JPWO2014208653A1 - 偏光素子、及び偏光素子の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
従来、これらの偏光板(偏光素子)には、ヨウ素や二色性を有する有機色素をポリビニルアルコール等の高分子材料に溶解または吸着させ、その膜を一方向にフィルム状に延伸して二色性色素を配向させることにより得られる偏光層が広く使用されてきた。しかしながら、このようにして製造される従来の偏光層では、用いる色素や高分子材料によっては耐熱性や耐光性が十分でない、液晶装置製造時における偏光層の貼り合せの歩留まりが悪い等の問題があった。また、素子構造の簡略化により輝度向上をさせるためセル内に偏光層を形成する試みがなされている。
ところで、異方性色素膜に機械的強度を付与したり、異方性色素膜から他の層、例えば液晶層等への不純物の溶出を防止したりする等のために、異方性色素膜表面に樹脂組成物層を有する必要がある。また、樹脂組成物層は、異方性色素膜形成後の製造プロセスで用いられる溶剤や水から異方性色素膜を保護する役割も担っている。
また、基板面に連続塗布で形成された異方性色素膜上に、樹脂組成物層を塗布等で設け、例えば、エッチングにより不要部分を除去する方法でパターンを形成する方法であっても、異方性色素膜の側面が外部へ曝露されるため、異方性色素膜形成後の製造プロセスで用いられる溶剤や水により異方性色素膜がサイドエッチングされたり、剥離したりする問題が生じる。
[1]基板、異方性色素膜及び樹脂組成物層を含む偏光素子であって、
基板上に異方性色素膜、樹脂組成物層の順で積層され、
異方性色素膜の上面及び全側面が、樹脂組成物層により覆われ、
且つ、基板上に異方性色素膜及び樹脂組成物層が形成されていない部分を有することを特徴とする偏光素子。
[2]前記樹脂組成物層が、光学異方性を有さないものである、[1]に記載の偏光素子。
[3]前記樹脂組成物層の厚さ500nmの時の550nmの光線透過率が80%以上である、[1]又は[2]に記載の偏光素子。
[4]基板、異方性色素膜及び樹脂組成物層を含む偏光素子の製造方法であって、
以下の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする偏光素子の製造方法。
(1)基板面に異方性色素膜を形成する工程
(2)前記異方性色素膜の一部を除去し、複数の分離された異方性色素膜を形成する工程
(3)異方性色素膜上に樹脂組成物層を形成する工程
(4)樹脂組成物層を形成後、パターン及びパターン輪郭部分以外の不要部分を除去する工程
[5]前記(3)工程の樹脂組成物層を形成する工程が、前記基板面上に樹脂組成物を連続塗布で行なうものである、[4]に記載の偏光素子の製造方法。
[6]前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物である、[4]又は[5]に記載の偏光素子の製造方法。
[7]前記(4)の不要部分を除去する工程が、フォトリソグラフィー法で行われるものである、[4]〜[6]の何れかに記載の偏光素子の製造方法。
また、本発明の偏光素子の製造方法は、異方性色素膜形成後の製造プロセスで用いる溶媒等の影響が受け難くなる事ができるため、液晶ディスプレイ、有機発光ダイオード等の偏光素子の製造方法として有用であり、特に異方性色素膜形成後に、配向膜形成用の溶媒(n―メチルピロリドン)や洗浄溶媒である水を用いるプロセスを有するIn-Cell型偏光子の製造に特に有用である。
(偏光素子)
本発明の偏光素子は、基板、異方性色素膜及び樹脂組成物層を含む偏光素子であって、基板上に異方性色素膜、樹脂組成物層の順で積層される。すなわち、基板面に連続塗布により得られた異方性色素膜及び異方性色素膜上に設けられた樹脂組成物層を含むものである。偏光素子は異方性色素膜及び樹脂組成物層だけに限られず、偏光性能を向上させる、機械的強度を向上させる等の目的で他の層を有していてもよい。例えば、基板及び異方性色素膜の間、異方性色素膜及び樹脂組成物層の間等に他の層を有していてもよい。
また、本発明におけるパターンとは、基板上に形成された異方性色素膜の形状パターンを表し、パターン輪郭部分とは、異方性色素膜のパターンの外形を形作っている線を含む帯を指す。
異方性色素膜の上面及び全側面が、樹脂組成物層により覆われることで、サイドエッチングの問題を解決することができ、信頼性の高い偏光素子を提供することが可能となる。また、基板上に異方性色素膜及び樹脂組成物層が形成されていない部分を有することで、パネル組み立ての際の基板貼り合せ及び電極配線が容易になり、偏光素子の製造歩留りが向上する。また、基板貼り合せ部分及び配線部分の剥離強度等が向上し、偏光素子及びパネルの信頼性が向上する。
上記異方性色素膜及び樹脂組成物層が存在しない部分の偏光素子における存在比率は特段限定されず、所望の偏光素子及びパネルの大きさ、基板を貼り合せるシール材の大きさ及び粘着強度、電極配線及び電極配線取り出しのテープ幅等に応じて適宜調整することができる。
独立したとは、複数の異方性色素膜同士が連続していないこと、すなわちそれぞれの異方性色素膜間に、異方性色素膜及び樹脂組成物層が存在しない部分が存在することを意味する。
複数の異方性色素膜は、すべて同じ形状であってもよく、異なる形状が含まれていてもよいが、製造上の観点からすべて同じ形状であることが好ましい。また、その形状もどのような形状であってもよいが、製造上の観点から矩形であることが好ましい。なお、複数とは2以上であればよく、使用する基板の大きさや所望の偏光素子の大きさ等によって適宜調整すればよい。
なお、本発明の偏光素子を製造する方法は特に限定されず、例えば以下に説明する製造方法等で得ることができるが、この方法に限定されない。
本発明における基板としては、特に限定されるものではないが、良好な表面性状、接触角特性と吸水特性を有する基板であることが好ましい。そのような基板を形成する基材としては、例えば、ガラス等の無機材料;トリアセテート系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート系樹脂、トリアセチルセルロース系樹脂、ノルボルネン系樹脂、環状ポレオレフィン系樹脂及びウレタン系樹脂等の高分子材料;等を挙げることができる。これらは1種を単独で、または2種以上を併用してもよい。特に基板は高分子材料を含有する高分子基材を含む基板であることが好ましい。
なお、本実施の形態における「吸水率」とは、ASTM D570の試験方法を用い、23℃の水に4時間浸漬させたときの重量変化率を測定した値である。
また、基板の形状としては、一定寸法のフィルム状(枚葉状)であってもよいし、連続フィルム状(帯状)であってもよい。また、基板の膜厚としては、通常、0.01mm〜3mm、好ましくは0.02mm〜2mmである。
本発明における異方性色素膜とは、膜の厚み方向及び任意の直交する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる任意の2方向における電磁気学的性質に、異方性を有する光学膜である。電磁気学的性質としては、吸収、屈折などの光学的性質、抵抗、容量などの電気的性質などが挙げられる。
本発明における色素としては、二色性色素が用いられる。また、色素は、配向制御のため液晶相を有する色素であることが好ましい。ここで、液晶相を有する色素とは、溶剤中でリオトロピック液晶性を示す色素を意味する。
本発明で用いられる色素としては、塗布により異方性色素膜を形成することができるため、水や有機溶媒に可溶であることが好ましく、特に水溶性であることが好ましい。さらに好ましいものは、「有機概念図−基礎と応用」(甲田善生著、三共出版、1984年)で定義される無機性値が有機性値よりも小さな化合物である。又、塩型をとらない遊離の状態で、その分子量が200以上であるのが好ましく、300以上であるのが特に好ましく、又、1500以下であるのが好ましく、1200以下であるのが特に好ましい。尚、水溶性とは、室温で化合物が水に、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以上溶解することをいう。
本発明に用いられる色素は特に限定されず、公知の色素を用いることができる。
2)塩型で得られた色素の水溶液に、所望の対イオンを有する大過剰の中性塩(例えば、塩化リチウム)を添加し、塩析ケーキの形で塩交換を行う方法。
3)塩型で得られた色素の水溶液を、強酸性陽イオン交換樹脂で処理し、色素を遊離酸の形で酸析せしめた後、所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で色素酸性基を中和し塩交換する方法。
4)予め所望の対イオンを有するアルカリ溶液(例えば水酸化リチウム水溶液)で処理した強酸性陽イオン交換樹脂に、塩型で得られた色素の水溶液を作用させ、塩交換を行う方法。
上記の塩型の例としては、Na、Li、K等のアルカリ金属の塩、アルキル基もしくはヒドロキシアルキル基で置換されていてもよいアンモニウムの塩、または有機アミンの塩が挙げられる。有機アミンの例として、炭素数1〜6の低級アルキルアミン、ヒドロキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン、カルボキシ置換された炭素数1〜6の低級アルキルアミン等が挙げられる。これらの塩型の場合、その種類は1種類に限られず複数種混在していてもよい。
また、本発明において、色素は単独で使用することができるが、これらの2種以上を併用してもよく、また、配向を低下させない程度に上記例示色素以外の色素を配合して用いることもできる。これにより各種の色相を有する異方性色素膜を製造することができる。
本発明における樹脂組成物層としては、本発明の効果を損なわない範囲であれば特に限定されないが、光学異方性を有さないものが、異方性色素膜の性能を阻害しないため好ましい。
本発明における光学異方性とは、樹脂組成物層の厚み方向及び任意の直行する面内2方向の立体座標系における合計3方向から選ばれる任意の2方向における電磁気学的性質に異方性を有することである。
本発明における樹脂組成物層に用いる樹脂組成物は、モノマー、樹脂、界面活性剤、重合開始剤、密着向上剤及び溶剤等を含んでいてもよい。
光重合性モノマーとしては、分子内にエチレン性不飽和基を少なくとも1個有する化合物(以下、「エチレン性単量体」と称することがある)を挙げることができる。具体的には、例えば(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、アクリロニトリル、スチレン及びエチレン性不飽和結合を1個有するカルボン酸と多価又は1価アルコールのモノエステル、1分子中にエチレン性不飽和基を二個以上有する多官能エチレン性単量体等が挙げられる。
樹脂の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が、通常、1,000以上、好ましくは1,500以上であり、通常、20,000以下、好ましくは15,000以下である。重量平均分子量が小さ過ぎないことで感度や塗膜強度が維持・向上する傾向があり、大き過ぎないことで再溶解性や異物等の発生等の問題を抑制する傾向にある。
側鎖にエチレン性二重結合を有する樹脂としては、カルボキシル基を有するエポキシ(メタ)アクリレート樹脂が、機械強度、耐水性及び耐溶剤性の点から特に望ましい。
光重合開始剤としては、例えば、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号各公報に記載のチタノセン化合物を含むメタロセン化合物;特開2000−56118号公報に記載のヘキサアリールビイミダゾール誘導体;特開平10−39503号公報記載のハロメチル化オキサジアゾール誘導体;ハロメチル−s−トリアジン誘導体;N−フェニルグリシン等のN−アリール−α−アミノ酸類;N−アリール−α−アミノ酸塩類、N−アリール−α−アミノ酸エステル類等のラジカル活性剤;α−アミノアルキルフェノン誘導体;特開2000−80068号公報、特開2006−36750号公報等に記載されているオキシムエステル誘導体;等が挙げられる。
通常、ウレタン樹脂はポリオールとイソシアネートの反応により作製され、ポリオールとしては、ポリカーボネートポリオール類、ポリエステルポリオール類、ポリエーテルポリオール類、ポリオレフィンポリオール類、アクリルポリオール類等が挙げられる。
イソシアネートとしては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、メチレンジフェニルジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、α,α,α',α'−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等の芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネート;等が例示される。
これらは単独で用いても、複数種併用してもよい。
酸無水物類:無水ピロメリット酸等の芳香族酸無水物類;無水テトラヒドロフタル酸、無水メチルテトラヒドロフタル酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水メチルヘキサヒドロフタル酸、無水メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリアルキルテトラヒドロフタル酸等の環状脂肪族酸無水物類。
これらの硬化剤は、1種を単独で使用してもよいが、2種以上を併用して使用することも可能である。
エポキシ樹脂を用いる際は、酸無水物類がエポキシと容易に縮合しやすく、耐水性、耐溶剤性の点でも好ましい。また、酸無水物類とイミダゾール類を併用するのが、縮合が進みやすく、耐水性、耐溶剤性の点からも好ましい。
界面活性剤としては、例えば、アニオン系、カチオン系、非イオン系、両性界面活性剤等各種のものを用いることができる。中でも、諸特性に悪影響を及ぼす可能性が低い点で、非イオン系界面活性剤を用いるのが好ましく、中でもフッ素系やシリコン系の界面活性剤が塗布性の面で効果的である。
フッ素系界面活性剤としては、ペルフルオロアルキルスルホン酸、ペルフルオロアルキルカルボン酸、フッ素テロマーアルコール等が、シリコン系界面活性剤としては、種々の直鎖及び分岐鎖を持つポリエーテル変性シリコン等が挙げられる。
シランカップリング剤の種類としては、エポキシ系、(メタ)アクリル系、アミノ系等種々のものが1種を単独で、或いは2種以上を混合して使用できる。
(1)基板面に異方性色素膜を形成する工程
(2)前記異方性色素膜の一部を除去し、複数の分離された異方性色素膜を形成する工程
(3)異方性色素膜上に樹脂組成物層を形成する工程
(4)樹脂組成物層を形成後、パターン及びパターン輪郭部分以外の不要部分を除去する工程
本発明の製造方法は、(1)工程として、基板面に異方性色素膜を形成する工程を有することを特徴とする。異方性色素膜を形成する方法としては、色素を含む異方性色素膜形成用組成物を連続塗布することが好ましい。連続塗布とは、1つのパターンごとの間欠塗布ではなく、複数のパターン及び/又は輪郭部分を連続で塗布することを指す。基板上に複数のパターンを設ける場合は、設けるパターンを1回で連続塗布する、複数のパターンごとに分けて塗布する等、基板の大きさや塗布装置に合わせて適宜調整する事ができる。
なお本工程で用いる色素は、上記偏光素子の構成で述べた色素を用いることができる。
溶媒としては、水、水混和性のある有機溶剤、或いはこれらの混合物が適している。有機溶剤の具体例としては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、グリセリン等のアルコール類;エチレングリコール、ジエチレングリコール等のグリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のセロソルブ類;等の単独又は2種以上の混合溶剤が挙げられる。
異方性色素膜形成用組成物中の色素の濃度としては、成膜条件にもよるが、好ましくは0.01重量%以上、更に好ましくは0.1重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、更に好ましくは30重量%以下である。色素濃度が低過ぎないことで、得られる異方性色素膜において十分な二色比等の異方性を得ることができる。また、高過ぎないことで、粘度が高くなり過ぎず、均一な薄膜塗布が可能となり、異方性色素膜形成用組成物中で色素が析出することを抑制できる傾向にある。
異方性色素膜形成用組成物には、さらに必要に応じて、界面活性剤、レベリング剤、カップリング剤及びpH調整剤等の添加剤を配合することができる。添加剤により、濡れ性、塗布性等を向上させ得る場合がある。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性及びノニオン性のいずれも使用可能である。その添加濃度は、特に限定されるものではないが、添加した効果を得るために十分であって、かつ分子の配向を阻害しない量として、異方性色素膜形成用組成物中の濃度として通常、0.05重量%以上、0.5重量%以下が好ましい。
また、異方性色素膜形成用組成物中での色素の造塩や凝集等の不安定性を抑制する等の目的のために、公知の酸/アルカリ等のpH調整剤等を、異方性色素膜形成用組成物の構成成分の混合の前後或いは混合中のいずれかで添加してもよい。なお、上記以外の添加剤として"Additive for Coating", Edited by J.Bieleman,Willey−VCH(2000)記載の公知の添加剤を用いることもできる。
本発明は、(2)工程として、上述した異方性色素膜を形成した後、異方性色素膜の一部を除去し、複数の分離された異方性色素膜を形成する工程を有する。より具体的には、異方性色素膜のパターン輪郭部分を基板から除去する工程を有する。パターン輪郭部分を除去した後、後述する樹脂組成物層を塗布等により形成することで、除去した部分に樹脂組成物が塗布され、異方性色素膜の側面も樹脂組成物で覆われた状態になる。これにより異方性色素膜のサイドエッチングや剥離が生じず、偏光素子の性能及び信頼性を維持することができる。また、異方性色素膜形成後の製造プロセスで用いる溶媒等の影響が受け難くなり、製造プロセスの自由度が高くなる。
異方性色素膜のパターン輪郭部分を基板から除去する方法は特に限定されず、パターンの大きさ、製造プロセス等に応じて適宜選択すればよい。また、除去するタイミングも特に限定されず、除去する方法に合わせて、異方性色素膜形成用組成物を塗布し、乾燥する前でもよく、乾燥した後でもよい。
除去する方法としては、具体的に、ワイピング部材と溶剤を用いた拭き取り法、研磨テープやブレード等による掻き取り法、溶剤吐出ノズルと吸引ノズルとを組み合わせたノズル法、及びレーザー照射で焼き飛ばすレーザー法等が挙げられる。この中でも、拭き取り法は除去した異方性色素膜がパーティクル欠陥となり難いため好ましく、またノズル法やレーザー法は、基板に対して非接触であり、他の層等への影響が少なくなるため好ましい。
上述したようにして得られた異方性色素膜には、不溶化処理を行う工程を設けてもよい。 不溶化処理を行う工程は、(1)工程の後でも、(2)工程の後でもどちらでもよい。
不溶化とは、膜中の化合物の溶解性を低下させることにより該化合物の膜からの溶出を抑制し、膜の安定性を高める処理工程を意味する。 具体的には、例えば、少ない価数のイオンをそれより大きい価数のイオンに置き換える(例えば、1価のイオンを多価のイオンに置き換える)処理が挙げられる。このような処理方法としては、例えば、細田豊著「理論製造 染料化学」(技報堂、1957年)435〜437頁等に記載されている処理工程等の公知の方法が用いられる。好ましくは、得られた異方性色素膜を、特開2007−241267号公報等に記載の方法で処理し、水に対して不溶性の膜にするのが、後工程の容易さ及び耐久性等の観点から好ましい。
本発明の偏光素子の製造は、(3)工程として、前記異方性色素膜のパターン輪郭部分を基板から除去後において、異方性色素膜上に樹脂組成物層を形成する工程を有する。樹脂組成物層の形成方法は、異方性色素膜上面及びの側面も樹脂組成物で覆われた状態になれば特に限定されない。特に、樹脂組成物を塗布することにより樹脂組成物層を設ける方法が膜形成の容易性及び安定性の点で好ましい。
本発明において塗布方法は特に限定されず、塗布面積、装置及び塗布する樹脂組成物の特性で適宜公知の方法を用いる事ができる。具体的には、スロットダイコート法、スピンコート法、スプレーコート法、バーコート法、ロールコート法、ブレードコート法、カーテンコート法、ファウンテン法、ディップ法等の他、オフセット、グラビア、フレキソ、スクリーン、インクジェット等の印刷方式が挙げられる。この中でも全面塗布の場合は均一性が良好かつ液材の利用効率が高いため、スロットダイコート法等を用いることが好ましく、一部分の塗布の場合はパターニング精度が良いため、オフセット印刷法等を用いることが好ましい。
有機溶剤としては、沸点(圧力1013.25[hPa]条件下。以下、沸点に関しては全て同様。)が100〜300℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜280℃の沸点をもつ溶剤である。
このような有機溶剤としては、例えば、グリコールモノアルキルエーテル類;グリコールジアルキルエーテル類;グリコールジアセテート類;アルキルアセテート類;エーテル類;ケトン類;1価又は多価アルコール類;脂肪族炭化水素類;脂環式炭化水素類;芳香族炭化水素類;鎖状又は環状エステル類;アルコキシカルボン酸類;ハロゲン化炭化水素類;エーテルケトン類;ニトリル類等から選択され、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
後述するスピンコート法及びダイコート法のような塗布方式においては、有機溶剤としては沸点が100〜200℃の範囲のものを選択するのが好ましい。より好ましくは120〜170℃の沸点を持つものである。沸点が極端に低過ぎないことでムラ等を抑制することができ、また、高過ぎないことで、異方性色素膜及び樹脂組成物層に過剰に負荷をかけず乾燥することができる傾向にある。
尚、樹脂組成物層の厚さは、乾燥後の膜厚として、通常、20nm以上が好ましく、50nm以上が更に好ましく、又、2000nm以下が好ましく、1000nm以下が更に好ましい。また、乾燥後の樹脂層に架橋操作を行い、補強してもよい。
本発明は、(4)工程として、上述した樹脂組成物層を形成した後において、パターン及びパターン輪郭部分以外の偏光素子として不要な部分を除去する工程を有する。不要部分の除去は、その後の製造プロセスに応じて一部の除去でもよく、また、除去方法は複数組み合わせてもよい。
異方性色素膜は、樹脂組成物層に覆われた状態であり、不要部分を除去する際も、異方性色素膜のサイドエッチングや剥離が生じず、偏光素子の性能及び信頼性を維持することができる。
露光工程に用いる光は特に限定されるものではないが、水銀ランプ、メタルハライトランプ等の紫外線、電子線等が挙げられる。
現像により未露光部分の除去を行なう際のアルカリ現像液として、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム等のナトリウム系水溶液;ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリ;等を用いる事ができる。また、現像液には、消泡剤及び界面活性剤等を添加することもできる。
現像処理方法としてはシャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法及びパドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
ドライエッチング後、設けたマスクはそのままでもよく、除去してもよい。除去する方法は特に限定されず、化学的な溶剤等を用いて剥離させてもよく、機械的に剥離させてもよい。また、ドライエッチングによる不要部分の除去と同時に除去させることもできる。
この中でもフォトリソグラフィー法はパターニング精度が良いため好ましく、またドライアイス洗浄法は、スループットが高いため好ましい。
図1に、本発明の(1)工程において、異方性色素膜を形成した模式図を示す。基板1上に、連続塗布で異方性色素膜2(斜線部分)を形成する。具体的には、上述したような色素及び溶媒を含む異方性色素膜形成用組成物を、ダイコート等で塗布する。この塗布による応力印加によって、異方性色素膜に配向性が付与される。
異方性色素膜形成用組成物の塗布性を向上させるため、塗布面を親水化処理してもよい。また、配向性を向上させる等の理由で、異方性色素膜を形成する前に、基板上に配向膜等を形成してもよい。
図2(b)に図2(a)で示した基板の側面図を示す。除去したパターン輪郭部分は凹となっている。
異方性色素膜2及び除去したパターン輪郭部分3に樹脂組成物層4が形成されており、凹となっていた除去したパターン輪郭部分に樹脂組成物層が形成され、異方性色素膜は基板に接している面以外は樹脂組成物層で覆われた状態である。
実施形態1同様に、本発明の(1)工程の異方性色素膜を形成し、本発明の(2)工程のパターン輪郭部分を基板から除去する。
異方性色素膜2及び除去したパターン輪郭部分3の一部に樹脂組成物層4が形成されており、異方性色素膜は基板に接している面以外は樹脂組成物層で覆われた状態である。
実施形態1でフォトリソグラフィー法により不要部分を除去した後に、さらにドライエッチング法、サンドブラスト法、ドライアイス洗浄法 、ケミカルエッチング法、UVアッシング法等を用いて、現像残渣を取り除く事が出来る。この場合はフォトリソグラフィー法でパターニングされた樹脂組成物自体がマスクとして働くため、異方性色素膜を保護しながら残渣をさらに低減することができる。
実施形態1同様に、本発明の(1)工程の異方性色素膜を形成し、本発明の(2)工程のパターン輪郭部分を基板から除去する。続いて本発明の(3)工程において、樹脂組成物の塗布を、スロットダイ法等を用いて異方性色素膜すべてを覆うように行う。その後、塗布した樹脂組成物を熱又はUV照射によって硬化させる。
図7は、本発明の(4)工程において、ドライフィルムレジスト6を、硬化させた樹脂組成物上に貼合し、異方性色素膜パターン及びパターン輪郭部分のみにフォトレジスト層を形成する場合の露光状態を側面から示す模式図である。このような状態でドライフィルムレジストを露光させ、次いでアルカリ現像することで、異方性色素膜パターン及びパターン輪郭部分上にフォトレジスト層を設けることができる。
このフォトレジスト層をマスクとし、サンドブラスト法等を用いてパターン及びパターン輪郭部分以外の樹脂組成物層及び異方性色素膜を除去したのが図8に示す状態である。最後に残ったドライフィルムレジスト6を剥離除去し、図5の偏光素子の側面を示す模式図のように偏光素子を得る。
実施形態1と同様に、本発明の(1)工程の異方性色素膜を形成し、 本発明の(2)工程のパターン輪郭部分を基板から除去する。その後、異方性色素膜の不溶化処理を行う。続いて実施形態4と同様に本発明の(3)工程及び(4)工程を実施し、最後に残ったドライフィルムレジストを剥離除去し、図5の偏光素子の側面を示す模式図のように偏光素子を得る。
実施形態5と同様に本発明の(1)工程の異方性色素膜を形成し、 本発明の(2)工程のパターン輪郭部分を基板から除去する。その後、異方性色素膜を不溶化する処理を施し、さらに同様に本発明の(3)工程を実施する。
続いてフォトレジスト(溶液)を、スロットダイ法等を用いて樹脂組成物層上に塗布を行う。図7は、フォトリソグラフィー法を用いて異方性色素膜のパターン及びパターン輪郭部分上にフォトレジスト層を形成する場合の露光状態を側面から示す模式図である。このような状態でフォトレジストを露光させ、次いでアルカリ現像することで、異方性色素膜のパターン及びパターン輪郭部分上にフォトレジスト層を設けることができる。
さらに続いて、本発明の(4)工程において、得られたフォトレジスト層をマスクとし、サンドブラスト法等を用いて異方性色素膜のパターン及びパターン輪郭部分以外の樹脂組成物層及び異方性色素膜を除去する。その際にフォトレジスト層も同時に削られて除去され、図5の偏光素子の側面を示す模式図のように偏光素子を得る。
表1に示す各成分を混合し、固形分濃度が15重量%となるようプロピレングリコールメチルエーテルアセテートで調整し、樹脂組成物1を作製した。
尚、表中の各成分は、以下に記載の通りである。
・光重合性モノマー a−1:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(新中村化学(株)製)
・樹脂 b−1:日本化薬(株)製 ZAR1035(エポキシ(メタ)アクリレート樹脂に該当。ビスフェノールA型エポキシ樹脂にアクリル酸を付加し、更にコハク酸無水物を付加した樹脂。分子量13,000、酸価 約100)
・光重合開始剤 c−1:BASF(株)製 IRGACURE907
・界面活性剤:DIC(株)製 RS−72−K(重合性基を有するフッ素系界面活性剤)
水79重量部に、下記式(I)で表わされる色素のリチウム塩20重量部と、下記式(II)で表わされる色素1重量部とを撹拌溶解させることにより、異方性色素膜用組成物1を調製した。
この配向膜の上に、異方性色素膜用組成物1をダイコーター(ウェット膜厚2μm、ヘッド速度15mm/s)で塗布し、自然乾燥させることにより、膜厚約0.4μmの異方性色素膜1を形成した。尚、塗布時の環境条件は23℃、50RH%であった。
さらに、樹脂組成物層1を設けた基板上を、アセトンを含ませた布でふき取りを行ったが、樹脂組成物層1及び異方性色素膜1の剥離や溶解は発生しなかった。
実施例1と同様の方法で異方性色素膜2を形成した。実施例1のふき取りは行わず、偏光素子として取り出す一辺4cmの正方形状の異方性色素膜2上のみに、筆を用いて樹脂組成物1を一様に塗布した。塗布後の基板を、ホットプレート上でプリベーク処理(80℃、90秒)した。次に、紫外線露光機(オーク製作所製 EXF−2829―E、超高圧水銀ランプ)を用いて500mJ/cm2の強度で光硬化させた。さらに、ポストベーク処理(180℃、30分)を行い、樹脂組成物1を完全に硬化させ樹脂組成物層2を得た。
2 異方性色素膜
3 パターン輪郭部分
4 樹脂組成物層
5 マスク
6 ドライフィルムレジスト又はフォトレジスト
Claims (7)
- 基板、異方性色素膜及び樹脂組成物層を含む偏光素子であって、
基板上に異方性色素膜、樹脂組成物層の順で積層され、
異方性色素膜の上面及び全側面が、樹脂組成物層により覆われ、
且つ、基板上に異方性色素膜及び樹脂組成物層が形成されていない部分を有する
ことを特徴とする偏光素子。 - 前記樹脂組成物層が、光学異方性を有さないものである、請求項1に記載の偏光素子。
- 前記樹脂組成物層の厚さ500nmの時の550nmの光線透過率が80%以上である、請求項1又は2に記載の偏光素子。
- 基板、異方性色素膜及び樹脂組成物層を含む偏光素子の製造方法であって、
以下の(1)〜(4)の工程を含むことを特徴とする偏光素子の製造方法。
(1)基板面に異方性色素膜を形成する工程
(2)前記異方性色素膜の一部を除去し、複数の分離された異方性色素膜を形成する工程
(3)異方性色素膜上に樹脂組成物層を形成する工程
(4)樹脂組成物層を形成後、パターン及びパターン輪郭部分以外の不要部分を除去する工程 - 前記(3)工程の樹脂組成物層を形成する工程が、前記基板面上に樹脂組成物を連続塗布で行なうものである、請求項4に記載の偏光素子の製造方法。
- 前記樹脂組成物が感光性樹脂組成物である、請求項4又は5に記載の偏光素子の製造方法。
- 前記(4)の不要部分を除去する工程が、フォトリソグラフィー法で行われるものである、請求項4〜6の何れか1項に記載の偏光素子の製造方法。
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