JP2023050015A - 複合半透膜及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】多様な汚れ物質を含む原水に対し、運転中における透水性保持率に優れる複合半透膜を提供する。【解決手段】多孔性支持層上に位置する分離機能層を備える複合半透膜であって、前記分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、前記分離機能層は、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子を2種以上含み、前記分離機能層の表面から200nmまでの正電荷性官能基密度Dwと負電荷性官能基密度Dbが以下(a)~(c)を満たし、かつ前記分離機能層の表面のpH7、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-10mV以上10mV以下であることを特徴とする複合半透膜。(a)Dw>0.30×10-9mol/cm2(b)Db>0.30×10-9mol/cm2(c)0.9<Dw/Db<1.1【選択図】なし

Description

本発明は、液状混合物の選択的分離に有用な複合半透膜に関する。本発明によって得られる複合半透膜は、例えば海水またはかん水の淡水化に好適に用いることができる。
混合物の分離に関して、溶媒(例えば水)に溶解した物質(例えば塩類)を除くための技術には様々なものがある。近年、省エネルギーおよび省資源のためのプロセスとして膜分離法の利用が拡大している。
膜分離法に使用される膜には、精密ろ過膜、限外ろ過膜、ナノろ過膜、逆浸透膜などがある。これらの膜は、例えば海水、かん水、有害物を含んだ水などから飲料水を得ること、または工業用超純水の製造、排水処理、有価物の回収などに用いられている。
現在市販されている逆浸透膜およびナノろ過膜の大部分は複合半透膜であり、微多孔性支持膜上にゲル層とポリマーを架橋した活性層を有するものと、微多孔性支持膜上でモノマーを重縮合した活性層を有するものとの2種類がある。
なかでも、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との重縮合反応によって得られる架橋ポリアミドからなる分離機能層を多孔性支持膜上に被覆して得られる複合半透膜(特許文献1)は、透水性および除去性の高い分離膜として広く用いられている。
一方、これらの膜は原水を連続的に透過することで、原水中の汚れ成分(ファウラント)が膜面に付着し、透過水量や選択分離性を低下させる課題がある。
複合半透膜の耐汚れ性(耐ファウリング性)を向上させた膜として、酸性基を含む親水性高分子を前記分離機能層表面にアミド結合で導入する方法(特許文献2)が開示されている。
日本国特開2001-79372号公報 国際公開第2015/46582号
しかしながら、これらの膜を用いて極度に濁質濃度の高い原水や多様な汚れ物質を含有する原水をろ過する場合には、親水性高分子の水和量が低下しやすく、これにより耐ファウリング性が低下してしまうという課題がある。
上記課題を解決するための本発明は、以下1~7の構成を包含する。
1.多孔性支持層上に位置する分離機能層を備える複合半透膜であって、
前記分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、
前記分離機能層は、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子を2種以上含み、
前記分離機能層の表面から200nmまでの正電荷性官能基密度Dwと負電荷性官能基密度Dbが以下(a)~(c)を満たし、かつ前記分離機能層の表面のpH7、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-10mV以上10mV以下である、複合半透膜。
(a) Dw>0.30×10-9mol/cm
(b) Db>0.30×10-9mol/cm
(c) 0.9<Dw/Db<1.1
2.前記親水性高分子は、正電荷性官能基を有する親水性高分子及び負電荷性官能基を有する親水性高分子をそれぞれ1種以上含む合計2種以上である、前記1に記載の複合半透膜。
3.前記分離機能層表面のpH3、NaCl10mMにおけるゼータ電位が30mV以上である、前記1または2に記載の複合半透膜。
4.前記分離機能層表面のpH11、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-30mV以下である、前記1から3のいずれか1に記載の複合半透膜。
5.前記正電荷性官能基がアミノ基を含み、前記負電荷性官能基がカルボキシ基を含む、前記1から4のいずれか1に記載の複合半透膜。
6.多孔性支持層上に設けられた分離機能層を備える複合半透膜の製造方法であって、
前記多孔性支持層上に界面重合により架橋ポリアミドを含む層を形成する工程と、
前記架橋ポリアミドを含む層と、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Aとを結合する工程と、
前記親水性高分子Aとは異なる種類のエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を前記親水性高分子Aと結合させる工程と、
を含む、複合半透膜の製造方法。
7.前記親水性高分子Aと前記親水性高分子Bは互いに相反する荷電性基を有する、前記6に記載の複合半透膜の製造方法。
本発明の複合半透膜は、分離機能層上の正電荷性官能基密度と負電荷性官能基密度が適切に制御されていることで、例えば、ノニオン性、アニオン性、カチオン性である多様なファウラントに対して優れた耐ファウリング性を示すことができる。
図1は、分離機能層の厚みの測定方法を模式的に示す図である。 図2は、分離機能層と水との接触角の測定方法を模式的に示す図である。
(1)複合半透膜
以下に述べる複合半透膜は、多孔性支持層と、多孔性支持層上に位置する分離機能層とを備える。
(1-1)分離機能層
(1-1-1)組成
本発明の実施形態に係る複合半透膜において、実質的にイオン等の分離性能を有するのは、分離機能層である。
本発明の実施形態における分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜を含有する。主成分とは分離機能層の成分のうち、50重量%以上を占める成分を指す。分離機能層は、架橋ポリアミドを50重量%以上含むことにより、高い除去性能を発現することができる。また、分離機能層における架橋ポリアミドの含有率は80重量%以上であることが好ましく、90重量%以上であることがより好ましい。
分離機能層を構成する架橋ポリアミドは、例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応により形成することができる。ここで、多官能性アミンまたは多官能性酸ハロゲン化物の少なくとも一方が3官能以上の化合物を含んでいることが好ましい。
分離機能層の厚みは、十分な分離性能および透過水量を得るために、例えば0.01~1μmの範囲内、好ましくは0.1~0.5μmの範囲内である。分離機能層の厚みは、透過型電子顕微鏡(TEM)でひだ構造の断面を撮影し、断面写真を画像解析ソフトに読み込んで解析を行うことができる。具体的には、分離機能層の凸部5個を選定し、凸部高さの上部から9割までの範囲の中から各凸部について10点の凸部分離機能層の厚さを測定し、計50点の相加平均値を求めることにより測定できる。
ここで分離機能層の凸部とは、10点平均面粗さの5分の1以上の高さの凸部のことを言う。10点平均面粗さとは、次のような算出方法で得られる値である。まず電子顕微鏡により、膜面に垂直な方向の断面を観察する。観察倍率は10,000~100,000倍が好ましい。得られた断面画像には、図1に示すように、分離機能層1の表面が、凸部と凹部が連続的に繰り返されるひだ構造の曲線として表れる。この曲線について、ISO4287:1997に基づき定義される粗さ曲線を求める。上記粗さ曲線の平均線Xの方向に2.0μmの幅で断面画像を抜き取る。
なお、平均線とは、ISO4287:1997に基づき定義される直線であり、測定長さにおいて、平均線と粗さ曲線とで囲まれる領域の面積の合計が平均線の上下で等しくなるように描かれる直線である。
ここで、多官能性アミンとは、一分子中に少なくとも2個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有し、そのアミノ基のうち少なくとも1つは第一級アミノ基であるアミンをいう。多官能性アミンとしては、例えば、2個のアミノ基がオルト位またはメタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、キシリレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、3-アミノベンジルアミン、4-アミノベンジルアミンなどの多官能芳香族アミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミンなどの脂肪族アミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、4-アミノピペリジン、4-アミノエチルピペラジンなどの脂環式多官能アミン等を挙げることができる。
なかでも、膜の選択分離性および透過性、耐熱性を考慮すると、多官能性アミンは、一分子中に2~4個の第一級アミノ基および/または第二級アミノ基を有する多官能芳香族アミンであることが好ましい。このような多官能芳香族アミンとしては、例えば、m-フェニレンジアミン、p-フェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン等が好適に用いられる。なかでも、入手の容易性または取り扱いのしやすさから、m-フェニレンジアミン(以下、m-PDAと記す)を用いることがより好ましい。
これらの多官能性アミンは、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。2種以上を同時に用いる場合、上記アミン同士を組み合わせてもよく、上記アミンと、一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとを組み合わせてもよい。一分子中に少なくとも2個の第二級アミノ基を有するアミンとして、例えば、ピペラジン、1,3-ビスピペリジルプロパン等を挙げることができる。
多官能性酸ハロゲン化物とは、一分子中に少なくとも2個のハロゲン化カルボニル基を有する酸ハロゲン化物をいう。例えば、3官能酸ハロゲン化物としては、例えば、トリメシン酸クロリド、1,3,5-シクロヘキサントリカルボン酸トリクロリド、1,2,4-シクロブタントリカルボン酸トリクロリドなどを挙げることができる。
2官能酸ハロゲン化物としては、例えば、ビフェニルジカルボン酸ジクロリド、アゾベンゼンジカルボン酸ジクロリド、テレフタル酸クロリド、イソフタル酸クロリド、ナフタレンジカルボン酸クロリドなどの芳香族2官能酸ハロゲン化物、アジポイルクロリド、セバコイルクロリドなどの脂肪族2官能酸ハロゲン化物、シクロペンタンジカルボン酸ジクロリド、シクロヘキサンジカルボン酸ジクロリド、テトラヒドロフランジカルボン酸ジクロリドなどの脂環式2官能酸ハロゲン化物等を挙げることができる。
多官能性アミンとの反応性を考慮すると、多官能性酸ハロゲン化物は多官能性酸塩化物であることが好ましく、また、膜の選択分離性、耐熱性を考慮すると、一分子中に2~4個の塩化カルボニル基を有する多官能性芳香族酸塩化物であることがより好ましい。なかでも、入手の容易性または取り扱いのしやすさの観点から、トリメシン酸クロリドを用いるとさらに好ましい。これらの多官能性酸ハロゲン化物は、単独で用いても、2種以上を同時に用いてもよい。
これら分離機能層において、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜に対し、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子を結合させることで、分離機能層の、水中での水和水量を増大させられる。これにより、原水中の汚れ物質(ファウラント)が分離機能層に付着すること(ファウリング)による透水性低下の抑制、すなわち耐ファウリング性を向上させることが可能となることが知られている。ここで耐ファウリング性とは、ファウリングを抑制することと、ファウリングが起きたとしても性能低下を小さく抑えることとのいずれをも含み得る。
本発明者らは鋭意検討の結果、分離機能層がエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子を2種以上含み、前記分離機能層の表面から200nmまでの正電荷性官能基密度Dwと負電荷性官能基密度Dbが以下(a)~(c)を満たし、かつ分離機能層の表面のpH7、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-10mV以上10mV以下である場合、多様な種類のファウラントに対して優れた耐ファウリング性を付与できることを見出した。
(a) Dw>0.30×10-9mol/cm
(b) Db>0.30×10-9mol/cm
(c) 0.9<Dw/Db<1.1
上記正電荷性官能基密度Dw(以下、正荷電性基密度ともいう。)が0.30×10-9mol/cmより大きいことで、分離機能層が、安定した耐ファウリング性付与に十分な量の水和水を保持できるだけの正電荷性官能基(以下、正荷電性基ともいう。)を有する親水性高分子を含有していることを示し、上記負電荷性官能基密度Db(以下、負荷電性基密度ともいう。)が0.30×10-9mol/cmより大きいことで、分離機能層が、安定した耐ファウリング性付与に十分な量の水和水を保持できるだけの負電荷性官能基(以下、負荷電性基ともいう。)を有する親水性高分子を含有していることを示す。
かつ、これら相反する荷電性基の密度の比が0.9より大きく、1.1未満であることで、多様なイオン状態のファウラントに対しても効果的に耐ファウリング性を発現することができる。そして、本発明者らは、その際の分離機能層の表面のpH7、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-10mV以上10mV以下となることを明らかとした。
上記エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子は正荷電性基を有する親水性高分子、負荷電性基を有する親水性高分子をそれぞれ1種以上含む合計2種以上であることが好ましい。
正荷電性基を有する親水性高分子としては、例えばポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリアミドアミンデンドリマー、ポリアミノ酸、ポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリジアリルアルキルアミン、ポリジアリルアミン及びキトサン、ならびにこれらの塩が好ましい。これらの中でも特に汎用性、合成のしやすさという点から、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアミン、ポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、ポリジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミド、ポリジアリルアルキルアミン、ポリジアリルアミン及びキトサン、ならびにこれらの塩が好ましい。
負荷電性基を有する親水性高分子としては、例えば、負荷電性基を有するモノマーを含んで構成される親水性高分子が挙げられる。負荷電性基としては、例えばカルボキシ基、ホスホン酸基、スルホン酸基等が挙げられる。カルボキシ基を有するモノマーとして、以下のものが例示される。マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、2-(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリト酸および対応する無水物、10-メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N-(2-ヒドロキシ-3-メタクリロイルオキシプロピル)-N-フェニルグリシンおよび4-ビニル安息香酸等が挙げられ、中でも汎用性、共重合性の観点から、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸が好ましい。
ホスホン酸基を有するモノマーとしては、ビニルホスホン酸、4-ビニルフェニルホスホン酸、4-ビニルベンジルホスホン酸、2-メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2-メタクリルアミドエチルホスホン酸、4-メタクリルアミド-4-メチル-フェニル-ホスホン酸、2-[4-(ジヒドロキシホスホリル)-2-オキサ-ブチル]-アクリル酸および2-[2-ジヒドロキシホスホリル)-エトキシメチル]-アクリル酸-2,4,6-トリメチル-フェニルエステル等が例示される。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、例えばビニルスルホン酸、4-ビニルフェニルスルホン酸または3-(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸等が挙げられる。
中でも、汎用性、共重合性の観点から、負荷電性基を有する親水性高分子はカルボキシ基を有するモノマーを含んで構成されることが好ましく、特にアクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸から選択される少なくとも1種の化合物に由来するモノマーユニットを含有することが好ましい。
これら親水性高分子を用いて得られる分離機能層は、正電荷性官能基としてアミノ基を含み、負電荷性官能基としてカルボキシ基を含むことが好ましい。
これら親水性高分子の重量平均分子量はそれぞれ500以上であることが望ましい。重量平均分子量が500以上であると、分離機能層が、安定した耐ファウリング性付与に十分な量の水和水を含有することができる。重量平均分子量は2,000以上がより好ましい。重量平均分子量の上限は特に限定されないが、ポリマー溶液の取り扱いの容易さの観点から、2,000,000以下であることが好ましい。
エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子は、分離機能層の表層に含有されることが好ましい。例えば、分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜上に、親水性高分子を含む層を備える構成が好ましい。分離機能層が架橋ポリアミドを主成分とする薄膜上に親水性高分子を含む層を備えることは、例えば分離機能層と水との接触角が40度以下となることから確認できる。ここでの接触角とは、静的接触角を指し、分離機能層表面の濡れやすさ、親水性を意味し、接触角が小さいほど親水性が高いことを意味する。
図2を用いて分離機能層と水との接触角の測定方法を模式的に説明する。水2を分離機能層1の表面に滴下した際の状態は、図2のようになる。水を分離機能層表面に滴下した際、「ヤングの式」と呼ばれる下記式が成り立つ。
γ=γcosθ+γSL
ここでγは分離機能層の表面張力、γは水の表面張力、γSLは分離機能層と水の界面張力である。この式を満たすときの水2の接線と分離機能層1表面とのなす角θを接触角という。接触角は時間の経過と共に徐々に小さい値へと変化する。水の分離機能層表面への着滴から接触角を測定するまでの時間は25秒以内であり、好ましくは15秒以内である。
エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子のうち、少なくとも1種は架橋ポリアミドを主成分とする薄膜と化学結合されていることが好ましい。これによって親水性高分子が架橋ポリアミドを主成分とする薄膜に対してより安定的に固定される。親水性高分子と架橋ポリアミドを主成分とする薄膜との間の化学結合は、共有結合であることが好ましく、アミド結合であることがより好ましい。アミド結合は、各々の層を構成するポリマーの保有する官能基を使用できる。
また、種類の異なる親水性高分子同士も化学結合されていることが好ましく、共有結合、特にアミド結合であることが好ましい。
分離機能層に2種以上含有される、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子のうち、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜と結合していない1種以上の親水性高分子は、ナノ粒子体を形成していることが好ましい。ナノ粒子体を形成していることで、分離機能層と結合している親水性高分子のポリマー鎖の内部に侵入することを抑制し、それぞれの親水性高分子同士のイオン結合による水和水量低下を最大限抑制できるためである。
前記ナノ粒子体の平均粒径は、5nm以上であれば親水性高分子同士のイオン結合による水和水量低下抑制に効果があり、好ましくは5nm以上50nmの範囲である。平均粒径が100nm以上となると複合半透膜の透水性低下に影響を与えてしまう場合があるため、平均粒径は100nm以下が好ましい。
前記ナノ粒子は例えばあらかじめ片方の親水性高分子を他の種類のポリマーと共重合して調製することが可能である。その際のナノ粒子体の平均粒径は、粒度分布計で測定可能である。ここで平均粒径とは、粒度分布計で測定される、体積基準の粒度分布におけるメジアン径(D50)を意味する。
(1-1-2)特性
本発明の実施形態に係る複合半透膜は分離機能層の表面から200nmまでの正電荷性官能基密度Dwと負電荷性官能基密度Dbが以下(a)~(c)を満たし、かつ分離機能層の表面のpH7におけるゼータ電位が-10mV以上10mV以下である。
(a)Dw>0.30×10-9mol/cm
(b)Db>0.30×10-9mol/cm
(c)0.9<Dw/Db<1.1
(i)正電荷性官能基密度Dwと負電荷性官能基密度Db
本発明の実施形態において、正電荷性官能基密度Dwと負電荷性官能基密度Dbは例えばラザフォード後方散乱(RBS)測定によって定量可能である。RBSは試料中に高速イオンを照射し、試料中の原子核から受ける弾性散乱の散乱イオンエネルギーと収量から、試料深さ方向の元素組成を読み取る測定法である。
RBS測定を用い、正電荷性官能基密度Dwを読み取る方法としては以下の方法を用いることができる。まず、5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄する。さらに試料をpH3に調整したタングステン酸ナトリウム1×10-4M水溶液に30分浸漬する。その後遊離のタングステン酸を取り除くため、純水で5分ずつ浸漬洗浄する。
タングステン酸イオンは正電荷性官能基の対イオンとなる。したがって、得られた試料のRBS測定における表面付着タングステンの面密度(単位:1015atoms/cm)について、原子数をmolに換算して正荷電性基密度を導き出すことができる。
RBS測定を用い負電荷性官能基密度Dbを読み取る方法としては以下の方法を用いることができる。まず、5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄する。続いて、試料をメタノール50%水溶液中で16時間浸漬し、さらに試料をpH10に調整した硝酸バリウム1×10-4M水溶液に30分浸漬する。その後遊離のバリウムを取り除くため、メタノールで5分ずつ浸漬洗浄する。
バリウムイオンは負電荷性官能基の対イオンとなる。したがって、得られた試料のRBS測定における表面付着バリウムの面密度(単位:1015atoms/cm)について、原子数をmolに換算して負荷電性基密度を導き出すことができる。
(ii)分離機能層の表面のゼータ電位
ゼータ電位とは超薄膜層表面の正味の固定電荷の尺度である。本発明の実施形態において、薄膜層表面のゼータ電位は、電気移動度から、下記式(1)に示すヘルムホルツ・スモルコフスキー(Helmholtz-Smoluchowski)の式によって求めることができる。
ゼータ電位ζ=4πηU/ε (1)
(式(1)中、Uは電気移動度、εは溶液の誘電率、ηは溶液の粘度である)。
ここで、溶液の誘電率、粘度は、測定温度での文献値を使用できる。
通常ゼータ電位の測定は、大きさ20mm×30mmの膜試料を用い、電気泳動させるための標準粒子として、表面をヒドロキシプロピルセルロースでコーティングしたポリスチレン粒子(粒径520nm)を所定濃度に調整したNaCl水溶液に分散させて行うことができる。測定装置は例えば大塚電子製電気泳動光散乱光度計ELS-8000などが使用できる。
本発明の実施形態に係る複合半透膜は、分離機能層の表面ゼータ電位が、pH7、NaCl10mMの条件において測定されたときに-10mV以上10mV以下に制御されている。上述の(a)及び(b)をともに満たす条件において、ゼータ電位が上記範囲であることは、分離機能層の表面に相反する荷電性基がバランス良く存在することを意味する。これにより、多様なイオン状態のファウラントに対しても効果的に耐ファウリング性を発現することができる。
また、本発明の実施形態に係る複合半透膜は、pH3、NaCl10mMにおけるゼータ電位が30mV以上であることが好ましく、pH11、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-30mV以下であることが好ましい。
本発明の実施形態に係る複合半透膜における分離機能層の表面ゼータ電位は親水性高分子の組成により値が支配される。pH3、NaCl10mMにおけるゼータ電位が30mV以上となる親水性高分子の組成においては、正荷電基密度が耐ファウリング性を向上させるのに十分なものであることを意味する。また、pH11、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-30mV以下となる親水性高分子の組成においては、負荷電基密度が耐ファウリング性を向上させるのに十分なものであることを意味する。
(1-2)多孔性支持層
多孔性支持層は分離機能層形成の足場となり、それ自体は実質的にイオン等の分離性能を有さない。
多孔性支持層における孔のサイズや分布は特に限定されないが、例えば、均一で微細な孔、あるいは分離機能層が形成される側の表面からもう一方の面まで徐々に大きな微細孔をもち、かつ、分離機能層が形成される側の表面における微細孔の大きさが0.1nm以上100nm以下であるような多孔性支持層が好ましい。
多孔性支持層は、例えばポリエステル及び芳香族ポリアミドから選ばれる少なくとも一種からなる布帛である基材上に高分子重合体を流延することで、得ることができる。なお、以降、基材上に多孔性支持層が形成された構成について「支持膜」と称する場合がある。
多孔性支持層の素材にはポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニルポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーを単独であるいはブレンドして使用することができる。ここでセルロース系ポリマーとしては酢酸セルロース、硝酸セルロースなど、ビニルポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが使用できる。なかでも、多孔性支持層の素材としてはポリスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマー又はコポリマーが好ましい。多孔性支持層の素材としては、より好ましくは酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィドスルホン、又はポリフェニレンスルホンが挙げられ、さらに、これらの素材の中では化学的、機械的、熱的に安定性が高く、成型が容易であることからポリスルホンが一般的に好ましく使用される。
例えば、ポリスルホンのN,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFという。)溶液を、密に織ったポリエステル布あるいはポリエステル不織布の上に一定の厚さに流延し、それを水中で湿式凝固させることによって、表面の大部分が直径数10nm以下の微細な孔を有した支持膜を得ることができる。
上記の支持膜の厚みは、得られる複合半透膜の強度及びそれをエレメントにしたときの充填密度に影響を与える。支持膜の厚みは、十分な機械的強度及び充填密度を得るためには、30μm以上300μm以下の範囲内にあることが好ましく、より好ましくは100μm以上220μm以下の範囲内である。
多孔性支持層の形態は、走査型電子顕微鏡や透過型電子顕微鏡、原子間顕微鏡により観察できる。例えば走査型電子顕微鏡で観察するのであれば、基材から多孔性支持層を剥がした後、これを凍結割断法で切断して断面観察のサンプルとする。このサンプルに白金又は白金-パラジウム又は四塩化ルテニウム、好ましくは四塩化ルテニウムを薄くコーティングして3~15kVの加速電圧で高分解能電界放射型走査電子顕微鏡(UHR-FE-SEM)によって観察する。高分解能電界放射型走査電子顕微鏡は、株式会社日立製作所製S-900型電子顕微鏡などが使用できる。
多孔性支持層の厚みは、20μm以上100μm以下の範囲内にあることが好ましい。多孔性支持層の厚みが20μm以上であることで、良好な耐圧性が得られると共に、欠点のない均一な支持膜を得ることができるので、このような多孔性支持層を備える複合半透膜は、良好な塩除去性能を示すことができる。多孔性支持層の厚みが100μmを超えると、製造時の未反応物質の残存量が増加し、それにより透過水量が低下するとともに、耐薬品性が低下する場合がある。
(2)製造方法
(2-1)多孔性支持層の形成工程
多孔性支持層の形成工程は、基材に高分子溶液を塗布する工程及び溶液を塗布した前記基材を凝固浴に浸漬させて高分子を凝固させる工程を含む。
基材に高分子溶液を塗布する工程において、高分子溶液は、多孔性支持層の成分である高分子を、その高分子の良溶媒に溶解して調製する。
高分子溶液塗布時の高分子溶液の温度は、高分子としてポリスルホンを用いる場合、10℃以上60℃以下であることが好ましい。高分子溶液の温度がこの範囲内であれば、高分子が析出することがなく、高分子溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。その結果、アンカー効果により多孔性支持層が基材に強固に接合し、良好な支持膜を得ることができる。なお、高分子溶液の好ましい温度範囲は、用いる高分子の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
基材上に高分子溶液を塗布した後、凝固浴に浸漬させるまでの時間は、0.1秒以上5秒以下であることが好ましい。凝固浴に浸漬するまでの時間がこの範囲であれば、高分子を含む有機溶媒溶液が基材の繊維間にまで充分含浸したのち固化される。なお、凝固浴に浸漬するまでの時間の好ましい範囲は、用いる高分子溶液の種類や、所望の溶液粘度などによって適宜調整することができる。
凝固浴としては、一般的には水が使われるが、多孔性支持層の成分である高分子を溶解しないものであればよく、特に限定されない。凝固浴の組成によって得られる支持膜の膜形態が変化し、それによって得られる複合半透膜も変化する。凝固浴の温度は、-20℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは10℃以上50℃以下である。凝固浴の温度がこの範囲以内であれば、熱運動による凝固浴面の振動が激しくならず、膜形成後の膜表面の平滑性が保たれる。また温度がこの範囲内であれば凝固速度が適当で、製膜性が良好である。
次に、このようにして得られた支持膜を、膜中に残存する溶媒を除去するために熱水洗浄する。このときの熱水の温度は40℃以上100℃以下が好ましく、さらに好ましくは60℃以上95℃以下である。この範囲内であれば、支持膜の収縮度が大きくならず、透過水量が良好である。また、温度がこの範囲内であれば洗浄効果が十分である。
(2-2)分離機能層の形成工程
次に、複合半透膜を構成する分離機能層の形成工程を説明する。分離機能層の形成工程は、下記工程(A)、(B)及び(C)を含む。分離機能層の形成工程は、(A)、(B)、(C)の順に行われることが好ましい。
(A)多孔性支持層上に界面重合により架橋ポリアミドを含む層を形成する工程。
(B)前記架橋ポリアミドを含む層と、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Aとを結合する工程。
(C)前記親水性高分子Aとは異なる種類のエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を前記親水性高分子Aと結合させる工程。
(2-2-1)多孔性支持層上に界面重合により架橋ポリアミドを含む層を形成する工程(A)
工程(A)において、例えば、多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物との界面重縮合反応により、架橋ポリアミドを含む層を形成できる。多官能性アミンと多官能性酸ハロゲン化物の好ましい態様は上述と同様である。以下、多官能性アミンとして多官能芳香族アミンを用い、多官能性酸ハロゲン化物として多官能芳香族酸クロリドを用いる場合を例として工程(A)について説明する。
多官能芳香族酸クロリドを溶解する有機溶媒としては、水と非混和性のものであって、支持膜を破壊しないものであり、かつ、架橋芳香族ポリアミドの生成反応を阻害しないものであればいずれであってもよい。代表例としては、液状の炭化水素、トリクロロトリフルオロエタンなどのハロゲン化炭化水素が挙げられる。オゾン層を破壊しない物質であることや入手のしやすさ、取り扱いの容易さ、取り扱い上の安全性を考慮すると、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ヘプタデカン、ヘキサデカン、シクロオクタン、エチルシクロヘキサン、1-オクテン、1-デセンなどの単体あるいはこれらの混合物が好ましく用いられる。
多官能芳香族アミンを含有する水溶液(多官能芳香族アミン水溶液)や多官能芳香族酸クロリドを含有する有機溶媒溶液(多官能芳香族酸クロリド含有溶液)には、両成分間の反応を妨害しないものであれば、必要に応じて、アシル化触媒や極性溶媒、酸捕捉剤、界面活性剤、酸化防止剤等の化合物が含まれていてもよい。
界面重縮合を支持膜上で行うために、まず、多官能芳香族アミン水溶液で支持膜表面を被覆する。ここで、多官能芳香族アミンを含有する水溶液の濃度は、0.1重量%以上20重量%以下が好ましく、より好ましくは0.5重量%以上15重量%以下である。
多官能芳香族アミン水溶液で支持膜表面を被覆する方法としては、支持膜の表面がこの水溶液によって均一にかつ連続的に被覆されればよく、公知の塗布手段、例えば、水溶液を支持膜表面にコーティングする方法、支持膜を水溶液に浸漬する方法等で行えばよい。支持膜と多官能芳香族アミン水溶液との接触時間は、5秒以上10分以下の範囲内であることが好ましく、10秒以上3分以下の範囲内であるとさらに好ましい。次いで、過剰に塗布された水溶液を液切り工程により除去することが好ましい。液切りの方法としては、例えば膜面を垂直方向に保持して自然流下させる方法等がある。液切り後、膜面を乾燥させ、水溶液の水の全部あるいは一部を除去してもよい。
その後、多官能芳香族アミン水溶液で被覆した支持膜に、前述の多官能芳香族酸クロリド含有溶液を塗布し、界面重縮合により架橋芳香族ポリアミドを形成させる。界面重縮合を実施する時間は、0.1秒以上3分以下が好ましく、0.1秒以上1分以下であるとより好ましい。
多官能芳香族酸クロリド含有溶液における多官能芳香族酸クロリドの濃度は、特に限定されないが、低すぎると活性層である第1層形成が不十分となり欠点になる可能性があり、高すぎるとコスト面から不利になるため、例えば0.01重量%以上1.0重量%以下程度が好ましい。
次に、反応後に残留する有機溶媒は、液切り工程により除去することが好ましい。有機溶媒の除去は、例えば、膜を垂直方向に把持して過剰の有機溶媒を自然流下して除去する方法を用いることができる。この場合、垂直方向に把持する時間としては、1分以上5分以下であることが好ましく、1分以上3分以下であるとより好ましい。把持する時間が1分以上であることで目的の機能を有する架橋芳香族ポリアミドを得やすく、3分以下であることで有機溶媒の過乾燥による欠点の発生を抑制できるので、性能低下を抑制することができる。
(2-2-2)前記架橋ポリアミドを含む層と、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Aとを結合する工程(B)
工程(B)において、用いられるエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Aは正荷電性基を有するもの、負荷電性基を有するもののいずれでも良い。なお、本発明の効果を阻害しない範囲であれば、親水性高分子Aは正荷電性基と負荷電性基の両方を有するものであってもよい。
親水性高分子Aは重量濃度で0.001重量%以上1重量%以下の水溶液として使用するのが好ましい。濃度が0.001重量%以上であることで、比較的短時間で効率良く架橋ポリアミドを含む層上に結合することができる。また、親水性高分子Aの濃度が1重量%以下であることで、適度に薄い親水性高分子A層が形成されるので、透水量の低下が抑制される。
架橋ポリアミドを含む層と親水性高分子Aとの結合は、架橋ポリアミドを含む層と親水性高分子Aの水溶液が接触すればその方法は問われないが、多孔性支持層上に架橋ポリアミドを含む層を備えた膜を水溶液へ浸漬する方法や、架橋ポリアミドを含む層表面に水溶液を塗布する方法が挙げられる。
ここで、架橋ポリアミドを含む層と親水性高分子Aとの反応を促進する、すなわち両者を結合しやすくするために、種々の反応助剤(縮合促進剤)を利用することができる。縮合促進剤として、硫酸、4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM)、1-(3-ジメチルアミノプロピル)-3-エチルカルボジイミド塩酸塩、N,N’-ジシクロヘキシルカルボジイミド、N,N’-ジイソプロピルカルボジイミド、N,N’-カルボニルジイミダゾール、1,1’-カルボニルジ(1,2,4-トリアゾール)、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、1H-ベンゾトリアゾール-1-イルオキシトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、(7-アザベンゾトリアゾール-1-イルオキシ)トリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、クロロトリピロリジノホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、ブロモトリス(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロりん酸塩、3-(ジエトキシホスホリルオキシ)-1,2,3-ベンゾトリアジン-4(3H)-オン、O-(ベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-(N-スクシンイミジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロりん酸塩、O-(3,4-ジヒドロ-4-オキソ-1,2,3-ベンゾトリアジン-3-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-(2-オクトキシ-2-オキソエチル)ジメチルアンモニウム、S-(1-オキシド-2-ピリジル)-N,N,N’,N’-テトラメチルチウロニウムテトラフルオロほう酸塩、O-[2-オキソ-1(2H)-ピリジル]-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムテトラフルオロほう酸塩、{{[(1-シアノ-2-エトキシ-2-オキソエチリデン)アミノ]オキシ}-4-モルホリノメチレン}ジメチルアンモニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-クロロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、1-(クロロ-1-ピロリジニルメチレン)ピロリジニウムヘキサフルオロりん酸塩、2-フルオロ-1,3-ジメチルイミダゾリニウムヘキサフルオロりん酸塩、フルオロ-N,N,N’,N’-テトラメチルホルムアミジニウムヘキサフルオロりん酸塩、などが例として挙げられる。
架橋ポリアミドを含む層と親水性高分子Aの反応時間及び化合物の濃度は、使用する溶媒、縮合促進剤及び化合物の化学構造により適宜調整可能であるが、生産性の観点から、反応時間は24時間以内が好ましく、12時間以内がより好ましく、6時間以内がさらに好ましく、1時間以内が特に好ましい。
反応後に、得られる膜を熱水や酸水溶液、アルカリ水溶液で洗浄し残渣物を除去してもよい。
(2-2-3)前記親水性高分子Aとは異なる種類のエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を前記親水性高分子Aと結合させる工程(C)
工程(C)における親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を事前に調製する方法を例示する。なお、親水性高分子Bは親水性高分子Aと異なる種類のものである必要がある。さらに、親水性高分子Aと親水性高分子Bは互いに相反する荷電性基を有することが好ましい。
まず、親水性高分子Bとさらに異なる親水性高分子Cを混合した溶液を作製する。溶媒の種類としては例えば水が好ましい。
ここで親水性高分子Cは親水性高分子Aと同じ種類のものでもよく、異なっていてもよい。
水溶液中の親水性高分子Bと親水性高分子Cの濃度は、それぞれ0.001重量%以上0.1重量%以下であることが好ましく、さらに好ましくは0.005重量%以上0.05重量%以下である。濃度がこの範囲にあることで、適切なサイズのナノ粒子体を調製することができる。
また、親水性高分子Bが親水性高分子Cに対し重量濃度比で1.2倍以上10倍以下であることが好ましく、さらに好ましくは1.5倍以上3倍以下である。これにより、親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を調製することができる。
親水性高分子Bと親水性高分子Cは化学結合されていることが好ましい。これによってナノ粒子体の構造を安定化させることができる。親水性高分子Bと親水性高分子Cの間の化学結合は、共有結合であることが好ましく、アミド結合であることがより好ましい。
親水性高分子Bと親水性高分子Cとの反応を促進する、すなわち両者を結合しやすくするために種々の反応助剤(縮合促進剤)を利用することができ、具体的な例としては、工程(B)において前述したものが挙げられる。
親水性高分子Bと親水性高分子Cの反応時間は使用する溶媒、縮合促進剤及び化合物の化学構造により適宜調整可能であるが、生産性の観点から、反応時間は24時間以内が好ましく、12時間以内がより好ましく、6時間以内がさらに好ましく、1時間以内が特に好ましい。
このようにして得られる親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を、前記親水性高分子Aと結合させる方法としては、工程(B)の後に得られた膜の分離機能層、すなわち、架橋ポリアミドを含む層に親水性高分子Aが結合された状態のものに対し、親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を含有する溶液を用い工程(B)と同様の処理を行えばよい。すなわち、工程(B)の後に得られた膜の分離機能層と、親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を含有する溶液とが接触する方法であればよく、具体的には、工程(B)の後に得られた膜を、ナノ粒子体を含有する溶液へ浸漬する方法や、工程(B)の後に得られた膜の分離機能層表面にナノ粒子体を含有する溶液を塗布する方法が挙げられる。親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体は、前記親水性高分子Cとの反応溶液の状態のまま使用することができる。
(2-2-4)その他の工程
さらにこの後、架橋ポリアミドのアミノ基を他の官能基に変換する工程を備えてもよい。
特にアミノ基と反応してジアゾニウム塩又はその誘導体を生成する試薬に接触させ、官能基の変換を行うことが好ましい。アミノ基と反応してジアゾニウム塩又はその誘導体を生成する試薬としては、亜硝酸及びその塩、ニトロシル化合物などの水溶液が挙げられる。亜硝酸やニトロシル化合物の水溶液は気体を発生して分解する性質を持つため、亜硝酸塩と酸性溶液との反応によって亜硝酸を逐次生成するのが好ましい。一般に、亜硝酸塩は水素イオンと反応して亜硝酸(HNO)を生成するが、水溶液のpHが7以下、好ましくは5以下、さらに好ましくは4以下で効率よく生成する。なかでも、取り扱いの簡便性から水溶液中で塩酸又は硫酸と反応させた亜硝酸ナトリウムの水溶液が特に好ましい。
アミノ基と反応してジアゾニウム塩又はその誘導体を生成する試薬中の亜硝酸や亜硝酸塩の濃度は、好ましくは0.01重量%以上1重量%以下の範囲であり、より好ましくは0.05重量%以上0.5重量%以下の範囲である。0.01重量%以上の濃度であれば十分な効果が得られ、濃度が1重量%以下であれば溶液の取扱いが容易である。
亜硝酸水溶液の温度は15℃以上45℃以下であることが好ましい。15℃以上の温度であれば十分な反応時間が得られ、45℃以下であれば亜硝酸の分解が起こり難いため取り扱いが容易である。
亜硝酸水溶液との接触時間は、ジアゾニウム塩及びその誘導体のうち少なくとも一方が生成する時間であればよく、高濃度では短時間で処理が可能であるが、低濃度であると長時間必要である。そのため、上記濃度の溶液では10分間以内であることが好ましく、3分間以内であることがさらに好ましい。また、接触させる方法は特に限定されず、該試薬の溶液を塗布してもよく、該試薬の溶液に該複合半透膜を浸漬させてもよい。該試薬を溶かす溶媒は該試薬が溶解し、該複合半透膜が侵食されなければ、いかなる溶媒を用いてもかまわない。また、溶液には、アミノ基と試薬との反応を妨害しないものであれば、界面活性剤や酸性化合物、アルカリ性化合物などが含まれていてもよい。
次に、生成したジアゾニウム塩又はその誘導体の一部を異なる官能基へ変換する。ジアゾニウム塩又はその誘導体の一部は、例えば、水と反応することによりフェノール性水酸基へと変換される。また、塩化物イオン、臭化物イオン、シアン化物イオン、ヨウ化物イオン、フッ化ホウ素酸、次亜リン酸、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸イオン、芳香族アミン、硫化水素、チオシアン酸等を含む溶液と接触させると、対応した官能基へ変換される。また、芳香族アミンと接触させることでジアゾカップリング反応が起こり膜面に芳香族基を導入することが可能となる。なお、これらの試薬は単一で用いても、複数混合させて用いてもよく、異なる試薬に複数回接触させてもよい。
ジアゾカップリング反応が生じる試薬としては、電子豊富な芳香環又は複素芳香環を持つ化合物が挙げられる。電子豊富な芳香環又は複素芳香環を持つ化合物としては、無置換の複素芳香環化合物、電子供与性置換基を有する芳香族化合物、及び電子供与性置換基を有する複素芳香環化合物が挙げられる。電子供与性の置換基としては、アミノ基、エーテル基、チオエーテル基、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基などが挙げられる。上記化合物の具体的な例としては、例えば、アニリン、オルト位、メタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したメトキシアニリン、2個のアミノ基がオルト位、メタ位、パラ位のいずれかの位置関係でベンゼン環に結合したフェニレンジアミン、1,3,5-トリアミノベンゼン、1,2,4-トリアミノベンゼン、3,5-ジアミノ安息香酸、3-アミノベンジルアミン、4-アミノベンジルアミン、スルファニル酸、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、1-アミノナフタレン、2-アミノナフタレン、又はこれらの化合物のN-アルキル化物が挙げられる。
少なくとも工程(a)、(b)、(c)により得られた複合半透膜は、好ましくは、25℃以上90℃以下の範囲内で、1分以上60分以下熱水で洗浄処理することで、複合半透膜の溶質阻止性能や透過水量をより一層向上させることができる。この洗浄処理は工程(a)の後であれば、何度行ってもよい。ただし、熱水の温度が高すぎた場合、熱水洗浄処理後に急激に冷却すると耐薬品性が低下する。そのため、熱水洗浄は、25℃以上60℃以下の範囲内で行うことが好ましい。また、61℃以上90℃以下の高温で熱水洗浄処理する際には、熱水洗浄処理後は、緩やかに冷却することが好ましい。例えば、段階的に低い温度の熱水と接触させて室温まで冷却させる方法等がある。
また、上記の熱水洗浄する工程において、熱水中に酸又はアルコールが含まれていてもよい。酸又はアルコールを含むことで、架橋芳香族ポリアミドにおける水素結合の形成をより制御しやすくなる。酸としては、塩酸、硫酸、リン酸などの無機酸や、クエン酸、シュウ酸などの有機酸などが挙げられる。酸の濃度は、pH2以下となるように調整することが好ましく、pH1以下であるとより好ましい。アルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどの1価アルコールや、エチレングリコール、グリセリンなどの多価アルコールが挙げられる。アルコールの濃度は、好ましくは10重量%以上100重量%以下であり、より好ましくは10重量%以上50重量%以下である。
以上で例示された製造方法により得られる複合半透膜において、分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜を含み、かかる薄膜に親水性高分子Aが結合され、かつ、親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体が、薄膜に結合された親水性高分子Aに結合した構成になると考えられる。換言すれば、分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜上に、親水性高分子を含む層が形成された構成を有し、当該親水性高分子を含む層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜に結合された親水性高分子Aと、親水性高分子Aに結合された、親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体とを含むものと考えられる。
分離機能層がこのような親水性高分子を含む層を有することで、分離機能層の表面から200nmまでの各荷電性基密度が上述の(a)~(c)を満たし、かつ、pH7、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-10mV以上10mV以下となるものと考えられる。一般に、相反する荷電性基同士がイオン結合すると、それぞれの荷電性基が打ち消し合い、荷電は中和される。すなわち、単に相反する荷電性基を分離機能層の表層に混在させるのみでは、これらがイオン結合し、中和しやすい状態となる。この場合、正荷電性基密度と負荷電性基密度の両方を所定値以上とすること、特に、(a)及び(b)を同時に達成することは困難と考えられる。しかしながら、本発明においては、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜に結合された1種以上の親水性高分子と、他の1種以上の親水性高分子を主成分とするナノ粒子体とを含む構成であることで、薄膜に結合された親水性高分子と、ナノ粒子体である親水性高分子とがそれぞれ含有する荷電性基が中和してしまうのを抑制できると考えられる。これにより、上述のような、分離機能層上の正電荷性官能基密度と負電荷性官能基密度が適切に制御された複合半透膜が得られるものと推測される。
(3)複合半透膜の利用
本発明の実施形態に係る複合半透膜は、プラスチックネットなどの原水流路材と、トリコットなどの透過水流路材と、必要に応じて耐圧性を高めるためのフィルムと共に、多数の孔を穿設した筒状の集水管の周りに巻回され、スパイラル型の複合半透膜エレメントとして好適に用いられる。さらに、このエレメントを直列又は並列に接続して圧力容器に収納した複合半透膜モジュールとすることもできる。
また、上記の複合半透膜やそのエレメント、モジュールは、それらに原水を供給するポンプや、その原水を前処理する装置などと組み合わせて、流体分離装置を構成することができる。この分離装置を用いることにより、原水を飲料水などの透過水と膜を透過しなかった濃縮水とに分離して、目的に合った水を得ることができる。
流体分離装置の操作圧力は高い方が塩除去率は向上するが、運転に必要なエネルギーも増加すること、また、複合半透膜の耐久性を考慮すると、複合半透膜に被処理水を透過する際の操作圧力は0.1MPa以上10MPa以下が好ましい。供給水温度は高くなると塩除去率が低下するが、低くなるに従い膜透過流束も減少するので、5℃以上45℃以下が好ましい。また、供給水pHは、高くなると海水などの高塩濃度の供給水の場合、マグネシウムなどのスケールが発生する恐れがあり、また、高pH運転による膜の劣化が懸念されるため、中性領域での運転が好ましい。
本発明の実施形態に係る複合半透膜によって処理される原水としては、例えば海水、かん水、排水等の500mg/L~100g/LのTDS(Total Dissolved Solids:総溶解固形分)を含有する液状混合物が挙げられる。一般に、TDSは総溶解固形分量を指し、「重量÷体積」あるいは「重量比」で表される。定義によれば、0.45ミクロンのフィルターで濾過した溶液を39.5~40.5℃の温度で蒸発させた残留物の重さから算出できるが、より簡便には実用塩分(S)から換算する。
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
[1.特性の測定]
(NaCl除去率)
複合半透膜に、温度25℃、pH7、塩化ナトリウム濃度2,000ppmに調整した評価水を操作圧力1.55MPaで供給して膜ろ過処理を行なった。供給水及び透過水の電気伝導度を東亜電波工業株式会社製電気伝導度計で測定して、それぞれの実用塩分、すなわちNaCl濃度を得た。こうして得られたNaCl濃度及び下記式に基づいて、NaCl除去率を算出した。ここで、塩化ナトリウム濃度(ppm)は質量基準の濃度を意味する。
NaCl除去率(%)=100×{1-(透過水中のNaCl濃度/供給水中のNaCl濃度)}
(透過水量)
前項の試験において、供給水(NaCl水溶液)の膜透過水量を測定し、膜面1平方メートル当たり、1日の透水量(立方メートル)に換算した値を膜透過流束(m/m/日)とした。なお、膜性能の測定は以下のように行った。
初めに、25℃、pH7、NaCl濃度が2,000mg/Lである水溶液を1.55MPaの圧力で2時間ろ過したときの透過水量を測定し、初期透過水量(F1)とした。続いてポリオキシエチレン(10)オクチルフェニルエーテル(POEOPE)を150mg/Lの濃度となるように水溶液に加えて2時間ろ過したときの透過水量をF2、ドデシル硫酸ナトリウム(DSS)を50mg/Lの濃度となるように水溶液に加えて2時間ろ過したときの透過水量をF3、ドデシルトリメチルアンモニウムブロミド(DTAB)を10mg/Lの濃度となるように水溶液に加えて2時間ろ過したときの透過水量をF4として、それぞれF2/F1、F3/F1、F4/F1を透過水量持率として算出した。
(RBS)
(正荷電性基定量サンプルの作製)
5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄した。続いて、試料をpH3に調整したタングステン酸ナトリウム1×10-4M水溶液に30分浸漬した。その後遊離のタングステン酸を取り除くため、純水で5分ずつ浸漬洗浄し、サンプルを準備した。
(負荷電性基定量サンプルの作製)
5cm四方の試料を95℃の熱水で30分間洗浄した。続いて、試料をメタノール50%水溶液中で16時間浸漬し、さらに試料をpH10に調整した硝酸バリウム1×10-4M水溶液に30分浸漬した。その後遊離のバリウムを取り除くため、メタノールで5分ずつ浸漬洗浄し、サンプルを準備した。
得られた試料を以下の条件において測定した。
・装置:National Electrostatics Corporation製、Pelletron 3SDH
・入射イオン:He++
・入射エネルギー:2300keV
・入射角:0deg
・散乱角:160deg
・試料電流:4nA
・ビーム径:直径2mm
・面内回転:無
・照射量:100μC(4μC×25箇所)
試料(複合半透膜)の表層、すなわち分離機能層の表面から200nmまでの各元素の平均組成(atomic%)を算出した。タングステン含有量が正荷電性基量に対応、バリウム含有量が負荷電性基量に対応すると仮定し、得られる付着元素面密度(10-9mol/cm)をそれぞれ正荷電性基密度Dw、負荷電性基密度Dbとした。
(ゼータ電位)
試料である複合半透膜を超純水で洗浄し、平板試料用セルに、複合半透膜の分離機能層面がモニター粒子溶液に接するようにセットし、大塚電子株式会社製電気泳動光散乱光度計(ELS-8000)により測定した。モニター粒子溶液としては、pH3、7、11にそれぞれ調整した10mMのNaCl水溶液にポリスチレンラテックスのモニター粒子を分散させた測定液を用いた。
前記測定液を用い、分離機能層の表面ゼータ電位α(pH7、NaCl10mM)、表面ゼータ電位β(pH3、NaCl10mM)、表面ゼータ電位γ(pH11、NaCl10mM)をそれぞれ測定した。
[2.複合半透膜の作製]
(2-1.親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体水溶液の調製)
(合成例1)
親水性高分子Bとして重量平均分子量が25,000のポリエチレンイミン(PEI)0.02重量%、親水性高分子Cとして重量平均分子量が2,000のポリアクリル酸(PAA)0.01重量%、及びDMT-MM0.1重量%を含む水溶液を20℃で1時間撹拌し、親水性高分子BとしてPEIを主成分とするナノ粒子体水溶液を調製した。ナノ粒子体の平均粒径は20nmであった。
(合成例2)
親水性高分子Bとして重量平均分子量が5,000のポリアリルアミン(PAAm)0.02重量%、親水性高分子Cとして重量平均分子量が2,000のPAA0.01重量%、及びDMT-MM0.1重量%を含む水溶液を20℃で1時間撹拌し、親水性高分子BとしてPAAmを主成分とするナノ粒子体水溶液を調製した。ナノ粒子体の平均粒径は30nmであった。
(合成例3)
親水性高分子Bとして重量平均分子量が2,000のPAA0.02重量%、親水性高分子Cとして重量平均分子量が25,000のPEI0.01重量%、及びDMT-MM0.1重量%を含む水溶液を20℃で1時間撹拌し、親水性高分子BとしてPAAを主成分とするナノ粒子体水溶液を調製した。ナノ粒子体の平均粒径は25nmであった。
(合成例4)
親水性高分子Bとして重量平均分子量が2,000のPAA0.02重量%、親水性高分子Cとして重量平均分子量が5,000のPAAm0.01重量%、及びDMT-MM0.1重量%を含む水溶液を20℃で1時間撹拌し、親水性高分子BとしてPAAを主成分とするナノ粒子体水溶液を調製した。ナノ粒子体の平均粒径は28nmであった。
(合成例5)
親水性高分子Bとして重量平均分子量が5,400のポリメタクリル酸(PMA)0.02重量%、親水性高分子Cとして重量平均分子量が25,000のPEI0.01重量%、及びDMT-MM0.1重量%を含む水溶液を20℃で1時間撹拌し、親水性高分子BとしてPMAを主成分とするナノ粒子体水溶液を調製した。ナノ粒子体の平均粒径は30nmであった。
(合成例6)
親水性高分子Bとして重量平均分子量が25,000のポリエチレンイミン(PEI)0.02重量%、親水性高分子Cとして重量平均分子量が5,400のPMA0.01重量%、及びDMT-MM0.1重量%を含む水溶液を20℃で1時間撹拌し、親水性高分子BとしてPEIを主成分とするナノ粒子体水溶液を調製した。ナノ粒子体の平均粒径は25nmであった。
(2-2.複合半透膜の作製)
(比較例1)
長繊維からなるポリエステル不織布(通気度2.0cc/cm/sec)上にポリスルホンの15.0重量%DMF溶液を25℃の条件下でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって、多孔性支持層の厚みが40μmである支持膜を作製した。次に、この支持膜を3.5重量%のm-PDA水溶液に浸漬した後、余分な水溶液を除去し、さらに濃度が0.14重量%となるようにTMCを溶解したn-デカン溶液を多孔性支持層の表面が完全に濡れるように塗布した。次に膜から余分な溶液を除去するために、膜を垂直にして液切りを行って、送風機を使い25℃の空気を吹き付けて乾燥させた後、40℃の純水で洗浄して比較例1の複合半透膜を得た。
(比較例2)
比較例1で得られた複合半透膜を、pH3、35℃に調整した0.3重量%の亜硝酸ナトリウム水溶液に1分間浸漬した。なお、亜硝酸ナトリウムのpHの調整は硫酸で行った。次に20℃の純水で洗浄することで、比較例2の複合半透膜を得た。
(比較例3)
比較例1で得られた複合半透膜上に、親水性高分子Aとしてケン化度99%、重量平均分子量2,000のポリビニルアルコール(PVA)をイソプロピルアルコールと水の3:7溶液に0.25重量%となるように溶解した溶液を塗布し、130℃で5分間乾燥し、架橋芳香族ポリアミド上にPVAが配置された比較例3の複合半透膜を得た。
(比較例4)
比較例1で得られた複合半透膜を、親水性高分子Aとして重量平均分子量が25,000のPEI0.01重量%とDMT-MM0.1重量%を含む水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、比較例4の複合半透膜を得た。
(比較例5)
比較例1で得られた複合半透膜を、親水性高分子Aとして重量平均分子量が2,000のPAA0.01重量%とDMT-MM0.1重量%を含む水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、比較例5の複合半透膜を得た。
(比較例6)
比較例1で得られた複合半透膜を、合成例1で得られた溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、比較例6の複合半透膜を得た。
(比較例7)
比較例1で得られた複合半透膜を、合成例3で得られた溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、比較例7の複合半透膜を得た。
(比較例8)
比較例4で得られた複合半透膜を、親水性高分子Bとして重量平均分子量が2,000のPAA0.01重量%とDMT-MM0.1重量%を含む水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、比較例8の複合半透膜を得た。
(比較例9)
比較例5で得られた複合半透膜を、親水性高分子Bとして重量平均分子量が25,000のPEI0.01重量%とDMT-MM0.1重量%を含む水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、比較例9の複合半透膜を得た。
(比較例10)
比較例4で得られた複合半透膜を、合成例1で得られた溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、比較例10の複合半透膜を得た。
(比較例11)
比較例5で得られた複合半透膜を、合成例3で得られた溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、比較例11の複合半透膜を得た。
(実施例1)
比較例4で得られた複合半透膜を、合成例3で得られたPAAを主成分とするナノ粒子体水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、実施例1の複合半透膜を得た。
(実施例2)
比較例4で得られた複合半透膜を、合成例4で得られたPAAを主成分とするナノ粒子体水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、実施例2の複合半透膜を得た。
(実施例3)
比較例5で得られた複合半透膜を、合成例1で得られたPEIを主成分とするナノ粒子体水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、実施例3の複合半透膜を得た。
(実施例4)
比較例5で得られた複合半透膜を、合成例2で得られたPAAmを主成分とするナノ粒子体水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、実施例4の複合半透膜を得た。
(実施例5)
比較例4で得られた複合半透膜を、合成例5で得られたPMAを主成分とするナノ粒子体水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、実施例5の複合半透膜を得た。
(実施例6)
比較例5で得られた複合半透膜を、合成例6で得られたPEIを主成分とするナノ粒子体水溶液に20℃で1時間接触させた後、水洗することで、実施例6の複合半透膜を得た。
以上のようにして得られた複合半透膜の分離機能層の特性、性能値をそれぞれ表1、表2に示す。
Figure 2023050015000001
Figure 2023050015000002
以上のように、本発明の複合半透膜は、様々な膜汚染物質に対し高い耐ファウリング性を持ち、安定して高い性能を維持することができる。

Claims (7)

  1. 多孔性支持層上に位置する分離機能層を備える複合半透膜であって、
    前記分離機能層は、架橋ポリアミドを主成分とする薄膜を有し、
    前記分離機能層は、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子を2種以上含み、
    前記分離機能層の表面から200nmまでの正電荷性官能基密度Dwと負電荷性官能基密度Dbが以下(a)~(c)を満たし、かつ前記分離機能層の表面のpH7、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-10mV以上10mV以下である、複合半透膜。
    (a) Dw>0.30×10-9mol/cm
    (b) Db>0.30×10-9mol/cm
    (c) 0.9<Dw/Db<1.1
  2. 前記親水性高分子は、正電荷性官能基を有する親水性高分子及び負電荷性官能基を有する親水性高分子をそれぞれ1種以上含む合計2種以上である、請求項1に記載の複合半透膜。
  3. 前記分離機能層表面のpH3、NaCl10mMにおけるゼータ電位が30mV以上である、請求項1または2に記載の複合半透膜。
  4. 前記分離機能層表面のpH11、NaCl10mMにおけるゼータ電位が-30mV以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  5. 前記正電荷性官能基がアミノ基を含み、前記負電荷性官能基がカルボキシ基を含む、請求項1から4のいずれか1項に記載の複合半透膜。
  6. 多孔性支持層上に設けられた分離機能層を備える複合半透膜の製造方法であって、
    前記多孔性支持層上に界面重合により架橋ポリアミドを含む層を形成する工程と、
    前記架橋ポリアミドを含む層と、エチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Aとを結合する工程と、
    前記親水性高分子Aとは異なる種類のエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合体である親水性高分子Bを主成分とするナノ粒子体を前記親水性高分子Aと結合させる工程と、
    を含む、複合半透膜の製造方法。
  7. 前記親水性高分子Aと前記親水性高分子Bは互いに相反する荷電性基を有する、請求項6に記載の複合半透膜の製造方法。
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