JPWO2011125801A1 - 微細セルロース繊維分散液の製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、微細セルロース繊維が有機溶媒中に均一に分散し、樹脂または樹脂前駆体を含み、液安定性および製膜性に優れ、微細セルロース繊維と樹脂との複合体を生産性よく製造することができる微細セルロース繊維分散液の製造方法を提供することを目的とする。本発明は、微細セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、有機溶媒とを含有する微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、有機溶媒とを含有する原料分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る解繊工程を含む、微細セルロース繊維分散液の製造方法に関する。

Description

本発明は、微細セルロース繊維分散液の製造方法に関する。より詳しくは、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方、並びに有機溶媒の存在下にて、セルロース繊維の解繊を行う、微細セルロース繊維分散液の製造方法に関する。
近年、バクテリアセルロースをはじめとするセルロースの微細繊維を用いた複合材料が、盛んに研究されている。セルロースは分子内水素結合に由来する剛直な構造を有することから、樹脂などと複合化することにより、低線膨張性を示す複合材料を得ることができる。
現在までに、セルロースを含む複合材料に関する様々な研究が行われており、例えば、特許文献1〜3においては、セルロース繊維の不織布またはゲルなどに液状の樹脂前駆体を含浸させ、セルロース繊維と樹脂との複合体を製造できることが開示されている。
より具体的には、例えば、特許文献1では、セルロース繊維が分散した水分散液をテフロン(登録商標)製ろ過膜で抄紙してセルロース繊維の不織布を製造し、高温条件下にてエポキシ樹脂を該不織布に含浸させ、複合体を製造している。
一方、これらの文献に記載の方法では、複合体を製造する前に、予めセルロース繊維の不織布などを製造する必要があり、製造プロセスが複雑化してしまい、必ずしも工業的に満足できる方法ではなかった。また、該方法では樹脂を含浸させて複合体を得るため、樹脂とセルロース繊維との組成比を制御することが難しく、用途に応じて、所望の特性を有する複合体を作り分けることが困難であった。さらに、該方法で得られる複合体は樹脂層とセルロース繊維層との層状構造を有するため、それぞれの層の線膨張係数の相違から、加熱時に層間剥離を起こす懸念があった。
上記のような実情の下、セルロース繊維の不織布またはゲルを用いないで、セルロース繊維と樹脂との複合体を得る方法の開発が望まれており、いくつかの報告がなされている(特許文献4〜6)。
特許文献4では、セルロース繊維とマトリックス樹脂の液状前駆体とを含む繊維強化複合樹脂組成物を、接着剤および封止剤として用いることが開示されている。また、特許文献5では、界面活性剤を含有する非水溶性媒体中にセルロースが分散してなるセルロース分散体が開示されており、樹脂との複合化により複合材料が得られることが記されている。さらに、特許文献6では、ミクロフィブリルセルロースが分散した状態のエポキシ樹脂組成物を用いて、複合材料を得る方法が開示されている。
日本国特開2006−316253号公報 日本国特開2007−165357号公報 日本国特開2008−127510号公報 日本国特開2007−146143号公報 日本国特開2010−13604号公報 日本国特開2010−24413号公報
一方、特許文献4〜6に記載の方法では、以下のような問題点があった。
特許文献4に記載の方法では、まず、水中にてセルロース繊維を解繊処理してセルロース繊維が分散した水溶液を製造し、次に、該水溶液と液状エポキシ樹脂とを混合し、減圧条件にて水を蒸発させることで繊維強化複合樹脂組成物を製造している。
しかしながら、特許文献4に記載の方法では、水の蒸発時にセルロース繊維が凝集し、その一部が沈降してしまい、得られる組成物の液安定性が必ずしも十分でなかった。また、得られる組成物は製膜性に乏しく、該組成物から得られる複合体中におけるセルロース繊維の分散性についても改良の余地があった。
特許文献5に記載の方法では、分散体中に界面活性剤が含有されているため、該分散体を用いてセルロースと樹脂との複合化を行うと、複合体中に界面活性剤または水が混入してしまい、複合体中に不均一構造が形成され、線膨張性など様々な特性に影響を与える懸念がある。また、界面活性剤が複合体表面上にブリードアウトして、複合体の特性を損なわせることもある。
特許文献6では、水中にてフィブリル化されたセルロース繊維を含む水溶液を、アルコール置換して得られたシート状ミクロフィブリルセルロースを再度アルコール中にて超音波による再分散処理し、その後アルコールからエポキシ樹脂への置換を行う方法が使用されている。
しかしながら、特許文献6に記載の方法では、アルコール置換時にセルロース繊維が凝集し、その一部が沈降してしまい、得られる分散液の液安定性が必ずしも十分でなかった。さらに、特許文献6中に記されるように、得られる複合体中においては、ミクロフィブリルセルロースの含有量が高濃度になると、高分子系母材への分散性が低下してしまうため、複合体の製造方法としての汎用性が十分でなかった。
以上のように、従来技術においては、セルロース繊維を非極性媒体または液状の樹脂中に分散させて、複合体を得る方法が提案されている。しかしながら、セルロースは、その分子構造中に複数の水酸基を有し、多様で強固な分子内および分子間水素結合を形成しているため、界面活性剤などの添加剤を使用せずに、水以外の媒体(例えば、非極性媒体)または液状の樹脂中に均一に分散させることが困難であった。
仮に、ナノメートルレベルの微細な平均繊維径を有する微細セルロース繊維が水以外の有機溶媒中に均一に分散し、さらに樹脂またはその前駆体を含有し、製膜性などに優れた分散液を得ることができれば、微細セルロース繊維が均一に分散した複合体を容易に製造することができ、その工業的価値は大きいといえる。
本発明は、上記実情を鑑みて、微細セルロース繊維が有機溶媒中に均一に分散し、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を含み、液安定性および製膜性に優れ、微細セルロース繊維と樹脂との複合体を生産性よく製造することができる微細セルロース繊維分散液の製造方法を提供することを目的とする。
さらに、本発明は、該製造方法によって得られる微細セルロース繊維分散液を用いた、セルロース繊維複合体およびその製造方法を提供することも目的とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、セルロース繊維の解繊処理を、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方、並びに、有機溶媒の存在下で実施することにより、上記課題を解決できることを見出した。
即ち、本発明者らは、上記課題が下記構成により解決されることを見出した。
1.微細セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、有機溶媒とを含有する微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、
セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、有機溶媒とを含有する原料分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る解繊工程を含む、微細セルロース繊維分散液の製造方法。
2.前記セルロース繊維が、化学修飾されたセルロース繊維である、前項1に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
3.前記樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂並びにこれらの前駆体からなる群から選ばれる、前項1または2に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
4.前記樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方が、エポキシ樹脂およびその前駆体の少なくとも一方である、前項1〜3のいずれか1つに記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
5.前項1〜4のいずれか1つに記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法より得られる、微細セルロース繊維分散液。
6.前項5に記載の微細セルロース繊維分散液に、さらに樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を添加して得られる、微細セルロース繊維分散液。
7.前項5または6に記載の微細セルロース繊維分散液に、さらに有機溶媒を添加して得られる、微細セルロース繊維分散液。
8.前項5〜7のいずれか1つに記載の微細セルロース繊維分散液を用いて得られる、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体。
9.前項5〜7のいずれか1つに記載の微細セルロース繊維分散液に加熱処理および露光処理の少なくとも一方を施し、前記有機溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得る複合化工程を含む、セルロース繊維複合体の製造方法。
10.前記複合化工程前に、前記微細セルロース繊維分散液にさらに樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を添加する添加工程を含む、前項9に記載のセルロース繊維複合体の製造方法。
11.微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体の製造方法であって、
セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、溶媒とを含有する原料分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る解繊工程、および、
該微細セルロース繊維を含有する分散液に、加熱処理および露光処理の少なくとも一方を施し、
前記溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得る複合化工程を含む、セルロース繊維複合体の製造方法。
12.前項9〜11のいずれか1つに記載の製造方法により製造された、セルロース繊維複合体。
13.基板及び前項8または12に記載のセルロース繊維複合体を含む積層体。
14.さらに保護フィルムを含む、前項13に記載の積層体。
15.前項13または14に記載の積層体を含む配線基板。
16.微細セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、有機溶媒とを含有する微細セルロース繊維分散液であって、下記(1)を満たす微細セルロース繊維分散液。
(1)分散液を室温で10日間静置した後、分散液中の沈降の有無を目視により観察する沈降性試験において、沈降が観察されない。
本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法は、セルロース繊維、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方、並びに有機溶媒を含有する原料分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る解繊工程を含む。該解繊工程を経ることにより、微細セルロース繊維の再凝集が抑制され、分散液の安定性を向上することができ、微細セルロース繊維の凝集および沈降といった問題を解決し、微細セルロース繊維が均一に安定して分散した微細セルロース分散液を得ることができる。
また、好適な態様として、エポキシ樹脂を使用した場合には、セルロース繊維表面の水酸基とエポキシ樹脂のエポキシ基の間に働く水素結合がセルロース繊維とエポキシ樹脂との両者の相溶性を向上させることができ、顕著な本発明の効果が得られる。さらに、本発明の製造方法によって得られる微細セルロース繊維分散液は製膜性および成形性に優れている。
具体的には、本発明によれば、微細セルロース繊維が有機溶媒中に均一に分散し、樹脂または樹脂前駆体を含み、液安定性および製膜性に優れ、微細セルロース繊維と樹脂との複合体を生産性よく製造することができる微細セルロース繊維分散液の製造方法を提供することができる。さらに、本発明によれば、該製造方法によって得られる分散液を用いた、セルロース繊維複合体およびその製造方法を提供することもできる。
図1は、実施例2で得られたセルロース繊維複合体膜のマイクロスコープでの撮影画像である。撮影倍率は、26.5倍である。 図2は、実施例8で得られたセルロース繊維複合体膜のマイクロスコープでの撮影画像である。撮影倍率は、26.5倍である。
以下に本発明の微細セルロース繊維分散液およびその製造方法、並びに、セルロース繊維複合体およびその製造方法について詳述する。本発明において、「重量%」は「質量%」と同義である。
本発明の微細セルロース繊維分散液の製造方法は、セルロース繊維、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方、および有機溶媒を含有する原料分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る解繊工程を含む。該解繊工程を経ることにより、従来の手法では避けられなかった微細セルロース繊維の凝集または沈降といった問題が解決され、微細セルロース繊維が均一に安定して分散した分散液を得ることができる。
本発明においては、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方、並びに有機溶媒の存在下で解繊処理を施すことにより、微細セルロース繊維の再凝集が抑制され、分散液の安定性が向上したものと推測される。特に、エポキシ樹脂を使用した場合には、セルロース繊維表面の水酸基とエポキシ樹脂のエポキシ基の間に働く水素結合がセルロース繊維とエポキシ樹脂との両者の相溶性を向上させ、本発明の効果が顕著となる。
なお、水中にてセルロース繊維を解繊処理し、この水分散液に樹脂を混合した後に、セルロース繊維複合体の製造を行った場合、水が揮発しにくく、製膜性または成形性が悪いなどといった問題が生じるが、本発明の製造方法によって得られる微細セルロース繊維分散液を使用すると該問題も解消できる。つまり、本発明の分散液は、製膜性および成形性に優れる。
まず、本発明において使用される材料(セルロース繊維、溶媒、並びに樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方など)について詳述する。
<セルロース繊維>
本発明で使用するセルロース繊維は、微細セルロール繊維の原料となる材料(セルロース繊維原料)であり、セルロースを含有する物質(セルロース含有物)であればその種類は特に限定はされない。
なかでも、以下に列挙する物質から精製を経て不純物を除去されたものであることが好ましく、特に、植物由来原料から得られるセルロースが好ましい。なお、本発明においては、セルロース繊維として、セルロースを使用してもよいし、不純物を一部含むセルロース(セルロース原料)を使用してもよい。
セルロース繊維を含有する材料(物質)としては、例えば、針葉樹および広葉樹等の木質、コットンリンターおよびコットンリント等のコットン、さとうきびおよび砂糖大根等の絞りかす、亜麻、ラミー、ジュートおよびケナフ等の靭皮繊維、サイザルおよびパイナップル等の葉脈繊維、アバカおよびバナナ等の葉柄繊維、ココナツヤシ等の果実繊維、竹等の茎幹繊維、バクテリアが産生するバクテリアセルロース、バロニアおよびシオグサ等の海草並びにホヤの被嚢等が挙げられる。これらの天然セルロースは、結晶性が高いので低線膨張率、高弾性率になり好ましい。
バクテリアセルロースは微細な繊維径のものが得やすい点で好ましい。また、コットンも微細な繊維径なものが得やすい点で好ましく、さらに原料が得やすい点で好ましい。さらには針葉樹および広葉樹等の木質も微細な繊維径のものが得られ、かつ地球上で最大量の生物資源であり、年間約700億トン以上ともいわれる量が生産されている持続型資源であることから、地球温暖化に影響する二酸化炭素削減への寄与も大きく、経済的な点から優位である。
必要に応じて、このような材料に後述する精製処理を施して、不純物を除去してもよい。
(繊維径)
本発明に用いられるセルロース繊維の繊維径は特に制限されるものではなく、後述する解繊処理時の解繊効率、および取扱い性の点から、数平均繊維径としては10μm〜100mmであることが好ましく、50μm〜0.5mmであることがより好ましい。一般的な精製を経たものは数百μm程度(50〜500μmが好ましい)であり、また一般的な方法によりセルロースを解繊したものは数nm〜1μmである。
例えば、チップ等の数cm大のものを精製したものである場合、リファイナーまたはビーター等の離解機で機械的処理を行い、数mm程度にすることが好ましい。
なお、数平均繊維径の測定方法は特に限定されず、SEMまたはTEM等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の測定値を平均して求めることができる。
原料の切断ないし破砕は、後述の原料の精製などの処理を行う場合、その処理前、処理中および処理後のいずれの時期に行ってもよい。例えば、精製処理前であれば衝撃式粉砕機および剪断式粉砕機などを用い、また精製処理中、処理後であればリファイナーなどを用いて行うことができる。
(精製方法)
本発明においては、使用するセルロース繊維に精製処理を施して(精製工程)、原料中のセルロース以外の物質、例えば、リグニン、ヘミセルロースまたは樹脂(ヤニ)などを除去することが好ましい。つまり、精製処理が施されたセルロース繊維を使用することが好ましい。
精製方法は特に制限されないが、例えば、原料をベンゼン−エタノールで脱脂した後、ワイズ法で脱リグニン処理を行い、アルカリで脱ヘミセルロース処理をする方法が挙げられる。または、一般的な化学パルプの製造方法、例えば、クラフトパルプ、サリファイドパルプおよびアルカリパルプ等の製造方法が挙げられる。また、原料を蒸解釜で加熱処理して脱リグニン等の処理を行い、更に漂白処理等を行うことが好ましい。
精製処理に用いる分散媒としては、一般的に水が用いられるが、酸または塩基、その他の処理剤の水溶液であってもよく、この場合には、最終的に水で洗浄処理してもよい。
また、原料を木材チップまたは木粉などの状態に破砕してもよく、該破砕は上述の如く、精製処理前、処理の途中、処理後、いずれのタイミングで行ってもかまわない。
セルロース繊維の精製処理に使用する酸または塩基、その他の処理剤は、特に限定されない。例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、硫化ナトリウム、硫化マグネシウム、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カルシウム、亜硫酸マグネシウム、亜硫酸アンモニウム、硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、酸化ナトリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酢酸、シュウ酸、次亜塩素酸ナトリウム、次亜塩素酸カルシウム、亜塩素酸ナトリウム、塩素酸ナトリウム、二酸化塩素、塩素、過塩素酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、過酸化水素、オゾン、ハイドロサルファイト、アントラキノン、ジヒドロジヒドロキシアントラセン、テトラヒドロアントラキノン、アントラヒドロキノン、また、エタノール、メタノール、2−プロパノールなどのアルコール類並びにアセトンなどの水溶性有機溶媒などが挙げられる。これらの処理剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、必要に応じて、塩素、オゾン、次亜塩素酸ナトリウム、過酸化水素または二酸化塩素などで漂白処理を行ってもよい。
また、2種以上の処理剤を用いて、2以上の精製処理を行うこともでき、その場合、異なる処理剤を用いた精製処理間で、水で洗浄処理することが好ましい。
精製処理時の温度、圧力は特に制限はなく、温度は0℃以上100℃以下の範囲で選択され、1気圧を超える加圧下での処理の場合、温度は100℃以上200℃以下とすることが好ましい。
(化学修飾)
本発明においては、使用されるセルロース繊維は、化学修飾によって誘導化されたもの(化学修飾されたセルロース繊維)であってもよい。化学修飾とは、セルロース中の水酸基が化学修飾剤と反応して化学修飾されたものである。
化学修飾は、上述したリグニンまたはヘミセルロース等を除去する精製処理の前に行っても、後に行ってもよいが、化学修飾剤の効率的な反応の観点で、精製処理後のセルロースに対して化学修飾するのが好ましい。なお、該化学修飾は、後述する解繊工程によってセルロース繊維に解繊した後に行ってもよい。
化学修飾によってセルロースの水酸基に導入する置換基(水酸基中の水素原子と置換して導入される基)は特に制限されず、例えば、アセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、プロピオニル基、プロピオロイル基、ブチリル基、2−ブチリル基、ペンタノイル基、ヘキサノイル基、ヘプタノイル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ステアロイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、ナフトイル基、ニコチノイル基、イソニコチノイル基、フロイル基、シンナモイル基等のアシル基、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアノイル基等のイソシアネート基、メチル基、エチル基、プロピル基、2−プロピル基、ブチル基、2−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、ミリスチル基、パルミチル基、ステアリル基等のアルキル基、オキシラン基、オキセタン基、チイラン基およびチエタン基等が挙げられる。これらの中では特にアセチル基、アクリロイル基、メタクリロイル基、ベンゾイル基およびナフトイル基等の炭素数2〜12のアシル基が好ましい。
より具体的には、以下の式(1)で表されるX、XまたはXが、上記列挙した置換基であることが好ましい。
Figure 2011125801
上記X、XまたはXの他の態様として、芳香環含有置換基が挙げられる。芳香環含有置換基とは、炭化水素芳香族化合物、複素環芳香族化合物、または非ベンゼノイド芳香族化合物由来の置換基である。
炭化水素芳香族化合物とは、ベンゼン、ナフタレンおよびアントラセン等のベンゼン環の単環化合物、またはその2〜12個が縮合した化合物である。縮合数の上限は、好ましくは6個以下である。
複素環芳香族化合物とは、フラン、チオフェン、ピロールおよびイミダゾール等の5〜10員環の複素環の単環化合物、またはその2〜12個が縮合した化合物である。縮合数の上限は好ましくは6個以下である。
非ベンゼノイド芳香族化合物としては、例えば、アヌレン等、シクロペンタジエニルアニオン等、シクロヘプタトリエニルカチオン等、トロポン等、メタロセン等およびアセブレイアジレン等が挙げられる。これらの中では、炭化水素芳香族化合物、複素環芳香族化合物由来の置換基が好ましく、さらには炭化水素芳香族化合物由来の置換基が好ましい。また、特に、ベンゼン、ナフタレンまたはアントラセン由来の置換基が原料の得やすさの点で好ましい。
これらの芳香環含有置換基は、該置換基中の水素原子が炭素数1〜12のアルキル基で置換されていても構わない。また、芳香環含有置換基は、前記炭化水素芳香族化合物、複素環芳香族化合物、および非ベンゼノイド芳香族化合物からなる群から選ばれる2個以上が、単結合または炭素数1〜3のアルキレン基で連結されていても構わない。
芳香環含有置換基において、芳香環とセルロースとを結合する連結基としては、セルロースの水酸基と反応した結果得られたものであれば特に限定されるものではない。例えば、上記式中のO(酸素原子)と芳香環が直接結合してもよいし、連結基として−CO−、または−CONH−を介してセルロースのO(酸素原子)と結合してもよく、なかでも−CO−が特に好ましい。
セルロース繊維中のセルロースに導入される修飾置換基の芳香環含有置換基としては、ベンゾイル基、ナフトイル基およびアントロイル基が好ましく、とりわけベンゾイル基が好ましい。
(化学修飾剤)
修飾方法は、特に限定されるものではないが、セルロースと次に挙げるような化学修飾剤とを反応させる方法がある。
化学修飾剤の種類としては、エステル基を形成させる場合は、例えば、酸、酸無水物、およびハロゲン化試薬等が挙げられる。エーテル基を形成させる場合は、例えば、アルコール、フェノール系化合物、アルコキシシラン、フェノキシシランおよびオキシラン(エポキシ)等の環状エーテル化合物等が挙げられる。カルバマート基を形成させる場合は、例えば、イソシアナート化合物等が挙げられる。これらの化学修飾剤は、1種または2種以上を用いても構わない。
エステル基を形成させる化学修飾剤である酸としては、例えば、酢酸、アクリル酸、メタクリル酸、プロパン酸、ブタン酸、2−ブタン酸、ペンタン酸、安息香酸、ナフタレンカルボン酸等が挙げられる。酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、無水プロパン酸、無水ブタン酸、無水2−ブタン酸、無水ペンタン酸、無水安息香酸および無水フタル酸等が挙げられる。
ハロゲン化試薬としては、例えば、アセチルハライド、アクリロイルハライド、メタクロイルハライド、プロパノイルハライド、ブタノイルハライド、2−ブタノイルハライド、ペンタノイルハライド、ベンゾイルハライドおよびナフトイルハライド等が挙げられる。
エーテル基を形成させる化学修飾剤であるアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよび2−プロパノール等が挙げられる。フェノール系化合物としては、例えば、フェノールおよびナフトール等が挙げられる。アルコキシシランとしては、例えば、メトキシシラン、エトキシシランおよびフェノキシシラン等が挙げられる。
環状エーテル化合物としては、例えば、エチルオキシラン、エチルオキセタン、オキシラン(エポキシ)およびフェニルオキシラン(エポキシ)が挙げられる。
カルバマート基を形成させる化学修飾剤であるイソシアナート化合物としては、例えば、メチルイソシアナート、エチルイソシアナート、プロピルイソシアナートおよびフェニルイソシアナート等が挙げられる。
これらの中では、特に、無水酢酸、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、ベンゾイルハライドおよびナフトイルハライドが好ましい。
これらの化学修飾剤は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(化学修飾方法)
セルロース繊維の化学修飾は、公知の方法によって実施することができる。すなわち、常法に従って、セルロースと化学修飾剤とを反応させることによって、化学修飾を実施できる。この際、必要に応じて溶媒または触媒を使用してもよく、加熱および減圧等を行ってもよい。
なお、精製後のセルロース繊維を用いる場合、該原料は含水状態であるので、この水を反応溶媒と置換して、化学修飾剤と水との反応を極力抑制することが好ましい。また、水を除去するために原料の乾燥を行うと、後述する解繊工程での原料の微細化が進行しにくくなるため、乾燥工程を入れることは好ましくない。
化学修飾剤の量は特に限定されず、化学修飾剤の種類によっても異なるが、セルロースの水酸基のモル数に対して、0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。
溶媒としては、エステル化を阻害しない水溶性有機溶媒を用いることが好ましい。水溶性有機溶媒としては、例えば、アセトン、ピリジン等の有機溶媒、蟻酸、酢酸および蓚酸等の有機酸が挙げられ、特に酢酸等の有機酸が好ましい。酢酸等の有機酸を用いることで、化学修飾がセルロースに均一に進行するため、後述する解繊がしやすくなり、得られる複合体が高耐熱性、高生産性を示すと考えられる。また、上記溶媒以外のものを併用しても構わない。
使用する溶媒の量は特に限定されないが、通常、セルロース重量に対して、0.5倍以上が好ましく、1倍以上がより好ましく、200倍以下が好ましく、100倍以下がより好ましい。
触媒としては、ピリジン、トリエチルアミン、水酸化ナトリウムおよび酢酸ナトリウム等の塩基性触媒、または酢酸、硫酸および過塩素酸等の酸性触媒を用いることが好ましい。触媒の量は特に限定されず、種類によっても異なるが、通常、セルロースの水酸基のモル数に対して、0.01倍以上が好ましく、0.05倍以上がより好ましく、100倍以下が好ましく、50倍以下がより好ましい。
温度条件は特に制限されないが、高すぎるとセルロースの黄変または重合度の低下等が懸念され、低すぎると反応速度が低下することから、10〜130℃が好ましい。反応時間も特に制限されず、化学修飾剤または化学修飾率にもよるが、数分から数十時間であることが好ましい。
このようにしてセルロース繊維の化学修飾を行った後は、反応を終結させるために有機溶剤または水で十分に洗浄することが好ましい。未反応の化学修飾剤が残留していると、後で着色の原因になったり、樹脂と複合化する際に問題になったりするので好ましくない。
(化学修飾率)
化学修飾率とは、セルロース中の全水酸基のうちの化学修飾されたものの割合を示し、化学修飾率は下記の滴定法によって測定することができる。
滴定法:乾燥した修飾セルロース0.05gを精秤し、これにメタノール6ml、蒸留水2mlを添加する。これを60〜70℃で30分攪拌した後、0.05N水酸化ナトリウム水溶液10mlを添加する。これを60〜70℃で15分攪拌し、さらに室温で一日攪拌する。ここにフェノールフタレインを用いて0.02N塩酸水溶液で滴定する。
ここで、滴定に要した0.02N塩酸水溶液の量Z(ml)から、化学修飾により導入された置換基のモル数Qは、下記式で求められる。
Q(mol)={0.05(N)×10(ml)/1000}−{0.02(N)×Z(ml)/1000}
この置換基のモル数Qと、化学修飾率X(mol%)との関係は、以下の式で算出される[セルロース=(C10=(162.14),繰り返し単位1個当たりの水酸基数=3,OHの分子量=17]。
なお、以下において、Tは、上記置換基の分子量に酸素原子量(16)を足した値である。
Figure 2011125801
これを解いていくと、以下の通りである。
Figure 2011125801
本発明において、上記の化学修飾率は特に制限されないが、セルロースの全水酸基に対して、1モル%以上が好ましく、5モル%以上がより好ましく、10モル%以上が特に好ましい。また、65モル%以下が好ましく、50モル%以下がより好ましく、40モル%以下がさらに好ましい。この範囲内であれば、分散液中における微細セルロース繊維の分散安定性がより向上し、また、樹脂と複合化した際、低線膨張係数を示す複合体が得られる。
<溶媒>
本発明で使用する溶媒は、使用する樹脂または樹脂前駆体が溶解または分散すれば特に限定されず、水などの水性媒体でも有機溶媒でもよいが、有機溶媒が好ましい。
有機溶媒としては、例えば、芳香族系炭化水素、非プロトン性極性溶媒、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒、グリコールエーテル系溶媒およびハロゲン系溶媒などの有機溶媒が挙げられる。これらの中でも、非プロトン性極性溶媒(特に、アミド系溶媒)、アルコール系溶媒、ケトン系溶媒およびハロゲン系溶媒が好ましい。これらの溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、本発明で使用する有機溶媒は、後の工程で有機溶媒を除去する工程があることから沸点が高すぎないことが好ましい。有機溶媒の沸点は300℃以下が好ましく、200℃以下が好ましく、180℃以下が更に好ましい。また、取り扱い性などの点から、0℃以上が好ましい。
芳香族系炭化水素としては、好ましくは炭素数6〜12の芳香族炭化水素が挙げられ、具体的には、例えば、ベンゼン、トルエンおよびキシレンなどが挙げられる。
非プロトン性極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルフォキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、並びにホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミド、N−メチルアセトアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、2−ピロリドンおよびN−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒が挙げられる。
アルコール系溶媒としては、好ましくは炭素数1〜7のアルコール系溶媒が挙げられ、具体的には、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールおよびブタノールなどが挙げられる。
ケトン系溶媒(ケトン基を有する液体を指す)としては、好ましくは炭素数3〜9のケトン系溶媒が挙げられる。具体的には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、ジイソプロピルケトン、ジ−tert−ブチルケトン、2−ヘプタノン、4−ヘプタノン、2−オクタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘキシルメチルケトン、アセトフェノン、アセチルアセトンおよびジオキサン等が挙げられる。この中でも、好ましくは、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロペンタノンおよびシクロヘキサノンであり、より好ましくは、メチルエチルケトン(MEK)およびシクロヘキサノンである。
グリコールエーテル系溶媒としては、好ましくは炭素数3〜9のグリコールエーテル系溶媒が挙げられる。具体的には、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルおよびプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、例えば、クロロホルム、塩化メチル、ジクロルメタン、四塩化炭素、トリクロル酢酸、臭化メチル、ヨウ化メチル、トリ(テトラ)クロロエチレン、クロロベンゼンおよび塩化ベンジルなどが挙げられる。
<樹脂、樹脂前駆体>
本発明で使用する樹脂または樹脂前駆体は、後述の微細セルロース繊維と複合化できる樹脂または樹脂前駆体であれば特に制限されない。樹脂または樹脂前駆体としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂、またはこれらの前駆体が挙げられる。また、樹脂または樹脂前駆体としては、例えば、アルコール系樹脂、アミド系樹脂、エーテル系樹脂、アミン系樹脂、芳香族系樹脂またはこれらの前駆体が挙げられる。また、樹脂または樹脂前駆体としては、例えば、セルロース誘導体が挙げられる。
これらの中でも、得られる複合体の各種性能、および生産性(取扱い性)などの観点から、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂並びにこれらの前駆体が好ましい。
これら樹脂または樹脂前駆体は一種のみを用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
(熱可塑性樹脂およびその前駆体)
熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、芳香族ポリカーボネート系樹脂、脂肪族ポリカーボネート系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリエステル系樹脂、脂肪族ポリオレフィン系樹脂、環状オレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリフェニレンエーテル系樹脂、熱可塑性ポリイミド系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスルホン系樹脂および非晶性フッ素系樹脂等が挙げられる。これらの熱可塑性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、熱可塑性樹脂の前駆体とは、上記のような樹脂を製造するための前駆体を意味する。
(硬化性樹脂およびその前駆体)
熱硬化性樹脂、光(活性エネルギー線)硬化性樹脂とは、熱または光により硬化する樹脂のことを意味する。硬化性樹脂の前駆体とは、通常、常温では液状、半固体状または固形状であって、常温下または加熱下で流動性を示す物質を意味する。これらは、硬化剤、触媒、熱または光の作用によって重合反応または架橋反応を起こして分子量を増大させながら、網目状の三次元構造を形成してなる不溶不融の樹脂となり得る。
(熱硬化性樹脂およびその前駆体)
本発明における熱硬化性樹脂またはその前駆体は特に限定されないが、例えば、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、オキセタン樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、珪素樹脂、ポリウレタン樹脂、ジアリルフタレート樹脂および熱硬化性ポリイミド樹脂等の樹脂またはその前駆体が挙げられる。
(光硬化性樹脂およびその前駆体)
本発明における光硬化性樹脂またはその前駆体は特に限定されないが、例えば、上述の熱硬化性樹脂の説明において例示した、エポキシ樹脂、アクリル樹脂およびオキセタン樹脂等の樹脂またはその前駆体が挙げられる。
上記樹脂および樹脂前駆体のなかでも、室温付近で液状または有機溶媒に溶解するという点で、エポキシ樹脂またはその前駆体、アクリル樹脂またはその前駆体が好ましく、特にエポキシ樹脂またはその前駆体が好ましい。
エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールアセトフェノン型エポキシ樹脂およびビスフェノールフルオレノン型エポキシ樹脂などのビスフェノール型エポキシ樹脂、カテコール、レゾルシンおよびハイドロキノンなどの単環2価フェノールのジグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシジヒドロアントラセン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などのグリシジルエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂並びに複素環式エポキシ樹脂等の種々のエポキシ樹脂が挙げられる。
これらのエポキシ樹脂は、アルキル基、アリール基、エーテル基およびエステル基などの悪影響のない置換基で置換されていてもよい。
これらのエポキシ樹脂の中で特に好ましいものは、取り扱いのし易い、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、結晶性樹脂であり融点以上で低粘度となる4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール型エポキシ樹脂、多官能であり硬化時に高架橋密度となり耐熱性の高い硬化物が得られるフェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂およびビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。
また、エポキシ樹脂は、重量平均分子量の低いモノマータイプ(例えば、Mw=200)のものから、分子量の高い高分子タイプ(例えば、Mw=90,000)のものまで使用できる。重量平均分子量が、100,000以上になると樹脂の取り扱いが困難になり、好ましくない。樹脂の取り扱い性の観点から、エポキシ樹脂の重量平均分子量は200〜80,000が好ましく、300〜60,000がより好ましい。
エポキシ樹脂前駆体としては、例えば、2価フェノール類が挙げられ、水酸基が芳香族環に結合したものであればどのようなものでもよい。例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールB、ビスフェノールAD、4−4’−ビフェニルおよび3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール等のビスフェノール類、ビフェノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン並びにジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
また、エポキシ樹脂前駆体として、これらの2価フェノール類が、アルキル基、アリール基、エーテル基およびエステル基などの非妨害性置換基で置換されたものも挙げられる。これらの2価フェノール類の中で好ましいものは、ビスフェノールA、ビスフェノールF、4,4’−ビフェノールおよび3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノールである。これらの2価フェノール類は、複数種を合わせて使用することもできる。
また、2価フェノール以外のものとしては多官能フェノール樹脂が挙げられる。多官能フェノール樹脂としては、例えば、フェノールノボラック型樹脂、ビスフェノール型ノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型フェノール樹脂、Xylok型フェノール樹脂、テルペン変性フェノール樹脂、メラミン変性フェノールノボラック樹脂およびトリアジン構造含有ノボラック樹脂などが挙げられる。
アクリル樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリルアミド等の重合体並びに共重合体などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルの重合体並びに共重合体などが好ましく挙げられる。
アクリル樹脂前駆体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリルアミド等などが挙げられる。なかでも、(メタ)アクリル酸および(メタ)アクリル酸エステルなどが好ましく挙げられる。
アクリル樹脂の重量平均分子量は特に制限されないが、取り扱い性の観点から、300〜3,000,000が好ましく、400〜2,500,000がより好ましい。
(アルコール系樹脂)
アルコール系樹脂としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリビニルアルコール、アミロース、アミロペクチン、ソルビトル、ポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリブチロラクトン、ポリグリコールおよびポリ乳酸等が挙げられる。
(アミド系樹脂)
アミド系樹脂としては、例えば、ポリアクリルアミド、キチン、キトサン、ポリビニルピロリドンおよびポリカプロラクタム等が挙げられる。
(エーテル系樹脂)
エーテル系樹脂としては、例えば、クラウンエーテル、ポリエチレングリコールおよびポリプロピレングリコール等が挙げられる。
(アミン系樹脂)
アミン系樹脂としては、例えば、ポリアリルアミン、ポリリジンおよび各種のアミン変性アクリルコポリマー等が挙げられる。
(芳香族系樹脂)
芳香族系樹脂としては、例えば、ポリフェニレンオキサイド、カテキン、タンニンおよびテルペン等が挙げられる。この中では、アルコール系樹脂およびアミド系樹脂が好ましく、特に、ポリビニルアルコールおよびポリビニルピロリドンなどが好ましい。
(セルロース誘導体)
セルロース誘導体としては、例えば、セルロース有機酸エステル、セルロースエーテル、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびイオン性の置換基を持つセルロースエーテルが挙げられる。
セルロース有機酸エステルとして、例えば、セルロースジアセテートおよびセルローストリアセテートなどが挙げられる。その他、セルロース有機酸エステルとして、例えば、酢化度を適宜調整したアセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネートおよびセルロースアセテートブチレートなどが挙げられる。
セルロースエーテルとしては、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロースおよびイオン性の置換基を持つセルロースエーテルが挙げられる。
アルキルセルロースとしては、例えば、メチルセルロースおよびエチルセルロースなどが挙げられる。
ヒドロキシアルキルセルロースとしては、例えば、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびヒドロキシエチルメチルセルロースなどが挙げられる。
イオン性の置換基を持つセルロースエーテルとしては、例えば、カルボキシメチルセルロースなどが挙げられる。
<その他添加剤>
本発明においては上述した化合物以外に、必要に応じて、連鎖移動剤、紫外線吸収剤、充填剤、シランカップリング剤、光・熱重合開始剤、硬化剤および硬化促進剤などの化合物を使用してもよい。該化合物は後述する解繊工程時に共存させてもよいし、解繊工程後の分散液に添加して使用してもよい。
なお、樹脂または樹脂前駆体として、エポキシ樹脂またはその前駆体を使用する場合は、エポキシ樹脂硬化剤を併用することもできる。通常、該硬化剤は、後述する解繊工程の後に、分散液に加えられる。
使用するエポキシ樹脂硬化剤は特に限定されず、例えば、多価フェノール化合物類、アミン化合物類および酸無水物類並びにその他下記に挙げるようなものを用いることができる。
例えば、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールAD、ハイドロキノン、レゾルシン、メチルレゾルシン、ビフェノール、テトラメチルビフェノール、ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシジフェニルエーテル、チオジフェノール類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、フェノールアラルキル樹脂、テルペンフェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ビフェニルフェノール樹脂、臭素化ビスフェノールAおよび臭素化フェノールノボラック樹脂などの種々の多価フェノール類、種々のフェノール類とベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、クロトンアルデヒドおよびグリオキザールなどの種々のアルデヒド類との縮合反応で得られる多価フェノール樹脂類、重質油またはピッチ類とフェノール類とホルムアルデヒド類との共縮合樹脂等の各種のフェノール樹脂類、それら各種のフェノール(樹脂)類のフェノール性水酸基の全部もしくは一部をベンゾエート化またはアセテート化などのエステル化することによって得られる活性エステル化合物類、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ピロメリット酸およびメチルナジック酸等の酸無水物類、並びにジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、ジシアンジアミド、脂肪族ポリアミンおよびポリアミド等のアミン類などが挙げられる。
カチオン系重合開始剤もエポキシ樹脂またはその前駆体の硬化剤として使用することができる。そのカチオン系重合開始剤としては、例えば、活性エネルギー線によりカチオン種またはルイス酸を発生する活性エネルギー線カチオン系重合開始剤、または、熱によりカチオン種またはルイス酸を発生する熱カチオン重合開始剤を用いることができる。
例えば、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン化合物、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレートなどのホスホニウム塩、2−メチルイミダゾ−ル、2−フェニルイミダゾ−ル、2−エチル−4−メチルイミダゾ−ル、2−ウンデシルイミダゾ−ル、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾ−ルおよび2,4−ジシアノ−6−[2−メチルイミダゾリル−(1)]−エチル−S−トリアジンなどのイミダゾ−ル類、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾリウムトリメリテ−ト、2−メチルイミダゾリウムイソシアヌレ−ト、2−エチル−4−メチルイミダゾリウムテトラフェニルボレ−トおよび2−エチル−1,4−ジメチルイミダゾリウムテトラフェニルボレ−トなどのイミダゾリウム塩、2,4−6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノ−ル、ベンジルジメチルアミンなどのアミン類、トリエチルアンモニウムテトラフェニルボレ−トなどのアンモニウム塩、並びに1,5−ジアザビシクロ(5,4,0)−7−ウンデセンおよび1,5−ジアザビシクロ(4,3,0)−5−ノネンなどのジアザビシクロ化合物などが挙げられる。
また、例えば、これらジアザビシクロ化合物のテトラフェニルボレ−ト、フェノール塩、フェノールノボラック塩および2−エチルヘキサン酸塩など、さらにはトリフル酸(Triflic acid)塩、三弗化硼素エーテル錯化合物、金属フルオロ硼素錯塩、ビス(ペルフルオルアルキルスルホニル)メタン金属塩、アリールジアゾニウム化合物、芳香族オニウム塩、周期表第IIIa〜Va族元素のジカルボニルキレート、チオピリリウム塩、MF 陰イオン(ここでMは燐、アンチモンおよび砒素から選択される)の形の周期表第VIb族元素、アリールスルホニウム錯塩、芳香族ヨードニウム錯塩、芳香族スルホニウム錯塩、ビス[4−(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド−ビス−ヘキサフルオロ金属塩(例えば、燐酸塩、砒酸塩およびアンチモン酸塩等)、アリールスルホニウム錯塩並びにハロゲン含有錯イオンの芳香族スルホニウムまたはヨードニウム塩等が挙げられる。
その他、鉄化合物の混合配位子金属塩およびシラノール−アルミニウム錯体も使用することが可能である。これらの塩のいくつかは、FX−512(3M社)、UVR−6990およびUVR−6974[ユニオン・カーバイド(Union Carbide)社]、UVE−1014およびUVE−1016[ジェネラル・エレクトリック(General Electric)社]、KI−85[デグッサ(Degussa)社]、SP−150およびSP−170(旭電化社)、並びに、サンエイドSI−60L、SI−80LおよびSI−100L(三新化学工業社)として商品として入手できる。
また、好ましい熱カチオン系重合開始剤としては、トリフル酸塩であり、例としては、3M社からFC−520として入手できるトリフル酸ジエチルアンモニウム、トリフル酸トリエチルアンモニウム、トリフル酸ジイソプロピルアンモニウム、トリフル酸エチルジイソプロピルアンモニウム等[これらの多くはR.R.Almによって1980年10月発行のモダン・コーティングス(Modern Coatings)に記載されている]がある。
一方、活性エネルギー線カチオン系重合開始剤としても用いられる芳香族オニウム塩のうち、熱によりカチオン種を発生するものがあり、これらも熱カチオン系重合開始剤として用いることができる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、硬化促進剤としては、例えば、ベンジルジメチルアミン、各種のイミダゾール系化合物等のアミン類およびトリフェニルホスフィンなどのホスフィン類等が挙げられる。
<微細セルロース繊維分散液の製造手順>
本発明の製造方法の解繊工程は、セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、溶媒とを含有する原料分散液中で、セルロース繊維の解繊処理を行い、微細セルロース繊維を得る工程である。
原料分散液の製造方法は特に限定されず、使用される各成分を混合することにより調製することができる。なお、セルロース繊維として、化学修飾が施されたセルロース繊維を使用してもよい。
原料分散液は、以下の2つの工程(溶媒置換工程および混合工程)を経て調製することが好ましい。つまり、解繊工程前に、以下の工程が実施されることが好ましい。通常、セルロース繊維は、精製処理等を施されることにより、水分散液の状態、または、水を含んだ状態で解繊処理に用いられる。従って、以下の2つの工程を経て原料分散液を調製することにより、セルロース中に含有される水を排除することができ、結果として得られる微細セルロース繊維分散液の安定性をより向上することができる。尚、溶媒として水を使用する場合は、以下の溶媒置換工程は通常不要である。
(溶媒置換工程) セルロース繊維を含有する水分散液中の水を有機溶媒に置換する工程
(混合工程) 溶媒置換工程で得られた分散液と樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方とを混合する工程
溶媒置換工程において溶媒を置換する方法は特に限定されないが、セルロース繊維(好ましくは、精製後または化学修飾後のセルロース繊維)を含有する水分散液から濾過などにより水を除去し、ここに解繊時使用する有機溶媒を添加し、攪拌混合し、再度濾過により有機溶媒を除去する方法が挙げられる。有機溶媒の添加と濾過を繰り返すことで、分散液中の媒体を水から有機溶媒に置換することができる。
なお、後述する解繊工程に使用する有機溶媒が非水溶性の場合、水溶性の有機溶媒に一度置換した後、非水溶性の有機溶媒に置換してもよい。
使用される水分散液の主媒体は通常水であるが、他の溶媒を一部含んでいてもよい。
また、水分散液中のセルロース繊維の含有量は、特に制限されないが、水分散液全量に対して、0.1〜60重量%が好ましい。
同様に、溶媒置換後の分散液中のセルロース繊維の含有量は、分散液全量に対して、0.1〜60重量%が好ましい。
混合工程は、上記溶媒置換工程で得られたセルロース繊維と有機溶媒とを含有する分散液と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方とを混合する工程である。
混合に際しては、分散液に樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を直接加えて混合してもよいし、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を有機溶媒に溶解させて溶液を調製後、該溶液を加えて混合してもよい。
溶液を調製する場合、使用する有機溶媒は、溶媒置換工程で使用した有機溶媒と同じであってもよいし、また相溶するものであれば異なってもよい。
また、溶媒置換工程において、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を含有する有機溶媒を使用した場合、混合工程は実施しなくてもよい。
原料分散液中におけるセルロース繊維の含有量は特に限定されないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度または液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、原料分散液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
原料分散液中における樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方の含有量は特に限定されないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度または液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、原料分散液全量に対して、2重量%以上が好ましく、2.5重量%以上がより好ましく、95重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましい。
原料分散液中における有機溶媒の含有量は特に限定されないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度または液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、原料分散液全量に対して、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、97.5重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましい。
原料分散液中において樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と有機溶媒との重量比は特に限定さないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度または液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、有機溶媒の含有量は、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方の100重量部に対して、5〜2000重量部が好ましく、25〜1000重量部がより好ましい。
原料分散液中においてセルロース繊維と樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方との重量比は特に限定さないが、得られる微細セルロース繊維分散液の粘度または液安定性が好適なものになるといった取扱い性の点から、セルロース繊維の含有量は、セルロース繊維並びに樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方の合計量(100重量%)に対して、2.5重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、5重量%以上がさらに好ましく、97.5重量%以下が好ましく、97重量%以下がより好ましく、95重量%以下がさらに好ましい。
(解繊方法)
解繊工程においてセルロース繊維を解繊する方法は、特に制限されないが、具体的には、例えば、直径1mm程度のセラミック製ビーズをセルロース繊維濃度0.5〜50重量%、例えば、1重量%程度の原料分散液に入れ、ペイントシェーカーまたはビーズミルなどのメディアミル等を用いて振動を与え、セルロース繊維を解繊する方法などが挙げられる。
メディアミルの一種として、例えば、回転する主軸および主軸の回転と連動して回転する副軸およびリングが粉砕媒体として繊維を解繊するものが挙げられる。
また、セルロース繊維を解繊する方法としては、例えば、ブレンダータイプの分散機または高速回転するスリットの間に、このような原料分散液を通して剪断力を働かせて解繊する方法(高速回転ホモジナイザー)、高圧から急に減圧することによって、セルロース繊維間に剪断力を発生させて解繊する方法(高圧ホモジナイザー法)、およびマスコマイザーXのような対向衝突型の分散機(増幸産業)等を用いる方法などが挙げられる。
以上のように、セルロース繊維を解繊する方法としては、ビーズミルなどのメディアミルによる解繊処理、噴出による解繊(微細化)処理、回転式解繊方法による解繊処理、または超音波処理による解繊処理などが挙げられる。
特に、ビーズミルによる処理は、解繊の効率がより向上し、微細セルロース繊維の分散性がより向上する。
これらの処理でセルロース繊維を解繊する場合は、原料分散液中の固形分濃度(セルロース繊維と樹脂またはその前駆体との総量)は特に制限されないが、2.5重量%以上が好ましく、3重量%以上がより好ましく、99重量%以下が好ましく、50重量%以下がより好ましい。この解繊工程に供する原料分散液中の固形分濃度が低過ぎると処理するセルロース量に対して液量が多くなり過ぎ効率が悪くなり、固形分濃度が高過ぎると流動性が悪くなる。
ビーズミルを行うための装置は、公知の装置を使用することができ、例えば、ウルトラアペックスミルUAM、デュアルアペックスミルDAM(ともに寿工業社製)、スターミル(アシザワファインテック社製)およびOBミル(ターボ工業社製)などが挙げられる。
使用するビーズの材質は特に制限されず、例えば、ガラスおよびジルコニアなどが挙げられる。また、ビーズの粒径は特に制限されず、通常、直径0.01〜5mm程度である。
また、ビーズミルを行う条件は、溶媒の種類、およびセルロース繊維の繊維径などの使用材料に応じて適宜最適な条件が選択されるが、通常、周速4〜16m/秒間で、1〜5時間程度行うことが好ましい。
また、ビーズミルでセルロース繊維を解繊する場合、異なる条件で複数回行ってもよい。
高速回転ホモジナイザーの場合、回転数が高い方が、剪断が掛かり、解繊効率が高くなる。回転数としては、例えば、10000rpm以上が好ましく、15000rpm以上がより好ましく、20000rpm以上が特に好ましい。なお、回転数の上限は特に制限されないが、装置の性能上の観点から、30000rpm以下が好ましい。
また、処理時間は、1分以上が好ましく、5分以上がより好ましく、10分以上が特に好ましい。なお、処理時間は生産性の点から、6時間以下が好ましい。剪断により発熱が生じる場合は、液温が50℃を超えない程度に冷却することが好ましい。
また、原料分散液に均一に剪断がかかるように、攪拌または循環することが好ましい。
高圧ホモジナイザーを用いる場合、原料分散液を増圧機で好ましくは30MPa以上、より好ましくは100MPa以上、さらに好ましくは150MPa以上、特に好ましくは220MPa以上に加圧し、細孔直径50μm以上のノズルから噴出させ、圧力差が好ましくは30MPa以上、より好ましくは80MPa以上、さらに好ましくは90MPa以上となるように減圧することが好ましい。
前記圧力差で生じるへき開現象により、セルロース繊維を解繊することができる。ここで、高圧条件の圧力が低い場合、または高圧から減圧条件への圧力差が小さい場合には、解繊効率が下がり、所望の繊維径とするための繰り返し噴出回数が多く必要となるため好ましくない。
また、原料分散液を噴出させる細孔の細孔直径が大き過ぎる場合にも、十分な解繊効果が得られず、この場合には、噴出処理を繰り返し行っても、所望の繊維径のセルロース繊維が得られないおそれもある。
原料分散液の噴出は、必要に応じて複数回繰り返すことにより、微細化度を上げて所望の繊維径の微細セルロース繊維を得ることができる。この繰り返し回数(パス数)は、通常1回以上であることが好ましく、より好ましくは3回以上で、通常20回以下であることが好ましく、より好ましくは15回以下である。パス数が多い程、微細化の程度を上げることができるが、過度にパス数が多いとコスト高となるため好ましくない。
高圧ホモジナイザーの装置は特に制限されないが、例えば、ガウリン社製またはスギノマシン社製の「スターバーストシステム」を用いることができる。
噴出時の高圧条件が高いほど、圧力差により大きなへき開現象でより一層の微細化を図ることができるが、装置仕様の上限として、通常245MPa以下であることが好ましい。
同様に、高圧条件から減圧下への圧力差も大きいことが好ましいが、一般的には、増圧機による加圧条件から大気圧下に噴出することで、圧力差の上限は通常245MPa以下であることが好ましい。
また、原料分散液を噴出させる細孔の直径は小さければ容易に高圧状態を作り出せるが、過度に小さいと噴出効率が悪くなる。この細孔直径は、50μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、150μm以上がさらに好ましく、800μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましく、350μm以下がさらに好ましい。
噴出時の温度(分散液温度)には特に制限はないが、通常5℃以上100℃以下であることが好ましい。温度を100℃以下とすることにより、装置、具体的には送液ポンプおよび高圧シール部等の劣化を抑制することができ好ましい。
なお、噴出ノズルは1本でも2本でもよく、噴出させた原料分散液を噴出先に設けた壁、ボールまたはリングにぶつけてもよい。更にノズルが2本の場合には、噴出先で原料分散液同士を衝突させてもよい。
なお、このような高圧ホモジナイザーによる処理のみでも、本発明の微細セルロース繊維分散液を得ることは可能である。その場合には、十分な微細化度とするための繰り返し回数が多くなり、処理効率が悪いことから、1〜5回程度の高圧ホモジナイザー処理後に後述の超音波処理を行って微細化することが好ましい。
本発明において、超音波処理が施される、解繊処理が施された原料分散液(以後、適宜、超音波処理用原料分散液と称する)中のセルロース濃度は、液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましい。
前記超音波を照射する超音波処理用原料分散液中のセルロース濃度を0.5重量%以上とすることにより効率的であり、50重量%以下とすることにより粘度が抑え解繊処理が均一になる。
<微細セルロース繊維分散液>
上記解繊工程を経て得られた微細セルロース繊維分散液中には、微細セルロース繊維が均一に分散しており、微細セルロース繊維の凝集および沈降が抑制され、優れた液安定性を有する。具体的には、通常、該分散液を室温にて10日間静置しても、目視において沈降物などは確認できないことが好ましい。
また、後述する該分散液を用いて得られる微細セルロース繊維と樹脂(マトリックス材料)との複合体中においては、通常、微細セルロース繊維が樹脂中に均一に分散し、優れた低線膨張性を示す。
(微細セルロース繊維の数平均繊維径)
上記方法によって得られた微細セルロース繊維分散液中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、分散液中の分散媒を乾燥除去した後、SEMまたはTEM等で観察することにより計測して求めることができる。
本発明により得られる解繊された微細セルロース繊維の数平均繊維径は、得られる複合体がより優れた低線膨張性を示す点より、100nm以下が好ましく、80nm以下がより好ましい。尚、この数平均繊維径の下限は通常4nm以上であることが好ましい。
なお、上記数平均繊維径は、SEMまたはTEM等で観察して、写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点を測定して、平均した値である。
微細セルロース繊維分散液中における微細セルロース繊維の含有量は使用される出発原料であるセルロース繊維量によって適宜調製されるが、分散液の安定性の点から、分散液全量に対して、0.5重量%以上が好ましく、1重量%以上がより好ましく、50重量%以下が好ましく、40重量%以下がより好ましく、30重量%以下がさらに好ましい。
なお、微細セルロース繊維分散液中の有機溶媒、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方の含有量は、上述した原料分散液の各成分の含有量と同じであり、好適な範囲も同じである。
また、微細セルロース繊維と樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方との重量比は、上記セルロース繊維と樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方との重量比と同じである。さらに、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と有機溶媒との重量比も、上述の通りである。
(セルロースI型結晶)
上記解繊工程によって得られる微細セルロース繊維は、セルロースI型結晶構造を有することが好ましい。セルロースI型結晶は、他の結晶構造より結晶弾性率が高いため、高弾性率、高強度および低線膨張係数であり好ましい。
微細セルロース繊維がI型結晶構造であることは、その広角X線回折像測定により得られる回折プロファイルにおいて、2θ=14〜17°付近と2θ=22〜23°付近の二つの位置に典型的なピークをもつことから同定することができる。
<セルロース繊維複合体の製造方法>
上述した微細セルロース繊維分散液を用いることにより、微細セルロース繊維が樹脂中に均一に分散したセルロース繊維複合体を得ることができる。
セルロース繊維複合体の製造方法は特に限定されないが、以下の2つの工程(添加工程および複合化工程)を含む製造方法であることが好ましい。
(添加工程)微細セルロース繊維分散液に、さらに樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を添加する工程
(複合化工程)添加工程で得られた微細セルロース繊維分散液に加熱処理および露光処理の少なくとも一方を施し、溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得る工程
なお、使用される微細セルロース繊維分散液中に所望の分量の樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方が含まれている場合、前記添加工程は実施しなくてもよい。つまり、添加工程は任意工程である。
(添加工程)
添加工程は、微細セルロース繊維分散液に、さらに樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を添加する工程である。上述の通り、該工程を経て、微細セルロース繊維と樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方との所望の重量比を満たす微細セルロース繊維分散液を得ることができる。添加する樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方の量は、使用される用途などに応じて適宜調整する。
添加工程においては、さらに上述した硬化剤などの添加物を合わせて添加してもよい。例えば、樹脂としてエポキシ樹脂を使用する場合は、該工程においてエポキシ樹脂硬化剤を合わせて添加してもよい。
なお、添加工程においては、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方の代わりに、溶媒を添加してもよい。さらには、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、溶媒とを一緒に添加してもよい。
なお、ここで添加される樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方、並びに、溶媒の具体例は、上記本発明の製造方法により得られる微細セルロース繊維分散液に含有される樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方、並びに、溶媒と同様である。
(複合化工程)
複合化工程は、微細セルロース繊維分散液に加熱処理および露光処理の少なくとも一方を施し、溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得る工程である。該工程を経ることにより、優れた低線膨張性を示すセルロース繊維複合体を得ることができる。なお、樹脂前駆体を使用した場合は、該工程を経て該前駆体が硬化されて、樹脂となる。
加熱および露光処理の少なくとも一方を施す際、微細セルロース繊維分散液を基板上へ塗布して塗膜状としてもよく、また、型内に流し込んでもよい。該塗布または型内に流し込む際に、必要に応じて、乾燥処理を施して、溶媒を除去してもよい。
加熱処理の条件は特に限定されず、樹脂前駆体が使用される場合は、該前駆体が硬化する温度以上であればよい。なかでも、溶媒を揮発させて除去できる点から、加熱温度は、60℃以上が好ましく、100℃以上がより好ましい。なお、微細セルロース繊維の分解を抑制する点から、250℃以下が好ましく、200℃以下がより好ましい。加熱時間は、生産性などの点から、60〜180分が好ましい。
加熱処理は複数回にわたって、温度・加熱時間を変更して実施してもよい。具体的には60〜100℃で30〜60分間の一次加熱と、130〜160℃で30〜60分間の二次加熱と、二次加熱温度よりも40〜60℃高い150〜200℃で30〜60分間の三次加熱との三段処理で行なうことが、溶剤を完全に除去し、複合体の表面形状の不良を少なくし、完全硬化させるという点で好ましい。なお、少なくとも二段以上の加熱が好ましい。
露光処理には、例えば、赤外線、可視光線および紫外線などの光、並びに電子線などの放射線等が使用されるが、光が好ましく、紫外線がより好ましい。光の波長は200〜450nmであることが好ましく、300〜400nmであることがより好ましい。
照射する光の量は、使用する樹脂前駆体または光重合開始剤などによって適宜最適な量を選択する。具体的には、例えば、波長300〜450nmの紫外線を照射する場合、照射量は0.1J/cm以上200J/cm以下の範囲であることが好ましく、1J/cm以上20J/cm以下の範囲であることがより好ましい。
複数回に分割して光を照射すると、より好ましい。すなわち1回目に全照射量の1/20〜1/3程度を照射し、2回目以降に必要残量を照射することが好ましい。使用するランプの具体例としては、メタルハライドランプ、高圧水銀灯ランプおよび紫外線LEDランプ等を挙げることができる。
上記樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方として、エポキシ樹脂およびその前駆体の少なくとも一方を使用した場合、分散液にエポキシ樹脂硬化剤および硬化促進剤の少なくとも一方を加え、硬化させて複合体を作製することが好ましい。
分散液中のエポキシ樹脂成分の重量平均分子量(Mw)が200〜6,000の場合、エポキシ樹脂(当量):エポキシ樹脂硬化剤(当量)=1:0.8〜1.2の割合で配合することが好ましい。また、分散液中のエポキシ樹脂成分の重量平均分子量(Mw)が6,000超90,000以下の場合、エポキシ樹脂硬化剤を配合して硬化することも出来るが、多官能エポキシ樹脂をエポキシ樹脂成分の2〜20重量%添加し、硬化させる方が好ましい。
高分子量エポキシ樹脂は、エポキシ基濃度が低い為、硬化させるには多官能エポキシ樹脂を加えて、エポキシ基濃度を高め、架橋密度を上げることが好ましい。
硬化促進剤は全エポキシ樹脂100重量部に対して、0.1〜5.0重量部配合することが好ましい。
なお、硬化条件としては、例えば、以下の硬化方法IおよびIIの方法が好ましく挙げられる。
硬化方法I:分散液中のエポキシ樹脂成分の重量平均分子量(Mw)が200〜6,000の場合、分散液にエポキシ樹脂硬化剤を加え、100〜200℃の温度で5分間加熱混合したのち、硬化促進剤を素早く混合して樹脂組成物を作製する。この組成物を減圧下で溶媒成分を除去し脱泡したのち、型の中に流し込み、120〜200℃で2〜5時間加熱して複合体を得る。
硬化方法II:分散液中のエポキシ樹脂成分の重量平均分子量(Mw)が6,000超90,000以下の場合、分散液に多官能エポキシ樹脂および硬化促進剤を混合してワニスを作製し、スリット幅300μmのアプリケーターを用いて、PTFEテープ(中興化成工業(株):チューコーフロー スカイブドテープ MSF−100)上に塗膜を引き、熱風乾燥機にて60℃で60分保持し、160℃で60分間保持し、更に200℃で60分保持して、複合体を得る。
<セルロース繊維複合体>
(微細セルロース繊維含有量)
本発明の製造方法により得られるセルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の含有量は、特に制限されないが、微細セルロース繊維の好適な含有量としては、セルロース繊維複合体全量に対して、2.5重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましく、10重量%がさらに好ましく、99重量%以下が好ましく、80重量%以下がより好ましく、70重量%以下がさらに好ましい。
セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の含有量を前記下限以上とすることにより、微細セルロース繊維によるセルロース繊維複合体の線熱膨張係数低減の効果が十分となる。また、複合体中の微細セルロース繊維の含有量を前記上限以下とすることにより、樹脂による繊維間の接着、または繊維間の空間の充填が十分となり、セルロース繊維複合体の強度または透明性、硬化したときの表面の平坦性を向上することができる。
(樹脂含有量)
本発明の製造方法により得られるセルロース繊維複合体中における樹脂の含有量は特に制限されないが、成型性の点から、1重量%以上が好ましく、20重量%以上がより好ましく、30重量%以上がさらに好ましく、97.5重量%以下が好ましく、95重量%以下がより好ましく、90重量%以下がさらに好ましい。
セルロース繊維複合体は、実質的にセルロース繊維と樹脂とから構成されることが好ましい。
セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維および樹脂の含有量は、例えば、複合化前のセルロースの重量と複合化後のセルロースの重量より求めることができる。また、樹脂が可溶な溶媒にセルロース繊維複合体を浸漬して樹脂のみを取り除き、残った微細セルロース繊維の重量から求めることもできる。その他、樹脂の比重から求める方法、およびNMRまたはIRを用いて樹脂または微細セルロース繊維の官能基を定量して求める方法により求めることもできる。
(形状、厚み)
本発明の製造方法により得られるセルロース繊維複合体の形状は、特に限定されず、板状、または曲面を有する板状とすることもできる。また、その他の異形形状であってもよい。また、厚さは必ずしも均一である必要はなく、部分的に異なっていてもよい。
形状が板状(シート状またはフィルム状)である場合、その厚み(平均厚み)は、好ましくは10μm以上10cm以下であり、このような厚みとすることにより、構造材としての強度を保つことができる。さらに、より好ましくは50μm以上1cm以下であり、さらに好ましくは80μm以上250μm以下である。
なお、上記板状物において、フィルムとはその厚みが概ね、200μm以下の板状物を意味し、シートとはフィルムよりも厚い板状物を意味する。
(線膨張係数)
本発明により得られるセルロース繊維複合体は、低い線膨張係数(1Kあたりの伸び率)を示す。このセルロース繊維複合体の線膨張係数は、1〜70ppm/Kが好ましく、1〜60ppm/Kがより好ましく、1〜50ppm/Kが特に好ましい。
例えば、基板用途においては、無機の薄膜トランジスタの線膨張係数が15ppm/K程度であり、セルロース繊維複合体の線膨張係数が50ppm/K以下とすることにより、無機膜との積層複合化の際に、二層の線膨張係数差が大きくなるのを防ぎ、クラック等が発生するのを抑制することができる。従って、セルロース繊維複合体の線膨張係数は、特に1〜50ppm/Kであることが好ましい。
なお、線膨張係数は、後述の実施例の項に記載される方法により測定する。
(ガラス転移温度)
本発明により得られるセルロース繊維複合体では、セルロース繊維が樹脂中に均一に分散することによって、樹脂のTg(ガラス転移温度)を上昇させる効果を有する。該効果によって、後述する用途に好適な高いTgを示す材料を得ることができる。特に、エポキシ樹脂を使用した場合は、その効果が顕著となる。なお、電材用途においては、複合体のTgが3〜4℃上昇することは、大きなメリットとなる。
<用途>
本発明の製造方法により得られるセルロース繊維複合体を樹脂などの基板とともに積層体として使用してもよい。該基板上に本発明の微細セルロース繊維分散液を塗布し、上記のとおり、加熱処理および露光処理等を施すことにより、積層体を製造してもよい。また、該積層体は保護フィルムを有していてもよい。
本発明の製造方法により得られるセルロース繊維複合体または前記積層体は、様々な用途に使用することができ、例えば、接着剤、塗料、土木建築用建材および電気または電子部品の絶縁材料などが挙げられる。
特に、その優れた耐熱性および低線膨張性、並びに、成形加工性から、多層電気積層板、ビルドアップ法等の新方式プリント配線基板などの配線基板、および封止材用途に好適に使用できる。また、フレキシブル積層板用途、レジスト材およびシール材などにも使用できる。
以下、製造例、実施例および比較例によって、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例により限定されるものではない。
微細セルロース繊維分散液、およびセルロース繊維複合体の各種物性の測定方法は次の通りである。
[微細セルロース繊維分散液の分散安定性試験]
微細セルロース繊維分散液を調製し、調製直後、および室温で10日間静置後の沈降の有無を、以下の基準に従って、目視により評価した。「全く沈降の見られないもの」をAA、「ほとんど沈降の見られないもの」をA、「やや沈降の見られるもの、または、液中の一部に凝集物が見られるもの」をB、「極めて多くの沈降が見られるもの、または、液中の大部分に凝集物が見られるもの」をCとし、AA及びAを合格とした。
[微細セルロース繊維分散液中の微細セルロース繊維の数平均繊維径]
微細セルロース繊維の数平均繊維径は、光学顕微鏡、SEMまたはTEM等で観察することにより計測して求めた。具体的には、分散液から有機溶媒を乾燥除去した後、30,000倍に拡大したSEM写真の対角線に線を引き、その近傍にある繊維をランダムに12点抽出し、最も太い繊維と最も細い繊維を除去した10点の測定値の平均を数平均繊維径とした。
[微細セルロース繊維分散液の製膜性]
微細セルロース繊維分散液からセルロース繊維複合体へ製膜する際の製膜性を、以下の基準に従って評価した。「均一に製膜できるもの」をAA、「ほぼ均一に製膜できるもの」をA、「ピンホールなどが生じて、やや不均一に製膜できるもの」をB、「ピンホールが多数生じるものや、製膜自体ができないもの」をCとし、AAおよびAを合格とした。
なお、後述する実施例4における「製膜性」評価は、所定の型内における分散液の成形性の評価を意図しており、成形性に優れる場合を「AA」、表面の平滑性が損なわれるなどの成形不良が生じる場合を「C」として評価した。
[セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散性1(目視)]
セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散性を、以下の基準に従って、目視で評価した。微細セルロース繊維が「光を透過して、目視で繊維を確認できないもの」をAAA、微細セルロース繊維が「均一に分散しているもの」をAA、「ほぼ均一に分散しているもの」をA、「やや凝集しているもの」をB、「不均一なもの」をCとし、AAA、AAおよびAを合格とした。
[セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散性2(画像解析)]
セルロース繊維複合体をマイクロスコープで撮像し、撮像した画像を二値化して、一視野中のセルロースの存在しない部分の面積率(%)を算出した。
[セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散性3(顕微鏡)]
セルロース繊維複合体中の微細セルロース繊維の分散状態を、複合体の表面および断面方向からSEMにて3,000倍で観察し分散性を評価した。微細セルロース繊維が「均一に分散しているもの」をAA、「ほぼ均一に分散しているもの」をA、「大きさ50μm以上の凝集体が見られるもの」をB、「大きさ50μm以上の凝集体が多数見られるもの」をCとし、AAおよびAを合格とした。
[セルロース繊維複合体の線膨張係数およびTg]
セルロース繊維複合体を、2.5mm幅×20mm長にカットした。これをSII製TMA「EXSTAR6000」を用いて引張モードでチャック間10mm、荷重30mN、窒素雰囲気下、室温から150℃まで10℃/分間で昇温し、次いで150℃から20℃まで10℃/分間で降温し、更に20℃から200℃まで5℃/分間で昇温した際の2度目の昇温時の40℃から110℃の測定値から線膨張係数を求めた。
また、2度目の昇温時の40℃から200℃の測定値からTgを求めた。
<製造例1>
木粉((株)宮下木材、米松100、粒径50〜250μm、平均粒径138μm)を炭酸ナトリウム2重量%水溶液で80℃にて6時間脱脂した。これを脱塩水で洗浄した後、亜塩素酸ナトリウムを用いて酢酸酸性下、80℃にて5.5時間脱リグニンした。これを脱塩水で洗浄した後、水酸化カリウム5重量%水溶液に16時間浸漬して、脱ヘミセルロース処理を行った。これを脱塩水で洗浄し、セルロース繊維(数平均繊維径60μm)を得た。
<製造例2>
製造例1において、脱ヘミセルロースして、脱塩水洗浄したセルロース繊維を濾過により脱水した。これを酢酸中に分散して濾過する工程を3度行い、水を酢酸に置換した。トルエン25ml、酢酸20ml、60%過塩素酸水溶液0.1mlを混合しておき、そこに酢酸置換したセルロース繊維1gを添加した後、無水酢酸1.3mlを添加し、攪拌しながら1時間反応させた。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄した。
得られたアセチル化セルロース繊維の化学修飾率を、上述した化学修飾率の測定方法に従って求めたところ、16mol%であった。
<製造例3>
製造例1において、脱ヘミセルロースして、脱塩水洗浄したセルロース繊維を濾過により脱水した。これを酢酸中に分散して濾過する工程を3度行い、水を酢酸に置換した。30gの酢酸に酢酸ナトリウム1gを溶解させ、ここに得られたセルロース繊維1gを分散させた。この分散液を80℃に加温し、ベンゾイルクロライドを2.1g添加し、攪拌しながら5時間反応させた。反応後、反応液を濾過して、メタノール、脱塩水の順で洗浄した。
このベンゾイル化セルロース繊維の化学修飾率を、上記のようにして求めたところ、37mol%であった。
<製造例4>
精製したコットンリンターを水に分散させて0.5重量%とし、これを超高圧ホモジナイザー(スギノマシン製アルティマイザー)に245MPaで10回通した。この微細セルロース繊維水分散液を0.2重量%に希釈し、孔径1μmのPTFEを用いた90mm径の濾過器に坪量11g/mとなるように投入して減圧濾過を行った。水が濾過された後にiso−ブタノールを静かに30ml投入し、PTFE上のセルロース不織布中の水をiso−ブタノールに置換した。その後、120℃、0.14MPaで5分間プレス乾燥して白色のセルロース不織布を得た。(膜厚:20μm、空孔率:61%、セルロース繊維の数平均繊維径:100nm)
<製造例5>
針葉樹クラフトパルプ(NBKP)を、水に分散させて0.5重量%とし、これを超高圧ホモジナイザー(スギノマシン製アルティマイザー)に245MPaで10回通して、セルロースが分散した水分散液を得た(セルロースの数平均繊維径:80nm)。
<実施例1>
製造例2で得られた含水アセチル化セルロース繊維(繊維含有量7重量%、残部は主に水)を濾過により脱水した。これをメチルエチルケトン中に分散して濾過する工程を3度行い、水をメチルエチルケトンに置換した。
一方、変性ビフェノール型エポキシ樹脂30重量%、メチルエチルケトン35重量%、シクロヘキサノン35重量%を含有する組成物(JER社製YX6954BH30)に、メチルエチルケトンと、シクロヘキサノンを加え、樹脂含量20重量%に調製したエポキシ樹脂溶液(変性ビフェノール型エポキシ樹脂20重量%、メチルエチルケトン40重量%、シクロヘキサノン40重量%)を作製した。
上記メチルエチルケトンで置換されたアセチル化セルロース繊維と上記エポキシ樹脂溶液とを用いて、エポキシ樹脂固形分に対してアセチル化セルロース繊維の含有量を25重量%になるように混合して、セルロース繊維分散液(原料分散液)を調製した。
得られた原料分散液を回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで30分処理して、セルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、80nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例2>
実施例1で得られた微細セルロース繊維分散液に、この微細セルロース繊維分散液中のエポキシ樹脂固形分に対して5重量%の特殊ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂硬化剤に該当、JER社製157S65)、エポキシ樹脂固形分と特殊ノボラック型エポキシ樹脂との合計量に対して、0.05重量%の2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(硬化促進剤、JER社製EMI−24)を添加し、均一に混合した後溶媒の一部を揮発させ、アプリケーターで製膜して塗膜(厚さ:200μm)を得た。
前記塗膜を60℃で1時間加熱し、さらに160℃で1時間加熱し、さらに200℃で1時間加熱して硬化させ、セルロース繊維複合体を得た。複合体中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、上記と同じく、80nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例3>
製造例3で得られた含水ベンゾイル化セルロース繊維(繊維含有量7重量%、残部は主に水)を濾過により脱水した。これをメチルエチルケトン中に分散して濾過する工程を3度行い、水をメチルエチルケトンに置換した。
一方、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER社製828EL)にメチルエチルケトンを加え、樹脂含量50重量%に調製したエポキシ樹脂溶液(ビスフェノールA型エポキシ樹脂50重量%、メチルエチルケトン50重量%)を作製した。
上記メチルエチルケトンで置換されたベンゾイル化セルロース繊維と上記エポキシ樹脂溶液とを用いて、エポキシ樹脂固形分に対してベンゾイル化セルロースが25重量%になるように混合して、セルロース繊維分散液を調製した。
得られた原料分散液を回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで30分処理して、セルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、75nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例4>
実施例3で得られた微細セルロース繊維分散液中のエポキシ樹脂100部に対して63部のビスフェノールA型ノボラック樹脂(エポキシ樹脂硬化剤に該当、JER社製YLH129)を添加し、この混合液中のメチルエチルケトンをエバポレーター(BUCHI製 Rota Vapor:R−124)を使用し、90℃で減圧度0.15KPaにて15分揮発させた。その後、エポキシ樹脂固形分とビスフェノールA型ノボラック樹脂との合計量に対して、1重量%の2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(硬化促進剤、JER社製EMI−24)を添加し、均一に混合して樹脂混合液を調製した。
前記樹脂混合液を、厚み2mm×縦100mm×横30mmの注型板に注入し、これを160℃で1時間加熱し、さらに200℃で1時間加熱して硬化させ、セルロース繊維複合体を得た。複合体中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、上記と同じく、75nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例5>
製造例1で得られたセルロース繊維を用いること以外は、実施例1と同様にして、微細セルロース繊維分散液を得た。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、95nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例6>
実施例5で得られた微細セルロース繊維分散液に、この微細セルロース繊維分散液中のエポキシ樹脂固形分に対して5重量%の特殊ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂硬化剤に該当、JER社製157S65)と、エポキシ樹脂固形分と特殊ノボラック型エポキシ樹脂との合計量に対して、0.05重量%の2−エチル−4(5)−メチルイミダゾール(硬化促進剤、JER社製EMI−24)とを添加し、均一に混合した後、溶媒の一部を揮発させアプリケーターで製膜して塗膜(厚さ:200μm)を得た。
前記塗膜を60℃で1時間加熱し、さらに160℃で1時間加熱し、さらに200℃で1時間加熱して硬化させ、セルロース繊維複合体を得た。複合体中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、上記と同じく、95nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例7>
製造例2で得られた含水アセチル化セルロース繊維(繊維含有量7重量%、残部は主に水)を実施例1と同様にしてエポキシ樹脂固形分に対してアセチル化セルロース繊維の含有量を25重量%となるように混合して、セルロース繊維分散液を調製した。
得られた原料分散液をビーズミル(寿工業社製ウルトラアペックスミルUAM−015)にてビーズ径0.3mm、周速11.4m/秒間で4時間処理し、更にビーズ径0.05mm、周速11.4m/秒間で4時間処理してセルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、50nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例8>
実施例7で得られた微細セルロース繊維分散液に、実施例2と同様にして硬化剤、硬化促進剤を添加し、硬化させ、セルロース繊維複合体を得た。複合体中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、上記と同じく、50nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例9>
製造例2で得られた含水アセチル化セルロース繊維(繊維含有量7重量%、残部は主に水)を実施例1と同様にしてエポキシ樹脂固形分に対してアセチル化セルロース繊維の含有量を30重量%となるように混合して、セルロース繊維分散液を調製した。
得られた原料分散液をマルチリング媒体型粉砕機(奈良機械製作所MIC−0型)にて1000rpmで40分間処理してセルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。表1に各種測定結果を示す。
<実施例10>
実施例9で得られた微細セルロース繊維分散液を、実施例2と同様にして硬化させセルロース繊維複合体を得た。表1に各種測定結果を示す。
<実施例11>
回転数を2000rpm、処理時間を20分間とした以外は実施例9と同様にして微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、70nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例12>
実施例11で得られた微細セルロース繊維分散液を、実施例2と同様にして硬化させセルロース繊維複合体を得た。複合体中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、上記と同じく、70nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例13>
製造例2で得られた含水アセチル化セルロース繊維(繊維含有量7重量%、残部は主に水)を濾過により脱水した。これを塩化メチレン中に分散して濾過する工程を3度行い、水を塩化メチレンに置換した。一方、酢酸セルロース(ダイセル化学工業社製)を塩化メチレンに溶解させ10重量%に調整した。
上記塩化メチレンで置換されたアセチル化セルロース繊維と上記酢酸セルロース溶液とを用いて、酢酸セルロース固形分に対してアセチル化セルロース繊維の含有量を25重量%になるように混合して、セルロース繊維分散液を調製した。
得られた原料分散液をビーズミル(寿工業社製ウルトラアペックスミルUAM−015)にてビーズ径0.3mm、周速11.4m/秒間で4時間処理してセルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。
得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、50nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例14>
実施例13で得られた微細セルロース繊維分散液を、アプリケーターで製膜して塗膜(厚さ:200μm)を得た。この塗膜を60℃で1時間加熱し、セルロース繊維複合体を得た。複合体中の微細セルロース繊維の数平均繊維径は、上記と同じく、50nmであった。表1に各種測定結果を示す。
<実施例15>
製造例1で得られたセルロース繊維を、セルロース繊維含有量0.5重量%、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製AH−17、ケン化度97〜98.5%、平均重合度1700)含有量1重量%となるように水で調整し、セルロース繊維分散液を得た。
得られた原料分散液を回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで60分処理して、セルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。表2に各種測定結果を示す。
<実施例16>
実施例15で得られた微細セルロース繊維分散液を、オプツール処理したガラスシャーレに流延し、真空下で脱泡後、105℃のオーブンで2時間以上おくことで水を蒸発させた。ポリビニルアルコール中にセルロースが均一に分散した複合体を剥がすことができた。
<実施例17>
セルロース繊維含有量0.5重量%、ポリビニルアルコール含有量0.5重量%とした以外は実施例15と同様にして微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、30nmであった。表2に各種測定結果を示す。
<実施例18>
実施例16と同様にして、実施例17で得られた微細セルロース分散液からセルロース繊維複合体を得た。表2に各種測定結果を示す。
<実施例19>
セルロース繊維含有量0.5重量%、ポリビニルアルコール含有量0.1重量%とした以外は実施例15と同様にして微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。表2に各種測定結果を示す。
<実施例20>
実施例16と同様にして、実施例19で得られた微細セルロース分散液からセルロース繊維複合体を得た。表2に各種測定結果を示す。
<実施例21>
セルロース繊維含有量0.5重量%、ポリビニルアルコール含有量0.05重量%とした以外は実施例15と同様にして微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。表2に各種測定結果を示す。
<実施例22>
実施例16と同様にして、実施例21で得られた微細セルロース分散液からセルロース繊維複合体を得た。表2に各種測定結果を示す。
<比較例1>
熱硬化性樹脂前駆体のエポキシ化合物であるビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER社製jER827)100重量部を120℃で融解させ、硬化剤(m−キシリレンジアミン)18重量部と混合して、混合液を得た。
次に、該混合液を製造例4にて得られたセルロース不織布に含浸(含浸時間:5分以内)させ、プレス機内にて温度100℃、圧力9.8MPa下にて熱硬化(硬化時間:1時間)させることによって、セルロース繊維複合体を得た。厚さは約30μmであった。重さから、複合体中のセルロース繊維は29重量%であった。
セルロース繊維複合体の断面を観察すると、エポキシ樹脂を含有するセルロース不織布とその周辺にエポキシ樹脂のみの部分が観察され、複合体中にセルロース繊維が均一に分散しているとはいえなかった。表2に各種測定結果を示す。
なお、該態様は、日本国特開2006−316253号公報に記載の態様に該当する。
<比較例2>
製造例5で得られた分散液とビスフェノールA型エポキシ樹脂(JER社製エピコート YL6810)とを混合して、スリーワンモーターで攪拌しながら減圧し、水をエポキシ樹脂に置換した。
ここにアミン系硬化剤JEFFAMINE D−400(HUNTSMAN社製)をエポキシ樹脂100重量部に対して64重量部添加し、混合して、組成物を得た。この組成物は粘調で、アプリケーターで塗布できなかった。
そこで手塗りし、60℃で3時間加熱し、さらに120℃で3時間加熱して硬化させ、セルロース繊維複合体を得た。仕込みから、複合体中のセルロース繊維は45重量%であった。表2に各種測定結果を示す。
なお、該態様は、日本国特開2007−146143号公報に記載の態様に該当する。
<比較例3>
比較例2で得られた組成物に、全固形分濃度が10重量%になるようにメチルエチルケトンを加え、組成物を30分攪拌した。しかしながら、攪拌をとめると固形分が沈降してしまい、分散液の液安定性に欠けていた。
なお、固形分とは、セルロース、エポキシ樹脂、硬化剤などの溶媒以外の成分を意味する。
<比較例4>
樹脂および樹脂前駆体が存在しない系において、セルロース繊維の解繊を行った例を以下に詳述する。
製造例3で得られた含水ベンゾイル化セルロース繊維(繊維含有量7重量%、残部は主に水)を濾過により脱水した。これをメチルエチルケトン中に分散して濾過する工程を3度行い、水をメチルエチルケトンに置換した。これをメチルエチルケトン中に分散させ、セルロース繊維1.4重量%に調製した。得られた原料分散液を回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで60分処理して、セルロース繊維の解繊を行った。
解繊後の分散液に、エポキシ樹脂固形分に対してベンゾイル化セルロース繊維の含有量を25重量%になるように変性ビフェノール型エポキシ樹脂30重量%、メチルエチルケトン35重量%、シクロヘキサノン35重量%を含有する組成物(JER社製YX6954BH30)を添加して混合した。得られたセルロース繊維の数平均繊維径は、300nmであった。表2に各種測定結果を示す。
さらに、得られた分散液に、この分散液中のエポキシ樹脂固形分に対して5重量%の特殊ノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ樹脂硬化剤に該当、JER社製157S65)、エポキシ樹脂固形分とJER社製157S65との合計量に対して、0.05重量%の硬化促進剤JER社製EMI−24を添加し、均一に混合した後、溶媒の一部を揮発させアプリケーターで製膜して塗膜を得た。
前記塗膜を60℃で1時間加熱し、さらに160℃で1時間加熱し、さらに200℃で1時間加熱して硬化させ、セルロース繊維複合体を得た。複合体中のセルロース繊維の数平均繊維径は、上記と同じく、300nmであった。表2に各種測定結果を示す。
<比較例5>
製造例1で得られたセルロース繊維を、セルロース繊維含有量0.5重量%となるように水で調整し、セルロース繊維分散液を得た。得られた原料分散液を回転式高速ホモジナイザー(エム・テクニック社製クレアミックス2.2S)にて20000rpmで60分処理して、セルロース繊維の解繊を行い、微細セルロース繊維が分散した微細セルロース繊維分散液を得た。
前記分散液に、ポリビニルアルコール(日本合成化学工業社製AH−17、ケン化度86.5〜89%、平均重合度500)水溶液を、セルロースとポリビニルアルコールの重量が同一になるように混合した。得られた微細セルロース繊維の数平均繊維径は、40nmであった。各種測定結果を表2に示す。
混合した分散液を実施例16と同様に、オプツール処理したガラスシャーレに流延し、脱泡後、105℃のオーブンで2時間以上おくことで水を蒸発させた。得られたセルロース繊維複合体はガラスシャーレから剥がすことができなかった。
Figure 2011125801
Figure 2011125801
表1に示すように、実施例1、3、5、7、9、11および13より、セルロース繊維(または変性セルロース繊維)をエポキシ樹脂とともに有機溶媒中で解繊することで、有機溶媒中で分散安定性に優れた微細セルロース繊維分散液を得ることができた。
また、表1に示すように実施例2、4、6、8、10、12および14より、先の実施例1、3、5、7、9、11、13の微細セルロース繊維分散液を用いて、製膜性および成形性が良好で、含有される微細セルロース繊維の分散の優れた複合体が得られることがわかった。
なお、得られた複合体は優れた線膨張係数を示し、さらに、使用された樹脂自体のTg(137℃)と比較して、より高いTgを示すことが確認された。
また、実施例2および8で得られたセルロース繊維複合体の膜を、マイクロスコープで撮影した画像をそれぞれ図1および図2に示す。得られた図1および2の画像より、一視野中のセルロースの存在しない部分の面積率(%)を算出したところ、実施例8は実施例2と比較して、その数値が小さかった。つまり、実施例8の態様のほうが、膜中において、微細セルロース繊維が偏りなく、均一に分散していることを意味している。
この結果から、実施例7のビーズミルを用いて得られた微細セルロース繊維分散液中では微細セルロース繊維がより均一に分散しており、該分散液を使用すると、微細セルロース繊維の分散性がより優れたセルロース繊維複合体を得ることができることが分かった。
これに対して、比較例1のセルロース不織布にエポキシ樹脂を含浸して複合体を得る方法では、複合体の断面からみるとエポキシ樹脂を含有するセルロース不織布とその周辺にエポキシ樹脂のみの部分が観察され、複合体中にセルロース繊維が均一に分散しているとはいえなかった。
また、比較例1の方法では塗布ができないといった欠点があるため、所望の形状の複合体を得るための製膜ができなかった(製膜性:C)。さらに、比較例1の方法では、セルロース繊維と樹脂との配合比を制御することは難しい、他の成分を後添加できない等の問題があった。なお、比較例1の方法で得られる複合体は樹脂層とセルロース繊維層との層状構造を有するため、それぞれの層の線膨張係数の相違から、加熱時に層間剥離を起こす懸念がある。
また、従来技術に該当する比較例1の手法により複合体を製造する場合は、本発明の分散液を用いて複合体を製造する場合に比べて、不織布を製造する工程が増えるため、処理工程が煩雑になると共に、生産性が低下する。
例えば、上記実施例と比較例1との複合体を製造するまでの製造時間を比較すると、実施例での製造時間は比較例の製造時間よりも約10〜30%程度短縮され、本発明の分散液を使用する方法がより工業的な観点から好ましいことが分かった。
また、比較例2の方法では、セルロース繊維の水分散液とエポキシ樹脂を置換するため、その工程でセルロース繊維またはエポキシ樹脂の凝集がおこり、分散液中のセルロース繊維の数平均繊維径が増加してしまう(1000nm超に増加)と共に、複合体中のセルロース繊維の分散が不均一になった。
さらに、比較例3で示すように、比較例2で得られたセルロース繊維とエポキシ樹脂とを含む組成物中に、有機溶媒を追加しても、所望の分散液の安定性を得ることはできなかった。
さらに、比較例4で示すように、エポキシ樹脂(樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方)が存在しない有機溶媒中でセルロース繊維の解繊を行った後、エポキシ樹脂を添加して分散液を製造した場合、セルロース繊維の凝集のために、エポキシ樹脂が混ざりにくく、十分な分散安定性を備える分散液を得ることができなかった。また、製膜性および複合体中でのセルロース繊維の分散性においても満足できる結果は得られなかった。
また、比較例5で示すように、ポリビニルアルコールが存在しない水中でセルロース繊維の解繊を行った後、ポリビニルアルコールを添加して分散液を製造した場合、セルロース繊維間へのポリビニルアルコールの入り込みが十分でなく、複合体の製膜性が悪かった。
これらの点からも、本発明の製造方法により、解繊処理の工程を経て得られる微細セルロース繊維分散液の分散安定性は顕著に優れている点が明らかとなった。
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2010年4月1日出願の日本特許出願2010−085357、2010年10月29日出願の日本特許出願2010−243046に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

Claims (16)

  1. 微細セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、有機溶媒とを含有する微細セルロース繊維分散液の製造方法であって、
    セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、有機溶媒とを含有する原料分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る解繊工程を含む、微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  2. 前記セルロース繊維が、化学修飾されたセルロース繊維である、請求項1に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  3. 前記樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方が、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂および光硬化性樹脂並びにこれらの前駆体からなる群から選ばれる、請求項1または2に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  4. 前記樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方が、エポキシ樹脂およびその前駆体の少なくとも一方である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の微細セルロース繊維分散液の製造方法より得られる、微細セルロース繊維分散液。
  6. 請求項5に記載の微細セルロース繊維分散液に、さらに樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を添加して得られる、微細セルロース繊維分散液。
  7. 請求項5または6に記載の微細セルロース繊維分散液に、さらに有機溶媒を添加して得られる、微細セルロース繊維分散液。
  8. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の微細セルロース繊維分散液を用いて得られる、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体。
  9. 請求項5〜7のいずれか1項に記載の微細セルロース繊維分散液に加熱処理および露光処理の少なくとも一方を施し、前記有機溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得る複合化工程を含む、セルロース繊維複合体の製造方法。
  10. 前記複合化工程前に、前記微細セルロース繊維分散液にさらに樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方を添加する添加工程を含む、請求項9に記載のセルロース繊維複合体の製造方法。
  11. 微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体の製造方法であって、
    セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、溶媒とを含有する原料分散液中で、セルロース繊維を解繊して、微細セルロース繊維を得る解繊工程、および、
    該微細セルロース繊維を含有する分散液に、加熱処理および露光処理の少なくとも一方を施し、
    前記溶媒を除去して、微細セルロース繊維と樹脂とを含有するセルロース繊維複合体を得る複合化工程を含む、セルロース繊維複合体の製造方法。
  12. 請求項9〜11のいずれか1項に記載の製造方法により製造された、セルロース繊維複合体。
  13. 基板及び請求項8または12に記載のセルロース繊維複合体を含む積層体。
  14. さらに保護フィルムを含む、請求項13に記載の積層体。
  15. 請求項13または14に記載の積層体を含む配線基板。
  16. 微細セルロース繊維と、樹脂および樹脂前駆体の少なくとも一方と、有機溶媒とを含有する微細セルロース繊維分散液であって、下記(1)を満たす微細セルロース繊維分散液。
    (1)分散液を室温で10日間静置した後、分散液中の沈降の有無を目視により観察する沈降性試験において、沈降が観察されない。
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