JP5834847B2 - セルロースの微細化方法、セルロースナノファイバー、マスタバッチ組成物及び樹脂組成物 - Google Patents
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しかしながら、水酸基を多く持つセルロースをナノレベルまで微細化するには、現在の技術では水中で解繊を行う必要がある。この水中解繊セルロースナノファイバーを各種樹脂へと複合化するには、製造されたセルロースナノファイバーの脱水工程が必須となっている。また、セルロースは分子間水素結合を形成しやすいため、セルロースナノファイバー脱水工程中に再凝集してしまい、樹脂中での分散が不良となっていた。
つまり、セルロースナノファイバーを、より安価でかつ簡単な工程で各種樹脂に複合化できるような技術の確立が求められている。
即ち、本発明は、ビニル樹脂中でセルロースを微細化することを特徴とする、セルロースナノファイバーの製造方法を提供するものである。
本発明におけるセルロースナノファイバーは、各種セルロースを微細化する事で得られる。本発明におけるセルロースは、微細化材料として利用可能なものであればよく、パルプ、綿、紙、レーヨン・キュプラ・ポリノジック・アセテートなどの再生セルロース繊維、バクテリア産生セルロース、ホヤなどの動物由来セルロースなどが利用可能である。
また、これらのセルロースは必要に応じて表面を化学修飾処理したものであってもよい。
本発明における解繊樹脂として、ビニル樹脂を用いる。ビニル樹脂とは、ビニルモノマーの重合体もしくは共重合体であり、ビニルモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル誘導体、ビニルエステル誘導体、マレイン酸ジエステル誘導体、(メタ)アクリルアミド誘導体、スチレン誘導体、ビニルエーテル誘導体、ビニルケトン誘導体、オレフィン誘導体、マレイミド誘導体、(メタ)アクリロニトリルが好適に挙げられる。ビニル樹脂としては、その中でも特に(メタ)アクリル酸エステル誘導体を重合して得られる(メタ)アクリル樹脂が特に好ましい。
以下、これらのビニルモノマーの好ましい例について説明する。(メタ)アクリル酸エステル誘導体の例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸アミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸t−オクチル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸オクタデシル、(メタ)アクリル酸アセトキシエチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸―2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸―4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−メトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−エトキシエチル、(メタ)アクリル酸2−(2−メトキシエトキシ)エチル、(メタ)アクリル酸3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸−2−クロロエチル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、(メタ)アクリル酸ビニル、(メタ)アクリル酸―2−フェニルビニル、(メタ)アクリル酸―1−プロペニル、(メタ)アクリル酸アリル、(メタ)アクリル酸―2−アリロキシエチル、(メタ)アクリル酸プロパルギル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸トリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコールモノエチルエーテル、(メタ)アクリル酸β−フェノキシエトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸トリフロロエチル、(メタ)アクリル酸オクタフロロペンチル、(メタ)アクリル酸パーフロロオクチルエチル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニル、(メタ)アクリル酸トリブロモフェニルオキシエチル、(メタ)アクリル酸−γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
フマル酸ジエステル誘導体の例としては、フマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、およびフマル酸ジブチルなどが挙げられる。
イタコン酸ジエステル誘導体の例としては、イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、およびイタコン酸ジブチルなどが挙げられる。
本発明におけるビニル樹脂は、官能基を有することがこのましい。これは、希釈樹脂との相互作用により機械特性など成形体の物性を向上させることが可能となるからである。官能基としては、具体的にはハロゲン基(フッ素、塩素)、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、シラノール基、シアノ基等が挙げられ、これらを複数種有していてもかまわない。
また、本発明のビニル樹脂は、直鎖型ポリマーであっても分岐型ポリマーであってもよく、分岐型ポリマーの場合くし型でも星型でもかまわない。
本発明で使用するビニル樹脂の分子量は、数平均分子量が3000以下であることが好ましい。詳細な理由は不明であるが、数平均分子量が3000以下であれば、セルロース繊維への親和性が高まるためではないかと予想される。
本発明における解繊樹脂である、ビニル樹脂の数平均分子量が3000以下のとき、酸価が30以上60未満であるとより好ましい。
本発明における解繊樹脂である、ビニル樹脂の数平均分子量が3000以下のとき、水酸価が30以上であると好ましく、50以上であるとより好ましい。
セルロースの微細化は、ビニル樹脂中にセルロースを添加し、機械的に箭断力を与えることにより行うことができる。水または有機溶剤といった溶媒を加える必要はないため、脱水又は脱溶媒工程がなく、生産工程を簡略化することができる。箭断力を与える手段としては、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、一軸押出機、二軸押出機等の押出機、バンバリーミキサー、グラインダー、加圧ニーダー、2本ロール等の公知の混練機等を用い剪断力を与えることができる。これらの中でも高粘度の樹脂中でも安定した剪断力を得られる観点から加圧ニーダーを用いることが好ましい。
ビニル樹脂中で微細化されたセルロースナノファイバーは、解繊工程において、水または有機溶剤を使用しないため、脱水又は脱溶媒工程が必要なく、そのままマスタバッチ組成物組成物として利用することができる。また、精製工程を経ずにそのままマスタバッチ組成物組成物として利用することができる。さらには、マスタバッチ組成物組成物そのものを本発明の樹脂組成物として用い、成形体を直接製造してもかまわない。
セルロースナノファイバーを含有するマスタバッチ組成物を、希釈用樹脂に混合することで、樹脂組成物の強度を向上させることが可能である。希釈用樹脂としては本発明の効果を損なわない範囲であれば特に制限が無く、単量体であっても重合体であってもかまわず、熱可塑性樹脂および熱硬化性樹脂のいずれも使用することができる。また、一種類を用いてもよく、複数種の樹脂を組み合わせて用いてもかまわない。
前記樹脂組成物には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、その用途に応じて従来公知の各種添加剤を含有しても良く、例えば、加水分解防止剤、着色剤、難燃剤、酸化防止剤、重合開始剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、離型剤、消泡剤、レベリング剤、光安定剤(例えば、ヒンダードアミン等)、酸化防止剤、無機フィラー、有機フィラー等をあげることができる。
本発明の樹脂組成物に係る成形体を成形する方法については、特に限定されない。板状の製品を製造するのであれば、押し出し成形法が一般的であるが、平面プレスによっても可能である。この他、異形押し出し成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、真空成形法、射出成形法等を用いることが可能である。またフィルム状の製品を製造するのであれば、溶融押出法の他、溶液キャスト法を用いることができ、溶融成形方法を用いる場合、インフレーションフィルム成形、キャスト成形、押出ラミネーション成形、カレンダー成形、シート成形、繊維成形、ブロー成形、射出成形、回転成形、被覆成形等が挙げられる。また、活性エネルギー線で硬化する樹脂の場合、活性エネルギー線を用いた各種硬化方法を用いて成形体を製造する事ができる。
本発明における樹脂組成物は、各種用途に好適に利用できる。例えば、自動車部品、航空機部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、安全保護用品等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
温度計、撹拌機および還流冷却器を備えた四ツ口フラスコに、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MPA)を3000部仕込んで撹拌しながら130℃に昇温した。次に、メタクリル酸2−エチルヘキシル(2EHMA)750部、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)200部、メタクリル酸(MAA)50部からなる混合溶液と、「パーブチルO」〔日油(株)製品〕150部からなる混合溶液を、それぞれ5時間かけて滴下した。滴下終了後130℃で12時間反応した後、70℃で減圧脱溶剤することで、ビニル樹脂(a−1)の90%固形分溶液を得た。
得られた樹脂(a−1)の重量平均分子量(以下、Mwと略す)は、ポリスチレン換算で1800、Tgは7℃であった。
樹脂をテトラヒドロフラン(THF)によって50倍希釈して得られた希釈液をフィルター(材質:ポリテトラフルオロエチレン、ポア径:0.2μm)で濾過することにより、測定サンプルを調製し、次に、この測定サンプルをゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC東ソー社製商品名「HLC−8220GPC」)に供給して、サンプル流量1ミリリットル/min、カラム温度40℃の条件で測定を行い、樹脂のポリスチレン換算分子量を測定した値を、重量平均分子量とした。なお、上記GPC測定において、カラムとして、HXL−X、G5000HXL、G3000HXL、G2000HXL、G2000HXL(いずれも東ソー株式会社製)を用い、検出器として示差屈折計を用いた。
樹脂のTgは、得られた樹脂をサンプリングして直接測定してもよいが、煩雑であることから、本発明においては、仕込んだモノマーのホモポリマーのTgから計算し算出したTgを、具体的には以下のFoxの式により算出されたTgを、本発明における「樹脂のTg」とする。
試料10 g を共栓フラスコに精密に量り採り、メタノール/トルエン混液100mLを加えて溶解する。これに、数滴のフェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する淡紅色を呈するまで0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液で滴定する。
酸価は、滴定に要した0.1mol/Lエタノール製水酸化カリウム溶液の液量から、下式により算出する。
酸価=a×F×5.611/試料量(g)
a:0.1mol/L エタノール製水酸化カリウム溶液の量(mL)
F:0.1mol/L エタノール製水酸化カリウム溶液の力価
JIS K0070に準じて測定を行った。
合成例1の合成方法において原料仕込量及び温度を表1に記載した条件に変更することにより合成を行い、ビニル樹脂(a−2)〜ビニル樹脂(a−15)を得た。得られた各ビニル樹脂の物性値を表1に示した。
(実施例1) ビニル樹脂(a−1)を用いたセルロース微細化方法
合成例1で得られたビニル樹脂(a−1)を600g、日本製紙ケミカル社製のセルロースパウダー製品「KCフロック」を400gを、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)を用いて60rpmで300分間加圧混練を行ってセルロースの微細化処理を行い、ビニル樹脂(a−1)とセルロースナノファイバーを含有するマスタバッチ組成物1を得た。得られたマスタバッチ組成物1を1%の濃度となるようにアセトンに懸濁し、特殊機械工業(株)製TKホモミキサーA型を用いて15000rpm20分間分散処理を行い、ガラス上に広げてアセトンを乾燥し、走査型電子顕微鏡にてセルロースの微細化状態を確認し、結果を表2に示した。
実施例1において、合成例1のビニル樹脂(a−1)の代わりに、合成例2−合成例15で得られたビニル樹脂樹脂(a−2〜a−15)を用いて、セルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバーを含有するマスタバッチ組成物1〜15を得た。得られたそれぞれのマスタバッチ組成物についても、実施例1と同様に電子顕微鏡を用いて観察を行い、セルロースの微細化状態の判定を行い、結果を表2に示した。
〔成形体の製造〕
合成例1で得られたビニル樹脂(a−1)を600g、日本製紙ケミカル製のセルロースパウダー製品「KCフロック」を400gを、森山製作所製加圧ニーダー(DS1−5GHH−H)を用いて60rpmで660分間加圧混練を行ってセルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバーを含むマスタバッチ組成物16を得た。得られたセルロースナノファイバーを含むマスタバッチ組成物16を用いて以下に示す成形方法を用いて試験片を作製し、破壊靭性値を測定した。
〔成形方法〕
以下、試験板の成形方法について説明する。DIC株式会社製エポキシ樹脂EPICLON850を79.4重量部に対し、当該マスタバッチ組成物16を2.5重量部を加え撹拌機にて分散撹拌した。次にIPDA(イソホロンジアミン)を18.1重量部加え、撹拌機で均一になるまで撹拌した。更に真空チャンバーにて脱気を行い、型に注いで110℃で30分加熱し硬化させ、厚み6mmの注型成形板を得た。
〔試験片制作方法〕
この注型成形板より、ASTMD−5045(3点曲げ試験片(SENB))に規定される試験片(今回の試験片高さW=12.7mm、奥行きB=6mmノッチと予亀裂の大きさa=0.45〜0.55W)をN=8で作製した。
〔破壊靱性試験〕
ASTMD−5045に準拠し、スパン50.8mm、ヘッドスピード10mm/minの条件で3点曲げ試験を実施し、所定の方法から荷重−変位曲線が線形内であることを確認の上、破壊靭性値を算出し、結果を表3に示した。
実施例1において、合成例1のビニル樹脂(a−1)の代わりに、合成例7で得られたビニル樹脂樹脂(a−7)を用いて、セルロースの微細化処理を行い、セルロースナノファイバーを含むマスタバッチ組成物17を得た。得られたマスタバッチ組成物17を用いて、実施例16と同様の条件の成形方法を用いて試験片を作製し、破壊靭性値の測定を行い、結果を表3に示した。
DIC株式会社製エポキシ樹脂EPICLON850を80.2重量部に対し、IPDA(イソホロンジアミン)を18.3重量部加え、撹拌機で均一になるまで撹拌した。更に真空チャンバーにて脱気を行い、型に注いで110℃で30分加熱し硬化させ、厚み6mmの注型成形板を得た。
得られた注型成形版に対し、実施例16での破壊靱性試験を同様に行い、結果を表3に示した。
Claims (10)
- 水または有機溶媒の非存在下において、解繊樹脂中でセルロースを微細化するセルロースナノファイバーの製造方法であって、解繊樹脂がビニル樹脂であることを特徴とする、セルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記ビニル樹脂が(メタ)アクリル樹脂である、請求項1に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記(メタ)アクリル樹脂が、官能基を有する(メタ)アクリル樹脂である、請求項2に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記解繊樹脂の数平均分子量が3000以下である、請求項1から3のいずれかに記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記解繊樹脂の酸価が30以上60未満である、請求項4に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 前記解繊樹脂の水酸基価が30以上である、請求項4または5に記載のセルロースナノファイバーの製造方法。
- 解繊樹脂中でセルロースを微細化するセルロースナノファイバーの製造方法であって、
解繊樹脂が数平均分子量が3000以下であるビニル樹脂であって、酸価が30以上60未満かつ、水酸基価が30以上であることを特徴とする、セルロースナノファイバーの製造方法。 - 請求項1から7のいずれかに記載の製造方法で得られる、セルロースナノファイバー及び請求項1から7のいずれかで使用する解繊樹脂とを含有する、マスタバッチ組成物の製造方法。
- 請求項8に記載のマスタバッチ組成物を製造する工程と、さらに希釈用樹脂を配合する工程とを有する、樹脂組成物の製造方法。
- 請求項8に記載のマスタバッチ組成物を製造する工程と、更に組成物を成形する工程とを有することを特徴とする、成形体の製造方法。
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