JPWO2011148903A1 - α位置換アクリル酸エステル類及びそれを含む組成物、並びに、それらの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献1、非特許文献2のように、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸エステル類と、ヒドロキシ基含有化合物とを、酸触媒の存在下に反応させる場合には、生成物であるα−(アルコキシメチル)アクリル酸エステル類の生成と同時に、α−(アルコキシメチル)アクリル酸エステル類の加水分解反応も進行してしまうために、反応収率が低くなり効率的な反応とは言い難いものであった。更には、α−(アルコキシメチル)アクリル酸エステル類の生成反応の副反応としてエステル交換反応が進行するために、エステル置換基の構造とヒドロキシ基含有化合物のヒドロキシ基以外の部分の構造とが異なる場合には、生成物の生成選択性が低くなってしまうものであった。また、非特許文献3においては、触媒として固体酸であるモンモリロナイトを用いており、この場合には、固体酸が反応原料の60質量%と多量に必要となり、工業的な製造方法としては課題のあるものであった。
そして、特許文献2、特許文献3のように、α−(ヒドロキシメチル)アクリル酸メチルを原料に、3級アミンを触媒として用いる場合には、上記同様、生成物の生成反応と共にエステル交換反応が進行し、更には、反応時間が長く必要であり、原料の転化率及び生成物の収率も低いものであった。
このように、従来α位置換アクリル酸エステル類の製造方法として提案されている方法は、工業的な製造方法としてより好適なものとなるよう工夫する余地があった。
以下に本発明を詳述する。
上記反応は、図1のような反応機構によって進行すると考えられる。すなわち、触媒の3級アミン(NQ3)がSN2’機構により一般式(1)で表される化合物の二重結合部分を求核攻撃することで反応中間体を生じ、続いて、活性水素含有化合物(Y−H)が該反応中間体と反応して、一般式(2)で表される化合物を生成する。ここで、本発明の酸及び/又はその塩としてルイス酸([M])が共存すると、一般式(1)で表される化合物の二重結合部分が求電子性を増し、上記機構による反応が促進される。また、本発明の酸及び/又はその塩としてブレンステッド酸(A−H)が共存すると、該ブレンステッド酸の共役塩基(A−)をカウンターアニオンとする、安定で塩基性の低い反応中間体を経由することになる。このため、反応中間体の生成がより促進されるとともに、エステル交換反応や加水分解反応等の塩基によって促進される副反応が起こりにくくなる。このような推定反応機構により反応が進行するために、反応性の低い基質を原料にした場合においても、速やかに反応が進行し、かつ、高収率・高選択率が得られるものと考えられる。更には、本発明者等は、本発明の酸及び/又はその塩を共存させることで、3級アミン触媒の失活反応が抑制されることをも見出しており、このことも短時間で高収率が得られる一因と考えられる。
なお、図1中、R1、R2及びR3は、同一若しくは異なって、水素原子又は炭素数1〜200の有機基を表す。Xは、ルイス塩基性官能基を表す。X−Hは、ルイス塩基性官能基Xが脱離後にプロトン化された副生成物を表す。NQ3は、3級アミンを表す。A−H及び[M]は、いずれも本発明の酸及び/又はその塩を表すものであり、A−Hはブレンステッド酸を表し、A−は該ブレンステッド酸A−Hの共役塩基を表し、[M]はルイス酸を表す。Y−Hは、活性水素含有化合物を表す。Yは、活性水素含有化合物の残基を表す。
また、3級アミンと酸及び/又はその塩とを反応開始時に一括添加する場合、これらを別々に添加してもよく、予め混合して添加してもよい。
上記アルケニル基としては、ビニル基、アリル基、メタリル基、ベンジル基、クロチル基、1,1−ジメチル−2−プロペニル基、2−メチル−ブテニル基、3−メチル−2−ブテニル基、3−メチル−3−ブテニル基、2−メチル−3−ブテニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オレイル基、リノール基、リノレン基、シクロペンテニル基、シクロペンテニルメチル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキセニルメチル基、4−メチルシクロヘキセニル基、4−t−ブチルシクロヘキセニル基、シクロオクテニル基、ジシクロペンテニル基等が挙げられる。
上記アリール基としては、フェニル基、o−、m−、p−の各種トリル基、o−、m−、p−の各種メトキシフェニル基、o−、m−、p−の各種キシリル基、ヘミメリチル基、クメニル基,プソイドクメニル基、メシチル基、ジュニル基、ペンタフェニメチル基、エチルフェニル基,クメニル基、スチリル基、ビフェニル基、p−テルフェニル基,ジフェニルメチルフェニル基、フェノキシフェニル基、ビベンジリル基、スチルベニル基、インデニル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基、フリル基、チエニル基等が挙げられる。
更に、アルコール系ヒドロキシ基含有化合物及び/又はフェノール系ヒドロキシ基含有化合物を用いることもまた本発明の好適な実施形態の1つである。
上記一般式(4)で表されるアルコール系ヒドロキシ基含有化合物としては、具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−エチルヘキサノール等のアルキルアルコール類;シクロペンタノール、シクロヘキサノール等のシクロアルキルアルコール類、ベンジルアルコール等のアリールアルコール類;アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコール、プロパルギルアルコール等の不飽和アルコール類;ジメチルアミノエタノール、ジエチルアミノエタノールなどのアミノアルコール類;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、メチル 2−(ヒドロキシメチル)アクリレート、エチル 2−(ヒドロキシメチル)アクリレート等の重合性基含有アルコール類、メチルセルソルブ、エチルセルソルブ、ブチルセルソルブ、カルビトール、ポリエチレングリコールモノメトキシエーテル、ポリプロピレングリコールモノエトキシエーテル等の、アルキレングリコールモノアルキルエーテル類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のアルキレングリコール類、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの多価アルコール類、グルコース、マントースなどの糖類、およびこれら化合物のハロゲン置換体等が挙げられる。これらの中でも、メタノール、エタノール、プロパノール、n−ブタノール、2−エチルヘキサノール、アリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコールがより好ましい。特に好ましくはアリルアルコール、メタリルアルコール、クロチルアルコールである。
フェノール系ヒドロキシ基含有化合物としては、具体的には、フェノール、o−、m−、p−の各種クレゾール、o−、m−、p−の各種メトキシフェノール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、o−、m−、p−の各種t−ブチルフェノール、o−、m−、p−の各種s−ブチルフェノール、メチル−t−ブチルフェノール、o−、m−、p−の各種シクロヘキシルフェノール、o−、m−、p−の各種フェニルフェノール、1−又は2−ナフトール、アントロールが挙げられる。これらの中でも、フェノール、o−、m−、p−の各種クレゾール、2,3−ジメチルフェノール、2,4−ジメチルフェノール、2,5−ジメチルフェノール、2,6−ジメチルフェノール、3,4−ジメチルフェノール、3,5−ジメチルフェノール、トリメチルフェノール、o−、m−、p−の各種t−ブチルフェノール、o−、m−、p−の各種フェニルフェノール、1−又は2−ナフトール、アントロールがより好ましい。
上記一般式(5)で表されるメルカプト基含有化合物としては、具体的には、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−又はi−プロピルメルカプタン、n−、i−又はt−ブチルメルカプタン、チオフェノール等が挙げられる。これらの中でも、メチルメルカプタン、エチルメルカプタン、n−又はi−プロピルメルカプタン、n−、i−又はt−ブチルメルカプタン、チオフェノールがより好ましい。
上記一般式(6)で表されるホスフィニド基含有化合物としては、ジアリールホスフィン、アルキルアリールホスフィン、ジアルキルホスフィン、ジシクロアルキルホスフィン、アリールシクロアルキルホスフィン、アルキルシクロアルキルホスフィン等がある。具体的には、ジフェニルホスフィン、ジ(3−メチルフェニル)ホスフィン、ジ(4−メチルフェニル)ホスフィン、ビス(2,4−ジメチルフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジメチルフェニル)ホスフィン、ビス(2,6−ジメチルフェニル)ホスフィン、ビス(2,4,6−トリメチルフェニル)ホスフィン、ビス(3,4,5−トリメチルフェニル)ホスフィン、ジ(4−t−ブチルフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジ−t−ブチルフェニル)ホスフィン、ジ(3−メトキシフェニル)ホスフィン、ジ(4−メトキシフェニル)ホスフィン、ビス(2,4−ジメトキシフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジメトキシフェニル)ホスフィン、ビス(2,6−ジメトキシフェニル)ホスフィン、ビス(2,4,6−トリメトキシフェニル)ホスフィン、ビス(3,4,5−トリメトキシフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジメチル−4−メトキシフェニル)ホスフィン、ジ(3−クロロフェニル)ホスフィン、ジ(4−クロロフェニル)ホスフィン、ビス(2,4−ジクロロフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジクロロフェニル)ホスフィン、ビス(2,6−ジクロロフェニル)ホスフィン、ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)ホスフィン、ビス(3,4,5−トリクロロフェニル)ホスフィン、ジ(3−フルオロフェニル)ホスフィン、ジ(4−フルオロフェニル)ホスフィン、ビス(2,4−ジフルオロフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジフルオロフェニル)ホスフィン、ビス(2,6−ジフルオロフェニル)ホスフィン、ビス(2,4,6−トリフルオロフェニル)ホスフィン、ビス(3,4,5−トリフルオロフェニル)ホスフィン、ジ(3−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ジ(4−トリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(2,4−ビストリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ビストリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(2,6−ビストリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(2,4,6−トリストリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ビス(3,4,5−トリストリフルオロメチルフェニル)ホスフィン、ジ(3−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、ジ(4−ジメチルアミノフェニル)ホスフィン、ビス(2,4−ビスジメチルアミノフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ビスジメチルアミノフェニル)ホスフィン、ビス(2,6−ビスジメチルアミノフェニル)ホスフィン、ビス(2,4,6−トリスジメチルアミノフェニル)ホスフィン、ビス(3,4,5−トリスジメチルアミノフェニル)ホスフィン、ジ(3−ビフェニル)ホスフィン、ジ(4−ビフェニル)ホスフィン、ビス(2,4−ジフェニルフェニル)ホスフィン、ビス(3,5−ジフェニルフェニル)ホスフィン、ビス(2,6−ジフェニルフェニル)ホスフィン、ビス(2,4,6−トリフェニルフェニル)ホスフィン、ビス(3,4,5−トリフェニルフェニル)ホスフィン、ジ(α−ナフチル)ホスフィン、ジ(β−ナフチル)ホスフィン、ジ(6−メトキシ−α−ナフチル)ホスフィン、ジ(6−メトキシ−β−ナフチル)ホスフィン、ジ(3,4−メチレンジオキシフェニル)ホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジイソプロピルホスフィン、ジ−t−ブチルホスフィン、ジシクロプロピルホスフィン、ジシクロペンチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ジシクロオクチルホスフィン、ジシクロデシルホスフィン、ジシクロドデシルホスフィン、及びシクロヘキシルフェニルホスフィン等が挙げられる。これらの中でも、ジフェニルホスフィン、ジメチルホスフィン、ジエチルホスフィン、ジイソプロピルホスフィン、ジ−t−ブチルホスフィン、ジシクロプロピルホスフィン、ジシクロペンチルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィン、ジシクロオクチルホスフィン、ジシクロデシルホスフィン、ジシクロドデシルホスフィンがより好ましい。
上記一般式(7)で表されるカルボキシル基含有化合物としては、具体的には、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、1,2,3−ベンゼントリカルボン酸、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、クエン酸、サリチル酸、(メタ)アクリル酸等が挙げられる。これらの中でも、蟻酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、マレイン酸、フマル酸、安息香酸、フタル酸、アクリル酸、メタクリル酸がより好ましい。
上記一般式(8)で表されるメチレンビスカルボニル基含有化合物としては、具体的には、2,4−ペンタジオン、3,5−ヘプタジオン、1,3−ジフェニルプロパンジオン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、マロン酸ジプロピル、マロン酸ジイソプロピル、マロン酸ジブチル、2−メチルマロン酸等が挙げられる。これらの中でも、2,4−ペンタジオン、3,5−ヘプタジオン、1,3−ジフェニルプロパンジオン、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、2−メチルマロン酸ジメチル、2−メチルマロン酸ジエチルがより好ましい。
上記一般式(9)で表されるニトロ基含有化合物としては、具体的には、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロ酢酸メチル、ニトロ酢酸エチル、ニトロ酢酸プロピル、ニトロ酢酸ブチル、ニトロメチルフェニルスルホン等が挙げられる。これらの中でも、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパンがより好ましい。
上記一般式(10)で表されるシアノ基含有化合物としては、具体的には、シアノメタン、シアノエタン、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチル、シアノ酢酸プロピル、シアノ酢酸ブチル等が挙げられる。
上記シアノ基含有化合物の中でも、シアン化水素、シアノ酢酸メチル、シアノ酢酸エチルがより好ましい。
上記一般式(11)で表されるメチレンビスシアノ基含有化合物としては、具体的には、マロノニトリル、2−メチルマロノニトリル、2−エチルマロノニトリル等が挙げられる。これらの中でも、マロノニトリル、2−メチルマロノニトリルがより好ましい。
上記アジ基含有化合物としては、アジ化水素が挙げられる。
したがって、反応原料として、一般式(1)で表される化合物とアルコール系ヒドロキシ基含有化合物、フェノール系ヒドロキシ基含有化合物及び/又はメルカプト基含有化合物とを用いる場合において、一般式(1)で表される化合物のエステル置換基部分の構造とヒドロキシ基含有化合物のヒドロキシ基以外の部分及び/又はメルカプト基含有化合物のメルカプト基以外の部分の構造とが異なる時に、本発明の製造方法の優位性がより顕著に発揮されることとなる。すなわち特に、活性水素含有化合物は、Y1−OH(Y1は、炭素数1〜200の有機基を表す。)で表されるアルコール系ヒドロキシ基含有化合物及び/又はフェノール系ヒドロキシ基含有化合物を用いる場合、Y1がR3とは異なる化合物であることもまた、本発明の好適な実施形態の1つである。
これらの中でも、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、ペンタフルオロフェノール、トリクロロフェノール類、ジクロロフェノール、p−トルエンスルフィン酸等のpKaが3〜8の有機酸;ホウ酸、リン酸等の無機酸;蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、ペンタフルオロフェノール、トリクロロフェノール類、ジクロロフェノール、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸等の有機酸又は塩酸、ホウ酸、リン酸、硫酸、硝酸、バナジン酸、タングステン酸、モリブデン酸等の無機酸とトリメチルアミン、トリエチルアミン、N−メチルイミダゾール、アニシジン、トルイジン、ピリジン、2,6−ジメチルピリジン、3,5−ジメチルピリジン、N,N−ジメチル−4−ピリジン、トリエチレンジアミン、キヌクリジン、ピロコリジンのアミン類との塩若しくは混合物;ホウ酸エステル類、ボロン酸類、ボロン酸エステル類、ハロゲン化ホウ素類、トリアリールボラン類等のホウ素化合物;酢酸亜鉛、亜鉛トリフラート、亜鉛アセチルアセトナート、酢酸マグネシウム、酢酸ランタン、ランタントリフラート、酢酸アルミニウム、アルミニウムトリフラートのルイス酸性金属塩が好ましい。より好ましくは、酢酸、安息香酸、ペンタフルオロフェノール、トリクロロフェノール類、ホウ酸、ホウ酸エステル、トリアリールボラン類、酢酸亜鉛、亜鉛トリフラート、これらの酸とトリメチルアミン、トリエチルアミン、アニシジン、トルイジン、ピリジン、トリエチレンジアミンとの塩若しくは混合物であり、更に好ましくは、酢酸、安息香酸、トリクロロフェノール類、ホウ酸、酢酸亜鉛、亜鉛トリフラートである。特に好ましくは、酢酸、酢酸亜鉛である。
なお、酸及び/又はその塩として、シュウ酸、p−トルエンスルホン酸、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸、バナジン酸、タングステン酸、モリブデン酸等のpKaが3未満のブレンステッド酸を用いる場合には、3級アミンと、酸及び/又はその塩とのモル比は、20/1〜1/1であることが特に好ましい。酸及び/又はその塩として、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、安息香酸、テレフタル酸、フタル酸、マレイン酸、ペンタフルオロフェノール、トリクロロフェノール類、ジクロロフェノール等のpKaが3〜8のブレンステッド酸を用いる場合には、3級アミンと、酸及び/又はその塩とのモル比は、10/1〜1/5であることが特に好ましい。酸及び/又はその塩として、ホウ酸、パラメトキシフェノール等のpKaが8より大きいブレンステッド酸を用いる場合には、3級アミンと、酸及び/又はその塩とのモル比は、10/1〜1/10であることが特に好ましい。酸及び/又はその塩として、上記有機酸又は無機酸とアミン類との塩若しくは混合物を用いる場合には、3級アミンと、酸及び/又はその塩とのモル比は、5/1〜1/10であることが特に好ましい。また、酸及び/又はその塩として、ホウ酸エステル、トリアリールボラン類等のホウ素化合物や、酢酸亜鉛、亜鉛トリフラート等のルイス酸性金属塩等のルイス酸を用いる場合には、3級アミンと、酸及び/又はその塩とのモル比は、20/1〜1/2であることが特に好ましい。
また、分子状酸素の供給量としては、特に制限されないが、反応系の気相部の酸素濃度が0.01〜10容量%となるように供給することが好ましい。
なお、上記反応工程中の重合反応を充分に抑制するためには、重合禁止剤と分子状酸素とを併用することが好ましい。
特に、一般式(1)で表される化合物のルイス塩基性官能基がヒドロキシ基である場合には、上記反応工程が脱水反応となるため、反応により生成する水を速やかに反応系内から除去することが好ましい。
上記副生成物を反応系外に除去する方法としては特に制限されないが、例えば常圧下又は減圧下での留去、活性水素含有化合物及び/又は溶媒との共沸による除去、膜分離による除去、吸着による除去、抽出による除去、ろ過による除去などが挙げられる。これらの中でも、活性水素含有化合物及び/又は溶媒との共沸によって除去する方法が好ましい。
上記共沸剤は、留去したい成分(副生成物)と極小共沸混合物を形成することで、通常の蒸留では分離できない二成分(副生成物と活性水素含有化合物など)の分離を可能とするものである。
上述のように、反応系に活性水素含有化合物、溶媒として添加されている化合物に加えて、共沸剤を更に添加して副生成物の除去を行う場合、共沸剤の添加量としては、活性水素含有化合物100質量%に対して、1〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜50質量%である。
ここで、Yは、活性水素含有化合物の残基を表すものであるが、これは、具体的には、次のように表される。
上記活性水素含有化合物が、アルコール系ヒドロキシ基含有化合物、又は、フェノール系ヒドロキシ基含有化合物である場合には、下記一般式(14);
以下、同様に、活性水素含有化合物が、ホスフィニド基含有化合物である場合、カルボキシル基含有化合物である場合、メチレンビスカルボニル基含有化合物である場合、ニトロ基含有化合物である場合、シアノ基含有化合物である場合、メチレンビスシアノ基含有化合物である場合、アジ基含有化合物である場合については、それぞれ下記一般式(16)〜(22)のように表される。なお、一般式(16)〜(21)におけるY3〜Y13は、上記一般式(6)〜(11)のY3〜Y13と同様である。cは、上記(14)、(15)と同様に、一般式(2)におけるR1、R2及びYが結合している炭素原子に該当する。
これらの中でも、トリメチルアミン、トリエチレンジアミン、キヌクリジン、ピロコリジン等の3級アミンを用いた場合には、本発明で用いられる活性水素含有化合物、並びに、酸及び/又はその塩も同時に仕込むことによって、一段階で一般式(2)で表されるα位置換アクリル酸エステル類を合成することが可能となり、又、上記一般式(1)で表される化合物の合成反応後に、反応混合物中に本発明で用いられる活性水素含有化合物、並びに、酸及び/又はその塩を添加することによって、一旦精製工程を経ることなく、上記一般式(2)で表されるα位置換アクリル酸エステル類を合成することが可能となるため好ましい。
Deevi Basavaiah、外2名、「ケミカル レビュー(Chemical Review)」、2003年、第103巻、p.811−891
上記主体となって得られるとは、反応後の生成物混合物中において、一般式(1)で表される化合物におけるルイス塩基性官能基を脱離させて活性水素含有化合物の残基に交換する反応によって得られた化合物(目的生成物)の方が、一般式(1)で表される化合物の−COOR3の部位におけるエステル交換反応によって得られた化合物(副生成物)よりも多くなっていることを表している。本発明のα位置換アクリル酸エステル類は、上記本発明の製造方法によって得られたものであることから、従来の製造方法によって得られたα位置換アクリル酸エステル類に比べて一般式(1)で表される化合物の−COOR3の部位におけるエステル交換反応によって得られた化合物の含有割合が少なく、上述した各種用途により好適に適用できるものであるといえる。
このように、下記一般式(2´);
原料転化率と収率は、ガスクロマトグラフ(製品名「AT−6850」、アジレント・テクノロジー社製、キャピラリーカラム:DB−WAX(商品名、アジレント・テクノロジー社製、長さ:30m、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm))を使用して測定し、事前に作成した検量線を用いて定量した。
選択率は、以下の式により求めた。
選択率=収率(mol%)/原料転化率(mol%)
ねじ口試験管(20ml)に、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル 2.3g、アリルアルコール 1.7g(1.5当量)、触媒の3級アミンとしてトリエチレンジアミン(DABCO)0.2g(0.1当量)、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル 0.001g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.001gを仕込んだ。密閉した後、反応液を80℃に昇温し、16時間反応を行った。
4、8、16時間後の反応液を上記方法で分析し、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルの転化率、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルに対するα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの収率及び反応の選択率を求めた。また、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルに対する、副生成物であるα−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルのエステル交換体の収率及び反応の選択率を求めた。結果を表1に示す。
触媒を表1の通りにした以外は、比較例1と同様の方法で反応及び分析を行った。結果を表1に示す。なお、表1中、3級アミンの使用量、酸の使用量、原料転化率及び収率の値は、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル100モル%に対するモル割合で表されている。3級アミン及び酸については、括弧内の数値が使用量を表している。また、表1中の略号は、以下の通りである。
DABCO:トリエチレンジアミン
TMA:トリメチルアミン
AcOH:酢酸
PhCO2H:安息香酸
(CO2H)2:シュウ酸
TCP:2,4,6−トリクロロフェノール
MQ:パラメトキシフェノール
TolSO2H:p−トルエンスルフィン酸
B(OH)3:ホウ酸
Zn(OAc)2:酢酸亜鉛
Zn(acac)2:亜鉛アセチルアセトナート
Zn(OTf)2:亜鉛トリフラート
Mg(OAc)2:酢酸マグネシウム
La(OAc)3:酢酸ランタン
Al(OTf)3:アルミニウムトリフラート
TMAHCl:トリメチルアミン塩酸塩
HClaq.、TEA:塩酸とトリエチルアミンとの混合物
AcOH、TEA:酢酸とトリエチルアミンとの混合物
B(OH)3、TEA:ホウ酸とトリエチルアミンとの混合物
TsOH、TEA:p−トルエンスルホン酸とトリエチルアミンとの混合物
H3PO4、TEA:リン酸とトリエチルアミンとの混合物
H2SO4、TEA:硫酸とトリエチルアミンとの混合物
B(OH)3、Pyridine:ホウ酸とピリジンとの混合物
H3PO4:リン酸
AMA:α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル
エステル交換体:α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルのエステル交換体
丸底フラスコ(500ml)に、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル 203.2g、触媒の3級アミンとしてトリエチレンジアミン(DABCO)9.8g(0.1当量)、酸としてホウ酸 10.9g、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル 0.1g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.1gを仕込んだ。7%の酸素を含む窒素を毎分5ml吹き込みながら、反応液を100℃に昇温した。10kPaに減圧したのち、発生する水分を留去しながら2時間反応を行った。常圧へと戻し、反応液を上記方法で分析すると、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルの転化率は89mol%、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルに対するエーテル二量体の収率は81mol%であった。続いて、トリエチレンジアミン(DABCO)9.8gとアリルアルコール 152.5g(1.5当量)を含む混合液を反応液を100℃で2時間かけて滴下した。その後、100℃で12時間熟成し、熟成後の反応液を上記方法で分析するとα−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルの転化率は92mol%、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルに対するα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの収率は65mol%であった。上記反応により得た反応液を水洗、蒸留したのちに得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルはα−メトキシメチルアクリル酸メチルを0.2wt%含有するものであった。
丸底フラスコ(500ml)に、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル 203.2g、アリルアルコール 152.5g、触媒の3級アミンとしてトリエチレンジアミン(DABCO)19.6g(0.1当量)、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル 0.1g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.1gを仕込んだ。7%の酸素を含む窒素を毎分5ml吹き込みながら、反応液を100℃に昇温した。α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルの転化率、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルに対するα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの収率、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの選択率、α−メトキシメチルアクリル酸メチルの収率、及びDABCOの残存率を表2に示す。上記反応により得た反応液を水洗、蒸留したのちに得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルはα−メトキシメチルアクリル酸メチルを0.6wt%含有するものであった。蒸留塔内にはα−メトキシメチルアクリル酸メチルに由来するポリマー成分が生じ、繰り返しの蒸留操作が困難であった。
丸底フラスコ(500ml)に、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル 203.2g、アリルアルコール 152.5g、触媒の3級アミンとしてトリエチレンジアミン(DABCO)9.8g(0.05当量)、ブレンステッド酸として酢酸 10.6g(0.1当量)、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル 0.1g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.1gを仕込んだ。7%の酸素を含む窒素を毎分5ml吹き込みながら、反応液を100℃に昇温した。α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルの転化率、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルに対するα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの収率、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの選択率、α−メトキシメチルアクリル酸メチルの収率、及びDABCOの残存率を表2に示す。上記反応により得た反応液を水洗、蒸留したのちに得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルはα−メトキシメチルアクリル酸メチルを0.05wt%含有するものであった。
蒸留塔1、相分離器2、還流ポンプ3等を備えた図3に示す丸底フラスコ(容量5L)に、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル 1625.7g、アリルアルコール 1219.7g(1.5当量)、触媒の3級アミンとしてトリエチレンジアミン(DABCO)78.5g(0.05当量)、ブレンステッド酸として酢酸 84.9g(0.1当量)、ルイス酸として酢酸亜鉛二水和物 30.7g(0.01当量)、水分の共沸剤としてジイソプロピルエーテル 429.1g(0.3当量)、重合禁止剤としてヒドロキノンモノメチルエーテル 0.8g、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル 0.8gを仕込んだ。7%の酸素を含む窒素ガス6を毎分5ml吹き込みながら、常圧で反応液を90℃に昇温した。塔頂液は相分離器2で油相9と水相10に分け、油相9を還流液11として塔頂へ返すとともに水相10を抜き出した。α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルの転化率、α−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルに対するα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの収率、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルの選択率、α−メトキシメチルアクリル酸メチルの収率、及びDABCOの残存率を表2に示す。上記反応により得た反応液を水洗、蒸留したのちに得られたα−アリルオキシメチルアクリル酸メチルはα−メトキシメチルアクリル酸メチルを0.02wt%含有するものであった。
なお、表2中の略号は、以下の通りである。
AMA:α−アリルオキシメチルアクリル酸メチル
メチルエーテル:α−メトキシメチルアクリル酸メチル
DABCO:トリエチレンジアミン
実施例の中でも、特に短時間でα位置換アクリル酸エステル類が高収率で得られる実施例8、10及び23においては、長時間反応を行うとむしろ、3級アミンの存在下に反応を行った比較例1よりも、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルに対する、副生成物であるα−ヒドロキシメチルアクリル酸メチルのエステル交換体の割合が高くなってしまっているが、これは、本発明の製造方法においては、α−アリルオキシメチルアクリル酸メチルが特に短時間で優先的に生成する場合には、それから更に反応を続けると副生成物の割合が増えてきてしまう場合があることを示している。
なお、上記実施例においては、特定の一般式(1)で表される化合物、活性水素含有化合物が用いられているが、一般式(1)で表される化合物と活性水素含有化合物とが反応する際に、触媒として3級アミンと酸及び/又はその塩とを共存させることによって進行すると考えられる反応機構は図1に示した通りであり、3級アミンと、酸及び/又はその塩とが共存した条件下で反応を行った場合には、全て同様の反応機構となる。
従って、上記実施例、比較例の結果から、本発明の技術的範囲全般において、また、本明細書において開示した種々の形態において本発明が適用でき、有利な作用効果を発揮することができると言える。
2:相分離器
3:還流ポンプ
4、5:冷却管
6:ガス
7、8:温度計
9:油相
10:水相
11:還流液
Claims (7)
- 下記一般式(1);
- 前記反応工程は、3級アミンと、酸及び/又はその塩とのモル比が10000/1〜1/10000であることを特徴とする請求項1に記載のα位置換アクリル酸エステル類の製造方法。
- 前記活性水素含有化合物は、アルコール系ヒドロキシ基含有化合物、フェノール系ヒドロキシ基含有化合物、メルカプト基含有化合物、ホスフィニド基含有化合物、カルボキシル基含有化合物、メチレンビスカルボニル基含有化合物、ニトロ基含有化合物、シアノ基含有化合物、メチレンビスシアノ基含有化合物、及び、アジ基含有化合物からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1又は2に記載のα位置換アクリル酸エステル類の製造方法。
- 前記活性水素含有化合物は、Y1−OH(Y1は、炭素数1〜200の有機基を表す。)で表されるアルコール系ヒドロキシ基含有化合物及び/又はフェノール系ヒドロキシ基含有化合物を用いる場合、Y1がR3とは異なる化合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のα位置換アクリル酸エステル類の製造方法。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法によって得られたα位置換アクリル酸エステル類であって、一般式(1)で表される化合物におけるルイス塩基性官能基を脱離させて活性水素含有化合物の残基に交換する反応が、−COOR3の部位におけるエステル交換反応よりも主体となって得られた生成物であることを特徴とするα位置換アクリル酸エステル類。
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