tの蛍光の安定性と比較して示した図である。 本発明の他の実施例にかかるタンパク質であるmAzaleaの、HeLa細胞のサイトゾルでの局所的な発現を示した図である。 本発明の他の実施例にかかるタンパク質であるmAzaleaの、HeLa細胞の小胞体での局所的な発現を示した図である。 本発明の他の実施例にかかるタンパク質であるmAzaleaの、HeLa細胞のαチューブリンを含む器官での局所的な発現を示した図である。 本発明の他の実施例にかかるタンパク質であるmAzaleaの、HeLa細胞のβアクチンを含む器官での局所的な発現を示した図である。 本発明の他の実施例にかかるタンパク質であるmAzaleaの光り始める早さを、mCherryと比較した結果を示す図である。 本発明のさらに他の実施例にかかるタンパク質であるmAzalea_B5のpH感受性を示した図である。 本発明のさらに他の実施例にかかるタンパク質であるmAzalea_B5の光安定性を示した図である。 本発明のさらに他の実施例にかかるタンパク質であるmAzalea_B5の、HeLa細胞の小胞体での局所的な発現を示した図である。
以下、本発明の実施の一形態について詳細に説明する。
〔用語などの定義〕
本明細書において、「ポリヌクレオチド」は、「核酸」または「核酸分子」とも換言できる。「ポリヌクレオチド」は、特に明記しない場合は、天然に存在するヌクレオチドと同様に機能することができる天然に存在するヌクレオチドの既知の類似体を含有するポリヌクレオチドを包含する。また、「塩基配列」は、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」とも換言できる。特に言及のない限り、「塩基配列」はデオキシリボヌクレオチドの配列またはリボヌクレオチドの配列を意図している。また、ポリヌクレオチドは、一本鎖であっても二本鎖構造であってもよく、一本鎖の場合はセンス鎖であってもアンチセンス鎖であってもよい。
本明細書において、「遺伝子」は、タンパク質をコードしている「ポリヌクレオチド」を指す。
本明細書において、遺伝子の「発現制御領域」は、遺伝子の発現を制御している「ポリヌクレオチド」を指す。「発現制御領域」の一例としては、プロモータ領域、エンハンサ領域などが挙げられる。
本明細書において、「発現カセット」は、発現宿主内で機能的な発現制御領域と、当該発現制御領域と作動可能に連結されたポリヌクレオチドとを含む発現単位を指す。発現カセットにおいて、当該ポリヌクレオチドは好ましくは遺伝子または遺伝子の断片である。発現カセットの一例は、上記発現制御領域と上記ポリヌクレオチドとを遺伝子工学的に連結したものである。「作動可能に連結」とは、ポリヌクレオチドの発現が発現制御配列によって制御されている状態を指す。発現カセットは発現ベクターの形態であってもよい。
本明細書において、「ポリペプチド」は、「タンパク質」とも換言できる。「ポリペプチド」は、アミノ酸がペプチド結合してなる構造を含むが、さらに、例えば、糖鎖、またはイソプレノイド基などの構造を含んでいてもよい。「ポリペプチド」は、特に明記しない場合は、天然に存在するアミノ酸と同様に機能することができる、天然に存在するアミノ酸の既知の類似体を含有するポリペプチドを包含する。
本明細書において、「蛍光ポリペプチド」とは、蛍光特性を有するポリペプチドを指す。蛍光特性を有するポリペプチドとは、所定波長の励起光の照射を受けることによって、蛍光を発する性質を持つポリペプチドを指す。
本明細書において、「Aおよび/またはB」は、AおよびBとAまたはBとの双方を含む概念であり、「AおよびBの少なくとも一方」とも換言できる。
〔1.蛍光特性を有するポリペプチド〕
(1−1: 蛍光ポリペプチドA)
本発明に係るポリペプチドAは、以下の(1)〜(4)の何れかに示す、蛍光ポリペプチドである。
(1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有する蛍光ポリペプチド。
(2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有する蛍光ポリペプチド。なお、置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸の個数は、1〜25個であることが好ましく、1〜23個であることがより好ましく、1〜12個であることがさらに好ましく、1〜5または6個であることが特に好ましい。以下、アミノ酸の置換、欠失、挿入、および/または付加を、アミノ酸の変異と総称する場合がある。
(3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有する蛍光ポリペプチド。なお、配列同一性は、88%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、96%以上、97%以上、98%以上、或いは99%以上であることが特に好ましい。
(4)上記(1)に記載の蛍光ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされる蛍光ポリペプチド。なお、ストリンジェントな条件については、本発明に係るポリヌクレオチドの欄で後述する。
蛍光ポリペプチドAの由来は限定されず、例えば、化学合成されても、或いは、遺伝子組み換え技術を用いて産生されてもよい。より具体的には、蛍光ポリペプチドAは、単離精製されたポリペプチド、化学合成されたポリペプチド、および、遺伝子組み換え技術に基づいて宿主細胞から産生されたポリペプチドをその範疇に含む。なお、宿主細胞については「形質転換体」を説明する欄で詳述する。
蛍光ポリペプチドAの一例は、配列番号1または2にそのアミノ酸配列を示す蛍光ポリペプチドである。
上記(2)〜(4)に示した蛍光ポリペプチドAは、(1)に示した蛍光ポリペプチドAを基準とした場合に改変体と捉えることができる。(2)〜(4)に示した蛍光ポリペプチドAは、例えば、部位特異的な突然変異誘発法を用いて、上記(1)に示した蛍光ポリペプチドAをコードするポリヌクレオチドに人為的に変異を導入したものを発現させて得てもよい。部位特異的な突然変異誘発法としては、例えば、Kunkel法(Kunkel et al.(1985):Proc.Natl.Acad.Sci.USA,vol.82.p488-)などが挙げられる。上記(2)〜(4)に示した蛍光ポリペプチドAの一例は、配列番号5〜7に記載のアミノ酸配列を有する蛍光ポリペプチドである。
蛍光ポリペプチドにおいて、発色団を形成するアミノ酸配列としてX−Y−G(Xは任意のアミノ酸を示す)が知られている。上記(1)に示した蛍光ポリペプチドAでは、配列番号1および2における68〜70番目のアミノ酸配列がM−Y−Gである。したがって、上記(2)〜(4)に示した蛍光ポリペプチドAでも、配列番号1および2における68番目のアミノ酸は置換されてもよいが69番目〜70番目のアミノ酸を変異なく維持していることが好ましく、68番目〜70番目のアミノ酸全てを変異なく維持していることがより好ましい。
一方、配列番号1および2における69番目〜70番目のアミノ酸からなる領域を除く領域は全て、アミノ酸の変異を導入するに適した領域である。中でも、配列番号1および2における、3番目〜8番目、65番目〜67番目(好ましくは67番目)、71番目〜73番目(好ましくは72番目)、77番目〜82番目、104番目〜112番目(好ましくは106番目〜110番目、より好ましくは108番目)、119番目〜129番目、131番目〜135番目、139番目〜143番目、146番目〜150番目(好ましくは146番目〜148番目、より好ましくは146番目または148番目)、158番目〜172番目(好ましくは159番〜166番、より好ましくは162番目〜166番目、さらに好ましくは164番目)、177番目〜181番目(好ましくは179番目)、190番目〜194番目、196番目〜202番目(好ましくは199番目)、204番目〜212番目、216番目〜220番目のアミノ酸からなる領域などは、アミノ酸の変異を導入するにより適した領域である。また、ここで具体的に例示した領域に限らず、配列番号1と2との間で対応するアミノ酸に相違がみられる領域は、アミノ酸の変異を導入するにより適した領域である。例えば、後述の実施例におけるmAzaleaまたはmAzalea_B5の配列情報からは、上記した具体的な箇所以外にも、配列番号1および2における85番目のアミノ酸、151番目のアミノ酸、および176番目のアミノ酸が、他のアミノ酸に置換可能であることが示唆される。
上記(2)〜(4)に示した蛍光ポリペプチドAは、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列で示される蛍光ポリペプチドAと同等の蛍光特性を示してもよい。ここで、「同等の蛍光特性」を示すとは、配列番号1または2に記載のアミノ酸配列で示される蛍光ポリペプチドAと同等の励起波長、同等の蛍光波長、同等のpH感受性、同等の蛍光安定性、同等のモル吸光係数、同等の蛍光量子効率、同等の励起スペクトルまたは同等の発光スペクトルの形、同等の励起波長極大および同等の発光波長極大、同等の、2つの異なる波長における励起振幅の比、同等の、2つの異なる波長における発光振幅の比、同等の励起状態寿命、ならびに同等の発色団成熟速度などの少なくとも1つ以上を有することを指す。「同等の蛍光特性」は、好ましくは、細胞に導入した際の蛍光安定性および蛍光発光の早さ、ならびに同等の量子収率を有することを指す。具体的には、細胞に導入した際の蛍光安定性とは細胞内で凝集体を形成しないことであり、量子収率Φが0.4以上であり、好ましくは0.6以上である。また、より好ましくは同等の量子収率に加えて、同等の励起波長を有することを指す。具体的には、励起波長が550nm〜600nmである。
また、蛍光ポリペプチドAは単量体であっても多量体であってもよい。例えば、分子をラベルする場合およびFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)のプローブとして用いる場合などでは、蛍光ポリペプチドが単量体であることが好ましい。配列番号1に示すアミノ酸配列における104番目〜112番目(好ましくは106番目〜110番目、より好ましくは108番目)、119番目〜129番目、131番目〜135番目、139番目〜143番目、146番目〜150番目、および158番目〜172番目(好ましくは162番目〜166番目、より好ましくは164番目)のアミノ酸からなる領域はいずれも、蛍光ポリペプチドAの多量体の形成に特に関与していると推定される。
配列番号1および2に示すアミノ酸配列における、65番目〜67番目(好ましくは67番目)、146番目〜150番目(好ましくは148番目)、158番目〜172番目(好ましくは159番目)、177番目〜181番目(好ましくは179番目)、および196番目〜202番目(好ましくは199番目)のアミノ酸からなる領域はいずれも、蛍光波長のシフトに特に関与していると推定される。従って、蛍光波長のシフトした蛍光ポリペプチドAを得る場合は、上記アミノ酸領域の少なくとも一つに変異を生じさせることが好ましい。ここで、アミノ酸の変異は、アミノ酸の置換であることがより好ましい。
蛍光ポリペプチドAの一例では、pH7.4の環境下における蛍光の量子収率Φが、例えば0.6(60%)以上であり、好ましくは0.65(65%)以上であり、より好ましくは0.7(70%)以上である。実施例にも示すが、この量子収率の値は、従来の赤色蛍光タンパク質と比較して顕著に高い。なお、蛍光の量子収率が高いほど、蛍光強度が増大し、蛍光は一般的に明るくなるので、蛍光観察などに用いる上でより好適である。このような蛍光の量子収率を示す蛍光ポリペプチドAの一例として赤色蛍光を発するものが挙げられる。
また、蛍光ポリペプチドAの他の例では、pH7.4の環境下における蛍光の量子収率Φが、例えば0.40(40%)以上であり、好ましくは0.45(45%)以上であり、より好ましくは0.55(55%)以上である。この他の例において、モル吸光係数(M-1cm-1)は、例えば、70000以上であり、好ましくは80000以上であり、より好ましくは100000以上である。
〔2.蛍光ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド〕
本発明に係るポリヌクレオチドは、上記蛍光ポリペプチドAの何れかをコードするものである。
蛍光ポリペプチドAをコードするポリヌクレオチドは、具体的には、以下の(1−1)〜(1−4)の何れかに記載のポリヌクレオチドである。
(1−1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
(1−2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有し、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。なお、置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸の個数は、1〜25個であることが好ましく、1〜23個であることがより好ましく、1〜12個であることがさらに好ましく、1〜5または6個であることが特に好ましい。
(1−3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有し、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。なお、配列同一性は、88%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、96%以上、97%以上、98%以上、或いは99%以上であることが特に好ましい。
(1−4)上記(1−1)に記載のポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。このポリヌクレオチドは、上記(1−1)に記載のポリヌクレオチドの塩基配列に対して85%以上の配列同一性を有することが好ましい。当該配列同一性は、88%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましく、95%以上であることがさらに好ましく、96%以上、97%以上、98%以上、或いは99%以上であることが特に好ましい。
なお、上記のストリンジェントな条件下とは、例えば、参考文献[Molecular cloning-a Laboratory manual 2nd edition(Sambrookら、1989)]に記載の条件などが挙げられる。ストリンジェントな条件下とは、より具体的には例えば、6×SSC(1×SSCの組成:0.15M塩化ナトリウム、0.015Mクエン酸ナトリウム、pH7.0)、0.5%SDS、5×デンハートおよび100mg/mLニシン精子DNAを含む溶液にプローブとともに65℃で8〜16時間インキュベートし、ハイブリダイズさせる条件が挙げられる。
本発明に係るポリヌクレオチドは、RNAの形態、またはDNAの形態で存在し得る。RNAの形態とは、例えば、mRNAである。DNAの形態とは、例えば、cDNAまたはゲノムDNAである。DNAは、二本鎖であっても、一本鎖であってもよい。
本発明に係るポリヌクレオチドの一例である、配列番号3、4および8〜10に示す塩基配列は、順に、配列番号1、2および5〜7に示す蛍光ポリペプチドAをコードするcDNAである。また、本発明に係るポリヌクレオチドの他の例である、配列番号17および19に示す塩基配列を持つポリペプチドは、順に、配列番号16および18に示す蛍光ポリペプチドAをコードするcDNAである。本発明に係るポリヌクレオチドは、非翻訳領域(UTR)の配列などの付加的な配列を含むものであってもよい。
本発明に係るポリヌクレオチドを取得する(単離する)方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記ポリヌクレオチドの塩基配列の一部と特異的にハイブリダイズするプローブを調製し、ゲノムDNAライブラリーまたはcDNAライブラリーをスクリーニングすればよい。或いは、本発明に係るポリヌクレオチドを、ホスホロアミダイト法などの核酸合成法に従って合成してもよい。
また、本発明に係るポリヌクレオチドを取得する方法として、PCRなどの核酸増幅法を用いる方法を挙げることができる。例えば、当該ポリヌクレオチドのcDNAのうち、5’側および3’側の配列(またはその相補配列)の中からそれぞれプライマーを調製し、これらプライマーを用いてゲノムDNAまたはcDNAなどを鋳型にしてPCRなどを行い、両プライマー間に挟まれるDNA領域を増幅する。これによって、本発明に係るポリヌクレオチドを含むDNA断片を大量に取得できる。
〔3.ベクター、発現カセット〕
本発明に係るポリヌクレオチド(例えばDNA)は、適当なベクター中に挿入して、ベクターとして利用してもよい。ベクターの種類は、プラスミドのような自律的に複製するベクターでもよいし、或いは、宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、宿主細胞の染色体と共に複製されるものであってもよい。
上記ベクターは、好ましくは発現ベクターである。発現ベクターにおいて、本発明に係るポリヌクレオチドは、例えば、プロモータ配列などの、転写に必要な要素が、機能的に連結されている。プロモータ配列は宿主細胞において転写活性を示すDNA配列である。用いるプロモータ配列の種類は、宿主細胞の種類および本発明に係る蛍光ポリペプチドを利用する目的に応じて適宜選択すればよい。宿主細胞の種類としては、例えば〔4.形質転換体、および形質転換体の作製方法〕において記載したものが挙げられる。
宿主細胞内で作動可能なプロモータ配列としては、バチルス・ステアロテルモフィルス・マルトジェニック・アミラーゼ遺伝子(Bacillus stearothermophilus maltogenic amylase gene)、バチルス・リケニホルミスαアミラーゼ遺伝子(Bacillus licheniformis alpha-amylase gene)、バチルス・アミロリケファチエンス・BANアミラーゼ遺伝子(Bacillus amyloliquefaciens BAN amylase gene)、バチルス・サブチリス・アルカリプロテアーゼ遺伝子(Bacillus Subtilis alkaline protease gene)もしくはバチルス・プミルス・キシロシダーゼ遺伝子(Bacillus pumilus xylosldase gene)のプロモータ;ファージ・ラムダのPRプロモータまたはPLプロモータ;大腸菌の、lacプロモータ、trpプロモータ、tacプロモータ;ポリヘドリンプロモータ、P10プロモータ、オートグラファ・カリホルニカ・ポリヘドロシス塩基性タンパクプロモータ、バキュロウイルス即時型初期遺伝子1プロモータ、バキュロウイルス39K遅延型初期遺伝子プロモータ、酵母解糖系遺伝子由来のプロモータ、アルコールデヒドロゲナーゼ遺伝子プロモータ、TPI1プロモータ、ADH2-4cプロモータ、ADH3プロモータ、tpiAプロモータ、カリフラワーモザイクウイルスの35Sプロモータ、SV40プロモータ、MT−1(メタロチオネイン遺伝子)プロモータ、サイトメガロプロモータまたはアデノウイルス2主後期プロモータなどが挙げられる。
発現ベクターにおいて、本発明に係るポリヌクレオチドは、必要に応じて、適切なターミネータ(例えば、ポリアデニレーションシグナル、哺乳動物の成長ホルモンターミネータ、TPI1ターミネータまたはADH3ターミネータ)に機能的に結合されてもよい。適切なターミネータの種類は、宿主細胞の種類に応じて適宜選択すればよい。
本発明に係るベクターは、さらに、転写エンハンサ配列、または翻訳エンハンサ配列などの要素を有していてもよい。
本発明に係るベクターは、さらに、該ベクターの宿主細胞内での複製を可能にするDNA配列を有していてもよい。宿主細胞が哺乳動物細胞の場合、かかるDNA配列としては、SV40複製起点などが挙げられる。
本発明に係るベクターはさらに選択マーカーを有していてもよい。選択マーカーとしては、例えば、アンピシリン、カナマイシン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、ネオマイシン若しくはヒグロマイシンのような薬剤に対する、薬剤耐性遺伝子を挙げることができる。
本発明に係る発現カセットとは、(a)発現宿主内で機能的な発現制御領域;および、(b)本発明に係るポリヌクレオチド;を含む、発現カセットを指す。本発明に係る発現カセットは、上記した発現ベクターの態様であってもよい。
〔4.形質転換体、および形質転換体の作製方法〕
(形質転換体、および形質転換体の作製方法)
本発明に係るポリヌクレオチド、本発明に係る発現カセット、または、本発明に係るベクターを適当な宿主細胞に導入することによって形質転換体を作製することができる。作製された形質転換体は、本発明に係るポリヌクレオチドの全長を含んでいるか、少なくとも当該ポリヌクレオチドの一部を含んでいて、本発明に係る蛍光ポリペプチドの何れかを発現可能である。同様に、本発明に係る形質転換体を用いて得られた当該形質転換体の子孫も、本発明に係るポリヌクレオチドの全長を含んでいるか、少なくとも当該ポリヌクレオチドの一部を含んでいて、本発明に係る蛍光ポリペプチドの何れかを発現可能である。作製された形質転換体またはその子孫において、本発明に係るポリヌクレオチドの全長またはその一部は、ゲノム中に組み込まれていることが好ましい。
なお、以下の説明において、本発明に係るポリヌクレオチド、本発明に係る発現カセット、および、本発明に係るベクターを、本発明の「外来(foreign)核酸分子」と総称する。本発明の外来核酸分子を宿主細胞に導入する方法は、下記に例示をする通り、宿主細胞の種類に応じて選択すればよい。また、本発明に係る形質転換体の子孫を得る方法も、形質転換体の種類に応じて選択すればよい。
宿主細胞としては、例えば、細菌細胞、酵母細胞、酵母細胞以外の真菌細胞、および高等真核細胞などが挙げられる。高等真核細胞としては、例えば、植物細胞、動物細胞が挙げられる。動物細胞としては、昆虫細胞、両生類細胞、爬虫類細胞、鳥類細胞、魚類細胞、哺乳動物細胞などが挙げられる。また、細菌細胞の例としては、バチルスまたはストレプトマイセスなどのグラム陽性菌;大腸菌などのグラム陰性菌;が挙げられる。酵母細胞の例としては、サッカロマイセスまたはシゾサッカロマイセスに属する細胞が挙げられ、例えば、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)またはサッカロマイセス・クルイベリ(Saccharomyces kluyveri)などが挙げられる。酵母細胞以外の真菌細胞の例としては、糸状菌の細胞が挙げられる。糸状菌の細胞の例としては、例えば、アスペルギルス、ニューロスポラ、フザリウム、またはトリコデルマに属する糸状菌の細胞が挙げられる。昆虫細胞の例としては、例えば、カイコの細胞などが挙げられる。哺乳動物細胞の例としては、HEK293細胞、HeLa細胞、COS細胞、BHK細胞、CHL細胞またはCHO細胞などが挙げられる。
宿主細胞の形質転換は、宿主細胞の種類等に応じて適宜選択すればよく、例えば、プロトプラスト法、コンピテント細胞を用いる方法、エレクトロポレーション法、スフェロブラスト法、酢酸リチウム法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、アグロバクテリウム法およびパーティクルガン法などにより行うことができる。また、宿主細胞の形質転換のその他の方法としては、本発明の外来核酸分子を宿主染色体に組み込んだ宿主細胞を得ることによって形質転換を行う方法が挙げられる。外来核酸分子の宿主染色体への組み込みは、例えば、相同組換えまたは異種組換えにより行うことができる。宿主細胞の形質転換のさらに他の方法としては、本発明の外来核酸分子およびバキュロウイルスを宿主細胞に共導入して宿主細胞の培養上清中に組換えバキュロウイルスを得、次いで、組換えバキュロウイルスを宿主細胞に感染させて、本発明に係る蛍光ポリペプチドを当該宿主細胞に産生させる方法等が挙げられる。共導入の方法としては、例えば、リン酸カルシウム法またはリポフェクション法などを挙げることができる。
上記の形質転換体は、導入された外来核酸分子の発現が可能な条件下で、培養または育成する。
なお、形質転換体の態様は、細胞に限定されない。すなわち、形質転換体は、例えば、本発明に係る外来核酸分子で形質転換された組織、器官、および個体であってもよい。ただし、細胞以外の形質転換体は、非ヒト由来のものであることが好ましい場合があり、特に個体は非ヒト由来のものであることが好ましい。なお、形質転換されている個体であって、非ヒト由来のものを非ヒトトランスジェニック生物と称する。
(非ヒトトランスジェニック生物、およびその作製方法)
本発明に係る非ヒトトランスジェニック生物は、例えば、高等生物である。トランスジェニック植物としては、例えば、シロイヌナズナなどの双子葉植物;ミナトカモジグサ(Brachypodium distachyon)、イネ、コムギ、オオムギなどの単子葉植物;のトランスジェニックが挙げられる。トランスジェニック動物としては、例えば、ゼブラフィッシュ、マウス、ラット、ブタなどのトランスジェニックが挙げられる。
本発明に係る非ヒトトランスジェニック生物の作製方法は、トランスジェニック生物の種類に応じて選択をすればよい。トランスジェニック動物の作製法は、例えば、マイクロインジェクション法などに従って、生体外において、本発明に係る外来核酸分子をドナー生物から採取した受精卵に導入すること;生体外において、レトロウイルスなどのウイルスベクターを、ドナー生物に由来する初期発生胚の細胞に感染させること;などの方法が挙げられる。トランスジェニック植物の作製においては、例えば、アグロバクテリウム法;パーティクルガン法;エレクトロポレーション法;などに従って、本発明に係る外来核酸分子を植物細胞に導入し、続いて、必要に応じてカルス化のプロセスを経て、形質転換植物個体を得ればよい。
また、本発明に係る非ヒトトランスジェニック生物の子孫を得る方法も、当該非ヒトトランスジェニック生物の種類に応じて選択すればよい。高等生物の場合は、例えば、交配によって子孫を得る方法などが挙げられる。高等生物のうち植物の場合は、当該植物の種類に応じた無性生殖の手法を用いて子孫を得てもよい。
(非ヒトトランスジェニック生物のクローン、およびクローンの作製方法)
本発明は、例えば、本発明に係る非ヒトトランスジェニック生物を用いて、そのクローンを作製することも包含する。作製されたクローンは、元となった非ヒトトランスジェニック生物と同様に、ゲノム中に、本発明に係るポリヌクレオチドの全長を含んでいるか、少なくとも当該ポリヌクレオチドの一部を含んでいて、本発明に係る蛍光ポリペプチドの何れかを発現可能である。なお、クローンとは、胚細胞クローンも体細胞クローンも含む概念である。
クローンの作製方法としては、例えば、レシピエントとなる、核除去された未受精卵に対して、ドナーの細胞核を移植する、核移植の方法が挙げられる。ここで、ドナーの細胞核とは、1)元となった非ヒトトランスジェニック生物の体細胞核、または、2)元となった非ヒトトランスジェニック生物に由来する胚細胞核、が挙げられる。なお、ドナーの細胞核は、ゲノム中に、本発明に係るポリヌクレオチドの全長を含んでいるか、少なくとも当該ポリヌクレオチドの一部を含んでいる。
なお、ドナーの細胞核を核移植する方法は特に限定されず、例えば、1)核除去された未授精卵とドナーの細胞とを細胞融合させる方法、2)核除去された未授精卵に、細胞融合を介さずにドナーの細胞を導入する方法、などが挙げられる。
〔5.本発明に係る融合ポリペプチド、蛍光ポリペプチドに対する抗体〕
(融合ポリペプチド)
本発明に係る蛍光ポリペプチドと他のポリペプチドとからなる融合ポリペプチド(以下、本発明に係る融合ポリペプチドと称する)も本発明の範疇である。融合ポリペプチドは、例えば、本発明に係る発現カセットおよび/またはベクターの発現によって産生される融合タンパク質;任意のタンパク質を本発明に係る蛍光ポリペプチドで標識した融合タンパク質;本発明に係る蛍光ポリペプチドと、蛍光を安定化させるための所定のペプチド配列とが融合してなる融合タンパク質;本発明に係る蛍光ポリペプチドと他の蛍光ポリペプチドとを備えたFRET用プローブ;などが挙げられる。すなわち、本発明に係る蛍光ポリペプチドと融合させる他のポリペプチドの種類は特に限定されない。本発明に係る融合ポリペプチドは、本発明に係る蛍光ポリペプチドと同様の方法によって、化学合成されても、或いは、遺伝子組み換え技術を用いて産生されてもよい。
(抗体)
また、本発明に係る蛍光ポリペプチドに特異的に結合する抗体も本発明の範疇に含まれる。
〔6.多能性幹細胞、および多能性幹細胞の作製方法〕
本発明は、本発明に係る非ヒトトランスジェニック生物の細胞から、多能性幹細胞を作製する方法も包含する。多能性幹細胞を作製する方法は、本発明に係る非ヒトトランスジェニック生物から採取した細胞(出発細胞と称する場合もある)に初期化因子を導入する、或いは当該細胞を初期化因子で処理することによって、多能性幹細胞を作製する工程(初期化工程)、を含んでなる。なお、非ヒトトランスジェニック生物は、例えば、非ヒトトランスジェニック高等動物であり、中でも非ヒトトランスジェニック哺乳動物である。
(出発細胞)
本発明に係る非ヒトトランスジェニック生物から採取する細胞の種類は特に限定されないが、体細胞であることが好ましい。非ヒトトランスジェニック生物から細胞を採取する方法は、当該細胞の種類に応じた適切な方法で行えばよい。体細胞の種類は、生殖細胞以外のいかなる細胞であってもよく、分化能を有する体性幹細胞、人工多能性幹細胞およびこれらの幹細胞から分化誘導された体細胞も含まれる。
体細胞の由来は、例えば、胎児期(胎仔期)の個体に由来するものの他、成熟した個体に由来するものを用いてもよい。
(初期化因子)
初期化因子は、非ヒトトランスジェニック生物から採取した細胞内に導入されるか、当該細胞の処理に用いられることによって、当該細胞の核初期化を引き起こす因子を指す。細胞の核初期化によって多能性幹細胞が誘導される。
初期化因子は、「遺伝子」であってもよく、当該「遺伝子」の遺伝子産物(遺伝子がコードしているタンパク質またはRNA)であってもよく、或いは、例えば薬剤などの「その他の因子」であってもよい。初期化因子は好ましくは、「遺伝子」または「タンパク質」であり、より好ましくは「遺伝子」である。
遺伝子としての初期化因子は、例えば、Klfファミリー遺伝子、Octファミリー遺伝子、Soxファミリー遺伝子、および、Mycファミリー遺伝子からなる群より選択される少なくとも1つの遺伝子である。そして、これらの中では、Klfファミリー遺伝子、およびOctファミリー遺伝子の少なくとも一方を用いることが好ましい。Octファミリー遺伝子、Klfファミリー遺伝子、Soxファミリー遺伝子、Mycファミリー遺伝子については国際公開WO2007/69666(参考文献)に具体例が示されている。
また、遺伝子としての初期化因子の他の例は、iPS細胞の樹立に用いられる因子が挙げられ、例えば、Linファミリー遺伝子、Nanog遺伝子、Tbxファミリー遺伝子、UTF1遺伝子、SALLファミリー遺伝子、Nr5a2遺伝子、Nr5a1遺伝子、Nr1i2遺伝子、Rem2 GTPase遺伝子、TCL-1A遺伝子、Esrrファミリー遺伝子、Prmt5遺伝子、Glisファミリー遺伝子など、またはこれらと類似の遺伝子が挙げられる。
さらに、遺伝子としての初期化因子の他の例として、ES細胞特異的なmiRNAであるmiR-291-3p、miR-294、miR-295;miR-17-92、 miR-106b-25、miR106a-363、miR-93およびmiR-106b;mir-302ファミリーmiRNA;mir-200c、mir-302s およびmir-369s ファミリーmiRNA;などが挙げられる。
さらに、上記その他の因子としてはアルギニンメチル化酵素(PRMT)阻害剤、TGF-β阻害剤、GSK3阻害剤、lysine-specific demethylase 1(LSD1)阻害剤などiPS細胞の樹立に用いられる低分子化合物、およびp53遺伝子に対するsiRNA、胚細胞ヒストンおよびヒストンシャペロンなどが挙げられる。
(初期化工程)
上記の初期化工程は、例えば、出発細胞および多能性幹細胞が増殖、維持可能な培養環境において行われる。なお、出発細胞および多能性幹細胞が増殖、維持可能な培養環境とは、例えば、誘導多能性幹細胞の作製に採用されている種々の培養環境およびそれを改変した培養環境を指す。
上記初期化因子が遺伝子の場合、出発細胞内への当該初期化因子の導入は、例えば、発現可能に初期化因子を含むベクターを用いて行われる。ベクターの種類は出発細胞の種類に応じて適宜選択すればよく、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクター(好ましくはアデノウイルスベクター、レトロウイルスベクターなど)などが挙げられる。ベクターを、出発細胞へ導入する方法としては、例えば、電気穿孔法(Nucleic,Acids Res.15,1311-1326(1987))、リン酸カルシウム法(Mol.Cell Biol. 7,2745-2752(1987))、リポフェクション法(Cell 7,1025-1037(1994);Lamb,Nature Genetics 5,22-30(1993))などが挙げられる。
一方、上記初期化因子がタンパク質の場合、出発細胞を培養している培地中に初期化因子を添加して、出発細胞に取り込ませるか(参考文献:Zhou et al., Cell Stem Cell. 2009 May 8;4(5):381-4.、Kim et al., Cell Stem Cell. 2009 Jun 5;4(6):472-6.、特開2010−110289号公報(公開日2010年5月20日)、および特開2010−252786号公報(公開日2010年11月11日)など参照)、或いは、出発細胞以外に、初期化因子を豊富に含む体細胞(例えば、初期化因子を過剰発現させた細胞)を準備し、両細胞を細胞融合技術により融合する方法を採用してもよい。上記初期化因子が遺伝子でもタンパク質でもないその他の因子(例えば、薬剤など)である場合は、出発細胞を培養している培地中に初期化因子を添加して、出発細胞に取り込ませるか、出発細胞を処理すればよい。
(得られる多能性幹細胞)
得られる多能性幹細胞は少なくともmultipotencyを示し、より好ましくはpluripotencyを示す状態かそれ以前の状態を示す。なお、本発明において、multipotencyとは、例えば神経系または造血系など一部の細胞種に分化できる能力を指す。また、本発明において、pluripotencyとは、個体自体を構成することは出来ないが、個体を構成するすべての細胞および組織に分化できる能力を指す。得られる多能性幹細胞の一例は、いわゆる「誘導多能性幹細胞(induced Pluripotent Stem Cell)」である。「誘導多能性幹細胞」とは、ES細胞(Embryonic Stem Cell)に近い性質を有する細胞であり、より具体的には、未分化細胞であって、培養条件によって全能性(pluripotency)および未分化増殖能を有する細胞を包含する。
〔7.蛍光ポリペプチドを用いた観察など〕
(蛍光観察)
本発明に係る蛍光ポリペプチドや融合ポリペプチドの用途は特に限定されず、広く蛍光観察の用途に用いることができる。蛍光観察は、本発明に係る蛍光ポリペプチドまたは融合ポリペプチドに由来する蛍光発光を検出する工程(蛍光検出工程)を含む。
蛍光観察の一例としては、本発明に係る蛍光ポリペプチドまたは融合ポリペプチドを細胞において産生させる工程(産生工程)と、上記「蛍光検出工程」と、を含む方法が挙げられる。
上記の産生工程は、例えば、上記の〔4.形質転換体、および形質転換体の作製方法〕欄に記載の方法で行うことができる。また、上記の蛍光検出工程は、本発明に係るポリペプチドまたは融合ポリペプチドから発される蛍光発光を検出する工程である。蛍光の検出方法は特に限定されないが、例えば、UVトランスイルミネーターもしくはLEDトランスイルミネーター;蛍光顕微鏡;蛍光検出器;またはフローサイトメトリー;などの蛍光検出手段を用いて、蛍光発光の有無、蛍光発光の分布、または、蛍光強度などを、一時的にか経時的に測定すればよい。
蛍光観察の他の例としては、本発明に係る蛍光ポリペプチドまたは融合ポリペプチドを細胞内に導入する工程(導入工程)と、上記「蛍光検出工程」とを含む方法が挙げられる。細胞内に蛍光ポリペプチドなどを導入する方法としては、例えば、精製した蛍光ポリペプチドなどを細胞内に注入するマイクロインジェクション法などが挙げられる。
蛍光観察の1つの目的は、ポリペプチドの局在または動態の分析である。本発明に係る蛍光ポリペプチドと他のポリペプチド(ポリペプチドXとする)とを融合させた融合ポリペプチドを用いると、細胞内におけるポリペプチドXの局在または動態を可視化して分析可能となる。ポリペプチドXの種類は特に限定されないが、例えば、細胞内に局在するタンパク質、細胞内小器官に特異的なタンパク質、およびターゲティングシグナルなどが挙げられる。ターゲティングシグナルとは、例えば、核移行シグナル、ミトコンドリアプレ配列などが挙げられる。
蛍光観察の他の目的は、目的遺伝子の発現解析である。上記の産生工程を、目的遺伝子の発現制御配列の制御下で行うことによって、当該発現制御配列の活性を測定可能である。目的遺伝子の発現制御配列の活性は、目的遺伝子の発現レベルを反映する。
(蛍光観察の応用:試験物質の評価)
蛍光観察のさらに他の例としては、1以上の目的遺伝子の発現および/または局在性に対する試験物質の作用を評価する評価方法への応用が挙げられる。ここで、「目的遺伝子の局在性」とは、目的遺伝子の発現産物の局在性を意図している。
この評価方法は、少なくとも、以下のi)〜iv)の工程を含んで構成される。
i)第一の目的遺伝子と融合されていてもよい本発明に係る蛍光ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド(本発明に係るポリヌクレオチドと称する)を含む、第一の核酸分子を、細胞内に導入する導入工程。なお、第一の核酸分子は、第一の発現制御配列の制御下におかれるように、当該発現制御配列と作動可能に連結されている。
ii)導入工程を経た上記細胞を試験物質の存在下および不在下で培養する培養工程。
iii)上記細胞における蛍光発光を検出する蛍光検出工程。
iv)試験物質の存在下および不在下で得られた、上記細胞における蛍光発光を比較して、上記目的遺伝子の発現および/または局在性に対する試験物質の作用を評価する評価工程。
上記「目的遺伝子」とは、試験物質の作用を確認する目的で選択された任意の遺伝子を指す。「目的遺伝子」が複数ある場合、第一、第二の目的遺伝子として区別する場合がある。また、試験物質は、「目的遺伝子」に対して直接的にか間接的に作用し得る任意の物質を指す。例えば、試験物質が特定の疾患に対する治療薬候補化合物の場合、目的遺伝子は、例えば、当該疾患の発症に関連する遺伝子である。また例えば、試験物質が初期化因子の場合、目的遺伝子は、例えば、細胞の初期化に伴って発現が変化するNanogなどの遺伝子である。なお、初期化因子については、〔6.多能性幹細胞、および多能性幹細胞の作製方法〕欄が参照される。
上記「第一の核酸分子」は、少なくとも本発明に係るポリヌクレオチドを含む。第一の核酸分子の発現は、第一の発現制御配列によって制御されている。また、第一の核酸分子は、必要に応じて、本発明に係るポリヌクレオチドと融合された第一の目的遺伝子を含んでいてもよい。この場合、第一の目的遺伝子の発現産物と本発明に係る蛍光ポリペプチドとが融合した融合ポリペプチドが産生される。それゆえ、評価工程において、第一の目的遺伝子の局在性を評価することができる。
「第一の発現制御配列」は、上記「第一の目的遺伝子」の発現制御配列であってもよい。この場合、本発明に係るポリヌクレオチドは、第一の目的遺伝子の発現パターンを反映するように発現する。それゆえ、評価工程において、第一の目的遺伝子の発現に対する試験物質の作用を評価することができる。また、「第一の発現制御配列」は、好ましくはプロモータ配列である。
上記「導入工程」および「培養工程」は、例えば、上記の〔4.形質転換体、および形質転換体の作製方法〕欄に記載の方法に準じて行うことができる。
上記「蛍光検出工程」は、上述の蛍光検出手段を用いて、蛍光発光の有無、蛍光発光の分布、または、蛍光強度などを、一時的にか経時的に測定すればよい。蛍光検出工程は、比較のために、試験物質の存在下で培養された細胞と、試験物質の不在下で培養された細胞との双方を対象に行う。「蛍光検出工程」では、比較のために、試験物質が存在するか否かという点を除いては実質的に同一の条件で、蛍光発光を検出することが好ましい。
上記「評価工程」では、試験物質の存在下および不在下で得られた、上記細胞における蛍光発光を比較する。そして、得られた比較結果に基づいて、目的遺伝子の発現および/または局在性に対して試験物質が影響を及ぼすかの評価を行う。例えば、試験物質の存在下および不在下で、蛍光発光の検出結果に実質的な相違がない場合は、試験物質は目的遺伝子の発現などに対して影響を及ぼさないと評価する。試験物質の存在下および不在下で、蛍光発光の検出結果に有意な相違がある場合は、試験物質は目的遺伝子の発現などに対して影響を及ぼすと評価する。評価工程における評価には、試験物質が目的遺伝子の発現および/または局在性に対して与える影響の有無や程度を評価することが含まれる。
また、上記「導入工程」において、必要に応じて、上記第一の核酸分子の他に、第二の核酸分子を細胞内に導入してもよい。第二の核酸分子は、上記「第一の核酸分子」とは異なる蛍光ポリペプチド(第二の蛍光ポリペプチドと称する)をコードするポリヌクレオチドを含んでなる。但し、第二の核酸分子の発現は、第二の発現制御配列の制御下におかれている。第一の核酸分子と第二の核酸分子とは、蛍光特性が互いに異なる蛍光ポリペプチドをコードしているため、上記の蛍光検出工程および評価工程において、これら蛍光ポリペプチドを互いに区別して検出し評価することもできる。
第二の核酸分子は、必要に応じて、第二の蛍光ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと融合された第二の目的遺伝子を含んでいてもよい。この場合、第二の目的遺伝子の発現産物と第二の蛍光ポリペプチドとが融合した融合ポリペプチドが産生される。それゆえ、評価工程において、第二の目的遺伝子の局在性を評価することができる。
「第二の発現制御配列」は、上記「第二の目的遺伝子」の発現制御配列であってもよい。この場合、第二の蛍光ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、第二の目的遺伝子の発現パターンを反映するように発現する。それゆえ、評価工程において、第二の目的遺伝子の発現に対する試験物質の作用を評価することができる。また、「第二の発現制御配列」は、好ましくはプロモータ配列である。
なお、「第一の目的遺伝子」と「第二の目的遺伝子」とは互いに異なる遺伝子であることが好ましい。また、第一の発現制御配列と第二の発現制御配列とは互いに異なることが好ましい。
上記の評価方法は、生体外(exo vivo)において行われる。すなわち、この評価方法は、単離された細胞、または単離された組織などに含まれる細胞に対して行われる。
〔8.蛍光ポリペプチドの作製法〕
本発明は、配列番号1、2および5〜7に記載のアミノ酸配列のいずれかを有する蛍光ポリペプチドに基づいて、変異型の蛍光ポリペプチドを作製する方法も提供する。
すなわち、本発明に係る、蛍光ポリペプチドの作製方法の一態様は、
i)配列番号1、2または5〜7に記載のアミノ酸配列における69番目〜70番目以外のアミノ酸において少なくとも1以上のアミノ酸の変異を生じさせた変異型ポリペプチドを作製する工程と、
ii)上記変異型ポリペプチドの蛍光特性と、変異を生じさせる前のポリペプチドの蛍光特性とを比較する比較工程と、
iii)上記比較工程において、変異を生じさせる前と比較して蛍光特性が変化した変異型ポリペプチドを選択する選択工程と、を含む、方法である。
変異型ポリペプチドを作製する工程において、発色団を形成するアミノ酸配列X−Y−G(Xは任意のアミノ酸を示す)のうち−Y−Gは固定して、その他のアミノ酸に変異を加えるようにしている。これにより蛍光特性を保持した変異型ポリペプチドを効率的に製造することが可能となる。なお、配列番号1、2および5〜7それぞれにおいて、変異を生じさせるアミノ酸の個数や、アミノ酸の変異を生じさせる方法については、例えば、上述の〔1.蛍光特性を有するポリペプチド〕欄の記載を参照すればよい。
また、上記の選択工程では、蛍光特性を有するが当該蛍光特性が変化している変異型ポリペプチドを選択し、蛍光特性を完全に喪失した変異型ポリペプチドは除外する。
なお、上記した変異型の蛍光ポリペプチドを作製する方法は、変異型の蛍光ポリペプチドをスクリーニングする方法と捉えることもできる。
〔9.本発明に係るキット〕
(キット)
本発明に係るキットは、1)本発明に係る蛍光ポリペプチド、2)本発明に係る蛍光ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、3)本発明に係る発現カセット、4)本発明に係るベクター、5)本発明に係る形質転換体、および、6)本発明に係る融合ポリペプチド、からなる群より選択される少なくとも1種以上を含んでなる。上記2)のポリヌクレオチドがRNAの場合は、遺伝子の組み換えを伴わない一次発現用のキットとして、ヒトなどの生物個体にも適用することができる。
本発明に係るキットは、当技術分野において公知の材料および手法を用いて調製することができる。蛍光ポリペプチドまたはポリヌクレオチドなどの試薬は、好適な溶媒に溶解することにより保存に適した形態に調製することができる。溶媒としては、水、エタノールおよび公知の各種緩衝液などを用いることができる。
本発明に係るキットは、さらに必要に応じて、各種試薬および器具(緩衝溶液、試験管およびピペットなど)ならびにキットの使用説明書などの少なくとも1つを備えていてもよい。なお、キットの使用説明書には、例えば、上述の〔7.蛍光ポリペプチドを用いた観察など〕の欄で説明した、本発明に係る検出方法の内容が記録されている。キットは、例えば、試薬用途、または診断用途に用いるものである。
〔10.〕
本発明はまた以下に示す何れかの態様であってもよい。
<1> 以下の(1)〜(4)の何れかに示す、蛍光特性を有するポリペプチド。(1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、(2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、(3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド、(4)上記(1)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド。
<2> 蛍光の量子収率Φが0.6以上であるか0.4以上である、<1>に記載のポリペプチド。
<3> 以下の(1)〜(4)の何れかに記載のポリヌクレオチド。(1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有し、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有し、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、(4)上記(1)に記載のポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
<4> (a)発現宿主内で機能的な発現制御領域;および、(b)<3>に記載のポリヌクレオチド;を含む、発現カセット。
<5>上記<3>に記載のポリヌクレオチドまたは<4>に記載の発現カセットを含むベクター。
<6>上記<3>に記載のポリヌクレオチド、<4>に記載の発現カセットまたは<5>に記載のベクターを含む形質転換体。
<7>非ヒトトランスジェニック生物である、<6>に記載の形質転換体。
<8>上記<1>または<2>に記載のポリペプチドと他のポリペプチドとからなる融合ポリペプチド。
<9>蛍光観察の方法であって、<1>または<2>に記載のポリペプチド、あるいは<8>に記載の融合ポリペプチドを細胞において産生させる産生工程と、当該ポリペプチドまたは融合ポリペプチドに由来する蛍光を観察する観察工程とを含む、方法。
<10>細胞において1以上の目的遺伝子の発現および/または局在性に対する1以上の試験物質の作用を評価する方法であって、i)第一の目的遺伝子と融合されていてもよい上記<3>に記載のポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、第一の発現制御配列の制御下におかれるように当該発現制御配列と作動可能に連結された第一の核酸分子を、細胞内に導入する導入工程、ii)導入工程を経た上記細胞を上記試験物質の存在下および不在下で培養する培養工程、iii)上記細胞における蛍光発光を検出する蛍光検出工程、およびiv)試験物質の存在下および不在下で得られた、上記細胞における蛍光発光を比較して、上記目的遺伝子の発現および/または局在性に対する試験物質の作用を評価する評価工程、を含む、方法。
<11>上記導入工程において、さらに、上記第一の核酸分子とは異なる蛍光ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、第二の発現制御配列の制御下におかれるように当該発現制御配列と作動可能に連結された第二の核酸分子を、上記細胞内に導入する、<10>に記載の方法。
<12>上記<3>に記載のポリヌクレオチドの全体または一部を細胞中に含む形質転換体を作製する方法であって、<3>に記載のポリヌクレオチド、<4>に記載の発現カセットまたは<5>に記載のベクターを細胞に導入する工程を含む、方法。
<13>上記<12>に記載の方法で得られた形質転換体またはその子孫。
<14>上記<3>に記載のポリヌクレオチドの全体または一部を細胞中に含む非ヒトトランスジェニック生物を作製する方法であって、<3>に記載のポリヌクレオチド、<4>に記載の発現カセットまたは<5>に記載のベクターを、ドナー細胞から採取した受精卵に導入する工程を含む、方法。
<15>上記<14>に記載の方法で得られた非ヒトトランスジェニック生物またはその子孫。
<16>上記<15>に記載の非ヒトトランスジェニック生物またはその子孫より細胞を採取し、該細胞に初期化因子を導入して多能性幹細胞を作製する方法。
<17>上記<1>または<2>に記載のポリペプチド、<3>に記載のポリヌクレオチド、<4>に記載の発現カセット、<5>に記載のベクター、<6>または<7>に記載の形質転換体、あるいは<8>に記載の融合ポリペプチドを含む、キット。
なお、本出願は、2013年8月23日出願の日本国特許出願、特願2013-173850を基礎出願とする優先権主張出願であり、基礎出願の内容は全て本明細書に包含される。
以下の実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
〔1.コイボコモンサンゴ由来の遺伝子のクローニング〕
(材料および方法)
コイボコモンサンゴ(Montipora monasteriata)をマルチビーズショッカー(安井器機)によって粉砕後、TRIzol(Invitrogen)を用いてtotalRNAを抽出した。抽出したtotalRNAからOligotex-dT30 <super>(タカラバイオ)を用いてmRNAを精製した。SuperScript Plasmid System with Gateway Technology for cDNA Synthesis and Cloning(Invitrogen)を用いて、mRNAからcDNAライブラリーを作製した。mRNAを鋳型とした逆転写には、配列番号11に示すプライマーを用いた。得られたcDNAを、大腸菌用発現ベクターpFASTSET(pRSET(Invitrogen)のマルチクローニングサイトをpFastBac(Invitrogen)のマルチクローニングサイトに差し替えることによって作製したベクター)に挿入した後、大腸菌JM109 (DE3)(Promega)に導入し、アンピシリンを含むLB固体培地のプレート上で培養してコロニーを得た。得られたコロニーに、UVイルミネーター、青色LEDおよび緑色LEDをそれぞれ用いて光を照射し、蛍光を発するか否か確認した。蛍光を発することを確認したコロニーを液体培地で培養後、大腸菌液からDNAを抽出し、塩基配列の決定を行った。
(結果)
2個の発光するコロニーが得られ、これらのコロニーから、2つの蛍光タンパク質(1-29および1-41)のクローンを得た。また、1個の着色したコロニーが得られ、色素タンパク質のクローンを得た。BLASTで検索したところ、2つの蛍光タンパク質は新規のタンパク質であった。一方、色素タンパク質は既知のタンパク質であった。
〔2.大腸菌における1−29および1−41タンパク質の発現〕
(材料および方法)
<大腸菌発現用ベクターの作製>
1−29のDNAは、配列番号12のforward primerおよび配列番号13のreverse primerを用いたPCRにより増幅した。また、1−41のDNAを、配列番号14のforward primerおよび配列番号15のreverse primerを用いたPCRにより増幅した。それぞれのPCRによって得られた、N末端にKpnIサイトを付加し、C末端にEcoRIサイトを付加したDNA断片を、大腸菌用発現ベクターpRSET(Invitrogen)に挿入し、大腸菌発現用のプラスミドDNAを得た。
<大腸菌発現用ベクターの大腸菌における発現、培養およびタンパク質の精製>
大腸菌株JM109(DE3)(Promega)にヒートショック法によって上述の大腸菌発現用のプラスミドDNAを導入し、アンピシリンを含むLB固体培地のプレートに播種してコロニーを得た。得られたコロニーをLB液体培地に植菌し、室温で3日間培養した。培養後に、遠心機を用いて遠心をして大腸菌の菌体を回収した。続いて大腸菌の菌体を凍結融解法で破砕し、破砕液を遠心機を用いて遠心分離し上清を得た。上清をNi-NTAカラムを用いてHis−tag精製した。次にSephadex G-25カラムを用いてバッファー交換を行った。
<タンパク質濃度の測定>
BSA(bovine serum albumin)を標準液としてブラッドフォード法によって測定した。
〔3.1−29および1−41タンパク質の蛍光特性の分析〕
(材料および方法)
<吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび量子収率の測定>
1−29および1−41タンパク質の蛍光特性について分析するため、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび量子収率の測定を行った。
分光光度計(日立ハイテク)を用い、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に40μMとなるようにタンパク質を懸濁させて吸収スペクトルを測定した。また、SynergyMx(Biotek)を用いて、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に2μMとなるようにタンパク質を懸濁させて蛍光スペクトルを測定した。さらに、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス)を用い、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に2μMとなるようにタンパク質を懸濁させて量子収率を測定した。結果を図1に示す。また、得られた測定結果について、表1にまとめた。
(結果)
図1は、1−29および1−41タンパク質の蛍光特性を示す図である。
〔4.1−29および1−41改変体の解析〕
(材料および方法)
<変異導入による1−29改変体および1−41改変体の作製、1−29改変体および1−41改変体の大腸菌発現用ベクターの作製、大腸菌における発現、培養およびタンパク質の精製>
単量体化した改変体を得ることを目指し、上述の2.において得られた野生体の1−29および1−41の大腸菌発現用ベクターを鋳型とし、1−29および1−41にrandom mutagenesis法およびpoint mutation法を用いてランダムに変異を導入し、複数の1−29改変体および1−41改変体を得た。それぞれの改変体について、2.に記載の方法と同様の方法を用いて、大腸菌発現用ベクターによる大腸菌における発現、培養およびタンパク質の精製を行った。
単量体化されているか否か確認は、改変体のタンパク質をPseud−Native−PAGE電気泳動により電気泳動したゲルに、UV照射して、単量体に相当する分子量におけるタンパク質の蛍光の発光を確認することにより行った。単量体化が確認されたクローンについて、アミノ酸配列の変異を調べた。結果を図2の(a)に示す。
(結果)
図2は、単量体化した改変体の大腸菌における発現および蛍光特性を示した図である。図2の(a)は改変体のタンパク質を、Pseud−Native−PAGE電気泳動により電気泳動したゲルを、UVトランスイルミネーターによってUV照射して観察した図である。
図2の(a)に示した通り、単量体化された数個の改変体を得た。そのうち特に蛍光の明るいものが9−2B、9−4および10−3であった。
また、9−2B、9−4および10−3のアミノ酸配列を、順に配列番号5、6、1に示した。
単量体の蛍光ポリペプチドAである10−3(配列番号1)の主要な蛍光特性は、以下の通りである。
最大励起波長(nm):574
最大蛍光波長(nm):598(赤色)
モル吸光係数(M-1cm-1):49500
量子収率(%):66(pH7.4)
蛍光寿命(ナノ秒):
pH感受性:pH6以上、特にpH6〜11で蛍光強度は安定し、感受性は無い。
また、単量体の蛍光ポリペプチドAである9−2B(配列番号5)の主要な蛍光特性は、以下の通りである。
最大励起波長(nm):573
最大蛍光波長(nm):594(赤色)
モル吸光係数(M-1cm-1):60300
量子収率(%):68(pH7.4)
蛍光寿命(ナノ秒):
pH感受性:pH6以上、特にpH6〜11で蛍光強度は安定し、感受性は無い。
また、単量体の蛍光ポリペプチドAである9−4(配列番号6)の主要な蛍光特性は、以下の通りである。
最大励起波長(nm):573
最大蛍光波長(nm):610(赤色)
モル吸光係数(M-1cm-1):44100
量子収率(%):73(pH7.4)
蛍光寿命(ナノ秒):
pH感受性:pH6以上、特にpH6〜11で蛍光強度は安定し、感受性は無い。
〔5.単量体化した1−29および1−41改変体タンパク質の蛍光特性の分析〕
(材料および方法)
<1−29および1−41改変体タンパク質の吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび量子収率の測定>
単量体化した1−29および1−41改変体タンパク質の蛍光特性について分析するため、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび量子収率の測定を行った。
分光光度計(日立ハイテク)を用い、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に40μMとなるようにタンパク質を懸濁させて吸収スペクトルを測定し、極大吸収波長においてモル吸光係数を計算した。
また、SynergyMx(BioTek)を用いて、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に2μMとなるようにタンパク質を懸濁させて蛍光スペクトルを測定した。さらに、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス)を用い、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に2μMとなるようにタンパク質を懸濁させて量子収率を測定した。また、公知の蛍光タンパク質であるmStrawberryおよびTagRFPについても同様に測定を行い、1−29および1−41改変体の値と比較した。なお、TagRFPは525nmの吸収値が0.1になるように調整し、それ以外では540nmの吸収値が0.1になるように調整した。結果を図2中の(b)および図3に示す。また、得られた測定結果について、表2にまとめた。
(結果)
図2は、単量体化した改変体の大腸菌における発現および蛍光特性を示した図である。図2の(b)は、単量体化した2つのクローン(9−2Bおよび10−3)について、蛍光特性を示した図である。上は、単量体化した2つのクローンそれぞれについて、吸収スペクトルを示す。下は単量体化した2つのクローンそれぞれについて、励起スペクトル(EX)および蛍光スペクトル(EM)を示す。なお、励起スペクトルの蛍光強度は、検出光の波長を640nmに固定したときの値を示し、2つの蛍光スペクトルはそれぞれ励起光の波長を540nm(上のスペクトル)および380nmとしたとき(下のスペクトル)の値を示している。
図3は、単量体化した3つの改変体の蛍光特性を示した図である。3つの改変体の吸収スペクトルを示す。公知の赤色蛍光タンパク質として、mStrawberryおよびTagRFPを用いた。
モル吸光係数を計算した結果、mStrawberryでは52000(Shaner et al, 2004 Nature Biotechnolgyの報告では90000)、TagRFPでは48700(Merzlyak et al., 2007 Nature Methodsの報告では100000)であった。一方、9−2Bでは60300、9−4では44100、10−3では49500であった。
量子収率は、mStrawberryではpH7.4の条件下で0.31(Shaner et al, 2004 Nature Biotechnolgyの報告では0.22)、TagRFPではpH7.4の条件下で0.52(Merzlyak et al., 2007 Nature Methodsの報告では0.48)であったのに対し、9−2BではpH7.4の条件下で0.68、9−4ではpH7.4の条件下で0.73、10−3ではpH7.4の条件下で0.66であった。
以上の比較より、本発明の蛍光ポリペプチドの優れた蛍光特性が確認された。
次に、本発明の蛍光ポリペプチドの大腸菌(JM109DE3)コロニーで光り始める早さをmStrawberryおよびTagRFPの場合と比較した。上記と同様にして大腸菌発現用ベクターを大腸菌に導入し、37℃で17時間培養した時点での蛍光発光を調べた。mStrawberryでは光り始めたコロニーがわずかであるのに対し、TagRFPおよび本発明の蛍光ポリペプチドでは多くのコロニーで光ることが確認された。
〔6.単量体化した1−29および1−41改変体タンパク質のpH感受性の分析〕
(材料および方法)
1−29および1−41単量体化改変体の精製タンパク質を50mMのCHCOONa−CHCOOH(pH4.0およびpH5.0)、50mMのKHPO−NaOH(pH6.0)、50mMのHEPES−NaOH(pH7.0)、50mMのTricine−NaOH(pH8.0)、50mMのGlycine−NaOH(pH9.およびpH10.0)、50mMのNaHPO−NaOH(pH11.0)中で、SynergyMx(Biotek)を用いて蛍光強度を測定し、得られた測定値のうち最も高い数値によって標準化した。
(結果)
図4は、単量体化した3つの改変体における蛍光強度のpH感受性を示す。
クローン9−2Bおよび9−4はpKa=4.5であり、10−3はpKa=4.8であった。
〔7.単量体化した1−29および1−41改変体の蛍光安定性の分析〕
(材料および方法)
HeLa細胞に9−2B、9−4、10−3、mStrawberryおよびTagRFPの遺伝子をLipofectamine 2000 reagent(Invitrogen)を用いてそれぞれ導入し、1日後に蛍光顕微鏡を用いて細胞を観察した(対物レンズ:UplanSApo×60、励起:562nm/40、蛍光:624nm/40、ダイクロイックミラー:601nm、ND:1%、経過時間:3分毎)。それぞれの細胞に同じ条件で励起光を照射し続け、退色を調べた。結果を図5Aおよび図5Bに示す。
(結果)
図5Aおよび図5Bは、単量体化した3つの改変体の蛍光の安定性を示した図(図5A)とグラフ(図5B)である。
9−2B、9−4および10−3は哺乳動物細胞中で問題なく発現させることができた。一方、TagRFPでは、図5Aの右下に示す通り、細胞質内でTagRFPが凝集した可能性を示す斑点が確認された。このような斑点は9−2B、9−4および10−3では観察されず、mStrawberryも同様であった。
また、グラフでは蛍光強度の変遷を時間軸で表しているが、9−2B、9−4および10−3の退色はmStrawberryより生じにくいことが分かった。
〔8.蛍光波長のシフトした1−29および1−41改変体タンパク質の蛍光特性の分析〕
(材料および方法)
上述の2.において得られた野生体の1−29および1−41の大腸菌発現用ベクターを鋳型とし、1−29および1−41に、4.に記載の方法と同様に、random mutagenesis法およびpoint mutation法を用いてランダムに変異を導入し、複数の1−29改変体および1−41改変体を得た。それぞれの改変体について、2.に記載の方法と同様の方法を用いて、大腸菌発現用ベクターによる大腸菌における発現、培養およびタンパク質の精製を行った。それぞれの改変体のタンパク質について、5.に記載の方法と同様の方法を用いて、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび量子収率の測定を行った。結果を図6に示す。
(結果)
図6は、2つの改変体の蛍光波長のシフトを示した図である。
解析した結果、複数の1−29改変体および1−41改変体のうち、1−29改変体である1−29C(配列番号7)および1−29G(配列番号2)において蛍光波長がそれぞれ420nm近傍、500nm近傍にシフトしていた。これらの改変体によって目的に応じた蛍光波長の選択が可能となる。
〔9.他の改変体の解析〕
<変異導入による1−41改変体の作製、1−41改変体の大腸菌発現用ベクターの作製、大腸菌における発現、培養およびタンパク質の精製>
上述の〔2.〕において得られた野生体の1−41タンパク質の大腸菌発現用ベクターを鋳型として、random mutagenesis法およびpoint mutation法を用いてランダムに変異を導入し、複数の1−41改変体を得た。それぞれの改変体について、上述の〔2.〕に記載の方法と同様の方法を用いて、大腸菌発現用ベクターによる大腸菌における発現、培養およびタンパク質の精製を行った。
得られた改変体が単量体化されているか否か確認は、改変体のタンパク質をPseud−Native−PAGE電気泳動により電気泳動したゲルに、UV照射して、単量体に相当する分子量におけるタンパク質の蛍光の発光を確認することにより行った。単量体化が確認されたクローンについて、アミノ酸配列の変異を調べた。ここで得られた新たな改変体(mAzaleaと称する)のアミノ酸配列は配列番号16として、mAzaleaをコードする遺伝子のコード領域の塩基配列を配列番号17として示す。
〔10.mAzaleaの蛍光特性の分析〕
(材料および方法)
<mAzaleaの吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび量子収率の測定>
上述の〔9.〕で得たmAzaleaの蛍光特性について分析するため、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび量子収率の測定を行った。
分光光度計(日立ハイテク)を用い、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に40μMとなるようにタンパク質を懸濁させて吸収スペクトルを測定し、極大吸収波長においてモル吸光係数を計算した。なお、モル吸光係数の計算は、1MのNaOHで変性した時に、成熟したGFPの発色団の446nmでのモル吸光係数が44000(M-1cm-1)であることを基準として、mAzaleaの「変性した時の446nmでの吸収値」と「pH7.4でのピークの吸収値」の比から計算をしたものである。また、SynergyMx(BioTek)を用いて、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に2μMとなるようにmAzalea(蛍光タンパク質)を懸濁させて蛍光スペクトルを測定した。さらに、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス)を用い、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に2μMとなるようにmAzaleaを懸濁させて量子収率を測定した。なお、mAzaleaを2μMとなるように懸濁することによって、540nmの吸収値が0.1になるように調整されている。結果を図7に示す。
(結果)
図7は、mAzaleaの蛍光特性を示した図である。図中の上のグラフは、mAzaleaの吸収スペクトルを示す。図中の下の二つのグラフは、mAzaleaの励起スペクトル(ex640:点線で示す)および蛍光スペクトル(em540, em470:実線で示す)を示す。なお、励起スペクトルの蛍光強度は、検出光の波長を640nmに固定したときの値を示し、2つの蛍光スペクトル(em540, em470)はそれぞれ励起光の波長を540nmおよび470nmとしたときの値を示す。
mAzaleaの蛍光特性を解析した結果、pH7.4における主要な特性は以下の通りである。
吸収ピーク(nm):575
最大励起波長(nm):574
最大蛍光波長(nm):598(赤色)
モル吸光係数(M-1cm-1):103200
量子収率(%):49
pH感受性:pH5以上で9以下の範囲内、特にpH6〜8の範囲内で蛍光強度は安定し、感受性は無い。pH5未満かpH9を超える場合、蛍光強度は大きく減少する。 〔11.mAzaleaのpH感受性の分析〕
(材料および方法)
mAzaleaの精製タンパク質を50mMのCHCOONa−CHCOOH(pH4.0およびpH5.0)、50mMのKHPO−NaOH(pH6.0)、50mMのHEPES−NaOH(pH7.0)、50mMのTricine−NaOH(pH8.0)、50mMのGlycine−NaOH(pH9.0およびpH10.0)、および、50mMのNaHPO−NaOH(pH11.0)中で、SynergyMx(Biotek)を用いて蛍光強度を測定し、得られた測定値のうち最も高い数値によって標準化した。また、分光光度計(日立ハイテク)を用いて吸収スペクトルも測定した。
(結果)
図8は、mAzaleaにおける蛍光強度のpH感受性を示す。図中の上の二つのグラフは、様々なpH条件下における、mAzaleaの励起スペクトル(ex640)および蛍光スペクトル(em540)を示す。なお、励起スペクトルの蛍光強度は、検出光の波長を640nmに固定したときの値を示し、蛍光スペクトル(em540)は励起光の波長を540nmとしたときの値を示す。
図中の下の左側のグラフは、様々なpH条件下における、mAzaleaの吸収スペクトルを示す。また、図中の下の右側のグラフは、mAzaleaに関する、様々なpH条件下における、波長575nmの光の吸収(Abs_575)、励起スペクトルの蛍光強度、および、蛍光スペクトルを示す。なお、励起スペクトル(ex_574)の蛍光強度は、検出光の波長を640nmに固定したときの、574nmの値を示し、蛍光スペクトル(em_598)は励起光の波長を540nmに固定した時の598nmの値を示す。
mAzaleaは、pH5以上で9以下の範囲内、特にpH6〜8の範囲内で蛍光強度は安定し、感受性は無い。しかし、pH5未満かpH9を超える場合は、mAzaleaの蛍光強度等は大きく減少する。すなわち、mAzaleaは、pH感受性のある蛍光タンパク質として、pHセンサ、および、pH依存性スイッチ等として利用できる。
〔12.mAzaleaの蛍光安定性の分析〕
(材料および方法)
HeLa細胞に、mAzalea、mRuby2(Kredel et al., 2009 PLoS ONE)、mCherryおよびTagRFP−Tの遺伝子をLipofectamine 2000 reagentを用いてそれぞれトランスフェクションした。トランスフェクションの1日後に、細胞固定を行った場合と、細胞固定を行わなかった場合のそれぞれの光安定性を調べた。なお、測定の条件は以下の通りである。
<細胞固定を行った場合>
固定方法:トランスフェクションの1日後に4%PFAで30分氷上にて固定;バッファ:10mM HEPES−NaOH(pH7.4)含有HBSS;CCDカメラ:DP30(オリンパス社製);蛍光フィルターキューブ:U−MPFP HQ(オリンパス社製)(励起が535-555nm(BP535-555HQ)、ダイクロイックミラーが565nm(DM565HQ)、蛍光が570-625nm(BA570-625HQ);対物レンズ:×40 UplanFL N;NDフィルタ:25%;ビニング:2(mcherryのみ、1秒);露出時間:15ミリ秒(mcherryのみ、30ミリ秒);照射間隔:1分、
<細胞固定を行っていない場合>
バッファ:DMEM/F−12(Gibco社製);CCDカメラ:DP30(オリンパス社製);蛍光フィルターキューブ:U−MPFP HQ(オリンパス社製);対物レンズ:×40 UplanFL N;NDフィルタ:25%;ビニング:2;露出時間:40ミリ秒(mcherryとTafRFPは30ミリ秒、mRubyは25ミリ秒);照射間隔:1分。
(結果)
図9は、mAzalea、mRuby2、mCherryおよびTagRFP−Tの蛍光の安定性を示した図である。図中の左側が細胞固定を行った場合の結果であり、右側が細胞固定を行っていない場合の結果である。この結果から、mAzaleaの蛍光安定性は、mRuby2より優れ、その他の蛍光タンパク質と比較しても遜色がないことが判る。
〔13.mAzaleaの局所的な発現〕
HeLa細胞を用いて、そのサイトゾル(図10の左側)、原形質膜(図10の右側)、小胞体(図11)、αチューブリンを含む器官(図12)、並びに、βアクチンを含む器官(図13)における、mAzaleaの発現を解析した。HeLa細胞は、Lipofectamine 2000 reagent(Invitrogen)を用いてそれぞれトランスフェクションし、1日後に蛍光顕微鏡を用いて細胞を観察した。トランスフェクションに用いた遺伝子コンストラクトは、mAzalea遺伝子(図10の左側)、Lyn-mAzalea/pcDNA3(図10の右側)であり、そして、図11〜図13については、mAzalea、mRuby2、およびmCherryの遺伝子(図中でFPと示す)をそれぞれ含む複数の遺伝子コンストラクトを用いた。Lyn-mAzalea/pcDNA3は、膜結合性であるLynの配列とmAzalea遺伝子とを連結した遺伝子コンストラクトである。なお、図11に対応する遺伝子コンストラクトは、カルレティキュリン−FP(蛍光タンパク質)−KDELをこの順に連結したもので、図12に対応する遺伝子コンストラクトは、FP(蛍光タンパク質)とαチューブリンとをリンカー(GGGGS)×3で連結したもので、図13に対応する遺伝子コンストラクトは、FP(蛍光タンパク質)とβアクチンとをリンカー(GGGGS)×3で連結したものである。
結果を図10〜13に示す。なお、測定の条件は以下の通りである。
<サイトゾルの観察>
バッファ:DMEM/F−12(Gibco社製);CCDカメラ:DP30(オリンパス社製);蛍光フィルターキューブ:U−MPFP HQ(オリンパス社製);対物レンズ:×40 UplanFL N;NDフィルタ:25%;ビニング:2;露出時間:35ミリ秒
<原形質膜の観察>
バッファ:10mM HEPES−NaOH(pH7.4)含有HBSS;CCDカメラ:DP30(オリンパス社製);蛍光フィルターキューブ:U−MPFP HQ(オリンパス社製);対物レンズ:×40 UplanFL N;NDフィルタ:10%;ビニング:2;露出時間:400ミリ秒
<小胞体の観察>
顕微鏡:FV1000(オリンパス社製);対物レンズ:×60 UplanApo W/IR;スキャン速度:2.0μ秒/ピクセル;C.A.:130μm;Kalman:line、×2;レーザー:543nm;蛍光:560-660nm
<αチューブリンを含む器官の観察>
顕微鏡:FV1000(オリンパス社製);対物レンズ:×60 UplanApo W/IR;スキャン速度:4.0μ秒/ピクセル;C.A.:120μm;Kalman:line、×4;レーザー:543nm;蛍光:560-660nm
<βアクチンを含む器官の観察>
顕微鏡:FV1000(オリンパス社製);対物レンズ:×60 UplanApo W/IR;スキャン速度:2.0μ秒/ピクセル;C.A.:130μm;Kalman:line、×2;レーザー:543nm;蛍光:560-660nm
(結果)
図10〜図13に示すように、mAzaleaは、HeLa細胞中の標的とした箇所に局在的に発現する蛍光マーカーとして機能することがわかった。
〔14.mAzaleaの成熟速度〕
次にmAzaleaの光り始める早さをmCherryの場合と比較した。HeLa細胞(HeLa S3)に、mAzaleaおよびmCherryの遺伝子をそれぞれトランスフェクションした。次いで、このHeLa細胞を、6時間、12時間、18時間培養した時点での蛍光発光を調べた。図14に結果を示すように、mAzaleaの光り始める早さは、mCherryとほぼ同等であった。
HeLa細胞のトランスフェクションの条件:FuGENE(登録商標) HD を用いて、1μgのプラスミドをトランスフェクションした。
HeLa細胞の培養条件:培地は10% FBSを添加したDMEM培地。培養条件は、顕微鏡用培養装置FV10iを用いて、37℃で5%濃度の二酸化炭素存在下。
蛍光発光の観察条件:
レーザ(Laser): 559nm_7.5%, PMT: 40%, em: 570-670nm, C. A.: 300um
対物レンズ(Obj): UPlanSApo 10×, スキャンスピード(Scan speed): 2μs/pixel
イメージサイズ(Image size): 512x 512, ズーム(Zoom): x1, Kalman: line x2
インターバル(Interval): 15min
〔15.mAzaleaに基づく改変体タンパクの作製とその解析〕
上述の〔9.〕欄で記載をしたmAzaleaのアミノ酸配列において、85番目のアミノ酸をイソロイシンからロイシンに置換し、176番目のアミノ酸をチロシンからメチオニンに置換した改変体タンパク質を作製し、これをmAzalea_B5と称した。なお、部位特異的なアミノ酸変異は、mAzaleaの遺伝子配列を鋳型として導入をした。mAzalea_B5のアミノ酸配列は、配列番号18に、遺伝子のコード領域の塩基配列は、配列番号19に示す。
次いで、得られたmAzalea_B5の蛍光特性について分析するため、吸収スペクトル、蛍光スペクトルおよび量子収率の測定を行った。分光光度計(日立ハイテク)を用い、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に40μMとなるようにタンパク質を懸濁させて吸収スペクトルを測定し、極大吸収波長においてモル吸光係数を計算した。モル吸光係数の計算は、mAzaleaの場合と同様の条件で行った。また、SynergyMx(BioTek)を用いて、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に2μMとなるようにmAzalea_B5(蛍光タンパク質)を懸濁させて蛍光スペクトルを測定した。さらに、絶対PL量子収率測定装置(浜松ホトニクス)を用い、50mMのHEPES−NaOH(pH7.4)に2μMとなるようにmAzaleaを懸濁させて量子収率を測定した。なお、タンパク質を2μMとなるように懸濁することによって、540nmの吸収値が0.1になるように調整されている。結果を図15の左側に示す。
〔16.mAzalea_B5のpH感受性の分析〕
(材料および方法)
mAzaleaおよびmAzalea_B5の精製タンパク質それぞれについて、50mMのCHCOONa−CHCOOH(pH4.0およびpH5.0)、50mMのKHPO−NaOH(pH6.0)、50mMのHEPES−NaOH(pH7.0)、50mMのTricine−NaOH(pH8.0)、50mMのGlycine−NaOH(pH9.0およびpH10.0)、50mMのNaHPO−NaOH(pH11.0)、および50mMの0.2M KCl−0.2M NaOH(pH12.0)中で、SynergyMx(Biotek)を用いて蛍光強度を測定し、得られた測定値のうち最も高い数値によって標準化した。また、分光光度計(日立ハイテク)を用いて吸収スペクトルも測定した。
(結果)
図15の右側のグラフは、mAzaleaおよびmAzalea_B5に関する、様々なpH条件下における蛍光スペクトルを示す。なお、蛍光スペクトルは、mAzaleaについては励起光の波長を540nmに固定した時の598nmの値であり、mAzalea_B5については励起光の波長を540nmに固定した時の596nmの値である。
mAzalea B5の蛍光特性を解析した結果、pH7.4における主要な特性は以下の通りである。
吸収ピーク(nm):574
最大励起波長(nm):574
最大蛍光波長(nm):596(赤色)
モル吸光係数(M-1cm-1):103700
量子収率(%):58
mAzalea_B5は、pH5以上で9以下の範囲内、特にpH6〜8の範囲内で、mAzaleaより一層、蛍光強度は安定し、感受性は無い。しかし、pH5未満かpH9を超える場合は、mAzalea_B5の蛍光強度等は大きく減少する。すなわち、mAzalea_B5は、pH感受性のある蛍光タンパク質として、pHセンサ、および、pH依存性スイッチ等として利用できる。
〔17.mAzalea_B5の蛍光安定性の分析〕
HeLa細胞に、mAzalea、およびmAzalea_B5の遺伝子をLipofectamine 2000 reagent(Invitrogen)を用いてそれぞれトランスフェクションし、1日後に蛍光顕微鏡を用いて細胞を観察した。
結果を図16に示す。なお、測定条件は以下の通りである。
バッファ:10mM HEPES−NaOH(pH7.4)含有HBSS;CCDカメラ:CoolSNAP HQ;蛍光フィルターキューブ:U−MPFP HQ(オリンパス社製);対物レンズ:×40 UplanFL N;NDフィルタ:30%;ビニング:1;露出時間:25ミリ秒;照射間隔:1分。
mAzaleaおよびmAzalea_B5の蛍光安定性は同程度であることが確認された。
〔18.mAzalea_B5の局所的な発現〕
HeLa細胞を用いて、その小胞体における、mAzaleaおよびmAzalea_B5の発現を解析した。HeLa細胞は、Lipofectamine 2000 reagent(Invitrogen)を用いてそれぞれトランスフェクションし、1日後に蛍光顕微鏡を用いて細胞を観察した。トランスフェクションに用いた遺伝子コンストラクトは、カルレティキュリン−FP−KDELをこの順に連結したものであり、FPはmAzaleaまたはmAzalea_B5の遺伝子を示す。
結果を図17に示す。なお、測定条件は以下の通りである。
顕微鏡:FV1000(オリンパス社製);対物レンズ:×60 UplanApo W/IR;スキャン速度:4.0μ秒/ピクセル;C.A.:120μm;Kalman:line、×4;レーザー:543nm(30%);蛍光:560-660nm、PMT:770V
(結果)
図17に示すように、mAzalea_B5は、mAzaleaより一層優れて、HeLa細胞中の小胞体に局在的に発現する蛍光マーカーとして機能することがわかった。
本発明は上述した各実施形態および実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載した参考文献に記載の内容は全て、リファレンスとして本明細書の内容に援用される。
本発明に係る蛍光タンパク質の一例は優れた量子収率等の特性を有する。そのため、例えば、標的遺伝子の発現パターンを解析するための蛍光標識や、医薬候補化合物をスクリーニングする際の蛍光標識等として、生化学的分析分野や医療分野等で有用である。

Claims (17)

  1. 以下の(1)〜(4)の何れかに示す、蛍光特性を有するポリペプチド。
    (1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチド、
    (2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有するポリペプチド、
    (3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有するポリペプチド、
    (4)上記(1)に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズするポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチド。
  2. 蛍光の量子収率Φが0.4以上である、請求項1に記載のポリペプチド。
  3. 以下の(1)〜(4)の何れかに記載のポリヌクレオチド。
    (1)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (2)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列において1〜34個のアミノ酸が置換、欠失、挿入、および/または付加されたアミノ酸配列を有し、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (3)配列番号1または2に記載のアミノ酸配列に対して85%以上の配列同一性を有し、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、
    (4)上記(1)に記載のポリヌクレオチドと相補的な配列からなるポリヌクレオチドに対して、ストリンジェントな条件下においてハイブリダイズし、蛍光特性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
  4. (a)発現宿主内で機能的な発現制御領域;および
    (b)請求項3に記載のポリヌクレオチド;
    を含む、発現カセット。
  5. 請求項3に記載のポリヌクレオチドまたは請求項4に記載の発現カセットを含むベクター。
  6. 請求項3に記載のポリヌクレオチド、請求項4に記載の発現カセットまたは請求項5に記載のベクターを含む形質転換体。
  7. 非ヒトトランスジェニック生物である、請求項6に記載の形質転換体。
  8. 請求項1または2に記載のポリペプチドと他のポリペプチドとからなる融合ポリペプチド。
  9. 蛍光観察の方法であって、
    請求項1または2に記載のポリペプチド、あるいは請求項8に記載の融合ポリペプチドを細胞において産生させる産生工程と、当該ポリペプチドまたは融合ポリペプチドに由来する蛍光を観察する観察工程とを含む、方法。
  10. 細胞において1以上の目的遺伝子の発現および/または局在性に対する1以上の試験物質の作用を評価する方法であって、
    i)第一の目的遺伝子と融合されていてもよい請求項3に記載のポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、第一の発現制御配列の制御下におかれるように当該発現制御配列と作動可能に連結された第一の核酸分子を、細胞内に導入する導入工程、
    ii)導入工程を経た上記細胞を上記試験物質の存在下および不在下で培養する培養工程、
    iii)上記細胞における蛍光発光を検出する蛍光検出工程、および
    iv)試験物質の存在下および不在下で得られた、上記細胞における蛍光発光を比較して、上記目的遺伝子の発現および/または局在性に対する試験物質の作用を評価する評価工程、を含む、方法。
  11. 上記導入工程において、さらに、
    上記第一の核酸分子とは異なる蛍光ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む核酸分子であって、第二の発現制御配列の制御下におかれるように当該発現制御配列と作動可能に連結された第二の核酸分子を、上記細胞内に導入する、請求項10に記載の方法。
  12. 請求項3に記載のポリヌクレオチドの全体または一部を細胞中に含む形質転換体を作製する方法であって、
    請求項3に記載のポリヌクレオチド、請求項4に記載の発現カセットまたは請求項5に記載のベクターを細胞に導入する工程を含む、方法。
  13. 請求項12に記載の方法で得られた形質転換体またはその子孫。
  14. 請求項3に記載のポリヌクレオチドの全体または一部を細胞中に含む非ヒトトランスジェニック生物を作製する方法であって、
    請求項3に記載のポリヌクレオチド、請求項4に記載の発現カセットまたは請求項5に記載のベクターを、ドナー細胞から採取した受精卵に導入する工程を含む、方法。
  15. 請求項14に記載の方法で得られた非ヒトトランスジェニック生物またはその子孫。
  16. 請求項15に記載の非ヒトトランスジェニック生物またはその子孫より細胞を採取し、該細胞に初期化因子を導入して多能性幹細胞を作製する方法。
  17. 請求項1または2に記載のポリペプチド、請求項3に記載のポリヌクレオチド、請求項4に記載の発現カセット、請求項5に記載のベクター、請求項6または7に記載の形質転換体、あるいは請求項8に記載の融合ポリペプチドを含む、キット。
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