以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
以下では、本発明の移動体用座席を車両シートに適用する場合について説明する。しかし、移動体用座席は、車両シートのみならず、電車、航空機など他の移動体のシートにも同様に適用することができる。
まず、図1を参照して、本発明の実施形態に係る車両シートの基本構成について説明する。図1は、本発明の実施形態に係る車両シートを示す斜視図である。車両シート(移動体用座席)は、シートバック部100(背もたれ部)とシート部200(座部)の構造を改良することにより、乗員の上半身の横揺れを効果的に抑えることができる座席である。
図1に示すように、車両シートは、シートバック部100とシート部200を備えている。車両シートは、シートバックフレーム101とシートフレーム201を備えている。シートバックフレーム101は、シートフレーム201に支持され、シートフレーム201は、フロアパネル300などの車体下部構造に支持されている。
シートバックフレーム101は、シートバッククッション102と共にシートバック部100を形成し、シートフレーム201は、シートクッション202と共にシート部200を形成している。シートバック部100は、リクライニング機構Rを介してシート部200に対して回動可能に保持されている。
シートバッククッション102には、バックレスト102aの幅方向の両側にバックレスト102aよりも前方に張出したサイドサポート102bが形成されている。また、シートバッククッション102の上には、ヘッドレスト103が設けられている。また、シートクッション102には、フラット部202aの幅方向の両側にフラット部202aから上方に突出したサイドサポート202bが形成されている。
シートバッククッション102には、後述するように前面カバー、背面カバーおよびクッション部が設けられている。前面カバーと背面カバーは、クッション部を覆うカバーであり、前面カバーは、シート部に座した乗員の背面と接する。前面カバーと背面カバーは、繊維布、樹脂布、皮革などで形成されている。クッション部は、乗員の上半身に作用する衝撃を吸収するための緩衝部である。クッション部は、ウレタン、エアクッション、エラストマ樹脂などで形成されている。なお、背面カバーとクッション部の間には、裏基布、ばねなどが設けられてもよい。
シートバック部100は、上部100U(背もたれ上部)と下部100L(背もたれ下部)に区分されている。上部100Uは、シート部200に座した乗員の上半身上部、特に肩甲骨の周辺を支える。下部100Lは、乗員の上半身下部、特に腰部の周辺を支える。よって、シート部200に座した乗員は、シートバック部100の下部100Lにより上半身下部が支えられ、シートバック部100の上部100Uにより上半身上部が支えられる。シート部200は、シートクッション202のフラット部202aを支持する座面部203(図2を参照)を有している。座面部203は、シート部200に座した乗員の臀部と大腿部を支える。
つぎに、図2を参照して、本発明の実施形態に係る車両シートの動作原理について説明する。図2は、車両シートの動作原理を示す模式図である。
図2(a)に示すように、例えば車両の旋回時には、乗員の上半身Bの上部、例えば肩甲骨の周辺を重心Gaとして遠心力Faが作用し、シート部200との接点Cを中心として回転モーメントMaが生じる。上半身Bは、遠心力Faの作用方向に側方移動し、シート部200との接点Cを中心として大きく横揺れする。
ここで、図2(b)に示すように、上半身Bの安定を保つために、乗員が上半身Bをシートバック部100の下部100Lに押し付ける場合を想定する。この場合、シートバック部100に対する上半身Bの接触位置が上半身Bの重心Gaよりも低いので、遠心力Faとそれに伴う回転モーメントMaに対して大きな反力Fbを確保することができない場合がある。結果として、乗員は、下半身の踏ん張りを強くしたり、シートバック部100の下部100Lに対して上半身Bを強く押し付けたりしなければ、上半身Bの横揺れを抑制することができなくなる場合がある。
つぎに、図2(c)に示すように、上半身Bの安定を保つために、乗員が上半身Bをシートバック部100の上部100Uに接触させる場合を想定する。この場合、シートバック部100に対する上半身Bの接触位置が上半身Bの重心に近いので、遠心力Faとそれに伴う回転モーメントMaに対して相対的に大きな反力Fcを確保することができる。
さらに、図2(c)に示す状態で、図2(d)に示すように、乗員が上半身Bの下部を遠心力Faの作用方向、つまり側方移動の方向(図2では右方向)に回転させる場合を想定する。この場合、上半身Bの下部が傾くと上半身Bが反って、上半身Bの上部が側方移動の方向とは反対側の方向(図2では左方向)に自然と傾くことになる。
そして、本発明の実施形態に係る車両シートでは、シートバック部100の下部100Lを乗員の側方移動に対してシートバック部100の上部100Uよりも低い支持抵抗を有するように構成する。このため、遠心力Faとそれに伴う回転モーメントMaに対して大きな反力Fcを確保することができ、上半身Bの側方移動および横揺れを効果的に抑えることができる。
さらに、本発明の実施形態に係る車両シートでは、側方移動の方向に上半身Bの下部が傾くように変形または変位する座面部203を備えるようにシート部200を構成する。そして、上半身Bの下部が傾くと上半身Bが反って、上半身Bの上部が側方移動の方向とは反対側の方向に自然と傾くことになる。このため、シートバック部100の上部100Uに対して上半身Bが自然と押し付けられ、上半身Bの横揺れをさらに効果的に抑制することができる。特に、上半身Bの上部が側方移動の方向とは反対側の方向に傾くことにより、乗員の頭部Hの横揺れを効果的に抑え、車酔いなどの症状の発生を抑えることができる。
つぎに、図3から図10を参照して、車両シートのシートバック部100の第1から第6の実施形態について説明する。図2で説明したように、シートバック部100は、シートバック部100の下部100Lが上半身の側方移動に対してシートバック部100の上部100Uよりも低い支持抵抗を有していることを特徴とする。
図3は、第1の実施形態に係るシートバック部110を示す斜視図である。第1の実施形態に係るシートバック部110では、シートバック部110の下部110Lは、少なくとも側方移動の方向SMに離間して並べられた複数のブロック部材114からなるクッション部113Lを有している。
シートバック部110の上部110Uには、前面カバー111U、背面カバー112Uおよびクッション部113Uが設けられている。また、下部110Lにも、前面カバー111L、背面カバー112Lおよびクッション部113Lが設けられている。クッション部113U、113Lは、ウレタン、エラストマ樹脂などで形成されている。
ここで、上部110Uのクッション部113Uは、単一のブロックで形成されている。一方、下部110Lのクッション部113Lは、シートバック部110の左右方向と上下方向に並べて配列された円柱状、角柱状などの複数の小さなブロック114で形成されている。よって、下部110Lのクッション部113Lは、上部110Uのクッション部113Uと比べて、その左右方向(矢印M1の方向)に相対的に変形し易く、剛性が低くなる。
なお、図3に示す例では、下部110Lのクッション部113Lのブロック配列が左右4列、上下3列とされているが、他のブロック配列が適用されてもよい。また、上部110Uのクッション部113Uも、下部110Lのクッション部113Lよりも変形し難い程度であれば、複数のブロックで形成されてもよい。また、下部110Lの各ブロック114には、上半身を支えるに足る圧縮抵抗を提供するために、クッション部113Lの奥行き方向に薄板プレートなどの圧縮抵抗部材(付図示)が設けられてもよい。
第1の実施形態に係るシートバック部110によれば、シートバック部110の下部110Lは、少なくとも側方移動の方向SMに離間して並べられた複数のブロック部材114からなるクッション部113Lを有している。これにより、シートバック部110の下部110Lの弾性抵抗は、ブロック部材114の配列構造を通じて、シートバック部110の上部110Uよりも低減される。このため、シートバック部110の下部110Lは、上半身の側方移動に対して、シートバック部110の上部110Uよりも低い支持抵抗を有することになる。
図4から図6は、第2の実施形態に係るシートバック部120とその変形例に係るシートバック部130、140を図1のU−U断面とL−L断面で示す断面図である。第2の実施形態とその変形例に係るシートバック部120、130、140では、シートバック部120、130、140の下部120L、130L、140Lは、側方移動の方向SMに対して交差する方向に隙間125、135、145が形成されたクッション部123L、133L、143Lを有している。以下では、第2の実施形態に係るシートバック部120について主に説明する。
図4に示すように、シートバック部120の上部120Uには、前面カバー121U、背面カバー122Uおよびクッション部123Uが設けられている。また、下部120Lにも、前面カバー121L、背面カバー122Lおよびクッション部123Lが設けられている。クッション部123U、123Lは、例えばウレタンで形成されている。
ここで、下部120Lには、クッション部122Lの背面に沿ってほぼ上下方向に複数の溝125(隙間)が形成されている。溝125は、クッション部123Lの成形時に形成されてもよく、成形後に形成されてもよい。よって、下部120Lのクッション部123Lは、上部120Uのクッション部123Uと比べて、その横方向(矢印M2の方向)に相対的に変形し易くなる。なお、この変形条件を満たしていれば、上部120Uのクッション部122Uにも溝が形成されてもよく、複数の溝125が傾斜して形成されてもよい。また、溝125は、クッション部123Lと共に裏基布124Lに形成されてもよい。
図5に示すシートバック部130の下部130Lには、図4に示したシートバック部120とは異なり、クッション部133Lの前面に沿ってほぼ上下方向に複数の溝135(隙間)が形成されている。
図6に示すシートバック部140の下部140Lには、図4に示したシートバック部120とは異なり、バックレスト102aとサイドサポート102bとの間に隙間145が形成されている。隙間145は、バックレスト102aまたはサイドサポート102bについて、上部よりも下部の幅を小さくしたり、上部と下部の間で取り付け位置を調節したりすることにより形成される。
よって、下部140Lのクッション部143Lは、上部140Uのクッション部143Uと比べて、その左右方向(矢印M4の方向)に相対的に変形または変位し易く、剛性が低くなる。なお、上部140Uのクッション部143Uにも、この変形または変位条件を満たしていれば、隙間が形成されてもよい。
第2の実施形態とその変形例に係るシートバック部120、130、140によれば、シートバック部120、130、140の下部120L、130L、140Lは、側方移動の方向SMに対してほぼ垂直に隙間125、135、145が形成されたクッション部123L、133L、143Lを有している。これにより、シートバック部120、130、140の下部120L、130L、140Lの弾性抵抗または変位抵抗は、隙間125、135、145の形成を通じて、シートバック部120、130、140の上部120U、130U、140Uよりも低減される。このため、シートバック部120、130、140の下部120L、130L、140Lは、上半身の側方移動に対して、シートバック部120、130、140の上部120U、130U、140Uよりも低い支持抵抗を有することになる。
図7は、第3の実施形態に係るシートバック部150を示す模式図である。第3の実施形態に係るシートバック部150では、シートバック部150の下部150Lが側方移動に伴う変形に対してシートバック部150の上部150Uよりも低い抵抗を有する材料で形成されている。
シートバック部150の上部150Uには、前面カバー151U、背面カバー152Uおよびクッション部153Uが設けられている。一方、下部150Lには、前面カバー151Lおよび背面カバー152Lが設けられているが、クッション部が設けられていない。図7に示す例では、特に、上部150Uのクッション部153Uがウレタンで形成され、下部150Lの前面カバー151Lがネットカバーで形成されている。
よって、上部150Uは、前面カバー151Uの摩擦抵抗と共にクッション部153Uの弾性抵抗により上半身の側方移動に抵抗する。一方、下部150Lは、前面カバー151Lの摩擦抵抗により上半身の側方移動に抵抗し、剛性が低くなる。よって、特に、下部150Lの前面カバー151Lをネットカバーで形成することにより、前面カバー151Lの摩擦抵抗を低減することができる。
第3の実施形態に係るシートバック部150によれば、シートバック部150の下部150L(前面カバー151L)は、側方移動に伴う変形に対して上部150U(クッション部153U)よりも低い抵抗を有する材料で形成されている。これにより、シートバック部150の下部150Lの弾性抵抗および摩擦抵抗は、材料の特性を通じて、シートバック部150の上部150Uよりも低減される。このため、シートバック部150の下部150Lは、上半身の側方移動に対して、シートバック部150の上部150Uよりも低い支持抵抗を有することになる。
図8は、第4の実施形態に係るシートバック部160を示す模式図である。第4の実施形態に係るシートバック部160では、シートバック部160の上部160Uと下部160Lは、複数のエアクッション163U、163Lを有している。そして、上部160Uのエアクッション163Uは、側方移動の方向SMに対して交差する方向に並べられており、下部160Lのエアクッション163Lは、側方移動の方向SMに対して平行に並べられている。
シートバック部160の上部160Uには、前面カバー161U、背面カバー162Uおよびクッション部163Uが設けられている。また、下部160Lにも、前面カバー161L、背面カバー162Lおよびクッション部163Lが設けられている。クッション部163U、163Lは、空気などのガスが充填された、円柱状、多角柱状などの複数のエアクッションで形成されている。
ここで、上部160Uのエアクッション163Uは、シートバック部160の上下方向に並べて配置されている一方で、下部160Lのエアクッション163Lは、シートバック部160の左右方向に並べて配置されている。よって、下部160Lのエアクッション163Lは、上部160Uのエアクッション163Uと比べて、その左右方向(矢印M6の方向)に相対的に回転して変形し易く、剛性が低くなる。なお、図8に示す例では、エアクッション163U、163Lの配列が上部4列、下部6列とされているが、他のクッション配列が適用されてもよい。また、この変形条件を満たしていれば、エアクッション163U、163Lは、シートバック部160に対して斜め方向に配置されてもよい。
第4の実施形態に係るシートバック部160によれば、シートバック部160の上部160Uと下部160Lは、複数のエアクッション163U、163Lを有しており、上部160Uのエアクッション163Uは、側方移動の方向SMに対して交差する方向に並べられ、下部160Lのエアクッション163Lは、側方移動の方向SMに対して平行に並べられている。これにより、シートバック部160の下部160Lの弾性抵抗または変形抵抗は、エアクッション163U、163Lの配列構造を通じて、シートバック部160の上部160Uよりも低減される。このため、シートバック部160の下部160Lは、上半身の側方移動に対して、シートバック部160の上部160Uよりも低い支持抵抗を有することになる。
図9は、第5の実施形態に係るシートバック部170を示す模式図である。第5の実施形態に係るシートバック部170では、シートバック部170の上部170Uと下部170Lは、表布(表面カバー171U、171L)を有している。そして、上部170Uの表布(表面カバー171U)は、側方移動の方向SMに対して交差する方向の縫い目174Uで縫製されており、下部170Lの表布(表面カバー171L)は、側方移動の方向SMに対して平行な縫い目174Lで縫製されている。
シートバック部170の上部170Uには、前面カバー171U、背面カバー172Uおよびクッション部173Uが設けられている。また、下部170Lにも、前面カバー171L、背面カバー172Lおよびクッション部173Lが設けられている。前面カバー171U、171Lは、縫製された繊維布で形成されている。
ここで、上部170Uの前面カバー171Uは、シートバック部170の横方向に対して交差する方向、特にほぼ垂直方向DUの縫い目174Uで縫製されている一方で、下部170Lの前面カバー171Lは、シートバック部170の横方向に対して平行な方向DLの縫い目174Lで縫製されている。よって、下部170Lの前面カバー171Lは、上部170Uの前面カバー171Uと比べて、その横方向での摩擦抵抗が低くなる。なお、前面カバー171U、171Lの縫い目174U、174Lは、この摩擦条件を満たしていれば、シートバック部170の横方向に対して傾斜していてもよい。
第5の実施形態に係るシートバック部170によれば、シートバック部170の上部170Uと下部170Lは、表布(表面カバー171U、171L)を有しており、上部170Uの表布(表面カバー171U)は、側方移動の方向SMに対して交差する方向の縫い目174Uで縫製され、下部170Lの表布(表面カバー171L)は、側方移動の方向SMに対して平行な縫い目174Lで縫製されている。これにより、シートバック部170の下部170Lの摩擦抵抗は、表布(表面カバー171U、171L)の表面構造を通じて、上部170Uよりも低減される。このため、シートバック部170の下部170Lは、上半身の側方移動に対して、シートバック部170の上部170Uよりも低い支持抵抗を有することになる。
図10は、第6の実施形態に係るシートバック部180を示す模式図である。第6の実施形態に係るシートバック部180では、シートバック部180の下部180Lは、側方移動の方向SMへの移動性がシートバック部180の上部180Uよりも高くなるように支持されている。
シートバック部180の上部180Uには、前面カバー181U、背面カバー182Uおよびクッション部183Uが設けられている。また、下部180Lにも、前面カバー181L、背面カバー182Lおよびクッション部183Lが設けられている。
ここで、上部180Uのクッション部183Uは、シートバックフレーム(不図示)に固定されている一方で、下部180Lのクッション部183Lは、シートバック部180の横方向に僅かにスライド可能な状態で、支持軸184などによりシートバックフレーム(不図示)に支持されている。よって、下部180Lのクッション部183Lは、上部180Uのクッション部183Uと比べて、その横方向(矢印M8の方向)に変位し易くなる。なお、上部180Uのクッション部183Uも、下部180Lのクッション部183Lよりも変位し難い程度であれば、スライド可能な状態で支持されてもよい。
第6の実施形態に係るシートバック部180によれば、シートバック部180の下部180Lは、側方移動の方向SMへの移動性が上部180Uよりも高くなるように支持されている。これにより、シートバック部180の下部180Lの変位抵抗は、シートバック部180の下部180Lの支持構造を通じて、シートバック部180の上部180Uよりも低減される。このため、シートバック部180の下部180Lは、上半身の側方移動に対して、シートバック部180の上部180Uよりも低い支持抵抗を有することになる。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るシートバック部110、120、130、140、150、160、170、180によれば、シートバック部110、120、130、140、150、160、170、180の下部110L、120L、130L、140L、150L、160L、170L、180Lは、上半身の側方移動に対して上部110U、120U、130U、140U、150U、160U、170U、180Uよりも低い支持抵抗を有している。このため、遠心力とそれに伴う回転モーメントに対して大きな反力を確保することができ、上半身の側方移動および横揺れを効果的に抑えることができる。
つぎに、図11から図16を参照して、車両シートのシート部200の第1から第5の実施形態について説明する。図2で説明したように、シート部200は、上半身の側方移動に際して、側方移動の方向に上半身の下部が傾くように変形または変位する座面部203を備えていることを特徴とする。
図11は、第1の実施形態に係るシート部210を示す模式図である。第1の実施形態に係るシート部210は、左右方向の端部を有するとともに座面部213を支持する支持体(座面支持部214)と、左右方向の各端部よりも上方に位置する支持端に対して一端が回転可能に支持され、各端部に対して他端が回転可能に支持される回転支持部215とをさらに有している。
シート部210には、座面部213、座面支持部214および回転支持部215(左支持部215L、右支持部215R)が設けられている。座面支持部214は、座面部213を支持する支持体として機能する。座面部213は、シートクッション202を支持する部材であり、シートクッション202のフラット部202aの下方に設けられている。座面部213は、帯状ばね(布ばねなど)、線状ばね(Sばね、コンターばねなど)、またはそれらの組合せでもよい。
座面支持部214は、座面部213を下方から支持する剛性の部材である。座面支持部214は、例えばシート部210の左右方向で逆π字状の横断面を有する部材である。
回転支持部215は、座面支持部214をシートフレーム201に対して回転(揺動)可能に支持する部材である。回転支持部215は、シートフレーム201に対する第1の回転端216L、216Rと、座面支持部214に対する第2の回転端217L、217Rとを有する部材として形成されている。回転支持部215は、座面支持部214の左の端部を左側のシートフレーム201に対して支持する左支持部215Lと、座面支持部214の右の端部を右側のシートフレーム201に対して支持する右支持部215Rとを有している。
回転支持部215の左支持部215Lおよび右支持部215Rは、シートフレーム200の張り出し部201aの先端に設けられた支持点(第1の回転端216L、216Rを支持する点)よりも下方に位置している。よって、回転支持部215は、第1の回転端216L、216Rを介して支持点に対して矢印M1の方向に回転し、座面支持部214は、第2の回転端217L、217Rを介して回転支持部215に対して矢印M2の方向に回転する。これにより、座面部213は、回転支持部215の第1の回転端216L、216Rと第2の回転端217L、217Rを介して、シートフレーム201に対して側方移動の方向SMに揺動可能に支持される。
ここで、シート部210は、シート部210に座した乗員との間で、次のような位置関係をなすように構成されている。つまり、回転支持部215は、移動体のロール方向に軸を有する仮想回転軸が乗員の腰椎の周辺の高さとほぼ一致するように構成されている。なお、仮想回転軸は、左側の第2の回転端217Lから第1の回転端216Lを通って延びる線LLと、右側の第2の回転端217Rから第1の回転端216Rを通って延びる線LRとの交点と交点をシートバック部100に投影した位置Gbとを結ぶ軸である。この位置関係は、座面部213が第1および第2の回転端216L、216R、217L、217Rを介して揺動し、上半身が側方に傾いた状態でも保たれる。
第1の実施形態に係るシート部210によれば、シート部210は、左右方向の端部を有するとともに座面部213を支持する支持体(座面支持部214)と、左右方向の各端部よりも上方に位置する支持端に対して一端(第1の回転端216L、216R)が回転可能に支持され、各端部に対して他端(第2の回転端217L、217R)が回転可能に支持される回転支持部215とをさらに有している。このため、座面部213は、上半身の下部が車両のロール方向、つまり側方移動の方向SMに傾くように変位する。
図12および図13は、第2の実施形態に係るシート部220とその変形例に係るシート部230を示す模式図である。第2の実施形態とその変形例に係るシート部220、230では、座面部223、233の左右方向の端部は、座面部223、233が側方移動の方向SM、つまり矢印M3の方向に回転できるように支持されている。以下では、第2の実施形態に係るシート部220について主に説明する。
図12に示すように、シート部220には、座面部223、座面支持部224(左支持部224L、右支持部224R)および回転支持部225(左支持部225L、右支持部225R)が設けられている。座面部223は、シートクッション202を支持する部材であり、シートクッション202のフラット部202aの下方に設けられている。座面部223は、帯状ばね(布ばねなど)、線状ばね(Sばね、コンターばねなど)、またはそれらの組合せでもよい。
座面支持部224は、座面部223を支持する筒状または棒状の部材である。座面支持部224は、座面部223の左端部を支持する左支持部224Lと、右端部を支持する右支持部224Rとを有している。座面部223の端部は、座面支持部224に対して固定されてもよく、座面支持部224が挿入されるように筒状に形成されてもよい。
回転支持部225は、シートフレーム201などに対して座面支持部224を側方移動の方向SM、つまり車両のロール方向に回転可能に支持する部材である。回転支持部225は、座面支持部224の左支持部224Lを支持する左支持部225Lと、座面支持部224の右支持部224Rを支持する右支持部225Rとを有している。
回転支持部225は、座面支持部224の前後の端部をシートフレーム201(図13に示す変形例ではフロアパネル300)などに対して支持する。回転支持部225は、座面支持部224の端部に支持される支持端と、シートフレーム202(図13に示す変形例ではフロアパネル300)などに対して矢印M3の方向(図13に示す変形例では矢印M4の方向)に回転可能に支持される回転端とを有している。回転支持部225は、回転端に対して回転した後、回転前の位置に復帰するように支持されている。回転支持部225は、支持端の機構(ヒンジなど)により回転してもよく、回転支持部225自体の弾性により回転してもよい(図13参照)。
ここで、シート部220は、シート部220に座した乗員との間で、次のような位置関係をなすように構成されている。つまり、回転支持部225は、移動体のロール方向に軸を有する仮想回転軸が、乗員の腰椎の周辺の高さとほぼ一致するように構成されている。なお、仮想回転軸は、左側の回転支持部225Lの回転端から支持端を通って延びる線LLと、右側の回転支持部225Rの回転端から支持端を通って延びる線LRとの交点と交点をシートバック部100に投影した位置Gbとを結ぶ軸である。この位置関係は、回転支持部225が回転端を中心として回転し、上半身が側方に傾いた状態でも保たれる。なお、変形例に係るシート部230も、同様の位置関係をなすように構成されている。
第2の実施形態とその変形例に係るシート部220、230によれば、座面部223、233の左右方向の端部は、座面部223、233が側方移動の方向SMに回転できるように支持されている。このため、座面部223、233は、上半身の下部が車両のロール方向、つまり側方移動の方向SMに傾くように変形する。
図14は、第3の実施形態に係るシート部240を示す模式図である。第3の実施形態に係るシート部240では、座面部243の左右方向の端部は、座面部243が側方移動の方向SMに回転できるように弾性支持されている。
シート部240には、座面部243および座面支持部244(左支持部244L、右支持部244R)が設けられている。座面部243は、シートクッション202を支持する部材であり、シートクッション202のフラット部202aの下方に設けられている。座面部243は、帯状ばね(布ばねなど)、線状ばね(Sばね、コンターばねなど)、またはそれらの組合せでもよい。
座面支持部244は、座面部243をシートフレーム201に対して回転可能に支持する弾性部材である。座面支持部244は、座面部243がシートフレーム201に対して回転した後、回転前の位置に復帰するように座面部243を支持している。座面支持部244は、座面部243の左端部を左側のシートフレーム201に対して支持する左支持部244Lと、座面部243の右端部を右側のシートフレーム201に対して支持する右支持部244Rとを有している。座面支持部244は、シート部240の前後方向に沿って複数設けられた線状ばね、巻きばね(弦巻ばねなど)でもよく、シート部240の左右の端部に沿って延びる板ばねでもよい。
第3の実施形態に係るシート部240によれば、座面部243の左右方向の端部は、座面部243が側方移動の方向SMに回転できるように弾性支持されている。このため、座面部243は、上半身の下部が車両のロール方向、つまり側方移動の方向SMに傾くように変形する。
図15は、第4の実施形態に係るシート部250を示す模式図である。第4の実施形態に係るシート部250では、座面部253の前後方向の端部は、座面部253が側方移動の方向SMに揺動できるように支持されている。
シート部250には、座面部253および座面支持部254(前支持部254F、後支持部254B)が設けられている。座面部253は、シートクッション202を支持する部材であり、シートクッション202のフラット部202aの下方に設けられている。座面部253は、帯状ばね(布ばねなど)、線状ばね(Sばね、コンターばねなど)、またはそれらの組合せでもよい。
座面支持部254は、座面部253を支持する筒状または棒状の部材である。座面支持部254は、その左右の端部がシートフレーム201に対して固定されている。座面支持部254は、座面部253の前端部を支持する前支持部254Fと、後端部を支持する後支持部254Bとを有している。前支持部254Fと後支持部254Bは、シート部250の下方に向かってほぼ円弧を描くように設けられている。
座面支持部254は、その長手方向に沿って座面部253が側方移動の方向SM、つまり車両のロール方向に揺動可能なように座面部253を支持する。座面部253は、座面支持部254との間で摩擦抵抗を生じながら矢印M5の方向に揺動する。そして、座面部253の揺動に伴って座面部253により支持されたシートクッション202も揺動する。座面支持部254は、筒状に形成された座面部253の端部に挿入されてもよく、座面部253の端部に形成されたフック(不図示)などに係合されてもよい。
ここで、シート部250は、シート部250に座した乗員との間で、次のような位置関係をなすように構成されている。つまり、座面支持部254は、その軸が描く円弧の中心と円弧の中心をシートバック部100に投影した位置Gbとを結ぶ仮想回転軸が乗員の腰椎の周辺の高さとほぼ一致するように構成されている。この位置関係は、座面部253が揺動し、上半身が側方に傾いた状態でも保たれる。
第4の実施形態に係るシート部250によれば、座面部253の前後方向の端部は、座面部253が側方移動の方向SMに揺動できるように支持されている。このため、座面部253は、上半身の下部が車両のロール方向、つまり側方移動の方向SMに傾くように変位する。
図16は、第5の実施形態に係るシート部260を示す模式図である。第5の実施形態に係るシート部260は、座面部263を支持する支持体(座面支持部264、ローラ265)と、シート部260の左右方向に延びると共に、支持体(座面支持部264、ローラ265)を側方移動の方向SMに揺動可能に支持する支持部(レール266)とをさらに有している。
シート部260には、座面部263、座面支持部264(前支持部264F、後支持部264B)、ローラ265(左ローラ265L、右ローラ265R)およびレール266(前レール266F、後レール266B)が設けられている。座面支持部264とローラ265は、座面部263を支持する支持体として機能する。
座面部263は、シートクッション202を支持する部材であり、シートクッション202のフラット部202aの下方に設けられている。座面部263は、帯状ばね(布ばねなど)、線状ばね(Sばね、コンターばねなど)、またはそれらの組合せでもよい。図16に示す例では、座面部263は、シート部260の前後方向に延びる2本のSばねとして示されている。
座面支持部264は、座面部263の前後の端部を支持する剛性部材である。座面支持部264は、座面部263の前端部を支持する前支持部264Fと、座面部263の後端部を支持する後支持部264Bとを有している。なお、座面支持部264は、ローラ265に対して座面部263を支持できればよく、例えば座面部の左右または周囲を支持するように構成されてもよい。
ローラ265は、座面支持部264を支持する円筒状または丸棒状の部材である。ローラ265は、座面支持部264の左端部を支持する左ローラ265Lと、座面支持部264の右端部を支持する右ローラ265Rとを有している。左ローラ265Lの前端部は、座面支持部264の前支持部264Fの左端部を支持し、後端部は、座面支持部264の後支持部264Bの左端部を支持する。同様に、右ローラ265Rの前端部は、座面支持部264の前支持部264Fの右端部を支持し、後端部は、座面支持部264の後支持部264Bの右端部を支持する。
レール266は、ローラ265を支持する円弧面状の支持部材である。レール266は、シート部260の左右方向に延びると共に、座面支持部264およびローラ265を側方移動の方向に揺動可能に支持する。レール266は、その左右の端部がシートフレーム201に対して固定されている。図16に示す例では、レール266は、シート部260の前端と後端に沿って延びる前レール266Fと後レール266Bとして示されている。しかし、レール266は、ローラ265を揺動可能に支持できればよく、例えば前後のレールが一体に形成されてもよい。
レール266は、シート部260の下方に向かってほぼ円弧を描くように、シート部260の左右方向に延びている。レール266は、その軸に沿って座面部263がシート部260の左右方向に揺動可能なようにローラ265等を支持する。ローラ265L、265Rは、レール266F、266Bとの間で摩擦抵抗を生じながら矢印M6の方向に揺動する。そして、ローラ265L、265Rの揺動に伴ってローラ265L、265R等により支持された座面部263およびシートクッション202も揺動する。
ここで、シート部260は、シート部260に座した乗員との間で、次のような位置関係をなすように構成されている。つまり、レール266は、その軸が描く円弧の中心と円弧の中心をシートバック部100に投影した位置Gbとを結ぶ仮想回転軸が乗員の腰椎の周辺の高さとほぼ一致するように構成されている。この位置関係は、座面部263がレール266F、266Bに対して揺動し、上半身が側方に傾いた状態でも保たれる。
第5の実施形態に係るシート部260によれば、シート部260は、座面部263を支持する支持体(座面支持部264およびローラ265)と、シート部260の左右方向に延びると共に、支持体(座面支持部264およびローラ265)を側方移動の方向SMに揺動可能に支持する支持部(レール266)とをさらに有している。このため、座面部263は、上半身の下部が車両のロール方向、つまり側方移動の方向SMに傾くように変位する。
以上説明したように、本発明の実施形態に係るシート部210、220、230、240、250、260によれば、上半身の側方移動に際して、上半身の下部が側方移動の方向SMに傾くように座面部213、223、233、243、253、263が変形または変位する。そして、上半身の下部が傾くと上半身が反って、上半身の上部が側方移動の方向SMとは反対側の方向に自然と傾くことになる。結果として、シートバック部100の上部100Uに対して上半身が自然と押し付けられ、上半身の横揺れをさらに効果的に抑制することができる。特に、上半身の上部が側方移動の方向SMとは反対側の方向に傾くことにより、乗員の頭部の横揺れを効果的に抑え、車酔いなどの症状の発生を抑えることができる。
なお、前述した実施形態は、本発明に係る移動体用座席の最良な実施形態を説明したものであり、本発明に係る移動体用座席は、本実施形態に記載したものに限定されるものではない。本発明に係る移動体用座席は、各請求項に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲で本実施形態に係る移動体用座席を変形し、または他のものに適用したものであってもよい。