JP6051438B2 - 赤色蛍光蛋白質を用いたカルシウムセンサー蛋白質 - Google Patents

赤色蛍光蛋白質を用いたカルシウムセンサー蛋白質 Download PDF

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Description

本発明は、特定部位のアミノ酸を置換した赤色蛍光蛋白質(以下、RFP)、又はそのホモログを用いたカルシウムセンサー蛋白質に関する。より具体的には、従来の赤色蛍光カルシウムセンサー蛋白質よりも更に反応性に優れた、かつ細胞内で発現後に細胞質から核内への移行を示さない、カルシウムセンサー蛋白質、及び前記カルシウムセンサー蛋白質をコードするカルシウムセンサー遺伝子に関する。
カルシウムは生体にとって、構造の維持に必須である骨の主要な構成成分であると同時に、筋肉の収縮、神経興奮性やホルモン分泌、酵素活性の変化などの各種の細胞機能の調節因子として、生体機能の維持および調節に不可欠な役割を担っている。このため、生体内(細胞外及び細胞内)のカルシウム変動を探知し、カルシウム濃度を測定するのに用いられるカルシウムセンサーの重要性が高まっている。
カルシウムセンサーは大きく分けて4種類のものがこれまでに開発されている。以下にその概要を示す。
1)カルシウム感受性の合成色素:カルシウムに感受性のある化学合成された色素であり、現在一般によく使用されている。細胞内において使用する場合は、外部から細胞に取り込ませる必要があるが、特定の細胞のみに色素を取り込ませることは難しく、ガラス針等により細胞に該色素を注入しなければならないという問題点を有する。
2)エクオリン:カルシウムに反応して発光する蛋白質であり、細胞に直接注入するか、該蛋白質を産生する遺伝子を細胞に導入して使用する。細胞内で機能するためには細胞に補酵素を供給する必要があり、また発光が極めて微弱であるという問題点を有する。
3)蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)を応用したカルシウム感受性蛋白質:カルシウムに感受性のあるカルモジュリン(CaM)とそれに結合するミオシン軽鎖キナーゼの一部の配列、二つの色の異なるGFP又はそのホモログを結合した蛋白質であり、カルシウムがCaMに結合するとその構造が変化し、FRETを起こして二つのGFPまたはそのホモログの発する蛍光強度が変化することを利用している。該蛋白質は、細胞に直接注入するか、該蛋白質をコードする遺伝子を細胞に取り込ませて使用する。FRETにおる蛍光変化は軽微であり、さらに一般的に用いられているアルゴンレーザーを搭載したレーザー顕微鏡により測定することが出来ないという問題点がある。
4)一つのGFP又はRFPからなるカルシウム感受性蛋白質:GFP又はRFP、好ましくはmApple、の改変体にCaMとミオシン軽鎖キナーゼの一部の配列を結合したカルシウム感受性蛋白質であり、カルシウムがCaMに結合すると蛋白質の構造が変化し、GFP又はRFPの発する蛍光強度が変化することを利用している。該蛋白質も、細胞に直接注入するか、その他遺伝子を細胞に取り込ませて使用する。一般にカルシウムに対する感度が低く、実際の細胞では信号/雑音比が低いため、測定が困難であるという問題点を有する。また従来のmAppleからなるカルシウム感受性蛋白質(R-GECO1:非特許文献1)は細胞内での発現部位が細胞質と核内であるため、該蛋白質を用いた測定では同一細胞の細胞質と核において異なるタイミングで蛍光変化が生じる場合があるという問題点がある。
本発明者らは、上記4)の応用として、GFPの蛍光特性を制御することが可能なカルシウムセンサー蛋白質を作成する方法、並びに該方法により作成されるカルシウムセンサー蛋白質、および該カルシウムセンサー蛋白質をコードするカルシウムセンサー遺伝子を提供し(特許文献1)、カルシウムに対する感度が従来のカルシウムセンサーに比して高く、かつ特定細胞への取り込みが容易であり、更に測定に特別な装置及び補酵素等を必要としないカルシウムセンサー蛋白質の作成に成功している(特許文献2、特許文献3)。
しかし、近年、生体内でのカルシウムの微少な変動を感知する必要性が以前にも増して高まっており、上記特許文献1、特許文献2及び特許文献3のカルシウムセンサー蛋白質をもってしても、十分な成果が上げられない状況となっている。
また近年、光刺激で細胞機能を操作し、同時に蛍光カルシウムイメージングで細胞機能を測定するという実験の要求が高まってきた。蛍光カルシウムイメージングに応用される赤色蛍光カルシウムセンサー蛋白質は、その励起波長が細胞機能操作を目的として汎用される光刺激プローブChannelrhodopsin−2(非特許文献2)の活性化波長と重複しないため、Channelrhodopsin−2との併用が可能である。つまり赤色蛍光カルシウムセンサー蛋白質によって細胞機能操作と細胞機能測定を同時に行う実験が可能となる。そのためChannelrhodopsin−2と併用可能な赤色蛍光カルシウムセンサー蛋白質の開発が強く望まれている状況である。
特開2002−153279 特開2011−125318 特開2012−85542
Zhaoら,Science 333:1888−1891,2011 Nagelら,Proc Natl Acad Sci USA 100:13940−13945,2003 Nagaiら,Proc Natl Acad Sci USA 98:3197−3202,2001 Tianら,Nat Methods 6:875−881,2009 Maoら,PLoS One 3:e1796,2008
上記事情に鑑み、本発明は、従来の赤色蛍光カルシウムセンサーよりも、さらに、反応性に優れ、かつ細胞内で発現後に細胞質から核内への移行を示さない、カルシウムセンサー蛋白質、及び、該蛋白質をコードする遺伝子の提供を目的とする。
発明者らは、既存の赤色蛍光カルシウムセンサーであるR−GECO1よりも高い蛍光反応性を示すセンサーの開発を目的として鋭意研究を行ったところ、まず、R−GECO1よりも約1.4倍の高い蛍光反応性を示すセンター、R−CaMP1.01を完成させた。しかし、R−CaMP1.01は、R−GECO1と同様に発現後に核内にも局在するものであった。細胞質カルシウム測定を目的とした研究において、この局在パターンは好ましいものではない。その理由としては、1)細胞質と核内ではカルシウム濃度変化に時差があり(非特許文献3)、細胞質と核での蛍光シグナルを分離して検出する必要がある、2)カルシウムセンサーの分解産物が核内に局在した細胞では通常の細胞質カルシウム応答パターンに異変が見られたという報告(非特許文献4)から、核内局在による細胞機能への悪影響が考えられる、等が挙げられる。
そこで、発明者らは、カルシウムセンサーとしての性能はセンサーのN末端やC末端へのペプチド付加によって修飾を受けるとの知見に基づき(非特許文献5)、R−CaMP1.01の更なる改良を目的として、R−CaMP1.01へ種々様々なペプチドを付加した改変体を作製し、その機能を検討した。その結果、R−CaMP1.01のC末端に15アミノ酸のリンカーと22アミノ酸からなるペプチド(配列番号12)を付加した改変体(以下、R−CaMP1.07と称する)は、核内への局在を示さず、かつR−CaMP1.01よりもさらに高い蛍光反応性を示すことを見出した。
本発明は以上の知見に基づいて完成されたものである。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(10)に関する。
(1)下記(a)〜(k)のアミノ酸配列を、N末端から順に有することを特徴とするカルシウムセンサー蛋白質:
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列;
(b)3つのアミノ酸からなる配列 Met−Xaa1−Xaa2(ここでXaa1及びXaa2はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である)(リンカーA)(配列番号2);
(c)ミオシン軽鎖キナーゼ蛋白質、又はカルモジュリン結合部位を含むその部分アミノ酸配列;
(d)前記(c)の配列と後記(e)の配列とを連結する、Iso−Iso、Iso−Leu、Iso−Met、Iso−Pro、Iso−Val、Iso−Gly、Iso−Ala、Leu−Iso、Leu−Leu、Leu−Met、Leu−Pro、Leu−Val、Leu−Gly、Leu−Ala、Met−Iso、Met−Leu、Met−Met、Met−Pro、Met−Val、Met−Gly、Met−Ala、Pro−Iso、Pro−Leu、Pro−Met、Pro−Pro、Pro−Val、Pro−Gly、Pro−Ala、Val−Iso、Val−Leu、Val−Met、Val−Pro、Val−Val、Val−Gly、Val−Ala、Gly−Iso、Gly−Leu、Gly−Met、Gly−Pro、Gly−Val、Gly−Gly、Gly−Ala、Ala−Iso、Ala−Leu、Ala−Met、Ala−Pro、Ala−Val、Ala−Gly及びAla−Alaからなる群より選択される何れか一のアミノ酸配列(リンカーB);
(e)配列番号3で示される配列のX番目〜236番目までのアミノ酸配列であって、151番目及び/又は152番目及び/又は169番目及び/又は171番目及び/又は219番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したもの(ここで、Xは151〜153の任意の位置である);
(f)前記(e)の配列と後記(g)の配列を連結する、6つのアミノ酸配列からなる配列Gly−Gly−Xaa5−Gly−Gly−Xaa6(ここでXaa5及びXaa6はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である)(配列番号4);
(g)配列番号3で示される配列の1番目〜Y番目までのアミノ酸配列であって、
1番目及び/又は8番目及び/又は52番目及び/又は54番目及び/又は76番目及び/又は136番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列(ここで、Yは144〜150の任意の位置である);
(h)前記(g)の配列と後記(i)の配列とを連結するアミノ酸配列Thr−Arg、Phe−Arg、Trp−Arg、Tyr−Arg、Gly−Arg、Ala−Arg又はThr(リンカーC);
(i)配列番号9で示される配列の2番目〜148番目までのアミノ酸配列であって、63番目及び/又は77番目及び/又は101番目及び/又は111番目及び/又は127番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列;
(j)前記(i)の配列と後記(k)の配列とを連結する、15個のアミノ酸配列からなる配列Gly−Gly−Gly−Xaa7−Gly−Gly−Xaa8−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Xaa9−Xaa10(ここでXaa7、Xaa8、Xaa9及びXaa10はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である)(リンカーD)(配列番号10);
(k)Pro−Val−Lys−Gln−Thr−Leu−Asn−Phe−Asp−Leu−Leu−Lys−Leu−Ala−Gly−Asp−Val−Glu−Ser−Asn−Pro−Gly(配列番号12)、Gln−Cys−Thr−Asn−Tyr−Ala−Leu−Leu−Lys−Leu−Ala−Gly−Asp−Val−Glu−Ser−Asn−Pro−Gly(配列番号13)、Glu−Gly−Arg−Gly−Ser−Leu−Leu−Thr−Cys−Gly−Asp−Val−Glu−Glu−Asn−Pro−Gly(配列番号14)又はAla−Thr−Asn−Phe−Ser−Leu−Leu−Lys−Gln−Ala−Gly−Asp−Val−Glu−Glu−Asn−Pro−Gly(配列番号15)のいずれかのアミノ酸配列。
(2)前記(a)の配列の5番目から10番目に存在するHisの数が0〜5であり、及び/又は前記(a)の配列の2番目のArgが欠失し、及び/又は前記(e)の配列の151番目のアミノ酸がIso、Leu、Met、Pro、Val、Tyr、Phe、Trp、Thr、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(e)の配列の152番目のアミノ酸がTyr、Phe、Trp、Thr、Ser、Asp、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(e)の配列の169番目のアミノ酸がHis、Lys、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(e)の配列の171番目のアミノ酸がArg、His、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(e)の配列の219番目のアミノ酸がPhe、Trp、Thr、Ser、Cys、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(g)の配列の1番目のアミノ酸がIso、Leu、Pro、Val、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(g)の配列の8番目のアミノ酸がGln、Asp、Glu、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(g)の配列の52番目のアミノ酸がArg、His、Iso、Leu、Met、Pro、Val、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(g)の配列の54番目のアミノ酸がTyr、Phe、Trp、Ser、Iso、Leu、Met、Pro、Val、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(g)の配列の76番目のアミノ酸がIso、Leu、Met、Pro、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(g)の配列の136番目のアミノ酸がTyr、Phe、Trp、Thr、Iso、Leu、Met、Pro、Val、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(i)の配列において、配列番号9で示される配列の63番目のアミノ酸がLeu、Met、Pro、Val、Tyr、Phe、Trp、Thr、Ser、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(i)の配列において、配列番号9で示される配列の77番目のアミノ酸がArg、His、Asn、Gln、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(i)の配列において、配列番号9で示される配列の101番目のアミノ酸がTyr、Phe、Trp、Thr、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(i)の配列において、配列番号9で示される配列の111番目のアミノ酸がGln、Asp、Glu、Gly若しくはAlaに置換され、及び/又は前記(i)の配列において、配列番号9で示される配列の127番目のアミノ酸がAsp、Iso、Leu、Met、Pro、Val、Gly若しくはAlaに置換されることを特徴とする上記(1)に記載のカルシウムセンサー蛋白質。
(3)前記(e)の配列が配列番号3で示される配列の151番目〜236番目までのアミノ酸配列であり、前記(g)の配列が配列番号3で示される配列の1番目〜150番目までのアミノ酸配列であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のカルシウムセンサー蛋白質。
(4)前記(b)の配列が配列番号5若しくは配列番号6で示されるアミノ酸配列であり、及び/又は前記(c)の配列が配列番号7で示されるアミノ酸配列であり、及び/又は前記(f)の配列が配列番号8で示されるアミノ酸配列であることを特徴とする上記(1)乃至(3)のいずれかに記載のカルシウムセンサー蛋白質。
(5)前記(b)の配列が配列番号6で示されるアミノ酸配列であり、前記(d)の配列がPro−Valであり、前記(h)の配列がThr−Argであることを特徴とする上記(4)に記載のカルシウムセンサー蛋白質。
(6)前記(e)の配列がアミノ酸の置換を含まない配列番号3で示される配列の151番目〜236番目までのアミノ酸配列であり、前記(g)の配列がアミノ酸の置換を含まない配列番号3で示される配列の1番目〜150番目であり、前記(i)の配列がアミノ酸の置換を含まない配列番号9で示される配列の2番目〜148番目であることを特徴とする上記(5)に記載のカルシウムセンサー蛋白質。
(7)前記(e)の配列が配列番号3で示される配列の151番目〜236番目であって、151番目のアミノ酸がValに置換され、152番目のアミノ酸がSerに置換され、169番目のアミノ酸がGlyに置換され、171番目のアミノ酸がArgに置換され、219番目のアミノ酸がCysに置換され、前記(g)の配列が配列番号3で示される配列の1番目〜150番目までのアミノ酸配列であり、1番目のアミノ酸がLeuに置換され、8番目のアミノ酸がAspに置換され、52番目のアミノ酸がValに置換され、54番目のアミノ酸がValに置換され、76番目のアミノ酸がAlaに置換され、136番目のアミノ酸がProに置換され、前記(i)の配列が配列番号9で示される配列の63番目のアミノ酸がPheに置換され、77番目のアミノ酸がAsnに置換され、101番目のアミノ酸がGlyに置換され、111番目のアミノ酸がAspに置換され、127番目のアミノ酸がValに置換されていることを特徴とする上記(5)に記載のカルシウムセンサー蛋白質。
(8)前記(j)の配列が配列番号10で示される配列であることを特徴とする上記(1)乃至(7)のいずれかに記載のカルシウムセンサー蛋白質。
(9)前記(k)の配列が配列番号12で示される配列であることを特徴とする上記(1)乃至(8)のいずれかに記載のカルシウムセンサー蛋白質。
(10)上記(1)乃至(9)のいずれかに記載の蛋白質をコードするカルシウムセンサー遺伝子。
本発明により、従来の赤色蛍光カルシウムセンサーに比べ、更に反応性に優れ、かつ細胞内で発現後に細胞質から核内への移行を示さない、カルシウムセンサー蛋白質の提供が可能となる。
図1は、カルシウムセンサー蛋白質(R−GECO1、R−CaMP1.01又はR−CaMP1.07)のDNAをトランスフェクション法により導入し発現させたヒト子宮癌由来株化細胞(HeLa細胞)の画像図である。 図2は、ATPに対して、HeLa細胞に発現したカルシウムセンサー蛋白質(R−GECO1、R−CaMP1.01又はR−CaMP1.07)の蛍光強度が変化する様子を示すグラフ図である。 図3は、本発明のカルシウムセンサー蛋白質(R−CaMP1.07)又はその前駆体(R−CaMP1.01)又は従来のカルシウムセンサー蛋白質(R−GECO1)を発現させたHeLa細胞へのATP処理に対する蛍光強度変化量を比較したグラフ図である。 図4は、精製したカルシウムセンサー蛋白質(R−GECO1、R−CaMP1.01又はR−CaMP1.07)のカルシウム濃度と蛍光量との関係を示すグラフ図である。
本発明のカルシウムセンサー蛋白質は、下記(a)〜(k)のアミノ酸配列を、N末端から順に有することを特徴とする蛋白質である:
(a)配列番号1で示されるアミノ酸配列;
(b)3つのアミノ酸からなる配列 Met−Xaa1−Xaa2(ここでXaa1及びXaa2はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である)(リンカーA)(配列番号2);
(c)ミオシン軽鎖キナーゼ蛋白質、又はカルモジュリン結合部位を含むその部分アミノ酸配列;
(d)前記(c)の配列と後記(e)の配列とを連結する、Iso−Iso、Iso−Leu、Iso−Met、Iso−Pro、Iso−Val、Iso−Gly、Iso−Ala、Leu−Iso、Leu−Leu、Leu−Met、Leu−Pro、Leu−Val、Leu−Gly、Leu−Ala、Met−Iso、Met−Leu、Met−Met、Met−Pro、Met−Val、Met−Gly、Met−Ala、Pro−Iso、Pro−Leu、Pro−Met、Pro−Pro、Pro−Val、Pro−Gly、Pro−Ala、Val−Iso、Val−Leu、Val−Met、Val−Pro、Val−Val、Val−Gly、Val−Ala、Gly−Iso、Gly−Leu、Gly−Met、Gly−Pro、Gly−Val、Gly−Gly、Gly−Ala、Ala−Iso、Ala−Leu、Ala−Met、Ala−Pro、Ala−Val、Ala−Gly及びAla−Alaからなる群より選択される何れか一のアミノ酸配列(リンカーB);
(e)配列番号3で示される配列のX番目〜236番目までのアミノ酸配列であって、151番目及び/又は152番目及び/又は169番目及び/又は171番目及び/又は219番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したもの(ここで、Xは151〜153の任意の位置である);
(f)前記(e)の配列と後記(g)の配列を連結する、6つのアミノ酸配列からなる配列Gly−Gly−Xaa5−Gly−Gly−Xaa6(ここでXaa5及びXaa6はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である)(配列番号4);
(g)配列番号3で示される配列の1番目〜Y番目までのアミノ酸配列であって、
1番目及び/又は8番目及び/又は52番目及び/又は54番目及び/又は76番目及び/又は136番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列(ここで、Yは144〜150の任意の位置である);
(h)前記(g)の配列と後記(i)の配列とを連結するアミノ酸配列Thr−Arg、Phe−Arg、Trp−Arg、Tyr−Arg、Gly−Arg、Ala−Arg又はThr(リンカーC);
(i)配列番号9で示される配列の2番目〜148番目までのアミノ酸配列であって、63番目及び/又は77番目及び/又は101番目及び/又は111番目及び/又は127番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列;
(j)前記(i)の配列と後記(k)の配列とを連結する、15個のアミノ酸配列からなる配列Gly−Gly−Gly−Xaa7−Gly−Gly−Xaa8−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Xaa9−Xaa10(ここでXaa7、Xaa8、Xaa9及びXaa10はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である)(リンカーD)(配列番号10);
(k)Pro−Val−Lys−Gln−Thr−Leu−Asn−Phe−Asp−Leu−Leu−Lys−Leu−Ala−Gly−Asp−Val−Glu−Ser−Asn−Pro−Gly(配列番号12)、Gln−Cys−Thr−Asn−Tyr−Ala−Leu−Leu−Lys−Leu−Ala−Gly−Asp−Val−Glu−Ser−Asn−Pro−Gly(配列番号13)、Glu−Gly−Arg−Gly−Ser−Leu−Leu−Thr−Cys−Gly−Asp−Val−Glu−Glu−Asn−Pro−Gly(配列番号14)又はAla−Thr−Asn−Phe−Ser−Leu−Leu−Lys−Gln−Ala−Gly−Asp−Val−Glu−Glu−Asn−Pro−Gly(配列番号15)のいずれかのアミノ酸配列。
ここで、配列(a)(配列番号1で示されるアミノ酸配列)は、5番目から10番目がHisで構成されているが、このHisの数は、0〜6の間のいずれであってもよく、好ましくは6である。また、2番目のArgは存在していても、欠失していてもよい。
また、上記配列(e)、(g)及び(i)は、少なくとも1の配列((e)、(g)又は(i))に上述のアミノ酸置換が含まれていればよく、例えば、配列(e)の152番目と169番目のアミノ酸のみが置換され、配列(g)が配列番号3で示される配列の1番目〜Y番目までのアミノ酸配列であってアミノ酸の置換を含まず(ここで、Yは141〜148の任意の位置である)、配列(i)が配列番号9で示される配列の2番目〜148番目までのアミノ酸配列であってアミノ酸の置換を含まないものであってもよい。
上記配列(k)は、本発明のカルシウムセンサー蛋白質が核へ移行しないという性質を付与する働きをする。配列(k)は、Leu−Xaa11−Xaa12−Xaa13−Gly−Asp−Val−Glu−Xaa14−Asn−Pro−Gly(配列番号22)からなる配列をコンセンサス配列として含むものが望ましく、Xaa11はK又はL、Xaa12はL、T又はQ、Xaa13はA又はC、Xaa14はS又はEであることが好ましく、配列(k)としては、例えば、配列番号12〜15に示される配列が好ましく、配列番号12で示される配列が特に好ましい。
上記のカルシウムセンサー蛋白質は、主として、改変mApple(e及びgが該当)、(2)機能性分子(c及びiが該当)、(3)リンカー(b、d、f及びh)、(4)カルシウムセンサー蛋白質の核移行を抑制するペプチド(kが該当)から構成されている。
改変mAppleとは、蛍光特性に影響を及ぼすホットスポットアミノ酸残基の近傍でmAppleのアミノ酸配列を切断して該蛋白質の構造を改変し、さらに特定部位のアミノ酸残基を置換したものである。
本発明のmAppleは、配列番号3で示されるアミノ酸配列からなる蛋白質である。また、本発明のmAppleのホモログとは、配列番号3で示されるアミノ酸と同一又は実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質のことである。ここで、「実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質」とは、配列番号3で示されるアミノ酸配列と約60%以上、好ましくは約70%以上、より好ましくは約80%,81%,82%,83%,84%,85%,86%,87%,88%,89%,90%,91%,92%,93%,94%,95%,96%,97%,98%,最も好ましくは約99%のアミノ酸同一性を有するアミノ酸配列を含み、かつ、蛍光を発する蛋白質のことであり、例えば、DsRed、mCherry、mStrawberry、mBanana、mPlum、tdTomato等のmAppleホモログがあげられる。
あるいは、配列番号3で示されるアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を含む蛋白質としては、配列番号3で表わされるアミノ酸配列中の1又は数個(好ましくは、1〜30個程度、より好ましくは1〜10個程度、さらに好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ、蛍光を発する蛋白質のことである。
本発明において、mAppleの蛍光特性に影響を及ぼす「ホットスポットアミノ酸残基」とは、改変mAppleを作成する際に、その改変位置の指標となるmApple上のアミノ酸残基であり、該アミノ酸残基の近傍でmAppleの構造を改変することにより、所望の改変mAppleを作成することを可能とするものである。本発明において推定されるmAppleのホットスポットアミノ酸残基は、配列番号3で示されるGFPのアミノ酸配列中、第151番目のアミノ酸である。
mAppleの構造を改変するとは、好ましくは、推定されるホットスポットアミノ酸残基の近傍(好ましくは、ホットスポットアミノ酸残基の前後5アミノ酸の範囲内の各位置)でmAppleを切断し、さらに切断部位から適切な数のアミノ酸(好ましくは1−10個のアミノ酸)を除去し、必要に応じてmApple本来のN末端と本来のC末端とを適切なアミノ酸配列で連結することをいう。
特定部位のアミノ酸残基を置換した改変mAppleとは、配列番号3で示されるmAppleのアミノ酸配列上、特定部位のアミノ酸残基(好ましくは1番目及び/又は8番目及び/又は52番目及び/又は54番目及び/又は76番目及び/又は136番目及び/又は151番目及び/又は152番目及び/又は169番目及び/又は171番目及び/又は219番目のアミノ酸残基)を、いずれかのアミノ酸に置換(例えば、1番目のアミノ酸をIso、Leu、Pro、Val、Gly若しくはAla、特に好ましくはLeuに置換し、8番目のアミノ酸をGln、Asp、Glu、Gly若しくはAla、特に好ましくはAspに置換し、52番目のアミノ酸をArg、His、Iso、Leu、Met、Pro、Val、Gly若しくはAla、特に好ましくは、Valに置換し、54番目のアミノ酸をTyr、Phe、Trp、Ser、Iso、Leu、Met、Pro、Val、Gly若しくはAla、特に好ましくはValに置換し、76番目のアミノ酸をIso、Leu、Met、ProGly若しくはAla、特に好ましくはAlaに置換し、136番目のアミノ酸をTyr、Phe、Trp、Thr、Iso、Leu、Met、Pro、Val、Gly若しくはAla、特に好ましくはProに置換し、151番目のアミノ酸をIso、Leu、Met、Pro、Val、Tyr、Phe、Trp、Thr、Gly若しくはAla、特に好ましくはValに置換し、152番目のアミノ酸をTyr、Phe、Trp、Thr、Ser、Asp、Gly若しくはAla、特に好ましくはSerに置換し、169番目のアミノ酸をHis、Lys、Gly若しくはAla、特に好ましくはGlyに置換し、171番目のアミノ酸をArg、His、Gly若しくはAla、特に好ましくはArgに置換し、219番目のアミノ酸をPhe、Trp、Thr、Ser、Cys、Gly若しくはAla、特に好ましくはCysに置換)したmAppleを用いて、上記にあるように構造を改変したmAppleをいう。
改変mAppleの特に好ましい例としては、配列番号3で示される配列の151番目〜236番目までのアミノ酸配列であって、151番目のアミノ酸をValに置換し、152番目のアミノ酸をSerに置換し、169番目のアミノ酸をGlyに置換し、171番目のアミノ酸をArgに置換し、219番目のアミノ酸をCysに置換したアミノ酸配列をN末端側とし、配列番号3で示される配列の1番目〜150番目までのアミノ酸であって、1番目のアミノ酸をLeuに置換し、8番目のアミノ酸をAspに置換し、52番目のアミノ酸をValに置換し、54番目のアミノ酸をValに置換し、76番目のアミノ酸をAlaに置換し、136番目のアミノ酸をProに置換したアミノ酸をC末端側として、適切なアミノ酸配列により連結したものが挙げられる。
なお、配列番号3において、52番目と54番目のアミノ酸置換については、本発明において初めて見出されたものである。他の位置のアミノ酸置換については、Zhao et al., Science 333:1888-1891 2011(非特許文献1)を参照した。
機能性分子とは、機能性分子自身が、該分子に作用する因子の結合等の作用により、立体構造に変化を起こし得る分子であって、改変mAppleに連結することで、自身の立体構造の変化を該改変mAppleに伝え得る分子のことである。この際、該機能性分子は、自身の立体構造の変化を前記改変mAppleに伝えることにより、前記改変mAppleの立体構造を変化させ、蛍光特性を変化させるように機能する。
従って、機能性分子は、自身の立体構造の変化を改変mAppleに伝達し改変mAppleの構造に変化を及ぼし得る位置で、改変mAppleに連結されている必要がある。従って機能性分子は、本来のmApple構造を改変した部分に近接して連結されていることが好ましい。具体的には、mAppleを切断した位置にリンカー分子を介して連結されていることが好ましい。
このような機能性分子は、一分子であってもよいし、二分子以上であってもよい。二分子の場合、機能性分子に作用する因子は、まず一方の機能性分子の立体構造に変化を及ぼし、次いでその立体構造が改変mAppleの立体構造に変化を起こさせる。本発明における機能性分子としては、カルモジュリン蛋白質とミオシン軽鎖キナーゼ蛋白質との組み合わせが挙げられる。
また、改変mAppleに連結する機能性分子は、その機能性分子が生体内で発現している通りの全構造を有する必要はなく、機能性分子に作用する因子が結合する部位のみを有する一部構造であってもよい。本発明における好ましい例としては、カルモジュリン蛋白質、及び配列番号7に示すカルモジュリン結合機能を有するミオシン軽鎖キナーゼの一部を機能性分子として挙げることができる。このような機能性分子を改変mAppleに適式に連結することで、該融合蛋白質はカルシウムセンサーとして機能し得る。
ここで機能性分子として使用したラットカルモジュリン蛋白質の1番目のアミノ酸から148番目のアミノ酸配列を配列番号9に示す。この機能性分子においても、特定の部位のアミノ酸残基が置換されていることが望ましい。例えば、配列番号9で示される配列中、63番目及び/又は77番目及び/又は101番目及び/又は111番目及び/又は127番目のアミノ酸を他のアミノ酸に置換したアミノ酸配列などを好ましいアミノ酸置換の例として挙げることができる。
なお、ここで示すアミノ酸の好ましい位置については、Zhao et al., Science 333:1888-1891 2011(非特許文献1)を参照した。
リンカーとは、上記改変mAppleの切断部位、該改変mAppleと上記機能性分子間の連結部位、及び改変mAppleと機能性分子を連結してなる蛋白質とそのN末端側にあるアミノ酸配列(本発明においては配列番号1で示されるアミノ酸配列)との連結部位に位置する数残基のアミノ酸からなるペプチドである。各リンカー分子を区別するべく、以下のような名称を付している。
改変mAppleと機能性分子からなる融合蛋白質全体のN末端に存在する配列番号1で示されるアミノ酸配列(上記配列(a))とミオシン軽鎖キナーゼ蛋白質又はカルモジュリン結合部位を含むその部分アミノ酸配列とを連結するリンカーをリンカーAと称する。リンカーAは、Metを含む任意のアミノ酸配列であるが、好ましくは1〜10残基のアミノ酸ペプチドであり、より好ましくは、3つのアミノ酸からなる配列Met−Xaa1−Xaa2(ここでXaa1及びXaa2はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である;配列番号2)、さらに好ましくは、Met−Gly−Thr(配列番号5)またはMet−Val−Asp(配列番号6)である。
改変mAppleのN末端側と機能性分子を連結するリンカーはリンカーBと称し、任意のアミノ酸配列であるが、好ましくは0〜10残基のアミノ酸ペプチドであり、より好ましくは、2つのアミノ酸からなる配列Xaa3−Xaa4(ここでXaa3およびXaa4はいずれもIso、Leu、Met、Pro、Val、GlyおよびAlaからなる群から選択される何れか一のアミノ酸である)、さらに好ましくは、Pro−Valである。
改変mAppleのC末端側と機能性分子を連結するリンカーはリンカーCと称し、Thr−Arg、Phe−Arg、Trp−Arg、Tyr−Arg、Gly−Arg、Ala−Arg又はThrであり、特に好ましくはThr−Argである。
機能性分子のC末端側に連結するリンカーはリンカーDと称し、15個のアミノ酸配列からなる配列Gly−Gly−Gly−Xaa7−Gly−Gly−Xaa8−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Xaa9−Xaa10(ここでXaa7、Xaa8、Xaa9及びXaa10はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である)(配列番号10)であり、特に好ましい例としては、Gly−Gly−Gly−Thr−Gly−Gly−Ser−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Gly−Glu−Phe(配列番号11)が挙げられる。
なお、mAppleの本来のN末端とC末端とを連結するアミノ酸ペプチドもリンカーであり、好ましくは、アミノ酸2〜10残基からなるペプチドであり、Glyを多く含むものが好ましく、さらに好ましくは、6つのアミノ酸配列からなる配列Gly−Gly−Xaa5−Gly−Gly−Xaa6(ここでXaa5及びXaa6はそれぞれ独立して任意のアミノ酸である;配列番号4)であり、特に好ましい例としては、Gly−Gly−Thr−Gly−Gly−Ser(配列番号8)が挙げられる。
本発明でのカルシウムセンサー蛋白質とは、当該蛋白質に含まれる機能性分子の立体構造に影響を及ぼす因子であるカルシウムを作用させることで該機能性分子の立体構造に影響を与え、該立体構造の変化がカルシウムセンサー蛋白質に含まれる改変mAppleの立体構造に影響を与えることで、該改変mAppleの蛍光特性を可逆的に変化させる蛋白質をいう。この変化は、蛍光顕微鏡若しくはレーザー顕微鏡等で捉えることが出来る程度の変化をいい、好ましくは肉眼で捉えることが出来る程度の変化をいう。蛍光特性の変化が蛍光強度の変化である場合、蛍光の変化量ΔF/Fが、好ましくは、少なくとも0.1以上変化すること、より好ましくは1以上の範囲で変化することをいう。
本発明において蛍光特性とは、蛍光強度、蛍光波長、蛍光強度比、吸光度、吸光波長などの蛍光特性を指す。本発明では蛍光特性の一例として、蛍光強度を使用する。
本発明において、蛍光特性が蛍光強度である場合、カルシウムセンサー蛋白質は、蛍光を発する状態と蛍光を発しない状態の臨界状態にある。この臨界状態においてカルシウムセンサー蛋白質は、蛍光を発しない状態にあってもよいし、蛍光強度の低い状態にあってもよい。あるいは蛍光強度の高い状態にあってもよい。ここで、蛍光を発しないとは、光学機器を使用して蛍光を確認できないことをいう。蛍光強度が低いとは、カルシウムの存在により、上記の変化量(ΔF/Fが少なくとも0.1以上変化する量)を示して、蛍光強度が高い状態に変化し得る程度に低いことをいう。同様に、蛍光強度が高いとは、カルシウムの存在により、上記の変化量(ΔF/Fが少なくとも0.1以上変化する量)を示して、蛍光強度が低い状態に変化し得る程度に高いことをいう。
本発明におけるカルシウムセンサー蛋白質は、従来のカルシウムセンサー蛋白質に比べ、上記のように配列(a)、改変mApple及びラットカルモジュリンの特定部位のアミノ酸残基を置換し、上記のような特定のリンカーを用いることにより、カルシウム作用時に、より大きな蛍光特性の変化を引き起こすことを特徴とする。ここでより大きな蛍光特性変化とは、蛍光特性の変化が蛍光強度の変化である場合、蛍光の変化量ΔF/Fが、従来のカルシウムセンサー蛋白質よりも大きく、好ましくは、2倍以上増強されることをいう。
融合蛋白質の作成は、公知の遺伝子工学的手法を用いて行うことができる。例えば、融合したい各蛋白質部分をコードする遺伝子(即ち、特定アミノ酸部位の弛緩を伴う改変mApple及び機能性分子をコードする遺伝子)の断片をそれぞれPCRにより作成し、これら断片を繋ぎ合わせることにより融合遺伝子を作成し、次いで、該融合遺伝子を含むプラスミドを所望の細胞に導入して発現させることにより、融合蛋白質は作られる。
また、本発明においてカルシウムセンサー遺伝子は、本発明のカルシウムセンサー蛋白質をコードする遺伝子のことをいう。該カルシウムセンサー遺伝子は、上記にあるように、作成したいカルシウムセンサー蛋白質を構成する各構成部分をコードする遺伝子断片をそれぞれPCRにより作成し、次いで、これら各遺伝子断片を連結させることにより、融合遺伝子の形で作成され得る。
本発明において作成されたカルシウムセンサー蛋白質は、細胞内及び細胞外でカルシウム濃度をより安定に、かつ高感度に測定することが出来る。
例えば、本発明のカルシウムセンサー遺伝子を大腸菌などに導入して予め産生されたカルシウムセンサー蛋白質と検体とを混合することによりカルシウム濃度を測定することが可能である。また、大腸菌などを使用して産生させた蛋白質を、カルシウム濃度を測定したい細胞に直接注入することにより、細胞内のカルシウム濃度を測定することも可能である。あるいは、本発明のカルシウムセンサー遺伝子を、カルシウム濃度を測定したい細胞に導入して細胞に蛋白質を産生させることにより、細胞内のカルシウム濃度を測定することも可能である。
カルシウム濃度の測定は、ある特定の波長の光(例えば、568nmの励起光)をカルシウムセンサー蛋白質に当てることにより、該蛋白質の発する蛍光特性を光学機器(例えば、レーザー顕微鏡)で検出することにより行う。なお、濃度測定に使用するカルシウムセンサー蛋白質が、どのくらいのカルシウム濃度でどのような蛍光特性を示すのか、予め調べておくことが必要である。具体的には、例えば、大腸菌により産生したカルシウムセンサー蛋白質により、蛍光分光光度計を用いて種々のカルシウム濃度に対する蛍光強度変化を測定しておくことが必要である(例えば、図4を参照のこと)。本測定により、Kd174nM、Hill係数1.58、最大蛍光変化量28.7という結果を得た。
以下に本発明の実施例を示すが、これらの実施例はあくまでも例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。
本発明のカルシウムセンサー蛋白質であるR−CaMP1.07の特性
本発明のカルシウムセンサー蛋白質であるR−CaMP1.07、その前駆体であるR−CaMP1.01および従来のカルシウムセンサー蛋白質であるR−GECO1について、これらの蛋白質をコードする遺伝子をヒト子宮癌由来株化細胞であるHeLa細胞に導入して、カルシウムセンサーとしての性能を評価した。まず細胞内局在部位について検討した結果、R−GECO1およびR−CaMP1.01はいずれも細胞質と核内への局在を示したのに対し、R−CaMP1.07は細胞質には局在するが核内には局在しないことがわかった(図1)。
次いでR−GECO1、R−CaMP1.01およびR−CaMP1.07を発現させたHeLa細胞に、該細胞の細胞内カルシウムイオン濃度を増大させることが既知である、ATP(0.1mM)を作用させた。その時の反応例を図2に示す。従来のカルシウムセンサー蛋白質R−GECO1よりも本発明のカルシウムセンサー蛋白質であるR−CaMP1.07およびその前駆体であるR−CaMP1.01の方が、大きな蛍光強度の上昇を示すことがわかった。
本発明のカルシウムセンサー蛋白質R−CaMP1.07およびその前駆体であるR−CaMP1.01を発現させたHeLa細胞でのATPに対する蛍光強度の変化量は、従来のカルシウムセンサー蛋白質R−GECO1のそれに比して両者とも約1.7倍大きいことを確認した。(図3)。
さらに、本発明のカルシウムセンサー蛋白質R−CaMP1.07およびその前駆体R−CaMP1.01の精製蛋白質溶液、およびR−GECO1を含む細胞破砕液を用いて試験管レベルでカルシウム濃度と蛍光量との関係を検討した結果、R−CaMP1.07およびR−CaMP1.01は、R−GECO1と比較すると、カルシウムイオンの有無での蛍光強度変化量が各々約2倍および約1.4倍大きい(カルシウムイオンの有無での蛍光強度の比率を求めると、R−CaMP1.07は28.7倍でありR−CaMP1.01は20.3倍であるのに対し、R−GECO1は14.2倍である)ことを確認した(図4)。
このように本発明のカルシウムセンサー蛋白質R−CaMP1.07およびその前駆体R−CaMP1.01は、従来のカルシウムセンサー蛋白質R−GECO1に比して、より高い蛍光反応性を示すことが証明されている。またR−CaMP1.07は、R−CaMP1.01およびR−GECO1と異なり、細胞に発現させた場合に細胞質には局在するが核内には局在しないという、細胞質カルシウム濃度測定に適した局在パターンを示すことが証明されている。
カルシウムセンサー蛋白質R−CaMP1.07の製法及び測定法
(A)R−CaMP1.07の製法
(A−1)細菌発現用および哺乳動物発現用のプラスミド構築
R−CaMP1.07の細菌発現用プラスミドであるpRSET−R−CaMP1.07及び哺乳動物発現用プラスミドであるpN1−R−CaMP1.07は、非特許文献1(Science 333(6051):1888-1891,2011)に記載のR−GECO1(配列番号24)をコードするcDNA(配列番号25)を用いて後述のように構築した。
すなわち、まずR−GECO1をコードするcDNAを化学的な遺伝子合成により構築し、そのcDNAを用いてR−GECO1の細菌発現用プラスミドpRSET―R−GECO1および哺乳動物発現用プラスミドpN1―R−GECO1を構築した。次にR−GECO1の蛋白質精製を可能にするため、R−GECO1のN末端にRSETタグ(蛋白質精製用のHis6タグを含む)(配列番号23)を付加したクローンであるdRGecの細菌発現用プラスミドpRSET―dRGecを構築した。さらに蛍光変化量の大きいdRGecの変異体の開発を目指して、pRSET―dRGecをテンプレートとしたランダムPCRによりdRGecの改変mApple部分にさまざまな変異を導入した変異体を作製した。このPCR産物で大腸菌KRXを形質転換して明るく赤色蛍光を発し、かつカルシウムの有無での明るさの差が大きいdRGecの変異体クローンをスクリーニングした結果、dRGec(K52V/T54V)を発見した。このクローンをR−CaMP1.01(配列番号16(アミノ酸配列)、配列番号17(核酸配列))と命名した。次にR−CaMP1.01の細菌発現用プラスミドであるpRSET―R−CaMP1.01を用い、R−CaMP1.01の哺乳動物発現用プラスミドであるpN1―R−CaMP1.01を構築した。
次に、カルシウムセンサー蛋白質の構造は一般的に非常に繊細であり、その性能がN末端やC末端へのペプチド融合により修飾されることが知られていることから、R−CaMP1.01の改良の一環として、該センサー蛋白質へのN末端やC末端へのペプチド融合を検討した。ここではR−CaMP1.01のC末端への15アミノ酸のリンカー配列(配列番号11)およびF2A配列(配列番号12)で構成されるペプチドを融合させた実施例を述べる。15アミノ酸のリンカー配列(配列番号11)およびF2A配列(配列番号12)をC末端に付加させたR−CaMP1.01改変体をR−CaMP1.07(配列番号18(アミノ酸配列)、配列番号19(核酸配列))と命名し、その細菌発現用プラスミドpRSET―R−CaMP1.07および哺乳動物発現用プラスミドpN1―R−CaMP1.07を構築した。
より具体的には、1番目にまずR−GECO1のcDNAを化学合成(Genscript)し、これをNdeI−NotIで消化した1.26kbの断片をpRSET―G−CaMP6(特許文献3)をNdeI−NotIで消化した2.77kbの断片とライゲーションさせてR−GECO1の細菌発現用プラスミドであるpRSET―R−GECO1を構築した。またpRSET―R−GECO1をSalI−NotIで消化した1.25kbの断片をpN1―G−CaMP(特許文献1)をSalI−NotIで消化した3.96kbの断片とライゲーションさせてR−GECO1の哺乳動物発現用プラスミドであるpN1―R−GECO1を構築した。次にpN1―R−GECO1をSalI−NotIで消化した1.25kbの断片をpRSET―G−CaMP6(特開2012−85542)をSalI−NotIで消化した2.88kbの断片とライゲーションさせてR−GECO1のN末端にRSETタグ(配列番号23)を付加したクローンであるdRGecの細菌発現用プラスミドであるpRSET―dRGecを構築した。
2番目に、pRSET―dRGecをテンプレートとして以下の合成プライマー(Operon)
5’−AGCTATAGGTCGGCTGAGCTCA−3’(M13(Saca))(配列番号20)
5’−CTTCAGTCAGTTGGTCACGCGT−3’(rCaM(Mlu))(配列番号21)
を用いてPCRによるランダム変異導入を後述の方法で行った。このPCR産物をSacIとMluIで消化した0.74kbの断片をSacIとMluIで消化したpRSET―dRGecの3.39kbの断片とライゲーションさせてpRSET―dRGec(random)を構築した。pRSET―dRGec(random)で大腸菌KRXを形質転換して明るく赤色蛍光を発し、かつカルシウムの有無での明るさの差が大きいdRGecの変異体クローンをスクリーニングした結果、dRGecの改良体であるdRGec(K52V/T54V)を発見した。このクローンをR−CaMP1.01(配列番号16(アミノ酸配列)、配列番号17(核酸配列))と命名した。R−CaMP1.01の細菌発現用プラスミドであるpRSET―R−CaMP1.01をSalIとNotIで消化した1.25kbの断片をpN1―G−CaMP6(特許文献3)をSalIとNotIで消化した4.06kbの断片とライゲーションさせてR−CaMP1.01の哺乳動物発現用プラスミドであるpN1−R−CaMP1.01を構築した。
3番目に、カルモジュリンのC末端部分(129〜148番目のアミノ酸を含む)、15アミノ酸のリンカー配列(配列番号11)およびF2A配列(配列番号12)を含むcDNAを化学合成(Genscript)し、これをClaI−NotIで消化した0.17kbの断片をpRSET―R−CaMP1.01をClaI−NotIで消化した4.07kbの断片とライゲーションさせて15アミノ酸のリンカー配列およびF2A配列をC末端に付加させたR−CaMP1.01改変体であるR−CaMP1.07の細菌発現用プラスミドであるpRSET―R−CaMP1.07を構築した。pRSET―R−CaMP1.07をSalIとNotIで消化した1.36kbの断片をpN1―G−CaMP6(特許文献3)をSalIとNotIで消化した4.06kbの断片とライゲーションさせてR−CaMP1.07の哺乳動物発現用プラスミドであるpN1−R−CaMP1.07を構築した。
PCRによるランダム変異導入は以下のように行った。すなわち詳細には、まずテンプレートのプラスミドを1μg、10xバッファーを5μl、2.5mMのdNTPを1μl、10μMのフォワードプライマー(配列番号20)を1μl、10μMのリバースプライマー(配列番号21)を1μl、5mMのMnCl2を1.5μl、Taq DNA polymerase(Takara)を1μl、水を加えて全量を47μlとした混合液を4つ用意した。4つの混合液にはさらに各々1)10mMのdTTPを1μl、10mMのdGTPを1μl、10mMのdCTPを1μl、または2)10mMのdATPを1μl、10mMのdGTPを1μl、10mMのdCTPを1μl、または3)10mMのdATPを1μl、10mMのdTTPを1μl、10mMのdCTPを1μl、または4)10mMのdATPを1μl、10mMのdTTPを1μl、10mMのdGTPを1μl、を加えて各々全量を50μlとし、下記の条件に付した。
ステップ1
摂氏94度 2分
ステップ2
摂氏94度 30秒
摂氏55度 30秒
摂氏68度 30秒
上記を38サイクル
ステップ3
摂氏68度 1分
上記の4つの混合液から各々2.5μlずつを取って混合した10μlを下記の方法でアガロース電気泳動に付し、PCR産物の確認を行った。
制限酵素によるDNAの切断はNEB社、Toyobo社、またはTakara社の制限酵素、およびその添付バッファーと添付Bovine Serum Albumin(100xBSA)を用いて行った。反応は、1〜2μgのDNAに添付バッファー(3μl)、添付100xBSA(0.3μl)および各制限酵素(10ユニット)を加えて全量を30μlとした中で、摂氏37度で1〜3時間行った。
アガロースゲル(Agarose LE、ナカライテスク)は、TAEバッファー(4.98g/l Tris base(ナカライテスク)、1.142ml/l氷酢酸(ナカライテスク)、1mM EDTA(pH8)(Dojindo))にて加熱溶解し、1%または2%となるように調製した。λHindIIIdigest(Toyobo)または100bp DNA Ladder(Toyobo)をDNAサイズマーカーとして、DNA試料は制限酵素に添付されている10xサンプルバッファーを1/10量と、DMSO(Sigma)にて100倍希釈したSYBR Green I(Invitrogen)を1/10量加えたものを、TAEバッファーを用いて100Vにて電気泳動を行い、Safe Imager(Invitrogen)を用いて検出した。
ゲルからのDNAの回収にはMagExtractor(Toyobo)を用い、操作はそのマニュアルに従って行った。詳細には、まずアガロースゲル電気泳動後Safe Imager上で目的のバンドをなるべく小さくなるようにメスで切り出し、吸着液を400μl加えて室温に放置してゲルを完全に溶解させた。次に磁性ビーズを30μl加えて時々撹拌しながら室温に2分放置した。DNAを吸着した磁性ビーズはマグネットスタンドを用いて吸着し、上清は捨てた。回収した磁気ビーズに洗浄液を600μl加えてボルテックスミキサーで10秒撹拌し、マグネットスタンドを用いてDNAを吸着した磁性ビーズを同様の手法で回収した。これに75%エタノールを1ml加えてボルテックスミキサーで10秒撹拌し、DNAを吸着した磁性ビーズはマグネットスタンドを用いて回収した。これをスピンダウンして完全に上清を捨て、55度で2分間乾燥させた後、水又はTEを25〜100μl加えて時々撹拌しながら、室温で2分間放置した。DNAを解離させた後の磁性ビーズはマグネットスタンドを用いて分離し、DNAを含む上清を回収した。
Ligation反応にはDNA Ligation Kit Ver.2(Takara)を用い、操作はそのマニュアルに従って行った。詳細には、約25fmolのプラスミドベクターおよび約25〜250fmolのインサートDNAの混合溶液に等量のLigation Mixを添加して混和した後、摂氏16度で30分間反応させた。
形質転換はE.coliコンピテントセルDH5α(Takara)、またはKRX(Takara)を用いて行った。詳細には、100μlのコンピテントセルを氷上にて溶解し、DNA溶液1μlまたはLigation反応液1μlを加えて氷上で30分間放置した後、摂氏42度で45秒間加熱した。その後さらに氷上で5分間放置し、LB培地500μlを加えて摂氏37度で1時間培養後、100μg/mlのアンピシリンまたは50μg/mlのカナマイシン(Wako Chemicals)を含む選択培地(LB培地)に植えて、摂氏37度にて一晩培養した。翌日、コロニーを100μg/mlのアンピシリンまたは50μg/mlのカナマイシンを含む1〜5mlの液体培地(LB培地)に植えつぎ、摂氏37度にて16時間培養した。
大腸菌からのプラスミドの回収にはMiniprep Kit(Qiagen)を用い、操作はそのマニュアルに従って行った。詳細には、まず5mlの大腸菌培養液を約2,000xg、10分の遠心に付し、上清をデカンテーションまたはピペッティングで除去して大腸菌の沈殿を得た。この沈殿に氷冷したRNase入りP1バッファーを250μl加えてサスペンドし、P2バッファーを250μl加えて室温に5分放置してアルカリSDSにより菌体を破砕した。その後N3バッファーを350μl加えて中性化した。その菌体破砕液をspin columnに移し、約13,200xg、30秒〜1分の遠心に付してプラスミドをカラムに吸着させた。カラム素通り液はデカンテーションにて除去した。次にカラムにPEバッファーを750μl加えて約13,200xg、30秒〜1分の遠心に付してカラムを洗浄した。カラム素通り液はデカンテーションにて除去した。さらにバッファーを加えずにもう一度約13,200xg、30秒〜1分の遠心に付してカラムに残った液滴を完全に除去した。カラムを新しい回収用マイクロチューブにとりつけ、カラムにEBバッファーを50μl加えて約13,200xg、30秒〜1分の遠心に付してカラムからプラスミドを溶出し回収した。
LB液体培地
10g/l Bacto−tryptone(ナカライテスク)、5g/l Bacto−yeast extract(ナカライテスク)、5g/l NaCl(ナカライテスク)、1g/l glucose(Wako Chemicals)。オートクレーブにて滅菌して調製。
LB寒天培地
10g/l Bacto−tryptone(ナカライテスク)、5g/l Bacto−yeast extract(ナカライテスク)、5g/l NaCl(ナカライテスク)、1g/l glucose(Wako Chemicals)、15g/l Agar(ナカライテスク)。オートクレーブにて滅菌後、温度が45度程度まで下がったところで抗生物質(100μg/mlのアンピシリンまたは50μg/mlのカナマイシン(Wako Chemicals))を加え、プラスチックディシュに流し込んで調製。
TE(pH8)(10mM Tris−HCl, 1mM EDTA)(Wako Chemicals)
(A−2)蛋白質の精製
R−CaMP1.07およびR−CaMP1.01の蛋白質精製にはこれらの蛋白質がHisタグを持っていることを利用して、Hisタグに特異的に結合するNi−NTA agarose(Qiagen)を用い、操作はそのマニュアルに従って行った。詳細には、pRSET−R−CaMP1.07をE.coliコンピテントセルKRXに形質転換し、100μg/mlのアンピシリンを含むLB選択培地に植え、摂氏37度で一晩培養した。コロニーを100μg/mlのアンピシリンを含む10mlの液体培地(LB培地)に植えつぎ、摂氏37度にて16時間培養した。培養液10mlをさらに100μg/mlのアンピシリンを含む200mlの液体培地(LB培地)に植えつぎ、吸光度OD600で0.5〜1となるまで摂氏37度で培養した後、最終濃度が1%になるようにラムノース(プロメガ)を加えて、摂氏18〜22.5度で4〜5時間さらに培養した。
3,000回転15分遠心して(6200遠心機、Kubota)、大腸菌を回収した。1mlのLB培地で大腸菌を懸濁した。摂氏−20度で30分凍らせたのち、室温で30分解凍した。もう1度凍結、解凍を繰り返した。氷上で冷やした40mlのsuspension buffer(25mM Tris−HCl(pH8)(Sigma)、1mM 2−メルカプトエタノール(ナカライテスク)、蛋白分解酵素阻害剤(0.1mM PMSF、5μg/ml ロイペプチン(Wako Chemicals))を加え、よく混ぜて大腸菌を懸濁した。摂氏4度にて100,000xgで15分間遠心し、上清を得た。5M NaClを最終濃度が0.3Mとなるように加え、2mlの50% Ni−NTA agarose(Qiagen;蛋白質結合能5〜10mg/mlレジン)をさらに加えて1時間室温でおだやかに混ぜて反応させた。反応液を空のカラム(エコノカラム;カラムサイズ 〜20ml(Bio−Rad))に移し、余分の液がカラムから滴下してなくなるのを待った。10mlの洗浄液(50mM NaHPO(pH8)(ナカライテスク)、0.3M NaCl、20mM imidazole(ナカライテスク))で2回洗浄した後、3〜4mlの回収液(50mM NaHPO(pH8)(ナカライテスク)、0.3M NaCl、250mM imidazole(ナカライテスク))にて溶出し、Hisタグ付きの蛋白質をカラムから回収した。次に、回収した液を透析チューブ(Sankoujunyaku)に入れて125mlまたはそれ以上のKMバッファー(0.1M KCl(ナカライテスク)、20mM MOPS−Tris(pH7.5)(Dojindo))で摂氏4度にて透析した。KMバッファーは4〜5時間ごとに交換し、液交換を3回以上行った後、透析チューブから蛋白質の溶液を回収した。
蛋白質の濃度測定にはプロテインアッセイキット(Bio−Rad)を用い、操作はそのマニュアルに従ってBradford法(Bradford, M. M. Anal. Biochem. 1976, 72, 248―254.)で測定した。まず、10〜200μg/mlとなるように水で希釈した蛋白質の溶液50μlにBradford試薬を1ml加えて30分後に595nmの吸光度を測定した。蛋白質の基準濃度は牛血清アルブミンを基準蛋白質として用いて測定して求めた。測定は室温にて行った。
(B)R−CaMP1.07を用いた測定法
(B−1)カルシウム結合能の測定
R−CaMP1.07蛋白質のカルシウム結合能はさまざまなカルシウム濃度溶液中における蛍光強度を測定して得られたカルシウム濃度―蛍光強度の容量反応曲線に基づいて算出した。既述のように精製したR−CaMP1.07蛋白質はKMバッファーで最終濃度が0.3μMとなるように希釈した。蛍光強度測定には、蛍光分光光度計F−2500(Hitachi)を用い560nmで励起し585nmで蛍光を記録した。まず測定標品に20mM BAPTA((Dojindo))を添加してカルシウム非存在下における測定を行った後、逐次CaClをさまざまな濃度になるように添加して測定した。測定は室温にて行った。
(B−2)HeLa細胞の培養とプラスミドの導入
炭酸ガス培養器を用いて、培地(DMEM(Gibco)、10% Fetal Bovine Serum(Gibco)、1xペニシリン・ストレプトマイシン(Gibco))にてHeLa細胞を摂氏37度で培養し、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いて培養細胞にpN1−R−CaMP1.07のプラスミドを導入した。導入操作は試薬のマニュアルに従って行った。まず、血清を含まないDMEM50μlでプラスミド0.8μgを希釈した。次に2μlのLipofectamine 2000を血清を含まないDMEM50μlに加え室温で5分放置した。その後両希釈液を混合して室温で20分放置した。この混合液の全量を24穴培養シャーレ中のHeLa細胞に投与してプラスミドを導入した。プラスミドを導入した後細胞は摂氏37度で1〜3日培養した。
(B−3)HeLa細胞での蛍光測定
蛍光測定にはコンピューターにて制御(アクアコスモス(浜松ホトニクス))されたCCDカメラ(ORCA−ER、浜松ホトニクス)を搭載した倒立蛍光顕微鏡(IX70(オリンパス)、WIYフィルターセット(オリンパス)、対物レンズ20x(オリンパス))を用いた。プラスミドを導入した細胞を顕微鏡にセットし、HBSバッファー(107mM NaCl、6mM KCl、1.2mM MgSO(ナカライテスク)、2mM CaCl、1.2mM KHPO(ナカライテスク)、11.5mM glucose、20mM HEPES(Dojindo)(pH7.4))を細胞外液として還流し、100μM ATP(Sigma)を細胞外に投与して細胞を刺激し、その際に起こる細胞内カルシウム濃度変化を蛍光強度変化として検出した。測定は室温にて行った。
本発明は、筋肉の収縮、神経興奮性やホルモン分泌、酵素活性の変化などの各種の細胞機能の調節因子として、生体機能の維持および調節に不可欠な役割を担っているカルシウム濃度の生体内での変動を、従来のものに比べ極めて高感度で測定するカルシウムセンサー蛋白質を提供するもので、その利用価値は高く、生体機序の解明や医学・創薬といった分野に大きく貢献するものである。

Claims (2)

  1. 下記(a)〜(k)のアミノ酸配列を、N末端から順に有することを特徴とするカルシウムセンサー蛋白質:
    (a)配列番号1の2番目のArgが欠失したアミノ酸配列;
    (b)配列番号6で示されるアミノ酸配列(リンカーA);
    (c)配列番号7で示されるアミノ酸配列;
    (d)前述の(c)の配列と後述の(e)の配列とを連結するPro−Valのアミノ酸配列(リンカーB);
    (e)配列番号3で示される配列の151番目〜236番目であって、151番目のアミノ酸がValに置換され、152番目のアミノ酸がSerに置換され、169番目のアミノ酸がGlyに置換され、171番目のアミノ酸がArgに置換され、219番目のアミノ酸がCysに置換されているアミノ酸配列;
    (f)配列番号8で示されるアミノ酸配列;
    (g)配列番号3で示される配列の1番目〜150番目までのアミノ酸配列であり、1番目のアミノ酸がLeuに置換され、8番目のアミノ酸がAspに置換され、52番目のアミノ酸がValに置換され、54番目のアミノ酸がValに置換され、76番目のアミノ酸がAlaに置換され、136番目のアミノ酸がProに置換されているアミノ酸配列;
    (h)前述の(g)の配列と後述の(i)の配列とを連結するThr−Argのアミノ酸配列(リンカーC);
    (i)配列番号9で示される配列の2番目〜148番目までのアミノ酸配列;
    (j)配列番号11で示されるアミノ酸配列(リンカーD);
    (k)配列番号12で示されるアミノ酸配列;
  2. 前記請求項1に記載の蛋白質をコードするカルシウムセンサー遺伝子。
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