JP5191702B2 - N−オキシル化合物、その製造方法および重合防止方法 - Google Patents
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(a)2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン−N−オキシル(特許文献1)。
(b)2,2,6,6−テトラメチル−4−ベンゾイルオキシピペリジン−N−オキシル(特許文献1)。
(c)4−アセチルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル(特許文献2)。
(d)ビス(2,2,6,6−テトラメチル−N−オキシルピペリジル)スクシネート(特許文献3)。
(e)1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)ピペリジン(特許文献4)。
(f)1−オキシル−2,2,6,6−テトラメチル−4−グリシジルオキシピペリジン(特許文献4)。
(g)エステル結合を有する化合物(特許文献4)。
しかし、(a)、(e)、(f)の化合物は、分子量が小さいため、揮発または昇華して蒸留時に(メタ)アクリル酸エステルと一緒に溜出する可能性がある。
(b)、(c)、(d)、(g)の化合物は、エステル結合またはアミド結合を有するため、製造および蒸留時に、(メタ)アクリル酸またはそのエステルとエステル交換反応を起こし、4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−N−オキシル等の低沸点な化合物となり、蒸留時に(メタ)アクリル酸エステルと一緒に溜出する可能性がある。また、(メタ)アクリロイルオキシ基と置き換わった置換基は、対応するアルコールとなり、製品となる(メタ)アクリル酸エステルの純度低下の原因となる。
(i)N−オキシル化合物を製造する際に再結晶、洗浄、蒸留等の煩雑な精製工程が必要とされる。
(ii)該精製工程によって、母液、洗浄液、釜にN−オキシル化合物が残る等のロスが生じ、収率はあまり高くない。
(iii)N−オキシル化合物の製造に用いた触媒および原料が多く含まれたN−オキシル化合物を(メタ)アクリル酸エステルの製造に用いると、N−オキシル化合物の原料由来の(メタ)アクリル酸エステル等の副生物が生成し、(メタ)アクリル酸エステルの品質が低下する。
また、本発明の目的は、異なる(メタ)アクリル酸エステルの生成を抑える(メタ)アクリル酸エステルの混合物を提供することにある。
本発明の化合物の製造方法は、触媒の存在下、下記式(3)で表される化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、下記式(1)で表される化合物を製造することを特徴とする。
触媒は、鉄化合物またはクロム化合物であることが好ましい。
本発明の重合防止方法は、本発明の化合物の製造方法にて下記式(1)で表される化合物を製造し、その化合物を2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに共存させることを特徴とする。
本発明の重合防止方法は、(メタ)アクリル酸エステルに、前記式(1−1)で表される化合物もしくは前記式(1−2)で表される化合物、またはその両方を共存させることを特徴とする。
また、本発明の重合防止方法は、触媒の存在下、前記式(3)で表される化合物と(メタ)アクリル酸とを反応させて、前記式(1)で表される化合物を製造し、反応に使用した(メタ)アクリル酸が残存した状態で、前記式(1)で表される化合物を含む混合物を下記式(2)(R 21 は、炭素数6〜40のアルコール残基、またはフッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子および塩素原子からなる群から選ばれる1種以上を含有する炭素数2〜40のアルコール残基を表し、R 22 は、水素原子またはメチル基を表す。)で表される化合物の製造時、蒸留時、貯蔵または輸送時に共存させることを特徴とする。
下記式(2)で表される化合物は、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
触媒は、鉄化合物またはクロム化合物であることが好ましい。
本発明の重合防止剤は、(メタ)アクリル酸エステルの重合を充分に抑え、(メタ)アクリル酸エステルの製造時に安定であり、(メタ)アクリル酸エステルの蒸留時に(メタ)アクリル酸エステルと一緒に溜出しにくい。
本発明の混合物によれば、(メタ)アクリル酸エステルの重合が充分に抑えられ、副生成物の生成が少なく、蒸留によって高純度の(メタ)アクリル酸エステルが得られる。
本発明の重合防止方法によれば、(メタ)アクリル酸エステルの重合を充分に抑えることができる。
本明細書においては、(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルを意味する。
本明細書においては、(メタ)アクリロイル基は、メタクリロイル基またはアクリロイル基を意味する。
本明細書においては、アルコール残基は、アルコールからヒドロキシ基を1つ除いた基を意味する。
本発明の化合物は、化合物(1)である。
化合物(1)は、下記の方法によって製造できる。
(I)化合物(3)と、炭素数6〜40のアルコール、またはフッ素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子および塩素原子からなる群から選ばれる1種以上を含有する炭素数2〜40のアルコールとを反応させる方法。
(II)化合物(3)と、メタクリル酸もしくはその誘導体、またはアクリル酸もしくはその誘導体を反応させる方法。
反応液は、少量の水を含んでいてもよい。水の量は、化合物(3a)の選択性の点から、反応液に対して0.1倍質量以下が好ましく、0.02倍質量以下がより好ましい。該水の量としては、原料に含まれる水等も含まれる。
反応時間は、2〜48時間程度が好ましい。
抽出溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
化合物(3)は、必要に応じて、水、有機溶媒等による洗浄、溶媒分別法、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶法、電気透析法等の公知の方法により精製してもよい。
アルコールの量は、化合物(3)に対して、通常0.1〜100倍モルである。アルコールの量は、収率の点から、化合物(3)に対して0.8倍モル以上が好ましく、1.5倍モル以上がより好ましい。アルコールの量は、生産性の点から、化合物(3)に対して50倍モル以下が好ましく、20倍モル以下がより好ましい。
塩基性化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ金属の炭酸塩、アルカリ金属のアルコキサイド、第三アミン、ピリジン、アニオン交換体等が挙げられ、中でも、収率および化合物(1)の純度の点から、アニオン交換体が特に好ましい。塩基性化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
三菱化学社製:ダイヤイオンPA−306、ダイヤイオンPA−308、ダイヤイオンPA−312、ダイヤイオンPA−316、ダイヤイオンPA−318、ダイヤイオンPA−406、ダイヤイオンPA−408、ダイヤイオンPA−412、ダイヤイオンPA−416、ダイヤイオンPA−418。
ダウケミカル社製:ダウエックス1−X2、ダウエックスTG−550A。
オルガノ社製:アンバーライトIRA−45、アンバーライトIRA−94、アンバーライトIRA67、アンバーライトIRA96SB。
アニオン交換樹脂は、繰り返し利用できる。再利用する場合、アニオン交換樹脂を再生することが好ましい。再生方法としては、公知の方法、例えば、酸の水溶液で処理し、水洗、アルコール洗浄等を行う方法が挙げられる。
反応液は、少量の水を含んでいてもよい。水の量は、化合物(1)の選択性の点から、反応液に対して0.1倍質量以下が好ましく、0.02倍質量以下がより好ましい。該水の量としては、原料に含まれる水等も含まれる。
反応時間は、通常2〜48時間程度である。
抽出溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
アニオン交換体等の不溶性の塩基性化合物を用いた場合、濃縮および蒸留のみを行えばよく、高純度の化合物(1)を得ることができる。
化合物(1)は、必要に応じて、水、有機溶媒等による洗浄、溶媒分別法、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶法、電気透析法等の公知の方法により精製してもよい。
メタクリル酸もしくはその誘導体、またはアクリル酸もしくはその誘導体(以下、(メタ)アクリル酸系原料と記す。)としては、副生成物が少なく、反応が円滑に進行する点から、メタクリル酸またはアクリル酸が好ましい。
(メタ)アクリル酸系原料の量は、化合物(3)に対して、通常0.1〜100倍モルである。(メタ)アクリル酸系原料の量は、収率の点から、化合物(3)に対して0.8倍モル以上が好ましく、1.5倍モル以上がより好ましい。(メタ)アクリル酸系原料の量は、生産性の点から、化合物(3)に対して50倍モル以下が好ましく、10倍モル以下がより好ましい。
鉄化合物としては、金属鉄、酸化第一鉄、酸化第二鉄、四三酸化鉄、硝酸第一鉄、硝酸第二鉄、塩化第一鉄、塩化第二鉄、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、酢酸第一鉄、酢酸第二鉄、メタクリル酸第一鉄、メタクリル酸第二鉄、水酸化第一鉄、水酸化第二鉄、鉄アセチルアセトナート、フェロセン、メタクリル酸の三核錯体等の錯体が挙げられる。鉄化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
反応液は、少量の水を含んでいてもよい。水の量は、化合物(1)の選択性の点から、反応液に対して0.1倍質量以下が好ましく、0.02倍質量以下がより好ましい。該水の量としては、原料に含まれる水等も含まれる。
反応時間は、通常2〜48時間程度である。
抽出溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ジエチルエーテル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
化合物(1)は、必要に応じて、水、有機溶媒等による洗浄、溶媒分別法、イオン交換クロマトグラフィー、再結晶法、電気透析法等の公知の方法により精製してもよい。
本発明の重合防止剤は、前記化合物(1−1)もしくは前記化合物(1−2)、またはその両方を含むものである。
他の重合防止剤としては、(メタ)アクリル酸エステルの製造時に安定であり、(メタ)アクリル酸エステルの蒸留時に熱的に安定であり、かつ(メタ)アクリル酸エステルと一緒に溜出しにくい重合防止剤が好ましい。
他の重合防止剤の含有量は、化合物(1−1)および化合物(1−2)の合計100質量部に対して、通常10000〜0.01質量部であり、8000〜0.02質量部が好ましく、7000〜0.03質量部がより好ましい。
本発明の混合物は、本発明の重合防止剤と、(メタ)アクリル酸エステルとを含む混合物である。
重合防止剤の含有量は、(メタ)アクリル酸エステル100質量部に対して、通常0.0001〜5質量部であり、0.0002〜4質量部が好ましく、0.0003〜3質量部がより好ましい。重合防止剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の重合防止方法は、(メタ)アクリル酸エステルに、本発明の重合防止剤を共存させる方法である。具体的には、以下の方法が挙げられる。
(A)(メタ)アクリル酸エステルの製造時に、重合防止剤を共存させる方法。
(B)(メタ)アクリル酸エステルの蒸留時に、重合防止剤を共存させる方法。
(C)(メタ)アクリル酸エステルの貯蔵または輸送時に、重合防止剤を共存させる方法。
(B)の方法としては、例えば、あらかじめ化合物(1)に化合物(2)を添加しておく方法、蒸留工程における蒸留釜や精留塔などに重合防止剤を供給する方法等が挙げられる。
(C)の方法としては、(メタ)アクリル酸エステルの原料の反応生成物に重合防止剤を添加する方法、精製した(メタ)アクリル酸エステルに重合防止剤を添加する方法等が挙げられる。
化合物(1−1)のR11および化合物(1−2)のR12が、アルコール残基である場合、(メタ)アクリル酸エステルとしては、前記化合物(2)が好ましい。
したがって、(メタ)アクリル酸エステルの製造に用いるアルコールと、化合物(1)の製造に用いるアルコールが同じであれば、前記問題は解決される。さらに、化合物(1)の精製が不要となり、エネルギー、溶媒等の使用量を削減できる。
また同様に、無溶媒でアニオン交換体等の除去が容易な触媒を用いて化合物(1)を製造すると、化合物(1)の精製が不要となり、エネルギーや溶媒などの使用量を削減できる。
〔合成例1〕
化合物(3−1)の合成:
化合物(3−1)22.8g(0.10モル)を2−エチルヘキシルアルコール260g(2.0モル)に溶解させ、Cl型をOH基に置換したアニオン交換樹脂(三菱化学社製、ダイヤイオンPA−308)5.0gを加えた後、60℃で8時間攪拌した。反応後、化合物(3−1)は検出されなかった。室温に冷却した後、ろ過、濃縮(精製)することにより、化合物(11−1)および化合物(11−2)の混合物33.5gを得た。
2−エチルヘキシルアルコールをエチレングリコール248gに変更した以外は、参考例1と同様にして、化合物(12−1)および化合物(12−2)の混合物27.0gを得た。
2−エチルヘキシルアルコールをメタクリル酸に変更し、アニオン交換体を酢酸クロム1.4gに変更した以外は、参考例1と同様にして、化合物(13−1)および化合物(13−2)の混合物29.1gを得た。該混合物の1H−NMRを測定し、化合物(13−1)および化合物(13−2)が得られていることを確認した。溶媒として重クロロホルムを用いた。該混合物の1H−NMRチャートを図1に示す。
化合物(3−1)22.8g(0.10モル)を1−ヘキシルアルコール102g(2.0モル)に溶解させ、Cl型をOH基に置換したアニオン交換樹脂(三菱化学社製、ダイヤイオンPA−308)5.0gを加えた後、60℃で8時間攪拌した。反応後、化合物(3−1)は検出されなかった。室温に冷却した後、ろ過、濃縮(精製)することにより、化合物(14−1)および化合物(14−2)の混合物31.3gを得た。該混合物の1H−NMRを測定し、化合物(14−1)および化合物(14−2)が得られていることを確認した。溶媒として重クロロホルムを用いた。該混合物の1H−NMRチャートを図2に示す。
重合防止剤として化合物(11−1)および化合物(11−2)の混合物を100ppm添加した2−エチルヘキシルメタクリレート(以下、2−EHMAと記す。)をアンプル管に10g量り取り、アンプル管を密閉し、100℃のオイルバス中で振とう加熱処理を行い、重合が開始するまでの時間を計測した。重合の開始は目視にて判断した。結果を表1に示す。
化合物(11−1)および化合物(11−2)の混合物を、p−メトキシフェノールに変更した以外は、参考例5と同様に試験した。結果を表1に示す。
化合物(11−1)および化合物(11−2)の混合物を、化合物(12−1)および化合物(12−2)の混合物に変更し、2−EHMAを2−ヒドロキシエチルメタクリレート(以下、HEMAと記す。)に変更した以外は、参考例5と同様に試験した。結果を表1に示す。
化合物(12−1)および化合物(12−2)の混合物を、化合物(13−1)および化合物(13−2)の混合物に変更した以外は、参考例6と同様に試験した。結果を表1に示す。
化合物(12−1)および化合物(12−2)の混合物を、p−メトキシフェノールに変更し、2−EHMAをHEMAに変更した以外は、参考例6と同様に試験した。結果を表1に示す。
参考例1と同様にして化合物(11−1)および化合物(11−2)の混合物を得た。ただし、室温に冷却した後、ろ過してからは、濃縮(精製)することなく、そのまま容器に移して保管した。
20段オルダーショウ蒸留塔を備えた還流装置に接続した、側管付き四つ口フラスコ(容積2L)に、メチルメタクリレート902g(9モル)、2−エチルヘキサノール675g(5.2モル)、テトラメトキシチタン0.45g(0.0026モル)および重合防止剤として参考例8の混合物2.3g(0.76mモル)をフラスコ内に仕込み、少量の空気をバブリングしながら攪拌して5時間エステル交換反応を行った。エステル交換反応の際、反応が進むにしたがって反応温度が上昇したが、反応温度が130℃を超えないように減圧しながら反応を行い、反応で生成したメタノールはメチルメタクリレートとの共沸で系外に除去した。
Claims (7)
- 触媒が、鉄化合物またはクロム化合物である請求項2に記載の化合物の製造方法。
- 請求項2または3に記載の化合物の製造方法にて前記式(1)で表される化合物を製造し、その化合物を2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートに共存させる重合防止方法。
- 触媒の存在下、下記式(3)で表される化合物
と(メタ)アクリル酸とを反応させて、下記式(1)
で表される化合物を製造し、反応に使用した(メタ)アクリル酸が残存した状態で、式(1)で表される化合物を含む混合物を下記式(2)
で表される化合物の製造時、蒸留時、貯蔵または輸送時に共存させる重合防止方法。 - 式(2)で表される化合物が、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートである、請求項5に記載の重合防止方法。
- 触媒が、鉄化合物またはクロム化合物である請求項5または6に記載の重合防止方法。
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