JPWO2014133132A1 - 複合半透膜 - Google Patents

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Abstract

本発明は、高い透過水量を達成でき、かつ、膜汚染物質に対する高い脱離性を有する複合半透膜を提供する。本発明の複合半透膜は、基材および多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを備え、pH6、NaCl10mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Aが±15mV以内であり、かつpH6、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Bと、前記表面ゼータ電位Aとの電位差が±10mV以上である。

Description

本発明は、高い透過水量を達成でき、かつ、長期間の安定運転が可能な複合半透膜に関するものである。本発明によって得られる複合半透膜は、例えばかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがある。近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得る場合や、工業用超純水の製造、廃水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、支持膜上にゲル層と重合体を架橋した活性層を有するものと、支持膜上でモノマーを重縮合して形成された活性層を有するものとの2種類がある。なかでも、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を支持膜上に被覆して得られる複合半透膜は、透過水量や選択分離性の高い分離膜として広く用いられている。
逆浸透膜を用いる造水プラントではランニングコストの一層の低減を図るため、より高い透過水量が求められている。このような要求に対し、分離活性層に架橋ポリアミド重合体を含む複合半透膜について、亜硝酸を含む水溶液に接触させる方法(特許文献1参照)や塩素を含む水溶液に接触させる方法(特許文献2参照)などが知られている。
また、逆浸透膜を用いる造水プラントで起こる問題の一つに、無機物や有機物といった膜汚染物質によるファウリングがある。逆浸透膜はファウリングによって透過水量が著しく低下する。これを改善する方法として、ポリビニルアルコールを分離機能層表面にコーティングすることで荷電状態を中性にして、ファウリングを抑制する方法(特許文献3参照)などが提案されている。
また、ファウリングを解消するためには、一定期間の運転後にアルカリや酸などによる薬液洗浄を行うことが一般的である。このため長期間にわたって安定な運転を継続するには、複合半透膜のアルカリや酸への耐久性、つまり薬品接触前後での膜性能変化が小さいことが必要とされる。複合半透膜の耐アルカリ性を向上させるために、複合半透膜にpH9〜13の水素イオン濃度水溶液を接触させる方法(特許文献4参照)が開示されている。また、複合半透膜の耐酸性を向上させるために、複合半透膜に環状硫酸エステルを接触させる方法(特許文献5参照)が開示されている。
日本国特開2011−125856号公報 日本国特開昭63−54905号公報 国際公開第97/34686号 日本国特開2006−102624号公報 日本国特開2010−234284号公報
このように、逆浸透膜に要求される性能には、塩除去性能や透過水量だけでなく、長期間安定して運転可能であることが求められる。特許文献1や特許文献2に記載の膜は、透過水量を高くすることができるが、耐ファウリング性が低いという問題があった。一方、特許文献3に記載の膜ではコーティングにより透過水量が低下することがあった。また、特許文献4や特許文献5に記載の複合半透膜は、複合半透膜の耐薬品性は得られるものの、ファウリングを解消するために高頻度の薬液洗浄を必要とする場合があり、安定運転性の点で検討の余地があった。
本発明の目的は、高い透過水量を達成でき、かつ、長期間の安定運転が可能な複合半透膜を提供することである。
上記目的を達成するための本発明は、以下の構成をとる。
(1)基材および多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを備える複合半透膜であって、
pH6、NaCl10mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Aが±15mV以内であり、かつ
pH6、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Bと、前記表面ゼータ電位Aとの電位差が±10mV以上である複合半透膜。
(2)前記分離機能層の表面の自乗平均面粗さが60nm以上である上記(1)に記載の複合半透膜。
(3)前記分離機能層が、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重合反応により得られたポリアミドから形成される上記(1)または(2)に記載の複合半透膜。
(4)pH3、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Cと、pH10、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Dとの電位差が、40mV以下である上記(1)〜(3)いずれか1に記載の複合半透膜。
(5)前記分離機能層がアミノ基およびアミド基を含み、アミノ基のモル当量/アミド基のモル当量の比が0.2以上である上記(1)〜(4)いずれか1に記載の複合半透膜。
(6)前記分離機能層がアミド基、アゾ基およびフェノール性水酸基を有し、フェノール性水酸基/アミド基の比が0.1以下である上記(1)〜(5)いずれか1に記載の複合半透膜。
(7)前記分離機能層の表面が架橋重合体により被覆されている上記(1)〜(6)いずれか1に記載の複合半透膜。
(8)前記架橋重合体が親水性化合物の架橋体である上記(7)に記載の複合半透膜。
(9)前記架橋重合体が、前記分離機能層の表面と共有結合を形成している上記(7)または(8)に記載の複合半透膜。
(10)前記分離機能層の表面が前記架橋重合体により被覆される前の複合半透膜を用いて、25℃、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/lである水溶液を1.55MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量をF1とし、前記分離機能層の表面が前記架橋重合体により被覆された後の透過水量をF2としたとき、F2/F1の値が0.80以上である上記(7)〜(9)いずれか1に記載の複合半透膜。
(11)25℃において、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/lである水溶液を1.55MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量をF3とし、続いてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを100mg/lの濃度となるように前記水溶液に加えて1時間ろ過後、NaCl濃度が500mg/lである水溶液で1時間洗浄したときの透過水量をF4としたとき、F4/F3の値が0.85以上である上記(1)〜(10)いずれか1に記載の複合半透膜。
本発明は、高い透過水量を達成でき、かつ、長期間の安定運転が可能な複合半透膜を提供することができる。この複合半透膜を用いることで、品質の高い透過水を省エネルギーかつ安定して得ることができるようになる。
1.複合半透膜
本発明の複合半透膜は、基材および多孔性支持層を含む支持膜と、該支持膜の多孔性支持層上に形成されたポリアミド分離機能層とを備える。本発明の複合半透膜は、分離機能層の表面ゼータ電位が、pH6、NaCl10mMの条件において測定したときに±15mV以内に制御されており、かつpH6、NaCl1mMの条件で測定したときとの表面ゼータ電位差が±10mV以上であることを特徴とする。
(1−1)分離機能層
分離機能層は、複合半透膜において溶質の分離機能を担う層である。分離機能層の組成および厚み等の構成は、複合半透膜の使用目的に合わせて設定される。
分離機能層は、具体的には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との界面重縮合によって得られる架橋ポリアミドからなる。以下、本発明における分離機能層を「ポリアミド分離機能層」とも記載する。
ここで多官能アミンは、芳香族多官能アミンおよび脂肪族多官能アミンから選ばれた少なくとも1つの成分からなることが好ましい。
芳香族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する芳香族アミンであり、特に限定されるものではないが、メタフェニレンジアミン、パラフェニレンジアミン、1,3,5−トリアミノベンゼンなどが例示される。また、そのN−アルキル化物として、N,N−ジメチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジエチルメタフェニレンジアミン、N,N−ジメチルパラフェニレンジアミン、N,N−ジエチルパラフェニレンジアミンなどが例示される。性能発現の安定性から、特にメタフェニレンジアミンまたは1,3,5−トリアミノベンゼンが好ましい。
また、脂肪族多官能アミンとは、一分子中に2個以上のアミノ基を有する脂肪族アミンであり、好ましくはピペラジン系アミンおよびその誘導体である。例えば、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、2−メチルピペラジン、2,6−ジメチルピペラジン、2,3,5−トリメチルピペラジン、2,5−ジエチルピペラジン、2,3,5−トリエチルピペラジン、2−n−プロピルピペラジン、2,5−ジ−n−ブチルピペラジン、エチレンジアミンなどが例示される。性能発現の安定性から、特に、ピペラジンまたは2,5−ジメチルピペラジンが好ましい。
これらの多官能アミンは、1種を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
多官能酸ハロゲン化物とは、一分子中に2個以上のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物であり、上記多官能アミンとの反応によりポリアミドを与えるものであれば特に限定されない。多官能酸ハロゲン化物としては、例えば、シュウ酸、マロン酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、1,3,5−シクロヘキサントリカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸等のハロゲン化物を用いることができる。酸ハロゲン化物の中でも、酸塩化物が好ましく、特に経済性、入手の容易さ、取り扱い易さ、反応性の容易さ等の点から、1,3,5−ベンゼントリカルボン酸の酸ハロゲン化物であるトリメシン酸ハロゲン化物が好ましい。上記多官能酸ハロゲン化物は1種を単独で用いても、2種類以上を混合して用いてもよい。
本願発明者らは鋭意検討を行った結果、分離機能層の表面ゼータ電位と、複合半透膜の透過水量および膜表面に付着した膜汚染物質の脱離性とが密接な関係があることを見出した。
ゼータ電位とは超薄膜層表面の正味の固定電荷の尺度であり、本発明の薄膜層表面のゼータ電位は、電気移動度から、下記数式(1)に示すヘルムホルツ・スモルコフスキー(Helmholtz−Smoluchowski)の式によって求めることができる。
Figure 2014133132
(式(1)中、Uは電気移動度、εは溶液の誘電率、ηは溶液の粘度である。ここで、溶液の誘電率、粘度は、測定温度での文献値を使用した。)
ゼータ電位の測定原理について説明する。材料に接した(水)溶液には、材料表面の電荷の影響で、表面の近傍に流動できない静止層が存在する。ゼータ電位は、材料の静止層と流動層の境界面(すべり面)での溶液に対する電位である。
ここで、石英ガラスセル中の水溶液を考えると、石英表面は通常マイナスに荷電されているため、セル表面付近にプラス荷電のイオンや粒子が集まる。一方、セル中心部にはマイナス荷電のイオンや粒子が多くなり、セル内でイオン分布が生じている。この状態で電場をかけると、セル内ではイオン分布を反映し、セル内の位置で異なる泳動速度でイオンが動く(電気浸透流という)。泳動速度はセル表面の電荷を反映したものであるので、この泳動速度分布を求めることにより、セル表面の電荷(表面電位)を評価することができる。
通常ゼータ電位の測定は、大きさ20mm×30mmの膜試料を用い、電気泳動させるための標準粒子は表面をヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたポリスチレン粒子(粒径520nm)を所定濃度に調整したNaCl水溶液に分散させて測定することができる。測定装置は例えば大塚電子株式会社製電気泳動光散乱光度計ELS−8000などが使用できる。
本発明の複合半透膜は、分離機能層の表面ゼータ電位が、pH6、NaCl10mMの条件において測定されたときに±15mV以内に制御されており(表面ゼータ電位A)、かつNaCl1mMの条件で測定したとき(表面ゼータ電位B)と表面ゼータ電位Aとの電位差が±10mV以上であることが必要である。
ポリアミド分離機能層には、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物に由来する未反応のアミノ基とカルボキシル基が含まれ、それら官能基の解離度によってゼータ電位の値が変化する。分離機能層のpH6におけるゼータ電位は、膜汚染物質の吸着性に関係しており、ゼータ電位がNaCl10mMの条件において±15mV以内に制御されていると膜汚染物質と膜表面素材との相互作用を抑制することができる。ゼータ電位が±15mV以内に制御されていれば膜表面は電気的に中性であることを示しており、水中に存在している荷電基を有する膜汚染物質の電気的な相互作用を抑制するからである。ゼータ電位が±15mV以上の場合には、膜表面に電気的な偏りが生じるため、荷電基を有する膜汚染物質の電気的な相互作用が起こりやすくなる。
一方、官能基の解離度が高いと、複合半透膜の塩除去性能および透過水量は高くなる。これは、分離機能層の官能基量が多くなることで、静電反発が大きくなったり、親水性が高くなったりするためと考えられる。本発明においては、NaCl10mMで測定したときのゼータ電位Aと、NaCl1mMの条件で測定したときの表面ゼータ電位Bとの電位差が±10mV以上であることにより、高塩濃度における膜汚染物質の脱離性に加え、高い塩除去性能、透過水量を同時に満たすことができる。かかる電位差が±10mV未満の場合には、透過水量が大幅に低下する、もしくは膜汚染物質との相互作用が強くなる。
pH3、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Cと、pH10、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Dとの電位差は、複合半透膜の性能安定性と関係しており、40mV以下であることが複合半透膜を洗浄する際に汚染物質の剥離性が高いことから好ましく、より好ましくは25mV以下である。
上記ゼータ電位の範囲を満たすため、分離機能層中の官能基割合「(アミノ基のモル当量)/(アミド基のモル当量)」は好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.6以上である。「(アミノ基のモル当量)/(アミド基のモル当量)」の比が0.2以上であれば、ポリアミド分離機能層中の官能基量が十分なため膜の親水性を維持でき透過水量が向上するほか、後述する分離機能層へのコーティング層固定化に高い効果が得られる。
ポリアミド分離機能層中の官能基量は、例えば、13C固体NMR法を用いることができる。具体的には、複合半透膜から基材を剥離し、ポリアミド分離機能層と多孔性支持層を得た後、多孔性支持層を溶解・除去し、ポリアミド分離機能層を得る。得られたポリアミド分離機能層をDD/MAS−13C固体NMR法により測定を行い、各官能基の炭素ピークまたは各官能基が結合している炭素ピークの積分値の比較から各官能基比を算出することができる。
また、ポリアミド分離機能層の元素比率は、例えば、X線光電子分光法(XPS)を用いて分析することができる。具体的には、「Journal of Polymer Science」,Vol.26,559−572(1988)および「日本接着学会誌」,Vol.27,No.4(1991)で例示されているX線光電子分光法(XPS)を用いることにより求めることができる。
分離機能層のゼータ電位をコントロールする方法としては、分離機能層を形成する際に分離機能層が有する官能基の量が少なくなるように制御する方法、分離機能層が有する官能基を他の構造に変換させる方法、分離機能層の表面に重合体をコーティング(被覆)する方法などがある。これらの方法を単独で使用しても、複数の方法を組み合わせて使用してもよい。しかし、単に重合体をコーティングする方法では、分離機能層と膜汚染物質の相互作用を低減させるが、膜の透過水量が低下するため、好ましくない。
分離機能層の表面に重合体をコーティングする方法では、重合体が親水性化合物であることが好ましい。親水性化合物を用いることで被覆処理による複合半透膜の透過水量の低下を軽減できる。また、上記重合体が架橋重合体であることも好ましい。被覆する重合体が架橋重合体であると、複合半透膜を連続して使用した際や、薬液で洗浄した際に被覆層の剥離を抑制することができ、長期間安定した性能を発現することができる。
本発明の親水性化合物は、膜表面の官能基と反応する反応性基を少なくとも1個有することが好ましい。反応性基は膜表面の官能基と共有結合を形成すればいずれでもよく、例えば、膜表面の酸ハロゲン化物と結合する反応性基としては、水酸基、アミノ基、エポキシ基などが挙げられる。具体的な親水性化合物の例としては、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルの部分ケン化物、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリエピアミノヒドリン、アミン変性ポリエピクロルヒドリン、ポリオキシエチレンジプロピルアミン、アミノ基または水酸基を含むモノマーを用いた共重合体、酢酸ビニルとメタクリル酸エステル共重合体の部分ケン化物、酢酸ビニルと2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン共重合体の部分ケン化物などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、混合して用いてもよい。これらの中では、反応性、得られた膜の性能の点から、1級または2級アミノ化合物または水酸基を有する重合体が好ましく用いられる。アミノ基と酸ハロゲン化物が反応した場合は、架橋ポリアミド分離機能層と親水性化合物との間でアミド結合が形成され、水酸基と酸ハロゲン化物が反応した場合は、架橋ポリアミド分離機能層と親水性化合物との間でエステル結合が形成される。
また、膜表面の官能基と反応する反応性基を少なくとも1個有する親水性化合物が、さらに膜表面の官能基と反応しない親水性基を有していることも好ましい態様である。親水性基としては、例えば、エーテル基、アミド基、エステル基、3級アミノ基、4級アンモニウム基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、カルボキシル基、カルボニル基、ケト基、アルコキシカルボニル基、アミド基、シアノ基、ホルミル基、メルカプト基、イミノ基、アルキルチオ基、スルフィニル基、スルホニル基、スルホ基、ニトロソ基、リン酸基、ホスホリルコリン基などが挙げられる。特に、エーテル基、アミド基、エステル基などの電気的に中性の親水性基が好ましい。また正荷電基と負荷電基を同量含む両性荷電ポリマーも本発明のゼータ電位を制御する上で好ましい。
このような膜表面の官能基と反応する反応性基を少なくとも1個有する親水性化合物を、架橋性ポリアミド分離機能層表面の官能基と反応させ共有結合を形成して膜表面に固定することにより、吸着しているだけの場合に比べ、長期間安定した性能を発現することができる。
前記分離機能層に存在する官能基は、適宜選択した化学反応によって、異なる官能基へ変換することが可能である。例えば、芳香族アミノ基は、四酸化二窒素や亜硝酸、硝酸、亜硫酸水素ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等を試薬として用いることで、芳香族ジアゾニウム塩を経由したジアゾカップリング反応を起こす。またアミノ基とニトロソ化合物との反応等によってもアミノ基をアゾ基に変換することができる。反応する試薬の濃度や反応させるときの温度および時間を変えることで、前記分離機能層のゼータ電位をコントロールできる。また、官能基を変換させるに際して、反応前の官能基の量も得られる分離機能層のゼータ電位に影響を与えるので、多孔性支持層の厚みを薄くすることにより製造時の未反応物質の残存量を低下させる方法や、分離機能層を形成した後に熱水洗浄によって官能基を有する化合物を除去する方法などによっても、分離機能層のゼータ電位をコントロールできる。
分離機能層を、アミノ基やカルボキシル基と反応する試薬に接触させた場合、分離機能層の黄色度は、15以上50以下であることが好ましく、20以上45以下であることがより好ましい。黄色度は分離機能層中のアゾ化合物およびアゾ基の量によって変化し、上記範囲内であると本発明のゼータ電位および親水性化合物の安定性を得ることができる。分離機能層の黄色度が15未満であると、分離機能層中におけるアゾ化合物の量が少ないため、本発明のゼータ電位を得ることができない。黄色度が、50を超えるとアゾ化合物の量が多いため透過水量が低くなる。
アゾ化合物とは、アゾ基(−N=N−)を有する有機化合物であり、分離機能層を、アミノ基やカルボキシル基と反応する試薬に接触させた際に、分離機能層内で生成および保持される。
黄色度とは、日本工業規格JIS K7373(2006)に規定される、重合体の色相が無色または白色から黄方向に離れる度合いのことで、プラスの値として表される。
分離機能層の黄色度は、カラーメーターにより測定できる。例えば、支持膜上に分離機能層が設けられた複合半透膜において黄色度を測定する場合であれば、反射測定方法が簡便である。また、複合半透膜を分離機能層が下になるようにガラス板に乗せてから、支持膜のみを溶解する溶媒にて支持膜を溶解および除去し、ガラス板上に残る分離機能層試料を透過測定方法によって測定することもできる。なお、複合半透膜をガラス板に乗せる際、支持膜の基材は、あらかじめ剥離しておくことが好ましい。カラーメーターは、スガ試験器株式会社製SMカラーコンピュータSM−7などが使用できる。
本発明では、ポリアミド分離機能層がアミド基、アゾ基およびフェノール性水酸基を有し、かつ、フェノール性水酸基/アミド基の比を0.10以下とすることで、酸やアルカリとの接触後も透過水量および低ファウリング性の変化が小さい、耐薬品性の高い複合半透膜が得られるため好ましい。フェノール性水酸基は溶液のpHの変化に伴ってプロトン化、もしくは脱プロトン化を起こすため、分離機能層を構成するポリアミド鎖の荷電状態が変化し、ポリアミド鎖の高次構造が変化することで造水量や塩除去性能が変化することが懸念される。多官能芳香族アミンと多官能酸ハロゲン化物の界面重縮合で形成される架橋芳香族ポリアミドには、フェノール性水酸基は存在しないが、界面重縮合後の後処理で四酸化二窒素や亜硝酸、硝酸、亜硫酸水素ナトリウム、次亜塩素酸ナトリウム等の試薬と反応させることで、芳香族アミノ基が芳香族ジアゾニウム塩へと変換される。その後、水と接触することで芳香族ジアゾニウム塩がフェノール性水酸基へと変換される反応が生じる。また、芳香族ジアゾニウム塩に対してフェノール類を反応させる、ジアゾカップリング反応によっても、界面重縮合直後の架橋芳香族ポリアミドにはないフェノール性水酸基が導入される。
なお、フェノール性水酸基/アミド基の比の下限は特に限定されないが、この比は、例えば0.005以上、または0.01以上であってもよい。
本発明の複合半透膜においては、架橋芳香族ポリアミドの後処理によって生じた芳香族ジアゾニウム塩に対して、電子供与基を持つ芳香族化合物、もしくは酸性度の高いプロトンを有する炭素酸を反応させることで、ジアゾカップリング反応を優先的に生じさせ、水との反応で生じるフェノール性水酸基の発生を抑制する。電子供与基とは、例えば、ヒドロキシ基、アミノ基、アルコキシ基が挙げられるが、上述した通りヒドロキシ基を持つフェノール性化合物を用いることは好ましくなく、水溶性を考慮すると芳香族アミノ基を持つ化合物を使用することが望ましい。
分離機能層の自乗平均面粗さ(Rms)は、60nm以上であることが好ましい。自乗平均面粗さが60nm以上であることで、分離機能層の表面積が大きくなり、透過水量が高くなる。一方、コーティング層が厚く、自乗平均面粗さが60nm未満の場合には透過水量が大幅に低下する。
分離機能層の自乗平均面粗さは、界面重縮合によって分離機能層を形成する時のモノマー濃度や温度によって制御できる。例えば、界面重縮合時の温度が低いと自乗平均面粗さは小さくなり、温度が高いと自乗平均面粗さは大きくなる。また、分離機能層表面に重合体のコーティングを行う場合は、コーティング層が厚いと自乗平均面粗さは小さくなる。
なお、自乗平均面粗さは原子間力顕微鏡(AFM)で測定できる。自乗平均面粗さは基準面から指定面までの偏差の自乗を平均した値の平方根である。ここで測定面とは全測定データの示す面をいい、指定面とは粗さ計測の対象となる面で、測定面のうちクリップで指定した特定の部分をいい、基準面とは指定面の高さの平均値をZ0とするとき、Z=Z0で表される平面をいう。AFMは、例えばデジタル・インスツルメンツ社製NanoScope IIIaが使用できる。
(1−2)支持膜
支持膜は、分離性能を有するポリアミド分離機能層に強度を与えるためのものであり、それ自体は、実質的にイオン等の分離性能を有さない。支持膜は、基材と多孔性支持層からなる。
支持膜における孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面における微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような支持膜が好ましい。
支持膜は、例えば基材上に高分子重合体を流延することで、基材上に多孔性支持層を形成することにより得ることができる。支持膜に使用する材料やその形状は特に限定されない。
基材としては、ポリエステルおよび芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種からなる布帛が例示される。機械的および熱的に安定性の高いポリエステルを使用するのが特に好ましい。
基材に用いられる布帛としては、長繊維不織布や短繊維不織布を好ましく用いることができる。基材上に高分子重合体の溶液を流延した際にそれが過浸透により裏抜けしたり、基材と多孔性支持層が剥離したり、さらには基材の毛羽立ち等により膜の不均一化やピンホール等の欠点が生じたりすることがないような優れた製膜性が要求されることから、長繊維不織布をより好ましく用いることができる。長繊維不織布としては、熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布などが挙げられる。基材が長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜を連続製膜する工程においては、基材の製膜方向に張力がかけられることからも、基材としては、寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。特に、基材の多孔性支持層と反対側に配置される繊維の配向が、製膜方向に対してたて配向であることにより、基材の強度を保ち、膜破れ等を防ぐことができるので好ましい。ここで、たて配向とは、繊維の配向方向が製膜方向と平行であるか、または平行に近いことを言う。逆に、繊維の配向方向が製膜方向と直角であるか、または直角に近い場合は、よこ配向と言う。
不織布基材の繊維配向度としては、多孔性支持層と反対側における繊維の配向度が0°〜25°の範囲にあることが好ましい。ここで繊維配向度とは、支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほどたて配向であり、90°に近いほどよこ配向であることを示す。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程には、加熱工程が含まれるが、加熱により支持膜または複合半透膜が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において、幅方向には張力が付与されていないので、幅方向に収縮しやすい。支持膜または複合半透膜が収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。
不織布基材において多孔性支持層と反対側に配置される繊維と多孔性支持層側に配置される繊維との配向度差が10°〜90°であると、熱による幅方向の変化を抑制することができ好ましい。
基材の通気度は2.0cc/cm/sec以上であることが好ましい。通気度がこの範囲だと、複合半透膜の透過水量が高くなる。これは、支持膜を形成する工程で、基材上に高分子重合体を流延し、凝固浴に浸漬した際に、基材側からの非溶媒置換速度が速くなることで多孔性支持層の内部構造が変化し、その後の分離機能層を形成する工程においてモノマーの保持量や拡散速度に影響を及ぼすためと考えられる。
なお、通気度はJIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定できる。例えば、200mm×200mmの大きさに基材を切り出し、サンプルとする。このサンプルをフラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファンおよび空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から基材を通過する空気量、すなわち通気度を算出することができる。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1などが使用できる。
また、基材の厚みは、10μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは30μm以上120μm以下の範囲内である。
本発明において支持膜は、基材と多孔性支持層とを備えるものであり、実質的にイオン等の分離性能を有さず、実質的に分離性能を有する分離機能層に強度を与えるためのものである。
多孔性支持層の素材にはポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。中でもポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーまたはコポリマーが好ましい。より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、またはポリフェニレンスルホンが挙げられ、さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に使用できる。
具体的には、次の化学式に示す繰り返し単位からなるポリスルホンを用いると、支持膜の孔径が制御しやすく、寸法安定性が高いため好ましい。
Figure 2014133132
例えば、上記ポリスルホンのN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいはポリエステル不織布の上に一定の厚さに流延し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有した支持膜を得ることができる。
上記の支持膜の厚みは、得られる複合半透膜の強度およびそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。支持膜の厚みは、十分な機械的強度および充填密度を得るためには、30μm以上300μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは100μm以上220μm以下の範囲内である。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金または白金−パラジウムまたは四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3〜15kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR−FE−SEM)によって観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、株式会社日立製作所製S−900型電子顕微鏡などが使用できる。
本発明に使用する支持膜は、ミリポア社製“ミリポアフィルターVSWP”(商品名)や、東洋濾紙社製“ウルトラフィルターUK10”(商品名)のような各種市販材料から選択することもできるし、“オフィス・オブ・セイリーン・ウォーター・リサーチ・アンド・ディベロップメント・プログレス・レポート”No.359(1968)に記載された方法などに従って製造することもできる。
多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。多孔性支持層の厚みが20μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持層を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持層の厚みが100μmを超えると、製造時の未反応物質の残存量が増加し、それにより透過水量が低下するとともに、耐薬品性が低下する。
なお、基材の厚みおよび複合半透膜の厚みは、デジタルシックネスゲージによって測定することができる。また、分離機能層の厚みは支持膜と比較して非常に薄いので、複合半透膜の厚みを支持膜の厚みとみなすことができる。従って、複合半透膜の厚みをデジタルシックネスゲージで測定し、複合半透膜の厚みから基材の厚みを引くことで、多孔性支持層の厚みを簡易的に算出することができる。デジタルシックネスゲージとしては、尾崎製作所株式会社のPEACOCKなどが使用できる。デジタルシックネスゲージを用いる場合は、20箇所について厚みを測定して平均値を算出する。
なお、基材の厚みもしくは複合半透膜の厚みをシックネスゲージによって測定することが困難な場合、走査型電子顕微鏡で測定してもよい。1つのサンプルについて任意の5箇所における断面観察の電子顕微鏡写真から厚みを測定し、平均値を算出することで厚みが求められる。
2.製造方法
次に、上記複合半透膜の製造方法について説明する。製造方法は、支持膜の形成工程および分離機能層の形成工程を含む。
(2−1)支持膜の形成工程
支持膜の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程および溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
基材に高分子溶液を塗布する工程において、高分子溶液は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して調製する。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、高分子としてポリスルホンを用いる場合、10℃〜60℃の範囲が好ましい。高分子溶液の温度が、この範囲内であれば、高分子が析出することがなく、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により多孔性支持層が基材に強固に接合し、良好な支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1〜5秒間の範囲であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
凝固浴としては、通常水が使われるが、多孔性支持層の成分である高分子を溶解しないものであればよい。凝固浴の組成によって得られる支持膜の膜形態が変化し、それによって得られる複合半透膜も変化する。凝固浴の温度は、−20℃〜100℃が好ましい。さらに好ましくは10℃〜50℃である。凝固浴の温度がこの範囲より高いと、熱運動により凝固浴面の振動が激しくなり、膜形成後の膜表面の平滑性が低下しやすい。逆に温度が低すぎると凝固速度が遅くなり、製膜性が低下する。
次に、このようにして得られた支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は40℃〜100℃が好ましく、さらに好ましくは60℃〜95℃である。この範囲内であれば、支持膜の収縮度が大きくならず、透過水量が良好である。逆に、温度が低すぎると洗浄効果が小さい。
(2−2)分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。ポリアミド分離機能層の形成工程では、前述の多官能アミンを含有する水溶液と、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液とを用い、支持膜の表面で界面重縮合を行うことにより、ポリアミド分離機能層を形成する。
多官能酸ハロゲン化物を溶解する有機溶媒としては、水と非混和性のものであって、支持膜を破壊しないものであり、かつ、架橋ポリアミドの生成反応を阻害しないものであればいずれであってもよい。代表例としては、液状の炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。オゾン層を破壊しない物質であることや入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全性を考慮すると、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1−オクテン、1−デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
多官能アミン水溶液や多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液には、両成分間の反応を妨害しないものであれば、必要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、界面活性剤、酸化防止剤等の化合物が含まれていてもよい。
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、多官能アミン水溶液で支持膜表面を被覆する。ここで、多官能アミンを含有する水溶液の濃度は、0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下である。
多官能アミン水溶液で支持膜表面を被覆する方法としては、支持膜の表面がこの水溶液によって均一にかつ連続的に被覆されればよく、公知の塗布手段、例えば、水溶液を支持膜表面にコーティングする方法、支持膜を水溶液に浸漬する方法等で行えばよい。支持膜と多官能アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。次いで、過剰に塗布された水溶液を液切り工程により除去することが好ましい。液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保持して自然流下させる方法等がある。液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の全部あるいは一部を除去してもよい。
その後、多官能アミン水溶液で被覆した支持膜に、前述の多官能酸ハロゲン化物を含有する有機溶媒溶液を塗布し、界面重縮合により架橋ポリアミドの分離機能層を形成させる。界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。
有機溶媒溶液における多官能酸ハロゲン化物の濃度は、特に限定されないが、低すぎると活性層である分離機能層の形成が不十分となり欠点になる可能性があり、高すぎるとコスト面から不利になるため、0.01重量%以上1.0重量%以下程度が好ましい。
次に、反応後の有機溶媒溶液を液切り工程により除去することが好ましい。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下の間にあることが好ましく、1分以上3分以下の間であるとより好ましい。把持する時間が1分間以上であることで目的の機能を有する分離機能層を得やすく、3分間以下であることで有機溶媒の過乾燥による欠点の発生を抑制できるので、性能低下を抑制することができる。
上述の方法により得られた複合半透膜は、さらに、25℃〜90℃の範囲内で1分間〜60分間熱水で洗浄処理する工程を付加することで、複合半透膜の溶質阻止性能や透過水量をより一層向上させることができる。ただし、熱水の温度が高すぎた場合、熱水洗浄処理後に急激に冷却すると耐薬品性が低下する。そのため、熱水洗浄は、25℃〜60℃の範囲内で行うことが好ましい。また、60℃を超えて90℃以下の高温で熱水洗浄処理する際には、熱水洗浄処理後は、緩やかに冷却することが好ましい。例えば、段階的に低い温度の熱水と接触させて室温まで冷却させる方法等がある。
また、上記の熱水洗浄する工程において、熱水中に酸またはアルコールが含まれていてもよい。酸またはアルコールを含むことで、分離機能層における水素結合の形成をより制御しやすくなる。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸や、クエン酸、シュウ酸などの有機酸などが挙げられる。酸の濃度は、pH2以下となるように調整することが好ましく、pH1以下であるとより好ましい。アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの1価アルコールや、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。アルコールの濃度は、好ましくは10〜100重量%であり、より好ましくは10〜50重量%である。
分離機能層が有する官能基を変換させる方法により分離機能層のゼータ電位をコントロールする場合は、次に、上記の分離機能層を、分離機能層中に含まれる未反応の官能基と反応する試薬に接触させる。反応する試薬は、特に限定されるものではないが、例えば分離機能層中の第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する亜硝酸およびその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解しやすいので、例えば、亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するのが好ましい。一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、水溶液のpHが7以下、好ましくはpH5以下、さらに好ましくはpH4以下で効率よく生成する。中でも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸または硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
前記第一級アミノ基と反応してジアゾニウム塩またはその誘導体を生成する試薬中の亜硝酸または亜硝酸塩の濃度は、好ましくは0.01〜1重量%の範囲である。0.01重量%以上の濃度では十分な効果を得やすく、亜硝酸または亜硝酸塩濃度が1重量%以下である場合、溶液の取扱いが容易となる。
亜硝酸水溶液の温度は15℃〜45℃が好ましい。溶液の温度が15℃未満の温度であると反応に時間がかかり、45℃を超えると亜硝酸の分解が早く取り扱いが困難である。
亜硝酸水溶液との接触時間は、ジアゾニウム塩および/またはその誘導体が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では、接触時間は10分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがより好ましい。また、接触させる方法は特に限定されず、試薬の溶液を塗布しても、試薬の溶液に複合半透膜を浸漬させてもよい。試薬を溶かす溶媒は、試薬が溶解でき、かつ、複合半透膜が侵食されなければ、いかなる溶媒を用いてもかまわない。また、溶液には、第一級アミノ基と試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や酸性化合物、アルカリ性化合物などが含まれていてもよい。
接触により生成したジアゾニウム塩またはその誘導体の一部は、水と反応することにより、フェノール性水酸基へと変換される。また、支持膜や分離機能層を形成する材料中の芳香環、または分離機能層に含まれる化合物の芳香環とも反応し、アゾ基を形成する。
次に、ジアゾニウム塩またはその誘導体が生成した複合半透膜を、ジアゾニウム塩またはその誘導体と反応する試薬とさらに接触させてもよい。ここで用いる試薬とは、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、フェノール類、硫化水素、チオシアン酸等が挙げられる。
例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化カリウムなどと反応させることで、ハロゲンを導入することができる。また、芳香族アミン、フェノール類と接触させることでジアゾカップリング反応が起こり膜面に芳香族を導入することが可能となる。なお、これらの試薬は単一で用いてもよく、複数混合させて用いてもよく、異なる試薬に複数回接触させてもよい。これらの試薬の中でも、特にジアゾカップリング反応を起こす試薬が、複合半透膜のホウ素除去率向上に効果的に働くため好ましく利用される。これはジアゾカップリング反応によってアミノ基の代わりに導入される置換基がよりかさ高く、分離機能層内に存在する孔を塞ぐ効果が得られたためであると考えられる。
ジアゾカップリング反応が生じる試薬としては、電子豊富な芳香環または複素芳香環を持つ化合物が挙げられる。電子豊富な芳香環または複素芳香環を持つ化合物としては、芳香族アミン誘導体、複素芳香族アミン誘導体、フェノール誘導体、ヒドロキシ複素芳香環誘導体が挙げられる。上記化合物の具体的な例としては、例えば、アニリン、オルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したメトキシアニリン、2個のアミノ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、アミノ基とヒドロキシ基がオルト位やメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したアミノフェノール、1,3,5−トリアミノベンゼン、1,2,4−トリアミノベンゼン、3,5−ジアミノ安息香酸、3−アミノベンジルアミン、4−アミノベンジルアミン、スルファニル酸、3,3’−ジヒドロキシベンジジン、1−アミノナフタレン、2−アミノナフタレン、1−アミノ−2−ナフトール−4−スルホン酸、2−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸、2−アミノ−5−ナフトール−7−スルホン酸、またはそのN−アルキル化物、およびその塩類、フェノール、オルト位やメタ位、パラ位のいずれかのクレゾール、カテコール、レゾルシノール、ヒドロキノン、フロログルシノール、ヒドロキシキノール、ピロガロール、チロシン、1−ナフトール、2−ナフトールおよびその塩等が挙げられる。
これらのジアゾニウム塩またはその誘導体と反応させる試薬の濃度と時間は、目的の効果を得るために適宜調節することができる。接触させる温度は10〜90℃が好ましく、20〜60℃がより好ましい。接触温度が10℃未満の時には反応が進みにくく、望む効果が得られずに、水との反応によってフェノール性水酸基へと変換される場合があり、90℃より高温では重合体の収縮がおこり透過水量が低下してしまう場合がある。また、試薬の濃度は0.01〜10重量%が好ましく、0.05〜1重量%がより好ましい。濃度が0.01重量%よりも低いときはジアゾニウム塩またはその誘導体との反応に長時間を要する場合があり、10重量%よりも高いとジアゾニウム塩またはその誘導体との反応を制御することが困難となる場合がある。
次に、上記分離機能層の上に親水性化合物を設ける工程について説明する。親水性化合物は、親水性基を有する化合物を含む溶液を分離機能層上に被覆した後、加熱することによって形成する。
親水性化合物は単独であっても数種混合して用いてもよい。親水性化合物は、重量濃度で10ppm〜1%の溶液として使用するのが好ましい。親水性化合物の濃度が10ppm未満であれば、分離機能層の被覆が不十分であり、膜汚染物質の付着が顕著になるため洗浄時に膜汚染物質を脱離させることが困難となる。1%を超えるとコーティング層が厚くなるため、膜最表面の電位を反映する表面ゼータ電位Aと、水中に遊離するイオンの影響が少なく分離機能層の電位を反映すると考えられる表面ゼータ電位Bとの電位差±10mV以上を達成することができない。
上記の親水性化合物を含む溶液に用いる溶媒としては、水や低級アルコール、ハロゲン化炭化水素、アセトン、アセトニトリルなどが好適に用いられる。これらは1種を単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
溶液には必要に応じて他の化合物を混合してもかまわない。たとえば、反応を促進するため、炭酸ナトリウム、水酸化ナトリウム、リン酸ナトリウムなどのアルカリ性金属化合物を添加してもよいし、残存する水と非混和性の溶媒や、遊離多官能酸ハロゲン化物とアミン化合物との反応生成物を除去するため、ドデシル硫酸ソーダ、ベンゼンスルホン酸ソーダなどの界面活性剤を添加することも好ましい。
親水性化合物を架橋する方法は特に限定されるものではないが、好ましくは熱架橋を行う。熱架橋を行う際の加熱方法としては、たとえば、熱風を吹き付ける方法を用いることができる。その場合の加熱温度は、30〜150℃の範囲内にあることが好ましく、30〜130℃の範囲内にあるとより好ましく、60〜100℃の範囲内にあるとさらに好ましい。加熱温度が30℃を下回ると、十分な加熱が行われず架橋反応速度が低下する傾向にあり、150℃を超えると副反応が進行しやすくなる。また、150℃を超えて熱架橋を行うと、複合半透膜の熱収縮が大きくなることがあり、透過水量が低くなる傾向にある。
親水性化合物の架橋には、架橋剤を用いることが好ましい。架橋剤としては例えば前述した、酸またはアルカリや、グリオキサールやグルタルアルデヒドなど、1分子中に少なくとも2個の官能基を有するアルデヒドなどを挙げることができる。特に、架橋重合体の原料がポリビニルアルコール、架橋剤がグルタルアルデヒドであり、架橋重合体がポリビニルアルコールとグルタルアルデヒドの反応物を含むことが好ましい。
架橋剤の添加濃度としては、0.01〜5.0重量%の範囲内にあることが好ましく、0.01〜1.0重量%の範囲内にあるとより好ましく、0.01〜0.5重量%の範囲内にあるとさらに好ましい。濃度が0.01重量%を下回ると、架橋密度が低くなり架橋重合体の水不溶性が不十分となりやすく、5.0重量%を上回ると、架橋密度が高くなり透過水量が低くなる傾向がみられ、さらに、架橋反応速度が速くなりゲル化が起こりやすく、均一塗布が難しくなる傾向がある。架橋反応の反応時間は10秒〜3分が好ましい。10秒未満だと反応が十分に進行しないことがあり、3分を超えると本発明のゼータ電位に調整することが難しい。
ここで、本発明の複合半透膜は、架橋重合体で被覆してもその前後で透過水量が低下しにくいことが好ましい。すなわち、分離機能層の表面を架橋重合体で被覆する前の複合半透膜を用いて、25℃、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/lである水溶液を1.55MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量をF1とし、分離機能層の表面を架橋重合体で被覆した後の透過水量をF2としたとき、F2/F1の値が0.80以上であることが好ましい。さらに好ましくは0.90以上である。このような複合半透膜を用いることにより、膜の透過水量を大きく低下させることなく、膜表面に膜汚染物質に対する高い脱離性を付与することができる。
3.複合半透膜の利用
本発明の複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列または並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。
本発明の複合半透膜を使用することにより、たとえば、操作圧力が0.1〜3MPaの範囲内、より好ましくは0.1〜1.5MPaの範囲内といった低圧領域で、高い透過水量を維持しつつ、複合半透膜や流体分離素子を使用することができる。操作圧力を低くすることができるため、用いるポンプなどの容量を小さくすることができ、消費電力を抑え、造水のコストダウンを図ることができる。操作圧力が0.1MPaを下回ると、透過水量が減少する傾向があり、3MPaを超えるとポンプなどの消費電力が増加するとともに、ファウリングによる膜の目詰まりを起こしやすくなる。
本発明の複合半透膜は、pH6.5、濃度が2,000mg/lの塩化ナトリウム水溶液を用い、25℃において、操作圧力1.0MPaで1時間ろ過したときの透過水量が0.5〜3m/m/dであることが好ましい。このような複合半透膜は、例えば、前述した製造方法を適宜選択することで、製造することができる。水の透過量を0.5〜3m/m/dの範囲とすることにより、ファウリングの発生を適度に抑え、造水を安定的に行うことができる。
本発明の複合半透膜で処理する下水中には、界面活性剤などの難生分解性有機物が、生物処理で完全には分解されず含まれていることがある。従来の複合半透膜で処理を行うと界面活性剤が膜表面に吸着し、透過水量が低下してしまう。しかし、本発明の複合半透膜は、高い透過水量と膜汚染物質に対する高い脱離性を持つため、安定した性能を発現することが可能である。
ここで、本発明の複合半透膜は、膜汚染物質に対する脱離性が高い。すなわち、25℃、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/lである水溶液を1.55MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量をF3とし、続いてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを100mg/lの濃度となるように前記水溶液に加えて1時間ろ過後、NaCl濃度が500mg/lである水溶液で1時間洗浄したときの透過水量をF4としたとき、F4/F3の値が0.85以上であることが好ましい。さらに好ましくは0.90以上である。このような複合半透膜を用いることにより、膜の表面にファウリングなどが生じた際にも、NaCl濃度が500mg/l以上の水溶液で洗浄することにより、膜と汚染物質の相互作用を抑制する効果があることから、容易に脱離することができる。従って、下水の高度処理等に用いても、長期間安定して運転することが可能となる。
なお、本発明の複合半透膜の分離機能層の表面を架橋重合体で被覆した場合は、上記透過水量F3は前述の透過水量F2と同一となる。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
(NaCl除去率)
複合半透膜に、温度25℃、pH7、塩化ナトリウム濃度2,000ppmに調整した評価水を操作圧力1.55MPaで供給して膜ろ過処理を行なった。供給水および透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で測定して、それぞれの実用塩分、すなわちNaCl濃度を得た。こうして得られたNaCl濃度および下記式に基づいて、NaCl除去率を算出した。
NaCl除去率(%)=100×{1−(透過水中のNaCl濃度/供給水中のNaCl濃度)}
(透過水量)
前項の試験において、供給水(NaCl水溶液)の膜透過水量を測定し、膜面1平方メートル当たり、1日の透水量(立方メートル)に換算した値を膜透過流束(m/m/d)とした。
なお、製膜時の透過水量評価においては、分離機能層表面が架橋重合体により被覆される場合は、被覆される前の複合半透膜を用いて、25℃、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/lである水溶液を1.55MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量をF1とし、架橋重合体により被覆された後の透過水量をF2とし、F2/F1の値を算出した。
洗浄後の透過水量評価においては、25℃において、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/lである水溶液を1.55MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量をF3とし、続いてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを100mg/lの濃度となるように水溶液に加えて1時間ろ過後、NaCl濃度が500mg/lである水溶液で1時間洗浄したときの透過水量をF4とし、F4/F3の値を算出した。
(多孔性支持層厚み)
多孔性支持層が形成される前の基材の厚み、および完成した複合半透膜の厚みを尾崎製作所株式会社製PEACOCKデジタルシックネスゲージにより測定して、その差を多孔性支持層厚みとした。基材の厚みおよび複合半透膜の厚みは、それぞれ幅方向に20点測定して平均値を算出した。
多孔性支持層厚み(μm)=支持膜厚み(μm)−基材厚み(μm)
(ゼータ電位)
複合半透膜を超純水で洗浄し、平板試料用セルに、複合半透膜の分離機能層面がモニター粒子溶液に接するようにセットし、大塚電子株式会社製電気泳動光散乱光度計(ELS−8000)により測定した。モニター粒子溶液としては、pH6、pH10、またはpH3にそれぞれ濃度調整したNaCl水溶液にポリスチレンラテックスのモニター粒子を分散させた測定液を用いた。
各測定液を用い、分離機能層の表面ゼータ電位A(pH6、NaCl10mM)、表面ゼータ電位B(pH6、NaCl1mM)、表面ゼータ電位C(pH3、NaCl1mM)、表面ゼータ電位D(pH10、NaCl1mM)をそれぞれ測定した。
(官能基量)
ポリアミド分離機能層中の官能基量は、複合半透膜から基材を剥離し、ポリアミド分離機能層と多孔性支持層を得た後、多孔性支持層をジクロロメタンで溶解・除去し、ポリアミド分離機能層を得た。得られたポリアミド分離機能層をDD/MAS−13C固体NMR法により測定を行い、各官能基の炭素ピークまたは各官能基が結合している炭素ピークの積分値の比較から各官能基量を算出した。
(自乗平均面粗さ)
複合半透膜を超純水で洗浄し、風乾させたものを、1cm角に切り出し、スライドグラスに両面テープで貼り付け、分離機能層の自乗平均面粗さ(RMS)を、原子間力顕微鏡(Nanoscope IIIa:デジタル・インスツルメンツ社)を用い、タッピングモードで測定した。カンチレバーはVeeco Instruments NCHV−1を用い、常温常圧下で測定した。スキャンスピードは1Hz、サンプリング点数は512ピクセル四方であった。解析ソフトはGwyddionを用いた。測定結果について、X軸およびY軸ともに1次元のベースライン補正(傾き補正)を行った。
(通気度)
通気度は、JIS L1096(2010)に基づき、フラジール形試験機によって測定した。基材を200mm×200mmの大きさに切り出し、フラジール形試験機に取り付け、傾斜形気圧計が125Paの圧力になるように吸込みファンおよび空気孔を調整し、このときの垂直形気圧計の示す圧力と使用した空気孔の種類から通気度を求めた。フラジール形試験機は、カトーテック株式会社製KES−F8−AP1を使用した。
(複合半透膜の作製)
(比較例1)
抄紙法で製造されたポリエステル繊維からなる不織布(通気度1.0cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.0重量%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液を室温(25℃)でキャストした後、ただちに純水中に5分間浸漬することによって、多孔性支持層の厚みが40μmである支持膜を作製した。
次に、この支持膜をメタフェニレンジアミンの3.5重量%水溶液に浸漬した後、余分な水溶液を除去し、さらにn−デカンにトリメシン酸ハロゲン化物を0.14重量%となるように溶解した溶液を多孔性支持層の表面が完全に濡れるように塗布した。次に膜から余分な溶液を除去するために、膜を垂直にして液切りを行って、送風機を使い20℃の空気を吹き付けて乾燥させた。その後、40℃の純水で洗浄し、複合半透膜を得た。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は、表1に示す値であった。
(実施例1)
比較例1で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に1分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、30秒間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(実施例2)
比較例1で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に1分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、1分間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(比較例2)
比較例1で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に2分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、4分間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(比較例3)
比較例1で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度99%、平均重合度500)0.5重量%を含む水溶液に2分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、4分間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(比較例4)
比較例1で得られた複合半透膜を、硫酸によりpH3に調整した0.3重量%の亜硝酸ナトリウム水溶液により30℃で1分間処理した。複合半透膜を亜硝酸水溶液から取り出した後、20℃の純水で洗浄して複合半透膜を得た。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(実施例3)
比較例4で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に1分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、45秒間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(実施例4)
比較例4で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に1分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、1分間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(比較例5)
比較例4で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に2分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、3分間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(実施例5)
比較例4で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)1重量%を含む80℃水溶液に2分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、1分間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(比較例6)
比較例1で得られた複合半透膜を硫酸によりpH3に調整した0.4重量%の亜硝酸ナトリウム水溶液により30℃で1分間処理した。複合半透膜を亜硝酸水溶液から取り出した後、アニリン0.1%水溶液に30℃で1分間浸漬させた。続いて0.1重量%の亜硫酸ナトリウム水溶液に2分間浸漬した。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(実施例6)
比較例6で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に1分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、30秒間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(実施例7)
比較例6で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に1分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、30秒間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
(比較例7)
比較例6で得られた複合半透膜をポリビニルアルコール(けん化度88%、重量平均分子量2,000)0.5重量%と、グルタルアルデヒド0.2重量%とを含む水溶液に、酸触媒として塩酸を0.1モル/リットルとなるように添加した水溶液に2分間浸漬した。垂直で1分間保持し余分な液を切った後に熱風乾燥機で90℃、3分間乾燥して、分離機能層がポリビニルアルコールでコーティングされた複合半透膜を得た。複合半透膜は、評価前に10%イソプロパノール水溶液に10分間浸漬し親水化処理を行った。このようにして得られた複合半透膜を評価したところ、膜性能は表1に示す値であった。
以上のように、本発明の複合半透膜は、高い透過水量と膜汚染物質に対する高い脱離性を持ち、長期間安定した性能を維持することができる。
Figure 2014133132
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。本出願は、2013年2月28日出願の日本特許出願(特願2013−39605)および2013年2月28日出願の日本特許出願(特願2013−39648)に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明の複合半透膜を用いれば、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的にあった水を得ることができる。本発明の複合半透膜は、特に、かん水または海水の脱塩に好適に用いることができる。

Claims (11)

  1. 基材および多孔性支持層を含む支持膜と、前記多孔性支持層上に設けられた分離機能層とを備える複合半透膜であって、
    pH6、NaCl10mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Aが±15mV以内であり、かつ
    pH6、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Bと、前記表面ゼータ電位Aとの電位差が±10mV以上である複合半透膜。
  2. 前記分離機能層の表面の自乗平均面粗さが60nm以上である請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記分離機能層が、多官能アミンと多官能酸ハロゲン化物との重合反応により得られたポリアミドから形成される請求項1または請求項2に記載の複合半透膜。
  4. pH3、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Cと、pH10、NaCl1mMの測定条件における前記分離機能層の表面ゼータ電位Dとの電位差が、40mV以下である請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  5. 前記分離機能層がアミノ基およびアミド基を含み、アミノ基のモル当量/アミド基のモル当量の比が0.2以上である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  6. 前記分離機能層がアミド基、アゾ基およびフェノール性水酸基を有し、フェノール性水酸基/アミド基の比が0.1以下である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  7. 前記分離機能層の表面が架橋重合体により被覆されている請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  8. 前記架橋重合体が親水性化合物の架橋体である請求項7に記載の複合半透膜。
  9. 前記架橋重合体が、前記分離機能層の表面と共有結合を形成している請求項7または請求項8に記載の複合半透膜。
  10. 前記分離機能層の表面が前記架橋重合体により被覆される前の複合半透膜を用いて、25℃、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/lである水溶液を1.55MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量をF1とし、前記分離機能層の表面が前記架橋重合体により被覆された後の透過水量をF2としたとき、F2/F1の値が0.80以上である請求項7〜請求項9のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  11. 25℃において、pH6.5、NaCl濃度が2,000mg/lである水溶液を1.55MPaの圧力で1時間ろ過したときの透過水量をF3とし、続いてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテルを100mg/lの濃度となるように前記水溶液に加えて1時間ろ過後、NaCl濃度が500mg/lである水溶液で1時間洗浄したときの透過水量をF4としたとき、F4/F3の値が0.85以上である請求項1〜請求項10のいずれか1項に記載の複合半透膜。
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